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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16H
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16H
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F16H
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F16H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F16H
管理番号 1356796
異議申立番号 異議2018-700144  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-22 
確定日 2019-09-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6184546号発明「偏心揺動型歯車装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6184546号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。 特許第6184546号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6184546号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年7月3日に出願された特願2012-149350号の一部を平成28年4月6日に新たな特許出願としたものであって、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月23日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年2月22日 :特許異議申立人安東和恭(以下、「異議申
立人」という。)による請求項1及び2に
係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年6月8日付け :取消理由通知書
平成30年8月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

平成30年10月15日付け:訂正拒絶理由通知書
平成30年11月16日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提

平成31年1月9日付け :訂正請求があった旨の通知書
平成31年2月15日 :異議申立人による意見書の提出
平成31年3月12日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和1年5月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

令和1年7月17日付け :訂正請求があった旨の通知書
令和1年8月20日 :異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者によって令和1年5月16日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、特許第6184546号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所である。)。
なお、本件訂正請求により、平成30年8月10日に提出された訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数は、10.8?13.6μ/Kである」を「 前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に記載された「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、鉄系材料で構成されている」を「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されている」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0006】を「 前記の目的を達成するため、本発明は、第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、偏心部と、前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kであり、前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動歯車装置である。」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0008】を「 ここで、前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されていてもよい。」 に訂正する。

訂正前の請求項2は、訂正の対象である請求項1の記載を引用している関係にあるから、本件訂正は一群の請求項〔1及び2〕について請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「揺動歯車」の構成をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1での訂正内容は、願書に添付した明細書の段落【0036】の「・・・揺動歯車14,16は、炭素含有量が0.7?1.0%の鋼製(高炭素鋼製)、あるいは炭素含有量が0.2%以下の鋼製(低炭素鋼製)としてもよく、・・・さらに、これらの鉄系素材を焼入れ硬化させると、炭素含有量0.2%以下の場合に、線膨張係数は13.6μ/Kとなり、また炭素含有量0.7?1.0%の場合に、線膨張係数は12.0?12.5μ/Kとなる。・・・」との記載に基づいて導き出せるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内おいてされたものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項1によって、訂正後の請求項1に係る発明において、「揺動歯車」を構成する素材が特定の鉄系材料であると具体的に特定したことに対応して、訂正事項2によって、訂正前の請求項2にある「鉄系材料」との記載を、訂正後の請求項2では「前記鉄系材料」に訂正し、もって、訂正後の請求項2に係る発明における「揺動歯車」においても、その素材について、当該請求項が引用する請求項1との関係で整合させ、限定するものであるといえる。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、訂正事項1と連動するものであり、その訂正事項1が上記(1)イより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内おいてされたものであるといえるところ、上記アを踏まえれば、訂正事項2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。そして、訂正事項2は、請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3及び4
訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2によって、特許請求の範囲の記載が訂正されることから、当該特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものである。
したがって、訂正事項3及び4は、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、上記(1)及び(2)を踏まえると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求は上記「第2」に説示のとおり認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1および2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、令和1年5月16日に提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

[本件発明1]
「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、
前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、
前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、
前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kであり、
前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動型歯車装置。」
[本件発明2]
「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されている請求項1に記載の偏心揺動型歯車装置。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由
取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が平成31年3月12日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

[取消理由]
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願日前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3?5に記載された当業者における周知・慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

引用文献
引用文献1:特開2010-101454号公報
引用文献2:特開2011-94662号公報
引用文献3:特開平4-331851号公報
引用文献4:特開2008-8437号公報
引用文献5:特開2000-213605号公報
上記引用文献1は、特許異議申立人による特許異議申立書での甲第6号証であり、同様に、引用文献2、引用文献3、引用文献4及び引用文献5は、それぞれ甲第5号証、甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証である。

第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)引用文献1に記載の事項及び発明
取消理由通知(決定の予告)で引用した引用文献1(特開2010-101454号公報)には、「減速装置」に関し、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(i)「【0001】
本発明は、出力部材と固定部材との間に介在される主軸受を備えた減速装置に関する。」
(ii)「【0015】
この減速装置2は、ロボットを制御するための、例えばバックラッシ15分(15/60度)?1分(1/60度)程度の精密機械に使用されるもので、前段に図示せぬモータからの駆動力を受ける等速直交歯車機構4、後段に内接噛合遊星歯車構造の減速歯車機構6を備える。この減速装置2はロボット(全体は図示略)の第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する。従って、この実施形態では、後述する第1、第2フランジ体12、14が固定部材、ケーシング16が出力部材に相当している。即ち、いわゆる枠回転型の減速装置である。」
(iii)「【0018】
モータ軸22の先端には第1ベベル歯車24が直切りされている。第1ベベル歯車24は同じ歯数の第2ベベル歯車26と噛合することによって前記等速直交歯車機構4を形成し、回転方向を直角に変更している。第2ベベル歯車26は後段の減速歯車機構6の入力軸32にスプライン34を介して連結されている。(後段の)入力軸32は1対の玉軸受36、38にて第1、第2フランジ体12、14に支持されている。入力軸32には3個の偏心体40A?40Cが一体的に形成されている。各偏心体40A?40Cの偏心位相は円周方向に120度ずつずれている。各偏心体40A?40Cの外周には、ころ42A?42Cを介して計3枚の外歯歯車44A?44Cが揺動回転自在に組み込まれている。各外歯歯車44A?44Cは内歯歯車46に内接噛合している。
【0019】
内歯歯車46の歯数は、外歯歯車44A?44Cの歯数より「1」だけ多く設定されている。内歯歯車46は、この実施形態ではケーシング16と一体化され、(枠回転型の)出力部材として機能している。また、該内歯歯車46の内歯は、円弧歯形であり、具体的には円弧状の溝46Aに回転自在に嵌入された円筒状の外ピン46Bによって構成されている。内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されている。内歯歯車46の軸方向両端部の内周には該主軸受18、20が配置されている。この内歯歯車46及び主軸受18、20付近の構成については、後に詳述する。
【0020】
各外歯歯車44A?44Cには、複数の内ピン孔44A1?44C1が軸方向に貫通して形成されている。内ピン孔44A1?44C1には内ローラ48の被せられた内ピン50が(偏心体40A?40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌している。内ピン50は第1フランジ体12から一体的に突出・形成されており、ボルト52によって第2フランジ体14と連結されている。従って、第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されていることになる。」
(iv)「【0029】
モータ軸22が回転すると該モータ軸22に形成されている第1ベベル歯車24が回転する。第1ベベル歯車24が回転すると、該第1ベベル歯車24と噛合している第2ベベル歯車26が回転し、スプライン34を介して後段の減速歯車機構6の入力軸32が回転する。入力軸32が回転すると、偏心体40A?40C及びころ42A?42Cを介して3枚の外歯歯車44A?44Cが円周方向に120度の位相で偏心揺動する。
【0030】
この実施形態では、各外歯歯車44A?44Cの内ピン孔44A1?44C1を内ピン50が貫通しており、第1、第2フランジ体12、14と一体化された状態でロボットの第1部材8に固定されているため、各外歯歯車44A?44Cは自転をすることができない。このため、入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A?44Cが1回揺動すると、該外歯歯車44A?44Cの揺動によって内歯歯車46との噛合位置が順次ずれ、内歯歯車46が外歯歯車44A?44Cに対して歯数差「1」の分だけ相対回転する(自転する)現象が起こる。この内歯歯車46の回転は、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れ、ボルト47を介してロボットの第2部材10を(ロボットの第1部材8に対して)回転させる。・・・」
(v)「【0031】
ここで、この実施形態では、第1、第2フランジ体12、14が背面合わせで組み込まれた一対の主軸受18、20にてケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されている。主軸受18、20の各円筒ころ60A、61Aは、内輪側は、第1、第2フランジ体12、14の転走面12A、14Aに直接接触している。即ち、第1、第2フランジ体12、14自体が円筒ころ60A、61Aの内輪として機能している。また、外輪側は、各円筒ころ60A、61Aは、シートメタル62、63の転走面62A,63Aに接触しており、シートメタル62、63の反転走面62B、63Bがケーシング16の受面16A、16Bに当接している。このため、シートメタル62、63は主軸受18、20の転走面62A、63Aとしての硬度を提供し、一方、ケーシングの受面16A,16Bは、該シートメタル62、63を背面から支えることで、主軸受18、20に必要な真円度及び剛性を提供することになる。従って、ケーシング16自体を軸受鋼のような鋼材で製造する必要がなく、鋳造による製造で十分であるため、重量・大型部材であるケーシング16を低コストで製造できるようになる。また、ケーシング16は主軸受18、20の転走面を提供しないので、受面16A、16Bに対して特別な表面硬化処理を行う必要もない。以上のことから、減速装置の設計の自由度を高めることもできる。一方、シートメタル62、63は、ケーシング16の受面16A、16Bによって反転走面62B、63B側が支持されているため(通常の軸受の外輪ならば必要とされる)真円度や剛性を確保する必要がなく、転走面62A、63Aとして所定の特性(例えば硬度、あるいは摩擦係数等)の観点で吟味された素材を使用することができる。また、シートメタル62、63は1枚の鋼板から製造することができるため、低コストである。」
(vi)「【0048】
なお、上記実施形態においては鋳鉄によってケーシングを製造するようにしていたが、ケーシング(あるいはフランジ体)の素材は、(軸受の素材としての特性が要求されないため)例えば、アルミニウム等で製造することも可能であり、この場合には装置全体の軽量化が実現できる。」

以上の記載事項及び図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「ロボットの第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する減速装置2であって、
3個の偏心体40A?40Cが一体的に形成されている入力軸32が第1、第2フランジ体12、14に支持されており、
各偏心体40A?40Cの外周には、3枚の外歯歯車44A?44Cが揺動回転自在に組み込まれており、
各外歯歯車44A?44Cは内歯歯車46に内接噛合しており、
内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能しており、
第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されており、また、ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されており、
各外歯歯車44A?44Cには、複数の内ピン孔44A1?44C1が軸方向に貫通して形成されており、
各外歯歯車44A?44Cの内ピン孔44A1?44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A?40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌しており、
入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A?44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、
この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである、
減速装置2。」

(2)引用文献2に記載の事項
引用文献2には、次の記載がある
「【0009】
ここで、インホイールモータにおいて、主軸の材料に使われることの多い炭素鋼の線膨張係数は、おおよそ11×10^(-6)から13×10^(-6)[K^(-1)]の範囲にあり、ケースの材料に使われることの多いアルミニウム合金の線膨張係数は、おおよそ21×10^(-6)から24×10^(-6)[K^(-1)]の範囲にある。・・・」

(3)対比・判断
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ロボットの第1部材8」及び「第2部材10」は、それぞれ本件発明1の「第1の部材」及び「第2の部材」に相当する。
引用発明の「減速装置2」が、所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する装置であることは当業者には自明である。また、引用発明の「減速装置2」は、「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A?44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)」するものであるから、歯車装置であるといえる。
したがって、引用発明の「ロボットの第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する減速装置2」は、本件発明1の「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置」に相当する。
(イ)引用発明の「3個の偏心体40A?40Cが一体的に形成されている入力軸32」は、その機能・構造からみて本件発明1の「偏心部」に相当する。
(ウ)引用発明の「3枚の外歯歯車44A?44C」は、「各偏心体40A?40Cの外周」に「揺動回転自在に組み込まれて」いるものであるから、本件発明1の「歯部を有する揺動歯車」に相当し、引用発明の「各偏心体40A?40Cの外周には、3枚の外歯歯車44A?44Cが揺動回転自在に組み込まれて」いることは、本件発明1の「前記偏心部が挿入される挿入孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と」「を備え」ることに相当する。
(エ)引用発明の「内歯歯車46」は、「ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能して」いるから、引用発明の「ケーシング16」は、第2の部材に取り付け可能に構成されているといえる。また、引用発明の「ケーシング16」は「第1、第2フランジ体12、14」を「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持」するものであり、図1も参酌すると、その形状は筒状であるといえる。したがって、引用発明の「ケーシング16」は、本件発明1の「第1筒部」に相当する。
(オ)引用発明の「第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されて」いるものであるから、第1の部材に取り付け可能に構成されているといえる。また、図1よりその形状は筒状であるといえる。したがって、引用発明の第1フランジ体12及び第2フランジ体114を合わせたものは、本件発明1の「第2筒部」に相当する。
(カ)上記(エ)及び(オ)より、引用発明の「内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能しており、第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されており、また、ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されて」いることは、本件発明1の「前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、前記第1の部材及び第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え」ることに相当する。
(キ)引用発明の「各外歯歯車44A?44C」は「内歯歯車46に内接噛合して」いるものであり、また、引用発明の「ケーシング16」は、3枚の外歯歯車44A?44Cの歯部と噛み合う「内歯歯車46」を有している。したがって、上記(エ)を踏まえると、引用発明の「内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能して」いることは、本件発明1の「前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており」との対比において、「前記第1筒部は、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており」との限度で共通する。
(ク)引用発明の「第1、第2フランジ体12、14」は、「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されて」いるから、「ケーシング16」の径方向内側に配置されているといえる。また、引用発明は「各外歯歯車44A?44Cには、複数の内ピン孔44A1?44C1が軸方向に貫通して形成されており、各外歯歯車44A?44Cの内ピン孔44A1?44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A?40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌して」いるものであるから、引用発明の「第1、第2フランジ体12、14」は、各外歯歯車44A?44Cを保持した状態であるといえる。
したがって、引用発明において、「第1、第2フランジ体12、14は、」「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されており、各外歯歯車44A?44Cには、複数の内ピン孔44A1?44C1が軸方向に貫通して形成されており、各外歯歯車44A?44Cの内ピン孔44A1?44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A?40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌して」いることは、本件発明1の「前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され」ていることに相当する。
(ケ)引用発明は、「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A?44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである」。したがって、引用発明のケーシング16と第1、第2フランジ体12、14とは、入力軸32の回転に伴う各外歯歯車44A?44Cの揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であるといえる。
よって、引用発明の「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A?44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである」ことは、本件発明1の「前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であ」ることに相当する。
(コ)引用発明の「回転減速装置2」は、機能・構造からみて、本件発明1の「偏心揺動形歯車装置」に相当する。
(サ)以上のとおりであるので、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

<一致点>
「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、 前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、
前記第1筒部は、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、 前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、
前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能である、
偏心揺動型歯車装置。」
<相違点>
本件発明1は、「前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成され」、また、「前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kであり、前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が、12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている」のに対し、引用発明の「ケーシング16」の線膨張係数の「3枚の外歯歯車44A?44C」の線膨張係数との関係は特定されておらず、また、「3枚の外歯歯車44A?44C」の材質及び焼き入れ硬化後の線膨張係数の具体的数値も特定されていない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)引用発明の「ケーシング16」は、「アルミニウム等で製造された」ものとされる一方で、「3枚の外歯歯車44A?44C」については、その材質は特定されていない。また、「3枚の外歯歯車44A?44C」を焼き入れ硬化することについては、引用文献1には、記載も示唆もされていない。
さらに、取消理由通知で引用した引用文献3?5のいずれにも、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置において、筒部を、揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成することは、記載も示唆もされておらず、まして、当該構成と併せて揺動歯車を焼き入れ硬化する構成を採用することは、記載も示唆もされていない。
なお、取消理由通知で引用した引用文献2にも、かかる構成についての記載も示唆もないし、かかる構成が当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、引用発明において、相違点に係る本件発明1の構成の構成となすことは当業者であっても容易にはなし得ない。
(イ)異議申立人は、令和1年8月20日に提出した意見書の中で、上記相違点に関し、「偏心揺動型歯車装置の分野においては、SUJ2を素材として外歯歯車(揺動歯車)を作成することは周知の技術であり、SUJ2の炭素含有量は、0.95?1.0%の範囲で、訂正発明1の『炭素含有量が0.7?1.0%の鉄系材料で構成され』に含まれるものであり、さらに、SUJ2を焼入れ、焼戻しの熱処理を行うことにより線膨張係数は12.5×10^(-6)/℃となることは良く知られた事実であります。そうすると、訂正された『前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が、12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている』との構成は、周知の技術及び当業者によく知られた事実に基づいて、当業者が容易に想到し得たものです。」と主張する(第3頁下から8行?第4頁第5行)。
しかしながら、鉄系材料であるSUJ2の外歯歯車への採用が必然的にSUJ2の熱処理を伴うものとはいえないことからすれば、上記異議申立人の主張によれば、引用発明において、相違点に係る本件発明1の構成となすために、まず、SUJ2を素材とした外歯歯車を、「3枚の外歯歯車44A?44C」として採用した上で、さらに、所定の線膨張係数を得るために、当該SUJ2を素材とした外歯歯車に熱処理を施すという2段階の論理構成(いわゆる「容易の容易」)による必要があり、たとえ、外歯歯車の素材をSUJ2とすること、及び、SUJ2の素材を熱処理することにより所定の線膨張係数が得られることが当業者によく知られた事項であるとしても、このような2段階の論理構成により、引用発明において相違点に係る本件発明1となすことは当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
なお、偏心揺動型歯車装置において外歯歯車を熱処理した鉄系材料とすることは、偏心揺動型歯車装置において必須であるとはいえない(引用文献5(特開2000-213605号公報)の段落【0020】を参照。)。
(ウ)くわうるに、本件発明1(及び2)は、「偏心揺動型歯車装置では、使用時にキャリア内の温度が外筒の温度よりも高くなる。このため、使用時には揺動歯車が熱膨張するが、この熱膨張により、揺動歯車の外歯と外筒の内歯との間のすき間が狭くなり、揺動歯車の歯面の面圧が高くなり、その結果、揺動歯車の寿命を低下させるという問題がある。」(本件明細書段落【0004】)という課題認識のもと、かかる課題を解決するために、「第1筒部の材質を揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きなものにするだけでなく、第1筒部及び揺動歯車の素材が特定の線膨張係数を有するように焼き入れ硬化処理で調整」するという手段を選択し、これにより、「偏心揺動型歯車装置の使用時に第1筒部、第2筒部及び揺動歯車が昇温したときに、第1筒部が揺動歯車よりも膨張する。このため、第1筒部の内歯と揺動歯車の歯部との間のすき間、すなわち、第1筒部の内周面と揺動歯車との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。」(本件明細書段落【0007】)という作用効果を得たものと解される(特許権者の令和1年5月16日に提出した意見書第6頁第12行?第19行)。
一方、異議申立人の提出したどの証拠も、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置の使用時における上記課題に着目し、筒状部材と揺動歯車について、所定の熱膨張差の生じる特定の材質及び熱処理を選択するという技術的事項を開示ないし示唆するものではない。
してみれば、偏心揺動型歯車装置の使用時における上記課題を解決するために、引用発明において、ケーシング16の材質を3枚の外歯歯車44A?44Cの材質よりも線膨張係数の大きなものとし、さらに、ケーシング16及び3枚の外歯歯車44A?44Cの素材が特定の線膨張係数を有するように焼き入れ硬化処理するという手段を適用し、もって、相違点に係る本件発明1の構成となすことは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(エ)そして、本件発明1は、相違点に係る本件発明1の構成を有することにより、「偏心揺動型歯車装置の使用時に第1筒部、第2筒部及び揺動歯車が昇温したときに、第1筒部が揺動歯車よりも膨張する。このため、第1筒部の内歯と揺動歯車の歯部との間のすき間、すなわち、第1筒部の内周面と揺動歯車との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。」(本件明細書段落【0007】)という格別の作用効果を奏するものといる。
(オ)以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるともいえないし、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
異議申立人は、特許異議申立書において、特許請求の範囲に関し、請求項1の「第1の部材」及び「第2の部材」は、実施例においてどの構成を示すのかが、明細書及び図面に具体的に示されていないから、「第1の部材」と「第2の部材」を含む構成が不明になっており、特許を受けようとする発明が不明確である旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0002】には、「二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型歯車装置が知られている。この偏心揺動型歯車装置は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとをそなえており」と記載され、当業者の技術常識をもってすれば、「第1の部材」が「二つの相手側部材」の「一方の相手側部材」に、「第2の部材」が「もう一方の相手側部材」に対応することが明確にわかるから、特許を受けようとする発明が不明確であるとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
したがって、異議申立人のかかる主張は採用できない。

(2)特許法第36条第4項第1号について
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1の「第1の部材」及び「第2の部材」は、明細書及び図面において、どの構成を示すのか記載されていないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0002】には、「二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型歯車装置が知られている。この偏心揺動型歯車装置は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとをそなえており」と記載され、当業者の技術常識をもってすれば、「第1の部材」が「二つの相手側部材」の「一方の相手側部材」に、「第2の部材」が「もう一方の相手側部材」に対応することが明確にわかるから、【発明を実施するための形態】において、外筒2が一方の相手側部材に、キャリア4がもう一方の相手側部材に、それぞれ固定されるものであることが、明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしている。
よって、異議申立人のかかる主張は採用できない。

(3)特許法第29条第2項について
特許異議申立人は、訂正前の請求項1及び2に係る発明について、
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証(引用文献3:特開平4-331851号公報)、甲第2号証(特開2010-71462号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、また、同じく請求項1及び2に係る発明は、甲第3号証(特開2010-249262号公報)に記載された発明、甲第4号証(引用文献4:特開2008-8437号公報)に記載された発明、甲第5号証(引用文献2:特開2011-94662号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、訂正後の請求項1及び2に係る発明(本件特許1及び2)の発明特定事項である、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置において、筒部を、揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成することは、記載も示唆もされておらず、まして、当該構成と併せて揺動歯車を焼き入れ硬化する構成を採用することは、記載も示唆もされていない。また、当該事項が当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、訂正後の請求項1および2に係る発明は、甲第1号証(引用文献3:特開平4-331851号公報)、甲第2号証(特開2010-71462号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、甲第3号証(特開2010-249262号公報)に記載された発明、甲第4号証(引用文献4:特開2008-8437号公報)に記載された発明、甲第5号証(引用文献2:特開2011-94662号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、申立人のかかる主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偏心揺動型歯車装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型歯車装置が知られている。この偏心揺動型歯車装置は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとを備えており、キャリアは、クランク軸の偏心部に取り付けられた揺動歯車の揺動回転によって外筒に対して相対的に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-77980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ロボットの使用環境の変化により、ロボットの稼働率が上げられる傾向にあり、これに伴い減速機についても高速化が要求されている。偏心揺動型歯車装置では、使用時にキャリア内の温度が外筒の温度よりも高くなる。このため、使用時には揺動歯車が熱膨張するが、この熱膨張により、揺動歯車の外歯と外筒の内歯との間のすき間が狭くなり、揺動歯車の歯面の面圧が高くなり、その結果、揺動歯車の寿命を低下させるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、揺動歯車の歯面の面圧が高くなることを抑制することにより、揺動歯車の寿命が短くなることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、偏心部と、前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kであり、前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動型歯車装置である。
【0007】
本発明では、揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が、第1筒部を構成する素材の線膨張係数よりも小さい。したがって、偏心揺動型歯車装置の使用時に第1筒部、第2筒部及び揺動歯車が昇温したときに、第1筒部が揺動歯車よりも膨張する。このため、第1筒部の内歯と揺動歯車の歯部との間のすき間、すなわち、第1筒部の内周面と揺動歯車との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。したがって、揺動歯車が昇温して膨張したとしても、揺動歯車の歯面の面圧が高くなることを抑制することができ、揺動歯車の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0008】
ここで、前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されていてもよい。
【0009】
この態様では、第1筒部を構成する素材の線膨張係数と、揺動歯車を構成する素材の線膨張係数との差を大きく取ることができるため、揺動歯車の温度と第1筒部の温度との温度差が大きくなるような使用環境においても、揺動歯車の歯面の面圧が高くなることを抑制することができ、これにより、揺動歯車の寿命が短くなることをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、揺動歯車の歯面の面圧が上昇することを抑制することができるため、揺動歯車の寿命が短くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る偏心揺動型歯車装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1のII-II線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る偏心揺動型歯車装置について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の偏心揺動型歯車装置(以下、歯車装置と称する)1は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部、各種工作機械の旋回部等に減速機として適用されるものである。この歯車装置1は、例えば、80rpm?200rpmの回転数で使用される。
【0014】
本実施形態に係る歯車装置1は、入力軸8を回転させることによってクランク軸10を回転させ、クランク軸10の偏心部10a,10bに連動して揺動歯車14,16を揺動回転させることにより、入力回転から減速した出力回転を得るように構成されている。
【0015】
図1及び2に示すように、歯車装置1は、第1筒部の一例である外筒2と、第2筒部の一例であるキャリア4と、入力軸8と、複数(例えば3つ)のクランク軸10と、第1揺動歯車14と、第2揺動歯車16と、複数(例えば3つ)の伝達歯車20とを備えている。
【0016】
外筒2は、歯車装置1の外面を構成するものであり、略円筒形状を有している。外筒2の内周面には、多数のピン溝2bが形成されている。各ピン溝2bは、外筒2の軸方向に延びるように配置され、軸方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。これらのピン溝2bは、外筒2の内周面に周方向に等間隔で並んでいる。
【0017】
外筒2は、多数の内歯ピン3を有している。各内歯ピン3は、ピン溝2bにそれぞれ取り付けられている。具体的に、各内歯ピン3は、対応するピン溝2bにそれぞれ嵌め込まれており、外筒2の軸方向に延びる姿勢で配置されている。これにより、多数の内歯ピン3は、外筒2の周方向に沿って等間隔で並んでいる。これらの内歯ピン3には、第1揺動歯車14の第1外歯14a及び第2揺動歯車16の第2外歯16aが噛み合う。
【0018】
キャリア4は、外筒2と同軸上に配置された状態でその外筒2内に収容されている。キャリア4は、外筒2に対して同じ軸回りに相対回転する。具体的に、キャリア4は、外筒2の径方向内側に配置されており、この状態で、軸方向に互いに離間して設けられた一対の主軸受6によって外筒2に対して相対回転可能に支持されている。
【0019】
キャリア4は、基板部4aと複数(例えば3つ)のシャフト部4cとを有する基部と、端板部4bと、を備えている。
【0020】
基板部4aは、外筒2内において軸方向の一端部近傍に配置されている。この基板部4aの径方向中央部には円形の貫通孔4dが設けられている。貫通孔4dの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔4e(以下、単に取付孔4eという)が周方向に等間隔で設けられている。
【0021】
端板部4bは、基板部4aに対して軸方向に離間して設けられており、外筒2内において軸方向の他端部近傍に配置されている。端板部4bの径方向中央部には貫通孔4fが設けられている。貫通孔4fの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔4g(以下、単に取付孔4gという)が基板部4aの複数の取付孔4eと対応する位置に設けられている。外筒2内には、端板部4b及び基板部4aの互いに対向する双方の内面と、外筒2の内周面とで囲まれた閉空間が形成されている。
【0022】
3つのシャフト部4cは、基板部4aと一体的に設けられており、基板部4aの一主面(内側面)から端板部4b側へ直線的に延びている。この3つのシャフト部4cは、周方向に等間隔で配設されている(図2参照)。各シャフト部4cは、ボルト4hによって端板部4bに締結されている(図1参照)。これにより、基板部4a、シャフト部4c及び端板部4bが一体化されている。
【0023】
入力軸8は、図略の駆動モータの駆動力が入力される入力部として機能するものである。入力軸8は、端板部4bの貫通孔4f及び基板部4aの貫通孔4dに挿入されている。入力軸8は、その軸心が外筒2及びキャリア4の軸心と一致するように配置されており、軸回りに回転する。入力軸8の先端部の外周面には入力ギア8aが設けられている。
【0024】
3つのクランク軸10は、外筒2内において入力軸8の周囲に等間隔で配置されている(図2参照)。各クランク軸10は、一対のクランク軸受12a,12bによりキャリア4に対して軸回りに回転可能に支持されている(図1参照)。具体的に、各クランク軸10の軸方向の一端から所定長さだけ軸方向内側の部分に第1クランク軸受12aが取り付けられており、この第1クランク軸受12aは、基板部4aの取付孔4eに装着されている。一方、各クランク軸10の軸方向の他端部に第2クランク軸受12bが取り付けられており、この第2クランク軸受12bは、端板部4bの取付孔4gに装着されている。これにより、クランク軸10は、基板部4a及び端板部4bに回転可能に支持されている。
【0025】
各クランク軸10は、軸本体12cと、この軸本体12cに一体的に形成された偏心部10a,10bとを有する。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、両クランク軸受12a,12bによって支持された部分の間に軸方向に並んで配置されている。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ円柱形状を有しており、いずれも軸本体12cの軸心に対して偏心した状態で軸本体12cから径方向外側に張り出している。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ軸心から所定の偏心量で偏心しており、互いに所定角度の位相差を有するように配置されている。
【0026】
クランク軸10の一端部、すなわち、基板部4aの取付孔4e内に取り付けられる部分の軸方向外側の部位には、伝達歯車20が取り付けられる被嵌合部10cが設けられている。
【0027】
第1揺動歯車14は、外筒2内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸10の第1偏心部10aに第1ころ軸受18aを介して取り付けられている。第1揺動歯車14は、各クランク軸10が回転して第1偏心部10aが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0028】
第1揺動歯車14は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有している。第1揺動歯車14は、第1外歯14aと、中央部貫通孔14bと、複数(例えば3つ)の第1偏心部挿通孔14cと、複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔14dとを有している。第1外歯14aは、揺動歯車14の周方向全体に亘って滑らかに連続する波形状を有している。
【0029】
中央部貫通孔14bは、第1揺動歯車14の径方向中央部に設けられている。中央部貫通孔14bには、入力軸8が遊びを持った状態で挿通されている。
【0030】
3つの第1偏心部挿通孔14cは、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各第1偏心部挿通孔14cには、第1ころ軸受18aが介装された状態で各クランク軸10の第1偏心部10aがそれぞれ挿通されている。
【0031】
3つのシャフト部挿通孔14dは、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周りに周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔14dは、周方向において、3つの第1偏心部挿通孔14c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔14dには、対応するシャフト部4cが遊びを持った状態で挿通されている。
【0032】
第2揺動歯車16は、外筒2内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸10の第2偏心部10bに第2ころ軸受18bを介して取り付けられている。第1揺動歯車14と第2揺動歯車16は、第1偏心部10aと第2偏心部10bの配置に対応して軸方向に並んで設けられている。第2揺動歯車16は、各クランク軸10が回転して第2偏心部10bが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0033】
第2揺動歯車16は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有しており、第1揺動歯車14と同様の構成となっている。すなわち、第2揺動歯車16は、第2外歯16a、中央部貫通孔16b、複数(例えば3つ)の第2偏心部挿通孔16c及び複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔16dを有している。これらは、第1揺動歯車14の第1外歯14a、中央部貫通孔14b、複数の第1偏心部挿通孔14c及び複数のシャフト部挿通孔14dと同様の構造を有している。各第2偏心部挿通孔16cには、第2ころ軸受18bが介装された状態でクランク軸10の第2偏心部10bが挿通されている。
【0034】
各伝達歯車20は、入力ギア8aの回転を対応するクランク軸10に伝達するものである。各伝達歯車20は、対応するクランク軸10の軸本体12cにおける一端部に設けられた被嵌合部10cにそれぞれ外嵌されている。各伝達歯車20は、クランク軸10の回転軸と同じ軸回りにこのクランク軸10と一体的に回転する。各伝達歯車20は、入力ギア8aと噛み合う外歯20aを有している。
【0035】
ここで、外筒2及び揺動歯車14,16を構成する素材について説明する。
【0036】
外筒2は、第1揺動歯車14及び第2揺動歯車16の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されている。具体的には、外筒2は、アルミニウム合金製であり、外筒2を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kとなっている。これに対し、揺動歯車14,16は、鉄系材料で構成されている。例えば、揺動歯車14,16は、炭素含有量が0.7?1.0%の鋼製(高炭素鋼製)、あるいは炭素含有量が0.2%以下の鋼製(低炭素鋼製)としてもよく、この場合、揺動歯車14,16を構成する素材の線膨張係数は、10.8?11.0μ/K、あるいは11.6?11.7μ/Kとなる。さらに、これらの鉄系素材を焼入れ硬化させると、炭素含有量0.2%以下の場合に、線膨張係数は13.6μ/Kとなり、また炭素含有量0.7?1.0%の場合に、線膨張係数は12.0?12.5μ/Kとなる。なお、内歯ピン3についても、揺動歯車14,16と同じ素材で形成されていてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の歯車装置1では、揺動歯車14,16を構成する素材の線膨張係数が、外筒2を構成する素材の線膨張係数よりも小さい。したがって、歯車装置1の使用時に外筒2、キャリア4及び揺動歯車14,16が昇温したときに、外筒2が揺動歯車14,16よりも膨張する。このため、外筒2の内歯ピン3と揺動歯車14,16の外歯14a,16aとの間のすき間、すなわち、外筒2の内周面と揺動歯車14,16との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。したがって、揺動歯車14,16が昇温して膨張したとしても、揺動歯車14,16の歯面の面圧が高くなることを抑制することができ、揺動歯車14,16の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0038】
また本実施形態では、外筒2がアルミニウム合金製であり、揺動歯車14,16が鉄系材料で構成されているので、外筒2を構成する素材の線膨張係数と、揺動歯車14,16を構成する素材の線膨張係数との差を大きく取ることができる。このため、揺動歯車14,16の温度と外筒2の温度との温度差が大きくなるような使用環境においても、揺動歯車14,16の歯面の面圧が高くなることを抑制することができ、これにより、揺動歯車14,16の寿命が短くなることをより確実に抑制することができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、2つの揺動歯車14,16が設けられた構成としたが、これに限られるものではない。例えば、1つの揺動歯車が設けられる構成、又は3つ以上の揺動歯車が設けられる構成であってもよい。
【0040】
前記実施形態では、入力軸8がキャリア4の中央部に配設され、複数のクランク軸10が入力軸8の周囲に配設される構成としたがこれに限られるものではない。例えば、クランク軸10がキャリア4の中央部に配設されたセンタークランク式としてもよい。この場合、入力軸8がクランク軸10に取り付けられた伝達歯車20に噛み合うように設けられれば、入力軸8はどの位置に配設されていてもよい。
【0041】
前記実施形態では、外筒2がアルミニウム合金製である場合を例示したが、外筒2は、アルミニウム合金製に限られるものではない。例えば、外筒2及び揺動歯車14,16が何れも鉄系材料で構成されていてもよい。ただし、この場合でも、外筒2が、揺動歯車14,16の材質よりも大きな線膨張係数の材質で構成されている必要がある。例えば、外筒2を、炭素含有量が0.2%以下の鋼製(低炭素鋼製)で且つ焼入れ硬化されたものとすれば、線膨張係数が13.6μ/Kとなる。この場合、揺動歯車14,16が、炭素含有量が0.7?1.0%の鋼製(高炭素鋼製)とすることができ、この場合において、揺動歯車14,16を構成する素材を焼入れ硬化させたときの線膨張係数は、12.3?12.4μ/Kとなる。この場合において、内歯ピン3は、揺動歯車14,16と同じ素材で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 偏心揺動型歯車装置
2 外筒
3 内歯ピン
4 キャリア
6 主軸受
10 クランク軸
10a 第1偏心部
10b 第2偏心部
12a 第1クランク軸受
12b 第2クランク軸受
12c 軸本体
14 第1揺動歯車
14a 外歯
16 第2揺動歯車
16a 外歯
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、
前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、
前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、
前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0?23.5μ/Kであり、
前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7?1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7?1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0?12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動型歯車装置。
【請求項2】
前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されている請求項1に記載の偏心揺動型歯車装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-12 
出願番号 特願2016-76579(P2016-76579)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (F16H)
P 1 651・ 113- YAA (F16H)
P 1 651・ 851- YAA (F16H)
P 1 651・ 537- YAA (F16H)
P 1 651・ 853- YAA (F16H)
P 1 651・ 121- YAA (F16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 祐介高吉 統久  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6184546号(P6184546)
権利者 ナブテスコ株式会社
発明の名称 偏心揺動型歯車装置  
代理人 玉串 幸久  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 玉串 幸久  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小谷 悦司  
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