ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
---|---|
管理番号 | 1356440 |
審判番号 | 不服2018-5374 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-19 |
確定日 | 2019-10-21 |
事件の表示 | 特願2016-528275「非変換符号化のためのスキャン順序」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月29日国際公開、WO2015/010268、平成28年9月15日国内公表、特表2016-528810〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)7月24日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 3月 7日付け:拒絶理由通知書 同年 5月25日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月16日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 8月31日 :意見書の提出 同年12月12日付け:拒絶査定 平成30年 4月19日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年4月19日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年4月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成29年5月25日にされた手続補正により補正された請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)を、以下の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)とする補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所である。) (補正前の請求項1) 「【請求項1】 第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていることと、 非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第2のブロックが、前記第1のブロックの特徴と同一の少なくとも1つの特徴を有することと、 前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンするか否かを決定することであって、前記決定は、前記第2のブロックに関連付けられた予測モードと、前記第2のブロックのサイズとに基づくことと、 前記異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックを前記コンピューティングデバイスによりスキャンすることと を備え、 前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含み、 前記同一の少なくとも1つの特徴は、ブロックタイプが同一であることを含み、 前記ブロックタイプは、輝度ブロック及び色差ブロックを含む、方法。」 (補正後の請求項1) 「【請求項1】 第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていることと、 非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第2のブロックが、前記第1のブロックの特徴と同一の少なくとも1つの特徴を有することと、 前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンするか否かを決定することであって、前記決定は、前記第2のブロックに関連付けられた予測モードと、前記第2のブロックのサイズとに基づくことと、 前記第2のブロックに関連付けられた前記予測モードが所定の予測モードであり、かつ、前記第2のブロックの前記サイズが所定のサイズより小さい場合、前記異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックを前記コンピューティングデバイスによりスキャンすることと を備え、 前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含み、 前記同一の少なくとも1つの特徴は、ブロックタイプが同一であることを含み、 前記ブロックタイプは、輝度ブロック及び色差ブロックを含む、方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「決定は、第2のブロックに関連付けられた予測モードと、第2のブロックのサイズとに基づくこと」について、異なるスキャン順序に従って第2のブロックをスキャンするという決定を「前記第2のブロックに関連付けられた前記予測モードが所定の予測モードであり、かつ、前記第2のブロックの前記サイズが所定のサイズより小さい場合」であるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1に記載したとおりであり、以下に再掲する。 なお、各構成の符号(A)?(C2)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成A?構成C2と称する。 (本件補正発明) (A)第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていることと、 (B)非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第2のブロックが、前記第1のブロックの特徴と同一の少なくとも1つの特徴を有することと、 (C)前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンするか否かを決定することであって、前記決定は、前記第2のブロックに関連付けられた予測モードと、前記第2のブロックのサイズとに基づくことと、 (C1)前記第2のブロックに関連付けられた前記予測モードが所定の予測モードであり、かつ、前記第2のブロックの前記サイズが所定のサイズより小さい場合、前記異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックを前記コンピューティングデバイスによりスキャンすることと を備え、 (C2)前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含み、 (B1)前記同一の少なくとも1つの特徴は、ブロックタイプが同一であることを含み、 (B2)前記ブロックタイプは、輝度ブロック及び色差ブロックを含む、方法。 (2)引用文献、引用発明 (2-1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された文献は、以下の文献である。 (引用文献2) Joel Sole et al., "RCE2 Test B.1: Residue rotation and significance map context", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 14th Meeting: Vienna, AT, 25 July - 2 Aug. 2013, Document: JCTVC-N0044 引用文献2が公衆に利用可能となった日を認定する。引用文献2を蓄積しているウェブサイトである「JCT-VC DOCUMENT MANAGEMENT SYSTEM」(http://phenix.int-evry.fr/jct/)における当該文献の情報掲載部分(http://phenix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/current_document.php?id=7760)の「Document」の欄には、「JCTVC-N0044 (version 1 - date 2013-07-09 23:18:40) upload document」と記載されていることから、引用文献2のアップロードされた日は「2013-07-09」であると認められる。よって、引用文献2は、本願の出願日前である2013年(平成25年)7月9日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であると認められる。 そして、引用文献2には、次の記載がある。(以下の下線は、強調のため当審で付した。) ア「Abstract As part of RCE2, this proposal presents the results of the rotation of the residue for non-transformed coefficients (transform skip and lossless) and the usage of a constant context for the significance map. Restricting the block size to which the residue rotation is applied is also tested.」(1頁1?4行) (仮訳:概要 RCE2の一部として、本提案は、非変換係数(変換をスキップかつロスレス)の残差を回転した結果、及び、有意性マップのための一定コンテキストの使用を示す。残差回転が適用されるブロックサイズを制限することもテストされる。) イ「2 Technical Description Residue rotation [1] changes the scan order by rotating a block of residual samples by 180 degrees, which is equivalent to flipping the residue buffer. This implies changing a line of code to reverse the reading of the residue for transform skip blocks:」(2頁4?7行) (仮訳:2 技術解説 残差回転[1]は、残差バッファを反転させることと等価である、残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更するものである。これは、非変換ブロックの残差の読み取りを反転させるためにコード列を変更することを含む。) ウ「In a tested variant of the method, residue rotation is only applied to blocks smaller than a given size. Results are provided for a maximum size of 4×4 and 8×8.」(2頁15?16行) (仮訳:テストされた本方法の変形では、残差回転は所定サイズより小さいブロックにのみ適用される。最大サイズが4×4と8×8の結果が示されている。) エ「5 References [1] D. He, J. Wang and G. Martin-Cocher, “Rotation of Residual Block for Transform Skipping”, JCTVC-J0093, Stockholm, SE, July 2012.」(5頁1?3行) (仮訳:5 参考文献 [1](略)) (2-2)引用文献3の記載事項 上記(2-1)イ及びエのとおり、引用文献2において引用された文献であって、原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された文献は、以下の文献である。 (引用文献3) Dake He et al., "Rotation of Residual Block for Transform Skipping ", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 10th Meeting: Stockholm, SE, 11-20 July 2012, Document: JCTVC-J0093 引用文献3には、次の記載がある。(以下の下線は、強調のため当審で付した。) ア「1 Introduction A simplified design of intra transform skipping [1] was adopted into the HEVC working draft [2]. It was shown in [1] that the proposed design of intra transform skipping substantially improves the coding efficiency for Class F sequences while having little impact on the coding efficiency for sequences in Classes A-E. In this document, a change to the adopted intra transform skipping design that involves a single line of code in HM7.0 reference software and correspondingly a single line of text in the HEVC working draft [2] is proposed. The change effectively rotates a block of residual samples 180 degrees in transform skipping (see Figure 1).」(1頁12?20行) (仮訳:1 はじめに イントラ変換スキッピング[1]の簡素化された構成がHEVC作業案[2]に採用されている。[1]には、イントラ変換スキッピングの提案された構成により、クラスFのシーケンスの符号化効率が実質的に向上し、クラスA-Eのシーケンスの符号化効率にはほとんど効果がないことが示されている。 本稿では、HM7.0参照ソフトウェアの単一列コードとそれに対応してHEVC作業案[2]の単一列テキスト含む採用されたイントラ変換スキッピングの構成に対して変更することを提案する。当該変更は、変換スキッピングにおいて、残差サンプルのブロックを効果的に180度回転させる(図1を参照)。) イ「5 References [1] C. Lan, J. Xu, G. J. Sullivan, and F. Wu, “Intra transform skipping,” JCTVC-I0408.」(7頁1?2行) (仮訳:5 参考文献 [1](略)) (2-3)参考文献 上記(2-2)ア及びイのとおり、引用文献3において引用された文献は、以下の文献(以下、「参考文献」という。)である。 (参考文献) Cuiling Lan et al., "Intra transform skipping ", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva, CH, 27 April - 7 May 2012, Document: JCTVC-I0408 参考文献には、次の技術事項が記載されている。 (参考文献に記載の技術事項) 「For a 4x4 intra TU (both luma and chroma), we enable it to skip transform.」(1頁17行) (仮訳:(輝度及び色差の両方の)4×4のイントラTUに対して変換をスキップできる。) (2-4)引用発明 (ア)上記(2-1)ア?ウによれば、引用文献2には、 「非変換係数(変換をスキップ)の残差を回転する方法であって、 残差回転は、残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更するものであり、 残差回転は所定サイズより小さいブロックにのみ適用される 方法」 が記載されている。 (イ)上記(2-1)イ及びエによれば、引用文献2に記載の残差回転には引用文献3に記載の構成が用いられている。そして、上記(2-2)アによれば、イントラ変換スキッピングの構成に対して残差サンプルのブロックを180度回転させることが記載されている。 よって、引用文献2における「残差回転」は、「イントラ変換スキッピングの構成に対して残差サンプルのブロックを180度回転させること」であると認められる。 (ウ)以上より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 非変換係数(変換をスキップ)の残差を回転する方法であって、 残差回転は、イントラ変換スキッピングの構成に対して残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更するものであり、 残差回転は所定サイズより小さいブロックにのみ適用される、方法。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (3-1)本件補正発明の構成A、構成B、B1、B2について 引用発明の「非変換係数(変換をスキップ)」の「残差サンプルのブロック」は、構成Bの「非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロック」に相当する。 また、引用発明は、「非変換係数(変換をスキップ)」の「残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更するもの」であるから、当該スキャン順序が変更されない変換係数(変換を実行)のブロックが対応して存在していることは、当業者に明らかな事項である。すると、引用発明の「当該スキャン順序が変更されない変換係数(変換を実行)のブロック」は、構成Aの「第1のブロック」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていること」との構成を有する点で一致するといえる。 さらに、ブロックにおけるスキャン順序の特定をコンピューティングデバイスにより行うことは、引用発明に当然に備わる構成と認められるから、本件補正発明と引用発明とは、「第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定すること」との構成を有する点で一致するといえる。 また、引用発明において、前記「非変換係数(変換をスキップ)」の「残差サンプルのブロック」(第2のブロック)は前記「変換係数(変換を実行)のブロック」(第1のブロック)と異なる処理が実行されるから、前記各ブロックがコンピューティングデバイスによりそれぞれ特定されることは、引用発明に当然に備わる構成と認められる。よって、本件補正発明と引用発明とは「非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定すること」との構成を有する点で一致するといえる。 以上から、本件補正発明と引用発明とは、「第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていること」及び「非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定すること」との構成を有する点で一致する。 しかしながら、前記第2のブロックについて、本件補正発明は、「前記第2のブロックが、前記第1のブロックの特徴と同一の少なくとも1つの特徴を有すること」(構成B)、「前記同一の少なくとも1つの特徴は、ブロックタイプが同一であることを含み」(構成B1)、「前記ブロックタイプは、輝度ブロック及び色差ブロックを含む」(構成B2)との構成を有するのに対し、引用発明はそのような構成について特定されていない点で相違する。 (3-2)本件補正発明の構成C、C1、C2について 引用発明の「イントラ変換スキッピング」は、イントラとの用語からしてイントラ予測モードにおける処理を意味するものと認められる。そして、引用発明の「イントラ変換スキッピング」は、「非変換係数(変換をスキップ)」の「残差サンプルのブロック」(第2のブロック)に対して処理するものであるから、引用発明の前記「イントラ予測モード」は、構成Cの「第2のブロックに関連付けられた予測モード」及び構成C1の「所定の予測モード」に相当するといえる。 また、引用発明の、「非変換係数(変換をスキップ)」の「残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更する」ことは、構成Cの「前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンする」こと、及び構成C2の「前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含み」に相当する。 そして、引用発明は、「残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更する」処理を、「イントラ変換スキッピングの構成に対して」及び「所定サイズより小さいブロックにのみ」実行するものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンするか否かを決定することであって、前記決定は、前記第2のブロックに関連付けられた予測モードと、前記第2のブロックのサイズとに基づくこと」(構成C)、「前記第2のブロックに関連付けられた前記予測モードが所定の予測モードであり、かつ、前記第2のブロックの前記サイズが所定のサイズより小さい場合、前記異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックを前記コンピューティングデバイスによりスキャンすること」(構成C1)、「前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含み」(構成C2)との各構成を有する点で一致する。 (3-3)一致点、相違点 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) (A)第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序をコンピューティングデバイスにより特定することであって、前記第1のブロックが変換符号化モードに関連付けられていることと、 (B’)非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックを前記コンピューティングデバイスにより特定することと、 (C)前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックをスキャンするか否かを決定することであって、前記決定は、前記第2のブロックに関連付けられた予測モードと、前記第2のブロックのサイズとに基づくことと、 (C1)前記第2のブロックに関連付けられた前記予測モードが所定の予測モードであり、かつ、前記第2のブロックの前記サイズが所定のサイズより小さい場合、前記異なるスキャン順序に従って前記第2のブロックを前記コンピューティングデバイスによりスキャンすることと を備え、 (C2)前記異なるスキャン順序は、前記第1のブロックをスキャンするための前記スキャン順序と逆の順序を含む、方法。 (相違点) 第2のブロックについて、本件補正発明は、「前記第2のブロックが、前記第1のブロックの特徴と同一の少なくとも1つの特徴を有すること」、「前記同一の少なくとも1つの特徴は、ブロックタイプが同一であることを含み」、「前記ブロックタイプは、輝度ブロック及び色差ブロックを含む」との構成を有するのに対し、引用発明は前記構成について特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について、以下に検討する。 輝度及び色差の各ブロックが符号化処理において用いられることは、参考文献に記載の技術事項のように、符号化技術における常套手段であるから、引用発明においても輝度及び色差の各ブロックが用いられるものと認められる。そして、引用発明の「残差サンプルのブロックを180度回転させることにより、スキャン順序を変更する」処理は、ブロックのタイプにより制限されていないから、輝度及び色差のいずれのタイプのブロックにも適用されるものと認められる。 そして、符号化技術において、輝度及び色差が異種の特性値として扱われることは周知事項であるから、輝度及び色差の各ブロックについて、スキャン順序の判断に係る処理をそれぞれのブロックタイプにおいて行うこと、すなわち、第2のブロックを第1のブロックと同じブロックタイプ(輝度ブロック、色差ブロック)としてスキャン順序の判断に係る処理を行うことは、当業者であれば当然になし得ることである。 よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は、審判請求書において、以下の主張を行っている。 「引用文献2には、まず第1に、JCT-VCの第14回会合は、2013年7月25日から8月2日まで開催されたことが記載されており、これは本願発明の出願日よりも後である。よって、引用文献2が、本願の出願日(平成25年 7月24日)前に公衆に利用可能となっていたことが同文献に記載の「Data Saved: 2013-07-09」からでは明らかでない点を主張する。」(以下、「主張1」という。) 「さらに、仮に、引用文献2が出願日前に公衆に利用可能となっていた場合であったとしても、前述したように、引用文献2は、単に、所定のサイズよりも小さいブロックに対してのみresidue rotationが適用されることを記載するのみである。このような引用文献2と、変換スキップモードにおいて、残差サンプルのブロックを180度回転させることを記載した引用文献3に基づいて、当業者が、本願発明の(A)の構成により特定される、変換符号化モードに関連付けられている第1のブロックをスキャンするためのスキャン順序と異なるスキャン順序に従って、非変換符号化モードに関連付けられた第2のブロックをスキャンするか否かを決定すること、その決定を、第2のブロックの予測モードとサイズとの2つを用いて行うことを、容易に発明をすることができたものではなく、進歩性を有するものであるから、拒絶の理由は解消したものと考える。」(以下、「主張2」という。) しかしながら、主張1については、上記(2-1)に示したとおり、引用文献2は2013年(平成25年)7月9日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であると認められるから、主張1を採用することはできない。 また、主張2についても、上記(3)及び(4)に示した理由により、本件補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、主張2を採用することはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年4月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年5月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1において「補正前の請求項1」として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 本願発明に係る原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献2に記載された発明及び上記引用文献3に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものなどである。 3 引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2、引用文献3の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2において検討した本件補正発明の構成C1における限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用文献3の記載を引用する引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-05-29 |
結審通知日 | 2019-05-30 |
審決日 | 2019-06-11 |
出願番号 | 特願2016-528275(P2016-528275) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 利延、坂東 大五郎 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 樫本 剛 |
発明の名称 | 非変換符号化のためのスキャン順序 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 阿部 豊隆 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |