ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B |
---|---|
管理番号 | 1356585 |
審判番号 | 不服2018-8042 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-12 |
確定日 | 2019-10-31 |
事件の表示 | 特願2014- 54006「導電性微粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-176824〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月17日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年12月13日付け :拒絶理由通知書 平成30年 2月15日 :意見書及び手続補正書の提出 平成30年 2月26日付け :拒絶査定 平成30年 6月12日 :審判請求書及び手続補正書の提出 平成31年 3月 1日付け :拒絶理由通知書及び審尋 令和 1年 5月 7日 :意見書及び手続補正書の提出 (以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願の特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5は、本件補正によって補正されており、そのうち、請求項1は、次のとおりのものである(なお、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、 前記導電性金属層がニッケル及びホウ素を含むものであり、 前記導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であることを特徴とする導電性微粒子。」 なお、本願の特許請求の範囲の記載は、本件補正により出願当初の、すなわち、平成29年12月13日付け拒絶理由通知が通知された時点における特許請求の範囲の記載と同じとなった。 第3 拒絶の理由 平成29年12月13日付けの拒絶理由は、以下の理由を含むものである。なお、「・・・」は記載の省略を表す(以下同様)。 「1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・・・ 4.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ・・・ 記 ●理由1について ・請求項1?4 (1) 請求項1では「粒状構造の存在個数」によって発明を規定している。 これに対し、発明の詳細な説明には、 「なお、前記粒状構造とは、各粒単位が独立した粒として存在している構造をいい、粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない。」(【0016】)、 「<表面形状観察(粒状構造密度の評価)> 導電性微粒子の導電性金属層表面を、走査型電子顕微鏡(拡大倍率10万倍)で観察した。導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲内に存在する長径が5nm以上、100nm以下の粒状構造の個数を読み取った。10個の導電性微粒子について、上記評価を行い、平均値を粒状構造の密度とした。 なお、粒状構造の長径は、以下のようにして測定した。 導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲の画像を、画像処理ソフト(Media Cybernetics社製「Image-Pro Plus」)に導入して粒状構造の抽出を行い、各粒状構造の最大直径を長径として測定した。」(【0091】) と記載されている。 ここで、上記発明の詳細な説明の記載によれば、【0091】において粒状構造の個数をカウントする際には、ある条件を具体的に設定した上でその条件に合致する場合は「部分的に合一している」(【0016】)構造として判断し粒状構造の個数としてはカウントしていないものと解される。しかしながら、当該条件は粒状構造の個数に大きく影響を与えると解されるにもかかわらず、発明の詳細な説明ではその条件について具体的に開示していない。また、技術常識からして当該条件が明らかであるともいえない。 そうしてみると、この出願の発明の詳細な説明は、粒状構造の存在個数について特定する請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。請求項2?4に係る発明も同様である。 ・・・ ●理由4について ・請求項1?4 請求項1には「粒状構造」と記載されているが、具体的にどのような構造であれば「粒状構造」に含まれるのかが不明である。よって、請求項1に係る発明は明確でない。請求項2?4に係る発明も同様である。」 第4 当審の判断(本願が拒絶されるべき理由) 1 特許法第36条第6項第2号(明確性について) (1) 本願明細書の記載 本願発明について、本願の明細書(以下「本願明細書」という。)には次の記載がある(なお、下線は、審決による。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、特に、導電性に優れた導電性微粒子に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、これらのニッケル-ホウ素メッキを施した導電性微粒子では、導電性が十分でない場合があった。本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材粒子の表面にニッケル及びホウ素を含む導電性金属層を有し、優れた導電性を達成しうる導電性微粒子を提供することにある。」 「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、導電性微粒子の導電性の向上のためには、導電性金属層の材質に加えて、その構造も重要であるとの知見を得た。そして、導電性金属層表面に特定サイズの粒状構造が存在すると、導電性微粒子の導電性が低下しやすいことをつきとめ、特定サイズの粒状構造を低減すれば導電性を改善できることを見出し、本発明を完成した。 【0008】 すなわち、本発明に係る導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記導電性金属層がニッケル及びホウ素を含むものであり、前記導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像(SEM像)で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であることを特徴とする。前記粒状構造の長径は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。」 「【図面の簡単な説明】 【0012】 ・・・ 【図2】図2は、実施例1で得られた導電性微粒子の導電性金属層の破断面の、拡大倍率100,000倍の走査型電子顕微鏡画像である。 ・・・ 【図4】図4は、実施例2で得られた導電性微粒子の導電性金属層の破断面の、拡大倍率100,000倍の走査型電子顕微鏡画像である。 ・・・ 【図6】図6は、比較例1で得られた導電性微粒子の導電性金属層の破断面の、拡大倍率100,000倍の走査型電子顕微鏡画像である。 ・・・ 【図8】図8は、比較例2で得られた導電性微粒子の導電性金属層の破断面の、拡大倍率100,000倍の走査型電子顕微鏡画像である。」 「【0013】 導電性微粒子 本発明は、基材粒子と、その表面を被覆するニッケル-ホウ素系導電性金属層(以下、「金属層」ということがある。)とを有する導電性微粒子を対象としており、該導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であることを特徴とする。本発明の導電性微粒子は、前記特定サイズの粒状構造の存在割合が低減されているため、粒単位と粒単位の境界(以下、「粒界」ということがある。)で生じる電流の阻害が低減され、導電性微粒子全体として良好な導電性を発揮することができる。前記特定サイズの粒状構造の存在個数は、拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、15個以下であることが好ましく、12個以下であることがより好ましい。 【0014】 また、導電性微粒子の導電性金属層に粒状構造が存在する場合、前記導電性金属層に存在する前記粒状構造の長径は、導電性向上の観点からは、5nm以上、30nm以下であることが好ましい。すなわち、導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍のSEM像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上、30nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であることが好ましい。長径が5nm以上、30nm以下の粒状構造に関しても、その存在個数は、15個以下であることがより好ましく、12個以下であることがさらに好ましい。」 「0015】 本発明でいう粒状構造の長径は、導電性金属層表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡像で観察したときに観察される粒状構造の長径を意味する。前記粒状構造の長径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製「S-4800」)を用いて、拡大倍率10万倍で観察した金属層表面の画像を、画像処理ソフト(Media Cybernetics社製「Image-Pro Plus」)に導入して粒状構造の抽出を行い、各粒状構造の最大直径を長径として測定することができる。」 「【0016】 なお、前記粒状構造とは、各粒単位が独立した粒として存在している構造をいい、粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない。また、粒状構造を有しなくとも、導電性金属層の表面に凹凸が観察されることがあるが、各凹凸単位が独立せず、部分的に合一していれば、粒界における電流の阻害の影響が十分に低減されるため、導電性微粒子全体として良好な導電性を発揮することができる。」 「【0091】 <表面形状観察(粒状構造密度の評価)> 導電性微粒子の導電性金属層表面を、走査型電子顕微鏡(拡大倍率10万倍)で観察した。導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲内に存在する長径が5nm以上、100nm以下の粒状構造の個数を読み取った。10個の導電性微粒子について、上記評価を行い、平均値を粒状構造の密度とした。 なお、粒状構造の長径は、以下のようにして測定した。 導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲の画像を、画像処理ソフト(Media Cybernetics社製「Image-Pro Plus」)に導入して粒状構造の抽出を行い、各粒状構造の最大直径を長径として測定した。」 「【0098】 実施例1 製造例1で製造した基材粒子(1)に、直接無電解メッキ処理を施して、導電性微粒子を製造した。具体的には、基材粒子(1)0.5gをノニオン系界面活性剤PEG1000を1g/L含む水溶液100mlで処理して、基材粒子の表面を改質した。次いで、水洗した後、得られた粒子を、塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/Lおよび濃塩酸100mL/Lからなる水溶液に浸漬し、ろ過および水洗を行った後、10質量%塩酸で処理して、基材粒子表面にパラジウム触媒を坦持させた。 【0099】 次いで、得られた基材粒子を水洗した後、フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩)を含有する純水中に加えてスラリーを作製した。このスラリーを、70℃に加温した純水2000mL中に投入して撹拌することにより、基材粒子分散液を調製した。次に、得られた基材粒子分散液を撹拌しながら、該基材粒子分散液に、以下の組成で調製した無電解ニッケルメッキ液2000mLを160mL/minの滴下速度で滴下した。 【0100】 無電解ニッケルメッキ液は、硫酸ニッケル六水和物30g/L、エチレンジアミン50g/L、水酸化ナトリウム30g/L、水素化ホウ素ナトリウム0.6g/Lとなるよう調製した。なお、滴下に供した無電解ニッケルメッキ液はpH6に調整し、70℃に加温した。 【0101】 無電解ニッケルメッキ液の滴下終了後、60分間撹拌を継続して反応を完結させた。その後、生じた無電解メッキ粒子をろ過し、水洗、乾燥を施して、導電性微粒子(1)を得た。この導電性微粒子(1)の個数平均粒子径は9.32μm、変動係数(CV値)は3.9%であり、導電性金属層(Ni-B層)の厚さは150nmであった。 導電性微粒子(1)の製造に用いた無電解メッキ液の組成条件、導電性微粒子(1)についての分析および評価結果を表1に示す。 【0102】 実施例2、比較例1、2 実施例1において、無電解メッキ液組成に表1に示す通りに変更した以外は同様にして、導電性微粒子(2)(実施例2)、導電性微粒子(c1)(比較例1)および導電性微粒子(c2)(比較例2)をそれぞれ製造した。各導電性微粒子について、製造に用いた無電解メッキ液の組成条件、分析結果、および評価結果を表1に示す。 【0103】 【表1】 【0104】 上記表1から、走査型電子顕微鏡(拡大倍率10万倍)で観察した、導電性微粒子像のほぼ中央部領域における200nm四方の範囲内に存在する長径が5nm以上、100nm以下の粒状構造の個数が所定範囲であると、導電性微粒子の抵抗値が低く、導電性に優れることがわかる。」 「 」 (2) 本願発明が明確性を満たさない具体的な理由 本願の請求項1には「前記導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であること」との記載があるが、当該記載における「粒状構造」がどのような形状を有しているものであるかがわからず、明確でない。 すなわち、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「なお、前記粒状構造とは、各粒単位が独立した粒として存在している構造をいい、粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない。」(【0016】)、 「<表面形状観察(粒状構造密度の評価)> 導電性微粒子の導電性金属層表面を、走査型電子顕微鏡(拡大倍率10万倍)で観察した。導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲内に存在する長径が5nm以上、100nm以下の粒状構造の個数を読み取った。10個の導電性微粒子について、上記評価を行い、平均値を粒状構造の密度とした。 なお、粒状構造の長径は、以下のようにして測定した。 導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲の画像を、画像処理ソフト(Media Cybernetics社製「Image-Pro Plus」)に導入して粒状構造の抽出を行い、各粒状構造の最大直径を長径として測定した。」(【0091】) 上記発明の詳細な説明の記載によれば、「粒状構造」は、「各粒単位が独立した粒として存在している構造をいい、粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない」ものとされているから、本願発明の「粒状構造」がどのような形状であるかを理解するには、本願発明の「粒状構造」に含まれない「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」が明確でなければならない。 しかし、発明の詳細な説明の記載を精査しても、本願発明の「粒状構造」に含まれない「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」を識別するための判断基準についての記載はなく、本願発明の「粒状構造」がどのようなものか理解できない。 しかも、発明の詳細な説明において具体的に示されている拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡写真である図2、4、6、8をみても、図2及び図4は断面の画像であって表面の画像でないから、「粒状構造」及び「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」は判別できないし、図6ではどこに粒状構造が存在しているかさえわからない。さらに、図8の画像は比較例2で得られた導電性微粒子のものであって、本願明細書の【表1】によれば、比較例2の粒状構造の個数は「148」とされているが、どの部分の形状が148個もの「粒状構造」に該当するのか、どの部分の形状が「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」に該当するのかを判別することはできない。 以上のことから、本願発明の「粒状構造」が、拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、どのような形状を有しているものであるかがわからず、発明の詳細な説明の記載をみても理解できないから、本願発明は、明確でない。 2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件について) (1) 発明の詳細な説明の記載 本願の発明の詳細な説明には、上記1(1)のとおりの記載がある。 (2) 本願発明が実施可能要件を満たさない具体的な理由 本願発明は、「前記導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数が20個未満であること」を発明特定事項としているから、本願発明が実施可能であるといえるためには、「粒状構造の存在個数」を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像においてカウントできなければならない。 そして、本願発明の「粒状構造」は、「各粒単位が独立した粒として存在している構造をいい、粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない」ものとされているが、発明の詳細な説明の記載を精査しても、本願発明の「粒状構造」に含まれない「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」を識別するための判断基準について全く記載されていない。 また、発明の詳細な説明における具体的な実施例における拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡写真である図2、4、6、8を確認しても、どの部分が「粒状構造」及び「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」に該当するか識別できず、当業者といえども、導電性金属層の表面を拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像で観察したときに、200nm四方あたりに、長径が5nm以上100nm以下の粒状構造の存在個数をカウントできない。 よって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 第5 請求人の主張の検討 1 平成30年2月15日提出の意見書における主張について (1) 請求人は、実施可能要件及び明確性についての拒絶理由に対して、以下のように主張している。 「粒単位が複雑な形状の構造であれば、確かに審査官殿のご指摘の通り「粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造」を識別することができないため、上記判断基準の詳細を明細書中に記載しておく必要があると考えます。しかし、本願発明のように粒単位が球状構造であれば、球同士が部分的に結合(合一)しているか否かはSEM画像により判別することができます(段落0091)。そのため、当業者であれば本願明細書に記載されている事項に基づき本願発明を実施することができます。」(意見書の2頁1行?6行) 「本願請求項1の「粒状構造」は「球状構造を有する粒状構造」であることを規定する補正を行いましたので、本願発明の「粒状構造」は明確になりました。」(意見書の3頁23行?25行) (2) しかし、請求人の当該主張は、特許請求の範囲の「粒状構造」との記載を「球状構造を有する粒状構造」と補正したこと(平成30年2月15日提出の手続補正書)を根拠とするものであるから、当該補正がなされていない本願発明においては何ら意味を持たない。 2 令和1年5月7日提出の意見書における主張について (1) 請求人は、当審からの審尋に対して、以下のように主張している。 「実施例1、比較例2における拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像(SEM像)をそれぞれ参考図1、2としてご提示いたします。 まず参考図1から解ります様に、実施例1の例では粒状構造は存在しません。 一方、本願明細書では粒状構造について「各粒単位が独立した粒として存在している構造」と定義しており、一般に粒とは「まるくて小さいもの」の意味であるところ(広辞苑ご参照。本願でもこの通常の意味で用語「粒」を使用しております)、参考図2から解ります様に、比較例1の例では、独立した粒(まるくて小さいもの)が多数存在していることがすぐにご理解頂けるものと思料します。 ここで本願明細書では上記「粒状構造」について、「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない」とも説明しており(段落0016)、例えば参考図2の赤枠で示した箇所が、こうした「部分的に合一しているような構造」に該当します。この赤枠の部分は、他の多数の粒(丸くて小さいもの)とは異なる構造を有することは明らかであると思料され、粒(丸くてちいさいもの)と粒(丸くてちいさいもの)との間(すなわち粒界)が途切れて、粒単位と粒単位とが部分に合一しているような(すなわち粒が一方向につながった様な)構造をしていることが見て取れます。即ち「粒界が途切れて粒単位と粒単位が部分的に合一しているような構造は含まない」という除外規定は、こうした赤枠部分の様な構造を排除するための規定であって、実際の観察結果に則したものになっていると思料します。 以上の説明により、本願請求項1の「粒状構造」がどのようなものであるかについて、更には「粒状構造」をどのように数えるかについてご理解頂けると思料致します。」 (2) 請求人が提示した比較例2における拡大倍率10万倍の走査型電子顕微鏡画像(SEM像)である参考図2をみても、「各粒単位が独立した粒として存在している構造」と「部分的に合一しているような構造」(3箇所の赤枠で示されている)とをどのように見分けるのか理解できない。 また、当該参考図2と発明の詳細な説明に記載の図8(比較例2の拡大倍率10万倍のSEM画像)を併せ見ると、比較例2の導電性粒子の表面には、80?220nm程度の突起と20nm前後の突起が多数存在しているように見受けられるが、80?220nm程度の大きな突起上にも20nm前後の小さな突起が存在しているように見受けられ、大きな突起上の小さな突起は「部分的に合一しているような構造」に該当するのかどうか不明である。 さらに、発明の詳細な説明において、「導電性微粒子像の中央部領域における200nm四方の範囲の画像を、画像処理ソフト(Media Cybernetics社製「Image-Pro Plus」)に導入して粒状構造の抽出を行い、各粒状構造の最大直径を長径として測定した」(段落【0091】)とされているが、粒単位と粒単位が部分的に合一しているような粒状体は含まれないのであるから、部分的に合一しているものをどのような基準で除外して「粒状構造の抽出を行」っているのか不明である。しかも、当審からの審尋に対し、具体的なアルゴリズム等も示されず、同じ装置を使って画像認識しても、粒状構造がどのように抽出されて長径がどのように特定されるのか依然として理解不能である。 以上のことから、請求人の主張を検討しても、本願請求項1の「粒状構造」がどのようなものであるかわからず、更には「粒状構造」をどのように数えるかについても理解できない。 よって、請求人の主張を勘案しても、指摘した不明は解消されない。 第6 むすび 上記のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-08-27 |
結審通知日 | 2019-09-03 |
審決日 | 2019-09-17 |
出願番号 | 特願2014-54006(P2014-54006) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H01B)
P 1 8・ 537- WZ (H01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青鹿 喜芳 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 池渕 立 |
発明の名称 | 導電性微粒子 |
代理人 | 植木 久彦 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |
代理人 | 植木 久彦 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |
代理人 | 菅河 忠志 |