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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1356460
審判番号 不服2018-9747  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-17 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2015-532162「カウンターボアのデザインを有するスチール製ピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月27日国際公開、WO2014/047123、平成27年10月8日国内公表、特表2015-529779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年9月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月9日付け(発送日:同年6月20日)で拒絶理由が通知され、同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月29日付け(発送日:同年10月3日)で再度の最初の拒絶理由が通知され、同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月9日付け(発送日:同年3月20日)で拒絶査定がされ、これに対して同年7月17日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年12月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものである。
「【請求項1】
スチール製のピストン本体を備え、
前記ピストン本体は、上方燃焼面を有する冠状部と、前記冠状部から垂下する一対のスカートと、リストピンを受けるための一対のピンボスと、前記ピンボスから前記スカートに延びる複数のピンボスブリッジと、を有し、
各前記ピンボスブリッジは、前記冠状部と反対側の下端に向かって軸方向に延び、その下端に厚さを増加させたリブを有し、
前記ピンボスブリッジの少なくとも1つは、前記リブに設けられ、前記ピストン本体の加工のための基準位置を提供するための概ね平坦なカウンターボア面を有する、内燃機関用ピストン。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし4、6ないし12に対して引用文献等1ないし4

・請求項5に対して引用文献等1ないし7

<引用文献等一覧>
1.特開2009-191779号公報(本審決の引用文献1)
2.特開2004-27922号公報
3.特開2011-1889号公報
4.実願平3-26494号(実開平4-115536号)のマイクロフィルム(本審決の引用文献2)
5.特開平6-193733号公報
6.特開2006-22957号公報
7.特表2009-540200号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-191779号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「内燃機関のピストン」に関して、図面(特に、図2ないし4を参照。)とともに以下の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)「【0001】
本発明は、オイルジェット装置から頂部の裏面に向けて冷却用のオイルを噴射して冷却するようにした内燃機関のピストンに関するものである。」

(2)「【0025】
図2は、図1に示したピストンの斜視図である。図3は、図2に示したピストンを軸線に沿った平面で切断した断面図である。図4は、図2に示したピストンの下面図である。
【0026】
ピストン3は、図2に示すように、燃焼ガスの圧力が作用する頂部21と、この頂部21から垂下した態様で設けられた一対のスカート部22・23と、この一対のスカート部22・23を互いに連結する態様で設けられた一対のサイドウォール部24・25と、この一対のサイドウォール部24・25に設けられた一対のピンボス部26・27とを有している。」

(3)「【0031】
サイドウォール部24・25には、下端に沿って肉厚部38が形成されており、またスカート部22・23にも、下端近傍に周方向に肉厚部39が形成されており、サイドウォール部24・25の肉厚部38が、スカート部22・23の肉厚部39と、ピンボス部26・27の内側の突出部32の下端部分とを互いに連結するように設けられている。」

(4)上記(2)(段落【0026】の「この一対のスカート部22・23を互いに連結する態様で設けられた一対のサイドウォール部24・25と、この一対のサイドウォール部24・25に設けられた一対のピンボス部26・27とを有している。」)の「一対のサイドウォール部24・25」の記載に関して、図2ないし4の図示内容を参酌すれば、「ピンボス部26・27からスカート部22・23に延びる4個のサイドウォール部」ということができる。

(5)上記(2)並びに図2及び3の図示内容から、各サイドウォール部は、頂部21と反対側の下端に向かって軸方向に延びているといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に、図2ないし4)の図示内容からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ピストン3を備え、
前記ピストン3は、燃焼ガスの圧力が作用する頂部21と、前記頂部21から垂下する一対のスカート部22・23と、ピストンピン4を受けるための一対のピンボス部26・27と、前記ピンボス部26・27から前記スカート部22・23に延びる4個のサイドウォール部と、を有し、
各前記サイドウォール部は、前記頂部21と反対側の下端に向かって軸方向に延び、その下端に沿って肉厚部38を有する、内燃機関用ピストン。」

2.引用文献2
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願平3-26494号(実開平4-115536号)のマイクロフィルムには、「内燃機関用ピストン」に関して、図面(特に、図7ないし10を参照。)とともに以下の記載がある

(1)「【0008】
【実施例】
以下本考案を図面の実施例について説明すると、図1?図4は本考案の第1実施例、図5?図6は第2実施例、図7?図10は第3実施例を示す。先ず図1?図4の第1実施例について説明すると、1はピストン製造時の加工基準用インロー面で、ピストン下面に凹溝状に設けられており、従来のように内面周囲に円周状に設けられていないので、ピンボス2の強度を損なうことはない。従ってスカート3の長さを短縮でき、摺動抵抗の低減を図ることができる。この第1実施例では、インロー面1はスラスト、反スラスト方向には設けられていない。」

(2)「【0010】
図5?図6は本考案の第2実施例を示し、インロー面1′をインロー面1の他にスラスト、反スラスト方向に設けた場合であるが、他の構成は第1実施例と同じである。
【0011】
図7?図10は本考案の第3実施例を示し、サイドウオールの下側のひさしがないタイプのピストンであるが、他は図5?図6の第2実施例と同じである。」

(3)図7ないし10の図示内容から、加工基準用インロー面1は、ピンボス2からスカート3に延びる壁部の下面に設けられていることが看取できる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に、図7ないし10)の図示内容からみて、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「ピンボス2からスカート3に延びる壁部の下面に、ピストン製造時の加工基準用インロー面1を設けること。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ピストン3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「ピストン本体」に相当し、以下同様に、「燃焼ガスの圧力が作用する」は「上方燃焼面を有する」に、「頂部21」は「冠状部」に、「スカート部22・23」は「スカート」に、「ピストンピン4」は「リストピン」に、「ピンボス部26・27」は「ピンボス」に、「4個の」は「複数の」に、「サイドウォール部」は「ピンボスブリッジ」に、「その下端に沿って肉厚部38を有する」は「その下端に厚さを増加させたリブを有し」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

〔一致点〕
「ピストン本体を備え、
前記ピストン本体は、上方燃焼面を有する冠状部と、前記冠状部から垂下する一対のスカートと、リストピンを受けるための一対のピンボスと、前記ピンボスから前記スカートに延びる複数のピンボスブリッジと、を有し、
各前記ピンボスブリッジは、前記冠状部と反対側の下端に向かって軸方向に延び、その下端に厚さを増加させたリブを有する、内燃機関用ピストン。」

〔相違点1〕
ピストン本体に関して、本願発明においては「スチール製の」と特定されているのに対して、引用発明においてはピストン3の材質が不明な点。

〔相違点2〕
本願発明は「ピンボスブリッジの少なくとも1つは、前記リブに設けられ、前記ピストン本体の加工のための基準位置を提供するための概ね平坦なカウンターボア面を有する」のに対して、引用発明はかかる事項を有していない点。

上記相違点1及び相違点2について検討する。
内燃機関用のピストン本体をスチール製とし、機械加工等を行うことにより製造することは、本願の優先日前に周知の技術である(以下、「周知技術」という。例えば、特開2006-22957号公報の段落【0014】並びに特表2009-540200号公報の段落【0001】及び【0015】ないし【0017】を参照。)
そして、引用文献2記載事項は「ピンボス2からスカート3に延びる壁部の下面に、ピストン製造時の加工基準用インロー面1を設けること。」というものである。
本願発明と引用文献2記載事項とを対比すると、引用文献2記載事項の「ピンボス2からスカート3に延びる壁部」は、本願発明の「ピンボスブリッジ」に相当し、同様に、「ピストン製造時の加工基準用インロー面1」は「ピストン本体の加工のための基準位置を提供するための概ね平坦なカウンターボア面」に相当する。
よって、引用文献2記載事項を本願発明の用語を用いて表すと、「ピンボスブリッジの下面に、ピストン本体の加工のための基準位置を提供するための概ね平坦なカウンターボア面を設けること。」ということができる。
そうすると、引用発明において引用文献2記載事項及び周知技術を適用し、内燃機関用のピストン本体をスチール製とし、機械加工等を行うことで製造し、その加工基準として、引用発明のサイドウォール部の下面、すなわち肉厚部38の下面に「ピストン本体の加工のための基準位置を提供するための概ね平坦なカウンターボア面を設ける」ことは、当業者が容易に想到できたことである。
したがって、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の特定事項は、引用発明に、引用文献2記載事項及び周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-27 
結審通知日 2019-05-28 
審決日 2019-06-10 
出願番号 特願2015-532162(P2015-532162)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻田 正紀  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 鈴木 充
金澤 俊郎
発明の名称 カウンターボアのデザインを有するスチール製ピストン  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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