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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1356448
審判番号 不服2017-16524  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-07 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2015-211190「外科スポンジ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 80044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月27日に出願された特願2015-211190号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年10月19日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月25日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 7月 4日付け:拒絶査定
平成29年11月 7日 :審判請求書・手続補正書の提出
平成30年10月 4日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 9日 :意見書・手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成31年 4月10日 :手続補足書の提出


第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「外科スポンジであって、
最上層プライ及び最下層プライと、前記最上層プライ及び最下層プライの間に位置する1層以上の中間プライとを有し、且つ、1つ以上の開口面を有する複数プライのガーゼと、
前記開口面を締め付け、または閉鎖するステッチとを含み、
前記ステッチが、1本以上の対照的な糸で作製されており、
前記糸は、色調、物理的構成および構造のうちの1つ以上において、ガーゼと対照的であり、
前記糸は、1つ以上の非吸収材料からなり、
前記糸を構成する1つ以上の非吸収材料は、柔らかい蛍光色又は控え目な蛍光色の蛍光ライム、蛍光グリーン、または蛍光イエローのうちの1色から選択される、外科スポンジ。」


第3 拒絶の理由
平成30年10月4日付けの当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭53-90692号公報
引用文献2:国際公開第2015/075078号


第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。
(1)2ページ左下欄9行ないし右下欄7行
「ダイ(当審注:「ダイ」は「第」の略字体。以下同様。)1図とダイ2図に示される手術用のカーゼ帯は吸収材料のシート12、例えば綿織物又は不織材料のような低い番手のガーゼ状又は開いたメツシユの織物を備える。シート12は多層ガーゼ帯10を形成するよう折畳まれ、対向する外表面14aと14b、側縁部16aと16b及び縁部18aと18bを有する。このガーゼ帯10は手術に使用中ガーゼ帯10から繊維20の移動を防止するよう、シート12の層の間に配置される、細長い放射線を通さない繊維20を含む。繊維20は硫酸バリウムのような放射線を通さない材料を含んでいる熱可塑性重合材料から成り得る。
ガーゼ帯10は又これに固定される細長い視覚的に検出し得る要素22を含み、従つてこれは少なくとも部分的にガーゼ帯の外表面上にある。この要素22は高度に反射性であるのが望ましく、また血の色に目だちかつ非混性である高度に反射性の表面と色、例えば金又は銀を有している金属材料から作り得る。」

(2)3ページ左上欄17行ないし右上欄13行
「要素22はミシンによりシート12に縫い込むのを可能にするため充分可撓でかつ薄いのが望ましい。ダイ2図に示すように、要素22はガーゼ帯10がその対向面14aと14b上に一対の視覚的に検出し得る要素22aと22bを有するような要領でロツク.ステイツチ(本縫)で縫うことができる。これとは別に、視覚的に検出し得る糸がガーゼ帯にその対向表面上の糸の部分を与えるためチエーン.ステイツチ(環縫)で利用し得る。この要素は勿論、縫線のような任意他の適当な手段によりガーゼ帯の外面に取付けられる。
高度に反射性の要素22は吸収材料のシート12が血をいつぱいに吸つたときでさえも容易に見ることができ、これにより手術中ガーゼ帯が紛失する可能性を最小にし、かつX線装置が紛失したガーゼ帯を検出するのに用いなければならない回数を減じる。」

(3)3ページ左下欄1行ないし右下欄1行
「ダイ1図において、要素22は端縁部18aと18bとの間に折畳んだガーゼ帯の全長にわたつて延びることができる。要素22の他の適当な形態は多数の隔てられた線、ダイ6図に示すように全体的にZの形状のパターン又はダイ7図に示すようにXの形状のパターンを備える。
これとは別に、要素22は螢光性又は燐光性の材料のような光を発する材料で作られ、又は虹色の材料で作り得る。周知の如く、ウイスコンシン州.アプレトン在アプレトン製紙会社(Appleton Papers)で販売されるフイルムのような螢光性の材料は光のようなエネルギー流の結果として電磁放射線を励起が続く限り放射体に放射し、一方燐光材料は励起源が停止した後に冷光を発する。
ニユーヨーク州ピークスキル在メアール社(Mearl Corporation)で販売されるフイルムのような虹色の材料は薄いフイルム中の干渉の結果として虹色効果を示し、又はリブを設けた表面から反射される光の回折を示す。いずれの場合にも、このような材料で作られる要素22は使用中に血で湿されるときガーゼ帯の可視性を充分増大する。」

(4)上記(1)の「シート12は多層ガーゼ帯10を形成するよう折畳まれ、対向する外表面14aと14b、側縁部16aと16b及び縁部18aと18bを有する。」という記載を踏まえると、ガーゼ帯10はシート12が折り畳まれたものであり、ガーゼ帯は多層のガーゼから形成されているといえ、また、各層の間には間隔があるといえることから、ガーゼ帯の側縁部16a、16b及び縁部18a、18bは1つ以上の開口を有する状態になっているといえる。
また、上記(2)の「ダイ2図に示すように、要素22はガーゼ帯10がその対向面14aと14b上に一対の視覚的に検出し得る要素22aと22bを有するような要領でロツク.ステイツチ(本縫)で縫うことができる。これとは別に、視覚的に検出し得る糸がガーゼ帯にその対向表面上の糸の部分を与えるためチエーン.ステイツチ(環縫)で利用し得る。この要素は勿論、縫線のような任意他の適当な手段によりガーゼ帯の外面に取付けられる。」という記載を踏まえると、ガーゼ帯はステイツチで縫い合わされるものであるといえる。そして、ダイ2図には、ガーゼ帯の最上層から最下層にかけてステイツチで縫い合わせれている点が図示されている。
さらに、上記(3)の「要素22の他の適当な形態は多数の隔てられた線、ダイ6図に示すように全体的にZの形状のパターン又はダイ7図に示すようにXの形状のパターンを備える。」という記載を踏まえると、ダイ6図には、ステイツチが縁部18a、18bの開口を縫い合わせている点が示されているといえる。
そうすると、これらのことを総合すると、ステイツチは、ガーゼ帯の縁部における開口を縫い合わせるものであるといえる。

(5)上記(1)の「ガーゼ帯10は又これに固定される細長い視覚的に検出し得る要素22を含み」という記載、上記(2)の「要素22はガーゼ帯10がその対向面14aと14b上に一対の視覚的に検出し得る要素22aと22bを有するような要領でロツク.ステイツチ(本縫)で縫うことができる。」という記載から、ステイツチは、一対の細長い視覚的に検出し得る要素で作られていることは、明らかである。

2 引用文献2の記載
引用文献2には、次の事項が記載されている(日本語訳は当審で付与した。)。
(1)7ページ11行ないし20行
The first layer 1 is made of a material absorbing the liquids in a surgical site and the second layer is made of a material not absorbing such liquids, i.e. a substantially waterproof material, such that in contact with the body fluids, it keeps its light or dark color, acting as landmark surgery for the operator, while the fabric of the third layer 3 absorbs the fluids even under the waterproof layer; the shape/morphology of the waterproof layer is such as to give the operator a defined and not discontinuous (optimum operationally) chromatic view and at the same time make the liquids flow in the underlying absorbent fabric; the waterproof layer 2 and the underlying absorbent layer 3 are irreversibly attached.
(第一層1は、外科手術の場所における液体を吸収する材料でできており、第二層はそのような液体を吸収しない材料、つまり、実質的には防水性材料ででてきている。そのため、体液に接触した場合に、当該材料は明るい色又は暗い色で、施術者にとって外科手術における目印として機能する。一方で、第三層3の繊維は体液を防水層の下部において吸収する。防水層の形/形態は、施術者にはっきりした、断続的な(最適条件で施術できるように)色彩視覚を与え、それと同時に、体液を下層の吸収性繊維に流すようにしている。防水層2及び下層の吸収性層3は不可逆的に取り付けられている。)

(2)11ページ24行ないし29行
Figures 6-9 show embodiments of the invention in which the surgical gauze provides the first 1 and the third layer 3 joined "book-like". Compared to the first embodiment, when the gauze is placed in the surgical site (working position) the first layer 1 is not removed but it simply opens "book-like", leaving the second layer visible (figure 7), with the same effect as described above.
(図6ないし9は、本発明の具体例として、第一層1及び第三層3が合体して「本のように」なっている外科用ガーゼを示す。第一実施例と比べると、ガーゼが外科手術の場所(作業位置)に置かれたときに、第一層は取り除かれず、単に「本のように」開くものとなっており、第二層は視覚可能な状態に置かれ(図7)、上述した効果と同じ効果を奏する。)

(3)12ページ7行ないし11行
Figure 10 shows (absorbable or not absorbable) stitches 11 which allow keeping the first layer 1 associated with the second layer 2 before placing the gauze in the surgical site (rest position), said stitches 11 allowing easy extraction of the first layer 1, i.e. the removal thereof for the landmark surgery function.
(図10は、(吸収性又は非吸収性の)ステッチ11を示す。当該ステッチ11は、ガーゼを外科手術の場所に置く前(待機位置)には、第一層を第二層に連携させたままとしておき、当該ステッチは、第一層を簡単に取り出せるようにしている、つまり、外科手術における目印として機能することでそこから除去できるようにしている。)

(4)図6には、第一層、第二層及び第三層からなるガーゼにおいて、第一層及び第三層の間に第二層が位置し、本のような形状となっている点が示されている。

3 引用発明
(1)上記1(1)ないし(5)からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「手術用のガーゼ帯であつて、
1つ以上の開口を有する多層のガーゼと、
前記開口を縫い合わせるステイツチとを含み、
前記ステイツチは、一対の細長い視覚的に検出し得る要素で作られており、
前記要素は、蛍光性を有する材料から作られる、手術用のガーゼ帯。」

(2)上記2(1)ないし(4)からみて、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「外科手術用のガーゼにおいて、第一層及び第三層と、第一層及び第三層の間に位置する第二層とを有するガーゼ。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、次のとおりとなる。
引用発明の「手術用のガーゼ帯」は、その機能及び作用からみて、本願発明の「外科スポンジ」に相当する。以下同様に、「開口」は「開口面」に、「多層のガーゼ」は「複数プライのガーゼ」に、「縫い合わせる」は「締め付け、または閉鎖する」に、「ステイツチ」は「ステッチ」に、「一対の」は「一本以上の」に、「作られて」は「作製されて」に、それぞれ相当する。
引用発明の「細長い視覚的に検出し得る要素」は、細長く、ステイツチ(縫い)を構成することから、糸であるということができ、また、ガーゼ帯に対して視覚的に検出し得ることからガーゼ帯と対照的であることは明らかであるので、本願発明の「対照的な糸」に相当する。してみると、引用発明の「前記ステイツチは、一対の細長い視覚的に検出し得る要素で作られており」は、本願発明の「前記ステッチが、1本以上の対照的な糸で作製されており、前記糸は、色調、物理的構成および構造のうちの1つ以上において、ガーゼと対照的であり」に相当する。
引用発明の「前記要素は、蛍光性を有する材料からなる」と本願発明の「前記糸を構成する1つ以上の非吸収材料は、柔らかい蛍光色又は控え目な蛍光色の蛍光ライム、蛍光グリーン、または蛍光イエローのうちの1色から選択される」とは、糸が蛍光性を有するという点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

(一致点)
「外科スポンジであって、
1つ以上の開口面を有する複数プライのガーゼと、
前記開口面を締め付け、または閉鎖するステッチとを含み、
前記ステッチが、1本以上の対照的な糸で作製されており、
前記糸は、色調、物理的構成および構造のうちの1つ以上において、ガーゼと対照的であり、
前記糸は蛍光性を有する、外科スポンジ。」

(相違点1)
多層状のガーゼについて、本願発明においては、最上層プライ及び最下層プライと、前記最上層プライ及び最下層プライの間に位置する1層以上の中間プライとを有するのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点2)
蛍光性を有する糸について、本願発明においては、1つ以上の非吸収材料からなり、糸を構成する1つ以上の非吸収材料は、柔らかい蛍光色又は控え目な蛍光色の蛍光ライム、蛍光グリーン、または蛍光イエローのうちの1色から選択されるものであるのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

第6 判断
上記相違点1及び2について、検討する。
1 相違点1について
引用発明と引用発明2は多層からなる手術用ガーゼという点で共通する。そして、引用発明の多層のガーゼの構成として引用発明2の第一層及び第三層と、第一層及び第三層の間に位置する第二層とを有する点を採用することで、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、ガーゼ各層の積層方法を特定したに過ぎないので、当業者にとって何ら困難性はない。

2 相違点2について
防水性の材料は血液等の体液等を吸収しないため、手術中に視認性が向上することは、周知の技術(例えば、上記第4の2(1)の「防水層の形/形態は、施術者にはっきりした、断続的な(最適条件で施術できるように)色彩視覚を与え」という引用文献2の記載を参照。)であり、また、仮に、引用発明のステイツチ(要素)が血液等の体液を吸収するような性質であるとすると、ガーゼが血液等の体液に浸潤した場合に、当該ステイツチ(要素)は血液等を吸収し、血液等の赤色に染まることとなり、引用発明の技術的課題である十分な可視性を実現することができなくなることは明らかである。
してみると、引用発明のステイツチ(要素)は体液等に対して非吸収性であると考えるのが妥当である。
また、蛍光フィラメント(糸)としてポリエステル繊維等に蛍光体を練り込んだ部材が周知の技術(必要とあらば、特開2007-92254号公報の【0015】等を参照。)であり、そのような繊維は水分等の液体に対して非吸収性であることは技術常識からみて明らかである。
引用発明のステイツチ(要素)は、蛍光性を有する材料から作られていることからみても、水分等の液体に対して非吸収性であるとするのが妥当である。
次に、蛍光フィラメント(糸)は、青色、緑色、赤色、紫色、黄色、オレンジ色、ピンク色、クリーム色などの色を発色させることができることも周知の技術(必要とあらば、特開2007-92254号公報の【0016】等を参照。)であることから、引用発明の蛍光性を有する要素において、上記第4の1(3)の「このような材料で作られる要素22は使用中に血で湿されるときガーゼ帯の可視性を充分増大する。」という引用発明の作用効果を踏まえると、引用発明の要素の色として、血で湿らされたときにガーゼの可視性を増大するよう、上記周知の各色彩の中から実験等の検証を経て決定する程度のことは、当業者が通常有する能力の発揮に過ぎず、必要に応じて選択することのできる単なる設計事項に過ぎない。
以上を踏まえると、引用発明において、要素を非吸収材料とし、使用中に血で湿されると可視性を増大するような蛍光色を選択することで、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって何ら困難性はない。

3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用発明2及び上記の周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものであるということはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明、引用発明2及び上記周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-27 
結審通知日 2019-05-28 
審決日 2019-06-10 
出願番号 特願2015-211190(P2015-211190)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男宮下 浩次  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 沖田 孝裕
芦原 康裕
発明の名称 外科スポンジ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 片岡 憲一郎  
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