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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1356340
審判番号 不服2017-15926  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2019-10-15 
事件の表示 特願2014-533219「無線通信システムにおけるデータ送受信方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日国際公開,WO2013/048216,平成26年12月 4日国内公表,特表2014-532350〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2012年9月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年9月30日 米国,2012年3月7日 米国,2012年3月13日 米国,2012年8月23日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 9月28日 手続補正書の提出
平成28年10月13日付け 拒絶理由通知書
平成29年 1月24日 意見書及び手続補正書の提出
平成29年 6月20日付け 拒絶査定
平成29年10月26日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
平成30年12月 6日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年 3月11日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願の特許請求の範囲
平成31年3月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2には,以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
CoMP方式をサポートする無線通信システムにおける受信機がデータを受信する方法であって,
上位階層シグナリングを介して物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応する複数の値を含む構成情報を受信するステップと,
物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップと,
前記情報フィールドによって示される前記一つの値に基づいて,前記PDSCHの開始位置を決定するステップと,
前記決定された開始位置に基づいて,前記PDSCHでデータを受信するステップとを含むことを特徴とするデータ受信方法。
【請求項2】
前記複数の値は,
セル特定基準信号(CRS)構成及びMBSFNサブフレーム構成の少なくとも一つに関連することを特徴とする請求項1に記載の方法。」

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶理由である,平成30年12月6日付け拒絶理由通知の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,次のとおりのものである。
「 1.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(中略)
3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 」

ここで,理由1(サポート要件)についての請求項1,2に関する具体的内容(抜粋)は以下のとおりである。
「請求項1の「物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置を確認するための情報を含む構成情報を受信するステップ」との記載に関し,(中略)発明の詳細な説明においても「複数の開始位置を確認するための情報」,及び,「複数の開始位置を確認するための情報を含む構成情報」に対応する記載は存在せず,発明の詳細な説明との対応関係が不明である。(サポート要件)
よって,(中略)請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。
請求項1を引用する請求項2(中略)についても同様である。」

そして,理由3(進歩性)について,補正前の請求項1に対しては,下記引用例4,5が引用されている。

引用例4 NTT DOCOMO, Investigation of Specification Impact for Rel. 11 CoMP, 3GPP TSG RAN WG1 #66 R1-112600, 2011.8.16掲載, URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_66/Docs/R1-112600.zip
引用例5 3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures (Release 10), 3GPP TS 36.213 V10.0.0 (2010-12), 2010.12.22掲載, URL: http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.213/36213-a00.zip

第4 当審の判断
1 サポート要件について
(1) 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。(なお,下線は当審が付与した。)
「【0057】
第1タイプの情報,第2タイプの情報,第3タイプの情報が上位シグナリングでUEに転送された後,CoMP転送が幾つのセルとどんなセルでなされるかに対する情報がUEに転送できる。この場合,UEはどんな無線資源がPDSCHの転送に用いられるかを判断できるようになる。
【0058】
したがって,本発明の実施形態では2ビットを用いてUEにどんなRE(Resource Element)がCRSのために使用されるかと,PDSCHが転送されるOFDMシンボルの位置情報をUEに転送することができ,具体的に,以下の<表2>のような情報がUEに転送される。
【0059】
【表2】

【0060】
ネットワークは<表2>に示すように,2ビットで表現可能な4個の状態(state)別に異なるCRS構成とPDSCH開始位置(PDSCH starting position)を上位シグナリングで予め設定して置くことができる。そして,ネットワークは上記4個の2ビットに対する情報をPDCCHまたはE-PDCCHでUEに転送することによって,UEがどんな無線資源を使用してPDSCHを受信するかを判断できるようにする。
【0061】
<表2>で,CRS構成はCRSが幾つのアンテナポートからなっているかと,どんなv_shift値を有するかに対する情報を含む。また,MBSFN構成はどのサブフレームがMBSFNサブフレームであるかに対する情報を含む。
【0062】
本発明の実施形態で提案するPDSCH開始位置を判断する方法は,次の3種類の方法を含む。次の3種類の方法は,UEがPDSCH開始位置を判断できるようにする方法であって,CRS構成と関連した情報は別途の方法によりUEに転送されると仮定する。
【0063】
PDSCH開始位置を判断できるようにする最初の方法は,ネットワークがPDCCH/E-PDCCHを用いてUEにPDSCH開始位置を決定できるようにする情報を転送する方法である。次の<表3>はUEに転送されるPDSCH開始位置に対する情報を含むメッセージを表したものである。
【0064】
【表3】

【0065】
<表3>に表れたPDSCH開始位置に対する情報は総4個の状態(state)を含むので,PDSCH開始位置に対する情報は2ビットでUEに転送できる。

(中略)

【0089】
次の<表6>は,本発明の実施形態に従って,PDSCH開始位置の以外にMBSFNサブフレーム構成,CRS構成などに対する情報を含むCoMP制御情報を表した表である。
【0090】
【表6】



(2) 判断
本願請求項2に係る発明は,本願請求項1に係る発明の,
「上位階層シグナリングを介して物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応する複数の値を含む構成情報を受信するステップと,
物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップと,
前記情報フィールドによって示される前記一つの値に基づいて,前記PDSCHの開始位置を決定するステップと」
との発明特定事項に加え,「前記複数の値は」,「セル特定基準信号(CRS)構成及びMBSFNサブフレーム構成の少なくとも一つに関連する」ことを発明特定事項とするものである。したがって,請求項2に係る発明における「前記複数の値」は,「物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応」し,かつ,「セル特定基準信号(CRS)構成及びMBSFNサブフレーム構成の少なくとも一つに関連する」ものと認める。
これに対し,【0057】-【0061】に記載された実施例(以下「実施例A」という。),及び,【0089】-【0090】に記載された実施例(以下「実施例C」という。)では,PDCCH等でUEに転送する2ビットの値で表される状態のうち,2及び3では,PDSCHの開始位置を上位シグナリングで予め設定し,0ではPCFICH(【表2】,【表6】)又はCIF(【表6】)で示される値に従うものである。すなわち,0で表される状態の場合は,PDSCHの開始位置を得るための方法を指定するものであり,PDSCH開始位置に対応する値を構成情報としてUEが受信するものではないため,前記実施例B,Cは本願請求項2に係る発明の,「前記複数の値」は,「物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応」し,「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信する」との事項に対応しない。
一方,【0062】-【0065】に記載された実施例(以下「実施例B」という。)では,PDCCH(物理ダウンリンク制御チャンネル)等でUEに転送する2ビットで表現可能な0-3の各状態が,PDSCHの開始位置のOFDMシンボルと対応している。したがって,実施例Aは本願請求項2に係る発明の,「前記複数の値」は,「物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応」し,「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信する」との事項に対応するものと認める。
しかしながら,本願請求項2に係る発明の「前記複数の値は」,「セル特定基準信号(CRS)構成及びMBSFNサブフレーム構成の少なくとも一つに関連する」との事項に対応する発明の詳細な説明の記載は,前記実施例A,Cのみである。そして,前記実施例A,Cと前記実施例Bは状態0の時の処理が大きく異なるため,両者は組合せ可能なものでもない。
よって,本願請求項2に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない。
ここで,平成31年3月11日付け手続補正書による補正により,平成30年12月6日付け拒絶理由通知でサポート要件の拒絶理由を通知した点に係る,請求項1に係る発明の「複数の開始位置を確認するための情報」との事項が「複数の開始位置に対応する複数の値」と補正されたが,請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明に関して,依然として,前記補正された点に係る事項と,発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である。

(3)まとめ
以上のとおり,本件補正による請求項2の記載は,依然として特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満していない。

2 進歩性について
(1) 本願発明
本願請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は,前記第2で摘記した,請求項1に記載したとおりのものと認める。

(2) 引用発明
ア 引用例4
当審拒絶理由で引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,NTT DOCOMO, Investigation of Specification Impact for Rel. 11 CoMP(当審仮訳:「Rel. 11 CoMPのための仕様への影響の調査」), 3GPP TSG RAN WG1 #66 R1-112600, 2011.8.16掲載, URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_66/Docs/R1-112600.zip」(以下「引用例4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

「2.3.PDSCH Starting Symbol Mismatch Avoidance for JP-CoMP
For JP-CoMP, the starting position of the PDSCH for the CoMP UE might not be aligned to that of CoMP transmission points as shown in Fig. 4 [8].

There are several approaches to resolve PDSCH starting symbol mismatch as summarized below.

●Transparent approach
○Extension carrier, if defined
○Single cell ID CoMP
○Fix CoMP PDSCH starting position

●Non-transparent approach
○Dynamic/semi-static CoMP PDSCH starting position signaling [8]

Figure 5 shows an example of a fix for the CoMP PDSCH starting position. In this approach, the PDSCH transmission of JP-CoMP can be transparent to the CoMP UE. However, this will cause significant spectral efficiency loss due to the wide range of CoMP PDSCH mapping restrictions similar to when the CRS OFDM symbols are not used. Figure 6 shows an example of a dynamic CoMP PDSCH starting position signaling approach. In this approach, DCI signals the CoMP UE regarding the PDSCH starting position. Table 2 summarizes these CoMP PDSCH starting position mismatch avoidance approaches for JP-CoMP.

」(第3/5ページ第1行-第16行)
(当審仮訳:
2.3. JP-CoMPのPDSCH開始シンボルミスマッチの回避
JP-CoMPのために,CoMP UEのためのPDSCHの開始位置は図4に見られるようにCoMP転送点の開始位置に整列されないかも知れない[8]。
下記にまとめたようにPDSCH開始シンボルのミスマッチを解決するための幾つかのアプローチがある。

(図4 - JP-CoMPのPDSCH開始シンボルミスマッチ)

●透明アプローチ
○定義できるのであれば,キャリアの拡張
○単一のセルIDでのCoMP
○CoMP PDSCH開始位置の固定

●非透明アプローチ
○動的/半静的 CoMP PDSCH開始位置シグナリング[8]

図5はCoMP PDSCH開始位置の固定の例を示す。このアプローチでは,JP-CoMPのPDSCH伝送はそのCoMP UEへ透明でありえる。しかしながら,これはCRS OFDMシンボルが用いられない場合と同様にCoMP PDSCHマッピングの広い帯域の制限のために多大なスペクトルの効率損失を引き起こす。図6は動的CoMP PDSCH開始位置シグナリングアプローチの一例を示す。このアプローチでは,DCIはPDSCH開始位置に関してCoMP UEにシグナリングする。表2にこれらのJP-CoMPのためのCoMP PDSCH開始位置のミスマッチ回避アプローチをまとめる。

図5 - 固定CoMP PDSCH開始位置

図6 - 動的CoMP PDSCH開始位置シグナリング

表2 - JP-CoMPのためのPDSCH開始位置ミスマッチ回避アプローチ(表2の訳は省略する。))

引用例4は,「DCIはPDSCH開始位置に関してCoMP UEにシグナリングする」ことから,明らかにCoMP UEがデータを受信する方法について記載されている。また,DCIはPDCCHでeNBからUEにシグナリングされることが当業者の技術常識であるから,引用例4はUEが,動的/半静的にPDCCHでPDSCHの開始位置を示すDCIがシグナリングされることが記載されているといえる。また,UEが前記PDSCHの開始位置に基づいて,前記PDSCHでデータを受信することも当業者の技術常識より明らかである。
以上より,引用例4には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「CoMP UEがデータを受信する方法であって,
動的/半静的にPDCCHでPDSCHの開始位置を示すDCIがシグナリングされるステップと,
前記PDSCHの開始位置に基づいて,PDSCHのデータを受信するステップとを含むデータ受信方法。」

イ 引用例5
当審拒絶理由で引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures (Release 10), 3GPP TS 36.213 V10.0.0 (2010-12), 2010.12.22掲載, URL: http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.213/36213-a00.zip(以下「引用例5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

(ア)「8.2 UE sounding procedure
A UE shall transmit Sounding Reference Symbol (SRS) on per serving cell SRS resources based on two trigger types:
- trigger type 0: higher layer signalling
- trigger type 1: UL DCI formats.
A UE may be configured with SRS parameters for trigger type 0 and trigger type 1 on each serving cell. The following SRS parameters are serving cell specific and semi-statically configurable by higher layers for trigger type 0 and for trigger type 1.
(中略)
For trigger type 1 and DCI format 4 three sets of SRS parameters are configured by higher layer signalling. The SRS request field in DCI format 4 indicates the SRS parameter set given in Table 8.1-1. For trigger type 1 and DCI format 0 a single set of SRS parameters is configured by higher layer signalling.

」(第69ページ第4行-第22行)
(当審仮訳:
8.2 UEサウンディング手順
UEは以下の2つのトリガータイプに基づくサービングセルのSRS資源毎のサウンディング参照シンボル(SRS)を送信することになっている。
- トリガータイプ0:上位層シグナリング
- トリガータイプ1:UL DCIフォーマット
UEはそれぞれのサービングセル上でトリガータイプ0とトリガータイプ1のためのSRSパラメータを用いて構成されるであろう。次に掲げるSRSパラメータはサービングセル特有であり,トリガータイプ0のためとトリガータイプ1のために上位層により半静的に構成されうる。

(中略)

トリガータイプ1とDCIフォーマット4のために,SRSパラメータの3つの集合が上位層シグナリングにより構成される。DCIフォーマット4中のSRS要求フィールドは表8.1-1で与えられるSRSパラメータ集合を示す。トリガータイプ1とDCIフォーマット0のために,SRSパラメータの一つの集合が上位層シグナリングにより構成される。

表8.1-1: DCIフォーマット4におけるトリガータイプ1のためのSRSリクエスト値(表8.1-1の訳については省略する。))

(イ)「9.2 PDCCH validation for semi-persistent scheduling

(中略)

For the case that the DCI format indicates a semi-persistent downlink scheduling activation, the TPC command for PUCCH field shall be used as an index to one of the four PUCCH resource indices configured by higher layers, with the mapping defined in Table 9.2-2

」(第82ページ第8行-第83ページ第3行)

(当審仮訳:
9.2 半持続的スケジューリングのためのPDCCH検証

(中略)

DCIフォーマットが半持続的ダウンンリンクスケジューリングの活性化を示す場合のために,PUCCHフィールドのためのそのTPCコマンドは,表9.2-2に定義されるマッピングで,上位層により構成される4つのPUCCHリソースインデックスのうちの一つのインデックスとして用いられることになっている。

表9.2-2: ダウンリンクの準持続的スケジューリングのためのPUCCHリソースインデックス(表9.2-2の訳については省略する。))

(ウ)「10 Physical uplink control channel procedures
10.1UE procedure for determining physical uplink control channel assignment

(中略)

For FDD with more than one configured serving cell and PUCCH format 3, the UE shall use PUCCH resource or for transmission of HARQ-ACK in subframe on antenna port p where

(中略)

-for a PDSCH transmission on the secondary cell indicated by the detection of a corresponding PDCCH in subframe n-4, the UE shall use PUCCH format 3 and PUCCH resource n^((3,p))_(PUCCH )with the value of n^((3,p))_(PUCCH )is determined according to higher layer configuration and Table 10.1-1d. The TPC command for PUCCH field in the DCI format of the corresponding PDCCH shall be used to determine the PUCCH resource values from one of the four resource values configured by higher layers, with the mapping defined in Table 10.1-1d. A UE shall assume that the same HARQ-ACK PUCCH resource value is transmitted on all PDCCH assignments corresponding to secondary cells.


(第84ページ第1行-第89ページ第2行)

(当審仮訳:
10 物理アップリンク制御チャネル手順
1.1 物理アップリンク制御チャネル割当て決定のためのUE手順

(中略)

サブフレームn-4において,関連するPDCCHの探知によって指示されるそのセカンダリセル上のPDSCH伝送のために,そのUEはPUCCHフォーマット3と表10.1-1dと上位層構成に従って決定されるPUCCHリソースn^((3,p))_(PUCCH)のその値と共にPUCCHリソースn^((3,p))_(PUCCH)を用いる。対応するPDCCHのDCIフォーマット中のPUCCHフィールドのためのTPCコマンドは,表10.1-1dで定義されたマッピングと共に,上位層で構成された4つのリソース値のうちの一つからそのPUCCHリソース値を決定するために用いられることになっている。UEは対応するセカンダリセルのすべてのPDCCH割当て上で同じHARQ-ACK PUCCHリソース値が伝送されることになっている。

表10.1-1d: PUCCHのHARQ-ACKリソースのためのPUCCHリソース値(表10.1-1dの訳については省略する。))

前記(ア)より,引用例5には,Sounding Reference Symbol(SRS)の構成を,タイプ1のSRSトリガ及びDCIフォーマット4を使用する場合,上位層によって構成された3つのSRSパラメータ集合のうち,どれを用いるかを,DCIフォーマット4のSRS要求フィールドによって示す技術が記載されている。
また,前記(イ)より,引用例5には,ダウンリンクの準持続的スケジューリングのためのPUCCHリソースインデックスの割当てを,上位層で構成されたリソースインデックスのうちDCIフォーマットのPUCCHのためのTPCコマンドをインデックスとして使用するものが記載されている。
また,(ウ)より,引用例5には,PUCCHのためのHARQ-ACKリソースのためのPUCCHリソース値の決定のために上位層で構成されたPUCCHリソース値のうちDCIフォーマットのPUCCHのためのTPCコマンドをインデックスとして使用するものが記載されている。
また,当業者の技術常識より,上位層シグナリングによりUEに対し何らかのものが構成される場合,上位層シグナリングによりUEに対して何らかの構成情報が与えられることは明らかである。してみれば,(ア)-(ウ)より,引用例5には,UEに対して,上位層シグナリングにより何らかの複数の構成情報が与えられ,PDCCHのDCIフォーマットで与えられる値により当該複数の構成情報から使用する構成が与えられ,UEが当該構成を使用する事項が記載されていると認める。そして,3GPPの規格文書である引用例5に当該事項が複数箇所記載されていることから,当該事項は当業者にとって常とう手段であったと認める。

(3) 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
引用発明の「CoMP UE」は,CoMP方式をサポートする無線通信システムにおけるものであることは明らかであり,また,UEは受信機能を有することから,受信機とも言える。よって,引用発明の「CoMP UE」は,本願発明の「CoMP方式をサポートする無線通信システムにおける受信機」に相当する。そして,引用発明の「CoMP UEがデータを受信する方法」は,本願発明の「CoMP方式をサポートする無線通信システムにおける受信機がデータを受信する方法」に相当する。
引用発明の「PDCCH」,「PDSCH」,「DCI」は,それぞれ,本願発明の「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)」,「物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)」,「ダウンリンク制御情報」に相当する。
当業者の技術常識より,UEにPDSCHの開始位置を示すDCIがシグナリングされることは,PDSCHの開始位置に関するダウンリンク制御情報を受信することを意味するから,引用発明の「動的/半静的にPDCCHでPDSCHの開始位置を示すDCIがシグナリングされるステップ」と,本願発明の「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップ」とでは,「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの開始位置に関するダウンリンク制御情報を受信するステップ」との点で共通する。
引用発明の「前記PDSCHの開始位置に基づいて,PDSCHのデータを受信するステップ」と,本願発明の「前記決定された開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップ」とでは,「前記PDSCHの開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップ」との点で共通する。

してみれば,本願発明と引用発明とでは以下の点で一致する。
「CoMP方式をサポートする無線通信システムにおける受信機がデータを受信する方法であって,
物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの開始位置に関するダウンリンク制御情報を受信するステップと,
前記開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップとを含むことを特徴とするデータ受信方法。」

そして,本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。

相違点
本願発明が「上位階層シグナリングを介して物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応する複数の値を含む構成情報を受信するステップ」,「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップ」、「前記情報フィールドによって示される前記一つの値に基づいて、前記PDSCHの開始位置を決定するステップ」,「前記決定された開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップ」を含むのに対し,引用発明は,「上位階層シグナリングを介して物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応する複数の値を含む構成情報を受信するステップ」を備えておらず,関連して,物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップ、前記情報フィールドによって示される前記一つの値に基づいて、前記PDSCHの開始位置を決定するステップ,前記決定された開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップ,との事項については特定されていない点。

相違点について
前記(2)イで検討したとおり,「UEに対して,上位層シグナリングにより何らかの複数の構成情報が与えられ,PDCCHのDCIフォーマットで与えられる値により当該複数の構成情報から使用する構成が与えられ,UEが当該構成を使用する。」ことは常とう手段である。
してみれば,前記常とう手段より,引用発明の「動的/半静的に PDSCH開始位置を決定する」手段として,上位階層シグナリングにより構成情報である複数のPDSCH開始位置を与え,PDCCHのDCIフォーマットで与えられる値により当該複数の構成情報から使用する構成が与えられ,UEが当該構成を使用する旨決定することは,当業者が容易に想到することができた事項である。すなわち,引用発明の「動的/半静的にPDCCHでPDSCHの開始位置を示すDCIがシグナリングされるステップ」のより具体的な実現手段として,引用例5に記載された前記常とう手段を採用し,「上位階層シグナリングを介して物理ダウンリンク共有チャンネル(PDSCH)の複数の開始位置に対応する複数の値を含む構成情報を受信するステップ」を設け,あわせて,「物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)で前記PDSCHの複数の値のうちの一つの値を示す情報フィールドを含むダウンリンク制御情報を受信するステップ」、「前記情報フィールドによって示される前記一つの値に基づいて、前記PDSCHの開始位置を決定するステップ」,「前記決定された開始位置に基づいて、前記PDSCHでデータを受信するステップ」を含むものとすることは,当業者が容易に想到することができた事項である。
よって,本願発明は,引用例4,5に基づき,当業者が容易に想到することができたものである。

(4) まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり,本願は,特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満していない。
また,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-14 
結審通知日 2019-05-20 
審決日 2019-05-31 
出願番号 特願2014-533219(P2014-533219)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵三枝 保裕  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 岩間 直純
脇岡 剛
発明の名称 無線通信システムにおけるデータ送受信方法及び装置  
代理人 木内 敬二  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  

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