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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1356729
審判番号 不服2018-4182  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-27 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2015-553676「チップパッケージアッセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日国際公開、WO2014/112892、平成28年 2月 8日国内公表、特表2016-503969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年1月16日を国際出願日とする出願であって、平成28年7月29日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月28日付けで手続補正がなされ、平成29年2月7日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年7月11日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について、同年11月17日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年3月27日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成30年3月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年3月27日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成30年3月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前(平成28年10月28日付け手続補正されたもの)に
「【請求項1】
少なくとも1つの半導体チップ(2)を取り付けるチップパッケージアッセンブリ(1)であって、フランジ(3)と基板(4)と少なくとも1つの冷却装置とを有し、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが前記フランジ(3)の1つの面に配置されている、チップパッケージアッセンブリ(1)において、
前記フランジ(3)は導電性かつ熱伝導性の材料から成り、
前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)をさらに有することを特徴とする、チップパッケージアッセンブリ。」

とあったものが、

「【請求項1】
少なくとも1つの半導体チップ(2)を取り付けるチップパッケージアッセンブリ(1)であって、フランジ(3)と基板(4)と少なくとも1つの冷却装置とを有し、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが前記フランジ(3)の1つの面に配置されている、チップパッケージアッセンブリ(1)において、
前記フランジ(3)は導電性かつ熱伝導性の材料から成り、
前記基板(4)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)をさらに有し、
前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタ、特に前記フランジ(3)に面した側とは反対の側にある前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタは、ボンディング、特にワイヤ及び/又はリボン線(6)によるボンディングによって前記基板(4)に接続されており、
前記少なくとも1つのチップ(2)の前記コネクタと前記フランジ(3)との間に配置された電気絶縁体(9)と、
前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが配置されている前記フランジ(3)の面とは反対側のフランジ(3)の面と、前記少なくとも1つの冷却装置との間に配置された誘電基板(12)と、
をさらに有することを特徴とする、チップパッケージアッセンブリ。」
と補正された。

そこで、本件補正前の請求項1の記載と本件補正後の請求項1の記載とを対比すると、
ア.「前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)・・」とあったのが、「前記基板(4)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)・・」と補正され、
イ.「前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタ、特に前記フランジ(3)に面した側とは反対の側にある前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタは、ボンディング、特にワイヤ及び/又はリボン線(6)によるボンディングによって前記基板(4)に接続され」ていることが付加され、
ウ.「前記少なくとも1つのチップ(2)の前記コネクタと前記フランジ(3)との間に配置された電気絶縁体(9)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが配置されている前記フランジ(3)の面とは反対側のフランジ(3)の面と、前記少なくとも1つの冷却装置との間に配置された誘電基板(12)と」をさらに有することが付加されている。

上記「ア.」については、サンドイッチ状に配置されるのは「基板(4)」と「フランジ(3)」と「少なくとも1つの冷却装置」であって、「少なくとも1つのチップ(2)」は含まれないこと、及び、ねじ(10)によって少なくとも1つの冷却装置に互いに押し付けて固定されるのは「基板(4)」と「フランジ(3)」であって、「少なくとも1つのチップ(2)」は含まれないことを明らかにするものであり、これは拒絶の理由(平成29年2月7日付け拒絶理由通知の理由1及び理由2)に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するということができる。
また、上記「イ.」については、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「少なくとも1つのチップ(2)」について、フランジ(3)に面した側とは反対の側に「コネクタ」を有し、当該コネクタが「ボンディング、特にワイヤ及び/又はリボン線(6)によるボンディングによって前記基板(4)に接続」されてなる旨の限定を付加するものであるとみることができる。
そして、上記「ウ.」については、同じく本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「フランジ(3)」について、一方の面が「電気絶縁体(9)」によって少なくとも1つのチップ(2)と絶縁され、他方の面が「誘電基板(12)」によって少なくとも1つの冷却装置と絶縁されてなる旨の限定を付加するものであるとみることができる。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-243607号公報(以下、「引用例」という。)には、「電力用半導体モジュール」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 電力用半導体モジュールであって、
表面および裏面を有する樹脂製ケースと、
前記樹脂製ケースに収納された絶縁基板と、
前記絶縁基板の対向する主面上に形成された金属箔と、前記絶縁基板の一方の金属箔上に搭載された電力用半導体素子と、
前記樹脂製ケースの表面に沿って延び、裏面に向かって折り曲げられた、前記電力用半導体素子に電源供給するための外部接続部とを備え、
前記樹脂製ケースは、その表面から裏面まで貫通するケース貫通孔を有し、
前記外部接続部は、前記ケース貫通孔と位置合わせされ、かつ同軸上に形成された接続部貫通孔を有することを特徴とする電力用半導体モジュール。
【請求項2】 請求項1に記載の電力用半導体モジュールであって、
前記絶縁基板の他方の金属箔を支持し、前記樹脂製ケースの裏面に固定された支持金属板をさらに備え、
前記支持金属板は、前記ケース貫通孔と位置合わせされ、かつ同軸上に形成された金属板貫通孔を有することを特徴とする電力用半導体モジュール。」

イ.「【0015】実施の形態1.ここで図1ないし図4を参照しながら、本発明に係るパワーデバイス(電力用半導体モジュール)の実施の形態1について以下に説明する。図1に示すパワーデバイス1は、概略、樹脂などの絶縁材料からなる樹脂ケース10と、良好な熱伝導性を有する銅などの金属板からなるベース板30とを備えている。ケース10は、その底面において、金属ねじまたは接着剤(図示せず)を用いて、ベース板30上に固定されている。また、このパワーデバイス1は、図2に示すように、ケース10の上面に沿って延び、底面に向かって折り曲げられた複数の主電極11(外部接続部ともいう。)を有する。さらに、パワーデバイス1は、ケース10の内部において、銅などの金属パターン14a,14bが両面に形成された絶縁基板15と、上側の金属パターン14aの上に半田16を介して搭載された電力用半導体素子20とを有する。この電力用半導体素子20は、主電極11からアルミなどの金属ワイヤ23を介して電源供給される。下側の金属パターン14bは、同様に、半田17を介して、ベース板30上に接着される。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0017】本発明のパワーデバイス1によれば、各主電極11は、上下方向に延びる主電極貫通孔2a(接続部貫通孔ともいう。)を有し、同様に、ケース10とベース板(支持金属板)30は、上下方向に延び、各主電極貫通孔2aと位置合わせされ、かつ同軸上に形成されたケース貫通孔2bおよびベース板貫通孔2c(金属板貫通孔ともいう。)をそれぞれ有する。こうして、パワーデバイス1は、主電極11の主電極貫通孔2a、ケース10のケース貫通孔2b、およびベース板30のベース板貫通孔2cにより形成される貫通孔2を有する。」

ウ.「【0018】このように構成されたパワーデバイス1を周辺装置に組み込むときの手順について、図2および図3を参照しながら以下に説明する。複数のブスバー(通電部)40は、それぞれ上下方向に延びるブスバー貫通孔42(通電部貫通孔ともいう。)を有し、対応する主電極11上に配置される。放熱フィン50は、ベース板30の底面31と接触する接触面51と、パワーデバイス1の貫通孔2に対応する位置に埋設されたナットなどのねじ山付きの保持部52とを有し、パワーデバイス1の下方に配置される。そして、それぞれのブスバー貫通孔42および保持部52を、対応するパワーデバイス1の貫通孔2と位置合わせした後、図3に示すように、絶縁材料からなる複数の細長い取り付けねじ60を貫通孔2に挿入して、ブスバー40を主電極11に接続するとともに、ベース板30を放熱フィン50に固定する。」

・上記引用例に記載の「電力用半導体モジュール」は、上記「ア.」、「イ.」の段落【0015】の記載事項、及び図1、図2によれば、良好な熱伝導性を有する銅などの金属板からなるベース板30と、ベース板30上に固定された樹脂製ケース10とを備え、樹脂製ケース10の内部には、金属パターン14a,14bが両面に形成された絶縁基板15と、上側の金属パターン14a上に搭載された電力用半導体素子20とが収納され、下側の金属パターン14bがベース板30上に接着されてなるものである。
・上記「ア.」、「イ.」の段落【0015】の記載事項、及び図2、図3によれば、樹脂製ケース10には、その表面に沿って延び、裏面に向かって折り曲げられた複数の主電極11(外部接続部)が設けられてなり、電力用半導体素子20は、金属ワイヤ23によって主電極11と接続されてなるものである。
上記「ア.」、「イ.」の段落【0017】、「ウ.」の記載事項、及び図2、図3によれば、樹脂製ケース10及びベース板30は、それぞれ同軸上に形成された貫通孔(ケース貫通孔2b及びベース貫通孔2c)を有し、絶縁材料からなる取り付けねじ60を貫通孔に挿入し、当該取り付けねじ60によってベース板30を放熱フィン50に固定するようにしてなるものである。

したがって、図2等に示される実施の形態1に係るものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「良好な熱伝導性を有する銅などの金属板からなるベース板と、該ベース板上に固定された樹脂製ケースとを備えた電力用半導体モジュールであって、
前記樹脂製ケースの内部には、金属パターンが両面に形成された絶縁基板と、上側の金属パターン上に搭載された電力用半導体素子とが収納され、下側の金属パターンが前記ベース板上に接着されてなり、
前記樹脂製ケースには、その表面に沿って延び、裏面に向かって折り曲げられた複数の主電極が設けられており、前記電力用半導体素子は、金属ワイヤによって前記主電極と接続されてなり、
前記樹脂製ケース及び前記ベース板は、それぞれ同軸上に形成された貫通孔を有し、絶縁材料からなる取り付けねじを貫通孔に挿入し、当該取り付けねじによって前記ベース板を放熱フィンに固定するようにした、電力用半導体モジュール。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「良好な熱伝導性を有する銅などの金属板からなるベース板と、該ベース板上に固定された樹脂製ケースとを備えた電力用半導体モジュールであって、前記樹脂製ケースの内部には、金属パターンが両面に形成された絶縁基板と、上側の金属パターン上に搭載された電力用半導体素子とが収納され、下側の金属パターンが前記ベース板上に接着されてなり、前記樹脂製ケースには、その表面に沿って延び、裏面に向かって折り曲げられた複数の主電極が設けられており、前記電力用半導体素子は、金属ワイヤによって前記主電極と接続されてなり、・・・・当該取り付けねじによって前記ベース板を放熱フィンに固定するようにした、・・」によれば、
(a)引用発明における「電力用半導体素子」、「放熱フィン」が、それぞれ本願補正発明でいう「少なくとも1つの半導体チップ(2)」、「少なくとも1つの冷却装置」に相当し、
引用発明における「電力用半導体モジュール」及びこれと一体に固定される「放熱フィン」とを併せたものが、本願補正発明でいう「チップパッケージアッセンブリ(1)」に相当するといえる。
また、引用発明における「ベース板」は、良好な熱伝導性を有する銅などの金属板であり、銅からなる金属板は導電性を有することも自明であるから、本願補正発明でいう、導電性かつ熱伝導性の材料から成る「フランジ(3)」に相当し、
引用発明における「樹脂製ケース」は、金属ワイヤによって電力用半導体素子と接続される複数の主電極が設けられてなるものであることから、本願補正発明でいう「基板」に相当するとみることができる。
そして、引用発明にあっても、「電力用半導体素子」と「樹脂製ケース」は、ベース板の1つの面(上面)に配置されてなるものである(引用例の図2、図3も参照)。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「少なくとも1つの半導体チップ(2)を取り付けるチップパッケージアッセンブリ(1)であって、フランジ(3)と基板(4)と少なくとも1つの冷却装置とを有し、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが前記フランジ(3)の1つの面に配置されている、チップパッケージアッセンブリ(1)において、前記フランジ(3)は導電性かつ熱伝導性の材料から成」るものである点で一致する。
(b)さらに、引用発明における「金属ワイヤ」は、本願補正発明でいう「ワイヤ及び/又はリボン線(6)」に相当し、
引用発明においても、「金属ワイヤ」によるボンディングによって電力用半導体素子と樹脂製ケースに設けられた主電極とを接続するものであるところ、引用例の図2、図3からも明らかなように、「金属ワイヤ」によって電力用半導体素子の上面と主電極とが接続されており、かかる電力用半導体素子の上面には、「金属ワイヤ」が接続される本願補正発明でいうところの「コネクタ」が設けられていることは自明なことである。
なお、本願補正発明では、「・・コネクタは、・・・・ボンディングによって前記基板(4)に接続されており」とあるが、より正確には、基板(4)に設けられた電気アウトレット(7)に接続される(本願明細書の段落【0029】、図1を参照)ものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタ、特に前記フランジ(3)に面した側とは反対の側にある前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタは、ボンディング、特にワイヤ及び/又はリボン線(6)によるボンディングによって前記基板(4)に接続され」てなるものである点で一致するということができる。

イ.引用発明における「・・該ベース板上に固定された樹脂製ケースとを備えた電力用半導体モジュールであって、・・・・前記樹脂製ケース及び前記ベース板は、それぞれ同軸上に形成された貫通孔を有し、絶縁材料からなる取り付けねじを貫通孔に挿入し、当該取り付けねじによって前記ベース板を放熱フィンに固定するようにした・・」によれば、
引用発明における「取り付けねじ」は、本願補正発明でいう「ねじ(10)」に相当し、
引用発明にあっても、樹脂製ケース、ベース板及び放熱フィンが、ベース板を挟むようにサンドイッチ状に配置され、取り付けねじによって樹脂製ケースとベース板とが互いに押し付けあうように放熱フィンに固定されるものであるといえる(引用例の図3も参照)。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記基板(4)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)」を有するものである点で一致する。

ウ.引用発明における「・・金属パターンが両面に形成された絶縁基板と、上側の金属パターン上に搭載された電力用半導体素子とが収納され、下側の金属パターンが前記ベース板上に接着されてなり・・」によれば、
引用発明における「絶縁基板」あっても、電力用半導体素子とベース板との間に配置されてなるものであることから、本願補正発明でいう「電気絶縁体(9)」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つのチップ(2)の前記コネクタと前記フランジ(3)との間に配置された電気絶縁体(9)と」を有するものである点で一致する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「少なくとも1つの半導体チップ(2)を取り付けるチップパッケージアッセンブリ(1)であって、フランジ(3)と基板(4)と少なくとも1つの冷却装置とを有し、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが前記フランジ(3)の1つの面に配置されている、チップパッケージアッセンブリ(1)において、
前記フランジ(3)は導電性かつ熱伝導性の材料から成り、
前記基板(4)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)をさらに有し、
前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタ、特に前記フランジ(3)に面した側とは反対の側にある前記少なくとも1つのチップ(2)のコネクタは、ボンディング、特にワイヤ及び/又はリボン線(6)によるボンディングによって前記基板(4)に接続されており、
前記少なくとも1つのチップ(2)の前記コネクタと前記フランジ(3)との間に配置された電気絶縁体(9)と、
をさらに有することを特徴とする、チップパッケージアッセンブリ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では、「前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが配置されている前記フランジ(3)の面とは反対側のフランジ(3)の面と、前記少なくとも1つの冷却装置との間に配置された誘電基板(12)」を有する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(4)判断
上記[相違点]について検討する。
例えば原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-85408号(実開平2-8098号)のマイクロフィルム(特に2頁4?8行、第2図を参照)における「電子部品の放熱板1」と「放熱板2」との間に設けられた「絶縁シート3」、さらには特開平7-176651号公報(特に段落【0003】?【0004】、図5を参照)における「熱拡散板4」と「ヒートシンク1」との間に設けられた「第1絶縁板2_(1)」、特開2012-54604号公報(特に段落【0022】、図14を参照)における「ヒートシンク部材6」と「ヒートスプレッダー11」との間に設けられた「絶縁シート硬化体77」のように、本願補正発明でいう「フランジ」と「少なくとも1つの冷却装置」との間に本願補正発明でいう「誘電基板」を設けることは周知といえる技術事項であり、引用発明においても、熱伝導性(放熱性)、絶縁性、接着性などを考慮して「ベース板」と「放熱フィン」との間に絶縁シート(絶縁板)、すなちわ「誘電基板」を設けて相違点に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成30年3月27日付けの手続補正は上記のとおり却下され、また、平成29年7月11日付けの手続補正についても同年11月17日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも1つの半導体チップ(2)を取り付けるチップパッケージアッセンブリ(1)であって、フランジ(3)と基板(4)と少なくとも1つの冷却装置とを有し、前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが前記フランジ(3)の1つの面に配置されている、チップパッケージアッセンブリ(1)において、
前記フランジ(3)は導電性かつ熱伝導性の材料から成り、
前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)をさらに有することを特徴とする、チップパッケージアッセンブリ。」

(1)特許法第36条第6項第1号(原査定の拒絶の理由2(サポート要件))について
原査定の拒絶の理由2は、
「2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というものであって、具体的には以下のような記載不備に関する指摘事項を含むものである。

「上記理由1の備考から、補正における請求項1は、当初明細書等に記載されていない。したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」
ここで、「理由1の備考」は次のとおりである。
「平成28年10月28日付けの手続補正書でした補正における請求項1に関する補正は、補正前の請求項1に対して、『少なくとも1つの冷却装置』を構成要件として追加し、『前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定するねじ(10)をさらに有する』記載を追加する補正であるが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、『前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置』及び『前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付け』の記載がない。出願人は、同日提出した意見書において、段落0031-0032、図1-2を根拠として請求項1を補正したことを主張しているが、当初明細書等の段落0031には、『基板4と、フランジ3と、絶縁体12と、冷却装置とをサンドイッチ構造で配置』することが記載されているのみであり、少なくとも1つのチップ(2)がサンドイッチ状に配置されていることについては記載されていない。
また、当初明細書等の段落0026には、『このフランジ3の1つの面上にチップ2と基板4とが配置されている。』、段落0035には、『チップ2の周りに、フランジ3の同じ面で基板4が、例えばやはりはんだ、共晶合金、導電接着剤、及び/又は焼結ペースト5を用いて配置されている。』と記載されていることから、フランジ3の同一面にチップ2と基板4が面一で配置されているものと認められる。
さらに、図1をみるに、チップ(2)は基板(4)に設けられた開口部に合うように配置されていると認められるから、『基板(4)と、少なくとも1つのチップ(2)と、フランジ(3)とを、互いに押し付け』ることができない。(チップ(2)が、基板(4)とフランジ(3)を押し付けていない。)
したがって、『基板(4)と、少なくとも1つのチップ(2)と、フランジ(3)と、少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置』及び『基板(4)と、少なくとも1つのチップ(2)と、フランジ(3)とを、互いに押し付けて』とした点は、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明の事項ということはできない。」

そこで検討すると、発明の詳細な説明の記載(特に段落【0026】、【0029】、【0035】)及び図1によれば、チップ(2)は、基板(4)に設けられた穴(開口部)に合うように配置され、チップ(2)と基板(4)とは、フランジ(3)の同じ面上に重なることなく設けられていると解される。そうすると、サンドイッチ状に配置されるのは「基板(4)」と「フランジ(3)」と「少なくとも1つの冷却装置」であって、「少なくとも1つのチップ(2)」は含まれず、また、ねじ(10)によって少なくとも1つの冷却装置に互いに押し付けて固定されるのは「基板(4)」と「フランジ(3)」であって、「少なくとも1つのチップ(2)」は含まれないことになるから、発明の詳細な説明には、「少なくとも1つのチップ(2)」が、基板(4)等とともにサンドイッチ状に配置され、互いに押し付ける構成は記載されていない。
したがって、本願発明における「前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定する・・」なる記載事項は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

よって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

<<予備的見解>>
(2)特許法第29条第1項第3号(原査定の拒絶の理由3-2(新規性))について
なお仮に、本願発明における「前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記少なくとも1つのチップ(2)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定する・・」なる記載が、「前記基板(4)と、前記フランジ(3)と、前記少なくとも1つの冷却装置とがサンドイッチ状に配置され、前記基板(4)と、前記フランジ(3)とを、互いに押し付けて前記少なくとも1つの冷却装置に固定する・・」と正しく記載されていたものとして、いわゆる新規性についても一応検討しておく。

(2-1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2-2)対比・判断
本願発明は、少なくとも前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「前記少なくとも1つのチップ(2)と前記基板(4)とが配置されている前記フランジ(3)の面とは反対側のフランジ(3)の面と、前記少なくとも1つの冷却装置との間に配置された誘電基板(12)と」をさらに有することの限定を省いたもの、すなわち上記「2.(3)」で認定した上記[相違点]に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明と全て一致し相違するところがなく、本願発明は、引用例に記載された発明である。

したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-04 
結審通知日 2019-06-10 
審決日 2019-06-21 
出願番号 特願2015-553676(P2015-553676)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒田 久美子小山 和俊秋山 直人  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山澤 宏
井上 信一
発明の名称 チップパッケージアッセンブリ  
代理人 森田 拓  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 前川 純一  
代理人 二宮 浩康  
代理人 上島 類  

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