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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05H
管理番号 1356710
審判番号 不服2018-9377  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2013- 79246「対称プラズマ処理チャンバ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-211269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月5日に出願した特願2012-222719号(パリ条約による優先権主張 平成23年10月5日(以下、「遡及出願の優先日」という。)、米国)の一部を平成25年4月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成28年 7月15日付け:拒絶理由通知
平成29年 1月25日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 6月21日付け:拒絶理由通知
平成29年11月20日 :意見書・手続補正書の提出
平成30年 3月16日付け:拒絶査定(同年3月20日送達)
平成30年 7月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年7月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所であり、審判請求人が付したとおりである。)
「【請求項1】
処理領域を囲む蓋アセンブリ及びチャンバ本体と、
チャンバ本体内に配置された基板支持アセンブリであって、基板支持アセンブリは、
1以上のベローズによって処理領域から流体的に密閉されたチャンバ本体の中央領域内に配置された支持台と、
支持台によって支持される下部電極と、
下部電極内に配置された複数のリフトピンと、
中央領域内に配置され、下部電極をある距離垂直に移動させるように構成された第1作動装置と、
中央領域内の支持台に接して配置され、複数のリフトピンを垂直に移動させるように構成された第2作動装置を含む基板支持アセンブリと、
チャンバ本体の中央領域内に配置され、基板支持アセンブリを支持するように位置決めされた中央支持部材であって、前記1以上のベローズが下部電極から中央支持部材まで延在する中央支持部材と、
中央領域に対するアクセスを提供するために、チャンバ本体を通って配置された複数のアクセスチューブであって、チャンバ本体を通って水平方向に延在し、支持台の下方に配置され、支持台の中心軸の周りに対称的に配置されている複数のアクセスチューブと、
チャンバ本体内に排気領域を画定する排気アセンブリであって、チャンバ本体は処理領域を排気領域と流体接続する支持台の中心軸の周りに対称的に配置された複数の排気チャネルを含む排気アセンブリを含むプラズマ処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
処理領域を囲む蓋アセンブリ及びチャンバ本体と、
チャンバ本体内に配置された基板支持アセンブリであって、基板支持アセンブリは、
1以上のベローズによって処理領域から流体的に密閉されたチャンバ本体の中央領域
内に配置された支持台と、
支持台によって支持される下部電極と、
下部電極内に配置された複数のリフトピンと、
中央領域内に配置され、下部電極をある距離垂直に移動させるように構成された第1作動装置と、
中央領域内の支持台に接して配置され、複数のリフトピンを垂直に移動させるように構成された第2作動装置を含む基板支持アセンブリと、
チャンバ本体の中央領域内に配置され、基板支持アセンブリを支持するように位置決めされた中央支持部材であって、前記1以上のベローズが下部電極から中央支持部材まで延在する中央支持部材と、
チャンバ本体内に排気領域を画定する排気アセンブリであって、チャンバ本体は処理領域を排気領域と流体接続する基板支持アセンブリの中心軸の周りに対称的に配置された複数の排気チャネルを含む排気アセンブリを含むプラズマ処理装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明が、さらに「中央領域に対するアクセスを提供するために、チャンバ本体を通って配置された複数のアクセスチューブであって、チャンバ本体を通って水平方向に延在し、支持台の下方に配置され、支持台の中心軸の周りに対称的に配置されている複数のアクセスチューブ」を含むことを特定しようとするものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明の「基板支持アセンブリの中心軸」について、「基板支持アセンブリ」に含まれる「支持台」の「中心軸」であることを特定しようとする限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
平成30年7月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定が引用した、本願の遡及出願の優先日前の平成22年8月5日に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2010-171286号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内部の処理室で形成したプラズマを用いて半導体ウエハ等の基板状の試料を処理するプラズマ処理装置に係り、処理室内に配置されその上面に試料が載せられる試料台の温度を調節しつつ試料を処理するプラズマ処理装置に関する。」

(イ)「【0034】
図2は、図1に示す実施例の真空処理ユニット106の上方の容器部を拡大してその主要部の構成の概略を示している。本図において、容器部を構成する真空容器210の内部には処理室200が配置され、その上部に処理室200内に電波を供給して電界を供給する管路である導波管201が、下部にはウエハ等の被処理対象である基板状の試料がその上面に載置される試料台250が備えられている。
【0035】
真空容器210は、その上部には供給された電波によりプラズマが形成される処理室200の上部である放電室の外周を囲んで略円筒形状を備えた側壁211及びこの側壁211の下方に配置された下部容器212を有している。また、これら側壁211と下部容器212とは試料台250の外周側を空間を挟み囲んで配置されている。また、これらの間の空間は、下部容器下方でこれと連結された排気ポンプを含む排気装置203の動作により、処理室200内のガスやプラズマ,反応生成物が下方に移動して下部容器212下部に配置された開口部から排気される空間となっている。
【0036】
処理室200の試料台250の上方には処理室200の天井面を構成する円板状の形状を有するシャワープレート205が、試料台250の上面と対向して配置されている。シャワープレート205の上方で共振室215との間には側壁211の上端部に対して、これと連結して処理室200内外を気密に封止して取り付けられた石英等誘電体部材製の円板形状の窓部材205aが配置されている。」

(ウ)「【0040】
試料の処理の際には、マグネトロン221とマッチングボックス222及びこれに連結された導波管201を介し高周波が供給され、導波管201を伝わって処理室200内に高周波の電界が導入される。また、同時に磁場形成装置202によって形成される磁場が処理室内200に供給され、これらの相互作用により処理ガスの物質の原子,分子を励起してプラズマが形成される。搬送され試料台250上面に載せられた処理対象の基板状の試料であるウエハは、試料台250上方の処理室200内に形成されたこのプラズマを用いて、試料台250に図示しないRFバイアス電源207から高周波電力が供給されつつエッチング処理が施される。」

(エ)「【0042】
試料台250は略円筒形状を有しており、同様に円筒形状を備えた処理室200の上部及び下部とその中心軸同士を合わせた、所謂同心状に配置されている。また、円筒形状の試料台250の下方には、円形の開口204が配置され、この開口204と試料台250及び処理室200とが同心状に配置されている。また、試料台250と処理室200の内壁面との間には空間が配置されており、シャワープレート205から処理室200に導入された処理用のガスや形成されたプラズマ内の粒子,ウエハの処理中に形成された生成物等がこの空間を通り試料台250下方の開口204から処理室200外に排気される。
【0043】
この空間には、試料台250の外側壁と処理室200の内側壁との間で水平方向に延在しこれらを連結する支持梁216が複数本(本例では4本)配置されており、本実施例では試料台250の中心を通る上下方向の軸、つまり、処理室200の中心軸について軸対称に配置されている。また、本実施例の真空処理ユニット106の処理容器は、真空容器210の外壁を構成する側壁211,下部容器212の内部に、試料台250の外周を囲む円筒形状を備えた内側容器217が配置されている。内側容器217は支持梁216の上下に配置された上方の上部部材217aと下方の下部部材217bとの2つの部材により構成されており、上部部材217aがプラズマと面し、下部部材217bは底部中央部に開口204と連通した円形の開口部を備えている。
【0044】
この内側容器217(217a,217b)の内壁面が、支持梁216同士を水平方向に連結するリング状部材の円筒形の内壁面と共に、試料台250の中心と開口204の中心とに付いて同心に配置されて上方に配置された側壁211の内側の処理室200に面する壁面と共に処理室200の内壁面を構成する。この構成により、試料台250上方の処理室200内の空間から試料台250周囲を流れるガスやプラズマ等の流れが軸対称となって、ウエハの処理がその周方向に均一化される。」

(オ)「【0046】
また、試料台250はその内部に円板形状を備えた高い熱伝達性を備えた金属製の円板である基材301と、この円形状の上面上方にこれを覆って配置されたアルミナやイットリアを主成分とする混合材料からなる誘電体製の誘電体膜305と、誘電体膜305内部に配置され図示しないフィルター回路を介して直流電源206と電気的に接続された膜状の電極307とを備えている。また、誘電体膜305が覆ってウエハが載せられる円形状の載置面の外周部と基材301の側壁とをプラズマから電気的絶縁を確保するため、またプラズマによってスパッタ及びエッチングされて消耗するのを保護する目的で、載置面外周部上面と基材301側壁外周にはこれらを覆ってセラミック製カバー303が設置されている。
【0047】
・・・(略)・・・
【0048】
・・・(略)・・・
【0049】
基材301の下方には絶縁部材を介して金属製の板部材が配置され、これにより処理室200内部と外部とが気密に封止されて区画されている。特に、本実施例の試料台250は、処理室200内部の空間で中間の高さに支持梁216によって支持されており、謂わば中空に保持されている。一方、試料台250の内部には、ウエハの受け渡しのためのピンの駆動手段や真空容器210外から導入される熱交換媒体やHeガスの導入経路と試料台250との接続部等が配置されこれらが収納された収納空間214が配置されている。
【0050】
この収納空間214は、試料台250の基材301下方に配置された少なくとも1つの円筒形状を備えた空間であって、本実施例ではその円筒の中心軸は試料台250の中心軸と同心にされている。さらに、収納空間214は支持梁216内部に配置されこれを貫通するダクト309を介して真空容器210外部と連通されており、その内部が雰囲気圧と同じか僅かに高い圧力にされている。収納空間214は試料台250周囲の処理室200内の空間と気密に区画されることが必要であるため、後述のようにベローズ,Oリング等のシール手段によって内外を気密に封止されている。
【0051】
各支持梁216はその内部に各々のダクト309を備えており、これらダクト309の一端は収納空間214の円筒形状の側壁に配置された開口に連通し、この開口を通り熱交換媒体やHeガスが通流する管やRFバイアス電源207からの高周波電力が供給される配線が収納空間214の天井面を構成する金属製の板部材を介して基材301内の流路304a,bや誘電体膜305内の電極307に連結され又は接続されている。ダクト309の他端は各支持梁216の外周端と接続されこれをつり下げて支持する上下方向に延びた支柱310の内部の空間と連結されている。ダクト309内部の熱交換媒体やHe管等はこの支柱310内の空間を通りその上端から、さらに真空容器210外側まで延びている。
【0052】
さらに、金属製の板部材下方には、後述の通りアクチュエータ及びこれと接続されるとともにその端部に上下方向に延在する棒状のプッシャピン311複数個(本実施例では3個)が連結されたアームを有するプッシャピン311の駆動機構308が収納空間の中央部に配置されている。プッシャピン311は、試料台250を構成する基材301,誘電体膜305及び上記絶縁部材,板部材を貫通した貫通路内部にこの通路の軸方向とその軸が並行になるように配置されているとともに、ウエハに不均一な外力を付加して割れ、損傷等を生起しないように、ウエハの中心と同心となるように配置された試料台250の中心軸について軸対称の位置に、且つ、ウエハの半径の60%から80%の位置に配置されている。」

(カ)図3及び4は、以下のとおりである。
図3 図4


(キ)上記(エ)並びに図3及び図4から、次のことが理解できる。
a「試料台250は、複数本の支持梁216と収納空間214の円筒形状の側壁とで支持されていること。」

b「内側容器217の内壁面と、支持梁216と、収納空間214の円筒形状の側壁とで囲われた4つの空間を流路として、試料台250上方の処理室200内の空間から試料台250周囲を流れるガスやプラズマ等の流れが軸対称となること。」

(ク)以上のとおりであるから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる

「 真空容器210と、真空容器210内の処理室200の下部にウエハ等の被処理対象である基板状の試料がその上面に載置される試料台250とを備え、試料台250にRFバイアス電源207から高周波電力を供給しつつエッチング処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空容器210は、略円筒形状を備えた側壁211及びこの側壁211の下方に配置された下部容器212を有し、
真空容器210の内部の処理室200の上方には処理室200の天井面を構成する円板状の形状を有するシャワープレート205が配置され、シャワープレート205の上方には側壁211の上端部に対して、これと連結して処理室200内外を気密に封止して取り付けられた円板形状の窓部材205aが配置され、
真空容器210の下部容器212の内部には、試料台250の外周を囲む円筒形状を備えた内側容器217が配置され、内側容器217は、上部部材217aと下方の下部部材217bとの2つの部材により構成されており、試料台250の下方には、円形の開口204が配置され、この開口204と試料台250及び処理室200とが同心状に配置され、
試料台250は、略円筒形状を有し、基材301を備え、基材301の下方には絶縁部材を介して金属製の板部材が配置され、これにより処理室200内部と外部とが気密に封止されて区画されており、
試料台250の基材301の下方に円筒形状の収納空間214が配置され、収納空間214は試料台250周囲の処理室200内の空間とベローズ、Oリング等のシール手段によって内外を気密に封止されており、
試料台250の基材301の上面上方には、これを覆って配置された誘電体膜305と、誘電体膜305内部に配置され直流電源206と電気的に接続された膜状の電極307とを備え、電極307には、RFバイアス電源207からの高周波電力が供給される配線が接続されており、
試料台250の前記金属製の板部材の下方には、アクチュエータ及びこれと接続されるとともにその端部に上下方向に延在する棒状のプッシャピン311複数個が連結されたアームを有するプッシャピン311の駆動機構308が収納空間214の中央部に配置されており、棒状のプッシャピン311は、試料台250を構成する基材301、誘電体膜305、前記絶縁部材及び金属製の板部材を貫通した貫通路内部にこの通路の軸方向とその軸が並行になるように配置され、
試料台250の外側壁と処理室200の内側壁との間には、水平方向に延在しこれらを連結する、複数本の支持梁216が、処理室200の中心軸について軸対称に配置されており、各支持梁216はその内部に各々のダクト309を備えており、これらダクト309の一端は収納空間214の円筒形状の側壁に配置された開口に連通し、この開口を通り管や配線が基材301内の流路304a、bや誘電体膜305内の電極307に連結され又は接続され、
試料台250は、複数本の支持梁216と収納空間214の円筒形状の側壁とで支持されており、
シャワープレート205から処理室200に導入された処理用のガスや形成されたプラズマ内の粒子、ウエハの処理中に形成された生成物等が、内側容器217の内壁面と、支持梁216と、収納空間214の円筒形状の側壁とで囲われた4つの空間を流路として、試料台250上方の処理室200内の空間から試料台250周囲を流れるガスやプラズマ等の流れが軸対称となって、試料台250下方の開口204から処理室200外に排気される、
プラズマ処理装置。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明の「処理領域を囲む蓋アセンブリ及びチャンバ本体」との発明特定事項について

引用発明の「処理室200」及び「下部容器212」は、それぞれ本件補正発明の「処理領域」及び「チャンバ本体」に相当する。
そして、引用発明において、処理室200の上方に配置された円板状の形状を有する「シャワープレート205」と、シャワープレート205の上方で側壁211の上端部に取り付けられた円板形状の「窓部材205a」とは、「下部容器212」の上部において処理室200を気密に封止するものであるから、これらは、本件補正発明の「蓋アセンブリ」に相当する。

したがって、引用発明は、本件補正発明の「処理領域を囲む蓋アセンブリ及びチャンバ本体」との発明特定事項を備える。

イ 本件補正発明の「チャンバ本体内に配置された基板支持アセンブリであって、基板支持アセンブリは、・・・を含む基板支持アセンブリ」との発明特定事項について

(ア)本件補正発明の「1以上のベローズによって処理領域から流体的に密閉されたチャンバ本体の中央領域内に配置された支持台」との発明特定事項について

引用発明の「試料台250」及び「収納空間214」は、それぞれ本件補正発明の「基板支持アセンブリ」、及び「チャンバ本体の中央領域」に相当する。
また、「試料台250」は、「基材301」と、「基材301」の下方に「絶縁部材」を介して「金属製の板部材」を有しており、「基材301」により処理室200内部と外部とを密に封止して区画するものであるから、「金属製の板部材」は、本件補正発明の「支持台」に相当する。
そして、引用発明の「試料台250」は、「処理室200」と「同心状に配置され」るものであるから、「金属製の板部材」も「チャンバ本体の中央領域内に配置」されているものである。
また、引用発明の「処理室200」と「収納空間214」とは、「ベローズ、Oリング等のシール手段によって内外を気密に封止されて」いるから、引用発明は、本件補正発明の「1以上のベローズによって処理領域から流体的に密閉されたチャンバ本体の中央領域内に配置された支持台」との発明特定事項を備える。

(イ)本件補正発明の「支持台によって支持される下部電極」との発明特定事項について

引用発明の「電極307」は、本件補正発明の「下部電極」に相当する。
そして、引用発明の「電極307」は「金属製の板部材」に支持されているから、引用発明は、本件補正発明の「支持台によって支持される下部電極」との発明特定事項を備える。

(ウ)本件補正発明の「下部電極内に配置された複数のリフトピン」との発明特定事項について

引用発明の「プッシャピン311」は、本件補正発明の「リフトピン」に相当する。
そして、引用発明の「プッシャピン311」は、「試料台250を構成する基材301、誘電体膜305、前記絶縁部材及び金属製の板部材を貫通した貫通路内部にこの通路の軸方向とその軸が並行になるように配置され」ており、「電極307」を内部に配置する「誘電体膜305」内を貫通しているから、引用発明は、本件補正発明の「下部電極内に配置された複数のリフトピン」との発明特定事項を備える。

(エ)本件補正発明の「中央領域内に配置され、下部電極をある距離垂直に移動させるように構成された第1作動装置」との発明特定事項について

引用発明は、本件補正発明のような「中央領域内に配置され、下部電極をある距離垂直に移動させるように構成された」作動装置を備えるものではない。

(オ)本件補正発明の「中央領域内の支持台に接して配置され、複数のリフトピンを垂直に移動させるように構成された第2作動装置」との発明特定事項について

引用発明の「駆動機構308」は、上下方向に延在する棒状の「プッシャピン311」を駆動するものであり、収納空間214の中央部に配置されているものである。
そうすると、引用発明と本件補正発明とは、「中央領域内の支持台に接して配置され、複数のリフトピンを垂直に移動させるように構成された作動装置」を備える点で一致する。

ウ 本件補正発明の「チャンバ本体の中央領域内に配置され、基板支持アセンブリを支持するように位置決めされた中央支持部材であって、前記1以上のベローズが下部電極から中央支持部材まで延在する中央支持部材」との発明特定事項について

引用発明の試料台250は、「複数本の支持梁216と収納空間214の円筒形状の側壁とで支持されており」、支持梁216は、「処理室200の中心軸について軸対称に配置されて」いるから、引用発明は、本件補正発明の「チャンバ本体の中央領域内に配置され、基板支持アセンブリを支持するように位置決めされた中央支持部材」との発明特定事項を備える。
一方、引用発明は、「複数本の支持梁216」または「収納空間214の円筒形状の側壁」と「試料台250」の間は、「気密に封止」されているとはいえるものの、「1以上のベローズ」は延在していない。

エ 本件補正発明の「中央領域に対するアクセスを提供するために、チャンバ本体を通って配置された複数のアクセスチューブであって、チャンバ本体を通って水平方向に延在し、支持台の下方に配置され、支持台の中心軸の周りに対称的に配置されている複数のアクセスチューブ」との発明特定事項について

引用発明の「各支持梁216」はその内部に各々の「ダクト309」を備えており、「これらダクト309の一端は収納空間214の円筒形状の側壁に配置された開口に連通し、この開口を通り管や配線が基材301内の流路304a、bや誘電体膜305内の電極307に連結され又は接続され」ているから、引用発明の「ダクト309」は本件発明の「アクセスチューブ」に相当する。
そして、引用発明は、本件補正発明の「中央領域に対するアクセスを提供するために、チャンバ本体を通って配置された複数のアクセスチューブであって、チャンバ本体を通って水平方向に延在し、支持台の下方に配置され、支持台の中心軸の周りに対称的に配置されている複数のアクセスチューブ」との発明特定事項を備える。

オ 本件補正発明の「チャンバ本体内に排気領域を画定する排気アセンブリであって、チャンバ本体は処理領域を排気領域と流体接続する支持台の中心軸の周りに対称的に配置された複数の排気チャネルを含む排気アセンブリ」との発明特定事項について

引用発明では、「シャワープレート205から処理室200に導入された処理用のガスや形成されたプラズマ内の粒子、ウエハの処理中に形成された生成物等が、内側容器217の内壁面と、支持梁216と、収納空間214の円筒形状の側壁とで囲われた4つの空間を流路として、試料台250上方の処理室200内の空間から試料台250周囲を流れるガスやプラズマ等の流れが軸対称となって、試料台250下方の開口204から処理室200外に排気される」から、引用発明は、本件補正発明の「チャンバ本体内に排気領域を画定する排気アセンブリであって、チャンバ本体は処理領域を排気領域と流体接続する支持台の中心軸の周りに対称的に配置された複数の排気チャネルを含む排気アセンブリ」との発明特定事項を備える。

キ 一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

・一致点
「処理領域を囲む蓋アセンブリ及びチャンバ本体と、
チャンバ本体内に配置された基板支持アセンブリであって、基板支持アセンブリは、
1以上のベローズによって処理領域から流体的に密閉されたチャンバ本体の中央領域内に配置された支持台と、
支持台によって支持される下部電極と、
下部電極内に配置された複数のリフトピンと、
中央領域内の支持台に接して配置され、複数のリフトピンを垂直に移動させるように構成された作動装置を含む基板支持アセンブリと、
チャンバ本体の中央領域内に配置され、基板支持アセンブリを支持するように位置決めされた中央支持部材と、
中央領域に対するアクセスを提供するために、チャンバ本体を通って配置された複数のアクセスチューブであって、チャンバ本体を通って水平方向に延在し、支持台の下方に配置され、支持台の中心軸の周りに対称的に配置されている複数のアクセスチューブと、
チャンバ本体内に排気領域を画定する排気アセンブリであって、チャンバ本体は処理領域を排気領域と流体接続する支持台の中心軸の周りに対称的に配置された複数の排気チャネルを含む排気アセンブリを含むプラズマ処理装置。」

・相違点
本件補正発明が、「中央領域内に配置され、下部電極をある距離垂直に移動させるように構成された第1作動装置」を含み、「前記1以上のベローズが下部電極から中央支持部材まで延在する」のに対し、引用発明は、そのような装置を含むものではなく、「複数本の支持梁216」または「収納空間214の円筒形状の側壁」と「試料台250」の間は、「気密に封止」されているとはいえるものの、「1以上のベローズ」は延在してはいない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点について
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として示した、特開2002-184599号公報、国際公開第2003/056617号及び特開2003-163206号公報には、それぞれ次の事項が記載されている。

(ア)「処理容器11内において、基板(被処理体)を載置面に置く載置台と処理容器11の底部との間に昇降軸を囲うようにベローズを設けて、処理容器11内の気密性を確保しつつ、前記載置台を処理容器11の底部を遊貫する昇降軸により上下動自在とすること。」
(特開2002-184599号公報の段落0017及びおよび図1を参照。)

(イ)「処理容器102内において、被処理体、例えば半導体ウエハを載置する下部電極104の側面下部に形成された導電部材107と処理容器102とに接触するように、昇降軸の周囲にベローズを設けて、下部電極104を昇降軸によって上下動自在とすること。」(国際公開第2003/056617号の8頁6行?17行及び第1図)

(ウ)「処理室内に、半導体ウエハの載置台としての機能と下部電極としての機能を有し、内部に半導体ウエハ受け渡し用のリフトピンが昇降可能に配置された、サセプタ23を支持するサセプタ支持台22を設け、サセプタ支持台22の下面と処理室21の底面の上面にべーローズ26を設けて、処理室の真空部分と大気に露出される部分とを分離しつつ、処理室の下方に設けられた昇降機構でシャフト25を昇降させることにより、サセプタ支持台22を昇降すること。」(特開2003-163206号公報の段落0029?0031及び図2を参照。)

そうすると、プラズマ処理装置において、「処理室内において、昇降軸を囲うようにベローズを設けて処理室の気密性を確保しつつ、被処理体が載置される載置台を昇降軸によって昇降自在とすること」は、本願の遡及出願の優先日前に周知の技術であったといえる。

他方、プラズマ処理装置において、上部電極と下部電極の間隔を調整して、両電極間に存在するプラズマの密度を調整し得ることは、当業者にとって技術常識であるから(なお、この点は電磁気学の観点からも明らかなことといえる。)、当該技術常識を踏まえて、上部電極と下部電極の間隔を調整するために、引用発明に上記周知技術を適用しようとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
その際、ベローズを設ける位置として、試料台250の「金属製の板部材」と「複数本の支持梁216」及び「収納空間214の円筒形状の側壁」との間を選択し、当該位置にベローズを延在させることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、本件補正発明は、引用発明に上記周知技術を適用して、当業者が容易になし得たものである。

イ 作用・効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年7月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の遡及出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(文献2?4を参照。)に基づいて、本願の遡及出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2010-171286号公報
2.特開2002-184599号公報
3.国際公開第2003/056617号
4.特開2003-163206号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2の2で指摘した限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-04 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-25 
出願番号 特願2013-79246(P2013-79246)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05H)
P 1 8・ 121- Z (H05H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 加代子  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 小松 徹三
西村 直史
発明の名称 対称プラズマ処理チャンバ  
代理人 安齋 嘉章  

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