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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01T
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01T
管理番号 1356634
審判番号 不服2017-18334  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-08 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2016- 28676「放射線映像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-148666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成23年8月2日、米国)を国際出願日とする特許出願(特願2014-523847号)の一部を平成28年2月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月18日 :上申書の提出
平成28年11月29日付け:拒絶理由通知
平成29年 3月 6日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 7月28日付け:拒絶査定(同年8月8日送達)
平成29年12月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 9月21日付け:拒絶理由通知
平成30年12月25日 :意見書の提出
平成31年 1月30日付け:拒絶理由通知
令和 元年 5月 7日 :意見書・手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和元年5月7日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その本願発明1は、以下のとおりのものである。

「 放射線映像システムであって、
a)放射線変換層と、
b)前記放射線変換層上にある上部電極と、
c)前記放射線変換層に電気的にカップリングされたピクセル単位のアレイとを含み、
前記放射線変換層は、有機マトリックスと、前記有機マトリックス内に分散されている放射線を吸収するための閃光粒子とを含み、
前記放射線変換層は、5μmないし2000μmの厚さを有し、
前記有機マトリックスは、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物であり、
前記電荷発生物質(CGM)対前記電荷輸送物質(CTM)の重量比が10:90ないし80:20であり、
前記閃光粒子は、表面の一部もしくは全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されており、
前記有機マトリックス中の前記閃光粒子の体積パーセントは10体積%ないし65体積%である、放射線映像システム。」

第3 拒絶の理由
平成31年1月30日付けの当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

1.(サポート要件)閃光粒子が電荷発生物質(CGM)で部分的に被覆されるとともに、閃光粒子が有機マトリックス内で電荷輸送物質(CTM)との混合物の形態で存在する電荷発生物質(CGM)と接触されるようなものは、本願の発明の詳細な説明には記載されていないし、本願の発明の詳細な説明から記載されていることが明らかであるともいえないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)この出願の請求項1ないし13に係る発明は、この出願の原出願(特願2014-523847号)の優先権主張の日(以下、「原出願の優先日」という)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2003-232857号公報
2.特開2002-090460号公報
3.特開2008-047749号公報

第4 理由1(サポート要件)について
1 本願発明1について
本願発明1は、「前記閃光粒子は、表面の一部もしくは全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されており」との発明特定事項により特定されていることから、以下の2つの態様を含んでいる。

(1)閃光粒子は、表面の一部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆され、有機マトリックスは、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物である態様。

(2)閃光粒子は、表面の全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆され、有機マトリックスは、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物である態様。

2 発明の詳細な説明の記載
(1)発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている(下線は、当審で付加した。以下同じ。)。
ア「【0033】
閃光粒子は、電荷発生物質(CGM)と接触されている。例えば、閃光粒子は、部分もしくは全体表面で電荷発生物質(CGM)に被覆される。

イ「【0034】
本明細書に用いられるように、「接触」との用語は、閃光粒子と電荷発生物質(CGM)が互いに密着している状態を形成することを意味する。1つの実施形態において、閃光粒子の全体表面は電荷発生物質(CGM)に覆われる。他の実施形態において、閃光粒子は電荷発生物質(CGM)で部分的に被覆される。他の実施形態において、閃光粒子は有機マトリックス内で電荷輸送物質(CTM)との混合物の形態で存在する電荷発生物質(CGM)と接触される。」

ウ「【0042】
有機マトリックスは、電荷輸送物質(CTM)を含む有機感光体(OPC)物質とすることができる。一実施形態において、有機マトリックスは電荷輸送物質(CTM)単独とすることができる。他の実施形態において、有機マトリックスは、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物とすることができる。」

エ「【0052】
一実施形態において、前記組成物は、閃光粒子の表面上に電荷発生物質(CGM)を被覆し、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックス内に前記電荷発生物質が被覆された閃光粒子を分散させることで製造することができる。
【0053】
他の実施形態において、前記組成物は、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)とを混合して有機マトリックスを製造し、該当の有機マトリックス内に閃光粒子を分散させることで製造することができる。」

オ「【実施例】
【0067】
塩化メチレンとトルエンを10:1重量比で混合して溶液を製造する。続いて、この溶液にCGMとして化学式1を有するオキシチタンフタロシアニン2重量%及びCTMとして化学式2を有する4、4’-TPD(トリフェニルアミンダイマー)2重量%、ポリカーボネート重合体2重量%を添加して混合物を得る。CGM、CTM及びポリカーボネートの重量比は1:1:1である。4μmの直径を有するユーロピウムドーピングされたGOS粉末20gをCGM/CTM混合物4ml+トルエン0.54mlに添加して組成物を製造する。続いて、この組成物を500μmの厚さを有するドクターブレードを用いてインジウム錫酸化物(ITO)下部電極(bottom electrode)上に被覆する。50℃の温度で48時間硬化後、伝導性上部電極が組成物の上部表面に被覆される。バイアス電圧はサンプルの上部電極に印加されて、ITO下部電極は高電圧電源に対する復帰回路を有する負荷抵抗器(R)に接続される。オシロスコーププローブは、図4に示すように、負荷抵抗器(R)両端に接続される。」

カ「【0070】
例示的な実施形態が本明細書に開示されていて、特定用語が用いられているが、これらは制限の目的ではなく、単に一般的な説明的意味として用いられ、解釈されるべきである。よって、以下の特許請求の範囲に記載されたような本発明の精神と範囲から脱することなく、形態及び詳細の各種変化が実施可能であることを当業者として理解することができる。」


(2)発明の詳細な説明には、接触または被覆に関して、以下のアないしウの形態、有機マトリックスに関して、エ及びオの形態、並びに、放射線変換層に関して、カ及びキの形態が記載されている。

<<接触または被覆に関して(明細書の段落0033及び0034を参照。)>>
ア「閃光粒子の全体表面は電荷発生物質(CGM)に被覆される」形態。
イ「閃光粒子の部分で電荷発生物質(CGM)で被覆される」形態。
ウ「閃光粒子は電荷発生物質(CGM)で被覆されておらず、有機マトリックス内で電荷輸送物質(CTM)との混合物の形態で存在する電荷発生物質(CGM)と接触される」形態。

<<有機マトリックスに関して(明細書の段落0042を参照。)>>
エ「一実施形態において、有機マトリックスは電荷輸送物質(CTM)単独とする」形態。
オ「他の実施形態において、有機マトリックスは、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物とする」形態。

<<放射線変換層に関して(明細書の段落0052及び0053を参照。)>>
カ「一実施形態において、前記組成物は、閃光粒子の表面上に電荷発生物質(CGM)を被覆し、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックス内に前記電荷発生物質が被覆された閃光粒子を分散させる」形態。
キ「他の実施形態において、前記組成物は、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)とを混合して有機マトリックスを製造し、該当の有機マトリックス内に閃光粒子を分散させる」形態。

3 判断
(1)上記1(1)の態様について
平成31年1月30日付けの当審が通知した拒絶理由では、上記1(1)の態様について、サポート要件違反を通知している。

この拒絶理由通知に対して、出願人は、令和元年5月7日の意見書において、本願明細書の段落[0033]の記載を挙げて、「閃光粒子と電荷発生物質との係合形態に関し、「接触」および「被覆」は、実質的に同意義である・・・(略)・・・特に「接触」の範囲が、たとえば、ある程度の領域にわたって連続している場合に「被覆」と称することが可能であるが、本願がこれに限定されるわけではない。」と主張する。

上記主張に基づけば、「被覆」を「接触」と同義と理解して、予め表面の全部ないし一部が電荷発生物質(CGM)で被覆されていない閃光粒子が有機マトリクス中の電荷発生物質(CGM)と接触したものについても「被覆」と理解できる場合には、そのようなものは、本願の発明の詳細な説明に記載されているといえる。

しかし、「被覆」を「接触」と同義と理解したとしても、予め表面の一部が電荷発生物質(CGM)で被覆された閃光粒子を「電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)とが混合された有機マトリクス」中に分散させた形態は、下記ア?エのとおり、発明の詳細な説明には記載されていないことに変わりはない。

ア 本願の発明の詳細な説明には、上記2(2)の接触または被覆に関するア?ウの形態と、有機マトリックスに関するエ及びオの形態が記載されているものの、これらの組合せた放射線変換層に関する形態については、カ及びキの形態しか記載されておらず、予め表面の一部または全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されたものを、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物である有機マトリックスに分散することについては、本願の発明の詳細な説明には、何ら記載がない。
また、明細書の段落0070の「以下の特許請求の範囲に記載されたような本発明の精神と範囲から脱することなく、形態及び詳細の各種変化が実施可能である」と記載についても、予め表面の一部または全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されたものを、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物である有機マトリックスに分散することが示唆されているとまではいえない。

イ 他方で、閃光粒子の表面の一部または全部が「電荷発生物質(CGM)」と「接触」している場合には、さらに、有機マトリックスに電荷発生物質(CGM)を混合する必要性は特段ないことは、明らかである。

ウ したがって、本願の発明の詳細な説明の記載等からは、当業者であっても、予め表面の一部が電荷発生物質(CGM)で被覆された閃光粒子を「電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)とが混合された有機マトリクス中に分散させた形態が記載されているとは理解できない。

エ 上記のとおりであるにもかかわらず、当該形態が発明の詳細な説明に記載されているに等しいと言うためには、上記2(2)アとオの形態を組み合わすことが、当業者にとって明らかな事項であるとする技術常識の存在が必要である。しかし、そのような技術常識を示す文献等はこれまで提示されていない。

したがって、本願は、依然として、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)上記1(2)の態様について
令和元年5月7日の手続補正による補正により、請求項1に、当該補正前に「前記閃光粒子は、表面の一部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆され、」とあるところ、「前記閃光粒子は、表面の一部もしくは全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されており」と補正された。
このため、当該補正により、本願発明1は「前記閃光粒子は、表面の全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆されており」と事項により特定される態様を含むこととなった。

そして、表面の全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆され、かつ、有機マトリックスは、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物とするものは、上記(1)で検討したことと同様に、本願の発明の詳細な説明には記載されておらず、また、当該記載から記載されていることが明らかであるとすることもできない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願は、依然として、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 理由2(進歩性)について
1 本願発明1
本願発明1は、上記第2のとおりである。

2 引用文献等
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア「【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態について図1の分解斜視図を参照して説明する。図1は本発明のX線画像検出器の概略構造図で、保持基板11上に画素単位層12が形成されている。画素単位層12には複数の画素単位が形成され、画素単位層12上に複数の下部電極13が配置されている。下部電極13はそれぞれが1つの画素単位と対応し、画素単位とともに縦方向および横方向の二次元的に配置され、対応する画素単位と電気的に接続されている。下部電極13上に、X線を電気信号たとえば信号電荷に変換する検出層14が積層されている。検出層14上に上部電極15が形成されている。
【0013】上記した構成において、外部からX線16が検出層14に入射する。検出層14に入射したX線16は検出層14内部でたとえば信号電荷に変換される。信号電荷は入射したX線15の大きさに対応し、下部電極13を経て画素ごとに電荷蓄積用のたとえば容量素子(図示せず)に蓄積される。蓄積された信号電荷は、その後、画素単位ごとに電気信号として読み出され、X線画像に再生される。
【0014】・・・(略)・・・
【0015】画素単位層12は複数の画素単位21たとえば16個の画素単位2101?2116から構成されている。下部電極13も画素単位16の数に合わせて16個の下部電極1301?1316が示されている。画素単位16の外側に制御回路22および並列/直列変換回路23が設けられている。
【0016】?【0021】・・・(略)・・・
【0022】保持基板11上に画素単位層12および下部電極13が順に形成され、下部電極13上に検出層14が形成され、検出層14上に上部電極15が形成されている。
【0023】検出層14は、粉末の蛍光体31および電荷発生材32、電荷輸送材33を混合し一体化して構成されている。蛍光体31はたとえばGd2 O2 S:Tbの酸化物などから構成され、外部から入射するX線のエネルギーを吸収し可視光に変換して外部に放出する。電荷発生材32はたとえば有機物顔料粉末のチタニルフタロシアニン微粉末や無機材料粉末のセレン微粉末などから構成され、光を電荷に変換する。電荷輸送材33はたとえば有機材料のブタジエン化合物から構成され電荷を輸送する。なお、電荷発生材32や電荷輸送材33には有機材料を用いると加工が容易になるという利点がある。
【0024】電荷発生材32および電荷輸送材33はたとえば樹脂中に混合され、また、バインダーとしてポリスチレンが混合されている。これらの材料を有機溶媒たとえばDMFに溶かし込んだものを蛍光体31中に充填し、その後、乾燥させ、蛍光体31の粒子間に電荷発生材32および電荷輸送材33を充填した構造に形成される。その後、検出層14の上部に上部電極15が蒸着される。動作時、たとえば上部電極15に正の電圧が印加され、下部電極13に負の電圧が印加され、検出層14内に電界が形成される。
【0025】上記の構成において、X線が外部から検出層14に入射すると、蛍光体31によってたとえば緑色の蛍光に変換される。この蛍光は電荷発生材32で吸収され、電荷発生材32は電荷を発生する。電荷の正孔は、検出層14内の電界の働きで、電荷輸送材33によって下部電極13に輸送され、各画素の容量素子に蓄積される。このようにして入射したX線は電気信号の画像情報として各画素単位に蓄積される。
【0026】上記した構成によれば、蛍光体で発生した蛍光は、その周囲の電荷発生材で電荷に変換され、そして電荷輸送材によって下部電極に輸送される。この場合、蛍光の拡散などがなく解像度特性が向上する。」

(2)引用発明1
上記記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「外部から入射したX線を電気信号に変換する検出層と、
この検出層の前記X線の入射する側に設けられた上部電極と、
前記検出層の前記上部電極と反対側に設けられた下部電極と、
前記検出層で変換された前記電気信号を蓄積し、蓄積した電気信号が読み出される2次元的に配列された複数の画素単位とを具備し、
前記検出層が、X線を光に変換する蛍光体と、この蛍光体が変換した前記光を吸収し電荷を発生する電荷発生材と、この電荷発生材が発生した前記電荷を輸送する電荷輸送材とを含んでおり、
電荷発生材32および電荷輸送材33は樹脂中に混合され、
蛍光体および電荷発生材、電荷輸送材を混合して共通する1つの層が形成されている、X線画像検出器であって、
外部から入射したX線を検出層内部で信号電荷に変換し、画素単位ごとに電気信号として読み出して、X線画像に再生するX線画像検出器。」
が記載されている。

(3)引用文献2の記載
引用文献2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア「【0023】本実施形態のX線平面検出器は、図1に示すように、ガラス基板101上に、画素毎にスイッチングTFT401とCst403、Cst403に対向する補助電極503、補助電極503と電気的に接続する画素電極504が設けられ、画素電極504上の全面に一様に、正孔輸送層108、X線電荷変換膜109、電子輸送層113、共通電極603が順次積層されている。また、スイッチングTFT401は、ゲート電極102とゲート絶縁用の絶縁膜103、活性層として用いるアンドープa-Si104、ストッパ105とコンタクト用のn+a-Si106、一方は信号線405、他方は補助電極503と接続するソース・ドレイン電極が順次積層される。さらに、本実施形態のX線電荷変換膜109は、感光体111に被覆される蛍光体110とキャリア輸送材料112を含む。
【0024】・・・(略)・・・
【0025】まず、ガラス基板101上にMoTaやTa、TaN、Al、Al合金、Cu、MoW、Ta/TaNx等を約300nm堆積させ、エッチングを行なって、スイッチングTFT401のゲート電極102、走査線(図示せず)、Cst403、Cst線(図示せず)のパターンを形成する。
【0026】?【0028】・・・(略)・・・
【0029】次にSiNxを約200nm、その上にベンゾシクロブテン(BCB)を約1μm?約5μm、好ましくは約3μm積層して保護膜107を形成する。スイッチングTFT401と補助電極503へのコンタクトホールを形成した後に、ITOを約100nmの膜厚で成膜し、画素電極504を形成する。
【0030】画素電極504上には、正孔輸送層108をdiphenyl-3-methylphenyl-biphenyl-diamine(TPD)を用いて約10nm?約100μmの膜厚で塗布形成する。
【0031】次に、正孔輸送層108上にX線電荷変換膜109を約200μmの膜厚となるよう塗布形成する。X線電荷変換膜109は、GdO2S;Pr(GOS)を用い約10μm径として形成した蛍光体110を、ジフェニルヒドラゾン約40重量%をポリカーボネートに混合させた感光体111でコートし、これらの粒子をポリビニルカルバゾール(PVK)からなるキャリア輸送材料112に混合して塗布形成する。蛍光体110は、多結晶蛍光体を粉砕選別することや、プラズマ溶融蒸着を行うこと等により形成すれば良い。また蛍光体110を感光体111で被覆する方法としては、蛍光体110粒子を感光体111の溶液中に混合し、溶媒を蒸発飛散させる等の方法を用いれば良い。また、蛍光体110を被覆する感光体111の厚さとしては、蛍光体110において発した蛍光を十分に吸収できればよく、約1μm?約10μmが好ましい。
【0032】X線電荷変換膜109上には、オキサゾアゾール誘導体を用いて、約10nm?約100μmの膜厚となるよう、電子輸送層113を塗布形成する。
【0033】電子輸送層113の上に共通電極603を、約100nmの厚さのAlまたはMgAg等で形成し、最後に駆動回路に接続して、本実施形態のX線平面検出器を完成する。
【0034】図2は、本実施形態のX線平面検出器のバンド図であり、正孔輸送層108と、蛍光体110、感光体111、キャリア輸送材料112を含むX線電荷変換膜109と、電子輸送層113の部分のみを示す。X線が照射されると、図2のX線電荷変換膜109中、蛍光体110部分が蛍光を発し、この蛍光を照射されることにより蛍光体110を包んでいる周囲の感光体111部分がキャリアを発生する。そして、キャリア輸送材料112中をこれらのキャリアが移動し、正孔201は正孔輸送層108へ、電子202は電子輸送層113へと運ばれ、画素電極に電荷が蓄積される。
【0035】・・・(略)・・・なお、図2のX線電荷変換膜109中、感光体111に包まれた蛍光体110は1つのみ示されているが、実際には、X線電荷変換膜109中、感光体111に包まれた蛍光体110は多数存在する。
【0036】本実施形態では、X線を照射することにより蛍光体110が蛍光を発した際、蛍光体110が感光体111に包まれている為に、蛍光が散乱される前に感光体111に入射して電荷となり、電界の印加されたキャリア輸送材料112中を通り、散乱することなく各画素501の画素電極504に電荷が蓄積される。
【0037】つまり、従来はX線を照射されることにより蛍光体層で発生した蛍光が散乱し、近隣画素にも蛍光が入射した後に、感光体層でその蛍光が電荷に変換され、各画素に電荷が蓄積されて、解像度が悪くなるという問題があった。しかしながら、本実施形態によれば、蛍光体110においてX線が蛍光に変換された後、蛍光が散乱することなく、そのまま感光体111に入射して電荷となり、その後は、キャリア輸送材料112では電界が印加されている為に散乱することなくその領域に対応する画素501に電荷が蓄積される為に、高い解像度が得られるといえる。
【0038】また、従来は、光電変換膜と蛍光体層を蒸着やCVD法によりそれぞれ形成する必要があったが、本実施形態のX線電荷変換膜109は、この2層の作用を1層で得ることが出来、さらにこのX線電荷変換膜109は、蛍光体110を感光体111でコートし、これらの粒子をキャリア輸送材料112に混合したものを塗布して形成されるので、形成が容易である。従って、形成方法が簡易化される為に、大型化、低コスト化が容易となる。」

(4)引用発明2
上記記載によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「 X線電荷変換膜と、
前記X線電荷変換膜上にある共通電極と、
前記X線電荷変換膜に電気的にカップリングされた画素とを含み、
前記X線電荷変換膜は、キャリア輸送材料からなるポリビニルカルバゾールと、前記ポリビニルカルバゾール内に分散されている放射線を吸収するための蛍光体とを含み、
前記蛍光体は、表面の全部が前記感光体で被覆されている、
X線平面検出器。」

3 対比
(1)本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「X線画像検出器」、「検出層」、「上部電極」、「2次元的に配列された複数の画素単位」、「蛍光体」、「電荷発生材」及び「電荷輸送材」は、本願発明1の「放射線映像システム」、「放射線変換層」、「上部電極」、「ピクセル単位のアレイ」、「閃光粒子」、「電荷発生物質(CGM)」及び「電荷輸送物質(CTM)」にそれぞれ相当する。

そして、引用発明1は、「電荷発生材32および電荷輸送材33は樹脂中に混合され」、「蛍光体および電荷発生材、電荷輸送材を混合して共通する1つの層が形成されている」から、引用発明1は、本願発明1の 「前記放射線変換層は、有機マトリックスと、前記有機マトリックス内に分散されている放射線を吸収するための閃光粒子とを含み」との発明特定事項を備える。

(2)そして、本願発明1と引用発明1との間には、以下の一致点、相違点がある。

・一致点
「 放射線映像システムであって、
a)放射線変換層と、
b)前記放射線変換層上にある上部電極と、
c)前記放射線変換層に電気的にカップリングされたピクセル単位のアレイとを含み、
前記放射線変換層は、有機マトリックスと、前記有機マトリックス内に分散されている放射線を吸収するための閃光粒子とを含み、
前記有機マトリックスは、結着剤樹脂と電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物である、放射線映像システム。」

・相違点1
本願発明1では、「前記閃光粒子は、表面の一部もしくは全部が前記電荷発生物質(CGM)で被覆され」ているのに対し、引用発明1ではそのような被覆がない点。

・相違点2
本願発明1では、「前記電荷発生物質(CGM)対前記電荷輸送物質(CTM)の重量比が10:90ないし80:20であり、」、「前記有機マトリックス中の前記閃光粒子の体積パーセントは10体積%ないし65体積%である」のに対し、引用発明1では、そのようなことが不明である点。

4 判断
(1)相違点1について
ア 上記第4の3(2)出願人の主張によれば、「「接触」および「被覆」は、実質的に同意義である」と主張する。また、「特に「接触」の範囲が、たとえば、ある程度の領域にわたって連続している場合に「被覆」と称することが可能である」とも主張する。

当該主張を採用した場合には、引用発明1においても、検出層中の電荷発生材は、ある程度の領域にわたって連続している可能性も含め、蛍光体に接触することは明らかであるから、相違点1は実質的なものとはいえない。

イ 他方、上記主張を採用しない場合には、上記第4のとおり、サポート要件を満たさないが、仮に、上記第4の3で指摘した上記第4の2(2)アとオの形態を組み合わすこと、すなわち、「閃光粒子の全体表面は電荷発生物質(CGM)に被覆される」形態と「他の実施形態において、有機マトリックスは、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)との混合物とする」形態を組み合わせることが、当業者にとって明らかな事項であり、サポート要件を満たすとして、以下検討する。
この場合には、引用発明1について、引用発明2に基づいて、閃光粒子の近傍で電荷を発生させるために、蛍光体の表面を感光体(本願発明1の「電荷発生物質(CGM)」に相当、)で被覆するようにする動機付けが存在することになるから、本願発明1は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるとするほかない。
また、上記の際、閃光粒子に対する感光体の被覆を全体とするか、一部とするかは、当業者が適宜決定し得ることである。

(2)相違点2について
引用発明1において、電荷発生物質(CGM)対電荷輸送物質(CTM)の重量比、及び、有機マトリックス中の閃光粒子の体積パーセントについて、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは当業者の通常の創作の発揮であって、本願発明1の作用効果は、引用発明2の作用効果と比べて、異質なものであるとも、または、同質であるが際だって優れたものであるともいえない。
したがって、上記相違点2については、当業者が適宜決定し得る設計的事項である。

(3)採用効果について
また、本願発明1の作用効果についても、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測し得るものである。

5 小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1に基づいて、または、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

第6 むすび
以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-10 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-27 
出願番号 特願2016-28676(P2016-28676)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01T)
P 1 8・ 121- WZ (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 加代子  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
西村 直史
発明の名称 放射線映像システム  
代理人 鈴木 泰光  
代理人 臼井 尚  
代理人 田中 達也  
代理人 土居 史明  
代理人 吉田 稔  
代理人 小淵 景太  
代理人 鈴木 伸太郎  

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