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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12M
管理番号 1356706
審判番号 不服2018-8280  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-18 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2016-538889「添加管を備えるバイオリアクター」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日国際公開、WO2015/030639、平成28年10月13日国内公表、特表2016-531578〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月27日を国際出願日とする出願であって、平成29年6月22日付け拒絶理由通知に対し、同年9月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成30年2月15日付けで拒絶査定され、これに対し、同年6月18日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年6月18日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年6月18日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「内部空間(3;23)を画成する容器(2;22)と、攪拌手段(4;24)と、細胞培養の液体に流体を添加するための1以上の添加管(5;25)とを備えるバイオリアクターであって、
添加管の送出オリフィス(6;26)が内部空間内に位置しており、
逆止弁(7;27)が、添加管から内部空間(3;23)の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置されており、
添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている、バイオリアクター(1;11;21)。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年9月25日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「内部空間(3;23)を画成する容器(2;22)と、攪拌手段(4;24)と、1以上の添加管(5;25)とを備えるバイオリアクターであって、
添加管の送出オリフィス(6;26)が内部空間内に位置しており、
逆止弁(7;27)が、添加管から内部空間(3;23)の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置されており、
添加管の送出オリフィス(6;26)が当該バイオリアクターの使用時に液体中に浸漬されるように配置されている、バイオリアクター(1;11;21)。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「1以上の添加管(5;25)」について前記1(1)のとおり限定を付加したものである。これに加えて、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「添加管の送出オリフィス(6;26)」について、「バイオリアクターの使用時に」との限定を、「前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように」と変更したものであるところ、本件補正発明における前記「培養の最中」は、本件補正前の請求項1の前記「バイオリアクターの使用時に」に対応し、「培養」は、「バイオリアクターの使用」の一形態であるといえるから、上記変更は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項の一部を限定するものである。したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明を特定するために必要な事項を更に減縮するものであるといえる。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明との産業上の利用分野、及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)明確性(特許法第36条第6項第2号)について
本件補正発明は、「内部空間(3;23)を画成する容器(2;22)と、攪拌手段(4;24)と、細胞培養の液体に流体を添加するための1以上の添加管(5;25)とを備えるバイオリアクター」についての物の発明であるところ、本件補正発明の「バイオリアクター」については、「添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」ことも特定されている。
ここで、本件補正発明において、前記特定が単に「バイオリアクター」を上述の培養という使用態様に適用する際の「添加管の送出オリフィス」の配置を特定するものであって、前記「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須とされないのか、それとも、前記特定が「添加管の送出オリフィス」の配置とともに「バイオリアクター」の構成要素も特定するものであって、「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須とされるのかが不明確である。
一方、本願の明細書又は図面において、物の発明としての「バイオリアクター」が「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」を必須とするのか否かについての定義や説明はなされていないところ、一般に「バイオリアクター」が、培地を含むものを意味するか否かについての明確な技術常識が存在したとも認められないから、当業者であっても、本件補正発明である物の発明としての「バイオリアクター」が、「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」を必須とするのか否かを明確に理解することができるとはいえない。
してみると、本件補正発明の「添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」との特定に関して2通りの解釈ができるため、本件補正発明についても次の2通りの解釈ができてしまう(以下、「本件補正発明1」及び「本件補正発明2」という。)。

<本件補正発明1>
前記特定が単に「バイオリアクター」における「添加管の送出オリフィス」の配置(位置)を特定するものであって、前記「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須でない発明

<本件補正発明2>
前記特定により「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須である発明

以上のとおりであるから、本件補正発明は、二義的に解釈でき、その両方を意味するのか、何れか一方を意味するのかが明確でない。
したがって、本件補正発明について、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)新規性進歩性(特許法第29条第1項第3号第29条第2項)について
ア 本件補正発明
前記(2)のとおり、本件補正発明は二義的であるところ、本件補正発明の新規性進歩性の有無については、念のため本件補正発明1、2の両方について判断することとする。

イ 引用文献1の記載事項、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の国際出願日前に頒布された実公昭46-5321号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審によるもの)。

(ア)「図面について、1は硬質合成樹脂材等によるタンクで、その底部に近く排泄物を流入する管2を挿通し、管2の下端に逆止弁3を取着け、上端を中溜4に連結し、中溜4には便器5より濾過槽6を経て連管7を連結する。タンク1にはまた汚水を流入する水管8と可燃瓦斯を導入する瓦斯管9を挿通し、さらにタンクの底部には攪拌用の回転翼車10及び加熱管11を配設すると共に老廃物排出管12を開口し、排出管12内にスクリュウコンベア13を設けて老廃物を排出できるようにする。タンク1の上部外面に瓦斯貯溜用の円筒体14を被冠し、この円筒体14とタンク1とを上下可動の開閉弁15により連通し、瓦斯圧の上昇により開閉弁15が開らき円筒体14内に瓦斯を流入すると共に円筒体14をタンク1に沿い上昇し瓦斯を貯溜する。16は密閉式の燃焼炉で、上方に塵芥投入口17を、下方に焼尽物排出口18を設けてそれぞれ蓋17^(1),18^(1)をもって閉塞し、燃焼炉15の底部を火格子19とし下部のたき口20に瓦斯燃焼器21を設置する。燃焼炉15に可燃瓦斯送出管22を開口し、加圧ポンプ23を経て水槽24内に連通し、水槽24の上蓋に瓦斯管9を開口し、瓦斯管9を前記のようにタンク1内に挿通してこゝに逆止弁25を取着ける。」(1欄34行?2欄18行)

(イ)「<実用新案登録請求の範囲>
排泄物及び汚水等をタンク1に流下して蓄積し、このタンク1内に加熱管11を導入して温水を循環することにより蓄積物を適温に加熱すると共に回転翼車10により攪拌して急速に醗酵腐敗せしめてメタン瓦斯を発生し、別に燃焼炉16により塵芥等を蒸焼きにして発生させた可燃瓦斯をタンク1内に導入してメタン瓦斯と共に貯溜し、この瓦斯の一部により前記塵芥燃焼炉16の加熱及び回転翼車10を起動する発電を行うと共に風呂29等の温水を行いこれをタンク1内の加熱管11に循環せしめて四季を通じメタン瓦斯を急速に発生するようにしたメタン瓦斯発生装置。」(4欄1行?13行)

(ウ)「第1図

」(2頁)

前記(ウ)から、回転翼車10の位置が、タンク内の下部にあることは明らかであり、また、タンク内を挿通する瓦斯管9、及びその先端に取り付けられた逆止弁25によって可燃瓦斯が導入される位置が、同じくタンク内の下部であることも明らかである。してみると、前記(ア)?(ウ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「排泄物及び汚水等をタンクに流下して蓄積し、タンク内の下部の回転翼車により攪拌して急速に醗酵腐敗せしめてメタン瓦斯を発生させ、別に燃焼炉により塵芥等を蒸焼きにして発生させた可燃瓦斯を、タンク内に挿通する、先端に逆止弁を取り付けた瓦斯管によってタンク内の下部に導入し、メタン瓦斯と共に貯溜せしめて四季を通じメタン瓦斯を急速に発生するようにした、メタン瓦斯発生装置。」

ウ 引用発明1に関する当審の判断
(ア)本件補正発明1、2と引用発明1の対比
本件補正発明1、2と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「タンク」、「回転翼車」のそれぞれは、本件補正発明1、2の「内部空間(3;23)を画成する容器(2;22)」、「攪拌手段(4;24)」のそれぞれに相当する。また、引用発明1において、タンク内で醗酵腐敗せしめられた前記「排泄物及び汚水等」は、本件補正発明1、2における「細胞培養の液体」に相当する。そして、引用発明1における「瓦斯管」は、流体である可燃瓦斯をタンク内の下部に導入するためのものであるから、本件補正発明1、2の「細胞培養の液体に流体を添加するための1以上の添加管」に相当し、引用発明1における「タンク内に挿通する・・・瓦斯管」の先端は、本件補正発明1、2の前記「内部空間(3;23)」内に位置する「添加管の送出オリフィス(6;26)」に相当し、当該瓦斯管の先端に取り付けられた「逆止弁」は、本件補正発明1、2の「添加管から内部空間(3;23)の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置され」た「逆止弁(7;27)」に相当する。加えて、引用発明1における「メタン瓦斯発生装置」は、醗酵腐敗によってメタン瓦斯を発生させるものであるから、本件補正発明1、2における「バイオリアクター」に相当する。
以上のことから、本件補正発明1、2と引用発明1とは、ともに
「内部空間を画成する容器と、攪拌手段と、1以上の添加管とを備えるバイオリアクターであって、
添加管の送出オリフィスが内部空間内に位置しており、
逆止弁が、添加管から内部空間の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置されている、バイオリアクター。」
である点で一致するが、以下の点で一応相違する。
<相違点>
本件補正発明1、2において「添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」と特定されるのに対し、引用発明1においてタンク内に挿通される瓦斯管の先端(上述のとおり本件補正発明1、2の「添加管の送出オリフィス」に相当)がそのように特定されない点

(イ)相違点についての判断
・本件補正発明1について
本件補正発明のうちの本件補正発明1は、(2)のとおり、前記相違点に係る「添加管の送出オリフィスが当該バイオリアクターの使用時に液体中に浸漬されるように配置されている」との特定が、単に「バイオリアクター」を培養という使用態様に適用する際の「添加管の送出オリフィス」の配置を特定するものであって、前記「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須でないと解される場合の発明である。
ここで、引用発明1におけるタンク内に挿通される瓦斯管の先端(上述(ア)のとおり本件補正発明1の「添加管の送出オリフィス」に相当)の位置は、引用文献1の記載事項イ(ウ)の図面における瓦斯管9の位置に照らして、前記使用態様に適用する際には、本件補正発明1に特定される前記配置を明らかに満足するものである。
してみると、本件補正発明1と引用発明1との前記相違点は、実質的な相違点でない。

・本件補正発明2について
本件補正発明のうちの本件補正発明2は、(3)アのとおり、前記相違点に係る「添加管の送出オリフィスが当該バイオリアクターの使用時に液体中に浸漬されるように配置されている」との特定が「添加管の送出オリフィス」の配置とともに「バイオリアクター」の構成要素も特定するものであって、「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須であると解される場合の発明である。
ここで、引用発明1においてタンク内に挿通される瓦斯管の先端は、記載事項イ(ウ)の図面から明らかなように、タンク内で醗酵腐敗せしめられた前記「排泄物及び汚水等」(前記(ア)のとおり、本件補正発明2における「細胞培養の液体」に相当)の中に浸漬されているから、本件補正発明2でいう「細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」ものである。そして、引用発明1においてタンク内の前記「排泄物及び汚水等」において醗酵腐敗中に発生したメタン瓦斯や、醗酵腐敗中の前記「排泄物及び汚水等」の中への先端が浸漬されている瓦斯管から供給される可燃瓦斯は、泡となり前記「排泄物及び汚水等」との比重差により上部に移動するところ、そのように移動した複数の泡は、本件補正発明2における「細胞培養の液体の上部に形成される泡層」と差異がないものである。さらに、引用発明1における瓦斯管の先端が、前記移動した複数の泡よりも下であって、前記移動した複数の泡に、供給された可燃瓦斯が捕らえられない位置であることは明らかである。
してみると、本件補正発明2と引用発明1との前記相違点は、実質的な相違点とならない。

(ウ)小括
したがって、本件補正発明は、本件補正発明1、2のいずれについても、引用発明1と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件補正発明は、本件補正発明1、2のいずれについても、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

エ 引用文献2の記載事項、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の国際出願日前に頒布された登録実用新案第3009386号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審によるもの)。

(ア)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
発酵タンクの醪を気体の噴出により攪拌する装置において、弾性を有するテーパー状の逆止弁を備えた気体噴出ノズルを設け、醪によるノズルの目詰まりを防止することを特徴とする発酵タンクの攪拌装置。」

(イ)「【図1】 【図2】



(ウ)「【0007】
【実施例】
次に図面によってこの考案の実施例を説明する。図1はこの考案の攪拌装置を設置した発酵タンクの縦断面図である。図2は逆止弁付きノズルを備えた気体供給管の縦断面図である。
【0008】
逆止弁1は、ゴム状の弾性を有する素材を使用し、内口径の等しいテーパー状の円筒形を有し、外口径の大きい側の肉厚が厚く、外口径の小さい側の肉厚が薄く形成されている。ノズル2には逆止弁1を固定するための突起部4を設け、ノズル2の先端部側面に気体噴出口5を設ける。ノズル2の先端側にある気体噴出口5に逆止弁1の肉厚が薄い側が密着する状態に、逆止弁1をノズル2に装着する。逆止弁1は弾性を有するため、ノズル2の突起部4により固定される。逆止弁付きノズルは気体供給管3に固定され、発酵タンク6内に設置される。図示していないが、攪拌に使用する気体は気体供給装置により気体供給管3に供給される。
【0009】
気体供給管3によつて供給される気体は、ノズル2の気体噴出口5から噴き出すが、弾性のある逆止弁1により噴き出し方向が限定され、図2に示す方向に噴き出す。気体供給管3からの気体の供給が停止すると、気体供給管3内には気体による内圧が残存しているため、ノズル2内へ醪が進入することがなく、逆止弁1の弾性と醪による外圧により、ノズル2の気体噴出口5は逆止弁1により密閉され、以後ノズル2内への醪の進入を完全に阻止する。また、所定の内圧に達することにより気体が噴き出すため、均等な気体量を複数のノズルから噴出させることができる。なおこの考案は、弾性を有するテーパー状の逆止弁を備えた気体噴出ノズルを設けていればよく、実施例の装置の構成に限定されるものではない。」

前記(ウ)の「逆止弁付きノズルは気体供給管3に固定され、発酵タンク6内に設置される」ことに関して、前記(イ)の図面、特に図1から、その設置位置が発酵タンク内の下部であることは明らかである。してみると、前記(ア)?(ウ)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「発酵タンク内の醪を気体の噴出により攪拌する攪拌装置を備える発酵タンクであって、
攪拌装置が、逆止弁を備えた気体噴出ノズルを気体供給管に固定して、発酵タンク内の下部に設置されたものであり、
気体供給管からの気体の供給が停止すると、気体供給管内には気体による内圧が残存しているため、ノズル内へ醪が進入することがなく、逆止弁の弾性と醪による外圧により、ノズルの気体噴出口は逆止弁により密閉され、以後ノズル内への醪の進入を完全に阻止する、攪拌装置を備える発酵タンク。」

オ 引用発明2に関する当審の判断
(ア)本件補正発明1、2と引用発明2の対比
本件補正発明1、2と引用発明2とを対比する。
引用発明2における「発酵タンク」は、内部で醪の発酵という生物反応を起こすための容器であるから、本件補正発明1、2の「内部空間(3;23)を画成する容器(2;22)」及び「バイオリアクター(1;11;21)」の両方に相当する。また、引用発明2における「醪」は、液体を含む麹菌発酵物であるから、本件補正発明1、2の「細胞培養の液体」に相当する。そして、引用発明2における「攪拌装置」及び「気体噴出ノズル」のそれぞれは、本件補正発明1、2の「攪拌手段(4;24)」及び「添加管の送出オリフィス」にそれぞれ相当し、引用発明2における「気体供給管」は、流体である気体を攪拌媒体として発酵タンク内の醪に適用するものであるから、本件補正発明1、2の前記「内部空間(3;23)」内に位置する「細胞培養の液体に流体を添加するための1以上の添加管」に相当する。加えて、引用発明2における気体噴出ノズルが備える「逆止弁」は、逆止弁の弾性と醪による外圧により、ノズルの気体噴出口を密閉して、ノズル内への醪の進入を阻止するものであるから、本件補正発明1、2における「添加管から内部空間(3;23)の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置され」た「逆止弁(7;27)」に相当する。
以上のことから、本件補正発明1、2と引用発明2とは、ともに
「内部空間を画成する容器と、攪拌手段と、1以上の添加管とを備えるバイオリアクターであって、
添加管の送出オリフィスが内部空間内に位置しており、
逆止弁が、添加管から内部空間の方向に流体を流すが、逆方向の流れは阻止するように、送出オリフィスの近傍に配置されている、バイオリアクター。」
である点で一致するが、以下の点で一応相違する。
<相違点>
本件補正発明1、2において「添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」と特定されるに対し、引用発明2において気体噴出ノズル(上述のとおり本件補正発明1、2の「添加管の送出オリフィス」に相当)がそのように特定されない点

(イ)相違点についての判断
・本件補正発明1について
本件補正発明のうち、本件補正発明1は、(3)アのとおり、前記相違点に係る「添加管の送出オリフィスが当該バイオリアクターの使用時に液体中に浸漬されるように配置されている」との特定が、単に「バイオリアクター」を培養という使用態様に適用する際の「添加管の送出オリフィス」の配置を特定するものであって、前記「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須でないと解される場合の発明である。
ここで、引用発明2における気体噴出ノズル(上述(ア)のとおり本件補正発明1の「添加管の送出オリフィス」に相当)の位置は、引用文献2の記載事項エ(イ)の図1及び図2に示される気体噴出ノズル2の位置に照らして、前記使用態様に適用する際には、本件補正発明1に特定される前記配置を明らかに満足するものである。
してみると、本件補正発明1と引用発明2との前記相違点は、実質的な相違点とならない。

・本件補正発明2について
本件補正発明のうち、本件補正発明2は、(3)アのとおり、前記相違点に係る「添加管の送出オリフィスが当該バイオリアクターの使用時に液体中に浸漬されるように配置されている」との特定が、「添加管の送出オリフィス」の配置とともに「バイオリアクター」の構成要素も特定するものであって、「細胞培養の液体」やその「上部に形成される泡層」が、物の発明としての「バイオリアクター」に必須であると解される場合の発明である。
ここで、引用発明2における気体噴出ノズルが備える逆止弁は、醪による外圧により、ノズルの気体噴出口を密閉してノズル内への醪の進入を阻止するものであるから、当然に醪(前記(ア)のとおり、本件補正発明1、2における「細胞培養の液体」に相当)の中に浸漬されたものであり、当該逆止弁を備える気体噴出ノズルも同様に醪の中に浸漬されているものである。そして、引用発明2において、発酵タンク内で発酵中の醪に浸漬された気体噴出ノズルから醪の中に噴出された気体や、醪において発酵中に発生するガスは、泡となり醪との比重差により上部に移動するところ、そのように移動した複数の「泡」は、本件補正発明2における「培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層」と差異がないものである。さらに、引用発明2における気体噴出ノズルの位置が、前記移動した複数の「泡」よりも下であって、前記移動した複数の「泡」に、噴出された気体が捕らえられない位置であることは明らかである。
してみると、本件補正発明2と引用発明2との前記相違点は、実質的な相違点とならない。

(ウ)小括
したがって、本件補正発明は、本件補正発明1、2のいずれについても、引用発明2と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件補正発明は、本件補正発明1、2のいずれについても、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)まとめ
前記(2)及び(3)のとおり、本件補正発明についての本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本件補正発明は、同法第29条第1項第3号に該当し、さらに、本件補正発明は、同法第29条第2項の規定から、独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正却下の結論の通り決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年6月18日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、引用発明1及び引用発明2のそれぞれを主引用例とする新規性進歩性についての拒絶理由1、2の概要は、次のとおりのものである。

この出願の請求項1?6、10、11に係る発明は、本願の国際出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の請求項1?6、10、11に係る発明は、本願の国際出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:実公昭46-005321号公報
引用文献2:登録実用新案第3009386号公報

3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(3)イのとおりであり、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、前記第2の[理由]2(3)エのとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における、「細胞培養の液体に流体を添加するための1以上の添加管」について、「細胞培養の液体に流体を添加するための」との限定事項を有さず、かつ、「添加管の送出オリフィス(6;26)が、前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の液体中に浸漬されるように配置されている」について、「前記流体が培養の最中に前記細胞培養の液体の上部に形成される泡層に捕らえられないように、前記細胞培養の」との限定事項が「バイオリアクターの使用時に」であるものであり、本件補正発明の添加管の送出オリフィスが、本願発明と同様に「バイオリアクターの使用時に」液体中に浸漬されるように配置されるのは明らかであるから、本件補正発明は、実質的に本願発明特定事項を全て含み、さらにその一部を限定したものに相当すると認められる。
そして、本件補正発明は、前記第2の[理由]2(3)のとおり、引用発明1又は引用発明2と同一であり、また、引用発明1又は引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1又は引用発明2と同一であり、また、引用発明1又は引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-06 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-27 
出願番号 特願2016-538889(P2016-538889)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12M)
P 1 8・ 113- WZ (C12M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 小暮 道明
澤田 浩平
発明の名称 添加管を備えるバイオリアクター  
代理人 田中 研二  
代理人 飯田 雅人  
代理人 崔 允辰  
代理人 荒川 聡志  
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