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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1356384
審判番号 不服2018-13328  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-05 
確定日 2019-11-14 
事件の表示 特願2014-235120「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016-100140、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月20日の出願であって、平成30年4月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月22日付けで手続補正がされ、同年6月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
平成30年10月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、補正後の請求項1に変更する補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。
そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。(〈補正後の請求項1〉における下線は補正箇所を表す。)

〈補正前の請求項1〉
「【請求項1】
導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、
前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなり、前記押えテープ層は、前記押えテープを前記送電ケーブルの軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されていることを特徴とする送電ケーブル。」

〈補正後の請求項1〉
「【請求項1】
導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備えた送電ケーブルにおいて、
前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり、前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物(ただし、耐火性組成物を除く)からなり、前記押えテープ層は、前記押えテープを前記送電ケーブルの軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されていることを特徴とする送電ケーブル。」

(2)本件補正の適否の判断
本件補正の内の補正事項1は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」に関して、「耐火性組成物」を除くものに限定したものであり、かつ、補正の前後において、請求項1の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

上に述べたように、本件補正の内の補正事項1は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」に関して、「耐火性組成物」を除くものに限定したものである。
しかしながら、「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」に関し、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書、図面(以下、「当初明細書等」という。)には、【請求項1】、明細書の段落【0008】、【0011】、【0021】、【0034】に「酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有する」旨が記載される他、段落【0025】に「燃焼開始後のケーブルの温度上昇抑制や燃え殻固化には、段階的脱水手法がより有効である」ため「重量比で水酸化マグネシウム:水酸化アルミニウム=40:60?60:40であることが好ましい」と、段落【0030】に「必要に応じて、マレイン酸等で変性されたポリオレフィン樹脂やシランカップリング剤、架橋反応促進剤、酸化防止剤、その他の滑剤、着色剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる」と記載されるのみであり、「耐火性組成物」に関しては記載されていない。
また、「難燃性組成物」であり且つ「耐火性組成物」であるものと、「難燃性組成物」であるものの「耐火性組成物」ではないものとを区別する明確な基準が一般にあるものとも認められない。
したがって、請求項1の「前記シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物(ただし、耐火性組成物を除く)からな」るという記載は、「酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物」のうち、如何なるものが「耐火性組成物」に該当するものとして排除されるのか不明であるから、請求項1に係る発明は明確でない。
よって、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定の概要
原査定(平成30年6月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1-3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2009-534479号公報
2.特開2014-7042号公報
3.特開昭61-264034号公報

第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年6月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は上記「第2 補正却下の決定」の「2.補正の却下の決定の理由」の「(1)本件補正の内容」の〈補正前の請求項1〉のとおりの発明である。
なお、本願発明2は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。)
(1)「【0002】
電気ケーブルは、少なくとも1つの絶縁層によって包まれた中心にある伝導体から構成される。そのようなケーブルは、建物の中に広範囲な用途があり、国内製品、オフィス、工業用建物の中のほとんど全ての電気回路の基礎を実際に形成する。いくつかの用途において、例えば、緊急用電源と通信回路は、ケーブルに対して、たとえ炎に曝されても回路の完全性を維持し、機能を継続させることを要求する。そして、このタイプのケーブルには、広い範囲の標準規格が存在する。いくつかのこれらの標準規格を満たすために、ケーブルは、所定の方法で所定の時間(例えば、15分、30分、60分、2時間)指定された温度(例えば、650、750、950、1050℃)で加熱されたとき、一般的に、電気回路の完全性を少なくとも維持することを必要とされる。一部の例では、ケーブルは、加熱段階の間通常の機械的衝撃を加えられる。例えば、ケーブルは、ヒートサイクルの後の段階か、加熱段階の後、ウォータジェット、または、ウォータスプレイを加えられても良い。与えられた標準規格を満たすために、ケーブルは、一般的に、テストの始めから終わりまで回路の完全性を維持することが必要である。特に、例えば、ウォータジェットやウォータスプレイに曝されることによる機械的な影響から生じるような衝撃の間、しかるべく機能することを必要とされるならば、このように絶縁体は、(高温での長い加熱時間の後でさえ)低い電気伝導性を保ち、縮んだり割れたりせずその形状を維持し、機械的に強固であることが重要になる。ケーブルが短時間ウォータスプレイに曝されている間、機能し続けることを必要とされる場合、加熱後に残っている絶縁層は、水の進入を防ぐことも望ましい。」

(2)「【0009】
他の発明を越える本発明の際だった特徴は、加熱により重合状態からセラミック状態に変換することによって保護するもので、ポリマー成分を焼き尽くした後残った無機成分がその組成物の構造の一部として選択され、目的の無機化合物量を最大化するために、ポリマー状態での有用な特性がまだ維持されている間、無機成分の効果、それらの比率、形状、状態の全てが選択される、というものである。
【0010】
本発明者は、無機化合物の「前駆体」を高分子化合物中に加えることで、その高分子化合物を焼成することにより目的の無機化合物の形成を助けることが可能であることを、目的の無機化合物の組成を研究することにより発見した。この1つの例は、酸化可能マグネシウム化合物とシリカ無機化合物を耐火性の組成物に加えることであり、その割合、粒子サイズ、そのサイズの分布は、マグネシウム化合物が、火炎下の定格温度で、その組成物中においてシリカと反応し、無機化合物のフォルステライトを形成することができるようなものである。フォルステライトは、マグネシウムリッチな材料であり、一般的な化学式はMg_(2)SiO_(4)である。そしてそれは、高温(1000℃)で高い電気絶縁性と高い膨張率を有することが知られている。同様の方法で形成することができる、例えば、コージライト(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2))、エンスタタイト(MgSiO_(3))、スピネル(MgAl_(2)O_(4))などの他の無機化合物ももちろんある。
【0011】
1つの実施形態は、耐火性の高分子化合物を提供するもので、この高分子化合物を焼成することにより目的の無機化合物が形成される。この高分子化合物は、
・20-60wt%の有機物ポリマーと、
・酸化してMgOを形成する2-30wt%のマグネシウム化合物と、
・5-30wt%のシリカと、
を含んでいる。
【0012】
シリカは、目的の無機化合物を形成するためにアルカリ性のMgOと反応する酸性酸化物を形成する。
【0013】
好ましい実施形態において、前記高分子化合物は、30-45wt%の有機ポリマーと、2-20wt%のマグネシウム化合物と、5-20wt%のシリカとを含んでいる。良好なポリマー特性を確保するために、高分子化合物中の無機成分のトータルレベルは、ほんの65wt%でしかあってはならない。
【0014】
その組成物は、目的の単一無機化合物または複数の無機化合物次第で、更に適切な粒径と分布を有する30wt%以下のアルミナAl_(2)O_(3)と、他の塩とを含んでも良く、前記他の塩は、揮発性の陰イオンを含むか、さもなくば、例えばアルミナ三水和物のような強く加熱されるとアルミナを形成する塩である。耐火粘土は、アルミナの源であっても良いが、その粘土の組成物は、かなりの量の伝導性(高温でその組成物の電気抵抗を減少させるLi、Na、Kのような)陽イオンとフラックス剤を除去されなければならない。高分子化合物は、Li、Na、Kを含まない方が好ましい。
【0015】
本発明の好ましい形態において、適当な粒径と分布のマグネシウム化合物は、水酸化マグネシウムである。他のマグネシウム化合物、例えば、揮発性の陰イオンを含む塩などは、その組成物に必要とされる機能次第で使用されても良い。これらは、炭酸マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硝酸塩、または、硫酸塩を含んでも良いが、その場合、いくつかの用途のためには電気伝導性がありすぎるか、水分吸収性がありすぎるかのどちらかであるかもしれない。
【0016】
本発明の好ましい形態において、上記組成物は、15wt%未満のアルカリ土類金属のホウケイ酸塩化合物を備え、そのアルカリ土類金属のホウケイ酸塩化合物は、高温でセラミック組成物を形成する。アルカリ土類金属のホウケイ酸塩化合物の量は、全体の組成物の5-15wt%の範囲が好ましい。
【0017】
ホウケイ酸塩ガラス/セラミックを製造する際の問題は、ホウ酸の蒸発によりシリカリッチの表層が生じると言うことである。更に、ホウ酸は、温度が上昇したときにセラミック組成物の粘度の低下をもたらし、それ故、その組成物の寸法安定性の低下をもたらす。三酸化二ホウ素と1価のアルカリ金属(例えば、ナトリウムとカリウム)は、一般的に水溶性であり、それ故、これらの組成物の安定性は、特に高温、そして/または水の傾向がある。
【0018】
本発明の好ましい形態は、アルカリ土類の形態にホウケイ酸塩を加えることによってこの問題を解決する。カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、亜鉛で構成されるグループから選択されるアルカリ土類金属が好ましい。
【0019】
本発明の組成物は、高温、例えば火災(例として、1000℃で30分間)、にさらすことで形成される自立セラミック(self-supporting ceramic)を提供するために有利に調製される。
【0020】
アルカリ土類金属のホウケイ酸塩化合物は、カルシウムホウケイ酸塩であることが好ましい。カルシウムホウケイ酸塩化合物は、ケイ酸カルシウム、そして/または、ホウ酸カルシウム、またはそれらの前駆体を有利に含む。ケイ酸カルシウム(例えば、ウォラストナイト)と、ホウ酸カルシウム(例えば、水ホウ酸石(CaMgB_(6)O_(11)-6H_(2)O)または、灰ホウ石(CaB_(3)O_(4)(OH)_(3)-H_(2)O)の自然源が使用されるが、合成原料は、ガスの揮発や放出を最小限にし、そして/または、高温へのその組成物の曝露下での電気伝導性(1価の不純物、例えばNaそして/またはKに起因する)を増加させるので好まれる。
【0021】
好ましくは、セラミック組成物中のホウ素量は、少なくとも1wt%であり、より好ましくは、少なくとも3wt%であり、更により好ましくは、5wt%である。ホウ素量は、最大12.5wt%以上であって良く、有利な機能とともに組成物が製造されても良い。
【0022】
火災下で高温にさらされた本発明の組成物から形成されたホウケイ酸塩セラミックは、好ましくは、曲げ強度が少なくとも0.3MPaあり、より好ましくは、少なくとも1MPa、最も好ましくは、少なくとも2MPaある。
【0023】
本発明の結果として生じるケーブルは、火災において、ケーブルが炎にさらされることによる機械的、熱的、化学的衝撃をうけ、その結果悪い後遺症が生じても機能を維持することができる。」

(3)「【0037】
本発明の組成物は、不可欠な成分として有機ポリマーを含む。有機ポリマーとは、ポリマーの主鎖として有機ポリマーを有するものである。例えば、シリコンポリマーは、有機ポリマーとは認められない。しかしながら、それらは微量な成分として有機ポリマーと混合されても良く、それらが熱分解したとき、それらは、(セラミックの形成を助ける)微細な粒径の二酸化珪素の源を有益に提供する。有機ポリマーは、例えば、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、架橋エラストマー、ゴム、熱硬化性ポリマーなど、どのようなタイプであっても良い。有機ポリマーは、試薬、プレポリマーを含む前駆体組成物の形で存在しても良く、そして/または、前記試薬と前記プレポリマーは、上述したタイプの少なくとも1つの有機ポリマーを形成するために互いに反応できる。

・・・中略・・・

【0042】
指摘したように、有機ポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、そして(熱可塑性)エラストマーを含むこの発明の用途に適している。
【0043】
そのようなポリマーは、ポリオレフィンのコポリマー、ビニルポリマー、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、スチレンポリマー、ポリアミド、ポリイミド、エポキシド、ポリオキシメチレンアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、フェノール樹脂、そして、メラミン樹脂を備えても良い。
【0044】
実例として、使用に適した熱可塑性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリアクリラート、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロンを含む)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニルポリマーを含む。適したビニルポリマーは、ポリ(塩化ビニル)(PVC)と、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)とを含む。
【0045】
適したポリオレフィンは、アルキレンのコポリマーまたはホモポリマーを含む。適したポリアルキレンの具体例は、以下のオレフィンのポリマーを含む:エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン。これらのポリオレフィンは、技術的によく知られている、過酸化物、錯化触媒、チーグラー-ナッタ触媒を使用して調製されても良い。2以上のこれらオレフィンのコポリマーが用いられても良く、例えば、エチレン-プロピレンコポリマーと、エチレン-プロピレンターポリマー(例えば、EPDM)、コポリマー、エチレンのポリマーと他のコポリマーが、1以上の上記オレフィンとともに用いられても良い。オレフィンは、例えば、ビニル、アクリル、または、ジエン化合物のような他のモノマー種と共重合しても良い。適したエチレンベースのコポリマーの具体例は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン-アルキルアクリル酸塩、好ましくは、エチレン-エチルアクリル酸塩(EEA)または、エチレン-ブチルアクリル酸塩(EBA)、そして、エチレン-フルオロオレフィックモノマー、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)を含む。」

(4)「【0056】
本発明の高分子化合物は、良好な機械的特性を維持する一方、火災の状況下で高温にさらされているとき炎と水をバリアする特性を提供する。高分子化合物は、高分子化合物が高温にさらされているとき(例えば、その組成物が炎にさらされているような)に目的の無機化合物の形成を助ける前駆体の無機成分を含む。
【0057】
特に、高分子化合物は、MgOに酸化されるマグネシウム化合物と、シリカと、任意でアルミナ、または、例えば三水和アルミナ(ATH)などのアルミナに酸化されるアルミナ化合物と、を含む。高温(例えば600℃より高い温度)にさらされているとき、マグネシウムは、無機マトリックス中に拡散し始める。組成物の温度が増加するにつれて、目的の1つの無機化合物または複数の無機化合物は、高分子化合物中で無機前駆体成分から形成される。
【0058】
有機ポリマーの分解の結果として分散したガス層が形成される。高温で、アルカリ性の酸化マグネシウムは、目的の無機化合物(例えばフォルステライトのような)を形成し、凝固し、ガス層がトラップされることによって形成された細孔の周りの壁を強固にするために酸性の二酸化珪素と反応する。
【0059】
マグネシウム化合物のシリカに対する比は、シリカまたは他の目的無機前駆体との反応の後、過剰のMgOがないような値である。水にさらされたとき、過剰のMgOは、組成物の機能特性を低減するかもしれないアルカリ性溶液を形成する。組成物が耐火性ケーブルの一部として使用され、その組成物が水と火にさらされたとき回路の完全性を維持することの要求があるときに、これは特に重要である。
【0060】
目的の無機化合物が2MgO・SiO_(2)の化学式を有するフォルステライトのとき、その組成物は、SiO_(2)に利用可能なMgOのモル比が好ましくはわずか約2から1(44.0%SiO_(2)への56.0wt%MgO)しかないように、酸化してMgOになるマグネシウム化合物を含む。利用可能なSiO_(2)の量が、大多数のMgOがフォルステライト形成のために反応するのを可能にするのに十分な量であることがより好ましい。しかしながら、過剰のSiO2は、エンスタタイト(MgSiO_(3))に変わるフォルステライトをもたらし、このフォルステライトは、目的無機化合物であってもなくても良い。
【0061】
その組成物は、目的無機化合物次第で、適切な粒径と分布の0-30wt%のアルミナAl_(2)O_(3)と、揮発性の陰イオンと一緒に他の塩と、さもなくば、例えばアルミナ三水和物のような、強く加熱されたときアルミナを形成する他の塩と、を更に含んでも良い。その高分子化合物は、5から25wt%のAl_(2)O_(3)を含むことがより好ましい。耐火粘土は、アルミナの源であっても良いが、その粘土の組成物は、伝導性(高温でその組成物の電気抵抗を減少させるLi、Na、Kのような)陽イオンとフラックス剤を除去されなければならない。
【0062】
目的無機化合物が、化学式2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2)を有するコージライトのとき、その組成物は、Al_(2)O_(3)とSiO_(2)に利用可能なMgOのモル比が好ましくはわずか約2:2:5(MgO:Al_(2)O_(3):SiO_(2))(51.4%SiO_(2)、34.8wt%Al_(2)O_(3)への13.8wt%MgO)しかないように、酸化してMgOになるマグネシウム化合物を含む。大多数のMgOがコージライト形成の反応をすることを可能にするのに十分のAl_(2)O_(3)とSiO_(2)があることがより好ましい。Al_(2)O_(3)とSiO_(2)は、その未焼成状態の高分子化合物に良好な耐湿性を与える有利な特性を有する粘度の形で含まれても良い。
【0063】
良好な電気絶縁特性を与える他の目的無機化合物は、アルミナ(Al_(2)O_(3))と、エンスタタイト(MgSiO_(3))と、ステアタイト(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))と、スピネル(MgAl_(2)O_(4))と、を含む。目的の前駆体無機成分は、望ましい目的無機化合物を形成を助けるために選択される一方、セラミック製品中の未反応前駆体材料の有害な効果(例えば、低い耐水性、低い電気抵抗、または低レベルの機械的特性)を最小化する。
【0064】
高分子化合物は、1以上の目的無機化合物が高分子化合物のセラミック化で製造されるように処方されることはいうまでもない。運動学的そして熱力学的制限は、与えられた温度と時間で目的無機化合物を形成するための反応をすることが可能な前駆体の量に影響を与えることによって、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)そしてMgOが完全に1つのまたは複数の目的無機化合物に変わることを妨げる。更に、プロセスの制限は、Al_(2)O_(3)とMgOを形成する化合物とシリカの特定の割合にも影響を与えるかもしれない。例えば、高濃度のシリカが、質の低い処理と物理的特性を有するポリマーの製造を生じさせる一方、高濃度のアルミナは、セラミック強度を低下させるかもしれない。
【0065】
本発明の際だった特徴は、マグネシウム化合物とアルミニウム化合物の割合が、高温でシリカ(または、シリカ源)と反応し、良好な機械的特性、電気抵抗特性、耐火特性、耐水特性を有する目的無機化合物を形成するために選択される。それ故に、本発明の高分子化合物は、炎の進行を妨げる成分を含むだけでなく、炎にさらされる前後とその後の水への曝露の両方において組成物に効果的に機能させる機能特性とともにセラミックの残留組成物も形成する。それ故に、本発明の高分子化合物は、市販するのに魅力的であり、次のような飛躍的なコストセーブを提供する。
・必須の多機能性を有するより簡略化された製品の製造
・製品の故障の減少、例えば電気ケーブル。」

これら引用文献1の記載事項及び関連する図面から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「加熱により重合状態からセラミック状態に変換することによって保護するゲーブルであり、
20-60wt%の有機物ポリマーと、
酸化してMgOを形成する2-30wt%のマグネシウム化合物と、
5-30wt%のシリカと、
を含んでいる高分子化合物を用い、
マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウムであり、
有機物ポリマーはエチレン酢酸ビニル(EVA)である
ケーブル。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、ワイヤーシールドを有する電力ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に従来のワイヤーシールド電力ケーブルの一例を示す。このケーブルは、中心に導体1を有し、その上に内部半導電層2、絶縁体3、外部半導電層4を設け、その上に、半導電性布テープ巻きによるクッション層5を介して、多数の導線(軟銅線)6aを間隔をあけてらせん巻きしたワイヤーシールド6を設け、さらに押さえテープ7を巻いた上で、樹脂シース8を設けたものである(非特許文献1参照)。このケーブルでは、絶縁体3とワイヤーシールド6間に外部半導電層4と半導電性クッション層5が介在しており、それらが適度な導電性をもつことにより、絶縁体3とワイヤーシールド6間での部分放電を防いでいる。」

(2)「【0024】
次に、この実施例の電力ケーブル(22kV、600mm^(2))の試作、試験結果を説明する。各部の材質、サイズ等は次のとおりである。
・導体:円形圧縮型軟銅撚線 直径約30mm
・内部半導電層:半導電性ポリオレフィン樹脂混和物 厚さ1mm
・絶縁体:架橋ポリエチレン 厚さ6mm
・外部半導電層:半導電性ポリオレフィン樹脂混和物 厚さ1mm
・ワイヤーシールド:軟銅線1.2mmφ×40本 らせんピッチ145mm(ワイヤーシールド層心径の3倍) 右巻き 外周長152mm
・テープ:不織布 厚さ0.2mm 幅各種 2枚縦添え
・シース:ポリ塩化ビニル 厚さ3.5mm ケーブル外径56mm」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(1)「酢酸ビニル含量30重量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量が合計で30重量%以上である2種以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物又はこれらエチレン-酢酸ビニル共重合体もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物の部をポリオレフィンで置換えてなる酢酸ビニル含量が30重量%以上の混和物100重量部に、シラン系カップリング剤で表面処理した無機水和物120?250重量部及び無定形シリカ、カーボンブラック又はこれらの混合物5?70重量部を配合したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。」(第1頁左下欄第5-16行)

(2)「本発明の難燃性樹脂組成物は、熱および炎による劣化作用に対する抵抗と優れた電気的性質の独得な組み合わせが、本質的に重要であり、低い発煙密度と非腐蝕性蒸気が望ましいようなビルディング用ワイヤ、器械用ワイヤおよび自動車用ワイヤ等の絶縁に対して特に有用である。」(第1頁右下欄第3-8行)

(3)「即ち、本発明は、酢酸ビニル含量30重量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量が合計で30重量%以上である2種以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物又はこれらエチレン-酢酸ビニル共重合体もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体混合物の一部をポリオレフィンで置換えてなる酢酸ビニル含量が30重量%以上の混和物100重量部に、シランカップリング剤で表面処理した無機水和物120?250重量部及び無定形シリカ、カーボンブラック又はこれらの混合物5?70重量部を配合したことを特徴とする難燃性樹脂組成物を提供する。
本発明においてエチレン-酢酸ビニル共重合体を上述のように特定(特に酢酸ビニル含量を30%以上)した理由は、基材プラスチック中の酢酸ビニル含量が30重量%好ましくは40重量%以上でないと、基材プラスチックの優れた機械特性、柔軟性を維持しつつVW-1燃焼試験に合格させることが不可能であるからである。また、耐熱老化性も酢酸ビニル含量の増加に比例して改善される。更に、本発明においては、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ムーニー粘度が8以上のものが機械特性の点で好ましい。特に10?60のものが好ましい。」(第2頁右下欄第4行-第3頁左上欄第7行)

(4)「本発明においては、シランカップリング剤で表面処理した無機水和物を上記基材プラスチック100重量部に対して120?250重量部加えるが、この下限以下の量では本来の目的の難燃化が不充分となり、また上限を超えると基材プラスチック本来の優れた機械物性、柔軟性が損なわれる。」(第3頁左上欄第14-20行)

(5)「第1表に示す組成物を0.5φの導体に被覆し、これに10Mradの電子線を照射して架橋させることにより、0.9φの被覆電線を得た。
次いで、各被覆電線について第2表に示す試験を行なった。結果を同表に掲げる。
尚、第1表及び第2表中の1)?17)の詳細は次の通りである。
1)酢酸ビニル含量=60%、ムーニー粘度=55、大日本インキ化学社製品(エバスレン410P)
2)酢酸ビニル含量=60%、ムーニー粘度=20、大日本インキ化学社試作製品
3)密度=0.925、MI=0.5、三井石油化学社製品
4)酢酸ビニル含量=20%、東洋曹達社製品(ウルトラセンUE-631)
5)「ハイジライトH-42M」、シランカップリング処理なし、昭和軽金属社製品
6)「ハイジライトH-42」を1重量%のビニルトリエトキシシラン(KBE-1003、信越化学社製品)で表面処理したもの
7)「ハイジライトH-42」を3重量%のKBE-1003で表面処理したもの
8)「キスマ5A」、シランカップリング処理なし、協和化学社製品
9)「キスマ5A」を3重量%のKBE-1003で表面処理したもの
10)「トクシール」、徳山曹達社製品
11)平均粒径5μのカオリンクレー
12)ビスフェノール型エポキシ樹脂、大日本インキ化学社製品(エピクロン-850)
13)JIS C3005
14)JIS K7216
15)被覆電線を1Kmボビンに巻付けて60℃で24時間放置したのち巻き戻すことにより、評価する。
16)JIS K7201
17)10個の試験品のすべてが合格することを以って、合格と評価する。」(第4頁左上欄第11行-同頁左下欄第9行)

(5)「

」(第5頁)

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「エチレン酢酸ビニル(EVA)」である「有機物ポリマー」は、本願発明1の「ベースポリマー」とは、「エチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー」である点で一致する。

イ.引用発明の「水酸化マグネシウム」である「マグネシウム化合物」は、本願発明1の「金属水和物」に相当し、引用発明の「シリカ」は、本願発明1の「シリカ」に相当する。

ウ.したがって、引用発明の「20-60wt%の有機物ポリマー(エチレン酢酸ビニル)と、酸化してMgOを形成する2-30wt%のマグネシウム化合物(水酸化マグネシウム)と、5-30wt%のシリカと、を含んでいる高分子化合物」は、本願発明1の「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」と、「エチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマーに対して、金属水和物及びシリカを含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物」である点で一致する。ただし、本願発明1は、「ベースポリマー」が「酢酸ビニル含有量が50重量%以上」のものであり、「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」は「ベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有」すると特定されているのに対し、引用発明はその旨特定されていない。

エ.引用発明の「ケーブル」は、本願発明1の「送電ケーブル」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点と相違点とがあるといえる。

〈一致点〉
「エチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマーに対して、金属水和物及びシリカを含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた、送電ケーブル。」

〈相違点1〉
本願発明1の「送電ケーブル」は、「導体の外周に形成された内部半導電層と、該内部半導電層の外周に形成された絶縁層と、該絶縁層の外周に形成された外部半導電層と、該外部半導電層の外周にワイヤーを巻き付けて形成された遮蔽層と、該遮蔽層の外周に押えテープを巻き付けて形成された押えテープ層と、該押えテープ層の外周に形成されたシース層とを備え」、「前記送電ケーブルの外径が30mm以上60mm以下であり、前記シース層の厚さが2mm以上4mm以下であり」、「前記押えテープ層は、前記押えテープを前記送電ケーブルの軸方向に沿って螺旋状に重ね巻きして形成されている」ものであるのに対し、引用発明の「ケーブル」は、その旨特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1は、「シース層」が、「酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物」からなるのに対して、引用発明の「ケーブル」に用いられる「高分子化合物」はその旨特定されていない点。


(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
本願の明細書段落【0022】、【0023】、【0029】の記載によれば、相違点2に係る本願発明1の「シース層が、酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物からな」るという構成により、本願発明1は、得られる燃え殻の脆化を防ぎ、良好な難燃性、低発煙性を得(本願の明細書段落【0022】参照)、難燃性が不十分となるのを防ぐとともに、発煙性が悪化するのを防ぎ(段落【0023】参照)、燃焼時に生成するシース層の燃え殻が適度に強靱で、適度に空孔度を所有しているため、送電ケーブル内部への炎の侵入を防ぐ断熱層としての働きと燃焼熱による送電ケーブル内部からのガス成分をシース層側に放出させ不完全燃焼を抑制する働きを得る(段落【0029】参照)ものである。
これに対し、引用文献3には、「難燃性樹脂組成物」として、「酢酸ビニル含量30重量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量が合計で30重量%以上である2種以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物又はこれらエチレン-酢酸ビニル共重合体もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物の部をポリオレフィンで置換えてなる酢酸ビニル含量が30重量%以上の混和物100重量部に、シラン系カップリング剤で表面処理した無機水和物120?250重量部及び無定形シリカ、カーボンブラック又はこれらの混合物5?70重量部を配合」することが記載され、酢酸ビニル含量を30重量%以上とするのは、基材プラスチックの優れた機械特性、柔軟性を維持しつつVW-1燃焼試験に合格させるためであること、無機水和物を基材プラスチック100重量部に対して120?250重量部加えるのは、この下限以下の量では本来の目的の難燃化が不充分となり、また上限を超えると基材プラスチック本来の優れた機械物性、柔軟性が損なわれるためであることが記載され、更に、第1表には、酢酸ビニル含量が60%の実施例が記載されている。
しかしながら、引用文献3に記載された当該実施例は、水酸化物及びシリカの合計がいずれもエチレン酢酸ビニル共重合体100重量部に対して180重量部を越えるものであり、酢酸ビニル含量が50%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を用い、当該共重合体100重量部に対して無機水和物及びシリカを合計で100重量部以上180重量部以下含有させたものではない。
また、引用文献3には、難燃性樹脂組成物に用いられるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量や当該共重合体に対する無機水和物やシリカの含有量を調整することにより、機械特性、柔軟性を維持しつつVW-1燃焼試験に合格させることは記載されているものの、エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量を50%以上とすると共に当該共重合体100重量部に対して無機水和物及びシリカを合計で100重量部以上180重量部以下とすることにより、燃焼時に生成するシース層の燃え殻が適度に強靱で、適度に空孔度を所有し、良好な難燃性、低発煙性を得ることを示唆する記載があるものとは認められない。
更に、引用文献2にも、エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量を50%以上とすると共に当該共重合体100重量部に対して無機水和物及びシリカを合計で100重量部以上180重量部以下とすることにより、燃焼時に生成するシース層の燃え殻が適度に強靱で、適度に空孔度を所有し、良好な難燃性、低発煙性を得ることを示唆する記載はない。
したがって、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できなものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「シース層」が、「酢酸ビニル含有量が50重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマー100質量部に対して、金属水和物及びシリカを合計で100質量部以上180質量部以下含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物」からなるところと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-29 
出願番号 特願2014-235120(P2014-235120)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B)
P 1 8・ 575- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 五十嵐 努
山田 正文
発明の名称 ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用いた送電ケーブル  

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