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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D
管理番号 1356389
審判番号 不服2019-3788  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-20 
確定日 2019-11-12 
事件の表示 特願2014-230121「移動量推定装置、自律移動体、及び移動量の推定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月26日出願公開、特開2016-95590、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月12日の出願であって、平成30年6月26日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成31年1月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5、15に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
同様に、本願請求項6-8に係る発明は以下の引用文献1-5に基づき、本願請求項9-10に係る発明は以下の引用文献1-6に基づき、本願請求項11-12、14に係る発明は以下の引用文献1-7に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、請求項13に係る発明は、原査定の時点では拒絶の理由を発見しない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2012/176249号
2.特開2003-167043号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2001-51040号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平8-179025号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-141108号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2008-250906号公報
7.特開2008-76252号公報


第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年8月28日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、15は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
走行部を有する移動体の移動量を推定する移動量推定装置であって、
前記移動体の周囲に存在する物体を所定の座標上に投影した投影物体像を形成する複数の位置データを取得する位置データ取得部と、
前記移動体が所定の期間に移動したときの移動前又は移動後の一方において取得した複数の第1位置データにより形成される第1投影物体像と、前記移動前又は前記移動後の他方において取得した複数の第2位置データを前記所定の座標上にて平行移動及び/又は回転移動した複数の移動位置データにより形成される移動投影物体像とが一致したときの前記複数の移動位置データが算出されたときの、前記複数の第2位置データからの前記平行移動の移動量及び/又は前記回転移動の移動量を、前記所定の期間に前記移動体が移動した推定移動量として推定する推定部と、
前記複数の第2位置データから前記複数の移動位置データを算出したときの前記所定の座標上における平行移動及び/又は回転移動の移動量であるデータ移動量を前記走行部により前記移動体が前記所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価し、適切と評価された前記データ移動量を前記移動体の移動量として採用する評価部と、
を備える移動量推定装置。」

「【請求項15】
走行部を有する移動体の移動量を推定する移動量の推定方法であって、
前記移動体が所定の期間に移動した時の移動前及び移動後に前記移動体の周囲に存在する物体を所定の座標上に投影した投影物体像を形成する複数の位置データを取得するステップと、
前記移動前又は前記移動後の一方において取得した複数の第1位置データにより形成される第1投影物体像と、前記移動前又は前記移動後の他方において取得した複数の第2位置データを前記所定の座標上にて平行移動及び/又は回転移動した複数の移動位置データにより形成される移動投影物体像とが一致したときの前記複数の移動位置データが算出されたときの、前記複数の第2位置データからの前記平行移動の移動量及び/又は前記回転移動の移動量を、前記所定の期間に前記移動体が移動した推定移動量として推定するステップと、
前記複数の第2位置データから前記複数の移動位置データを算出したときの前記所定の座標上における平行移動及び/又は回転移動の移動量であるデータ移動量を前記走行部により前記移動体が前記所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価するステップと、
適切と評価された前記データ移動量を前記移動体の移動量として採用するステップと、
を含む移動量の推定方法。」

また、本願発明2-14は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであり、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等

1.原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「本発明は、移動体の自己位置を推定する技術に関し、特に、未知環境下で動作する移動体の自己位置を推定する技術に関するものである。」(段落[0001])

イ 「また、レーザレンジファインダで計測される2次元の位置情報のように、複数の計測点により構成された位置情報同士のマッチングを行う手法として、L2ノルムを最小化する手法であるIterative Closest Point(ICP)も知られている(非特許文献5)。
図23は、ICPを用いた場合のマッチングの誤差を示した図である。図23においては、ロボットの移動面を示す2次元の座標空間に、ロボットに搭載された位置センサにより計測された計測点と、移動体の周囲に存在する物体の実際の位置とが重ね合わせてプロットされている。そして、図23の円の点線で囲んだ領域に計測点と実際の位置との誤差が生じている。
このように、非特許文献5に示す手法では、図23に示すように、動的な環境下において多くのマッチング誤差が発生してしまう。」(段落[0007]-[0009])

ウ 「本発明の目的は、移動物体が存在する未知環境下において移動体の自己位置を精度良く推定することができる技術を提供することである。」(段落[0011])

エ 「以下、本発明の実施の形態による自己位置推定装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態による自己位置推定装置が適用された移動体のブロック図である。自己位置推定装置は、位置情報取得部11、一致度算出部12、推定部13、マップ生成部14、及びオドメトリ算出部15を備えている。そして、自己位置推定装置は、位置センサ16により取得された位置情報に基づき、移動体の自己位置を推定する。移動体は、自己位置推定装置、位置センサ16、及び回転量センサ17を備えている。」(段落[0015])

オ 「位置情報取得部11は、位置センサ16により計測された移動体の周辺空間に存在する各物体の位置情報を一定の周期で時系列に取得する。ここで、位置情報は、物体が存在する箇所を示す計測点から構成されている。本実施の形態では、位置センサ16として、レーザレンジファインダが採用されている。そのため、計測点は、位置センサ16の位置を原点とし、位置センサ16の正面方向を基準方向とする2次元のローカル座標空間において、その基準方向からの角度と、原点からの距離とを含む2次元の極座標データにより表される。以下の説明では、ローカル座標空間は、基準方向にy軸が設定され、原点を通り、かつ、基準方向に直交する方向にx軸が設定されているものとする。
一致度算出部12は、位置情報取得部11により第1時刻で取得された第1位置情報を、第1時刻と時系列的に前又は後の時刻である第2時刻で取得された第2位置情報に対して平行移動及び回転移動させたときの第1位置情報と第2位置情報との一致度を算出する。本実施の形態では、第1時刻を時刻tとし、第2時刻を時刻t-1として説明するが、これに限定されず、第1時刻を時刻t-1とし、第2時刻を時刻tとしてもよい。また、時刻tとは、位置センサが時系列に取得する位置情報の取得タイミングを示す。また、必要に応じて、位置情報の取得タイミングをフレームと記述する。
また、本実施の形態では、時刻tの位置情報と時刻t-1の位置情報との一致の度合いを評価する評価値を用いて一致度を表す。具体的には、評価値Eは、式(1)により表される。
E(R,T)=Σ_(i=1)^(n)f(Ra_(i)+T, {b_(j)}) (1)
f(a_(i), {b_(j)})=0(∋j,|a_(i)-b_(j)|≦ε) or 1 (otherwise)
但し、a_(i)は時刻tの位置情報の各計測点を表し、b_(j)は時刻t-1の位置情報の各計測点を表している。また、Rは時刻t-1を基準としたときの時刻tの各計測点の回転移動量を示し、Tは時刻t-1を基準としたときの時刻tの各計測点の平行移動量を示す。iは時刻tの位置情報の計測点を特定するためのインデックスであり、jは時刻t-1の位置情報の計測点を特定するためのインデックスでる。εはレーザレンジファインダの精度を考慮した距離である。nは計測点の個数を示している。
式(1)は、計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときにおいて、計測点a_(i)が計測点b_(j)を中心として距離ε以内に存在しなかった場合、評価値Eに1のペナルティが課されると解釈することができる。したがって、式(1)では評価値Eが小さいほど時刻t-1の位置情報と時刻tの位置情報との一致度が高いことを示す。」(段落[0017]-[0023])

カ 「具体的には、推定部13は、時刻t-1における位置情報において、時刻tにおける位置情報のローカル座標空間を平行移動量Tで平行移動し、かつ、回転移動量Rで回転させ、時刻t-1の位置情報と時刻tの位置情報との評価値Eを算出する処理を繰り返し、評価値Eを最小にする平行移動量T及び回転移動量Rを探索する。
そして、推定部13は、評価値Eを最小にする平行移動量Tを時刻t-1から時刻tまでの移動体の移動量として求め、時刻t-1における移動体の位置に移動量を加えた値を時刻tにおける移動体の位置として求める。
また、推定部13は、評価値Eを最小にする回転移動量Rを時刻t-1から時刻tまでの移動体の向きの変化量として求め、時刻t-1における移動体の向きに変化量を加えた値を時刻tにおける移動体の向きとして求める。
ここで、時刻tにおける移動体の向きとしては、例えば、移動体の周辺空間を示す2次元のグローバル座標空間において、所定の基準方向に対する、時刻tにおける移動体の基準方向の角度を採用することができる。また、時刻tにおける移動体の位置としては、例えばグローバル座標空間における移動体の位置を採用することができる。
また、回転移動量Rとしては、例えば、時刻t-1における移動体の向きに対する時刻tにおける移動体の向きの回転を示す2×2の行列を採用することができる。また、平行移動量Tとしては、例えば、時刻t-1から時刻tまでの移動体の移動量を示すx成分とy成分との値を示す採用することができる。」(段落[0030]-[0034])

キ 「よって、評価値Eの最小値を求めたとしても、評価値EとしてL2ノルムを用いた場合は、移動物体41の影響により、時刻tにおける静止物体42に対して、時刻t-1における静止物体42を一致させることができない。その結果、静止物体42においてマッチング誤差が生じてしまうのである。」(段落[0037])

ク 「図7(B)に示すように移動体は、前方に設けられた左右一対の車輪91,91、後方に設けられた左右一対の車輪92,92を備えている。そして、一対の回転量センサ17は、それぞれ、車輪92,92に取り付けられ、車輪92,92の回転量を計測する。」(段落[0045])

ケ 「モータ95は例えば、車輪92,92に取り付けられた一対のモータにより構成され、コンピュータ94からの信号に基づいて駆動する。左右一対のモータ95は、コンピュータ94からの信号にしたがって、車輪92,92の回転量を変えることで移動体を旋回させる。」(段落[0048])

コ 「この実験では最小の評価値Eを探索する際の探索範囲を、x軸方向、y軸方向にそれぞれプラスマイナス20[cm]とし、角度をプラスマイナス0.3[rad]と設定した。そして、この探索範囲において、1.0[cm]、0.01[rad](=約0.57[deg])刻みで総当たり法で、回転移動量R、平行移動量Tを変化させて、評価値Eの最小値を探索した。」(段落[0097])

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「車輪92、モータ95を有する移動体の移動量を推定する自己位置推定装置であって、
レーザレンジファインダにより計測された前記移動体の周辺空間に存在する各物体を2次元のローカル座標空間上に投影した2次元の極座標データを形成する時刻tの位置情報の計測点a_(i)及び時刻t-1の位置情報の計測点b_(j)を取得する位置情報取得部11と、
前記移動体が時刻t-1から時刻tに移動したときの時刻t-1の位置情報の計測点b_(j)の極座標データと、時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの極座標データとの一致度を表す評価値Eを算出する処理を繰り返し、該評価値Eが最小となったときの、時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの移動量を、時刻t-1から時刻tまでの移動体の移動量として推定する推定部13と、
を備える自己位置推定装置。」


第5 対比
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「車輪92、モータ95」は、本願発明1における「走行部」に相当し、以下同様に、その機能に照らすと、「自己位置推定装置」は「移動量推定装置」に、「レーザレンジファインダにより計測された移動体の周辺空間に存在する各物体」は「移動体の周囲に存在する物体」に、「所定の座標」は「2次元のローカル座標空間」に、「2次元の極座標データ」は「投影物体像」に、「時刻tの位置情報の計測点a_(i)及び時刻t-1の位置情報の計測点b_(j)」は「複数の位置データ」に、「位置情報取得部11」は「位置データ取得部」に、「時刻t-1から時刻t」は「所定の期間」に、「時刻t-1の位置情報の計測点b_(j)の極座標データ」は「移動前又は移動後の一方において取得した複数の第1位置データにより形成される第1投影物体像」に、「時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの極座標データ」は「前記移動前又は前記移動後の他方において取得した複数の第2位置データを前記所定の座標上にて平行移動及び/又は回転移動した複数の移動位置データにより形成される移動投影物体像」に、「時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの移動量」は「前記複数の第2位置データからの前記平行移動の移動量及び/又は前記回転移動の移動量」に、「時刻t-1から時刻tまでの移動体の移動量」は「所定の期間に移動体が移動した推定移動量」に、「推定部13」は「推定部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「一致度を表す評価値Eを算出する処理を繰り返し、該評価値Eが最小となったとき」とは、上記引用文献1の記載事項オに記載されている評価式Eの算出に鑑みれば、本願発明1の「一致したときの前記複数の移動位置データが算出されたとき」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「走行部を有する移動体の移動量を推定する移動量推定装置であって、
前記移動体の周囲に存在する物体を所定の座標上に投影した投影物体像を形成する複数の位置データを取得する位置データ取得部と、
前記移動体が所定の期間に移動したときの移動前又は移動後の一方において取得した複数の第1位置データにより形成される第1投影物体像と、前記移動前又は前記移動後の他方において取得した複数の第2位置データを前記所定の座標上にて平行移動及び/又は回転移動した複数の移動位置データにより形成される移動投影物体像とが一致したときの前記複数の移動位置データが算出されたときの、前記複数の第2位置データからの前記平行移動の移動量及び/又は前記回転移動の移動量を、前記所定の期間に前記移動体が移動した推定移動量として推定する推定部と、
を備える移動量推定装置。」

(相違点)
本願発明1は、「前記複数の第2位置データから前記複数の移動位置データを算出したときの前記所定の座標上における平行移動及び/又は回転移動の移動量であるデータ移動量を前記走行部により前記移動体が前記所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価し、適切と評価された前記データ移動量を前記移動体の移動量として採用する評価部」を有するのに対し、引用発明は、そのような評価部を有していない点。

(2)相違点についての判断
移動体の移動量(検出位置の変化)を算出し、該算出された移動体の移動量を、移動体が所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価し、該算出された移動体の移動量が前記最大走行移動量以上になった場合に不適切と評価することは従来周知の技術的事項(引用文献2の段落[0002]-[0003]、引用文献3の請求項1及び段落[0033]、引用文献4の請求項1及び段落[0009]等を参照。)である。
しかしながら、上記のとおり、引用発明は、移動体が時刻t-1から時刻tに移動したときの時刻t-1の位置情報の計測点b_(j)の極座標データと、時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの極座標データとの一致度を表す評価値Eを算出する処理を繰り返し、該評価値Eが最小となったときの、時刻tの位置情報の計測点a_(i)をR回転移動させ、かつ、T平行移動させたときの移動量(以下、「計測点a_(i)の移動量」という。)を、時刻t-1から時刻tまでの移動体の移動量として推定するもの、すなわち、評価値Eを算出する処理を繰り返し、該評価値Eが最小となったときの計測点a_(i)の移動量を移動体の移動量として採用しているものであり、該計測点a_(i)の移動量を移動体の最大走行移動量との比較で評価するようなことは記載も示唆もされていない。そして、上記のとおり、移動体の移動量(検出位置の変化)を算出し、該算出された移動体の移動量を、移動体が所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価することが周知の技術的事項であるとしても、引用文献1は、処理を繰り返して採用する移動体の移動量を絞り込む際に、評価値Eを算出する処理を繰り返して最小値となる場合を見つけるという手段(以下、「評価値Eによる手段」)を用いているものであるから、引用文献1において移動体の移動量を絞り込むための手段として、評価値Eによる手段を他の手段に置換すること、又は、評価値Eによる手段に他の手段を併用することは、いずれも困難があるというべきである。また、引用発明は、採用すべき移動体の移動量の絞り込みに際して、評価値Eによる手段を用いた絞り込みを行うものであるから、最大走行移動量に基づいた絞り込みを行う従来周知の技術的事項とは、技術分野が異なり、両者を組み合わせることは困難であるともいえる。結局、引用発明に上記従来周知の技術的事項を適用することには動機付けがないというべきである。
また、引用文献1には、「この実験では最小の評価値Eを探索する際の探索範囲を、x軸方向、y軸方向にそれぞれプラスマイナス20[cm]とし、角度をプラスマイナス0.3[rad]と設定した。」(引用文献1の上記記載事項コ)と記載され、引用発明は、最小の評価値Eを探索する際の探索範囲を予め制限しているものであるのに対して、本願発明1は、相違点に係る本願発明1の構成を有することにより、移動ロボットの移動速度などからは考えられないような位置に到達したと推定されてしまう場合があるとの課題(本願の段落[0004])を解決できるものであり、本願発明1は、引用発明及び従来周知の技術的事項からは、予測し得ない作用効果を奏するものと認められる。

よって、当業者といえども、引用発明及び従来周知の技術的事項から、相違点に係る本願発明1を容易に想到することはできない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-14について
本願発明2-14も、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであり、本願発明1の相違点と同じ相違点を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明15について
本願発明15の「移動量の推定方法」の発明は実質的に本願発明1の「移動量推定装置」のカテゴリー違いの発明であり、「前記複数の第2位置データから前記複数の移動位置データを算出したときの前記所定の座標上における平行移動及び/又は回転移動の移動量であるデータ移動量を前記走行部により前記移動体が前記所定の期間に走行可能な最大走行移動量に基づいて評価するステップ」との構成を備え、実質的に本願発明1の相違点と同じ相違点を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-29 
出願番号 特願2014-230121(P2014-230121)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大野 明良  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 小川 悟史
大山 健
発明の名称 移動量推定装置、自律移動体、及び移動量の推定方法  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
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