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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F16H
審判 一部申し立て 2項進歩性  F16H
管理番号 1356800
異議申立番号 異議2018-700813  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-05 
確定日 2019-09-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6310764号発明「歯車伝動装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6310764号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、5について訂正することを認める。 特許第6310764号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6310764号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成26年4月30日に特許出願され、平成30年3月23日にその特許権の設定登録がされ、同年4月11日に特許掲載公報の発行がされ、その後、同年10月5日にその特許について、特許異議申立人金澤毅(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年12月12日付けで取消理由が通知され、平成31年2月15日に特許権者により意見書が提出され、同年3月18日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、その指定期間内である令和元年5月16日に特許権者から意見書及び訂正の請求があり、同年7月16日に異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和元年5月16日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正請求1
特許請求の範囲の請求項1に「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さい歯車伝動装置。」とあるのを、「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる請求項1または2に記載の歯車伝動装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる請求項1または2に記載の歯車伝動装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、外歯歯車の歯面の表面粗さが0.2μm以上0.5μm以下であり、前記溝の表面の表面粗さが0.3μm未満であり、円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。」と記載し、新たに請求項5とする。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無及び一群の請求項
上記訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大き」いことに関して「円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる」との事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
また、明細書の段落【0017】に「円柱状部材の周面の筋目の方向が、挿入溝の表面の筋目の方向と異なっていてもよい。筋目の方向が異なると、円柱状部材と挿入溝の間の摩擦係数が小さくなり、円柱状部材が挿入溝に対して滑り易くなる。」と記載され、段落【0030】に「例えば、円柱状の部品(円柱状部材)の表面に形成された筋目の方向が平板の表面に形成された筋目の方向と異なる場合、円柱状部材が平板の表面を転がるときに、円柱状部材と平板の接触面積が低減し、両者の間に滑りが生じ易くなる。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、円柱状部材と溝の間の摩擦係数を小さくする具体的手段を限定したものといえるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、訂正前の請求項1及び2に対して異議申立人から特許異議の申し立てがされているので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項1に関して、いわゆる独立特許要件は課されない。

上記訂正事項2及び3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載を引用する請求項3の記載を、当該請求項1及び2の記載を引用しないものとすることを目的としたものといえる。それら訂正事項2及び3は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものといえるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、訂正前の請求項1?3について、訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して記載が訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?3は一群の請求項であるから、訂正前の請求項1?3に係る訂正である訂正事項1?3は一群の請求項に対して請求されたものである。
また、訂正後の請求項3及び5については、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められるときに、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、5について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、
前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、
円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。

【請求項2】
外歯歯車の歯面の表面粗さが0.2μm以上0.5μm以下であり、
前記溝の表面の表面粗さが0.3μm未満である請求項1に記載の歯車伝動装置。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る発明に対して平成31年3月18日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

引用文献1(甲第2号証):実公昭59-36762号公報
引用文献2(甲第6号証):特開2009-41747号公報
引用文献3(甲第1号証):特開2000-130521号公報

3 引用文献の記載
(1)引用文献1及び引用発明
引用文献1(甲第2号証 実公昭59-36762号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア「図について説明すれば、第1図はこの考案の減速機をクローラ式車輛の走行駆動用に適用した例を示し、第2図は第1図のA-A線に沿う断面を示している。この考案の減速機10はクローラ式車輛のフレーム1に止着し、減速機10により減速機内に内蔵した油圧モータ2の回転を減速して走行駆動系のスプロケット28の大出力にて駆動する。」(第1ページ右欄第31?37行)

イ「円板状部4及び端円板6の外周にボール軸受23,23を装着し、ハブ20を回転可能に支持している。ハブ20はクローラ式車輛の駆動スプロケット28を駆動するもので、その内周面に、ピニオン17の外周に形成した外歯17aの歯数より僅かに多い数の小径ピン26を、均一に配置したピン歯車からなる内歯を形成している。そして第3図に拡大して示す如く、ピンとハブ内周の間に半割ブツシユ30を介在させておく。そしてブツシユ30の内壁には耐摩耗性及び潤滑作用を有する化成皮膜を付着させた表面処理が施してあり、ピンとピニオン歯車間の摩擦係数よりピンとブツシユ間の摩擦係数の方が低くなり、ピンはブツシユに対しすべり接触し、ピニオン歯車に対してはころがり接触をするようになる。このことは噛み合い効率の向上とピンの耐久性を向上させることに役立つている。
しかして第2図に示すようにピニオン17の溝17cは固定ブロツク3の星状の柱部5に遊嵌合しており、クランクピン15の自転運動によりそのクランク部15a,15cの中心軸線がクランクピン15の回転軸線に対して公転運動することにより、2つのピニオン17は偏心公転運動され、外歯17aがハブ20のピン歯車と係合する。第1図において、出力回転軸11の右側先端にカツプリング13を介して第1外歯車12の一端軸部がスプライン結合されている。」(第2ページ左欄第25行?右欄第7行)

ウ「ピニオン17の偏心公転運動により、ピニオンの外周に形成した外歯17aがハブ20の内周に形成したピン歯車26に係合し、ハブ20を減速回転させる。」(第2ページ右欄第24?27行)

上記記載事項及び第1図ないし第3図の図示内容を総合し、本件特許の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「内歯を形成しているピン歯車と、ピン歯車に対して偏心公転運動する外歯17aを有するピニオン17と、を備えている減速機10であり、
ピン歯車は、ハブ20及び半割ブツシユ30と、半割ブツシユ30の内壁に配置された小径ピン26とを備えており、
ピニオン17は、小径ピン26にころがり接触することによりピン歯車と噛み合っており、
小径ピン26とピニオン17の間の摩擦係数が、小径ピン26と半割ブツシユ30の内壁との摩擦係数より大きい減速機10。」

(2)引用文献2
引用文献2(甲第6号証 特開2009-41747号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0059】
又、摺動表面の面粗さは平均粗さRaで0.07μmである必要はなく、上述したように好ましくは平均粗さRaで0.03μm?0.5μmであればよい。Ra<0.03μmでは、表面が鏡面状態となり、炭素系被膜との密着性が保てないこと、摺動により磨耗したときに炭素系被膜が完全に消失する可能性が高いこと、炭素系被膜成形後に潤滑剤の保持がしにくいことなどにより摩擦係数を低減する効果は少なくなるからである。また、Ra>0.5μmでは炭素系被膜を成形後においても表面が粗くなりすぎて摩擦係数が増加するからである。」

(3)引用文献3
引用文献3(甲第1号証 特開2000-130521号公報)には、次の事項が記載されている。
ア「【0018】本出願人は、伝動機構の接触面の隙間を小さくし、且つ潤滑油の保持を長期に亘って維持できるようにした接触面の構造及びその製造方法を提供することを目的にして、特願昭60-271649号(特公平2-36825号公報、特許1623717号)で歯形の研削目の歯筋方向及び該研削目の歯筋方向と交差する方向に凹凸面が形成された接触面と、この凹凸の高さよりも低い膜厚で前記接触面に形成された化成処理皮膜とからなる接触面を提案した。」

イ「【0020】したがって従来では、ピン保持孔13は、ブローチ加工、もしくはギヤシェーパ加工、特に精度を必要とする場合は、図11に示すような小径砥石40を用いた内径研削加工によって加工しているのみであった。」

ウ「【0041】このピン保持リング110によれば、転圧されたピン保持孔113の内面の周方向表面粗さを、図6に示すように、容易に0.1?0.5μm(もしくは<0.1μm)にすることができ、しかも正確な寸法の半円を得ることができる。従って、このピン保持リング110を組み込んで、図9、図10のような内接噛合遊星歯車機構を製作した場合、ピン11とピン保持孔113との間に、流体潤滑状態を形成することができ、ピン11の滑り回転を良くすることができる。」

(4)甲第3号証
特許異議申立書に引用された甲第3号証(特開平6-74303号公報)には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項2】外歯がトロコイド系歯形等からなる外歯歯車と、前記外歯と噛合する外ピンよりなる内歯を有し、該外ピンを保持するほぼ半円形の外ピン穴を内周面に有する内歯歯車よりなり、前記外ピンが外ピン穴の接触面とすべり接触と転がり接触しながら回転する内接噛合形遊星歯車装置の前記外ピン穴の接触面を形成する方法において、
前記内歯歯車を押出加工、引抜加工等によるアルミニウム展伸材とすると共に、外ピン穴の接触面をギヤシェーパ加工又はブローチ加工等により微小な凹凸溝を軸方向に有するように切削することにより外ピン穴の径を外ピンの径よりも大径に形成し、前記外ピンを外周面の表面粗さを1μm未満に鏡面仕上げされた焼入れ鋼とし、動力伝達時に外ピンが外歯歯車からの荷重を受けながら外ピン穴に保持されてすべりと転がりを伴った回転を行うことにより前記外ピン穴の前記凹凸溝を外ピンにより圧延して外ピン穴の接触面円周方向アラサをならしてなることを特徴とする内接噛合形遊星歯車装置の外ピンと接触する外ピン穴の接触面の形成方法。」

イ「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述のような遊星歯車装置においては、外ピン11は外歯歯車5との噛合により生じた荷重を受けながら、外ピン穴13により、保持されて回転する。これにより、外歯歯車5と外ピン11は転がり接触とする事が出来るので、全体の高効率と長寿命が図られている。従って、外ピン11と外ピン穴13との間の滑りを良好とすることが肝要となる。
【0009】この外ピン11と外ピン穴13をすべり易くする事により、高性能(高効率)長寿命とする方法として従来より各種の方法が提案されているが、それぞれ問題点があった。
(1)USP第628273号においては、外ピン穴を燐酸塩等による化成処理する方法が提案されている。ところが、この方法によると、機械加工後に別の化成処理を追加するので、コスト高となるとともに、精度の低下はまぬがれなかった。
(2)USP第3460481号(特公昭45ー34175号)及び実開昭57ー37144号では、外ピン穴を軸受材料又は半割ブッシュにて内張りする方法が提案されている。ところが、この方法によると、外ピン穴だけの構造よりもコスト高となっている。
(3)USP第3506383号(特公昭49ー4409号)においては、内歯歯車を焼結金属で作るとともに、外ピン穴13をニッケルコーティングする方法が提案されている。ところが、この方法によっても、加工工程の増加によるコスト高はまぬがれない。
(4)特開昭62ー131990号、特開昭62ー132068号においては、外ピンに綾目状の微小なる凹凸を設け、この凹部に残る化成処理被膜により潤滑油を保持する方法が提案されている。この方法は化成処理被膜の効果の持続性、精度の維持においても効果がある方法であるが、加工工程の増加によるコスト高はまぬがれない。
(5)特開昭61ー38242号においては、内歯歯車の外周部を剛性の高い金属材料、内周部をプラスチック材料とする二層構造により、外ピン穴部分の低摩擦材料の使用を可能とするアイデアが開示されている。ところが、この方法においても、内歯歯車を単一素材の材料とする方法に比較した場合には構造は複雑になり、加工費と組立費の増加によるコスト高はまぬがれなかった。」

ウ「【0015】そこで、発明者は安価な加工方法により前述の潤滑油の油膜形成に不利な使用条件においても外ピンと外ピン穴を流体潤滑させる方法について以上の公知例も含め種々研究した結果、
(a)外ピンと外ピン穴(すなわち内歯歯車)の材料
(b)外ピンの硬さとその表面仕上の程度
(c)切削加工における外ピン穴の加工の向き
(d)外ピンと外ピン穴の径の差、すなわち隙間の設定の仕方
の組合わせにより、転がり軸受の外輪とハウジングとの間に生じる現象として知られているクリープ現象を限定的に発生させる事により外ピン穴を0.1μm程度のアラサにする方法を見いだした。」

エ「【0019】以上のように構成された本発明の作用について以下に説明する。外ピン穴13の径を外ピン11の径よりも大径としてあるので、外ピン穴13の切削によるアラサが大きく、外ピン11との間が流体潤滑しない状態、すなわち外ピン11の自転が円滑にいかない状態においても、図1a?図1dにみられる様に外歯歯車5と外ピン11の接触角度が変化するので外ピン11と外ピン穴13は一種のころがり運動を行う。この時に、外ピン11と外ピン穴13の径の差をδとすると、両者の円周長さはπδだけ異なるから、外ピン穴に対する外ピンの位置は荷重方向に少しずつずれていき、外ピン11がゆっくり回転する。この現象は軸受の分野で言われるクリープ現象に近い。この時に外ピン11がころがり運動を行ない、アラサのある状態においては外ピン11と外ピン穴13の間の接触面圧はアルミニウム展伸材の耐力を越えるので、外ピン穴13のアラサの凸部は外ピン11により圧延され、外ピン11の表面アラサ同様に平滑になっていく。そして圧延が完了しアラサの凹凸が無くなることにより、外ピンと外ピン穴の接触面圧は材料の耐力を下まわり、圧延は進行せずに、アラサが弾性流体潤滑の最少油膜厚さ(1μm程度)より小さくなるので、外ピン穴13の表面全体に潤滑油がいきわたり外ピン11と外ピン穴13は流体潤滑される。これを図2及び図3で説明すると、図2におけるa部は外ピンのころがり接触を受ける域であり、外ピンによる圧延前は5ないし10μmのアラサとなっているが、このa部が外ピンによって圧延されて図3のc部のように0.2μm以下のアラサとなり、図3のb部は外ピンによる圧延を受けず、図2の状態のままに残るものとなる。」

(5)甲第4号証
特許異議申立書に引用された甲第4号証(特公昭63-13056号公報)には、次の事項が記載されている。
「ハブ37の円弧溝37′とピン39との間には油や柔かくて変形しやすく低摩擦である固体潤滑剤の保持能力が高い多孔質である物質の皮膜と柔かくて低摩擦の固体潤滑剤である皮膜との二相が各々5?30μ程度の厚さで付着されている。これによりピンとピニオン歯車間の摩擦係数よりピンとハブ間の摩擦係数の方が低くなり、ピンはハブに対してすべり接触し、ピニオン歯車に対してころがり接触するようになる。このことは噛み合い効率の向上とピンの耐久性を向上させることに役立っているのである。」(第2ページ右欄第39行?第3ページ左欄第6行)

(6)甲第5号証
特許異議申立書に引用された甲第5号証(実公平6-25713号公報)には、次の事項が記載されている。
「又、同相手側摩擦板の鋼板の表面あらさとしては1.0μRZ以上になると摩擦係数(μ)が大きくなり、耐摩耗性も低下するため出来るかぎり1.0μRZ以下で小さくなることが好ましい。」(第3ページ右欄第34?37行)

(7)甲第7号証
特許異議申立書に引用された甲第7号証(特開2014-9789号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0011】
前記カッコ内の英数字は、後述の実施の形態における対応構成要素等を示す。
前記請求項1の構成によれば、前記大歯車の、強化繊維を含む樹脂組成物からなる歯の歯面の表面粗さRaを0.5μm以下の範囲内とすることで、当該歯面におけるグリースの油膜形成性を向上して、前記歯面と、小歯車の歯面との間にできるだけ連続した油膜を形成することができる。そのため、前記両歯面間の摺動の摩擦係数を、前記連続した油膜による潤滑によって良好に低減させて、電動パワーステアリング装置の操舵トルクを低下させ、操舵フィーリングを向上させることが可能となる。」

(8)甲第8号証
特許異議申立書に引用された甲第8号証(特開2007-187191号公報)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
駆動力を入力する入力軸と、入力軸により駆動されて偏心運動するクランク軸と、クランク軸の偏心運動によって駆動され、外歯を有するギアと、ケース内周面に沿って、所定ピッチで配設される複数のピンとを備え、前記ギアの歯面とピンとが接触する減速機において、少なくともギア歯面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設け、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内であり、かつ、Sk値が-1.6以下であることを特徴とする減速機。」

(9)甲第9号証
令和元年7月16日に提出された意見書に引用された甲第9号証(特開2013-185619号公報)には、次の事項が記載されている。
ア「【0040】
この実験結果を受けて、本実施形態では、内ピン40の外周面をショットピーニングで仕上げ方向性の無い凹凸を付けるとともに、内ローラ44の内周面を、ハッチング状の加工目が残るクロスハッチ加工で仕上げるようにした。図6にその模式図を示す。この結果、滑り方向と加工目の向きが平行にはならないため、従来よりも摩擦係数を下げることが可能になる。」

イ「【0053】
そして、外ピン228Aの外周面をショットピーニングで仕上げ方向性の無い凹凸を付けるとともに、外ピン溝230Aの内面を、ハッチング状の加工目が残るクロスハッチ加工で仕上げるようにした。この結果、滑り方向と加工目の向きが平行にはならないため、外ピンの外周面と外ピン溝の内周面の間の滑り接触の摩擦係数を従来よりも低減することができる。」

(10)甲第10号証
令和元年7月16日に提出された意見書に引用された甲第10号証(特開昭62-131990号公報)には、次の事項が記載されている。
「本発明では図の(ト)、(チ)に示すように、外歯の軸方向と周方向とに山Aと谷B(凹凸)を設ける。この山Aと谷Bとの形成は研削によっておこなわれる。これにバレル加工やショットピーニングして山Aの尖端を丸め、その後に燐酸塩皮膜Cを施している。この場合、山Aと谷Bとの高さよりも皮膜Cの膜厚を小さくしている。ここで、山Aと谷Bとの高さは1ないし10ミクロンとすることが望ましく、皮膜Cの膜厚は山Aと谷Bの高さよりも若干低めの3ミクロン程度までとすることが望ましい。
上記本発明の外歯によると、摺動、噛み合い後の摩耗状態が図の(リ)、(ヌ)に示すように外歯の軸方向と周方向とに網目状に残るものとなり、接触面のどの位置でも十分に作動油兼用の潤滑油を保持するものとなる。
尚、上記説明は本発明の一実施例であり、本発明は上記トロコイド形油圧モータの外歯歯車に限定されるものではなく、内歯歯車の歯形、ローラ歯形、トロコイド形ポンプの外歯歯車あるいは内歯歯車も含むものであり、トロコイド曲線を利用して容積変化を伴なう摺動、噛み合い接触面に所定の角度で交差する網目状の凹凸を形成し、かつその高さよりも低い化成処理皮膜を施すものであれば足りるものである。この場合、歯形は研削加工されるのが通常であるから、凹凸は研削目をそのまま利用するのが便利でありる。」(第3ページ右上欄第11行?左下欄第18行)

(11)甲第11号証
令和元年7月16日に提出された意見書に引用された甲第11号証(特開昭62-132068号公報)には、次の事項が記載されている。
「本発明では図の(ト)、(チ)に示すように、外歯の軸方向と周方向とに山Aと谷B(凹凸)を設ける。この山Aと谷Bとの形成は研削によっておこなわれる。これにバレル加工やショットピーニングして山Aの尖端を丸め、その後に燐酸塩皮膜Cを施している。この場合、山Aと谷Bとの高さよりも皮膜Cの膜厚を小さくしている。ここで、山Aと谷Bとの高さは1ないし10ミクロンとすることが望ましく、皮膜Cの膜厚は山Aと谷Bの高さよりも若干低めの3ミクロン程度までとすることが望ましい。
上記本発明の外歯によると、摺動、噛み合い後の摩耗状態が図の(リ)、(ヌ)に示すように外歯の軸方向と周方向とに網目状に残るものとなり、接触面のどの位置でも十分に潤滑油を保持するものとなる。
尚、上記説明は本発明の一実施例であり、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、摺動、噛み合い接触面に所定の角度で交差する網目状の凹凸を形成し、かつその高さよりも低い化成処理皮膜を施すものであれば足りるものである。」(第3ページ左上欄第14行?右上欄第15行)

4 判断
(1)取消理由通知書に記載した取消理由について
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「内歯を形成しているピン歯車」は本件発明1の「内歯歯車」に相当し、以下同様に、「偏心公転運動する」ことは「相対的に偏心回転する」ことに、「外歯17aを有するピニオン17」は「外歯歯車」に、「減速機10」は「歯車伝動装置」に、「ハブ20及び半割ブツシユ30」は「内歯部材」に、「半割ブツシユ30の内壁」は「内歯歯車の内周面に設けられている溝」に、「半割ブツシユ30の内壁に配置」することは「内歯歯車の内周面に設けられている溝に挿入」することに、「小径ピン26」は「円柱状部材」に、「ころがり接触すること」は「接すること」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と引用発明とは
「内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きい歯車伝動装置。」の点で一致し、次の相違点で相違する。

[相違点]
本件発明1は「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる」のに対し、引用発明の半割ブツシユ30の内壁の表面粗さとピニオン17の外歯17aの歯面の表面粗さとの大小関係は不明であり、小径ピン26の周面の筋目の方向と半割ブツシユ30の内壁の筋目の方向の異同も不明である点。

次に、上記相違点について検討する。
引用文献2には、動力伝達装置の摺動表面に関し、「Ra<0.03μmでは、表面が鏡面状態となり・・・摩擦係数を低減する効果は少なくなる」及び「Ra>0.5μmでは・・・表面が粗くなりすぎて摩擦係数が増加する」(段落【0059】;前記「3 引用文献の記載」の「(2)」参照)と記載されており、これらの記載から、程度の大小はあるものの、表面の粗さが小さければ摩擦係数が減少し、粗くなれば摩擦係数が増加することが読み取れる。
しかしながら、2つの摺動表面同士の筋目の方向を異ならせることにより摩擦係数を減少することについては引用文献2及び引用文献3には記載されていない。
また、2つの摺動表面表面同士の筋目の方向を異ならせることにより摩擦係数を減少することが周知である証拠もない。
そして、本件発明1においては、「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる」構成により、「円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大き」い状態が安定し、「円柱状部材と外歯歯車の間の滑りを抑制することができるので、歯車伝動装置のトルク伝達損失を低減することができる」という効果が、より確実に期待できる。
したがって、本件発明1は、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた発明であるので、上記アで示したと同様の理由により、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
ア 特許異議申立書における主張
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1に係る発明は甲第1号証(引用文献3 特開2000-130521号公報)に記載された発明と同一である旨主張し(第5ページ<取消理由1>、第9ページ(2.2)?第13ページ第17行)、また請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張している(第13ページ第18行?第14ページ第32行)。
そしてまた、請求項1に係る発明は甲第2号証(引用文献1 実公昭59-36762号公報)に記載された発明と同一であり(第5ページ<取消理由2>、第18ページ第3行?第20ページ第10行)、また請求項1は甲第2号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張し、(第20ページ第11?20行)、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証(特開平6-74303号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張している(第20ページ第21行?第21ページ第24行)。
しかしながら、本件発明1及び本件発明2は、「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる」構成を有しているのに対し、甲第1?3号証には、2つの摺動面同士の筋目の方向の異同について記載も示唆もされていない。また、2つの摺動表面表面同士の筋目の方向を異ならせることにより摩擦係数を減少させることが、本件特許についての出願の出願時において技術常識であったとも認められない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一でなく、また、本件発明1及び2は、甲第1?3号証に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 異議申立人が提出した意見書における主張
異議申立人は令和元年7月16日に提出した意見書(以下、「意見書」という。)において、本件発明1は引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された発明又は引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張し(第2ページ第2行?第3ページ第23行)、本件発明2は引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張し(第4ページ第16?24行)、本件発明1は引用文献3に記載された発明であり、そうでなくても本件発明1及び2は引用文献3に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である旨主張している(第4ページ第25行?第5ページ第28行)。
しかしながら、本件発明1及び本件発明2は、「前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる」構成を有しているのに対し、甲第1?4号証には、2つの摺動面同士の筋目の方向の異同について記載も示唆もされていない。また、2つの摺動表面表面同士の筋目の方向を異ならせることにより摩擦係数を減少させることが技術常識であったとも認められないから、これらの主張は採用できない。

また、異議申立人は意見書において、円柱状部材(外ピン)の周面の筋目の方向と溝(ピン溝)の表面の筋目の方向とは、同じ方向とするか異なる方向とするかの二つに一つとなるから、異ならせることは当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である設計的事項に過ぎない旨主張している(第3ページ第24行?第4ページ第3行)。
しかしながら、異議申立人のかかる主張は、本件発明1と引用発明との相違点を、意見書に記載の「相違点1」及び「相違点2」に細分したうえで(第2ページ第5行?第13行)、その「相違点2」に係る本件発明1の構成について設計的事項であると主張するものであるが、本件発明1においては、「相違点1」に係る構成と「相違点2」に係る構成とがあいまって「円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大き」い状態が安定するのに寄与しているものと認められるところ、そのような相互に関連する構成、換言すれば互いに独立とはいえない構成を細分して容易想到性を別々に考慮することは、容易想到性の検討として適当でないから、異議申立人の当該主張は、その前提において是認できないものである。
そして、仮にこの相違点の細分の点をおいたとしても、円柱状部材(外ピン)の周面の筋目の方向と溝(ピン溝)の表面の筋目の方向とを異ならせることにより、円柱状部材の周面と溝の表面との間の摩擦係数を減少させるという技術思想は、当業者が適宜なし得た設計的事項とは認められないので、異議申立人の当該主張は、採用することができない。

さらにまた、異議申立人は意見書において、円柱状部材(外ピン)の周面と溝(ピン溝)の表面に関し、一方の面の筋目を綾目状とした場合、他方の面の筋目は必ず方向が異なることになる旨主張している(第4ページ第4?15行)が、当該他方の面に関して筋目の有無は不明である(例えば、甲第9号証の段落【0040】、【0053】に記載されるように、ショットピーニングで仕上げ方向性の無い凹凸を付ける場合は筋目がない)し、仮に一方の面の筋目が綾目状であり他方の面の筋目が一方向に向いていたとしても、本件特許明細書の記載に照らすに、そのような摺動面は本件発明1及び2の想定していないものというべきであって、相互の筋目が摩擦係数を減少する機能を発揮するかも不明であるから、このような主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、異議申立書に記載された特許異議申立理由及び異議申立人により提出された意見書に記載された理由によっては、本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、
前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、
円柱状部材の周面の筋目の方向が、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。
【請求項2】
外歯歯車の歯面の表面粗さが0.2μm以上0.5μm以下であり、
前記溝の表面の表面粗さが0.3μm未満である請求項1に記載の歯車伝動装置。
【請求項3】
内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、
前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、
円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。
【請求項4】
内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、
円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。
【請求項5】
内歯歯車と、内歯歯車に対して相対的に偏心回転する外歯歯車と、を備えている歯車伝動装置であり、
内歯歯車は、内歯部材と、内歯部材の内周面に設けられている溝に挿入されている円柱状部材とを備えており、
外歯歯車は、円柱状部材に接することにより内歯歯車と噛み合っており、
円柱状部材と外歯歯車の間の摩擦係数が、円柱状部材と溝の間の摩擦係数より大きく、
前記溝の表面の表面粗さが、外歯歯車の歯面の表面粗さより小さく、
外歯歯車の歯面の表面粗さが0.2μm以上0.5μm以下であり、
前記溝の表面の表面粗さが0.3μm未満であり、
円柱状部材の周面の筋目の方向が、外歯歯車の歯面の筋目の方向と同一であるとともに、前記溝の表面の筋目の方向と異なる歯車伝動装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-06 
出願番号 特願2014-93773(P2014-93773)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (F16H)
P 1 652・ 113- YAA (F16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 内田 博之
藤田 和英
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6310764号(P6310764)
権利者 ナブテスコ株式会社
発明の名称 歯車伝動装置  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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