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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1356765
審判番号 不服2018-13966  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-22 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 特願2017- 80865「情報処理方法、装置、および当該情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開,特開2018-175503〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成29年4月14日の出願であって,平成29年10月16日付けで拒絶理由が通知され,平成30年1月12日に意見書及び手続補正書が提出され,同年2月26日付けで拒絶理由通知(最後)がされ,同年5月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月17日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件査定不服審判事件は,これを不服として,同年10月22日に請求されたものであって,本件の請求と同時に手続補正書が提出された。


第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成30年10月22日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 平成30年10月22日提出の手続補正書による手続補正の内容
(1)補正前後の記載
平成30年10月22日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,同年5月7日提出の手続補正書による手続補正後(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲について補正するものであるところ,本件補正後の請求項1は,本件補正前の請求項5のうち請求項1の記載を引用するものに対応する。
しかるに,本件補正前の請求項1及び5,並びに本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
ア 本件補正前の請求項1及び5
「【請求項1】
ヘッドマウントデバイスを装着するユーザに関連付けられた第1キャラクタと,頭部オブジェクトを含む第2キャラクタと,を対戦させる仮想空間を定義するステップと,
前記仮想空間上の第1面に,前記第2キャラクタを配置するステップと,
前記第1面よりも高い第2面に前記第1キャラクタを配置した場合の前記第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定するステップと,
前記ユーザの頭部の動きに応じて,前記仮想カメラからの視界を制御するステップと,
前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記第1キャラクタに向けて前記頭部オブジェクトを近づけるように,前記頭部オブジェクトを移動させるステップと,
前記視界に対応する視界画像を生成するステップと,
前記視界画像を前記ヘッドマウントデバイスに表示させるステップと,
を備え,
前記第2キャラクタの高さは,前記仮想カメラの高さよりも高い,情報処理方法。
【請求項5】
前記第2キャラクタは,胴体オブジェクトを更に有し,
前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記胴体オブジェクトを,前記頭部オブジェクトの配置位置より,前記第1キャラクタから遠ざかる位置に配置するとともに,前記頭部オブジェクトに向けて延びるように形成するステップを更に備える,
請求項1?4の何れか一項に記載の情報処理方法。」

イ 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
ヘッドマウントデバイスを装着するユーザに関連付けられた第1キャラクタと,頭部オブジェクトと胴体オブジェクトと脚部オブジェクトを含む第2キャラクタと,を対戦させる仮想空間を定義するステップと,
前記仮想空間上の第1面に,前記第2キャラクタを配置するステップと,
前記第1面よりも高い第2面に前記第1キャラクタを配置した場合の前記第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定するステップと,
前記ユーザの頭部の動きに応じて,前記仮想カメラからの視界を制御するステップと,
前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記脚部オブジェクトの位置を前記第1面に固定した状態で,前記第1キャラクタに向けて前記頭部オブジェクトおよび前記胴体オブジェクトを近づけるように,かつ,前記胴体オブジェクトを前記頭部オブジェクトの動きに合わせて傾けるように,前記頭部オブジェクトおよび前記胴体オブジェクトを移動させるステップと,
前記視界に対応する視界画像を生成するステップと,
前記視界画像を前記ヘッドマウントデバイスに表示させるステップと,
を備え,
前記第2キャラクタの前記頭部の高さは,前記仮想カメラの高さよりも高く,
前記頭部オブジェクトを前記第1キャラクタに近づける量は,前記胴体オブジェクトを前記第1キャラクタに近づける量よりも多い,
情報処理方法。」

(2)本件補正のうち本件補正後の請求項1に係る補正の内容
本件補正のうち本件補正後の請求項1(本件補正前の請求項5のうち請求項1の記載を引用するもの)に係る補正は,次の補正事項からなる。
補正事項1:
本件補正前の請求項1に記載された「頭部オブジェクトを含む第2キャラクタ」という記載を,「頭部オブジェクトと胴体オブジェクトと脚部オブジェクトを含む第2キャラクタ」と補正する。

補正事項2:
本件補正前の請求項1に記載された「前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記第1キャラクタに向けて前記頭部オブジェクトを近づけるように,前記頭部オブジェクトを移動させるステップ」という記載を,「前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記脚部オブジェクトの位置を前記第1面に固定した状態で,前記第1キャラクタに向けて前記頭部オブジェクトおよび前記胴体オブジェクトを近づけるように,かつ,前記胴体オブジェクトを前記頭部オブジェクトの動きに合わせて傾けるように,前記頭部オブジェクトおよび前記胴体オブジェクトを移動させるステップ」と補正する。

補正事項3:
本件補正前の請求項1に記載された「前記第2キャラクタの高さは,前記仮想カメラの高さよりも高い,情報処理方法」という記載を,「前記第2キャラクタの前記頭部の高さは,前記仮想カメラの高さよりも高く,前記頭部オブジェクトを前記第1キャラクタに近づける量は,前記胴体オブジェクトを前記第1キャラクタに近づける量よりも多い,情報処理方法。」と補正する。

補正事項4:
本件補正前の請求項5を削除する。

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無について
補正事項1ないし4は,実質上,本件補正前の請求項1を削除した上で,本件補正前の請求項5のうち請求項1の記載を引用するものを独立形式の記載に改めて,本件補正後の請求項1とするとともに,本件補正前の請求項5に係る発明の発明特定事項である「第2キャラクタ」について,脚部オブジェクトを含むものに限定し,同発明特定事項である「第2キャラクタに第1キャラクタを攻撃させる場合に,第1キャラクタに向けて頭部オブジェクトを近づけるように,頭部オブジェクトを移動させるステップ」について,脚部オブジェクトの位置が第1面に固定した状態であることを限定し,同発明特定事項である「仮想カメラの高さ」に関して,これより高いのが「第2キャラクタの頭部(「頭部オブジェクト」の誤記と解される。)」の高さであること(必然的に,第2キャラクタの高さは,仮想カメラの高さよりも高い。)を限定する補正であって,本件補正前の請求項5(請求項1の記載を引用するもの)に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明で産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項の削除,及び同項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,第2キャラクタが脚部オブジェクトを含むこと,脚部オブジェクトの位置が第1面に固定した状態であること,及び第2キャラクタの頭部の高さが仮想カメラの高さよりも高いことは,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0101】,【0102】及び【0101】に記載された事項であるから,本件補正は,同条3項の規定に適合する。

3 独立特許要件について
前記2で述べたとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいるから,本件補正後の請求項1に係る発明が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するのか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か)について判断する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,前記1(1)イに示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。

(2)引用例
ア 特開2017-58853号公報
(ア)特開2017-58853号公報の記載
原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された特開2017-58853号公報(以下,原査定と同様に「引用文献1」という。)は,本件出願の出願前である平成29年3月23日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,情報処理装置,動作制御方法,及び動作制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では,HMD(Head Mounted Display)やFMD(Face Mounted Display)等の装着型の情報表示装置が普及し始めている。このような情報表示装置を装着することで,拡大光学系により視界全体に画像や映像を表示したり,VR(Virtual Reality,仮想現実)技術により,仮想空間上にいるような視界を提供することができる。
【0003】
また,情報表示装置を用いてユーザ(装着者)の顔の向きやまばたきを認識することで,ユーザの操作を簡略化する手法が存在する(例えば,特許文献1参照)。特許文献1では,遠隔にある複数の監視カメラから入力した映像を無線又は有線で受信して情報表示装置に表示すると共に,ユーザの顔の向きやまばたきにより監視カメラの切り替えや向き,視点の制御を行っている。
【0004】
また,近年では,上述した情報表示装置を,ゲーム機器等にも装備し,ゲームプログラムで提供される仮想空間上に自分が参加しているような感覚をユーザに与え,ゲームへの没入感や娯楽性を向上させる試みが検討されている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上述した従来手法では,情報表示装置における顔の向きやまばたきの検出を仮想空間上でどのように対応させるかについての提案はなく,情報表示装置から得た情報を仮想空間上で適切に反映させることができなかった。
【0007】
本発明は,上述した課題に鑑みてなされたものであって,情報表示装置から得た情報をを用いて仮想空間に対する適切な制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様として,情報処理装置は,装着型の情報表示装置に表示された画面を制御する情報処理装置において,前記情報表示装置を装着したユーザの目の開閉を検出する目開閉検出手段と,前記目開閉検出手段により前記ユーザが片目又は両目を閉じていることを検出した場合に,前記画面に表示されているオブジェクト又は前記画面に対する動作モードの変更を行う動作モード変更手段と,前記動作モード変更手段により変更された動作モードで実行された画面を生成し,生成した画面を前記情報表示装置に表示する画面生成手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,情報表示装置から得た情報をを用いて仮想空間に対する適切な制御を行うことができる。」

b 「【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図6】動作制御処理の具体例を説明するための図(その1)である。
【図7】動作制御処理の具体例を説明するための図(その2)である。」

c 「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,図面に基づいて実施形態を説明する。なお,以下の説明では,本実施形態の一態様として,所定のゲームプログラム(コンテンツの一例)等により提供される仮想空間上にユーザ(プレイヤー)が操作するキャラクタが存在する場合の例について説明するが,仮想空間は,ゲームプログラムにより提供されるものに限定されるものではない。
【0012】
<情報処理装置の機能構成例>
図1は,情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。図1に示す情報処理装置10は,通信手段11と,設定手段12と,記憶手段13と,目開閉検出手段14と,判断手段15と,動作モード変更手段16と,画面生成手段17と,制御手段18とを有する。なお,情報処理装置10は,例えばゲーム機器やPC(Personal Computer),タブレット端末等であるが,これに限定されるものではない。
【0013】
通信手段11は,外部装置と有線又は無線により接続され,データの送受信を行う。通信手段11には,図1に示すように,情報表示装置(情報表示手段)の一例としてのHMD21と,操作装置(操作手段)の一例としてのコントローラ22とが接続されている。
【0014】
HMD21は,例えば,眼鏡やゴーグル,ヘルメットのように,ユーザの頭部に装着可能な形状をした表示装置(装着型の情報提示装置)である。頭部に装着すると左右の目のすぐ前に画面が一つずつセットされる。単に画像を表示するだけでなく,左右のディスプレイに少しずつ違った映像を表示することで立体感を表現することができる。また,HMD21は,装着者の頭部の移動に応じて画面を変化させることで,仮想空間上の視界を提供することができる。
【0015】
また,HMD21は,単位時間毎に頭部の位置,顔の向き,加速度(速度も含む)に関する情報を検知し,その内容を情報処理装置10に送信してもよい。また,HMD21は,目の位置を検出する内向きのカメラ(撮像手段)等を設け,単位時間毎にユーザの目(黒目)の位置,方向から視点(注視点)を検出し,その内容を情報処理装置10に送信してもよい。
・・・(中略)・・・
【0017】
コントローラ22は,HMD21に表示する映像の設定や,本実施形態における動作制御処理における各種設定を行う。また,情報処理装置10がゲーム機器である場合には,コントローラ22は,ゲームの開始や終了,項目の選択,ゲーム実行時における動作制御等を行う。
・・・(中略)・・・
【0021】
目開閉検出手段14は,HMD21に設けられた内向きのカメラ(撮像手段)等から撮影されたユーザの左右の目付近の画像を解析し,目の開閉状況を検出する。例えば,目開閉検出手段14は,カメラの画像からユーザの眼球(白目と黒目)に相当する領域が存在するか否かを判断し,上記の領域(眼球領域)が存在する場合に目が開いていると判断し,領域が存在しない場合に目が閉じていることを検出する。
【0022】
判断手段15は,目開閉検出手段14による目の開閉の検出において,単なる「まばたき」を目を閉じている状態として検出されることがないように,基準時間等を用いて目を閉じている状態の判断を行う。
・・・(中略)・・・
【0025】
動作モード変更手段16は,判断手段15による目の開閉検出結果に基づき,ユーザが片目又は両目を閉じ続けている状態に応じて,ゲーム上のプレイヤー(例えば,仮想空間上で動作するキャラクタ等のオブジェクト),又は,HMD21の画面に表示される画像の動作モード(例えば,内部状態等)を変更する。この動作モードの変更を行うことで,例えば,実行中のゲームに対する様々な演出又は効果をユーザに提供することができる。
【0026】
動作モード変更手段16は,例えばパラメータ制御手段16-1と,表示制御手段16-2とを有する。パラメータ制御手段16-1は,例えば仮想空間上で動作するキャラクタに対する攻撃力や回復力等のパラメータ情報を,予め設定された通常設定時の2倍に増加したり,敵を攻撃したりパズルを揃えたりといった所定の動作を行うことで獲得できるポイントを増加させる等のパラメータ制御を行う。つまり,パラメータ制御手段16-1は,視界が狭まることをリスクとみなし,ゲームに対しリスクリターンを付与するパラメータ制御を行う。また,パラメータ制御手段16-1は,目を閉じ続けた時間に応じて追加ボーナスの付与やチャージ攻撃による効果等をユーザに提供するような制御を行ってもよい。
・・・(中略)・・・
【0030】
画面生成手段17は,例えばHMD21の画面に表示する内容を生成する。例えば,画面生成手段17は,ユーザが実行指示したゲームプログラムが提供する仮想空間を表示し,その仮想空間上に,ユーザが操作するキャラクタを合成した映像を生成する。このとき,画面生成手段17は,動作モード変更手段16により変更された動作モードに基づいて対応する画面の生成を行ってもよい。
・・・(中略)・・・
【0059】
<動作制御処理の具体例>
次に,本実施形態における動作制御処理の具体例について,図を用いて説明する。図6?図10は,動作制御処理の具体例を説明するための図(その1?その5)である。本実施形態において,ユーザ40は,例えば情報処理装置10と無線で接続されたHMD21を頭部に装着すること共に,情報処理装置10と無線で接続されたコントローラ22を用いて,所定のゲームの開始や終了,仮想空間上のキャラクタに対する操作を行う。
【0060】
図6の例では,HMD21の画面上に,ユーザが選択したゲームプログラム(コンテンツ)の実行により提供される仮想空間60が表示されている。また,図6の例では,仮想空間60上に,敵のキャラクタ61や,そのキャラクタ61が所持する武器62,扉63等が表示されている。上述したキャラクタ61,武器62,及び扉63は,オブジェクトの一例である。
【0061】
ユーザ40は,上述した画面50に対し,コントローラ22による操作指示を行うことで,操作対象のキャラクタを操作して,敵のキャラクタ61に攻撃を仕掛けたり,扉63から逃げるといった動作を実行させる。
【0062】
また,本実施形態では,上述したようにゲームプレイ中に片目又は両目を閉じ続けていることを検出すると,ゲーム上の様々な演出や効果をユーザに提供するための動作制御(動作モードの変更)を行う。
【0063】
例えば,片目を閉じている状態の場合には,視界が狭くなったり,仮想空間上での距離感がつかめなくなる。例えば,片目を閉じることで,図7に示すように,HMD21の画面50-1に表示された仮想空間60のうち,領域70A(斜線領域)の視界が遮られ,領域70Bしか見えなくなる。そのような場合,動作モード変更手段16は,ユーザ40の視界がゲームの有利不利に直結するゲーム等でのリスクリターンとして,攻撃力を通常の2倍にする等のパラメータ制御を行う。なお,上記のパラメータ制御により動作モードが変更されたことをユーザ40に通知するため,画面生成手段17は,図7に示すように,その旨を示すメッセージ64-1を生成し,画面50-1上に表示してもよい。
【0064】
動作モードの変更により制御されるパラメータの一例としては,例えばFPS(First Person Shooter)等におけるパワーアップや,レーシングゲームにおける強烈な加速,音楽ゲーム等による得点ポイントの増加等があるが,これに限定されるものではない。
【0065】
また,本実施形態では,目を閉じ続ける時間の長さに応じて,よりハイリターンとなるようにパラメータを制御してもよい。例えば,長時間目を閉じ続けることで,強力な溜め攻撃が繰り出せる等であるが,これに限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
【0070】
また,表示制御手段16-2は,ユーザ40が両目を閉じていることを検出すると,感覚を研ぎ澄ませたり休息を取ることを表現する動作モードに変更してもよい。この場合,表示制御手段16-2は,「休息中」等のメッセージを生成し画面50上に表示してもよい。パラメータ制御手段16-1は,ユーザ40が両目を閉じていることを検出すると,休息を取ったとみなし体力等の回復ボーナスを付与する等のパラメータ制御を行ってもよい。本実施形態では,上述の例に示すように,ユーザが目を閉じている状態に応じて,表示制御及びパラメータ制御のうち,一方又は両方の制御を同時に行うことができる。つまり,本実施形態では,予め設定されている複数の表示制御及び複数のパラメータ制御のうち,1つの制御又は複数を組み合わせた制御を行うことができる。」

d 「【図1】

・・・(中略)・・・
【図6】

【図7】



(イ)引用文献1に記載された発明
前記(ア)aないしdで摘記した引用文献1の記載から,情報処理装置10によって実行される動作制御方法についての発明を把握することができるところ,当該発明の構成は,次のとおりである。(なお,【0030】に記載された「ユーザが操作するキャラクタ」と,【0061】に記載された「操作対象のキャラクタ」が,同じことを指すことは明らかであるところ,「ユーザが操作するキャラクタ」という文言に統一して,認定した。)

「装着者の頭部の移動に応じて画面を変化させることで,仮想空間上の視界を提供するHMD21と,ゲームの開始や終了,項目の選択,ゲーム実行時における動作制御等を行うコントローラ22とが接続され,前記HMD21の画面に表示する内容を生成する画面生成手段17を有する情報処理装置10によって実行される動作制御方法であって,
前記画面生成手段17によって,ユーザ40が実行指示したゲームプログラムが提供する仮想空間60上にユーザ40が操作するキャラクタを合成した映像を生成し,
前記HMD21の画面上に,ユーザ40が選択したゲームプログラムの実行により提供される仮想空間60を表示し,当該仮想空間60上には,敵のキャラクタ61や,そのキャラクタ61が所持する武器62,扉63等が表示されており,
ユーザ40からの前記コントローラ22による操作指示により,ユーザ40が操作するキャラクタに,敵のキャラクタ61に攻撃を仕掛けたり,扉63から逃げるといった動作を実行させ,
ゲームプレイ中に片目を閉じていることを検出すると,攻撃力を通常の2倍にする等のパラメータ制御を行い,ゲームプレイ中に両目を閉じていることを検出すると,体力等の回復ボーナスを付与する等のパラメータ制御を行う,
動作制御方法。」(以下,「引用発明」という。)

イ 周知の技術事項
(ア)「電撃DS&Wii Vol.9」
原査定の拒絶の理由において周知例(引用文献2)として例示された「モンスターハンターG,電撃DS&Wii,アスキー・メディアワークス,2009年(平成21年)5月1日,第9巻,20-25」(以下,「周知例1」という。)は,本件出願の出願前である平成21年5月1日に頒布された刊行物である「電撃DS&Wii Vol.9」に掲載されたWii用ゲームソフト「モンスターハンターG」の紹介記事の一部(「モンスター」欄)であるところ,当該周知例1には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「タイプ・種別 身体の大きさや特徴によるモンスターの分類
モンスターは,小型・中型・大型という3つのタイプと,複数の種別に分けられる。タイプは身体の大きさによる分類で,下のような特徴を持つ。・・・(中略)・・・
大型モンスター
▲(審決注:頂点が左側又は右側に位置する黒三角形を「▲」と表現した。以下,同様。)フィールド内の生態系の頂点に君臨し,強さは小型・中型モンスターの比ではない。エリア移動をはじめ,行動の種類が豊富。回復行動で休息とるものが多い。」(20ページ上段中央)

b 「大型モンスター 見る物を威圧し,強大な力をふりかざすフィールドの王者のようなモンスター
狩猟の主目的になることが多い大型のモンスター。その名のとおり身体が大きく,その身体は複数の部位で構成されている。また,小型・中型モンスターとは比較にならないほど強力な攻撃を複数持ち,回転尻尾やブレスなど,攻撃のバリエーションにも富む。このような特徴に加え,モンスターの種類も豊富。いずれも独特な存在であるため,狩猟時に個々で異なる立ち回りが要求されるのだ。
・・・(中略)・・・
発電器官を持つ盲目の飛竜 飛竜種フルフル 主な生息地▲沼地
洞窟などの暗い場所を好むためか,目が退化してしまった飛竜。その分嗅覚が発達しており,臭いを嗅ぐことによってハンターの存在を察知できる。洞窟にいるときは,天井に張りついて移動したり,その状態から突然地上へ落下してきたりする。体内に電気袋と呼ばれる発電器官を持ち,全身に電気を流すことや,口から強力な電気を放つことが可能。また,よく伸びる首を使ってハンターにかみついたりもする。
・・・(中略)・・・
首伸ばしかみつき
▲首を軽く上げたあと,首を前または斜め前に突きだして,ハンターにかみつく。首が伸びるので,予想外にリーチが長い。」(23ページ左上欄ないし25ページ左上欄)

(イ)「DQH All Bosses ドラゴンクエストヒーローズ全ボス戦(メインシナリオ)」
「DQH All Bosses ドラゴンクエストヒーローズ全ボス戦(メインシナリオ),[online],2015年(平成27年)3月4日,[令和元年9月3日検索],インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=BMZFS9nazBo>」(以下,「周知例2」という。)は,本件出願の出願前である平成27年3月4日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該周知例2には,アクションロールプレイングゲーム「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」をプレイしたときの表示画面を記録した動画像が掲載されているところ,当該動画像から,次の事項が看取される(下線は,後述する第1周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)。
a 再生を開始してから約42分38秒経過後の表示画面には,右手に剣を,左手に盾を持つ人型のキャラクタが画面の略中央手前側に位置し,前記人型のキャラクより非常に大きなモンスター型のキャラクタが画面の中央奥側に位置し,前記モンスター型のキャラクタが,前記人型のキャラクタに向かって前屈みとなり,頭部を近づけた状態で,口から火球のようなものを吐き出して,前記人型のキャラクタを攻撃すると,前記人型のキャラクタが,左上側にジャンプして前記火球のようなものを避ける動画が,表示される。

(ウ)「ニーアオートマタPart2超巨大兵器戦!圧倒的破壊力に2B・9S絶体絶命の危機!」
「ニーアオートマタPart2超巨大兵器戦!圧倒的破壊力に2B・9S絶体絶命の危機!,[online],2017年(平成29年)2月23日,[令和元年9月3日検索],インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=IQ7x-tXZ7CI>」(以下,「周知例3」という。)は,本件出願の出願前である平成27年2月23日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該周知例3には,アクションロールプレイングゲーム「NieR:Automata ニーアオートマタ」をプレイしたときの表示画面を記録した動画像が掲載されているところ,当該動画像から,次の事項が看取される(下線は,後述する第1周知事項及び第2周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)。
a 再生を開始して約3分4秒経過してから約3分14秒経過するまで,非常に巨大な二足歩行ロボット型のキャラクタがジャンプして着地し,水しぶきが上がる動画が,表示される。
着地した前記二足歩行ロボット型のキャラクタより画面手前側中央には,浮遊する小型ロボットを左側に伴う人型のキャラクタが存在しており,当該人型のキャラクタは,二足歩行ロボット型のキャラクタより非常に小さい。また,本動画像から,当該人型のキャラクタが立っている場所(以下,「足場」という。)が,前記二足歩行ロボット型のキャラクタが着地した面(以下,「着地面」という。)よりも高いことを把握できる。

b 再生を開始して約3分18秒経過してから約4分20秒経過するまで,足場上の人型のキャラクタと,着地面上の二足歩行ロボット型のキャラクタとの間で戦闘が行われる動画が,表示される。
当該戦闘において,人型のキャラクタの頭部の高さは,概ね,二足歩行ロボット型のキャラクタの腰部あたりである。

c 前記bの戦闘の中で,再生を開始して約4分9秒経過してから約4分10秒経過するまでの間に,二足歩行型のロボットが人型のキャラクタに向かって前屈みとなり,頭部を近づけた状態で,両手を打ち合わせて,人型のキャラクタを攻撃する動画像が,表示される。

(エ)「浦部日記 聖剣伝説3プレイ記その5」
原査定の拒絶の理由において周知例(引用文献5)として例示された「浦部日記 聖剣伝説3プレイ記その5,[online],2015年4月25日,2018年2月26日検索,URL,http://darkhagemo.blog75.fc2.com/blog-entry-1341.html」(以下,「周知例4」という。)は,本件出願の出願前である2015年(平成27年)4月25日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,ユーザが,アクションロールプレイングゲーム「聖剣伝説3 TRIALS of MANA」をプレイしたときの感想等を日記風に記録して公開したものであるところ,当該周知例4には次の記載aがあり,当該記載から,次の事項bが看取される(下線は,後述する第2周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)。

a 「ボス:ドラン
・・・(画像を省略)・・・
でかい,痛い

お願いだから勝手に必殺技使わないでください。アンジェラさん,シャルさん

設定変えるのは面倒なので適当に。

弱点魔法は見つけられなかったのでとりあえずダメージがでかい魔法とドーピング打撃

撃破Lv リース26 アンジェラ26 シャル26」

b 前記aの「ボス:ドラン」という文字の下に静止画が表示されており,当該静止画から,人型のキャラクタが,建物の屋上らしき場所に立っていること,前記人型のキャラクタより非常に大きなモンスター型のキャラクタが,前記建物の外に位置しており,前記建物の屋上のフェンスに両手をかけて,概ね前記モンスター型のキャラクタの胸部から上側が前記フェンス越しに見えていること,及び前記人型のキャラクタの身長は,前記フェンスと同程度であり,人型のキャラクタの頭部の高さは,概ねモンスター型のキャラクタの胸部あたりであることが,看取される。

(オ)「【FF30周年】ファイナルファンタジーシリーズI?XIII歴代ラスボスまとめ/Final Fantasy Series-Final Battle Exhibition #FF30th」
「【FF30周年】ファイナルファンタジーシリーズI?XIII歴代ラスボスまとめ/Final Fantasy Series-Final Battle Exhibition #FF30th,[online],2016年(平成28年)6月5日,[令和元年9月3日検索],インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=r4paD1TnvP0>」(以下,「周知例5」という。)は,本件出願の出願前である2016年(平成28年)6月5日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該周知例5には,ロールプレイングゲーム「FINAL FANTASY」シリーズの各ゲームをプレイしたときの表示画面を記録した動画像が掲載されているところ,当該動画像から,次の事項が看取される(下線は,後述する第2周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)。
a 再生を開始して約35分44秒経過してから約37分36秒経過するまで,3体の人型のキャラクタと,当該人型のキャラクタより非常に大きなモンスター型のキャラクタとが戦闘する動画が,表示される。
3体の人型のキャラクタは,平らな表面を有する岩のような場所(以下,「岩場」という。)に立っている。モンスター型のキャラクタは,前記岩場より画面奥側に位置し,その腰部から上側が岩場から見えている。人型のキャラクタの頭部の高さは,概ねモンスター型のキャラクタの腰部あたりである。

b 再生を開始して約56分14秒経過してから約58分20秒経過するまで,4体の人型のキャラクタと,当該人型のキャラクタより非常に大きなモンスター型のキャラクタとが戦闘する動画が,表示される。
モンスター型のキャラクタは,下半身が尻尾であり,尻尾を伸ばした状態で浮かんでいる。4体の人型のキャラクタは,いずれも,モンスター型のキャラクタの尻尾の付け根あたりの画面手前側に浮かんでおり,人型のキャラクタの頭部の高さは,概ねモンスター型のキャラクタの尻尾の付け根あたりである。

c 再生を開始して約1時間6分44秒経過してから末尾まで,2体の人型のキャラクタ及び1体の鳥形のキャラクタと,当該人型のキャラクタより非常に大きな3体のモンスター型のキャラクタとが戦闘する動画が,表示される。
2体の人型のキャラクタ及び1体の鳥形のキャラクタは,平らな表面を有する円形の場所(以下,「舞台」という。)に立っている。モンスター型のキャラクタは,前記舞台より画面奥側に位置し,その腹部から上側が舞台から見えている。人型のキャラクタの頭部の高さは,概ねモンスター型のキャラクタの胸部あたりである。

(カ)周知例1ないし5から把握される周知の技術事項
周知例2の動画像に表示された人型のキャラクタ,周知例3の動画像に表示された人型のキャラクタ,周知例4の静止画に表示された人型のキャラクタ,周知例5の動画像に表示された3体の人型のキャラクタ(前記(オ)a),4体の人型のキャラクタ(前記(オ)b),2体の人型のキャラクタ及び1体の鳥形のキャラクタ(前記(オ)c)が,プレイヤが操作するプレイヤキャラクタであり,周知例2の動画像に表示されたモンスター型のキャラクタ,周知例3の動画像に表示された二足歩行ロボット型のキャラクタ,周知例4の静止画に表示されたモンスター型のキャラクタ,周知例5の動画像に表示されたモンスター型のキャラクタ(前記(オ)aないしc)が,プレイヤキャラクタと戦闘する敵キャラクタであることは,表示画面上での各キャラクタの位置等から自明である。
しかるに,周知例1ないし3(前記(ア)a及びb,前記(イ)a,前記(ウ)a及びc)から,本件出願の出願前に次の第1周知事項が周知であったと認められ,周知例3ないし5(前記(ウ)a及びb,前記(エ)a及びb,前記(オ)aないしc)から,本件出願の出願前に次の第2周知事項が周知であったと認められる。

第1周知事項:
「プレイヤキャラクタより非常に大きな敵キャラクタが,プレイヤキャラクタに向かって頭部を近づけ,プレイヤキャラクタを攻撃するという,ゲームにおける敵キャラクタの攻撃動作。」

第2周知事項:
「プレイヤキャラクタを,プレイヤキャラクタよりも非常に大きな敵キャラクタが配置される面よりも高い位置にある面に配置し,かつ,プレイヤキャラクタの頭部の高さが少なくとも敵キャラクタの頭部よりも低い位置にあるという,ゲームでの戦闘におけるキャラクタの位置関係。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「HMD21」,「ユーザ40が操作するキャラクタ」,「敵のキャラクタ61」及び「仮想空間60」は,技術的にみて,本件補正発明の「ヘッドマウントデバイス」,「第1キャラクタ」,「第2キャラクタ」及び「仮想空間」にそれぞれ対応する。

イ 引用発明では,画面生成手段17によって,ユーザ40が実行指示したゲームプログラムが提供する仮想空間上にユーザ40が操作するキャラクタを合成した映像を生成しているところ,HMD21の画面上に表示される仮想空間上には,敵のキャラクタ61等が表示されているのであるから,画像生成手段17が,仮想空間上にユーザ40が操作するキャラクタのみを合成した映像を生成しているのでなく,敵のキャラクタ61等をも合成した映像を生成していることは明らかである。そして,引用発明のHMD21は,装着者の頭部の移動に応じて画面を変化させることで,仮想空間上の視界を提供するものであるところ,このようなHMD21の画面に表示する内容を生成する前記画面生成手段17の動作が,ユーザ40が実行指示したゲームプログラムが提供する仮想空間60を生成し,当該仮想空間60上にユーザが操作するキャラクタ及び敵のキャラクタ61等を配置し,装着者の頭部の移動に応じた仮想空間60上での視界の映像を生成するというものであることは,技術的にみて明らかである。
ここで,引用発明のユーザ40は,「HMD21」の装着者にほかならないから,「ユーザ30が操作するキャラクタ」(本件補正発明の「第1キャラクタ」に対応する。以下,「(3)対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付された()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件補正発明の発明特定事項を表す。)は,「HMD21」(ヘッドマウントデバイス)を装着するユーザ40に関連付けられたものといえる。
また,引用発明では,ユーザ40からのコントローラ22による操作指示により,「ユーザ40が操作するキャラクタ」に,「敵のキャラクタ61」に攻撃を仕掛けたり,扉63から逃げるといった動作を実行させるのであるから,引用発明の「仮想空間60」(仮想空間)は,「ユーザ40が操作するキャラクタ」(第1キャラクタ)と「敵のキャラクタ61」(第2キャラクタ)と,を対戦させる仮想空間であるといえる。
そして,仮想空間を生成することは,仮想空間を定義することといえるから,前述した「ユーザが実行指示したゲームプログラムが提供する仮想空間60を生成する」という引用発明の画面生成手段17の動作は,本件補正発明の「ヘッドマウントデバイスを装着するユーザに関連付けられた第1キャラクタと,頭部オブジェクトと胴体オブジェクトと脚部オブジェクトを含む第2キャラクタと,を対戦させる仮想空間を定義するステップ」に相当する。

ウ 引用発明において,「仮想空間60」(仮想空間)における「敵のキャラクタ61」(第2キャラクタ)の下端を通る面(引用文献1の図6を例にすると,敵のキャラクタ61が立っている床面。以下,「基準面」という。)に着目すると,「仮想空間60上に敵のキャラクタ61を配置する」という引用発明の画面生成手段17の動作(前記イを参照。)は,「仮想空間60」(仮想空間)上の「基準面」に,「敵のキャラクタ61」(第2キャラクタ)を配置する動作といえる。
しかるに,前記「基準面」は,本件補正発明の「第1面」にほかならないから,前記イで述べた「仮想空間60上に敵のキャラクタ61を配置する」という引用発明の画面生成手段17の動作は,本件補正発明の「仮想空間上の第1面に,第2キャラクタを配置するステップ」に相当する。

エ 引用発明において,HMD21の画面に表示される仮想空間60上の視界が,「ユーザ40が操作するキャラクタ」の視点に対応する位置から見える視界であることは,VR(Virtual Reality,仮想現実)技術における技術常識から自明であるから,装着者の頭部の移動に応じて画面を変化させることで,仮想空間上の視界を提供するHMD21の画面に表示する内容を生成する引用発明の画面生成手段17は,「ユーザ40が操作するキャラクタ」(第1キャラクタ)の視点に対応する位置に仮想カメラを設定し,装着者の頭部の移動に応じて,前記仮想カメラからの視界を制御し,前記視界の映像を生成するものといえる。
しかるに,「ユーザ40が操作するキャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定する」という引用発明の画面生成手段17における動作と,本件補正発明の「第1面よりも高い第2面に第1キャラクタを配置した場合の第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定するステップ」とは,「第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定する」点で共通する。
また,「装着者の頭部の移動に応じて,前記仮想カメラからの視界を制御する」という引用発明の画面生成手段17における動作は,本件補正発明の「ユーザの頭部の動きに応じて,仮想カメラからの視界を制御するステップ」に相当し,「視界の映像を生成する」という引用発明の画面生成手段17における動作は,本件補正発明の「視界に対応する視界画像を生成するステップ」に相当する。

カ 引用発明では,HMD21の画面上に,ユーザ40が選択したゲームプログラムの実行により提供される仮想空間60(敵のキャラクタ61や,そのキャラクタ61が所持する武器62,扉63等が表示されている。)を表示しているところ,当該表示される仮想空間60とは,画像生成手段17が生成した視界の映像(前記エを参照。)にほかならない。
しかるに,引用発明の画像生成手段17が生成した視界の映像は,本件補正発明の「視界画像」に相当するから,引用発明の「HMD21の画面上に,ユーザ40が選択したゲームプログラムの実行により提供される仮想空間60を表示」するという工程は,本件補正発明の「視界画像を前記ヘッドマウントデバイスに表示させるステップ」に相当する。

キ 引用発明の「動作制御方法」は,情報処理装置10における情報処理によって実現されるものであるから,「情報処理方法」といえる。
したがって,引用発明の「動作制御方法」は,本件補正発明の「情報処理方法」に相当する。

ク 前記アないしキによれば,本件補正発明と引用発明とは,
「ヘッドマウントデバイスを装着するユーザに関連付けられた第1キャラクタと,第2キャラクタと,を対戦させる仮想空間を定義するステップと,
前記仮想空間上の第1面に,前記第2キャラクタを配置するステップと,
前記第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定するステップと,
前記ユーザの頭部の動きに応じて,前記仮想カメラからの視界を制御するステップと,
前記視界に対応する視界画像を生成するステップと,
前記視界画像を前記ヘッドマウントデバイスに表示させるステップと,
を備える,
情報処理方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件補正発明では,「第2キャラクタ」が頭部オブジェクトと胴体オブジェクトと脚部オブジェクトを含むのに対して,
引用発明では,「敵のキャラクタ61」がどのようなオブジェクトを含むのかは特定されていない点。

相違点2:
本件補正発明では,「第1キャラクタ」の視点が,「第1面」よりも高い第2面に「第1キャラクタ」を配置した場合のものであり,かつ,「第2キャラクタ」の頭部の高さが,仮想カメラの高さよりも高いのに対して,
引用発明では,「ユーザ40が操作するキャラクタ」の視点が,どのような高さの面に「ユーザ40が操作するキャラクタ」を配置した場合のものであるのかは特定されておらず,かつ,「敵のキャラクタ61」の頭部の高さと仮想カメラの高さの大小関係も特定されていない点。

相違点3:
本件補正発明は,「第2キャラクタ」に「第1キャラクタ」を攻撃させる場合に,脚部オブジェクトの位置を第1面に固定した状態で,第1キャラクタに向けて頭部オブジェクトおよび胴体オブジェクトを近づけるように,かつ,胴体オブジェクトを頭部オブジェクトの動きに合わせて傾けるように,頭部オブジェクトおよび胴体オブジェクトを移動させるステップを有し,頭部オブジェクトを第1キャラクタに近づける量は,胴体オブジェクトを第1キャラクタに近づける量よりも多いのに対して,
引用発明では,「敵のキャラクタ61」に「ユーザ40が操作するキャラクタ」を攻撃させる場合に,「敵のキャラクタ61」を構成するオブジェクトにどのような動きをさせるのかは,特定されていない点。

(4)相違点1の容易想到性について
引用発明において,敵のキャラクタ61として,どのようなタイプのキャラクタを用いるのかは,興趣性等を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる演出上の事項にすぎないところ,プレイヤが操作するキャラクタと戦闘する敵キャラクタとして,頭部,胴体及び脚部を有するタイプのものは,本件出願の出願前にごくありふれたものであり(周知例1ないし3等を参照。),また,引用文献1の図6や図7に図示された敵のキャラクタ61も,頭部,胴体及び脚部を有するタイプのものである。
そして,仮想空間に配置するキャラクタを,各部位のオブジェクトを組み合わせて構成することは,常套手段である(例えば,特開2013-158456号公報の【0089】及び図3等,特開2013-33489号公報の【0155】及び図9等,特開2005-95438号公報の【0022】及び図3等を参照。)。
そうすると,引用発明において,敵のキャラクタ61として,頭部オブジェクト,胴オブジェクト及び脚部オブジェクトを含む各部位のオブジェクトを組み合わせて構成されたキャラクタを用いること,すなわち,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。

(5)相違点2の容易想到性について
引用発明において,敵のキャラクタ61を,どのような大きさのものとするのかや,戦闘において,ユーザ40が操作するキャラクタ及び敵のキャラクタ61をどのような位置に設定するのかは,興趣性等を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる演出上の事項にすぎない。
そして,前記(2)イ(カ)で認定したように,「プレイヤキャラクタを,プレイヤキャラクタよりも非常に大きな敵キャラクタが配置される面よりも高い位置にある面に配置し,かつ,プレイヤキャラクタの頭部の高さが少なくとも敵キャラクタの頭部よりも低い位置にあるという,ゲームでの戦闘におけるキャラクタの位置関係。」(第2周知事項)が,本件出願の出願前に周知であった。
そうすると,引用発明において,戦闘におけるユーザ40が操作するキャラクタ及び敵のキャラクタ61の位置を,第2周知事項のようなものに設定すること,すなわち,敵のキャラクタ61として,ユーザ40が操作するキャラクタより非常に大きなものを採用するとともに,戦闘において,ユーザ40が操作するキャラクタを,敵のキャラクタ61が配置される面よりも高い位置にある面に配置し,かつ,ユーザ40が操作するキャラクタの頭部の高さが少なくとも敵のキャラクタ61の頭部よりも低い位置にあるようにすることは,当業者が適宜なし得たことというほかない。
しかるに,前述のように構成した引用発明では,「ユーザ40が操作するキャラクタ」の視点が,「敵のキャラクタ61が配置される面」よりも高い面に「ユーザ40が操作するキャラクタ」を配置した場合のものであり,かつ,「敵のキャラクタ61」の頭部の高さが,ユーザ40が操作するキャラクタ」の視点に対応する位置に設定された仮想カメラの高さよりも高くなるから,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。
以上のとおりであるから,引用発明を,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。

(6)相違点3の容易想到性について
引用発明において,敵のキャラクタ61によるユーザ40が操作するキャラクタへの攻撃動作としてどのような動作を採用するのかは,興趣性等を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる演出上の事項にすぎない。
そして,前記(2)イ(カ)で認定したように,「プレイヤキャラクタより非常に大きな敵キャラクタが,プレイヤキャラクタに向かって頭部を近づけ,プレイヤキャラクタを攻撃するという,ゲームにおける敵キャラクタの攻撃動作」(第1周知事項)が,本件出願の出願前に周知であった。
そうすると,引用発明において,敵のキャラクタ61によるユーザ40が操作するキャラクタへの攻撃動作の一つとして,第1周知事項のような動作を用いること,すなわち,ユーザ40が操作するキャラクタより非常に大きな敵のキャラクタ61が,ユーザ40が操作するキャラクタに向かって頭部を近づけ,ユーザ40が操作するキャラクタを攻撃するという動作を行うようにすることは,当業者が適宜なし得たことというほかない。
しかるに,前記(4)で述べたように構成された引用発明(頭部オブジェクト,胴オブジェクト及び脚部オブジェクトを含む各部位のオブジェクトを組み合わせて構成された敵のキャラクタ61)において,敵のキャラクタ61がユーザ40が操作するキャラクタに向かって頭部を近づけると,必然的に,「ユーザ40が操作するキャラクタ」に向けて頭部オブジェクト及び胴体オブジェクトが近づくとともに,胴体オブジェクトが頭部オブジェクトの動きに合わせて傾くように,頭部オブジェクト及び胴体オブジェクトが移動し,頭部オブジェクトが「ユーザ40が操作するキャラクタ」に近づく量は,胴体オブジェクトが第1キャラクタに近づく量よりも多くなる。
また,当該攻撃動作を,敵のキャラクタの脚部オブジェクトの位置を,基準面に固定した状態で行うようにするのか,それとも,基準面に対して移動しながら行うようにするのかは,興趣性等を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる演出上の事項である(なお,少なくとも,前記(2)イ(イ)aで述べた周知例2に掲載された動画像から看取されるモンスター型のキャラクタの火球のようなものによる攻撃は,床面に対して脚が移動せずに行われている。)。
以上によれば,引用発明を,相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。

(7)効果について
本件補正発明が有する効果は,引用発明,第1周知事項及び第2周知事項に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(8)小括
以上のとおり,本件補正発明は,引用発明,第1周知事項及び第2周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,〔補正却下の決定の結論〕のとおり決定する。


第3 本件出願の請求項6に係る発明について
1 請求項5に係る発明のうち請求項1の記載を引用するもの
本件補正は前記のとおり却下されたので,本件出願の請求項5に係る発明のうち請求項1の記載を引用するものは,前記第2〔理由〕1(1)アに示した請求項1及び5に記載された事項により特定されるものと認められるところ,当該請求項5に係る発明のうち請求項1の記載を引用するものについて,独立形式の記載に書き改めると,次のとおりである。

「ヘッドマウントデバイスを装着するユーザに関連付けられた第1キャラクタと,頭部オブジェクトを含む第2キャラクタと,を対戦させる仮想空間を定義するステップと,
前記仮想空間上の第1面に,前記第2キャラクタを配置するステップと,
前記第1面よりも高い第2面に前記第1キャラクタを配置した場合の前記第1キャラクタの視点に対応する位置に仮想カメラを設定するステップと,
前記ユーザの頭部の動きに応じて,前記仮想カメラからの視界を制御するステップと,
前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記第1キャラクタに向けて前記頭部オブジェクトを近づけるように,前記頭部オブジェクトを移動させるステップと,
前記視界に対応する視界画像を生成するステップと,
前記視界画像を前記ヘッドマウントデバイスに表示させるステップと,
を備え,
前記第2キャラクタの高さは,前記仮想カメラの高さよりも高く,
前記第2キャラクタは,胴体オブジェクトを更に有し,
前記第2キャラクタに前記第1キャラクタを攻撃させる場合に,前記胴体オブジェクトを,前記頭部オブジェクトの配置位置より,前記第1キャラクタから遠ざかる位置に配置するとともに,前記頭部オブジェクトに向けて延びるように形成するステップを更に備える,
情報処理方法。」(以下,「本件発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
本件発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略,本件発明は,本件出願のの出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2017-58853号公報)に記載された発明及び周知の事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載及び引用発明,並びに第1周知事項,第2周知事項については,前記第2〔理由〕3(2)ア及びイで認定したとおりである。

4 対比・判断
本件補正発明は,上記第2〔理由〕2のとおり,実質上,本件発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると,本件発明の発明特定事項をすべて含み,さらに限定を付加したものに相当する本件補正発明が,上記第2〔理由〕3(8)で述べたとおり,引用発明,第1周知事項及び第2周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明も同様の理由により,引用発明,第1周知事項及び第2周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
前記第3のとおり,本件発明は,引用発明,第1周知事項及び第2周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1以外の請求項の記載を引用する請求項5に係る発明及び他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-09 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-25 
出願番号 特願2017-80865(P2017-80865)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 目黒 大地  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 清水 康司
後藤 亮治
発明の名称 情報処理方法、装置、および当該情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラム  

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