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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B22D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B22D |
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管理番号 | 1356798 |
異議申立番号 | 異議2018-700855 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-18 |
確定日 | 2019-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6314113号発明「鋳造製品の製造データ管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6314113号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第6314113号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6314113号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成25年8月8日を出願日とする特願2013-165577号の一部を平成27年6月25日に新たに特許出願したものであって、平成30年3月30日付けでその特許権の設定登録がされ、平成30年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後の、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年10月18日 :特許異議申立人岡林茂(以下、「異議申立 人」という。)による請求項1及び2に係 る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 3月27日付け:取消理由通知書 令和 元年 5月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 令和 元年 7月10日 :異議申立人による意見書の提出 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程」と記載されているのを、 「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程」と訂正する(下線部は訂正箇所を示す。以下同じ。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」と記載されているのを、 「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」と訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0007】に、 「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程」と記載されているのを、 「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程」と訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0007】に、 「前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」と記載されているのを、 「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」と訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に係る発明の鋳造用金属を「溶解」する際の溶解手段について、「鋳造用金属を電気炉で溶解」することという限定を付加し、また、請求項1に係る発明の溶湯を「出湯」する方法について、「溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。 次に、訂正事項1の「鋳造用金属を溶解」を「鋳造用金属を電気炉で溶解」とする訂正の新規事項の有無について検討すると、「明細書の段落【0022】に「溶湯製造工程30では砂型11のキャビティ内に流し込む溶湯を製造する。鋳造製品の製造工程において、溶湯も中間物である。溶湯製造工程30は、図2に示すように、計量工程、溶解工程、成分調整工程、及び出湯工程をこの順に実行する。計量工程では、電気炉で一度に溶解する各種鋳造用金属や添加剤等を計量する。溶解工程では電気炉で各種鋳造用金属等を溶解する。成分調整工程では電気炉内の溶湯の成分を調整する。出湯工程では電気炉内の溶湯を3回に分けて処理取鍋に出湯する。」と記載されていることから、当該訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1の「その溶湯を出湯する」を「その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する」とする訂正の新規事項の有無について検討すると、明細書の段落【0034】に「(4)実施例では、電気路内(当審注:「電気路内」は「電気炉内」の誤記であると解される。)の溶湯を3回に分けて注湯取鍋に出湯したが、3回に限らず複数回に分けて注湯取鍋に出湯してもよい。」と記載されている。 この記載事項に関して、明細書の段落【0025】に「注湯工程40では、図2に示すように、造型工程10を経て完成した砂型11に溶湯製造工程30で製造された溶湯を流し込む。つまり、処理取鍋から注湯取鍋に溶湯を移し、注湯取鍋内の溶湯を砂型11の湯口からキャビティ内に流し込む。」に記載されていることから、溶湯は、まず、「電気炉」から「処理取鍋」に注湯され、その後、「注湯取鍋」に移されるものである。 そうすると、段落【0034】の「3回に限らず複数回に分けて注湯取鍋に出湯してもよい」との記載は、「3回に限らず複数回に分けて処理取鍋に出湯してもよい」ことも包含することは明らかである。「電気炉内の溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯すること」は明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内であると解される。 したがって、訂正事項1の「その溶湯を出湯する」を「その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する」とする訂正は、新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項1は、発明特定事項を下位概念化するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1に係る発明の付与される「溶解シリアル番号」について、「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。 また、訂正事項2は、明細書の段落【0023】に「この溶湯製造工程30では、図3(C)に示すように、出湯工程において、溶解シリアル番号(S-1-1、S-1-2、S-1-3、S-2-1、S-2-2、S-2-3、・・・)を付与する。つまり、図1に示すように、溶解シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、溶解シリアル番号に第2データ取得工程において取得した出湯毎の溶湯の製造データを結び付けてデータベース1に登録する。なお、この溶解シリアル番号は、電気炉において1度に溶解される溶湯毎にS-1、S-2、…として、さらに、処理取鍋に3回に分けて出湯する毎に枝番(-1、-2、-3)を追加したものである。」と記載されていること、及び、明細書の段落【0034】に「(4)実施例では、電気路内の溶湯を3回に分けて注湯取鍋に出湯したが、3回に限らず複数回に分けて注湯取鍋に出湯してもよい。」と記載されていることから、上記(1)と同様の理由で、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。 さらに、訂正事項2は、発明特定事項を下位概念化するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1の「特許請求の範囲の請求項1に、『鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程』と記載されているのを、『鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程』と訂正する。」という訂正事項に伴って、明細書の段落【0007】の「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程」との記載を、「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程」との記載に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1と同様に新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項2の「特許請求の範囲の請求項1に、『前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、』と記載されているのを、『前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、』と訂正する。」との訂正事項に伴って、明細書の段落【0007】の「前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」との記載を、「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、」との記載に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項2と同様に新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.異議申立人の主張について 異議申立人は令和元年7月10日の意見書10ページ6ないし11行において、「しかし、複数回に分けて処理取鍋に出湯することについては記載がない。したがって、電気炉内の溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯することについて明細書のどこにも記載がないことから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合しないものであり、却下されるべきである。」旨主張する。 この点に関しては、上記2.(1)で検討したように、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、異議申立人の主張は理由がない。 4.訂正についてのまとめ したがって、本件訂正請求による訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。 第3.訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明は(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、 砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、 鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、 を備えており、 前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する ことを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。 【請求項2】 前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、 前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記製品シリアル番号と前記中子シリアル番号とを結びつけて前記データベースに登録して管理する ことを特徴とする請求項1記載の鋳造製品の製造データ管理方法。」 第4.取消理由通知に記載した取消理由について 1.取消理由の概要 (1)請求項1に係る発明は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)請求項2に係る発明は、甲1発明、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2.刊行物の記載 (1)刊行物 異議申立人が提出した甲号証は次のとおりである。 甲第1号証:浅田康史、外3名、「個体マーキングによる鋳鉄品質トレー サビリティの改善事例」、鋳造工学、公益社団法人日本鋳造 工学会、平成23年(2011年)、第83巻、第3号、 143ないし147ページ 甲第2号証:特開平8-187574号公報 甲第3号証:長坂悦敬、「鋳造トレーサビリティ・ソリューションによる 品質保証システムの開発」、素形材、一般財団法人素形材セ ンター、平成22年(2010年)、 Vol.51、No.2、24ないし30ページ 甲第4号証:特開2000-15395号公報 (2)刊行物の記載事項 ア.甲第1号証 (ア)143ページ左欄ないし右欄「1.はじめに」の11ないし18行 「全数管理を徹底し,生産条件および生産状態と個体管理を直結させたトレーサビリティ・システムが必要である. またトレーサビリティ・システムから収集されたデータを活用して,データ・マネジメント手法により真の不良原因を究明して,大幅な不良率低減活動につながるようにしたい. 新しい取り組み方法を従来の方法と比較して図1に示す.」 (イ)143ページ右欄「2.製造条件の自動計測システム」の1ないし7行 「ダクタイル鋳鉄の多数個取りを基本とする鋳鉄生型造型ラインに対して,製造条件自動計測システムと,各部品に識別Noを刻印するマーキングロボットを開発し,製品個体と製造/品質データとの紐付けが可能なトレーサビリティ・システムを構築した. まず,溶解?造型各工程の製造条件自動計測システムを開発した.図2に主要な計測項目を示す.」 そして、「図2 製造条件の主要自動計測項目」には次の項目が記載されている。 「1.溶解・出湯」工程では「出湯時刻」「出湯重量」「溶湯成分」 「2.球状化」工程では「球状化剤添加量」「同左添加率」「接種剤添加量」 「3.配湯・2次接種」工程では「配湯重量」「接種剤添加量」「溶湯成分」 「4.注湯」工程では「注湯温度」「フェーディング時間」「注湯作業者」 「5.混砂」工程では「CB値」「水分」「圧縮強度」 「6.造型」工程では「造型時刻」「上型圧縮率」「下型圧縮率」 (ウ)143ページ右欄「2.製造条件の自動計測システム」の10ないし13行 「溶解工程においては,従来バネ式クレーンスケールで読み取っていた出湯重量を,無線式クレーンスケールに変更し,デジタル数値の読み取りによる計量と,重量データの記録を可能とした(図3).」 (エ)144ページ左欄14行ないし右欄4行 「砂の特性値については,従来から定期的に計測している水分,温度等のデータが自動的に伝送,記録されるシステムを開発した.また,鋳型の造型条件については,造型機制御盤のシーケンサから必要なデータを取り出し,上・下型の砂圧縮率を求め,伝送,記録することにした.」 (オ)144ページ右欄ないし145ページ左欄「3.個体マーキングロボット」の6ないし19行 「マーキングするタイミングと方法を検討した結果,造型直後の鋳型表面にマーキングし,それを製品に転写する方法を採用することにした. 図9に開発したマーキングロボットの主仕様を示す.4軸の水平多間接ロボットに,マーキングヘッドを持たせる構造とした.また,多数個取りの場合も造型ラインのタクトタイム以下でマーキングできるマーキング速度を確保した. 造型直後の鋳型表面へのマーキングパターンは砂の崩れの少ない,Φ1程度ピンで成形したドットパターンとした. 製品識別番号の桁数は999までマーキングできるよう3桁とし,4ケのドットで1桁を構成することにより,2進法のパターンで0?9の数字と対応させた.」 (カ)145ページ左欄「4.トレーサビリティの確保」の1及び2行 「トレーサビリティを確保するためには,マーキングした部品とその製造条件を紐付けする必要がある.」 (キ)145ページ左欄ないし右欄「4.1 製造条件データの一元化」の1ないし6行 「管理すべき製造条件データに対して,その測定年月日,直区分と予め設定した製造条件キーワードを必須構成項目とした.例えば,球状化処理工程であれば,球状化トリベNoを製造条件キーワードに設定する.すなわち,球状化トリベNoを入力すれば,球状化処理状件については全て検索できるデータ構成にしている.」 (ク)145ページ右欄「4.2 部品と製造条件の紐付け法」の1ないし12行 「溶湯関連データと鋳型関連データの接点である注湯工程実績表のデータを利用し,部品と製造条件を紐付けする. すなわち,新しい品番を生産開始する時には,マーキングロボットはシリアルNo.1からマーキングを開始し,注湯ラインに到達すると,注湯枠No.1とカウントされたデータが注湯実績表に記録される. 前述の製造条件キーワードにより,注湯枠No.1の製造条件は検索が可能になるので,シリアルNo.1部品の製造条件を特定することが可能となる.以上の考え方を本研究対象とした造型ラインのレイアウト図に示したものが図11である.」 (ケ)145ページ右欄「図11 部品シリアルNoと製造条件データの紐付け」 ![]() ここで、「新しい品番スタート」に関して、以下の事項が看取できる(なお、図面中の丸付き数字は()であらわす。)。 「1.造型機」において「(1)枠目から造型データ記録開始」することにより、「造型枠順」を介して「(5)造型条件、(6)砂特性データ」が紐付けされること、 「2.マーキングロボット」において「シリアルNo(1)から刻印開始」することにより、「注湯枠順」を介して「(4)注湯条件」が紐付けされ、「(4)注湯条件」には、「配湯(注湯)トリベNo」が含まれること、 「3.注湯」に伴い「(1)枠目から注湯記録開始」することにより、「配湯トリベNo」を製造条件キーワードとして「(3)、(2)、(1)溶湯条件」が紐付けされ、「(1)溶解条件」には、「溶解No」が含まれること。 (コ)145ページ右欄ないし146ページ左欄「5.1 データ・マネジメント手法」の1?5行 「鋳造工場では,図12のように,ひとつのプロセス(工程)だけを見ていても不十分で,工程がつながっていることを鑑み,製品1個ずつ,その製品の生まれの履歴をすべて把握し,プロセス連鎖の中での『ゆらぎ』が一定の管理限界の中に入るように管理していかなければならない.」 (サ)146ページ左欄「5.2 データ・マネジメントの実施事例」の3ないし7行 「本トレーサビリティ・システムにより,網羅的に計測,一元化した製造データに,生産計画データ,品質データを加え,データベース化した(図13).データベース内では,個々の製品はその製造/品質データと紐付け可能になっている.」 (シ)146ページ左欄「図13 データベース構成」 ![]() ここで、「1-1球状化工程」「1-2配湯工程」「1-3注湯工程」「1-4砂データ」「1-5造型工程」の各製造条件データが記載されており、「1-1球状化工程」には「(2)溶解No」が示され、「1-2配湯工程」には「(1)トリベNo」が示され、「1-3注湯工程」には「(9)トリべNo」及び【鋳枠毎データ】として「(2)注湯No」が示され、「1-5造型工程」には「(2)造型No」が示されている。 (ス)146ページ右欄の8ないし10行 「アウトプットデータは判別分析が出来る様,左端列に部品識別No,中央にその部品の製造条件,右端列に良,不良の品質情報で構成されている.」 (セ)146ページ左欄「図14 判別分析用データの自動アウトプット例」 ![]() ここでは、生産日、直データ、部品データ、元湯データ、球状化処理データ、注湯処理データ、注湯データ、砂データ、造型データが記載されている。 図14中に貼付された「型番:6ケ/枠の区別」として示された配置図中のN?Rの記号と、同じく図14中に白地で四角いテキスト枠として重ね表示された説明文、及び、図表中の部品データの記載を総合すると、N、O、P、T、S、Rの各型番の製造データを鋳枠ごとに同一の「部品No」として記録することが、看取できる。 以上の記載によれば、以下の事項が認識できる。 (ソ)上記(ア)、(イ)及び(サ)から「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システム」が認識できる。 (タ)上記(イ)、(エ)及び(シ)から、「混砂と造型において、CB値、水分、圧縮強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する」ことが認識できる。 (チ)上記(イ)から、ダクタイル鋳鉄の多数個取りを基本とする鋳鉄生型造型ラインに係るものであることが理解できるから、上記(ア)ないし(ウ)及び(シ)から、「鋳鉄の溶湯を製造する溶解、出湯、球状化、配湯、2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する」ことが認識できる。 (ツ)上記(ク)の注湯枠No.1と製品シリアル番号No.1との関係から、「部品シリアルNo」と「枠順」が同一の番号とされることが理解できる。また、上記(キ)ないし(ケ)を参照することにより、造型工程では、図11(5)造型条件の造型枠順が製造条件キーワードに設定されることが理解できる。したがって、上記(オ)、(キ)、(ケ)及び(シ)から、「造型直後の鋳型表面に製品識別番号(以下「部品シリアルNo」という。)をマーキングして製品に転写し、データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするとき製造条件キーワードを設定しておく」こと、及び、「鋳型関連データである(5)造型条件は造型枠順に紐付けする」ことが認識できる。 (テ)上記(キ)ないし(ケ)を併せて参照することにより、注湯工程では注湯枠順が製造条件キーワードに設定されることが理解できるから、上記(ク)、(ケ)、(サ)及び(シ)から、「溶湯関連データは溶解No及び配湯トリベNoに紐付けし、その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付けし、これにより各製造条件キーワードを枠順に紐付けすることで、部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化する」ことが認識できる。 したがって、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システムであって、 混砂と造型において、CB値、水分、圧縮強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する工程と、 鋳鉄の溶湯を製造する溶解、出湯、球状化、配湯、2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する工程と、 を備えており、 造型直後の鋳型表面に部品シリアルNoをマーキングして製品に転写し、 データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするとき製造条件キーワードを設定しておき、鋳型関連データである(5)造型条件は造型枠順に紐付けし、溶湯関連データは溶解No及び配湯トリベNoに紐付けし、 その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付けし、これにより各製造条件キーワードを枠順に紐付けすることで部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化したトレーサビリティ・システム。」 ここで、上記「トレーサビリティ・システム」に係る甲1発明は、主要な発明特定事項を工程により特定したものであるから、方法発明である。 イ.甲第2号証 (ア)「【0006】6は、注湯ゾーンに設置した注湯台車である。注湯台車6は、取鍋7を傾転させながら取鍋7内の溶湯を鋳枠に注湯する装置であり、注湯ゾーンに沿って移動する。8は注湯台車6に設置した注湯実績収集装置である。注湯実績収集装置8は、マイクロコンピュータ、あるいはパーソナルコンピュータから構成され、これには鋳枠検出センサS1,S2が接続されている。2個のセンサS1,S2の取り付け間隔は、鋳枠と鋳枠の間隙P(図2に示す)の幅より小さくなるよう注湯台車6に取り付ける。さらに注湯台車6には、注湯台車6の可動範囲内に設定した基準位置、図1の例では鋳型造型機1の位置から取鍋7の中心までの既知の距離(8鋳型分進行した位置)で働くように設けてある基準センサ12を作動させるための検出片6aを取り付けてある。」 (イ)「【0008】配湯番号管理装置11は、保持炉10より注湯台車6に配湯する溶湯に追い番(以下配湯番号)を付けて管理するためのものであり、配湯番号は作業当日の最初の配湯を1番として、配湯が行われる毎にこれを更新し、管理コンピュータ9に伝送する。 【0009】次に、本発明の作用について説明する。まず、管理コンピュータ9は、1日の作業開始前に上位コンピュータ(図示せず)から1日分の鋳造作業指示データを受信し、外部記憶装置9aに登録するとともに、図4に示すように、このデータをCRT9aに表示する。また、管理コンピュータ9は造型、注湯のトラッキング管理、実績集計のため図5に示す全鋳枠の管理テーブルを作成する。」 (ウ)【図5】 ![]() ウ.甲第3号証 図6 注湯実績データの出力例 ![]() エ.甲第4号証 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は鋳型刻印方法及び鋳造ラインに関する。本発明は、たとえば、シェル中子やコールド中子等の中子、あるいは、主型に、文字、図形、模様等といった識別符号を彫り込む際に利用できる。」 (イ)「【0011】本発明に係る鋳造ラインに用いられるレーザビーム刻印装置は、中子にレーザビームを照射して、中子同士を識別する識別符号を各中子に個別に彫り込むものである。溶湯供給装置は、識別符号が彫り込まれた中子をセットした主型の成形キャビティに溶湯を供給して鋳造を行うものである。 【0012】記憶手段は、中子の識別符号と、その識別符号が彫り込まれた中子がセットされた各主型に対する鋳造条件とを記憶できるものであり、各種のメモリを採用できる。外部メモリでも内部メモリでも良い。識別番号入力手段は、各中子の識別符号を記憶手段に入力するものであり、作業者が入力しても良いし、光学センサなどの読取手段を介してコンピュータから記憶手段に直接入力しても良い。鋳造条件入力手段は、識別符号が彫り込まれた各中子がセットされた各主型に対する鋳造条件を記憶手段に入力するものであり、作業者が入力しても良いし、センサなどからの信号をコンピュータから記憶手段に直接入力しても良い。」 (ウ) 【表5】 ![]() (エ)「【0044】従って、中子の識別符号と、その識別符号が彫り込まれた中子がセットされた各主型に対する鋳造条件とを記憶したデータベースを作成できる。即ち、中子と鋳造条件とが1:1で対応したデータベースを作成できる。よって鋳物に欠陥が発生したときであっても、その中子の識別符号が転写された識別符号をもつ鋳物と、その鋳物の鋳造条件とを正確に照合できる。故に、その照合結果を操業にフィードバックすれば、鋳物の一層の高品質化に貢献できる。」 第5.当審の判断 1.取消理由通知に記載した取消理由について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)引用発明の「鋳鉄生型造型ライン」における「個々の製品」は、本件発明1の「鋳造製品」であることは明らかである。 甲1発明の「製造/品質データ」は、本件発明1の「各種製造データ」に相当する。 甲1発明の「データベース化」することは、本件発明1の「データベースに登録して管理する」ことに他ならず、甲1発明の「トレーサビリティ・システム」と本件発明1の「管理方法」は実質的な差異はない。 してみると、甲1発明の「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システム」は、本件発明1の「鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法」に相当する。 (イ)甲1発明の「混砂と造型」が、本件発明1の「造型工程」に相当し、甲1発明の「CB値、水分、圧縮強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧緒率のデータを伝送、記録する工程」が、本件発明1の「砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に相当する。 してみると、甲1発明の「混砂と造型において、CB値、水分、圧縮強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する工程」は、本件発明1の「砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に相当する。 (ウ)甲1発明の「鋳鉄」は、本件発明1の「鋳造用金属」に相当する。 また、甲1発明の「配湯」工程は、「配湯」は「配湯トリベ」になされるものであって、「配湯トリベ」は、本件発明1の「処理取鍋」に相当する。 したがって、甲1発明の「鋳鉄の溶湯を製造する溶解、出湯、球状化、配湯、2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する工程」と、本件発明1の「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」とは、「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」という点で一致する。 (エ)甲1発明の「鋳型関連データである(5)造型条件」は、本件発明1の「砂型の製造データ」に相当し、甲1発明の「造型枠順」は、図11の【注湯ライン】上に丸数字で示されるようにシリアル番号であって、本件発明1の「造型シリアル番号」に相当すること、及び、甲1発明では「鋳型関連データである(5)造型条件は造型枠順に紐付け」していることから、造型枠順を検索条件キーワードとして紐づけて鋳型関連データをデータベースに登録して管理するのが明らかである。したがって、甲1発明の「造型直後の鋳型表面に部品シリアルNoをマーキングして製品に転写し、データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするとき製造条件キーワードを設定しておき、鋳型関連データである(5)造型条件は造型枠順に紐付け」することは、本件発明1の「前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録」することに相当する。 (オ)甲1発明の「溶湯関連データ」は、本件発明1の「溶湯の製造データ」に相当し、甲1発明の「部品シリアルNo」は、本件発明1の「製品シリアル番号」に相当する。 また、甲1発明の「配湯トリベNo」は、上記第4.2.(2)ア.(ケ)で部品シリアルNoに対応付けられる注湯条件に対応付けられており、製造条件キーワードであることから、本件発明1の「溶解シリアル番号」に相当する。 さらに、甲1発明の「溶湯」は、配湯トリベNoが付与される配湯トリベに分けて出湯されるものであることから、甲1発明の「溶湯関連データは」「配湯トリベNoに紐付けし、その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付し、これにより各製造条件キーワードを枠順に紐付けすることで部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化した」ことと、本件発明1の「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する」こととは、「処理取鍋に分けて出湯する毎に溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する」ことという点で一致する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致している。 「鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、 砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、 鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、 を備えており、 前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記処理取鍋に分けて出湯する毎に溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する 鋳造製品の製造データ管理方法。」 そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点> 本件発明1では、「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得」し、「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与」するのに対して、甲1発明では、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を配湯トリベ(本件発明1の「処理取鍋」に相当。)に出湯するものの、鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造するものではなく、配湯トリベNo(本件発明1の「溶解シリアル番号」に相当。)が、電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記配湯トリベに分けて出湯する毎に枝番を追加したものではない点。 イ.判断 甲第1号証には、「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得」し、「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与」することは記載も示唆もない。 また、甲第2ないし4号証のいずれにも「鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得」し、「前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与」することは記載も示唆もない。 そして、そもそも、甲第1号証は、鋳造用金属がどのような炉で溶解されるかが不明であって、炉からの出湯を複数回に分けるかどうかも不明である。したがって、出湯毎に溶湯を管理するという課題もないから、それぞれの出湯についてシリアル番号を付与する必要性もない。 したがって、本件発明1のように、積極的に付与したシリアル番号に、更に枝番を追加することが甲1発明から当業者が適宜なし得る設計的事項であるとはいえない。 よって、相違点に係る本件発明1の構成については、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項から、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 ウ.異議申立人の主張について 異議申立人は令和元年7月10日の意見書9ページ6ないし11行において、「また、『枝番を追加』してシリアル番号を形成することに関しては、例えば、甲第3号証の図6のトリベNo.に『ACE-1』、『ACE-2』・・・『ACE-14』という記載がある。したがって、溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に、処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、出湯毎の溶湯の製造データを管理することは、甲第1号証及び甲第3号証に記載の発明に接した当業者にとって、十分に想到し得る事項にすぎない。」旨主張する。 この点について検討すると、「『ACE-1』、『ACE-2』・・・『ACE-14』」なる番号は、「ACE」である固定された符号にシリアル番号を追加したものにすぎないから、溶湯毎に割り当てられたシリアル番号にさらにシリアル番号となる枝番を追加した番号であるとはいえない。 そうすると、甲1発明に甲第3号証の記載を適用しても、相違点に係る本件発明1の発明特定事項とはならない。 したがって、異議申立人の主張は理由がない。 エ.まとめ よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を直接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許法第36条第6項第1号 ア.申立理由の概要 異議申立人は、特許異議申立書31ページ15ないし18行において、「すなわち、本件特許においては、明細書に記載されたタイミング以外のタイミングでは、明細書記載の効果を奏することができないものであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないものである。」旨主張している。 イ.当審の判断 この点について検討すると、請求項1には、溶解シリアル番号をデータベースに登録するタイミング、及び溶解シリアル番号を造型シリアル番号と結び付けてデータベースに登録するタイミングについては記載されていない。 しかしながら、溶解シリアル番号は、電気炉から処理取鍋に出湯される度に付与されるから、それよりも前にデータベースに登録することができないことは明らかである。 また、溶解シリアル番号は溶湯に関する番号であり、造型シリアル番号は砂型に関する番号であるから、溶解シリアル番号と造型シリアル番号との関連付け(結び付け)は、溶湯を砂型に注湯する際に確定し、それよりも前に溶解シリアル番号と造型シリアル番号とを関連付けることができないことは明らかである。 さらに、溶解シリアル番号をデータベースに登録した後でなければ、溶解シリアル番号と造型シリアル番号との関連付けをデータベースに登録することができないことも明らかである。 そうすると、溶解シリアル番号のデータベースへの登録は、電気炉から処理取鍋に出湯される後であり、かつ、溶湯を砂型に注湯する前のタイミングであり、溶解シリアル番号と造型シリアル番号との関連付けの登録は、溶湯を砂型に注湯する後のタイミングであることは、当業者であれば当然に理解できることにすぎず、特許請求の範囲にそのようなタイミングを記載するまでもないから、異議申立人の主張は理由がない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 鋳造製品の製造データ管理方法 【技術分野】 【0001】 本発明は鋳造製品の製造データ管理方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 特許文献1は従来の鋳造製品である鋳鉄管の製造履歴等の管理方法を開示している。この鋳鉄管の製造履歴等の管理方法では、鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する中子毎に管理番号を形成する凹部を刻印する。この刻印された中子を使用することによって、1本毎に管理番号が付された鋳鉄管を製造する。そして、管理番号毎に鋳鉄管の製造履歴データ等を保存して管理を行う。この管理方法によれば、鋳鉄管1本毎にその製造履歴等を把握することができ、鋳鉄管の信頼性及び安全性を確保することができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2012-135772号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、特許文献1の鋳鉄管の製造履歴等の管理方法には管理番号毎に保存して管理する製造履歴データの内容が開示されていない。また、この鋳鉄管は高速回転する金型の内側に溶湯を流し込んで遠心鋳造される。この金型は、鋳造品を取り出す脱型工程時に砂型のように崩してしまうものではなく、繰り返し使用される。つまり、同一形状の鋳鉄管であれば同じ金型を利用して製造される。このため、鋳鉄管1本毎に鋳造の際に利用した金型が相違するものではない。また、鋳鉄管が完成した後であっても金型は存在する。このため、鋳鉄管の品質に不具合が生じれば金型を検証することができる。このように、この鋳鉄管の製造履歴等の管理方法において、鋳鉄管1本毎に金型に関するデータを保存して管理する有用性が乏しい。 【0005】 一方、砂型を利用して鋳造製品を鋳造した場合、解枠時に砂型を崩してしまうため、鋳造製品が完成した後では砂型が存在せず、そのものを検証することができない。また、鋳造製品の製造工程における中間物の中には、砂型以外にも鋳造製品が完成した後に、そのものを検証できないもの(例えば、溶湯、中子等)がある。 【0006】 本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を鋳造製品毎に検証することができる鋳造製品の製造データ管理方法を提供することを解決すべき課題としている。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本願発明の鋳造製品の製造データ管理方法は、 鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、 砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、 鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、 を備えており、 前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する ことを特徴とする。 【0008】 鋳造製品の製造工程において、砂型及び溶湯は中間物である。砂型及び溶湯の状態は鋳造製品の品質に大きな影響を与える。しかし、砂型は解枠時に崩されてしまう。このため、鋳造製品が完成した後に砂型を直接的に検証することができない。また、溶湯も鋳造製品が完成した後に直接的に検証することができない。そこで、この鋳造製品の製造データ管理方法は、第1データ取得工程において取得した造型工程における砂型の製造データ、及び第2データ取得工程において取得した溶湯製造工程における溶湯の製造データを対応する各鋳造製品に関連付けてデータベースに登録し、管理する。これによって、鋳造製品が完成した後であっても、データベースに登録した各種製造データから、その鋳造製品を製造した際の砂型及び溶湯の検証を行うことができる。なお、本発明において、「関連付け」とは、データベースにアクセスすることによって、鋳造製品から各種製造データを特定することができる状態、かつ、各種製造データから鋳造製品を特定することができる状態にすることをいう。 【0009】 したがって、本発明の鋳造製品の製造データ管理方法は、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を検証することができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】実施例の鋳造製品の製造データ管理方法を具体化した管理システムの概略図である。 【図2】実施例の鋳造製品の製造工程を示すフロー図である。 【図3】実施例の鋳造製品の製造工程において、(A)は中子製造工程において中子シリアル番号を付与するタイミングを示し、(B)は造型工程において造型シリアル番号及び製品シリアル番号を付与するタイミングを示し、(C)は溶湯製造工程において溶解シリアル番号を付与するタイミングを示す。 【図4】実施例の砂型を示す模式図であって、(A)は抜型工程後の上型及び下型を示し、(B)は下型のキャビティ内に中子を収めた状態を示し、(C)はキャビティ内に中子は配置して上型と下型とを組み合わせた状態を示す。 【図5】実施例において、各シリアル番号を結び付けるタイミングを示すフロー図である。 【発明を実施するための形態】 【0011】 本発明の鋳造製品の製造データ管理方法を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。 【0012】 <実施例> 実施例の鋳造製品の製造データ管理方法は、図1に示すように、製造データ管理システムのデータベース1に各種製造データを登録して管理するものである。このデータベース1は、鋳造製品の製造工程において、各種計測器及びセンサーからの自動入力、又はタッチパネルを使用した作業者の手動入力によって、各種製造データが登録される。また、このデータベース1はネットワークを介して複数のコンピュータ2からアクセスすることができる。 【0013】 鋳造製品の製造工程は、図2に示すように、造型工程10、中子製造工程20、溶湯製造工程30、注湯工程40、成形工程50、脱型工程60、及び仕上げ工程70を備えている。 【0014】 造型工程10では砂型11(図4(C)参照)を製造する。鋳造製品の製造工程において、砂型11は中間物である。造型工程10は、混練工程、砂入れ工程、硬化工程、抜型工程、中子収め工程、及び枠合わせ工程をこの順に実行する。混練工程では樹脂及び硬化剤を添加した鋳物砂13を混練する。砂入れ工程では同一形状の2個の鋳造模型(図示せず)を並列に配置した1個の鋳枠12内に混練した鋳物砂13を投入する。硬化工程では鋳枠12内に投入した鋳物砂13を硬化させる。抜型工程では鋳造模型を鋳枠12から抜き取る。このようにして、上型11A及び下型11Bが形成される(図4(A)参照)。上型11A及び下型11Bは同一形状のキャビティ14A、14Bが2個ずつ並列状態で形成さている。上型11Aは、各キャビティ14Aに連通した湯口15及び図示しないガス抜き孔が貫設されている。中子収め工程では下型11Bの2個のキャビティ14Bの夫々に後述する中子製造工程20で製造した中子21を1個ずつ配置する(図4(B)参照)。枠合わせ工程では中子21を配置した下型11Bの上に上型11Aを組み合わせる(図4(C)参照)。このようにして、キャビティ14A、14B内に中子21を配置した砂型11が完成する。この砂型11は1個で2個の鋳造品を鋳造することができる。 【0015】 この造型工程10では、図3(B)に示すように、抜型工程において、砂型11毎、より詳しくは、組み合わされる上型11A及び下型11Bの1組毎に造型シリアル番号(ZB-1、ZB-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、造型シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、抜型工程までに第1データ取得工程において取得した砂型11毎の製造データを造型シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。 【0016】 第1データ取得工程は、造型工程10において、砂型11毎(上型11A及び下型11Bの1組毎)に、鋳物砂13に添加した樹脂及び硬化剤の添加量、混練工程での混練砂の温度、鋳造模型の使用回数、及び硬化工程における鋳物砂13の硬化時間等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。また、第1データ取得工程は、中子収め工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。この際に入力されるデータは、キャビティ14Bに対して中子21がきつかった、中子21が折れた等の情報である。中子収め工程は抜型工程より後に実行されるため、中子収め工程において手動入力されたデータはその際に造型シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。 【0017】 さらに、造型工程10では、図3(B)に示すように、中子収め工程において、鋳造される鋳造製品毎に対応する製品シリアル番号(CB-1、CB-2…)を付与する。つまり、図1に示すように、製品シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。なお、この時点で、鋳造製品は存在しない。このため、1個の鋳造品が成形されるキャビティ14A、14B毎に製品シリアル番号を付すことになる。また、上型11A又は下型11Bの所定の部位のキャビティ面に製品シリアル番号を付ける。これによって、鋳造製品に製品シリアル番号を鋳出し文字として形成する。 【0018】 また、中子収め工程において、図5に示すように、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、後述する中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。このように、中子収め工程において、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録することによって、鋳造製品毎に砂型11及び中子21の各種製造データを間違えなく確実に関連付けることができる。 【0019】 中子製造工程20では中子21を製造する。鋳造製品の製造工程において、中子21も中間物である。中子製造工程20は、図2に示すように、焼成工程、バリ取り工程、組立工程、塗装乾燥工程、及び検査工程をこの順に実行する。焼成工程では、樹脂及び硬化剤を添加した鋳物砂13を混練し、それを金型内に入れて所定の形状(中子21の中間体)に成形し、焼成する。バリ取り工程では中子21の中間体にできたバリを取り除く。組立工程では、形状の違う複数の中子21の中間体を組み立てることによって、中子21を形成する。塗装乾燥工程では耐熱性の塗布剤を中子21に塗装し乾燥させる。検査工程では作業員の目視によって中子21の良否を検査する。このようにして、砂型11のキャビティ内に配置する中子21が完成する。 【0020】 この中子製造工程20では、図3(A)に示すように、焼成工程において、中子21毎に中子シリアル番号(N-1、N-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、中子シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、中子21毎の焼成温度を第3データ取得工程において取得し、中子シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。また、中子シリアル番号を記したテープを各中子21に貼付ける。 【0021】 第3データ取得工程は、中子製造工程20において、中子21毎に焼成工程における焼成温度、塗装乾燥工程における塗型濃度、及び塗装乾燥工程における乾燥温度等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。塗型濃度とは中子21に塗装する泥状の塗布剤の濃度(分散値)である。また、第3データ取得工程は、中子製造工程20の検査工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。塗装乾燥工程及び検査工程はバリ取り工程より後に実行されるため、これら工程において取得された各種データは、データを取得する際に中子シリアル番号に結び付けられてデータベースに登録される。 【0022】 溶湯製造工程30では砂型11のキャビティ内に流し込む溶湯を製造する。鋳造製品の製造工程において、溶湯も中間物である。溶湯製造工程30は、図2に示すように、計量工程、溶解工程、成分調整工程、及び出湯工程をこの順に実行する。計量工程では、電気炉で一度に溶解する各種鋳造用金属や添加剤等を計量する。溶解工程では電気炉で各種鋳造用金属等を溶解する。成分調整工程では電気炉内の溶湯の成分を調整する。出湯工程では電気炉内の溶湯を3回に分けて処理取鍋に出湯する。 【0023】 この溶湯製造工程30では、図3(C)に示すように、出湯工程において、溶解シリアル番号(S-1-1、S-1-2、S-1-3、S-2-1、S-2-2、S-2-3、…)を付与する。つまり、図1に示すように、溶解シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、溶解シリアル番号に第2データ取得工程において取得した出湯毎の溶湯の製造データを結び付けてデータベース1に登録する。なお、この溶解シリアル番号は、電気炉において1度に溶解される溶湯毎にS-1、S-2、…として、さらに、処理取鍋に3回に分けて出湯する毎に枝番(-1、-2、-3)を追加したものである。 【0024】 第2データ取得工程は、溶湯製造工程30において、出湯毎に電気炉内の溶湯温度、溶湯重量、各種鋳造用金属の配合量、添加材の配合量、及び成分値等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。また、第2データ取得工程は、出湯工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。 【0025】 注湯工程40では、図2に示すように、造型工程10を経て完成した砂型11に溶湯製造工程30で製造された溶湯を流し込む。つまり、処理取鍋から注湯取鍋に溶湯を移し、注湯取鍋内の溶湯を砂型11の湯口からキャビティ内に流し込む。この際、注湯取鍋内の溶湯を3個の砂型11に分けて流し込む。注湯工程40において、図5に示すように、造型シリアル番号と溶解シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。これによって、製品シリアル番号、造型シリアル番号、中子シリアル番号、及び溶解シリアル番号がデータベース1上で結び付けられることになる。このように、注湯工程40において、造型シリアル番号と溶解シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録することによって、鋳造製品毎に溶湯の製造データを間違えなく確実に関連付けることができる。 【0026】 成形工程50では、砂型11に流し込まれた溶湯を砂型11内で徐々に冷却(徐冷)し、固化させる。これによって、砂型11内で鋳造品が成形される。この際、冷却に要した時間が計測器及びセンサーを利用して自動取得され、造型シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。 【0027】 脱型工程60では砂型11から鋳造品を取り出す。この脱型工程60は、解枠工程、枠外徐冷工程、外部ショット工程、及び一次検査工程をこの順に実行する。解枠工程では砂型11を崩して鋳造品を取り出す。枠外徐冷工程では砂型11から取り出した鋳造品を徐々に冷却する。外部ショット工程では鋳造品の外表面に付着した鋳物砂13をショットブラストによって除去する。一次検査工程では作業員の目視によって鋳造品の外表面の良否を検査する。この際、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力し、製品シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。 【0028】 仕上げ工程70では鋳造品を仕上げ加工して鋳造製品とし、出荷する。仕上げ工程70は、バリンダ工程、内部ショット工程、二次検査工程、及びフライス工程をこの順に実行する。バリンダ工程では鋳造品に形成されたバリを除去する。内部ショット工程では鋳造品の内表面に付着した鋳物砂13をショットブラストによって除去する。二次検査工程では作業員の目視によって鋳造品の良否を最終検査する。この際、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力し、製品シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。フライス工程では鋳造品の所定部位を切削する。このようにして、鋳造製品が完成し、出荷される。 【0029】 このように、この鋳造製品の製造データ管理方法では、製品シリアル番号、造型シリアル番号、中子シリアル番号、及び溶解シリアル番号がデータベース1上で結び付けられている。これによって、第1データ取得工程において取得した造型工程10における砂型11毎の製造データ、第2データ取得工程において取得した溶湯製造工程30における出湯毎の溶湯の製造データ、及び第3データ取得工程において取得した中子製造工程20における中子21毎の製造データ等の鋳造製品の各種製造データが対応する鋳造製品毎に関連付けられている。 【0030】 このため、鋳造製品が完成した後であっても、データベース1にネットワークを介してアクセスすることができるコンピュータ2を利用して、鋳造製品に付された製品シリアル番号からその鋳造製品の各種製造データを呼び出すことができる。これによって、その鋳造製品を製造した際の砂型11、溶湯、及び中子21の検証を行うことができる。また、データベース1にネットワークを介してアクセスすることができるコンピュータ2を利用して、中子シリアル番号、造型シリアル番号、溶解シリアル番号から製品シリアル番号を呼び出すことができる。これによって、ある工程で不具合が起こる状態で製造を続けてしまった場合等、対応する鋳造製品も特定することができる。 【0031】 したがって、実施例の鋳造製品の製造データ管理方法は、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を検証することができる。 【0032】 また、この鋳造製品の製造データ管理方法では、砂型11毎にその製造データを取得し、出湯毎に溶湯の製造データを取得し、中子21毎にその製造データを取得して、鋳造製品毎に関連付けている。このため、鋳造製品のロット毎ではなく、鋳造製品の1個ずつに固有の各種製造データを特定することができる。よって、鋳造製品の品質に影響する要因を適確に把握することができる。 【0033】 また、この鋳造製品の製造データ管理方法では、各種シリアル番号を付与して、鋳造製品毎にそれらシリアル番号を結び付けている。これによって、鋳造製品毎の各種製造データの関連付けを容易に行うことができる。 【0034】 本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。 (1)実施例では、中子をキャビティ内に配置して鋳造する鋳造製品の製造データ管理方法を説明したが、中子を使用せずに鋳造する鋳造製品にこの鋳造製品の製造データ管理方法を適用してもよい。 (2)実施例で示した各種製造データ以外の製造データをデータベースに登録して、管理してもよい。 (3)実施例では、1個の砂型で2個の鋳造品を鋳造することができたが、1個の砂型で1個又は3個以上の鋳造品を鋳造してもよい。 (4)実施例では、電気路内の溶湯を3回に分けて注湯取鍋に出湯したが、3回に限らず複数回に分けて注湯取鍋に出湯してもよい。 (5)各種シリアル番号を付与するタイミングは実施例で示したタイミング以外であってもよい。 (6)各種シリアル番号の形式は実施例で示した以外の形式であってもよい。 【符号の説明】 【0035】 1…データベース 10…造型工程 11…砂型 20…中子製造工程 21…中子 30…溶湯製造工程 40…注湯工程 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、 砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、 鋳造用金属を電気炉で溶解して溶湯を製造し、その溶湯を複数回に分けて処理取鍋に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、 を備えており、 前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記電気炉において1度に溶解される溶湯毎に割り当てられたシリアル番号に前記処理取鍋に複数回に分けて出湯する毎に枝番を追加した溶解シリアル番号を付与し、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された前記溶解シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号、前記造型シリアル番号、及び前記溶解シリアル番号を結びつけて前記データベースに登録して管理する ことを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。 【請求項2】 前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、 前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付けて前記データベースに登録し、 前記製品シリアル番号と前記中子シリアル番号とを結びつけて前記データベースに登録して管理する ことを特徴とする請求項1記載の鋳造製品の製造データ管理方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-09-10 |
出願番号 | 特願2015-127455(P2015-127455) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(B22D)
P 1 651・ 121- YAA (B22D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 酒井 英夫 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 栗田 雅弘 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 特許第6314113号(P6314113) |
権利者 | KYB株式会社 |
発明の名称 | 鋳造製品の製造データ管理方法 |
代理人 | 特許業務法人グランダム特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人グランダム特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |