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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1356410
審判番号 不服2018-10080  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-24 
確定日 2019-10-24 
事件の表示 特願2014- 22861「アライメント方法、電子部品の接続方法、接続体の製造方法、接続体、異方性導電フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-149451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月7日に出願したものであって、平成29年9月29日付け拒絶理由通知に対して同年12月11日付けで手続補正がなされたが、平成30年4月18日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年7月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成30年7月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年7月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成30年7月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、
本件補正前に、
「【請求項1】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を搭載し、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせるアライメント方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れているアライメント方法。
【請求項2】
上記撮像した画像において、上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、規則的に断続的に表れている請求項1記載のアライメント方法。
【請求項3】
配列した上記導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積密度が50%未満である請求項1又は2に記載のアライメント方法。
【請求項4】
上記単位面積が、0.7×0.7mm若しくは略同等の面積である、請求項3記載のアライメント方法。
【請求項5】
上記接着剤は、上記導電性粒子が配列した上記単位面積が連続的に形成された長尺フィルムである請求項1?4のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項6】
上記導電性粒子の1個あたりの単位面積は0.7?1300μm^(2)である請求項1?5のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項7】
上記撮像した画像において、上記接着剤の上記導電性粒子間領域が65%以上である請求項1?6のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項8】
上記撮像した画像において、上記導電性粒子の面積占有率は35%以内である請求項1?6のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項9】
上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークを撮像する撮像カメラの分解能は上記導電性粒子の平均粒径以下である請求項1?8のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項10】
上記基板側アライメントマークは、上記接着剤が設けられる位置に形成されている請求項1?9のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項11】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を搭載し、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマークと上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせた後、上記電子部品を接続する電子部品の接続方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れている電子部品の接続方法。
【請求項12】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を搭載し、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマークと上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせた後、上記電子部品を接続する上記透明基板に上記電子部品が接続された接続体の製造方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れている接続体の製造方法。
【請求項13】
平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルムにおいて、
単位面積当たりの上記導電性粒子の面積密度が50%未満とされ、
透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、上記透明基板の裏面側から電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、
上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる異方性導電フィルム。
【請求項14】
上記撮像した画像において、上記線分が、規則的に断続的に表れている請求項13記載の異方性導電フィルム。
【請求項15】
上記単位面積が、0.7×0.7mm若しくは略同等の面積である、請求項13又は14記載の異方性導電フィルム。
【請求項16】
上記導電性粒子が配列した上記単位面積が連続的に形成された請求項13?15のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
【請求項17】
請求項13?16のいずれか1項に記載の異方性導電フィルムを用いて透明基板と電子部品とが接続された接続体。」 とあったところを、

本件補正により、
「【請求項1】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を配置し、上記接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を対向させ、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせるアライメント方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れ、
配列した上記導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積占有率が1%以上35%以下であるアライメント方法。
【請求項2】
上記撮像した画像において、上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、規則的に断続的に表れている請求項1記載のアライメント方法。
【請求項3】
上記接着剤は、上記導電性粒子が配列した上記単位面積が連続的に形成された長尺フィルムである請求項1又は2に記載のアライメント方法。
【請求項4】
上記導電性粒子の1個あたりの単位面積は0.7?1300μm^(2)である請求項1?3のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項5】
上記撮像した画像において、上記接着剤の上記導電性粒子間領域が65%以上である請求項1?4のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項6】
上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークを撮像する撮像カメラの分解能は上記導電性粒子の平均粒径以下である請求項1?5のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項7】
上記基板側アライメントマークは、上記接着剤が設けられる位置に形成されている請求項1?6のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項8】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を配置し、上記接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を対向させ、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマークと上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせた後、上記電子部品を接続する電子部品の接続方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れ、
配列した上記導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積占有率が1%以上35%以下である電子部品の接続方法。
【請求項9】
基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を配置し、上記接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を対向させ、
上記透明基板の裏面側から上記基板側アライメントマークと上記部品側アライメントマークを撮像し、
上記撮像した画像から上記基板側アライメントマーク及び上記部品側アライメントマークの位置を調整し、上記透明基板に対する上記電子部品の搭載位置を合わせた後、上記電子部品を接続する上記透明基板に上記電子部品が接続された接続体の製造方法において、
上記接着剤は、平面視において上記導電性粒子が規則的に配列され、
上記撮像した画像において、上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記基板側アライメントマーク又は上記部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、
上記仮想線分に沿って、上記導電性粒子間から臨む上記線分が、上記仮想線分の25%以上の長さで表れ、
配列した上記導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積占有率が1%以上35%以下である接続体の製造方法。
【請求項10】
平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルムにおいて、
単位面積当たりの上記導電性粒子の面積占有率が1%以上35%以下とされ、
透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、上記透明基板の裏面側から上記異方性導電フィルムを介して対向する電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、
上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる異方性導電フィルム。
【請求項11】
上記撮像した画像において、上記線分が、規則的に断続的に表れている請求項10記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
上記導電性粒子が配列した上記単位面積が連続的に形成された請求項10又は11に記載の異方性導電フィルム。
【請求項13】
請求項10?12のいずれか1項に記載の異方性導電フィルムを用いて透明基板と電子部品とが接続された接続体。」 とするものである。下線は補正箇所を示す。

上記の補正は、
・本件補正前の請求項3、請求項4、請求項8および請求項15を削除し、
・透明基板への電子部品の接続に関して、「透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を搭載し」を「透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を配置し、上記接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を対向させ」と限定し(本件補正の請求項1、8、9)、
・接着剤に含有される導電性粒子について、「配列した上記導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積占有率が1%以上35%以下である」と限定し(本件補正の請求項1、8、9)、
・単位面積当たりの導電性粒子について、「面積密度が50%未満」を「面積占有率が1%以上35%以下」と限定し(本件補正の請求項10)、
・電子部品のアライメントマークの撮像に関して、「上記透明基板の裏面側から電子部品のアライメントマークを撮像したときに」を「上記透明基板の裏面側から上記異方性導電フィルムを介して対向する電子部品のアライメントマークを撮像したときに」と限定し(本件補正の請求項10)、
・請求項の削除に伴い、項番を整理(本件補正の請求項3ないし13)
したものである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項10に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2013/089199号(以下「引用文献1」という。)には、「異方導電性フィルム」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「[0001] 本発明は、半導体チップの電極と相対する回路基板上の電極同士を電気的に接続するための、異方導電性フィルムを予め半導体チップに備えた異方導電性フィルム付き半導体チップ、相対する回路基板の電極同士を電気的に接続するために用いる半導体チップ製造用の、異方導電性フィルム付き半導体ウェハ、及び半導体チップの電極と相対する回路基板上の電極同士が接着剤により電気的に接続された半導体装置に関する。
背景技術
[0002] 異方導電性フィルムは、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルムであり、半導体チップ電極と相対する回路基板電極との間の接続に用いられている。異方導電性フィルムは、例えば、有機基板と半導体チップ、ガラス基板と半導体チップとの接続用として、主としてフラットパネルディスプレイ分野で広範に用いられている。」

イ.「[0059] 導電性粒子の分散配列は、近接する導電性粒子の平均粒子間隔が導電性粒子の平均直径の1.0倍以上20倍以下であることが好ましく、2倍以上10倍以下であることがより好ましい。1.0倍以上であれば、短絡が起こり難い点で、好ましく、他方、20倍以下であれば、接続安定性に必要な導電性粒子数を確保し易い点で、好ましい。
[0060] 導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列していることが好ましい。略正三角形状に分散配列している場合、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近く、接続電極上に位置する導電性粒子数は、ほぼ一定であり、接続部の導電性粒子数のバラツキが小さく、接続抵抗が安定化するため、好ましい。」

ウ.「[0093] (接続抵抗試験)
厚み0.5mmの無アルカリガラス上に、半導体チップのアルミ薄膜上の金バンプが隣接するアルミ薄膜上の金バンプと対になる位置関係で接続されるようにタンタル配線(0.8μm)、次いで、インジウム錫酸化物膜(1400Å)の接続パッド(横42μm、縦120μm)を形成した。20個の金バンプが接続される毎に前記接続パッドにインジウム錫酸化物薄膜の引き出し配線を形成し、引き出し配線上はアルミチタン薄膜(チタン1%、3000Å)を形成し、接続評価基板とした。この接続評価基板の接続パッドと異方導電性フィルム付き半導体チップの金バンプを位置合わせし、又は、接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着した後、接続評価基板の接続パッドと半導体チップの金バンプを位置合わせし、190℃、10秒間、40MPaの荷重で圧着し、半導体装置を作成した。圧着後、前記引き出し配線間(金バンプ20個のデイジーチェイン)の抵抗値四端子法の抵抗計で抵抗測定し、初期接続抵抗値とした。この接続抵抗測定基板を85℃、85%RHの環境下、500時間保持し、取り出して25℃、1時間放置後の接続抵抗値を測定し、信頼性試験後接続抵抗値とした。」

エ.「[0095] (位置合わせ性評価)
圧着装置にて圧着を行った際、アライメントマーク読み取りエラーがでた場合をNG、エラーがでない場合をOKとして評価した。エラーが出た場合、繰り返し操作を行い、正常圧着できるまでの回数を計測した。」

・上記アによれば、半導体チップの電極と相対する回路基板上の電極同士を電気的に接続するための、異方導電性フィルムであって、異方導電性フィルムは、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルムであり、ガラス基板と半導体チップとの接続用として用いられるものである。
・上記イによれば、導電性粒子の分散配列は、近接する導電性粒子の平均粒子間隔が導電性粒子の平均直径の1.0倍以上であれば、短絡が起こり難く、他方、20倍以下であれば、接続安定性に必要な導電性粒子数を確保し易いものである。
また、導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近いものである。
・上記ウによれば、無アルカリガラス上に、配線、接続パッド、引き出し配線を形成し、接続評価基板とし、接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着した後、接続評価基板の接続パッドと半導体チップの金バンプを位置合わせし、圧着し、半導体装置を作成するものである。
・上記エによれば、圧着装置にて圧着を行った際、アライメントマーク読み取りエラーがでない場合をOKとして評価するものである。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「半導体チップの電極と相対する回路基板上の電極同士を電気的に接続するための、異方導電性フィルムであって、
異方導電性フィルムは、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルムであり、ガラス基板と半導体チップとの接続用として用いられ、
導電性粒子の分散配列は、近接する導電性粒子の平均粒子間隔が導電性粒子の平均直径の1.0倍以上であれば、短絡が起こり難く、他方、20倍以下であれば、接続安定性に必要な導電性粒子数を確保し易く、
導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近いものであり、
無アルカリガラス上に、配線、接続パッド、引き出し配線を形成し、接続評価基板とし、
接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着した後、接続評価基板の接続パッドと半導体チップの金バンプを位置合わせし、圧着し、半導体装置を作成し、
圧着装置にて圧着を行った際、アライメントマーク読み取りエラーがでない場合をOKとして評価する、異方導電性フィルム。」

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「異方導電性フィルム」は、「導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近」いから、本願補正発明の「平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルム」に相当する。

(2)本願補正発明の異方性導電フィルムは「単位面積当たりの上記導電性粒子の面積占有率が1%以上35%以下とされ」るのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

(3)引用発明1の「接続評価基板」は、「無アルカリガラス」の回路基板であり、透明であることは明白であるから、本願補正発明の「透明基板」に相当する。

(4)引用発明1の「接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着」することは、本願補正発明の「透明基板に上記異方性導電フィルムを設け」ることに相当する。

(5)本願補正発明は、透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、「上記透明基板の裏面側から上記異方性導電フィルムを介して対向する電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる」のに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、
「平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルムにおいて、
透明基板に上記異方性導電フィルムを設ける」点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点A>
本願補正発明は「単位面積当たりの上記導電性粒子の面積占有率が1%以上35%以下」であるのに対し、引用発明1は、その旨の記載がない点。

<相違点B>
本願補正発明は、透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、「上記透明基板の裏面側から上記異方性導電フィルムを介して対向する電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる」のに対し、引用発明1は、その旨の記載がない点。


4.判断
上記相違点について検討する。

(1)<相違点A>について
引用発明1の異方導電性フィルムについて、単位面積当たりの導電性粒子の面積専有率(以下、簡単に「粒子の面積占有率」という。)を計算すると、引用発明1は「導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近」いものであるから、近接する3つの粒子が構成する正三角形に占める粒子の割合から求めることができる。
近接する粒子の中心間距離をLとすると、1辺の長さLの正三角形の面積Sは、
S = √3・L^(2)/4
である。
また、正三角形において、半径rの粒子が占める部分の面積Dは、円周角60°の3つの円弧の和で求められ、
D = 3×πr^(2)×60°/360° = πr^(2) /2
となる。
したがって、正三角形における粒子の面積専有率は、
D/S = (πr^(2)/2)/(√3・L^(2)/4)
となる。

次に、引用発明1は「近接する導電性粒子の平均粒子間隔が導電性粒子の平均直径の1.0倍以上であれば、短絡が起こり難く、他方、20倍以下であれば、接続安定性に必要な導電性粒子数を確保し易」いものである。
ここで「粒子間隔」は、粒子の中心間または外縁間のどちらかの距離であるが、粒子の中心間の距離としてしまうと、「平均直径の1倍」のときに近接する導電性粒子が接するため、粒子の外縁間の距離と考えるのが自然である。
したがって、粒子間隔dを粒子直径2rのn倍とした場合には、粒子間隔d=n×2r、粒子の中心間距離L=2nr+2rとなり、
上記正三角形における粒子の面積専有率は、
D/S = (πr^(2)/2)/(√3・L^(2)/4)
= √3π/(6(n+1)^(2)) ・・・(a)
となる。

上記計算式(a)より、引用発明1の「短絡が起こり難く」、「接続安定性に必要な導電性粒子を確保し易」い「直径の1倍以上」?「20倍以下」の範囲では、粒子の面積専有率は、n=1?20より、0.21%?22.67%となる。
よって、引用発明1の粒子の面積占有率は、本願補正発明の粒子の面積占有率と重なる範囲を備えている。

一方、一般的に、アライメントマークの読み取りエラーを減らすことは自明な課題である。
引用発明1の粒子の面積占有率は、粒子の配合量と関係し、配合量を多くすると、半導体チップ面のアライメントマークの読み取りに影響する。
また、引用発明1は、システムがアライメントマークを読み取り、エラー評価を行っていることが明白であるから、アライメントマークの読み取りには、アライメントマークを撮像するカメラや画像解析のソフトウェアの性能が影響する。
そうすると、引用発明1の粒子の面積占有率は、短絡の起こり難さや接続安定性に加えて、アライメントマークを読み取るカメラや画像解析ソフトウェアの性能を考慮した上で、目的に応じて適宜選択すべきものであるから、その上限下限を1%、35%に設定することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)<相違点B>について
引用発明1の「接続評価基板の接続パッドと半導体チップの金バンプを位置合わせし」た状態では、アライメントマークを有する半導体チップが、異方導電性フィルムを介して透明基板に対向していることは明白である。
その場合、透明基板の裏側からアライメントマークを撮像して位置合わせを行うのは周知の技術事項(例えば、特開平10-253979号公報(【0036】-【0040】)、特開2008-101962号公報(【0013】参照)であるから(以下、「周知技術1」という。)、引用発明1においても、周知技術1のように透明基板の裏側から半導体チップのアライメントマークを撮像し、位置合わせを行うことは当業者が容易に想到し得ることである。
また、異方導電性フィルムの手前側から奥側を見ると、奥側にあるアライメントマークの外側縁の線分は、粒子で隠される部分によって、断続的に見え、各粒子の中心を通ったときに、最も隠された状態となる。
次に、この最も隠された状態のときに、隠されずに粒子の間に現れる線分の割合を計算で求める。アライメントマークの外側縁の線分の長さをp、粒子間隔を粒子の直径2rのn倍(すなわち粒子の中心間距離が2nr+2r)とすると、長さpの線分は、p/(2nr+2r)個の粒子を横切るから、当該粒子によって隠される部分の長さは、2r×p/(2nr+2r)となる。
したがって、長さpの線分のうち、粒子に隠されずに、粒子の間に現れる部分の割合は、
(p-2r×p/(2nr+2r))/p
= n/(n+1) ・・・(b)
となる。
そうすると、例えば粒子間隔を短絡が起こり難いとされる粒子の直径の1倍よりも小さい0.6倍にした場合でも、上記計算式(b)より、アライメントマークの外側縁の線分は37.5%で現れ、粒子間隔を粒子の直径の0.6倍から大きくしていくと、37.5%よりも大きくなっていくから、上記相違点Bに係る「断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる」構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

なお、請求人は、審判請求書にて「(ア)本願請求項1に係る発明と上記各引用文献に記載された発明とを対比すると、本願請求項1に係る発明は、基板側アライメントマークが設けられた透明基板の表面に、導電性粒子を含有した接着剤を配置し、この接着剤を介して部品側アライメントマークが設けられた電子部品を対向させ、透明基板の裏面側から基板側アライメントマーク及び部品側アライメントマークを撮像する構成を有するのに対し、上記各引用文献には、当該各構成について、記載も示唆もされていない点で相違します(相違点1)。
また、撮像した画像において、基板側アライメントマーク又は部品側アライメントマークの外側縁の仮想線分に沿って、導電性粒子間から臨む基板側アライメントマーク又は部品側アライメントマークの外側縁が線分として断続的に表れ、仮想線分に沿って、導電性粒子間から臨む線分が、仮想線分の25%以上の長さで表れている構成を有するのに対し、上記各引用文献には、当該各構成について、記載も示唆もされていない点で相違します(相違点2)。
さらに、配列した導電性粒子の、任意に抽出した単位面積当たりの面積占有率が1%以上35%以下である構成を有するのに対して、上記各引用文献には、当該各構成について、記載も示唆もされていない点で相違します(相違点3)。」旨を主張している。
しかしながら、請求人が主張する上記相違点1については、補正後の請求項1の記載を基にしており、本願補正発明の構成に含まれるものではないので、相違点1についての請求人の主張は、本願補正発明に記載された事項に基づかない主張である。仮に上記相違点1の構成が本願補正発明に含まれていたとしても、上記特開平10-253979号公報(【0036】-【0040】)の他に、特開平6-3686号公報(【0007】-【0008】)、特開2008-216300号公報(【0021】-【0028】)に記載があるように、透明な部材に対向させて部材を接着する際に、位置合わせのために、それぞれの部材に付されたアライメントマークを用いて位置合わせを行う技術は周知であり(以下、「周知技術2」という。)、引用発明1の異方導電性フィルムを半導体チップと透明基板との間の接続に用いた際に、周知技術2を用いて上記相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得る。
また、請求人が主張する上記相違点2及び相違点3については、上記相違点A、Bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明および周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正の請求項10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
平成30年7月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成29年12月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項13】
平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルムにおいて、
単位面積当たりの上記導電性粒子の面積密度が50%未満とされ、
透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、上記透明基板の裏面側から電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、
上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる異方性導電フィルム。」

2.引用文献1(引用発明1)
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記「第2[理由]2.」の「ア」ないし「エ」に記載したとおりであり、引用発明1は以下のとおりである。

「半導体チップの電極と相対する回路基板上の電極同士を電気的に接続するための、異方導電性フィルムであって、
異方導電性フィルムは、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルムであり、ガラス基板と半導体チップとの接続用として用いられ、
導電性粒子の分散配列は、近接する導電性粒子の平均粒子間隔が導電性粒子の平均直径の1.0倍以上であれば、短絡が起こり難く、他方、20倍以下であれば、接続安定性に必要な導電性粒子数を確保し易く、
導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近いものであり、
無アルカリガラス上に、配線、接続パッド、引き出し配線を形成し、接続評価基板とし、
接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着した後、接続評価基板の接続パッドと半導体チップの金バンプを位置合わせし、圧着し、半導体装置を作成し、
圧着装置にて圧着を行った際、アライメントマーク読み取りエラーがでない場合をOKとして評価する、異方導電性フィルム。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「異方導電性フィルム」は、「導電性粒子の分布している平面における分散配列状態は、略正三角形状に分散配列しており、近接する導電性粒子の間隔は、等間隔に近」いから、本願補正発明の「平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルム」に相当する。

(2)本願補正発明の異方性導電フィルムは「単位面積当たりの上記導電性粒子の面積密度が50%未満とされ」るのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

(3)引用発明1の「接続評価基板」は、「無アルカリガラス」の回路基板であり、透明であることは明白であるから、本願補正発明の「透明基板」に相当する。

(4)引用発明1の「接続評価基板に異方導電性フィルムを仮圧着」することは、本願補正発明の「透明基板に上記異方性導電フィルムを設け」ることに相当する。

(5)本願発明は、透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、「上記透明基板の裏面側から電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる」のに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「平面視において導電性粒子が規則的に配列された異方性導電フィルムにおいて、
透明基板に上記異方性導電フィルムを設ける」点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点C>
本願発明は「単位面積当たりの上記導電性粒子の面積密度が50%未満とされ」るのに対し、引用発明1は、その旨の記載がない点。

<相違点D>
本願発明は、透明基板に上記異方性導電フィルムを設けた後に、「上記透明基板の裏面側から電子部品のアライメントマークを撮像したときに、上記撮像した画像において、上記アライメントマークの外側縁が上記異方性導電フィルムにおける上記導電性粒子により断続的な線分として表れ、上記断続的な線分の合計が撮像されたアライメントマークの外側縁の線分の25%以上の長さで表れる」のに対し、引用発明1は、その旨の記載がない点。

4.判断
<相違点C>について
上記<相違点C>は、「第2[理由]4.」で<相違点A>として検討したように、目的に応じて、導電性粒子の面積密度を50%未満とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

<相違点D>について
上記<相違点D>は、「第2[理由]4.」で<相違点B>として検討したように、当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明および周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献1および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-07 
結審通知日 2019-08-20 
審決日 2019-09-10 
出願番号 特願2014-22861(P2014-22861)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 大介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 佐々木 洋
五十嵐 努
発明の名称 アライメント方法、電子部品の接続方法、接続体の製造方法、接続体、異方性導電フィルム  
代理人 野口 信博  

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