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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1356362
審判番号 不服2017-17473  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-27 
確定日 2019-11-11 
事件の表示 特願2016-532202「ウィジェットエリアの調整方法および調整装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日国際公開、WO2015/024375、平成28年10月 6日国内公表、特表2016-531356、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年8月20日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 2月 3日 :手続補正書の提出
平成29年 2月14日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月19日付け:拒絶査定
平成29年11月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 9月11日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月29日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月23日 :意見書の提出
令和 元年 6月26日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(理由2)本願請求項1-2、4-5に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由3)本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献A-Bに記載された発明、引用文献Cに記載された技術及び引用文献D-Fに記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2010-198627号公報
B.米国特許出願公開第2012/169774号明細書
C.中国特許出願公開第102520865号明細書
D.特開2001-296946号公報
E.国際公開第2006/072985号
F.米国特許出願公開第2003/107604号明細書

第3 当審拒絶理由の概要
1.当審拒絶理由1の概要
平成30年9月11日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)の概要は次のとおりである。

(理由1)本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献aに記載された発明、引用文献bに記載された技術及び引用文献cに記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
a.特開2012-198893号公報(当審において新たに引用した文献)
b.米国特許出願公開第2003/107604号明細書(拒絶査定時の引用文献F)
c.中国特許出願公開第102520865号明細書(拒絶査定時の引用文献C)

(理由2)本願は、特許請求の範囲の請求項1-6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由2の概要
平成31年1月29日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)の概要は次のとおりである。

(理由1)本願請求項1-2、4-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由2)本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-151500号公報(当審において新たに引用した文献)
2.中国特許出願公開第102520865号明細書(拒絶査定時の引用文献C)

3.当審拒絶理由3の概要
令和元年6月26日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由3」という。)の概要は次のとおりである。

(理由1)本願は、特許請求の範囲の請求項1-2、4-5の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和元年9月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチ画面に表示されたウィジェットのウィジェットエリアの調整方法であって、前記ウィジェットは、情報を表示するために使用され、前記ウィジェットエリアは、表示された前記ウィジェットが前記タッチ画面を占有するエリアであり、
ユーザによってトリガされる起動命令に従ってウィジェット編集モードに入るステップと、
前記ウィジェット編集モードに入った前記ウィジェット内で前記ユーザによってトリガされるスライディングトラックを取得するステップであって、前記スライディングトラックが前記ウィジェットエリアを調整するために使用される、ステップと、
移動後の前記ウィジェットの前記ウィジェットエリアが画面境界からはみ出る場合、前記ウィジェットの移動の終了位置および前記画面境界の位置に従って調整後のウィジェットエリアを決定するステップであって、前記ウィジェットの前記終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定され、前記ウィジェットエリアと前記画面境界の内部領域との重複領域のエリアが前記調整後のウィジェットエリアである、ステップとを含む方法。」

また、本願発明2-6の概要は以下のとおりである。

本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明である。
本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由2に引用された引用文献1(特開2009-151500号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下、同様。)。

(1) 段落【0007】-【0008】
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した情報処理装置では、例えば、ウインドウの表示サイズを小さくすると、それとともにウインドウ内のアイコンの表示サイズも小さくする。こうすることで、この情報処理装置では、ウインドウ内にアイコンが表示しきれなくなることなどを防止して、アイコンの視認性を低下させることなくウインドウの表示サイズを任意の大きさに自由に変更することができる。
【0008】
しかしながら、このようにしてアイコンの表示サイズを小さくする場合、アイコンの表示サイズが小さくなるにつれて、このアイコンに対する操作性が低下する。特に、入力デバイスがタッチパネルである場合、アイコンに対する操作を行うには、画面上のアイコン表示部分を指で触れなければならず、この問題が顕著となる。」

(2) 段落【0104】-【0123】
「【0104】
(2-3)情報通信端末のGUI
次に、情報通信端末10のGUIについて説明する。このGUIは、主として制御部30、表示部15及びタッチパネル16により実現され、具体的には、表示部15に表示したマルチウインドウ形式の画面に対する操作入力をタッチパネル16で行うGUIである。
【0105】
図6に示すように、このGUIの画面(GUI画面)50は、横長長方形でなり、画面の上辺に沿って設けられた細帯状の領域51と、それ以外の領域52とで構成される。このGUI画面50は、例えば、マルチウインドウボタン18が押下されることに応じて、表示部15の表示面15Aに表示される画面であり、その表示制御は、制御部30により行われる。
【0106】
GUI画面50の領域51は、情報通信端末10の状態を示す各種情報が表示される領域であり、以下、この領域を端末状態表示領域とも呼ぶ。これに対して領域52は、実行中のアプリケーションプログラムに対応する四角形のウインドウ(すなわちアプリケーションの起動にともなって表示されるウインドウであり、これをアプリケーションウインドウとも呼ぶ)が表示される領域であり、以下、この領域をウインドウ表示領域とも呼ぶ。

・・・(中略)・・・

【0108】
一方、ウインドウ表示領域52には、複数のアプリケーションが起動されているとすると、図7に示すように、これらに対応する複数のアプリケーションウインドウAwが表示される。
【0109】
ここで、この図7に示すGUI画面50は、ウインドウ表示領域52に5個のアプリケーションウインドウAw1?Aw5が表示された例である。

・・・(中略)・・・

【0112】
さらにアプリケーションウインドウAw3は、動画再生アプリケーションのウインドウであり、情報通信端末10で再生した動画を表示する表示領域Aw3aが配されている。
【0113】
さらにアプリケーションウインドウAw4は、ニュース表示アプリケーションのウインドウであり、インターネットから取得したニュースを表示する表示領域Aw4aと、この表示領域Aw4aに表示するニュースを切り換える命令が割り当てられたアイコンAw4b及びAw4cとが配されている。

・・・(中略)・・・

【0118】
このアクティブモードに対して、表示されているアプリケーションウインドウAw内のオブジェクトに対する操作を受け付けなくする代わりに、アプリケーション及びそのアプリケーションウインドウAwに対する各種設定を行うことができるモードをセッティングモードと呼ぶ。

・・・(中略)・・・

【0121】
(2-4)セッティングモード
このセッティングモードは、上述したアクティブモード時に、オプションボタン20の押下によりGUI画面50上に表示されるポップアップメニュー(図示せず)から、項目「セッティングモード」が選択されることで、アクティブモードから切り換わるようになされている。
【0122】
このモードに切り換わると、図8に示すように、GUI画面50に表示されている各アプリケーションウインドウAw(つまりアクティブモード時に表示されていたアプリケーションウインドウAw)上に、各アプリケーションウインドウAwの表示サイズとほぼ同サイズの各種設定用ウインドウ(これを設定ウインドウとも呼ぶ)Swが重ねて表示される。
【0123】
これら各設定ウインドウSwとその下のアプリケーションウインドウAwとは互いに関連付けられ、例えば、設定ウインドウSwに対するウインドウ操作(移動、表示サイズの変更など)がその下のアプリケーションウインドウAwにも適用されるようになされている。」

(3) 段落【0128】-【0137】
「【0128】
そしてこのセッティングモードでは、図9(A)及び(B)に示すように、例えば、ユーザが設定ウインドウSwの左上隅に配された移動アイコンSi1の表示部分に指(ペンなどでもよい)を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことで、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させることができるようになされている。

・・・(中略)・・・

【0135】
また、このセッティングモードでは、設定ウインドウSwの設定アイコンSi以外の部分に指を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことによっても、移動アイコンSi1の表示部分に指を触れたまま摺同させたときと同様に、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させることができるようにもなされている。
【0136】
さらに、設定ウインドウSwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させた結果、例えば、図14(A)に示すように、設定ウインドウSwの一部がウインドウ表示領域52外となることで、その一部とともに各設定アイコンSiの少なくとも一部が表示されなくなる場合には、図14(B)に示すように、設定ウインドウSwの表示されている部分内に設定アイコンSiを再配置することで、全ての各設定アイコンSiの表示させるようにもなされている。
【0137】
実際上、例えば、設定ウインドウSwの左半分がウインドウ表示領域52外となることで、その左半分とともに、その左半分に配されていた移動アイコンSi1とプロパティアイコンSi3とが表示されなくなる場合には、設定ウインドウSwの表示されている部分(つまり右半分)の左上隅に移動アイコンSi1を再配置するとともに、左下隅にプロパティアイコンSi3を再配置することで、これら移動アイコンSi1とプロパティアイコンSi3とを表示させる。」

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 セッティングモードにおいて、操作入力をタッチパネル16で行うGUI画面50の、ウインドウ表示領域52に表示されたアプリケーションウインドウAwに対する設定を行う方法であって、前記アプリケーションウインドウAwは、実行中のアプリケーションプログラムに対応する四角形のウインドウであり、例えば、アプリケーションウインドウAw4は、ニュース表示アプリケーションのウインドウであり、インターネットから取得したニュースを表示する表示領域Aw4aと、この表示領域Aw4aに表示するニュースを切り換える命令が割り当てられたアイコンAw4b及びAw4cとが配されており、
アクティブモード時に、オプションボタン20の押下により表示されるポップアップメニューから、項目「セッティングモード」が選択されることで、アクティブモードからセッティングモードに切り換わり、GUI画面50に表示されている各アプリケーションウインドウAw上に、各アプリケーションウインドウAwの表示サイズとほぼ同サイズの設定ウインドウSwが重ねて表示され、設定ウインドウSwとその下のアプリケーションウインドウAwとは互いに関連付けられ、設定ウインドウSwに対するウインドウ操作(移動、表示サイズの変更など)がその下のアプリケーションウインドウAwにも適用されるステップと、
前記セッティングモード時に、ユーザが、設定ウインドウSwの設定アイコンSi以外の部分に指を触れたまま、又は移動アイコンSi1の表示部分に指を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことによって、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させる、ステップと、
設定ウインドウSwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させた結果、設定ウインドウSwの一部がウインドウ表示領域52外となることで、その一部とともに各設定アイコンSiの少なくとも一部が表示されなくなる場合に、ウインドウ表示領域52内の設定ウインドウSwの表示されている部分内に設定アイコンSiを再配置し、全ての各設定アイコンSiをウインドウ表示領域52内に表示させる、ステップとを含む方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「操作入力をタッチパネル16で行うGUI画面50の、ウインドウ表示領域52」は、本願発明1の「タッチ画面」に相当する。

イ 引用発明の「ウインドウ表示領域52に表示されたアプリケーションウインドウAw」は、「実行中のアプリケーションプログラムに対応する四角形のウインドウであり、例えば、アプリケーションウインドウAw4は、ニュース表示アプリケーションのウインドウであり、インターネットから取得したニュースを表示する表示領域Aw4a」を有することから、情報を表示するために使用されるといえる。
そうすると、引用発明の「アプリケーションウインドウAw」は、本願発明1の、「情報を表示するために使用され」る「ウィジェット」に相当する。
また、「アプリケーションウインドウAw」は、ウインドウ表示領域52において、四角形のウインドウで表示されることから、ウインドウ表示領域52上で「アプリケーションウインドウAw」が表示されるエリアは、GUI画面50のウインドウ表示領域52を占有するエリアであるといえる。
したがって、引用発明の、「アプリケーションウインドウAw」がウインドウ表示領域52上で表示されるエリアは、本願発明1の、「表示された前記ウィジェットが前記タッチ画面を占有するエリアであ」る「ウィジェットエリア」に相当する。

ウ 引用発明は、「セッティングモード時に、ユーザが、設定ウインドウSwの設定アイコンSi以外の部分に指を触れたまま、又は移動アイコンSi1の表示部分に指を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことによって、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させる」ことから、セッティングモードでは、ウインドウ表示領域52上にて、アプリケーションウインドウAwが表示されるエリアを移動させる、すなわち、アプリケーションウインドウAwが表示されるエリアの位置の調整を行っているといえること、及び、上記ア、イにおける検討から、引用発明の「セッティングモードにおいて、操作入力をタッチパネル16で行うGUI画面50の、ウインドウ表示領域52に表示されたアプリケーションウインドウAwに対する設定を行う方法であって、前記アプリケーションウインドウAwは、実行中のアプリケーションプログラムに対応する四角形のウインドウであ」ることは、本願発明1の「タッチ画面に表示されたウィジェットのウィジェットエリアの調整方法であって、前記ウィジェットは、情報を表示するために使用され、前記ウィジェットエリアは、表示された前記ウィジェットが前記タッチ画面を占有するエリアであ」ることに相当する。

エ 引用発明では、「アクティブモード時に、オプションボタン20の押下により表示されるポップアップメニューから、項目「セッティングモード」が選択されることで、アクティブモードからセッティングモードに切り換わ」ることから、項目「セッティングモード」が選択されたという情報(起動命令)に従って、セッティングモードが起動されるといえる。
そして、項目「セッティングモード」が選択されたという情報(起動命令)は、オプションボタン20の押下及び項目「セッティングモード」の選択によってトリガされるといえるところ、オプションボタン20を押下することや、ポップアップメニューから、項目「セッティングモード」を選択することは、ユーザによる操作であることは明らかである。そうすると、項目「セッティングモード」が選択されたという情報(起動命令)は、ユーザによってトリガされるといえる。
以上より、引用発明の「項目「セッティングモード」が選択されることで、アクティブモードからセッティングモードに切り換わ」ることは、本願発明1の「ユーザによってトリガされる起動命令に従ってウィジェット編集モードに入るステップ」に相当する。

オ 引用発明の「セッティングモード時」は、「GUI画面50に表示されている各アプリケーションウインドウAw上に、各アプリケーションウインドウAwの表示サイズとほぼ同サイズの設定ウインドウSwが重ねて表示され」、「ユーザが、設定ウインドウSwの設定アイコンSi以外の部分に指を触れたまま、又は移動アイコンSi1の表示部分に指を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことによって、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動」させることができるモードである。
すなわち、「セッティングモード」に入ると、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwの、ウインドウ表示領域52上に表示されるエリアにおける、ユーザによる指の摺動という動作が、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwの表示領域を移動するために使用されるといえる。
ここで、ユーザによる指の摺動という動作は、ユーザによってトリガされるスライディングトラックと言い換えることができる。また、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwの表示領域を移動させるために、当該指の摺動という動作の有無を検出、取得していることは自明である。
以上より、引用発明の「前記セッティングモード時に、ユーザが、設定ウインドウSwの設定アイコンSi以外の部分に指を触れたまま、又は移動アイコンSi1の表示部分に指を触れたまま、この指を所望の方向に摺動させて離すことによって、設定ウインドウSwとともにその下のアプリケーションウインドウAwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させる、ステップ」は、本願発明1の「前記ウィジェット編集モードに入ったウィジェット内で前記ユーザによってトリガされるスライディングトラックを取得するステップであって、前記スライディングトラックがウィジェットエリアを調整するために使用される、ステップ」に相当する。

カ 引用発明の「設定ウインドウSwをウインドウ表示領域52内の所望の方向に移動させた結果」は、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwの移動の終了位置であって、指を所望の方向に摺動させて離した位置により決定されるといえるから、本願発明1の、「前記ウィジェットの」移動の「終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定され」ることに相当する。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。

[一致点]
「 タッチ画面に表示されたウィジェットのウィジェットエリアの調整方法であって、前記ウィジェットは、情報を表示するために使用され、前記ウィジェットエリアは、表示された前記ウィジェットが前記タッチ画面を占有するエリアであり、
ユーザによってトリガされる起動命令に従ってウィジェット編集モードに入るステップと、
前記ウィジェット編集モードに入った前記ウィジェット内で前記ユーザによってトリガされるスライディングトラックを取得するステップであって、前記スライディングトラックが前記ウィジェットエリアを調整するために使用される、ステップとを含み、
前記ウィジェットの移動の終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定される、方法。」

[相違点]
本願発明1は、「移動後の前記ウィジェットの前記ウィジェットエリアが画面境界からはみ出る場合、前記ウィジェットの移動の終了位置および前記画面境界の位置に従って調整後のウィジェットエリアを決定するステップであって、」「前記ウィジェットエリアと前記画面境界の内部領域との重複領域のエリアが前記調整後のウィジェットエリアである、ステップ」を含むのに対して、引用発明は、そのようなステップを含まない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。

引用発明は、「セッティングモード時」に「設定ウインドウSwとその下のアプリケーションウインドウAwとは互いに関連付けられ、設定ウインドウSwに対するウインドウ操作(移動、表示サイズの変更など)がその下のアプリケーションウインドウAwにも適用され」、かつ、「設定ウインドウSwの一部がウインドウ表示領域52外となることで、その一部とともに各設定アイコンSiの少なくとも一部が表示されなくなる場合に、ウインドウ表示領域52内の設定ウインドウSwの表示されている部分内に設定アイコンSiを再配置し、全ての各設定アイコンSiをウインドウ表示領域52内に表示させる」ものであるものの、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwの一部が、ウインドウ表示領域52外へ移動した時に、設定ウインドウSw及びその下のアプリケーションウインドウAwが表示される領域を、移動後の設定ウインドウSwとウインドウ表示領域52とが重複する領域となるよう、調整しているものとまではいえない。
また、本願発明1の上記相違点に係る構成は、引用文献1-2のいずれにも記載も示唆もなく、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

そして、本願発明1は、本願発明1の上記相違点に係る構成によって、本願明細書の段落【0037】に記載されるように、「ユーザは、ウィジェットの内部領域内で、スライディングトラックを使用することによって、ウィジェットエリアを調整することができる。ウィジェットの内部領域の面積はウィジェットの境界の面積よりも大きいので、ユーザ操作の確度は改善される」との効果を有するものである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献1-2に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-6について
上記「第4」のとおり、本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明4は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明であり、本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明であって、本願発明1の上記相違点に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものである。

よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-6も、当業者であっても、引用発明、引用文献1-2に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正で補正された請求項1-6は、上記「第6」のとおり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであり、当該構成は、原査定における引用文献A-Fには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-6は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Bに記載された発明、引用文献Cに記載された技術及び引用文献D-Fに記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 その他の当審拒絶理由についての判断
1.当審拒絶理由1について
(1) 理由1(特許法第29条第2項)について
本件補正で補正された請求項1-6は、上記「第6」のとおり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであり、当該構成は、当審拒絶理由1に引用された引用文献a-cには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-6は、当業者であっても、当審拒絶理由1に引用された引用文献aに記載された発明、引用文献bに記載された技術及び引用文献cに記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものではない。

(2) 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1-6が、「ウィジェット」と「ウィジェットエリア」との異同が不明であり、また、請求項1-2、4-5が、「ウィジェットの終了位置」の意味するところが不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年12月13日付け手続補正において、請求項1の「前記ウィジェットエリアは、前記情報を表示するために使用される」との記載を、「前記ウィジェットエリアは、表示された前記ウィジェットが前記タッチ画面を占有するエリアであり、」と補正するとともに、請求項1の「前記ウィジェットの終了位置」との記載を、「前記ウィジェットの移動の終了位置」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2.当審拒絶理由3(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1-6が、移動後のウィジェットのウィジェットエリアが画面境界からはみ出ない場合も含む記載となっているところ、請求項1の「前記ウィジェットの移動の終了位置および画面境界の位置に従って調整後のウィジェットエリアを決定するステップであって、前記ウィジェットの前記終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定され、前記ウィジェットエリアと前記画面境界の内部領域との重複領域のエリアが前記調整後のウィジェットエリアである、ステップ」が、どのような技術的意味を有するのか、不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、請求項1の「前記ウィジェットの移動の終了位置および画面境界の位置に従って調整後のウィジェットエリアを決定するステップであって、前記ウィジェットの前記終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定され、前記ウィジェットエリアと前記画面境界の内部領域との重複領域のエリアが前記調整後のウィジェットエリアである、ステップ」との記載を、「移動後の前記ウィジェットの前記ウィジェットエリアが画面境界からはみ出る場合、前記ウィジェットの移動の終了位置および前記画面境界の位置に従って調整後のウィジェットエリアを決定するステップであって、前記ウィジェットの前記終了位置が前記スライディングトラックのオフセットによって決定され、前記ウィジェットエリアと前記画面境界の内部領域との重複領域のエリアが前記調整後のウィジェットエリアである、ステップ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-28 
出願番号 特願2016-532202(P2016-532202)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 徳浩  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 白井 亮
野崎 大進
発明の名称 ウィジェットエリアの調整方法および調整装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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