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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1356604
審判番号 不服2018-17173  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-25 
確定日 2019-10-31 
事件の表示 特願2017-186281「ハイブリッドセルおよびCSGセル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-225197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)9月15日(優先権主張 平成21年10月2日)を国際出願日とする特願2011-534052号の一部を、平成26年7月11日に新たな特許出願とした特願2014-143294号の一部を、平成28年3月16日に新たな特許出願とした特願2016-52483号の一部を、平成29年9月27日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月11日付け 拒絶理由通知書
平成30年 8月 9日 意見書の提出
平成30年 9月18日付け 拒絶査定
平成30年12月25日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、および前記基地局と通信を行いトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記基地局を介して前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システムであって、
前記アクセス管理装置は、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とを前記基地局を介して前記移動端末へ通知し、
前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行することを特徴とする移動体通信システム。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「 移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、および前記基地局と通信を行いトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記基地局を介して前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システムであって、
前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知し、
前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行することを特徴とする移動体通信システム。」

という発明(以下、「本願補正発明」という。)とすることを含むものである(下線は新たに追加された補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無
補正後の請求項1には「1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」と記載されていることから、「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ別個に定義すること」及び/又は「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ移動端末へ通知」することが補正後の請求項1に含まれることとなった。
一方、本願明細書には2種類のトラッキングエリアアップデートの周期に関して、段落[0172]に「本実施の形態3の変形例2での解決策を以下に示す。実施の形態3、実施の形態3の変形例1に加えて、周期的なトラッキングエリアアップデートの周期を2種類持つようにする。また、該2種類の周期のうち、1つ目の周期は、テンポラリー登録を行っていない移動端末、あるいはCSG登録を行っていない移動端末用とし、2つ目の周期は、テンポラリー登録、あるいはCSG登録を行っている移動端末用に分けて用いる。該2種類の周期は、システム情報にてネットワーク側から移動端末へ通知される。」と記載されているのみである。ここで、「システム情報にて2つのトラッキングエリア更新周期を移動端末に通知」することが記載されているが、システム情報は全ての移動端末に共通にブロードキャストされるものであり、「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ別個に定義すること」及び/又は「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ移動端末へ通知」するものではない。
したがって、前記アクセス管理装置は、「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ別個に定義すること」及び/又は「1つの移動端末につき2つのトラッキングエリア更新周期をそれぞれ移動端末へ通知」することは、本願出願当初の明細書等に記載されておらず、当該事項は本願出願当初の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、本願出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内のものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に違反するものである。

(2)独立特許要件
上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、更に進めて、仮に請求項1についての上記補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

ア 特許法第36条第6項第1号について
上記(1)のとおり、「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」することは、本願出願当初の明細書等に記載されておらず、自明な事項でもない。したがって、請求項と発明の詳細な説明の記載との対応関係も不明であり、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

イ 特許法第36条第6項第2号について
「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」と記載されているが、「1つの移動端末につき」の係り受けが不明確であり、「それぞれ」が「移動端末」、「第1のトラッキングエリア更新周期」、「第2のトラッキングエリア更新周期」、「通知」の間のどのような関係を表しているか不明確である。したがって、本願補正発明は明確でない。

ウ 特許法第29条第2項について
(ア)本願補正発明
本件補正後の請求項1の記載は以下の通りである(再掲)。
「 移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、および前記基地局と通信を行いトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記基地局を介して前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システムであって、
前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知し、
前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行することを特徴とする移動体通信システム。」

しかしながら、上記「イ 特許法第36条第6項第2号について」に記載したように、本願補正発明は明確でないことから、本願明細書段落[0172]の記載に基づき、「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき、第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」は「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」することを含むと認められる。したがって、本件補正発明を、次のとおりのものと認め、特許法第29条第2項を検討する。

「 移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、および前記基地局と通信を行いトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記基地局を介して前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システムであって、
前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し、前記基地局を介して前記移動端末へ通知し、
前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行することを特徴とする移動体通信システム。」

(イ)引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2008/0220782号明細書、2008年9月11日公開(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

a 「[0004] In LTE, the tracking area (TA) concept replaces the universal mobile telecommunications system (UMTS) routing area/location area (RA/LA) and UMTS terrestrial radio access network registration area (URA) concepts to simplify the mobile area tracking operations and to reduce the overhead caused by the area updates a wireless transmit/receive unit (WTRU) has to perform. When a WTRU is in the LTE_IDLE state, it is typically not transmitting or receiving any packets. Because the WTRU is not in active communication with a base station or an enhanced Node B (eNB), its location may not be exactly known. A TA represents an area in which the WTRU was last registered, and it is necessary to page the WTRU in the TA to locate the WTRU in a particular cell. A TA update (TAU) is generated when the WTRU crosses the boundary from one TA to another TA.」(1ページ)
(当審仮訳:
LTEにおいて、トラッキングエリア(TA)の概念は、Universal Mobile Telecommunications Systems(UMTS:ユニバーサル移動電話システム)のルーティングエリア/ロケーションエリア(RA/LA)及びUMTS Terrestrial Radio Access Network Registration Area(URA)の概念に取って代わり、携帯電話エリアトラッキング操作を簡略化して、無線送信/受信ユニット(WTRU)が実行する必要のあるエリアの更新によって生じるオーバーヘッドを軽減する。WTRUは、LTE_IDLE状態にあるときは通常、いかなるパケットも送信又は受信していない。WTRUが基地局又はenhanced Node B(eNB)とアクティブに通信していないので、そのWTRUの位置は正確には知られていないこともある。TAはWTRUが最新に登録されたエリアを表し、特定のセル内のWTRUの位置を見つけるためにTA内のWTRUをページング(呼び出し)する必要がある。TAアップデート(TAU)は、WTRUがあるTAから別のTAへと境界を越えるときに生成される。)

b 「[0055] The network/eNB 620 includes a transmitter/receiver 622 and an antenna 624 connected to the transmitter/receiver 622 . A TAU/cell reselection counter and WTRU position monitor function 626 is in communication with the transmitter/receiver 622 and is configured to count TAUs and/or cell reselections and to receive updates of the WTRU's current position. A mobility state determination function 628 is configured to maintain the mobility state of the WTRU 600 and is in communication with the counter 626 and the transmitter/receiver 622 . The network/eNB 620 can perform both the method 400 and the method 500 .
[0056] TA Timer Management
[0057] In most cases, when the WTRU is in the LTE_Active state, the network would have known the location of the WTRU through the cell update procedure which the WTRU must have performed. Hence, periodically updating the TA (via a timer) might not be necessary, unless the network wishes to do so. This could be done either explicitly or implicitly. Alternatively, the network could signal the timer and instruct the WTRU to start the timer when it transitions to the LTE_IDLE state.
[0058] In the LTE_IDLE state, it might be necessary for the network to have accurate TA level information of the WTRU to minimize the paging load. The WTRU could be in different mobility scenarios: stationary, low mobility, and high mobility. The network could allocate a single timer whose length is appropriate given the mobility state of the WTRU. Alternatively, the network may allocate multiple timers (e.g., one for each mobility state or one for each assigned TA) with their lengths adjusted so as to achieve optimum paging efficiency versus TAU efficiency and the WTRU may have the ability to start and re-start these timers given its estimate of its mobility state and/or current TA.」(4ページ)
(当審仮訳:
[0055] ネットワーク/eNB620は、送信機/受信機622、及びその送信機/受信機622に接続されたアンテナ624を含む。TAU/セル再選択カウンタ及びWTRU位置監視機能626は、送信機/受信機622と交信し、TAU及び/又はセル再選択をカウントするように構成され、WTRUの現在の位置の更新を受け取るように構成されている。モビリティ状態判定機能628は、WTRU600のモビリティ状態を保持するように構成され、カウンタ626及び送信機/受信機622と交信する。ネットワーク/eNB620は、手順400及び手順500の両方を実行することができる。
[0056] TAタイマー管理
[0057] ほとんどの場合、WTRUがLTE_Active状態にあるとき、ネットワークは、WTRUが実行したに違いないセルアップデート(セル更新)手順を通じてWTRUの位置を認識するであろう。したがって、ネットワークが定期的なアップデートを望まない限り、(タイマーを介して)TAを定期的にアップデートする必要がない場合もありうる。アップデートは、明示的又は黙示的のいずれで行われてもよい。代替として、ネットワークは、タイマーに信号を送り、LTE_IDLE状態に遷移するときに、そのタイマーを始動するようWTRUに指示することもできる。
[0058] LTE_IDLE状態において、ネットワークにとって、ページング負荷を最小にするために、WTRUの正確なTAレベル情報を持つことが必要となる場合もある。WTRUは、静止、低モビリティ、及び高モビリティという異なるモビリティのシナリオにあってもよい。ネットワークは、WTRUのモビリティ状態を考慮して、長さが適切である単一のタイマーを割り当てることができる。代替として、ネットワークは、TAU効率に対して最適なページング効率を達成するように、長さが調整された複数のタイマー(例えば、モビリティ状態ごとに1つのタイマー、又は割り当てられたTAごとに1つのタイマー)を割り当てることもでき、WTRUは、そのWTRUのモビリティ状態及び/又は現在のTAの判断を考慮して、これらのタイマーを始動又は再始動する機能を備えることができる。)

上記の摘記した引用例の記載及び当業者における技術常識からみて、

上記aの記載及び上記bの段落57及び段落58によれば、引用例はLTE通信システムを前提としていることは明らかであり、上記a及び上記bの段落55の記載によれば、LTE通信システムはネットワークの一部であるeNBと無線送信/受信ユニット(WTRU)からなることは明らかである。また、ネットワークでトラッキングエリア(TA)の管理を行っていること及びWTRUはトラッキングエリアのアップデートするためにネットワークに対しトラッキングエリアアップデートを送信することは技術常識である。
したがって、引用例には、「無線送信/受信ユニット(WTRU)、eNB及びトラッキングエリアの管理を行うネットワークを含み、WTRUはトラッキングエリアのアップデートするため、ネットワークに対しトラッキングエリアアップデートを送信するLTE通信システム」が記載されているといえる。

上記bの段落57の記載及び技術常識によれば、ネットワークが定期的なアップデートを望む場合には、TAを定期的に(周期的に)アップデートする必要があるといえ、定期的にアップデートするためにタイマーを使用することは常套手段である。そして、上記bの段落58の記載によれば、ネットワークは長さが調整された複数のタイマー(例えば、モビリティ状態ごとに1つのタイマー、又は割り当てられたTAごとに1つのタイマー)を割り当てることが記載されていることから、ネットワークは1つのWTRUに対してモビリティ状態ごとのタイマー又はTAごとのタイマーという複数のタイマーを割り当てている。
したがって、引用例には、「ネットワークは、1つのWTRUに対してモビリティ状態ごとのタイマー又はTAごとのタイマーという複数のタイマーをそれぞれ定義し割り当て」ることが記載されているといえる。

上記bの段落58の記載によれば、WTRUではWTRUのモビリティ状態又は現在のTAの判断を考慮して、複数のタイマーのうちWTRUのモビリティ状態又は現在のTAに対応するタイマーを始動することが記載されているといえる。したがって、引用例には、「WTRUは、複数のタイマーのうちWTRUのモビリティ状態又は現在のTAに対応するタイマーを始動し周期的なトラッキングエリアアップデートを実行する」ことが記載されているといえる。

したがって、上記の摘記した引用例の記載並びに当業者における技術常識からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「無線送信/受信ユニット(WTRU)、eNB及びトラッキングエリアの管理を行うネットワークを含み、WTRUはトラッキングエリアのアップデートするため、ネットワークに対しトラッキングエリアアップデートを送信するLTE通信システムであって、
ネットワークは、1つのWTRUに対してモビリティ状態ごとのタイマー又はTAごとのタイマーという複数のタイマーをそれぞれ定義し割り当て、
前記WTRUは、前記複数のタイマーのうちWTRUのモビリティ状態又は現在のTAに対応するタイマーを始動し周期的なトラッキングエリアアップデートを実行するLTE通信システム。」

(ウ)対比及び判断
本願補正発明と引用発明を対比すると、

a 引用発明の「無線送信/受信ユニット(WTRU)」、「eNB」、「ネットワーク」はそれぞれ、本願補正発明の「移動端末」、「基地局」、「アクセス管理装置」に相当する。また、引用発明の「LTE通信システム」が移動体通信システムであることは技術常識である。
また、引用発明の「トラッキングエリアのアップデート」は本願補正発明の「トラッキングエリア更新」に相当し、引用発明のトラッキングエリアアップデートはトラッキングエリア更新を要求することを含む信号の送信であるといえるので、引用発明の「トラッキングエリアアップデートを送信する」ことは、本願補正発明の「トラッキングエリア更新を要求する信号を送信する」ことに相当する。よって、引用発明の「WTRUはトラッキングエリアのアップデートするため、ネットワークに対しトラッキングエリアアップデートを送信する」ことは、本願補正発明の「移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、」「アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する」ことに相当する。
したがって、本願補正発明の「移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、および前記基地局と通信を行いトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記基地局を介して前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システム」と引用発明の「WTRU、eNB及びトラッキングエリアの管理を行うネットワークを含み、WTRUはトラッキングエリアのアップデートするため、ネットワークに対しトラッキングエリアアップデートを送信するLTE通信システム」とは、「移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、およびトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システム」の点で共通する。

b 引用発明のタイマーは、周期的なトラッキングエリアアップデートのためのタイマーであるから、引用発明のタイマーの値はトラッキングエリア更新周期といえる。そして、引用発明の「1つのWTRUに対してモビリティ状態ごとのタイマー又はTAごとのタイマーという複数のタイマーをそれぞれ定義し割り当て」ることは、1つの移動端末につき複数のモビリティ状態ごとのタイマー値又は複数のTAごとのタイマー値を定義しているのであるから、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し割り当てているといえる。
したがって、本願補正発明の「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し、前記基地局を介して前記移動端末へ通知」することと、引用発明の「ネットワークは、1つのWTRUに対してモビリティ状態ごとのタイマー又はTAごとのタイマーという複数のタイマーをそれぞれ定義し割り当て」ることは、「前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し割り当て」ている点で共通する。

c 引用発明の「前記WTRUは、前記複数のタイマーのうちWTRUのモビリティ状態又は現在のTAに対応するタイマーを始動し周期的なトラッキングエリアアップデートを実行する」ことは、本願補正発明の「前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行する」に相当する。

以上を総合すると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 移動端末、前記移動端末と無線通信を行う基地局、およびトラッキングエリアの管理を行うアクセス管理装置を含み、前記移動端末はトラッキングエリアの更新を実行するため、前記アクセス管理装置に対しトラッキングエリア更新を要求する信号を送信する移動体通信システムであって、
前記アクセス管理装置は、1つの移動端末につき第1のトラッキングエリア更新周期と前記第1のトラッキングエリア更新周期とは異なる第2のトラッキングエリア更新周期とをそれぞれ定義し割り当て、
前記移動端末は、前記第1のトラッキングエリア更新周期もしくは前記第2のトラッキングエリア更新周期で周期的なトラッキングエリアの更新を実行する移動体通信システム」

(相違点1)
本願補正発明のアクセス管理装置は「前記基地局と通信を行」うのに対し、引用発明のトラッキングエリアの管理を行うネットワークは基地局であるeNBと通信を行うと特定されていない点。

(相違点2)
第1のトラッキングエリア更新周期及び第2のトラッキングエリア更新周期の移動端末への割り当てについて、本願補正発明ではこれらトラッキングエリア更新周期を移動端末へ「通知」しているのに対し、引用発明では通知しているか特定されていない点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
トラッキングエリアの管理を行う装置が移動端末と通信する際に基地局を介して通信することは常套手段にすぎず、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
「報知情報によりネットワーク側から割り当てられた複数の情報を端末に通知する。」ことは、例えば、特開2002-165260号公報の段落74にも「【0074】これに応じて無線通信部503は、まず、CPU504によって送られてきたトラフィック情報、基本周期情報T1、最大周期情報T2、エリアIDを報知情報として含んだ制御信号を生成する。ここで、報知情報は、制御チャネル内の報知チャネル(BCCH)に含まれる情報である。また、報知チャネルは、無線エリア内の各携帯電話機60に対して制御情報を報知するための基地局50から各携帯電話機60への片方向型チャネルである。」と記載されているように、当業者にとって技術常識といえる周知事項である。したがって、引用発明に周知事項の構成を採用することは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知事項の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上を総合すると、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」の項目で示した本願発明のとおりのものと認める。

2. 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、本件補正前の請求項1に対して引用例(米国特許出願公開第2008/0220782号明細書)が引用されている。

3.引用発明
引用発明は、上記「第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「ウ 特許法第29条第2項について」の「(イ)引用発明」の項で認定したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は上記「第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「ウ 特許法第29条第2項について」の「(ア)本願補正発明」で検討した上記本願補正発明から「1つの移動端末につき、」「それぞれ」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、上記「第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「ウ 特許法第29条第2項について」の項で検討したとおり、本願補正発明は引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-28 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2017-186281(P2017-186281)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
中木 努
発明の名称 ハイブリッドセルおよびCSGセル  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  
代理人 井上 和真  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 中島 成  
代理人 坂元 辰哉  

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