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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1356400
審判番号 不服2018-4879  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2019-10-24 
事件の表示 特願2013-117339「電力変換システムおよびコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月15日出願公開、特開2014-235915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月3日に出願したものであって、平成29年4月21日付け拒絶理由通知に対して同年7月10日付けで手続補正がなされたが、同年12月26日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成30年4月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、令和1年5月20日付け当審の拒絶理由通知に対して同年7月22日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和1年7月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
電力変換装置と、当該電力変換装置にケーブルを介して接続されており、蓄電池を搭載した電動車両の接続口に着脱可能に装着されることによって前記電力変換装置と前記蓄電池との間に給電路を形成するコネクタとを具備し、
前記コネクタが前記接続口へ装着される際に点灯して前記接続口を照明するように前記コネクタに設けられた照明部と、
前記照明部の点灯状態を制御する制御部と、
前記接続口への前記コネクタの装着状態を検出する第1の検出部と、
前記接続口への非装着時に前記コネクタを保持するホルダと、
前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出する第2の検出部とを備え、
前記第2の検出部は、前記ホルダから前記コネクタに作用する反力を用いて前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出し、
前記制御部は、
前記第1の検出部で前記コネクタの装着が検出されると前記照明部を消灯させ、
前記第2の検出部で前記コネクタの非保持が検出されると前記照明部を点灯させるように構成されている
ことを特徴とする電力変換システム。」

第3 令和1年5月20日付け当審の拒絶理由通知の概要

(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1について、引用文献1ないし4
・請求項2ないし4、13ないし15について、引用文献1ないし5
・請求項5ないし7について、引用文献1ないし6
・請求項8及び9について、引用文献1ないし7
・請求項10ないし12について、引用文献1ないし8

引用文献1:特開2012-19636号公報
引用文献2:特開2010-283996号公報
引用文献3:特開2013-99035号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2011-254642号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2008-210621号公報
引用文献6:特開平11-18306号公報
引用文献7:特開2009-195092号公報
引用文献8:特開2011-15548号公報

第4 引用文献

1.引用文献1(特開2012-19636号公報)
引用文献1には、「車両用充電装置」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(1)「【0029】
(第1実施形態)
第1実施形態は、本発明に係る車両用充電装置を、例えば電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車載バッテリに充電するための車両用充電装置100Aとしたものであり、以下、図1、図2を用いてその基本構成について説明する。尚、図1は車両用充電装置100Aを示す概略図、図2は車両用充電装置100Aにおける充電要領を示すフロー図である。
【0030】
車両用充電装置(以下、充電装置)100Aは、充電用施設としての充電ステーションに設けられ、急速充電を行うものであり、利用者は、短時間(例えば30分)での充電が必要になると充電ステーションに車両10を乗り入れ、そこで充電を行うようになっている。充電ステーションは、例えば全国の高速道路サービスエリア、ガソリンスタンド、自動車販売店、有料駐車場、ショッピングセンター等に設置されている。
【0031】
充電装置100Aは、充電器110を備えており、この充電器110は、電源制御回路部111、充電コネクタ112、コネクタホルダ113、制御部114、および充電器側通信部115等を有している。また、充電の対象となる車両10には、充電時に必要とされる各種機器が搭載されている。各種機器は、充電リッド121、車両側充電器122、バッテリ123、車両側制御部124、車両側通信部125、およびシステム機器126等である。」

(2)「【0032】
まず、充電器110の各構成について順に説明する。
【0033】
電源制御回路部111は、充電ステーションの充電器110に供給される系統電力(例えば3相交流200V)を直流電力(例えば直流500V)に変換すると共に、バッテリ123の充電量に応じた電流量となるように調整しながら、変換した電力を充電コネクタ112に供給するAC-DC変換機能を備えている。」

(3)「【0034】
充電コネクタ112は、電源制御回路部111によって変換された電力をバッテリ123に供給する電力供給部であり、ケーブル112aによって電源制御回路部111から所定長さ分、離れた位置に取り回しができるように接続されている。上記電源制御回路部111、ケーブル112a、および充電コネクタ112によって、充電ラインが形成されている。
【0035】
充電コネクタ112は、充電が実施されないとき(以下、非充電時)は、利用者によってコネクタホルダ113に保持されるようになっている。また、充電コネクタ112は、充電が実施されるとき(以下、充電時)には、利用者によってコネクタホルダ113から外され、車両10の充電リッド121に嵌合されて、車両側充電器122を介してバッテリ123に接続されるようになっている。図1中の破線で示される充電コネクタ112は充電時の状態を示し、また実線で示される充電コネクタ112は非充電時の状態を示している。」

(4)「【0036】
更に、充電コネクタ112の先端部には、図示しないコネクタ照明が設けられており、このコネクタ照明は、後述する制御部114によって点灯、あるいは消灯が制御されるようになっている。」

(5)「【0037】
コネクタホルダ113は、非充電時において充電コネクタ112を保持する保持部である。コネクタホルダ113は、後述する制御部114と共に、利用者による充電が、必要な状態にあるか否かを検出する検出手段を構成している。つまり、コネクタホルダ113は、充電を行うために充電コネクタ112が利用者によってコネクタホルダ113から外されると、利用者が「充電を実施する状況にある」、つまり充電器110にとっては「充電が必要とされる状況にある」ことを示す充電必要信号を制御部114に出力するようになっている。充電必要信号は、本発明の充電情報に対応する。」

(6)「【0049】
まず、ステップS100で、充電器110の制御部114は、充電コネクタ112がコネクタホルダ113から外されたか否かを判定する。利用者がバッテリ123への充電を行うために、充電コネクタ112をコネクタホルダ113から外すと、制御部114は、コネクタホルダ113から出力される充電必要信号によって、充電コネクタ112がコネクタホルダ113から外されたことを検出し、充電が必要とされる状況にあると判定する。すると、ステップS50に示す充電前シーケンスに基づいて、車両10側および充電器110側において、それぞれ充電の前段階として必要とされる準備が実行される。
・・・(中略)・・・
【0053】
一方、充電器110の制御部114は、充電器110側で必要とされる充電の準備を行う。ここでは、ステップS110で、電源制御回路部111、ケーブル112a、および充電コネクタ112の間、つまり充電ラインを、充電が可能となる活線状態にする。また、ステップS120で、充電コネクタ112に設けられたコネクタ照明を点灯させる。
【0054】
そして、ステップS130で、利用者によって充電コネクタ112が充電リッド121に接続され、ステップS140で、充電が開始される。
・・・(中略)・・・
【0059】
更に、充電器110側において必要とされる充電の準備として、充電ラインを活線状態にすること、コネクタ照明を点灯させことを行っており、上記と同様に、従来では、利用者自らが行わなければならない準備項目が自動で行われることになるので、利用者が受ける充電の際の煩わしさを軽減することができる。」

(7)「【0111】
図16において、充電器110によって車両10に充電が実施されている間は、安全を図るために、制御部114は、車両10に対して、車両10の始動を禁止する車両始動不可コマンドを発信している。つまり、車両10側では、例えば、パワースイッチがロック位置に維持されて、始動できない状態となる。そして、充電が完了すると、制御部114は、ステップS800で、充電コネクタ112が車両10の充電リッド121から取り外されたか否かを判定し、取り外されたと判定すると、ステップS810で、所定時間としてt1まで計時するためのタイマーをスタートさせる。」

(8)図1によると、充電コネクタは、電源制御回路部にケーブルを介して接続されているものである。

・上記(1)によれば、車両用充電装置は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両のバッテリに充電するためものである。また車両用充電装置は、電源制御回路部、充電コネクタ、コネクタホルダ及び制御部を有しているものである。
・上記(2)によれば、電源制御回路部は、AC-DC変換機能を備えているものである。
・上記(3)によれば、充電コネクタは、電源制御回路部によって変換された電力をバッテリに供給するものである。また充電コネクタは、車両の充電リッドに嵌合してバッテリに接続するものである。
・上記(4)によれば、コネクタ照明は、充電コネクタの先端部に設けられるものである。
・上記(5)によれば、コネクタホルダは、非充電時において充電コネクタを保持するものである。
・上記(6)によれば、制御部は、充電コネクタがコネクタホルダから外されたことを検出し、充電の準備としてコネクタ照明を点灯させ、その後、利用者によって充電コネクタが充電リッドに接続されるものである。
・上記(7)によれば、充電コネクタは、充電が完了すると充電リッドから取り外すものである。
・上記(8)によれば、充電コネクタは、電源制御回路部にケーブルを介して接続されているものである。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両のバッテリに充電する車両用充電装置であって、
前記車両用充電装置は、電源制御回路部、充電コネクタ、コネクタホルダ及び制御部を有しており、
前記電源制御回路部は、AC-DC変換機能を備え、
前記充電コネクタは、前記電源制御回路部にケーブルを介して接続されており、前記車両の充電リッドに嵌合して前記バッテリに接続し、前記電源制御回路部によって変換された電力を前記バッテリに供給し、充電が完了すると前記充電リッドから取り外し、
前記コネクタホルダは、非充電時において前記充電コネクタを保持し、
前記制御部は、前記充電コネクタが前記コネクタホルダから外されたことを検出し、充電の準備としてコネクタ照明を点灯させ、その後、利用者によって前記充電コネクタが前記充電リッドに接続され、
前記コネクタ照明は、前記充電コネクタの先端部に設けられる、
車両用充電装置。」

2.引用文献2(特開2010-283996号公報)
引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

「【0030】
なお、充電アダプタ11のコネクタ部14にマイクロスイッチ(図示せず)を取り付け、コネクタ部14が移動機21の差込口23へ挿入されたときの接触圧力でそのマイクロスイッチがOFFするように構成してもよい。これによって、充電アダプタ11のコネクタ部14が移動機21の差込口23へ挿入された後はマイクロスイッチがOFFとなり、照明用電源部16から照明部12への電源回路を遮断される。従って、充電アダプタ11のコネクタ部14が移動機21の差込口23へ挿入されると照明部2は消灯されるので、省電力化を図ることができる。この状態において、AC/DC変換部7からコネクタ部4へ供給された例えばDC12vの電源は差込口23から移動機8へ供給されるので、充電アダプタ1によって移動機8を継続的に充電することができる。」

上記【0030】によれば、引用文献2には、「充電アダプタのコネクタ部にマイクロスイッチを取り付け、コネクタ部が差込口へ挿入された後はマイクロスイッチがOFFとなり、照明部への電源回路を遮断され、照明部は消灯されて、省電力化を図る」技術事項が記載されている。

第5 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「電源制御回路部」は、AC-DC変換機能を備えるものであるから、本願発明の「電力変換装置」に相当する。

(2)引用発明1の「電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両」、「バッテリ」、「充電コネクタ」、「充電リッド」及び「嵌合」は、本願発明の「電動車両」、「蓄電池」、「コネクタ」、「接続口」及び「装着」にそれぞれ相当する。また引用発明1の「前記電源制御回路部によって変換された電力を前記バッテリに供給」することは、本願発明の「前記電力変換装置と前記蓄電池との間に給電路を形成する」ことに相当する。
そして、引用発明1の充電コネクタが「前記車両の充電リッドに嵌合して前記バッテリに接続」することは、充電が完了すると充電コネクタを充電リッドから取り外すものであるから、充電コネクタが充電リッドに着脱可能に嵌合されるものと認められる。よって、本願発明の「電動車両の接続口に着脱可能に装着されること」に相当する。
してみると、引用発明1の「前記電源制御回路部にケーブルを介して接続されており、前記車両の充電リッドに嵌合して前記バッテリに接続し、前記電源制御回路部によって変換された電力を前記バッテリに供給し、充電が完了すると前記充電リッドから取り外」す「充電コネクタ」は、本願発明の「当該電力変換装置にケーブルを介して接続されており、蓄電池を搭載した電動車両の接続口に着脱可能に装着されることによって前記電力変換装置と前記蓄電池との間に給電路を形成するコネクタ」に相当する。

(3)本願発明は「前記接続口への前記コネクタの装着状態を検出する第1の検出部」を備えるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

(4)引用発明1の「非充電時において前記充電コネクタを保持」する「コネクタホルダ」は、非充電時が充電コネクタを充電リッドへ嵌合しない時を指すものと解されるから、本願発明の「前記接続口への非装着時に前記コネクタを保持するホルダ」に相当する。

(5)引用発明1の「前記充電コネクタが前記コネクタホルダから外されたことを検出し、充電の準備としてコネクタ照明を点灯させ」る「制御部」は、本願発明の「前記照明部の点灯状態を制御する制御部」、「前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出する第2の検出部」及び「前記第2の検出部で前記コネクタの非保持が検出されると前記照明部を点灯させる」「制御部」である点で共通するといえる。
ただし、第2の検出部について、本願発明は「前記ホルダから前記コネクタに作用する反力を用いて前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出」するのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。
また、制御部について、本願発明は「前記第1の検出部で前記コネクタの装着が検出されると前記照明部を消灯させ」るのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

(6)引用発明1の「コネクタ照明」は、制御部により点灯された後に、利用者によって充電コネクタが充電リッドに接続されるから、本願発明の「前記コネクタが前記接続口へ装着される際に点灯」する「照明部」に相当する。また引用発明1の「コネクタ照明」は、充電コネクタの先端部に設けられるものであるから、当然、充電コネクタが充電リッドに嵌合する際に該充電リッドが照明されると認められる。
よって、引用発明1の「コネクタ照明」は、本願発明の「前記コネクタが前記接続口へ装着される際に点灯して前記接続口を照明するように前記コネクタに設けられた照明部」に相当する。

(7)引用発明1の「車両用充電装置」は、AC-DC変換機能を備える電源制御回路部を有するものであるから、本願発明の「電力変換システム」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「 電力変換装置と、
当該電力変換装置にケーブルを介して接続されており、蓄電池を搭載した電動車両の接続口に着脱可能に装着されることによって前記電力変換装置と前記蓄電池との間に給電路を形成するコネクタとを具備し、
前記コネクタが前記接続口へ装着される際に点灯して前記接続口を照明するように前記コネクタに設けられた照明部と、
前記照明部の点灯状態を制御する制御部と、
前記接続口への非装着時に前記コネクタを保持するホルダと、
前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出する第2の検出部とを備え、
前記制御部は、
前記第2の検出部で前記コネクタの非保持が検出されると前記照明部を点灯させるように構成されている
ことを特徴とする電力変換システム。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は「前記接続口への前記コネクタの装着状態を検出する第1の検出部」を備えるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
第2の検出部について、本願発明は「前記ホルダから前記コネクタに作用する反力を用いて前記ホルダでの前記コネクタの保持状態を検出」するのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
制御部について、本願発明は「前記第1の検出部で前記コネクタの装着が検出されると前記照明部を消灯させ」るのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。

(1)<相違点1>及び<相違点3>について
引用文献2には、「充電アダプタのコネクタ部にマイクロスイッチを取り付け、コネクタ部が差込口へ挿入された後はマイクロスイッチがOFFとなり、照明部への電源回路を遮断され、照明部は消灯されて、省電力化を図る」技術事項が記載されている。
引用発明1の車両用充電装置、引用文献2の充電アダプタは、いずれも充電に用いる照明を有した装置であり、さらに省電力化を図ることは当該技術分野において自明な課題である。
したがって、引用発明1の車両用充電装置において、前記自明な課題を考慮して、引用文献2に記載された技術事項を採用して相違点1及び3の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

ここで請求人は、令和1年7月22日付け意見書にて「しかしながら、引用文献2は、携帯電話機等の移動機の充電アダプタの発明であって、電動車両の接続口に装着するコネクタではありません。引用文献2に『特許文献1』として挙げられているものも、車両のパワーソケットから携帯電話機に給電する携帯電話用のカーチャージャに関するものであって、電動車両には何ら関係しません。つまり、引用文献2は、そもそも移動機を充電するための技術であり、電動車両に搭載された蓄電池を充電する技術ではなく、引用文献2に関しては、そもそも本願発明に対する引例適格性を欠くものと思料致します。そして、電動車両用の給電システムとは技術分野及び技術的課題が異なる引用文献2を、引用文献1に組み合わせることには動機付けがなく、結果的に、本願発明は、引用文献1-4に対して進歩性を有するものと思料致します。」旨を主張している。
しかしながら、単に充電する対象が引用文献1(車両のバッテリ)と引用文献2(移動機)とで異なることをもって、引用文献2に記載された技術事項を引用発明1に組み合わせる動機付けがないとする根拠にはなり得ず、請求人の上記主張は採用できない。

(2)<相違点2>について
コネクタに作用する反力を用いて該コネクタの保持状態を検出することは、例えば特開2012-154111号公報(段落【0024】及び図4を参照。着脱検出器47は各種のスイッチを採用することができ、給電コネクタ39が給電コネクタホルダー45に装着されているときには着脱検出器47の信号がオンとなり、給電コネクタ39がこれらから外れると着脱検出器47の信号がオフとなるので、給電コネクタホルダー45からの反力により、着脱検出器47の信号をオンしていることは明らかである。)に記載されているように、周知の技術事項である。
そうすると、充電コネクタがコネクタホルダから外されたことを検出するための構成をどのようなものとするかはコストや検出の精度等を考慮して当業者が適宜選択すれば良いところ、引用発明1の充電コネクタの保持状態を検出する手段として、周知の技術事項を採用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献1、2及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-23 
結審通知日 2019-08-27 
審決日 2019-09-10 
出願番号 特願2013-117339(P2013-117339)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 佐々木 洋
須原 宏光
発明の名称 電力変換システムおよびコネクタ  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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