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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1356753
審判番号 不服2018-4748  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-06 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 特願2014- 90377「携帯電子機器、制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-211268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年4月24日の出願であって、平成29年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年12月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成30年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成31年2月12日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年4月22日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、 特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
携帯電子機器であって、
アラーム鳴動を行う鳴動部と、
少なくとも加速度センサを含む動き検出部と、
前記携帯電子機器が安定した場所に静置されている状態であると判定した後、前記動き検出部が検出する加速度に基づく変動パターンが予め設定された移動パターンにマッチする期間が所定期間にわたって継続すると、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記鳴動部によるアラーム鳴動を開始した後、当該アラーム鳴動を一時的に停止し、停止期間の経過後に再開するスヌーズ機能を実行した後は、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定すると、前記鳴動部によるアラーム鳴動を抑制し、前記スヌーズ機能を実行する前は、前記移動状態に関わらず、所定の時刻になると前記アラーム鳴動を開始する携帯電子機器。」(下線部は、平成31年4月22日付けの補正箇所。)

3.引用文献および引用発明
平成31年2月12日付けの拒絶理由通知で引用された特開2011-91739号公報(平成23年5月6日公開。以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、加速度情報からユーザの状況を判別して各種処理を行う携帯端末に関する。」

(2)「【0032】
加速度センサ32は、携帯端末1の加速度を測定する加速度測定部である。加速度センサ32は、加えられた加速度の検出結果を加速度情報として移動手段判定部33に出力する。」

(3)「【0035】
移動手段判定部33は、加速度センサ32より得られた加速度情報に基づいて、携帯端末1の移動手段を判定する。移動手段判定部33の詳細な構成については、後述する。
【0036】
通知等処理決定部31は、アプリケーション実行制御部13により行われる通知処理などを決定する。通知等処理決定部31は、移動手段判定部33より得られた携帯端末1の移動手段に関する情報、GPS受信制御部34より得られた位置情報およびクロック36より得られた時刻情報が、決定条件テーブルDB37に格納された条件に一致するか否かを判定し、アプリケーション実行制御部13で行われる各種処理を決定する。」

(4)「【0040】
図2は、図1の移動手段判定部33の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、移動手段判定部33の各構成は一例であって、加速度情報から移動手段の判定や移動速度の判定が可能であれば他の構成で実現してもよい。
【0041】
重力推定部41は、加速度センサ32より加速度情報が供給されると、重力推定バッファ42に保持された過去の加速度情報から重力成分を算出する。算出された重力成分は、重力成分除去部43に供給される。重力成分除去部43は、加速度センサ32より供給された加速度情報から、重力推定部41より供給された重力成分を除去することにより、加速度の値を算出する。
【0042】
加速度特徴量計算部44は、重力成分除去部43より加速度の値を取得し、加速度の変化の特徴量を算出する。加速度特徴量計算部44で算出された所定時間(例えば10秒)分の特徴量は、特徴量バッファ45に蓄積される。加速度統計量計算部46は、特徴量バッファ45に蓄積された所定時間分の特徴量に基づいて、変化の統計量を分析する。
【0043】
移動手段決定部47は、加速度統計量計算部46より取得した統計量に基づいて、携帯端末1の移動手段を決定する。移動手段決定テーブルDB48には、統計量から移動手段を判定するための基準となる移動手段決定テーブルが格納される。移動手段決定部47は、この移動手段決定テーブルと取得した統計量とのマッチングを行い、携帯端末1の移動手段を決定する。本実施形態においては、移動手段決定部47により決定される移動手段は、静止している状態を示す「静止」、携帯端末1のユーザが歩いている状態を示す「歩行」、ユーザが走っている状態を示す「走行」、ユーザが電車、バス、自動車などの乗り物に乗っている状態を示す「乗車」であるものとする。また、移動手段決定部47は、各移動手段の目安となる移動速度の値についても算出し、必要に応じて移動手段とともに出力されるものとする。なお、各移動手段の移動速度の関係は、「静止」<「歩行」<「走行」<「乗車」とする。」

(5)「【0046】
図3は、本実施形態における携帯端末1の移動手段判定部33により実行される移動手段等判定処理を説明するフローチャートである。この移動手段判定処理は、所定時間毎(例えば十数秒?数十秒毎)に繰り返し実行される。
【0047】
ステップS1において、移動手段判定部33は、加速度センサ32により測定された携帯端末1の加速度情報を取得する。ステップS2において、移動手段判定部33は、GPS受信制御部34により測定された携帯端末1の位置情報を取得する。なお、位置情報取得ステップS2は、必要に応じて実行される処理であり省略してもよい。
【0048】
ステップS3において、移動手段判定部33は、取得された加速度情報に基づいて、携帯端末1の移動手段を判定する。ステップS4において、移動手段判定部33は、判定した移動手段に関する情報および位置情報を通知等処理決定部31へ通知する。以上で移動手段等判定処理は終了する。
【0049】
次に、携帯端末1の移動手段の変化のパターン(取得された移動手段の種類と前回取得された移動手段の種類の変化。以下、「変化パターン」という。)に応じてスピーカ15より出力される通知音の音量およびバイブレータ21の振動強度を制御する、通知パターン決定処理について説明する。この通知パターン決定処理は、ユーザに対して行われる何らかの通知(例えば音声着信通知、電子メール受信通知、ToDo通知、アラーム通知)を行う際の通知音量および振動強度(以下、「通知パターン」という。)を制御する処理である。通知パターン決定処理は、例えばユーザにより通知パターン決定処理を実行する指示を受け付けた場合に実行される。または、特に指示を受け付けることなく常時実行される。また、この通知パターン決定処理は、例えば処理を終了する指示をユーザより受け付けるまで繰り返し実行される。」

(6)「【0081】
一方、通知等処理決定部31はいずれかの通知条件を満たすと判定した場合、ステップS27において、アプリケーション実行制御部13は、所定の通知処理を実行する。例えば、受信メール再通知に割り当てられた条件が満たされた場合には、アプリケーション実行制御部13は電子メール受信通知音を出力したり、ディスプレイに電子メールを受信した旨のポップアップを表示したりして、ユーザに電子メールの受信を通知する。またToDo通知に割り当てられた条件が満たされた場合には、アプリケーション実行制御部13はアラーム音を出力したり、ディスプレイ16にタスクの内容を通知するポップアップを表示したりして、ユーザにタスクの通知を行う。
【0082】
この携帯端末1は、移動手段に関する情報や位置情報、時刻情報を利用した通知時決定処理を実行することで、ユーザが通知に気づき易いタイミングやユーザが通知を必要とするタイミングを自動的に判定し、通知を行うことができる。
【0083】
なお、図7の通知時決定処理においては、主に受信メール再通知およびToDo通知を行う例を説明したが、他の通知に関するタイミングを決定するために用いてもよい。またこの他にも、スヌーズ機能を備えたアラーム通知機能を備えた携帯端末1において、移動手段に関する情報や位置情報、時刻情報を利用することによりスヌーズ機能の解除時を自動的に判定するようにしてもよい。なお、スヌーズ機能は、一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出す機能をいう。
【0084】
図10は、スヌーズ機能の解除を行うための条件を示す決定条件テーブルの一例を示す表である。図10に示す決定条件テーブルは、一例として、目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合のスヌーズ機能の解除の条件を示したものである。
【0085】
条件38に示すように、スヌーズ機能は、移動手段の変化パターンが「静止」から「歩行」または「走行」である場合に解除される。また、スヌーズ機能の解除は、条件38に加え、位置情報が「自宅内」から「自宅外」に変化した場合(条件39)、時刻情報が「自宅出発時刻」であった場合(条件40)、位置情報が「自宅内」から「自宅外」に変化し、かつ時刻情報が「自宅出発時刻」であった場合(条件41)に解除される。」

(7)図10は以下のとおりである。


上記(1)?(7)の記載によれば、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア.上記(1)及び(6)の記載によれば、「一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出す」「スヌーズ機能を備えたアラーム通知機能を備えた携帯端末1」(【0083】)は、「加速度情報からユーザの状況を判別して各種処理を行う携帯端末」(【0001】)であり、上記(2)及び(3)の記載によれば、「携帯端末1の加速度を測定する加速度測定部」であり、「加えられた加速度の検出結果を加速度情報として移動手段判定部33に出力する」「加速度センサ32」(【0032】)と、「加速度センサ32より得られた加速度情報に基づいて、携帯端末1の移動手段を判定する」「移動手段判定部33」(【0035】)と、「移動手段判定部33より得られた携帯端末1の移動手段に関する情報」が、「決定条件テーブルDB37に格納された条件に一致するか否かを判定し、アプリケーション実行制御部13で行われる各種処理を決定する」「通知等処理決定部31」(【0036】)を含む。

イ.上記(4)の記載によれば、「移動手段判定部33」は、「加速度センサ32より供給された加速度情報」から「重力成分を除去することにより、加速度の値を算出し」(【0041】)、「加速度の変化の特徴量を算出」し、「所定時間(例えば10秒)分の特徴量」に「基づいて、変化の統計量を分析」する(【0042】)。そして、「移動手段判定部33」は、「統計量から移動手段を判定するための基準となる移動手段決定テーブル」を「格納」した「移動手段決定テーブルDB48」を含み、「この移動手段決定テーブル」と前記「統計量とのマッチングを行い、携帯端末1の移動手段を決定」する(【0043】)。ここで、「決定される移動手段は、静止している状態を示す「静止」、携帯端末1のユーザが歩いている状態を示す「歩行」、ユーザが走っている状態を示す「走行」、ユーザが電車、バス、自動車などの乗り物に乗っている状態を示す「乗車」」(【0043】)である。そして、上記(5)の記載によれば、「移動手段判定部33により実行される移動手段判定処理」は、「所定時間毎(例えば十数秒?数十秒毎)に繰り返し実行され」る(【0046】)。

ウ.上記(6)の記載及び図10によれば、「通知等処理決定部31」が実行する「通知時決定処理」において、「移動手段に関する情報」を「利用することによりスヌーズ機能の解除時を自動的に判定するようにしてもよ」く(【0081】、【0083】)、「目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合のスヌーズ機能の解除の条件を示した」「決定条件テーブル」(【0084】、図10)の「条件38」では、「スヌーズ機能は、移動手段の変化パターンが「静止」から「歩行」または「走行」である場合に解除される」(【0085】)。ここで、上記(5)の記載によれば、「移動手段の変化パターン」とは、「取得された移動手段の種類と前回取得された移動手段の種類の変化」である(【0049】)。

以上ア.?ウ.を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出すスヌーズ機能を備えたアラーム通知機能を備え、加速度情報からユーザの状況を判別して各種処理を行う携帯端末1であって、
携帯端末1の加速度を測定する加速度測定部であり、加えられた加速度の検出結果を加速度情報として移動手段判定部33に出力する加速度センサ32と、
加速度センサ32より得られた加速度情報に基づいて、携帯端末1の移動手段を判定する移動手段判定部33と、
移動手段判定部33より得られた携帯端末1の移動手段に関する情報が、決定条件テーブルDB37に格納された条件に一致するか否かを判定し、アプリケーション実行制御部13で行われる各種処理を決定する通知等処理決定部31と、を含み、
前記移動手段判定部33は、加速度センサ32より供給された加速度情報から重力成分を除去することにより、加速度の値を算出し、加速度の変化の特徴量を算出し、所定時間(例えば10秒)分の特徴量に基づいて、変化の統計量を分析し、
前記移動手段判定部33は、統計量から移動手段を判定するための基準となる移動手段決定テーブルを格納した移動手段決定テーブルDB48を含み、この移動手段決定テーブルと前記統計量とのマッチングを行い、携帯端末1の移動手段を決定し、ここで、決定される移動手段は、静止している状態を示す「静止」、携帯端末1のユーザが歩いている状態を示す「歩行」、ユーザが走っている状態を示す「走行」、ユーザが電車、バス、自動車などの乗り物に乗っている状態を示す「乗車」であり、移動手段判定部33により実行される移動手段判定処理は、所定時間毎(例えば十数秒?数十秒毎)に繰り返し実行され、
前記通知等処理決定部31が実行する通知時決定処理において、移動手段に関する情報を利用することによりスヌーズ機能の解除時を自動的に判定するようにしてもよく、目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合のスヌーズ機能の解除の条件を示した決定条件テーブルの条件38では、スヌーズ機能は、移動手段の変化パターンが「静止」から「歩行」または「走行」である場合に解除され、ここで、移動手段の変化パターンとは、取得された移動手段の種類と前回取得された移動手段の種類の変化である、
携帯端末。」

4 対比、判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「携帯端末1」は、本願発明の「携帯電子機器」に対応する。

(2)引用発明は、「一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出すスヌーズ機能を備えたアラーム通知機能を備え」るから、本願発明の「アラーム鳴動を行う鳴動部」を有するといえる。また、引用発明の「一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出すスヌーズ機能」は、本願発明の「前記鳴動部によるアラーム鳴動を開始した後、当該アラーム鳴動を一時的に停止し、停止期間の経過後に再開するスヌーズ機能」に相当する。

(3)引用発明の「携帯端末1の加速度を測定する加速度測定部であり、加えられた加速度の検出結果を加速度情報として移動手段判定部33に出力する加速度センサ32」は、本願発明の「少なくとも加速度センサを含む動き検出部」に含まれる。

(4)引用発明の「移動手段判定部33」は、「加速度センサ32より供給された加速度情報」に基づいて「加速度の変化の特徴量を算出」し、「所定時間(例えば10秒)分の特徴量に基づいて、変化の統計量を分析」し、「移動手段決定テーブルDB48」に格納された「統計量から移動手段を判定するための基準となる移動手段決定テーブル」と「前記統計量とのマッチングを行い、携帯端末1の移動手段」が、「静止している状態を示す「静止」、携帯端末1のユーザが歩いている状態を示す「歩行」、ユーザが走っている状態を示す「走行」、ユーザが電車、バス、自動車などの乗り物に乗っている状態を示す「乗車」」のいずれであるかを「決定」する。
よって、引用発明の「移動手段判定部33」が、「目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合」の「スヌーズ機能の解除時」において、「静止している状態を示す「静止」」と判定することは、本願発明の「携帯電子機器が安定した場所に静置されている状態であると判定」することに相当する。
また、引用発明の「所定時間(例えば10秒)分の特徴量」に基づく「統計量」は、「加速度センサ32より供給された加速度情報」に基づくものであって、マッチングに用いられる所定の指標といえるから、本願発明の「前記動き検出部が検出する加速度に基づく変動パターン」と引用発明の「加速度センサ32より供給された加速度情報に基づく所定時間分の特徴量に基づく統計量」とは、「前記動き検出部が検出する加速度に基づく所定の指標」である点で共通する。そして、引用発明の「移動手段決定テーブルDB48」に格納され、当該「統計量」とのマッチングにより移動手段を判定するための基準となる「移動手段決定テーブル」のうち、「歩行」及び「走行」に対応する「移動手段決定テーブル」は、本願発明の「予め設定された移動パターン」に含まれるといえるから、本願発明と引用発明とは、マッチングに用いる「所定の指標」が異なるものの、いずれも「所定期間」に着目してマッチングを行う点で一致している。
そして、引用発明の「通知等処理決定部31」が、「目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合」の「スヌーズ機能の解除時」において、「取得された移動手段の種類と前回取得された移動手段の種類の変化」である「移動手段の変化パターン」が「条件38」(移動手段の変化パターンが「静止」から「歩行」または「走行」である場合)に該当すると判定することは、本願発明の「携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定」することに対応する。
以上より、引用発明の「移動手段判定部33」及び「通知等処理決定部31」を併せたものは、本願発明の「制御部」に対応し、本願発明と引用発明とは、「前記携帯電子機器が安定した場所に静置されている状態であると判定した後、前記動き検出部が検出する加速度に基づく所定の指標が予め設定された移動パターンにマッチする期間が所定期間にわたって継続すると、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定する制御部」を有するといえる点で共通する。
また、引用発明の「目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合のスヌーズ機能の解除」は、本願発明の「前記鳴動部によるアラーム鳴動を開始した後、当該アラーム鳴動を一時的に停止し、停止期間の経過後に再開するスヌーズ機能を実行した後」に「アラーム鳴動を抑制」することに含まれるから、引用発明においても、本願発明と同様、「前記制御部は、前記鳴動部によるアラーム鳴動を開始した後、当該アラーム鳴動を一時的に停止し、停止期間の経過後に再開するスヌーズ機能を実行した後は、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定すると、前記鳴動部によるアラーム鳴動を抑制」するといえる。

上記(1)?(4)より、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「携帯電子機器であって、
アラーム鳴動を行う鳴動部と、
少なくとも加速度センサを含む動き検出部と、
前記携帯電子機器が安定した場所に静置されている状態であると判定した後、前記動き検出部が検出する加速度に基づく所定の指標が予め設定された移動パターンにマッチする期間が所定期間にわたって継続すると、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記鳴動部によるアラーム鳴動を開始した後、当該アラーム鳴動を一時的に停止し、停止期間の経過後に再開するスヌーズ機能を実行した後は、当該携帯電子機器が移動状態へ遷移したと判定すると、前記鳴動部によるアラーム鳴動を抑制する携帯電子機器。」

(相違点1)
「制御部」が、本願発明では、「スヌーズ機能を実行する前は、前記移動状態に関わらず、所定の時刻になると前記アラーム鳴動を開始する」のに対して、引用発明では、スヌーズ機能を実行する前に、前記移動状態に関わらず所定の時刻になると前記アラーム鳴動を開始することは特定がない点。

(相違点2)
動き検出部が検出する加速度に基づく「所定の指標」が、本願発明では、「変動パターン」であるのに対し、引用発明では、「所定時間分の特徴量に基づく統計量」である点。

上記(相違点1)について検討すると、
引用発明の「スヌーズ機能」は、「目覚まし時計としてアラーム通知機能を利用する場合」の「一旦アラーム音を止めても特定の操作を行わない限りは再び鳴り出すスヌーズ機能」であって、「スヌーズ機能」が、最初にアラーム音を止める際に選択的に実行させる機能であることも技術常識である。そして、引用発明の「条件38」は「スヌーズ機能の解除の条件」であるから、スヌーズ機能を実行する前には適用されないと解するのが合理的である。
よって、「スヌーズ機能を実行する前は、前記移動状態に関わらず、所定の時刻になると前記アラーム鳴動を開始する」点(相違点1)は、実質的な相違点とはいえない。
また、仮に相違点としても、当業者が容易になし得ることにすぎない。

上記(相違点2)について検討すると、
本願発明と引用発明とは、いずれもスヌーズ機能の実行後、移動状態に遷移した場合にスヌーズ機能を抑制するべく、加速度センサで検出した加速度に基づく所定期間の指標と既知のパターンとのマッチングにより、端末の状態を判定するものである。
そして、マッチングに用いる所定の指標として、物理量の変動パターンを用いることは常套手段であるから、動き検出部が検出する加速度に基づく「所定時間分の特徴量に基づく統計量」に代えて、動き検出部が検出する加速度に基づく「変動パターン」を用いることは、当業者が容易になし得ることである。
また、その効果も、当業者が予測し得る範囲のものにすぎない。

以上より、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-04 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-26 
出願番号 特願2014-90377(P2014-90377)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西巻 正臣  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 山中 実
中野 浩昌
発明の名称 携帯電子機器、制御方法、及びプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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