• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1356558
審判番号 不服2018-14348  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-30 
確定日 2019-11-19 
事件の表示 特願2014-78630号「車両用灯具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-201301号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月7日の出願であって、平成29年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、また、請求項5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-151357号公報
2.特開2012-94347号公報
3.実願平1-73010号(実開平3-12301号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1?5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成30年2月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
車両に搭載される灯具であって、
透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板と、
前記透明基板に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子と、
前記透明基板の端部において前記導電層と電気的に接続されたフレキシブル回路基板を含む接続部と、
前記接続部と電気的に接続されたコネクタとを備える、灯具。
【請求項2】
前記透明基板は、前記フレキシブル回路基板よりも低い可撓性を有する、請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記発光素子から出射された光が通過する透光カバーと、
前記透光カバーと前記接続部の間に配置されており、前記コネクタを覆い隠すカバーとを備える、請求項1または2に記載の灯具。
【請求項4】
前記コネクタは、前記フレキシブル回路基板の第1の面に配置されており、
前記フレキシブル回路基板の第2の面における前記コネクタと対向する位置に、前記透明基板よりも低い可撓性を有する補強部材が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の灯具。
【請求項5】
前記発光素子とは異なる光源を備え、
前記発光素子は、前記透明基板の第1の側に光を出射し、
前記光源から出射された光の少なくとも一部は、前記透明基板を通過して前記第1の側へ照射される、請求項1から4のいずれか一項に記載の灯具。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【請求項1】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードの収納部を有し、前記発光ダイオードから放射された照明光を拡散するレンズと、導電部を有し、当該導電部が前記発光ダイオードに電気的に接続された配線部材とを備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記配線部材は、表面に反射膜を有するフィルム状に形成され、前記レンズの表面に被着されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記レンズの収納部形成面以外の面に反射膜を備えたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記配線部材の導電部を透明導電材料をもって形成したことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記レンズと一体に前記導電部と電気的に接続された外部接続コネクタを形成したことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
(1b)
「【0001】
本発明は、自動車用ルームランプなどに好適な照明装置とその製造方法とに係り、特に、光源として発光ダイオード(以下、「LED」と略称する。)を用いた照明装置の構成とその製造方法とに関する。」
(1c)
「【0008】
本発明は、かかる従来技術の不備を解決するためになされたものであり、その目的は、安価にして薄形の照明装置を提供すること、及びこのような照明装置を容易かつ安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため、照明装置については、第1に、LEDと、前記LEDの収納部を有し、前記LEDから放射された照明光を拡散するレンズと、導電部を有し、当該導電部が前記LEDに電気的に接続された配線部材とを備えるという構成にした。
【0010】
かかる構成によると、レンズの一面に形成された収納部内にLEDを収納するので、照明装置の全厚をレンズの厚さと配線部材の厚さの合計値にすることができ、照明装置の顕著な薄形化を図ることができる。また、LEDをレンズの一面に形成された収納部内に収納するので、LEDから放射された照明光を無駄なくレンズの光出射面に導くことができ、LEDの設定数の減少による照明装置の低コスト化を図ることができる。」
(1d)
「【0027】
まず、本発明の第1実施形態例に係る照明装置を、図1に基づいて説明する。図1は第1実施形態例に係る照明装置の断面図である。本例の照明装置は、レンズの片面に反射膜を備えたことを特徴とする。
・・・
【0030】
レンズ2は、照明装置のカバーを兼ねるものであって、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの透明樹脂の射出成形品をもって形成される。なお、図1においては、レンズ2の収納部形成面2b及び照明光出射面2cがそれぞれ平面状に図示されているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、これらの各面を所要の曲面に形成することも勿論可能である。また、図1においては図示が省略されているが、必要に応じて例えば抵抗器などの所要のチップ部品を収納するための収納部を形成することもできる。チップ部品は、前記配線部材4の導電部4aに接続される。」
(1e)
「【0039】
以下、第2実施形態例に係る照明装置1Bの製造方法を、図4に基づいて説明する。図4は第2実施形態例に係る照明装置1Bの製造手順を示すフロー図である。
【0040】
第1実施形態例に係る照明装置1Aの製造手順と異なる点は、図2(b)と図4(b)との比較から明らかなように、転写フィルム12として、フィルム基材11の片面に絶縁層4bと導電部4aとがこの順に形成されたものを用いる点である。そして、レンズ2の射出整形後、図4(d)に示すように、フィルム基材11を剥離し、収納部2aの内面を除くレンズ2の収納部形成面2bに絶縁層4bを露出させると共に、収納部2aの内面に被着された反射膜4cを除去する。フィルム基材11の剥離と反射膜4cの選択的な除去は、フィルム基材11と絶縁層4bとの接着強度を、絶縁層4bと導電部4aとの接着強度及び導電部4aとレンズ2との密着強度よりも弱くすることによって行うことができる。その他の点については第1実施形態例に係る照明装置1Aの製造手順と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。」
(1f)
「【0046】
次に、本発明の第4実施形態例に係る照明装置を、図6に基づいて説明する。図6は第4実施形態例に係る照明装置の断面図である。本例の照明装置は、LED収納部の形成面より照明光を出射するようにレンズを構成したこと、及びレンズを押圧することによってスイッチを切換操作できるようにしたことを特徴とする。
【0047】
図5に示すように、本例の照明装置1Dは、配線部材4及び反射膜31を有し、かつ収納部2a内にLED3が収納されたレンズ2と、レンズ2を上下動可能に保持するレンズ筐体32と、レンズ筐体32及びスイッチ33が取り付けられたプリント配線板34と、配線部材4の導電部4aとプリント配線板34の導電部34aとを電気的に接続するフレキシブル配線板(接続手段)35とから構成されている。
【0048】
配線部材4は、レンズ2の収納部形成面2bからそれに隣接する凸面(レンズ面)の一部にわたる部分に形成される。また、当該配線部材4の導電部4aは、例えばITO(インジウム-スズ酸化物)などの透明導電材料をもって形成される。その他の部分については、第2実施形態例に係る照明装置1Bと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
反射膜31は、配線部材4の形成部を除くレンズ2の凸面に形成される。この反射膜31の形成は、レンズ2を成形した後、例えばアルミニウムなどの高反射率材料をスパッタリング又は真空蒸着することにより行うことができる。
【0050】
レンズ筐体32は、金属材料又はプラスチック材料をもってレンズ2を保持可能な所要形状及び所要サイズの筒状に形成され、一端がプリント配線板34の表面に取り付けられる。レンズ2は、反射膜31をプリント配線板34側に向けてレンズ筐体32内に収納され、後述するスイッチ33を切替操作可能な範囲で上下動できるようにレンズ筐体32に対して取り付けられる。
【0051】
プリント配線板34は、絶縁基板の片面又は両面に例えば銅箔などからなる導電部34aを形成したもので、図6に示すように、レンズ筐体32の設定部の中心位置にスイッチ33が実装されている。スイッチ33としては、プッシュスイッチが用いられる。
【0052】
フレキシブル配線板35は、可撓性を有する絶縁フィルムに銅箔などからなる導電部(図示省略)を形成したもので、配線部材4の導電部4aとプリント配線板34の導電部34aとを電気的に接続する。
【0053】
本例の照明装置1Dは、レンズ2をプリント配線板34側に押圧する毎にスイッチ33が切替操作され、LED3がオンオフされる。LED3から放射された照明光は、図6に示すように、レンズ面に形成された反射膜31にて反射され、レンズ2の収納部形成面2b及び透光性に形成された配線部材4の導電部4aを通って外部に照射される。
【0054】
第4実施形態例に係る照明装置1Dは、レンズ2の押圧操作によりスイッチ33の切替操作を行うので、スイッチ33の切替操作を行うための特別な部材を省略することができ、照明装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0055】
なお、前記第4実施形態例に係る照明装置1Dにおいては、配線部材4の導電部4aとプリント配線板34の導電部34aとを電気的に接続するための接続手段としてフレキシブル配線板35を備えたが、かかる構成に代えて、図7に示すように、接続手段として一端がプリント配線板34の導電部34aと電気的に接続されたブラシ41を備え、当該ブラシ41の先端部を配線部材4の導電部4aに弾接することもできる。」
(1g)
図6は、以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載された発明

段落【0030】に記載された「レンズ2は」「透明樹脂の射出成形品をもって形成される」という構成、及び、段落【0040】に記載された「導電部4aとレンズ2との密着」という構成は、第4の実施形態とは別の実施形態の構成であるが、図6の第4の実施形態においても採用できることは明らかである。

段落【0010】の「レンズの光出射面」という記載、及び、第4の実施形態の図6から、第4の実施形態について説明した段落【0055】の「配線部材4の導電部4a」は、レンズ2の光出射面側の端部に位置する「配線部材4の導電部4a」であると認められる。

上記ア、イ、摘記(1a)?(1e)及び図6(摘記(1g))から、引用文献1の請求項1、4及び5に係る発明と図6における第4の実施形態とに着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「LED3と、
前記LED3の収納部2aを有し、前記LED3から放射された照明光を拡散する、透明樹脂の射出成形品をもって形成される、レンズ2と、
レンズ2と密着し透明導電材料をもって形成した導電部4aを有し、当該導電部4aが前記LED3に電気的に接続された配線部材4と、
レンズ2の光出射面側の端部に位置する配線部材4の導電部4aとプリント配線板34の導電部34aとを電気的に接続するための接続手段としてフレキシブル配線板35と、
を備え、
前記レンズ2と一体に前記導電部4aと電気的に接続された外部接続コネクタを形成した、
自動車用照明装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0001】
本発明は、照明装置及び液晶表示装置に関する。より詳しくは、発光ダイオードを備えるエッジライト型の照明装置、及び、該照明装置を備える液晶表示装置に関する。
・・・
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数が減らされ、効率化されたLED基板を備える照明装置を提供することを目的とするものである。」
(2b)
「【0032】
LED基板(発光ダイオード基板)103は、LEDを実装するための配線板であり、LEDを構成する各部材に加え、LEDに対して電源電圧を供給するための電極を有する。LED基板(フレキシブル基板)の基材を構成する材料としては、イミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
固定板107は、LED基板をバックライトシャーシに固定するための部材であり、LED基板に固定される面と、バックライトシャーシに固定される面との少なくとも2つの面を有する。・・・
【0051】
LED基板103はフレキシブル基板であり、アレイ部103aとリード部103bとの境界、及び、リード部103bとコネクタ部103cとの境界でそれぞれ折り曲げて用いることが可能である。本形態の場合、コネクタ部103cの位置とバックライトシャーシの貫通孔の位置とが対応するようにそれぞれが形成されていることが好ましく、そうでない場合、リード部103bが更にL字等の複数の屈曲部を有している必要がある。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「本考案は上述したような問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、1つの灯室内に表示機能の異なる複数種の光源を組み込むことにより小型軽量化を図った自動車用灯具を提供することにある。」(3ページ10?14行)
(3b)
[実施例]
「以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
第1図は本考案に係る自動車用灯具の一実施例を示す断面図、第2図は同灯具の正面図である。これらの図において、20は前面が開放する浅底箱型に形成された灯具ボディで、この灯具ボディ20は合成樹脂等によって一体に形成されている。
22はガラス、合成樹脂等によって形成された透明な前面レンズで、この前面レンズ22は前記灯具ボディ20の前面開口部21を閉鎖することにより、灯具ボディ20と共に灯室23を形成している。そして、前面レンズ22の内面には小さな多数の凸レンズもしくは魚眼レンズからなる拡散レンズ24が形成され、更に内壁面には基板25を保持する保持溝26が設けられている。
前記基板25は透明な合成樹脂等によって形成され、その表面には多数の発光ダイオード27が実装されている。これらの発光ダイオード27は例えば、23×9のマトリックス状に実装され、縦、横それぞれ隣り合うもの同士の発光色が異なることにより表示機能の異なる2種類の光源を構成するもので、第2図斜線を施された発光ダイオード27A群が赤色に発光することでテールアンドストップランプの光源(第1の光源)を構成し、斜線を施されていない発光ダイオード27B群がアンバー色に発光することで方向指示灯の光源(第2の光源)を構成している。そして、これらの発光ダイオード27Aと27Bとは別回路を構成し、そのリード線27aが前記透明基板25に設けた挿通孔(図示せず)を貫通し、透明基板25の裏面に形成された透明電極28に電気的に接続されている。
29は前記基板25の後方に配設された白熱電球のウェッジベースバルブで、このウェッジベースバルブ29は後退灯の光源(第3の光源)を構成している。ウェッジベースバルブ29と前記第1、第1の光源を構成する発光ダイオード27A、27Bとは別個独立した電気回路を構成している。そして、前記灯具ボディ20の中央部には取付け孔30が形成されており、この取付け孔30に前記ウェッジベースバルブ29のソケット31が嵌合されている。
32は前記基板25の表面に形成されたレンズステップで、このレンズステップ32は前記ウェッジベースバルブ29から出射し基板25を透過する光束33を灯体の光軸と平行な平行光束にするもので、同心円状に形成された多数の環状突起からなるフレネルレンズで構成されている。
このような構成からなる自動車用灯具において、ブレーキを踏むと、第1の光源である発光ダイオード27Aが点滅し、前面レンズ22を赤色に照射する。進路変更する際、方向指示器を操作すると、第2の光源である発光ダイオード27Bが点灯し、前面レンズ24をアンバー色に照射する。この時、ブレーキを踏むと、発光ダイオード27Aが点滅し、アンバー色と赤色の斑照射となる。後退時にシフトレバーをバックに入れると、ウェッジベースバルブ29が点灯し、その光が基板25を透過して前面レンズ23を白色に照射する。」(4ページ10?7ページ9行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「前記LED3の収納部2aを有し、前記LED3から放射された照明光を拡散する、透明樹脂の射出成形品をもって形成される、レンズ2」と、本願発明1の「透光性のフィルム」とは、「透光性の部材」の限りで共通している。
(イ)
引用発明の「透明導電材料をもって形成した導電部4a」は、本願発明1の「導電層」に相当すること、及び、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「レンズ2と密着し透明導電材料をもって形成した導電部4a」と、本願発明1の「当該フィルム上に配置された導電層」とは、「当該部材上に配置された導電層」の限りで共通している。
(ウ)
そして、引用発明の「レンズ2」及び「導電部4a」は、いずれも「透明」であること、及び、上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明の「前記LED3の収納部2aを有し、前記LED3から放射された照明光を拡散する、透明樹脂の射出成形品をもって形成される、レンズ2」及び「レンズ2と密着し透明導電材料をもって形成した導電部4aを有し、当該導電部4aが前記LED3に電気的に接続された配線部材4」の構成と、本願発明1の「透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板」の構成とは、「透光性の部材、および当該部材上に配置された導電層を含む透明部材」の構成の限りで共通している。

(ア)
引用発明において、「レンズ2」は、「前記LED3の収納部2aを有し」ているから、引用発明の「LED3」は、「レンズ2」に「収納」されることで、「レンズ2」に支持される構成を備えるといえる。
(イ)
引用発明は、「当該導電部4aが前記LED3に電気的に接続された配線部材4」「を備え」るから、引用発明の「LED3」は、「配線部材4」の「導電部4a」と「電気的に接続され」ている構成を備えるといえる。
(ウ)
上記ア(ウ)を踏まえると、引用発明の「レンズ2」は、透明部材の一部を構成しているといえる。
したがって、引用発明の上記(ア)、(イ)の構成を備える「LED3」と、本願発明1の「前記透明基板に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子」とは、「前記透明部材に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子」の限りで共通している。

(ア)
引用発明の「接続手段として」の「フレキシブル配線板35」は、本願発明1の「フレキシブル回路基板を含む接続部」に相当する。
また、引用発明の「接続手段として」の「フレキシブル配線板35」は、「レンズ2の光出射面側の端部に位置する配線部材4の導電部4aと」「電気的に接続する」ことから、「レンズ2の光出射面側の端部」において「配線部材4の導電部4aと」「電気的に接続する」といえる。
(イ)
したがって、引用発明の「配線部材4の導電部4a」は、本願発明1の「導電層」に相当すること(ア(イ))、引用発明の「レンズ2」は、透明部材の一部を構成しているといえること(上記イ(ウ))、及び、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「レンズ2の光出射面側の端部に位置する配線部材4の導電部4aとプリント配線板34の導電部34aとを電気的に接続するための接続手段としてフレキシブル配線板35」と、本願発明1の「前記透明基板の端部において前記導電層と電気的に接続されたフレキシブル回路基板を含む接続部」とは、「前記透明部材の端部において前記と電気的に接続されたフレキシブル回路基板を含む接続部」の限りで共通している。

引用発明の「前記導電部4aと電気的に接続された外部接続コネクタ」は、本願発明1の「前記接続部と電気的に接続されたコネクタ」に相当する。

引用発明の「照明装置」及び「自動車用照明装置」は、それぞれ、本願発明1の「灯具」及び「車両に搭載される灯具」に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「車両に搭載される灯具であって、
透光性の部材、および当該部材上に配置された導電層を含む透明部材と、
前記透明部材に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子と、
前記透明部材の端部において前記導電層と電気的に接続されたフレキシブル回路基板を含む接続部と、
前記接続部と電気的に接続されたコネクタとを備える、灯具。」
<相違点>
「透光性の部材、および当該部材上に配置された導電層を含む透明部材」が、本願発明1では、「透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板」であるのに対して、引用発明では、「前記LED3の収納部2aを有し、前記LED3から放射された照明光を拡散する、透明樹脂の射出成形品をもって形成される、レンズ2」及び「レンズ2と密着し透明導電材料をもって形成した導電部4aを有し、当該導電部4aが前記LED3に電気的に接続された配線部材4」である点。

(2)相違点についての判断

引用文献2(摘記(2b)の段落【0033】等参照)には、「LED基板(フレキシブル基板)の基材を構成する材料としては、イミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。」等が記載されているが、透明基板は記載されておらず、本願発明1の「透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板」(特に、「透光性のフィルム」及び「透明基板」という構成)すなわち上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献2にも、記載も示唆もされていない。

また、本願発明1の「透明基板」に対応している引用発明の「透明樹脂の射出成形品をもって形成される、レンズ2」及び「透明導電材料をもって形成した導電部4a」は、いずれも「透明」であるが(上記(1)ア(ウ))、引用文献2には、「透明基板」に対応する部材は記載されておらず(上記ア参照)、引用文献1(引用発明)と引用文献2とでは、解決しようとする課題も異なるから(摘記(1c)及び(2a)参照)、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けは存在しないといえる。
なお、原査定において、本願発明5に対して引用され、本願発明1に対して引用されたものではないが、引用文献3についても、念のため、以下に検討する。
引用文献3(摘記(3b)参照)には、「透明基板25の裏面に形成された透明電極28」が記載されているが、引用文献3にも、本願発明1の「透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板」(特に、「透光性のフィルム」という構成)すなわち上記相違点に係る本願発明1の構成は、記載も示唆もされておらず、引用文献1(引用発明)と引用文献3とでは、解決しようとする課題も異なるから(摘記(1c)及び(3a)参照)、「透明」な構成が共通しているというだけでは、引用発明に引用文献3に記載された技術事項を適用する動機付けが充分にあるとはいえないし、仮に、引用発明に、引用文献3に記載された技術事項(透明基板25等の構成)を適用することができたとしても、本願発明1が備える「透光性のフィルム」の構成が得られるものではない。

さらに、引用発明の「レンズ2」は、「LED3の収納部2aを有し」ているところ、「レンズ」や「収納部」の機能等に関して、引用文献1(摘記(1c)?(1e)参照)には、「前記の課題を解決するため、照明装置については、第1に、LEDと、前記LEDの収納部を有し、前記LEDから放射された照明光を拡散するレンズと、導電部を有し、当該導電部が前記LEDに電気的に接続された配線部材とを備えるという構成にした。」(段落【0009】)、「かかる構成によると、レンズの一面に形成された収納部内にLEDを収納するので、照明装置の全厚をレンズの厚さと配線部材の厚さの合計値にすることができ、照明装置の顕著な薄形化を図ることができる。また、LEDをレンズの一面に形成された収納部内に収納するので、LEDから放射された照明光を無駄なくレンズの光出射面に導くことができ、LEDの設定数の減少による照明装置の低コスト化を図ることができる。」(段落【0010】)、「レンズ2は、照明装置のカバーを兼ねる」(段落【0030】)、及び、「レンズ2の押圧操作によりスイッチ33の切替操作を行うので、スイッチ33の切替操作を行うための特別な部材を省略することができ、照明装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。」(段落【0054】)と記載されている。
引用発明において、本願発明1の「透明基板」を構成しようとして、「レンズ2」を透光性のフィルムに代えてしまうと、レンズでなく収納部も備えないものとなり、上記の「拡散」、「薄形化」、「LEDから放射された照明光を無駄なくレンズの光出射面に導く」、「カバーを兼ねる」及び「切替操作」等の「レンズ2」や「収納部2a」に係る機能を維持することができなくなってしまうから、引用発明の「レンズ2」を、本願発明1の「透光性のフィルム」に代えることに、阻害要因があることは、明らかである。

以上のとおりであるから、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-05 
出願番号 特願2014-78630(P2014-78630)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F21S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
島田 信一
発明の名称 車両用灯具  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ