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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1356633
審判番号 不服2017-17913  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-01 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2015-534915「ビームスプリッタを用いたスペックルリデューサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日国際公開、WO2014/053178、平成27年11月 9日国内公表、特表2015-532455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月4日を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成28年 2月23日付け:拒絶理由通知
平成28年 6月 1日 :意見書・手続補正書の提出
平成28年10月26日付け:拒絶理由通知(最後)
平成29年 2月 1日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 7月25日付け:平成29年2月1日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(同年8月1月送達)
平成29年12月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 4月 6日 :上申書(補正案)
平成30年10月26日付け:審尋
令和 元年 5月 7日 :回答書

第2 平成29年12月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所であり、審判請求人が付したとおりである。)
「【請求項1】
レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、
スペックルを低減するためのコンポーネントと
を備え、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、
少なくとも第1及び第2の反射手段と
を備え、
前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、
前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、
前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、
前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ、
前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く、
前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供し、それにより、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を制御するように構成され、
前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻される
光アセンブリ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び11の記載は次のとおりである。
なお、平成29年2月1日にされた手続補正は却下されている。

「【請求項1】
レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、
スペックルを低減するためのコンポーネントと
を備え、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、
少なくとも第1及び第2の反射手段と
を備え、
前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、
前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、
前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、
前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ、
前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く、
前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻される
光アセンブリ。」

「【請求項11】
前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供するよう構成される
請求項1から10のいずれか一項に記載の光アセンブリ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項11に係る発明における「ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供するよう構成される」との発明特定事項について、さらに、「それにより、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を制御するように構成され」ることを特定しようとするものであって、補正前の請求項11に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
平成29年12月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定が引用した、本願の出願前に頒布された刊行物であるか又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-112623号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および光源装置を備えるプロジェクタに関する。」

(イ)「【0005】
しかしながら、レーザ光源のように、光源装置から射出された光線の位相が揃っている場合、スクリーンへの投射時に近傍の光線同士が干渉するため、スクリーンの手前の空間にスペックルパターンと呼ばれる干渉縞や斑が現れる。鑑賞者は、スクリーン面とスペックルパターンとの二重の像を観ることとなり、スクリーン面とスペックルパターンのそれぞれに焦点を合わせようとするため、鑑賞者には不快感が生じ、鑑賞者の疲労の増大という問題が生じることがある。
【0006】
・・・(略)・・・
【0007】
本願はこのような課題に鑑みてなされたものであり、光源装置から出力される光による画像の投影時に生じるスペックルパターンの発生の抑制を目的とする。」

(ウ)「【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第1の態様は光源装置を提供する。第1の態様の光源装置は、
光を射出する発光手段と、
入射光の一部を反射するとともに、残りを透過する分岐手段と、
前記分岐手段を経て入射する入射光を内部で循環させて、前記分岐手段に再び入射させる導光手段と、を備え、
前記分岐手段は、前記発光手段から射出され、前記導光手段を経ずに入射する入射光の一部を第1の反射光として照射面に向けて出力するとともに、残りを第1の透過光として前記導光手段に入射させ、かつ、前記導光手段からの入射光の一部を第2の反射光として前記導光手段へ再度入射させるとともに、残りを第2の透過光として前記照射面に向けて出力する、ことを要旨とする。
【0009】・・・(略)・・・
【0010】
第1の態様の光源装置において、
前記導光手段は、前記分岐手段からの入射光が再び前記分岐手段へ入射するまでの光路長が、前記発光手段から射出される光の可干渉距離以上となるように構成されていてもよい。」

(エ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
A1.システム構成:・・・(略)・・・
【0038】
図1に示すように、プロジェクタ10は、半導体レーザ装置20、光循環ユニット100、インテグレータレンズ21a?21c(照明光学系)、ライトバルブ37?39、ダイクロイックプリズム40および投射レンズ41を備える。以降、第1実施例では、半導体レーザ装置20aと光循環ユニット100を合わせて光源装置11と呼ぶ。同様に、レーザ装置20bと光循環ユニット100とを合わせて光源装置11と呼び、半導体レーザ光源20cと光循環ユニット100とを合わせて光源装置11と呼ぶ。
【0039】?【0040】・・・(略)・・・
光循環ユニット100は、入射光を内部で循環させ、循環回数に応じた光路長を有する光として出力する。よって、光循環ユニット100から出力される光には、複数種類の光路長を有する光が含まれることとなり、出力光の合成光は干渉性の低い光となる。こうして出力された干渉性の低い合成光を用いることにより、光の干渉を抑制できるため、スペックルパターンの発生を低減でき、鑑賞者の疲労と不快感を軽減できる。光循環ユニット100については、後に詳述する。
【0042】?【0046】・・・(略)・・・
【0047】
A2.光循環ユニットの詳細構成:
光循環ユニットの詳細構成について、図2および図3を参照して説明する。第1実施例における光循環ユニット100の詳細構成を例示する説明図である。図3は、第1実施例における光循環ユニット100の組み付けについて説明する説明図である。図2に示すように、光循環ユニット100は、三角プリズム200,210,220,230からなる導光部150と、ハーフミラー250と、三角プリズム240とを備える。
【0048】
導光部150を形成する各三角プリズム200?230は、矩形形状の3つの面と三角形形状の2つの面を有する三角柱である。・・・(略)・・・三角プリズム210,220および230の底面を形成する二等辺三角形の斜辺を含む側面は、それぞれ、反射面410,420、430として機能する。・・・(略)・・・
【0049】
ハーフミラー250は、三角プリズム200の底面の斜辺を含む側面に蒸着された銀薄膜により形成されている。ハーフミラー250は、入射光の一部を反射するとともに、入射光の他の一部を透過する。第1実施例では、反射率:透過率が約「1:1」となるように形成されている。・・・(略)・・・
【0050】・・・(略)・・・
【0051】
三角プリズム240は、三角プリズム200と同じ媒質(すなわち、同じ屈折率を有する)で形成されており、ハーフミラー250と半導体レーザ装置20bとの間に、ハーフミラー250に接するように配置されている。このように構成することにより、ハーフミラー250に入射する光の入射角と、ハーフミラー250から三角プリズム200に入射する光の入射角とをほぼ同じにできる。従って、三角プリズム200に所望の入射角で光を入射させることができ、光循環ユニット100内で安定して光を循環させることができる。」

(エ)「【0056】
図2に戻り、光循環ユニット100内における光の循環について説明する。・・・(略)・・・
【0057】
図2に示すように、半導体レーザ装置20bから射出された射出光300は、三角プリズム240の側面に対してほぼ垂直に入射し、三角プリズム240を透過してハーフミラー250に入射する。
【0058】
ハーフミラー250に入射した射出光300(破線)は、約50%が反射されて(反射光301:破線)インテグレータレンズ21に入射し、射出光300の残りの約50%は、ハーフミラー250を透過して(透過光302:一点鎖線)、三角プリズム200に入射する。
【0059】
透過光302は、三角プリズム210の反射面410で反射され、三角プリズム220に入射する。・・・(略)・・・図2に示すように、透過光302は、三角プリズム210の対辺を含む側面に対してほぼ垂直に三角プリズム210に入射するため、透過光302は約45°の入射角で反射面410に入射する。よって、透過光302は反射面410で全反射され、三角プリズム220の反射面420に入射し、三角プリズム220の反射面420,および三角プリズム230の反射面430で、反射面410と同様に全反射され、導光部150内を循環し、導光部150の内側から再びハーフミラー250に入射する。
【0060】
ハーフミラー250に入射した透過光302の約50%がハーフミラー250を透過して(透過光303:一点鎖線)インテグレータレンズ21に入射し、透過光302の残りの約50%が、三角プリズム210の反射面410に向かって反射される(反射光304:二点鎖線)。反射光304は、透過光302と同様に、反射面410,420および430で全反射され、導光部150内を循環して再びハーフミラー250に入射する。
【0061】
ハーフミラー250に入射した反射光304の約50%はハーフミラー250を透過して(透過光305:二点鎖線)インテグレータレンズ21に入射し、反射光304の残りの約50%が、三角プリズム210の反射面410に向かって反射される(反射光306:細鎖線)。反射光306は反射光304と同様に、導光部150内を循環してハーフミラー250に再び入射し、反射および透過される。以降、同様に、ハーフミラー250で反射され導光部150に入射した光は導光部150内を循環し、ハーフミラー250で反射および透過される。
【0062】
・・・(略)・・・
【0063】
インテグレータレンズ21に入射した複数種類の光(反射光301,透過光303,305)は、インテグレータレンズ21で照射面内での光量のバラツキが平坦になるように合成されて、ライトバルブ38に入射する。インテグレータレンズ21に入射する反射光301,透過光303,305は、互いにコヒーレント長以上の光路差のある光であるため、インテグレータレンズ21により合成された反射光301、透過光303、305の合成光は、干渉性の低い光となる。
【0064】
・・・(略)・・・
【0065】
・・・(略)・・・第1実施例のプロジェクタ10によれば、干渉性の低いレーザ光を利用して画像をスクリーンへ投影できるため、音や振動の発生を軽減しながら、スペックルパターンの発生を低減できる。・・・(略)・・・」

(オ)「【0094】
(3)上述の各実施例では、透過率を約50%、反射率を約50%に調整されたハーフミラー250を利用しているが、例えば、透過率および反射率が任意に調整された部分反射ミラーを用いても良い。」

(カ)図2は、以下のとおりである。


(カ)以上のとおりであるから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる

「 半導体レーザ装置20bと、三角プリズム200,210,220,230からなる導光部150と、ハーフミラー250と、三角プリズム240とからなる光循環ユニット100とを備え、

光循環ユニット100は、入射光を内部で循環させ、循環回数に応じた光路長を有する光として出力することにより、光の干渉を抑制して、スペックルパターンの発生を低減するものであり、
三角プリズム210,220および230は、それらの底面を形成する二等辺三角形の斜辺を含む側面が、それぞれ、反射面410,420、430として機能するものであり、
ハーフミラー250は、三角プリズム200の底面の斜辺を含む側面に形成され、入射光の一部を反射するとともに、入射光の他の一部を透過するものであり、
三角プリズム240は、三角プリズム200と同じ媒質(すなわち、同じ屈折率を有する)で形成されており、ハーフミラー250と半導体レーザ装置20bとの間に、ハーフミラー250に接するように配置されているものであり、

半導体レーザ装置20bから射出された射出光300は、三角プリズム240の側面に対してほぼ垂直に入射し、三角プリズム240を透過してハーフミラー250に入射し、
ハーフミラー250に入射した射出光300は、約50%が反射されて(反射光301)インテグレータレンズ21に入射し、射出光300の残りの約50%は、ハーフミラー250を透過して(透過光302)、三角プリズム200に入射し、
透過光302は反射面410で全反射され、三角プリズム220の反射面420に入射し、三角プリズム220の反射面420,および三角プリズム230の反射面430で、反射面410と同様に全反射され、導光部150内を循環し、導光部150の内側から再びハーフミラー250に入射し、ハーフミラー250に入射した透過光302の約50%がハーフミラー250を透過して(透過光303)インテグレータレンズ21に入射し、透過光302の残りの約50%が、三角プリズム210の反射面410に向かって反射され(反射光304)、
以降、同様に、ハーフミラー250で反射され導光部150に入射した光は導光部150内を循環し、ハーフミラー250で反射および透過されることにより、
インテグレータレンズ21に入射する反射光301,透過光303は、互いにコヒーレント長以上の光路差のある光であるため、インテグレータレンズ21により合成された反射光301、透過光303の合成光は、干渉性の低い光となるものである、
光源装置11において、
ハーフミラーに代えて、透過率および反射率が任意に調整された部分反射ミラーを用いても良い、
光源装置11。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明の「レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、」「スペックルを低減するためのコンポーネントと」「を備え」との発明特定事項について

引用発明の「半導体レーザ装置20b」は、本件補正発明の「レーザ光源」に相当する。
また、引用発明の「光循環ユニット100」は、入射光を内部で循環させ、循環回数に応じた光路長を有する光として出力することにより、光の干渉を抑制して、スペックルパターンの発生を低減するものであるから、本件補正発明の「スペックルを低減するためのコンポーネント」に相当する。

したがって、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

イ 本件補正発明の「スペックルを低減するための前記コンポーネントは、」「前記レーザビームを受けるよう設けられ、」「スペックルを低減するための前記コンポーネントは、」「前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、」「少なくとも第1及び第2の反射手段と」「を備え」との発明特定事項について

引用発明の「光循環ユニット100」には、半導体レーザ装置20bから射出された射出光300が入射するので、引用発明の「光循環ユニット100」は、本件補正発明の「スペックルを低減するためのコンポーネント」と、「スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ」る点で共通する。

また、引用発明の「ハーフミラー250」は、三角プリズム200の底面の斜辺を含む側面に形成され、入射光の一部を反射するとともに、入射光の他の一部を透過するものであるので、該「ハーフミラー250」と本件補正発明の「ビーム分割手段」とは、「前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段」である点で共通する。

さらに、引用発明の「三角プリズム200,210,220,230からなる導光部150」のうち、「三角プリズム210」は、反射面410として機能する側面を有し、ハーフミラー250を透過した透過光302は、反射面410で全反射されるから、引用発明の「三角プリズム210」は、本件補正発明の「第1の反射手段」に相当する。
また、上記反射面410で全反射された透過光302は、三角プリズム220の反射面420で全反射した後、三角プリズム230の反射面430で全反射されて、再びハーフミラー250に入射するから、「三角プリズム220」及び「三角プリズム230」が本件補正発明の「第2の反射手段」に相当するか、または、「三角プリズム230」が本件補正発明の「第2の反射手段」に相当する。

したがって、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

ウ 本件補正発明の「前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、」「前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、」「前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、」「前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ」との発明特定事項について

上記イで対比したとおりであるから、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

エ 本件補正発明の「前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く」との発明特定事項について

引用発明において、インテグレータレンズ21に入射する反射光301,透過光303は、互いにコヒーレント長以上の光路差のある光である」から、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

オ 本件補正発明の「前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供し、それにより、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を制御するように構成され、」との発明特定事項について

ここで、上記発明特定事項中の「制御」は、一般に、「機械や設備が目的通り作動するように操作すること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するため、請求項1に係る発明の「ビーム分割手段」は、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を「目的通りに操作」するものであると理解できるところ、そのように理解した場合に、発明の詳細な説明(明細書の段落0080及び0081を参照。)の記載と矛盾が生じるため、当審は、平成30年10月26日付けで、本件補正発明における「制御」の意味について、請求人に対し審尋を行った。
これに対し、請求人は、令和元年5月7日提出の回答書において、「ビーム分割手段の固有の分割比率に従って、第1の強度と第2の強度の比率が事前設定されていることを意味します。言い換えると、第1の強度と第2の強度の比率が調整済み、又は選択されていることを意味します。」と回答している。
以下、上記「制御」の意味を上記請求人の主張のとおりと理解して、対比を行う。

引用発明において、ハーフミラー250に入射した射出光300は、約50%が反射されて(反射光301)インテグレータレンズ21に入射し、射出光300の残りの約50%は、ハーフミラー250を透過して(透過光302)、三角プリズム200に入射するものである。
そうすると、引用発明の「ハーフミラー250」は、本件補正発明と同様に、「ビーム分割手段の固有の分割比率に従って、第1の強度と第2の強度の比率が事前設定されている」ものといえる。
また、引用発明は、「ハーフミラーに代えて、透過率および反射率が任意に調整された部分反射ミラーを用いても良い」ものでもあるので、本件補正発明と同様に、「第1の強度と第2の強度の比率が調整済み、又は選択されている」ものとも言える。

したがって、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

カ 本件補正発明の「前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻される」との発明特定事項について

引用発明では、「再びハーフミラー250に入射し、ハーフミラー250に入射した透過光302の約50%がハーフミラー250を透過して(透過光303)インテグレータレンズ21に入射し、透過光302の残りの約50%が、三角プリズム210の反射面410に向かって反射され(反射光304)」るから、引用発明は、本件補正発明の上記発明特定事項を備える。

キ 一致点・相違点
以上のことから、引用発明は本件補正発明の発明特定事項をすべて備える。

(4)判断
したがって、本件補正発明は引用発明であって、本件補正発明は、その国際出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年12月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1及び請求項11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(前記第2[理由]1(2)を参照。)。

「 レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、
スペックルを低減するためのコンポーネントと
を備え、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、
少なくとも第1及び第2の反射手段と
を備え、
前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、
前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、
前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、
前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ、
前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く、
前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻される(請求項1)
光アセンブリであって、
前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供するよう構成される(請求項11)
光アセンブリ。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

理由1
この出願の請求項11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2008-112623号公報(引用文献1)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2の2で指摘した限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も引用発明である。

したがって、本願発明は、その国際出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

5 平成30年4月6日の上申書について
(1)請求人は上記上申書において、以下のような補正案を示している(下線は、本件補正をさらに特定しようとする事項について、当審が付与した。)。
そして、下記補正案の請求項1に係る発明は、概ね、上記本件補正発明について、さらに、平成29年12月1日の手続補正書の請求項3、6及び9に記載された事項で特定しようとするものであり、下記補正案の請求項1に係る発明は、概ね、上記本件補正発明について、同手続補正書の請求項11に記載された事項で特定しようとするものである。

ア「[請求項1]
光アセンブリであって、
レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、
スペックルを低減するためのコンポーネントと
を備え、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、
少なくとも第1及び第2の反射手段と
を備え、
前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、
前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、
前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、
前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ、
前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く、
前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供し、それにより、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を制御するように構成され、
前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻され、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
第1の面、第2の面及び第3の面を持つ第1の要素を少なくとも備えるブロック
を備え、
前記第1の面、前記第2の面及び前記第3の面のそれぞれは、前記ビーム分割手段と光学的に連絡し、
前記ブロックの前記第1の面は、前記第1の反射手段を備え、
前記ブロックの前記第2の面は、前記第2の反射手段を備え、
前記ブロックの前記第3の面は、前記ビーム分割手段を備え、
前記光アセンブリは、
第4の面、第5の面及び第6の面を備える第2の要素
をさらに備え、
前記第4の面、前記第5の面及び前記第6の面のそれぞれは、前記ビーム分割手段と光学的に連絡し、
前記第4の面によって受けられる前記レーザビームが前記ビーム分割手段へと送られ、前記ビーム分割手段によって反射された前記レーザビーム又は前記ビーム分割手段から発せられた前記レーザビームが前記第5の面によって受けられて、前記第5の面を通じて発せられ、
前記第1の面及び前記第2の面の間及び前記第4の面及び前記第5の面との間の向きは、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記レーザビームの前記第1の部分と平行に、前記第5の面によって受けられて、前記第5の面を通じて発せられるように定められ、 前記ビーム分割手段は、前記第3の面及び前記第6の面の少なくとも一方に配される
光アセンブリ。」

イ「[請求項7]
レーザビームを発するよう動作可能な少なくとも1つのレーザ光源と、
スペックルを低減するためのコンポーネントと
を備え、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、前記レーザビームを受けるよう設けられ、
スペックルを低減するための前記コンポーネントは、
前記レーザビームの第1の部分を反射し、前記レーザビームの第2の部分を通過させることによって、前記レーザ光源によって発せられた前記レーザビームを分割するよう構成されたビーム分割手段と、
少なくとも第1及び第2の反射手段と
を備え、
前記ビーム分割手段は、無偏光ビームスプリッタであり、
前記第1の反射手段は、前記ビーム分割手段からの前記レーザビームの前記第2の部分を受けるよう設けられ、
前記第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分を導いて前記ビーム分割手段に戻すことができるように設けられ、
前記第1及び第2の反射手段は、前記レーザビームの前記第2の部分が、前記第1の反射手段から前記第2の反射手段に導かれることができるように設けられ、
前記少なくとも第1及び第2の反射手段並びにビーム分割手段は、前記レーザビームの前記第2の部分の光路を定めるよう設けられ、
前記光路の長さが、前記少なくとも1つのレーザ光源から発せられた前記レーザビームのコヒーレンス長と等しい又はより長く、
前記ビーム分割手段は、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームを分割して、第1の強度を持つ第1のレーザビーム部分及び第2の強度を持つ第2のレーザビーム部分を提供し、それにより、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を制御するように構成され、
前記ビーム分割手段は、前記ビーム分割手段に戻された前記レーザビームの前記第2の部分を、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの一部分と、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの他の部分とに分割するよう構成され、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記一部分は前記ビーム分割手段を通過し、前記レーザビームの前記第2の部分のうちの前記他の部分は前記光路に沿って前記ビーム分割手段に戻される
光アセンブリ。」

(2)上記アの補正案について
上記アの補正案の請求項1に係る発明においては、要すれば、本願の図1に示されるような、「第1の面、第2の面及び第3の面を持つ第1の要素を少なくとも備えるブロック」と、「第4の面、第5の面及び第6の面を備える第2の要素」と、第3の面に備えられた「ビーム分割手段」とを備えたコンポーネントであることが特定されているものであるが、そのようなものは、例えば、平成28年 2月23日付けの拒絶理由通知で示された特開2008-309817号公報(図1等)及び特表2012-501471号公報(図1等:2012年1月19日公開)に見られるように、本願の国際出願前に周知のものである。

(3)上記イの補正案について
ハーフミラーは無偏光ビームスプリッタであることは当業者にとって技術常識であるから、引用発明は無偏光ビームスプリッタを備える。

以上のとおりであるから、仮に、当該補正案を受け入れることができたとしても、上記補正案に記載された請求項1及び7に係る発明並びにこれらに従属する各請求項に係る発明は、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、その国際出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-10 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-26 
出願番号 特願2015-534915(P2015-534915)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 113- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 貴一  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 西村 直史
星野 浩一
発明の名称 ビームスプリッタを用いたスペックルリデューサ  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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