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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G02F 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02F |
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管理番号 | 1356804 |
異議申立番号 | 異議2019-700118 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-14 |
確定日 | 2019-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6372200号発明「液晶配向膜の製造方法、光配向剤及び液晶表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6372200号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、〔1?12、14〕、13について訂正することを認める。 特許第6372200号の請求項4ないし14に係る特許を維持する。 特許第6372200号の請求項1ないし3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6372200号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成26年7月3日に出願され、平成30年7月27日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月15日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 2月14日 :特許異議申立人西あけみ(以下「申立人」と いう。)による請求項1?14に係る特許に 対する特許異議の申立て 平成31年 4月17日付け:取消理由通知書 令和 元年 6月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和元年6月21日付けで当審から申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をするとともに期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「前記特定原子を有する重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%である、請求項2又は3に記載の液晶配向膜の製造方法。」と記載されているのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜を製造する方法であって、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体である液晶配向剤を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光照射して液晶配向膜とする工程と、を含み、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である、液晶配向膜の製造方法。 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。)」に訂正する。 また、請求項4の記載を引用する請求項5?12、14についても同様に訂正する。具体的には、請求項5?12、14のうち、請求項4の従属とされたものについて訂正を行う。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「前記(A)重合体と前記(B)重合体との含有比率が、重量比(A/B)で2/8?8/2である、請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。」とあるうち、請求項1?3を引用するものについては除外し、「前記(A)重合体と前記(B)重合体との含有比率が、重量比(A/B)で2/8?8/2である、請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、「前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、下記式(2-1)で表される構造、下記式(2-2)で表される構造(但し、モノマーの重合によって形成されるアミド結合中に含まれるものを除く。)及び窒素含有複素環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(Z)を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(2-1)中、R^(1)は、ハロゲン原子、炭素数1?10のアルキル基又は炭素数1?10のアルコキシ基であり、r1は0?2の整数であり、r2は0?3の整数である。但し、r1+r2≦4を満たす。「*1」は結合手を示す。式(2-2)中、R^(2)は、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である。「*2」は結合手を示す。)」とあるうち、請求項1?3を引用するものについては除外し、「前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、下記式(2-1)で表される構造、下記式(2-2)で表される構造(但し、モノマーの重合によって形成されるアミド結合中に含まれるものを除く。)及び窒素含有複素環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(Z)を有する、請求項4又は5に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(2-1)中、R^(1)は、ハロゲン原子、炭素数1?10のアルキル基又は炭素数1?10のアルコキシ基であり、r1は0?2の整数であり、r2は0?3の整数である。但し、r1+r2≦4を満たす。「*1」は結合手を示す。式(2-2)中、R^(2)は、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である。「*2」は結合手を示す。)」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11に、「前記(B)重合体は、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体である、請求項1?10のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。」とあるうち、請求項1?3を引用するものについては除外し、「前記(B)重合体は、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体である、請求項4?10のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項12に、「前記(A)重合体は、下記式(3)で表される構造を主鎖に有する、請求項1?11のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(3)中、k及びiは、それぞれ独立に0又は1であり、lは2?9の整数であり、jは1?4の整数である。「*」はそれぞれ結合手を示す。)」とあるうち、請求項1?3を引用するものについては除外し、「前記(A)重合体は、下記式(3)で表される構造を主鎖に有する、請求項4?11のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(3)中、k及びiは、それぞれ独立に0又は1であり、lは2?9の整数であり、jは1?4の整数である。「*」はそれぞれ結合手を示す。)」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項14に、「請求項1?12のいずれか一項に記載の方法により製造した液晶配向膜を具備する横電界方式の液晶表示素子。」とあるうち、請求項1?3を引用するものについては除外し、「請求項4?12のいずれか一項に記載の方法により製造した液晶配向膜を具備する横電界方式の液晶表示素子。」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項13に、「横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜形成用の光配向剤であって、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体であることを特徴とする光配向剤。 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。)」と記載されているのを、「横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜形成用の光配向剤であって、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体であり、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下であることを特徴とする光配向剤。 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。)」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1ないし12、14は、請求項2ないし12、14が請求項1の記載を直接または間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1ないし9は、一群の請求項1ないし12、14について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が請求項2又は3の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2又は3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正前の請求項4中、「前記特定原子を有する重合体において」との記載を、「前記(A)重合体において」とする訂正事項は、「前記特定原子を有する重合体」に限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 また、訂正後の請求項4中、「前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」との訂正事項は、(B)重合体に限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項5?12、14は、訂正後請求項4に記載された「前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である、」との記載を引用することにより、本件訂正発明4における(A)重合体及び(B)重合体をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、請求項間の引用関係を解消し、請求項2又は3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である。 また、訂正後の請求項4は、(A)重合体及び(B)重合体という発明特定事項を概念的により下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載以外に、訂正前の請求項5?12、14の記載について何ら訂正するものではなく、本件訂正発明5?12、14のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、訂正前の請求項5?12、14との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4のうち、「前記(A)重合体において」との訂正事項、及び「前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」との訂正事項は、明細書の段落【0076】の記載を根拠とするものである。 以上より、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1?4の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1?3により、請求項1?3が削除されたことにともない、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、訂正前の請求項5について引用請求項の数を減少し、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、請求項1?3の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1?3により、請求項1?3が削除されたことにともない、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、訂正前の請求項6について引用請求項の数を減少し、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、請求項1?3の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項11が請求項1?10の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1?3により、請求項1?3が削除されたことにともない、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、訂正前の請求項11について引用請求項の数を減少し、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項7は、請求項1?3の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項12が請求項1?11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1?3により、請求項1?3が削除されたことにともない、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、訂正前の請求項12について引用請求項の数を減少し、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項8は、請求項1?3の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、訂正前の請求項14が請求項1?12の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1?3により、請求項1?3が削除されたことにともない、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9は、訂正前の請求項14について引用請求項の数を減少し、請求項1?3の記載を引用しないものとするための訂正である。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、請求項1?3の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項13に係る発明は、「(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体であ」ることを特定している。 これに対し、訂正後の請求項13は、「前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」との記載により、訂正前の請求項13に係る発明における(A)重合体及び(B)重合体をより具体的に特定し、更に限定するものである。 よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項10は、訂正前請求項13における(A)重合体及び(B)重合体という発明特定事項を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項10において、「り、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下であ」るとの訂正事項は、明細書の段落【0076】、【0077】の記載を根拠とするものである。 よって、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 3 小括 したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項4ないし14に係る発明(以下順に「本件発明4」ないし「本件発明14」という。)は、下記のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜を製造する方法であって、 ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体である液晶配向剤を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射して液晶配向膜とする工程と、を含み、 フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、 前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、 前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である、液晶配向膜の製造方法。 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。) 【請求項5】 前記(A)重合体と前記(B)重合体との含有比率が、重量比(A/B)で2/8?8/2である、請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項6】 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、下記式(2-1)で表される構造、下記式(2-2)で表される構造(但し、モノマーの重合によって形成されるアミド結合中に含まれるものを除く。)及び窒素含有複素環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(Z)を有する、請求項4又は5に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(2-1)中、R^(1)は、ハロゲン原子、炭素数1?10のアルキル基又は炭素数1?10のアルコキシ基であり、r1は0?2の整数であり、r2は0?3の整数である。但し、r1+r2≦4を満たす。「*1」は結合手を示す。式(2-2)中、R^(2)は、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である。「*2」は結合手を示す。) 【請求項7】 前記構造(Z)を有する重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記構造(Z)を有する繰り返し単位の含有割合が2?40モル%である、請求項6に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項8】 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を有し、 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうち、前記特定原子の含有率が低い方の重合体が前記構造(Z)を有する、請求項6又は7に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項9】 前記(B)重合体は前記構造(Z)を有する、請求項6?8のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項10】 前記(A)重合体は、前記構造(Y)と、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一種の特定原子と、を有し、 前記(B)重合体は、前記構造(Z)を有し、かつ前記(A)重合体よりも前記特定原子の含有率が低い、請求項6?9のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項11】 前記(B)重合体は、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体である、請求項4?10のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項12】 前記(A)重合体は、下記式(3)で表される構造を主鎖に有する、請求項4?11のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 (式(3)中、k及びiは、それぞれ独立に0又は1であり、lは2?9の整数であり、jは1?4の整数である。「*」はそれぞれ結合手を示す。) 【請求項13】 横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜形成用の光配向剤であって、 ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体であり、 フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、 前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、 前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下であることを特徴とする光配向剤。 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。) 【請求項14】 請求項4?12のいずれか一項に記載の方法により製造した液晶配向膜を具備する横電界方式の液晶表示素子。」 第4 当審が通知した取消理由の概要 平成31年4月17日付け取消理由の概要 理由1.(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由3.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 記 理由1(新規性) について ・請求項 1、2、5、6、9、11?14 ・引用文献等 甲第1号証、甲第2号証 理由2(進歩性)について ・請求項 1、2、5?7、9、11?14 ・引用文献等 甲第1号証、甲第2号証 理由3(サポート要件)について ・請求項 1?14 引用文献等一覧 甲第1号証:特開2012-98715号公報 甲第2号証:特表2011-507041号公報 (以下、甲第1、2号証を順に「甲1」、「甲2」と略して記載する。) 第5 取消理由に対する当審の判断 当審は、本件特許の請求項1?3に係る特許については、請求項が削除されたので、特許異議申立てを却下する。 また、本件特許の請求項4?14に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。 以下、詳述する。 1 理由1(新規性)について (1)甲1を主引用例とした場合 ア 甲1に記載された発明 甲1の段落【0073】、段落【0077】、段落【0110】-【0113】、段落【0133】-【0136】、段落【0153】-【0159】、段落【0163】-【0170】、段落【0182】、図2A、図4A、図6、図7の記載からみて、以下の発明が記載されている。 「横電界方式の液晶表示装置を作製する方法であって、 配向制御膜109として、4,4´-ジアミノジフェニルエーテルと1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸と下記B-9を含む原料で合成したポリアミド酸を1:1の比率で混合した配向膜材料を合成し、基板に印刷形成し、 液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射し、 これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製する方法。 」(以下、甲1-1発明という。) 「横電界方式の液晶表示装置を作製する方法であって、 配向制御膜109として、2,7-ジアミノフルオレンと1-メチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記B-9を含む原料で合成したポリアミド酸メチルエステルを4:6の比率で混合した配向膜材料を合成し、基板に印刷形成し、 液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射し、 これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製する方法。 」(以下、甲1-2発明という。) 「横電界方式の液晶表示装置を作製する方法であって、 配向制御膜109として、1,4-フェニレンジアミンと1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸t-ブチルエステルと下記B-9を含む原料で合成したポリアミド酸を6:4の比率で混合した配向膜材料を合成し、基板に印刷形成し、 液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射し、 これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製する方法。 」(以下、甲1-3発明という。) 「横電界方式の液晶表示装置を作製する方法であって、 配向制御膜109として、1,4-フェニレンジアミン(PDA)と1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記B-33を含む原料で合成したポリアミド酸を3:7の比率で混合した配向膜材料を用い、基板に印刷形成し、 液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射し、 これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製する方法。 」(以下、甲1-4発明という。) 「甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明に記載された配向膜材料。」(以下、甲1-5発明という。) 「甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明の方法で作製した液晶表示装置。」(以下、甲1-6発明という。) イ 対比・判断 請求項1は、訂正により削除されたので、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。 本件発明5、6、9、11は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明5、6、9、11は、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明と相違する。 また、本件発明13は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明13は、甲1-5発明と相違する。 さらに、本件発明14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明14は、甲1-6発明と相違する。 したがって、本件発明5、6、9、11、13、14は、甲1に記載された発明ではない。 (2)甲2を主引用例とした場合 ア 甲2に記載された発明 甲2の請求項1?8、段落【0194】-【0196】の記載からみて、以下の発明が記載されている。 「面内スイッチング(IPS)型液晶表示装置、フリンジフィールドスイッチング(FFS)型液晶表示装置の光配向物質の調整方法であって、 下記の表に示されているd)を含む化合物(II)の95重量%及び下記の表に示されている光反応性化合物(II)の5重量%から構成されるブレンド1を調製し、ブレンド1の溶液をスピンコーティングし、 光配向層を直線偏光UVB光線(波長280?320nm)に垂直に暴露した、光配向物質の調整方法。 」(以下、甲2-1発明という。) 「甲2-1発明に記載された光配向物質に含まれる光配向組成物。」(以下、甲2-2発明という。) 「甲2-1発明に記載された光配向物質を含む面内スイッチング(IPS)型液晶表示装置、フリンジフィールドスイッチング(FFS)型液晶表示装置。」(以下、甲2-3発明という。) イ 対比・判断 請求項1、2は、訂正により削除されたので、甲2-1発明に基づく取消理由の対象となる請求項1、2が存在しない。 本件発明6、12は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明6、12は、甲2-1発明と相違する。 また、本件発明13は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明13は、甲2-2発明と相違する。 さらに、本件発明14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明14は、甲2-3発明と相違する。 したがって、本件発明6、12?14は、甲1に記載された発明ではない。 2 理由2(進歩性)について (1)甲1を主引用例とした場合 請求項1は、訂正により削除されたので、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明に基づく取消理由の対象となる請求項1が存在しない。 本件発明5?7、9、11は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明5?7、9、11は、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明と相違する。 そして、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明又は甲1-4発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 また、本件発明13は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明13は、甲1-5発明と相違する。 そして、甲1-5発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 さらに、本件発明14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明14は、甲1-6発明と相違する。 そして、甲1-6発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 よって、本件発明5?7、9、11、13、14は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2を主引用例とした場合 請求項1、2は、訂正により削除されたので、甲2-1発明に基づく取消理由の対象となる請求項1、2が存在しない。 本件発明5、6、12は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明5、6、12は、甲2-1発明と相違する。 そして、甲2-1発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 また、本件発明13は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明13は、甲2-2発明と相違する。 そして、甲2-2発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 さらに、本件発明14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明14は、甲2-3発明と相違する。 そして、甲2-3発明において、当該限定を有するようにする動機もない。 よって、本件発明5、6、12?14は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 理由3(サポート要件)について 平成31年4月17日付けの取消理由通知書では、「(A)重合体と(B)重合体の両方ともフッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を含有しないもの、又は、(A)重合体と(B)重合体の両方ともフッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を含有するものが、液晶配向膜として、上記本件特許の解決しようとする課題を解決できると、当業者が認識できるように記載されていないし、(A)重合体と(B)重合体の両方ともフッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を含有しないもの、又は、(A)重合体と(B)重合体の両方ともフッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を含有するものでもよい点について、技術的な根拠をもって説明がされているわけでもない。 (A)重合体及び(B)重合体のそれぞれどの程度の特定元素の含有率である場合に、液晶配向膜中で分布の偏りを生じさせることができ、上記本件特許の解決しようとする課題を解決できると、当業者が認識できるように記載されていない。 そうすると、請求項1?14に係る特許は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。 したがって、請求項1?14に係る特許の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。 よって、請求項1?14に係る特許は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」旨、指摘した。 請求項1?3は、訂正により削除された。 本件発明4?14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定されたので、本件発明4?14は、上記課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになった。 第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由 1 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要 (1)本件特許の請求項11に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)本件特許の請求項1、5?7、9?14に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)請求項1?8、10及び12?14には「(B)重合体」が規定されているが、(B)重合体の構造がどのようなものであるのかについて特定はされていない。 一方、本件特許の発明の課題を解決できることが示されているのは、本特許明細書の実施例において、(B)重合体として重合体(B-1)?(B-7)を用いた場合のみである。 これに加えて、本件明細書には、(B)重合体がどのようなメカニズムで残留電荷の蓄積量を少なくし、電圧保持率を高くするのかについて何ら記載されていない。また、(B)重合体が残留電荷の蓄積量を少なくし、電圧保持率を高くすることについて、実施例を示さなくとも当業者が理解できるとの技術常識はない。 そうすると、重合体(B-1)?(B-7)以外の(B)重合体が上記特許発明の課題を解決できるということはできないので、本件特許明細書は、請求項1?8、10及び12?14に係る発明で特定された「(B)重合体」の全ての範囲において所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているということはできない。 よって、請求項1?8、10及び12?14に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1?8、10及び12?14に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 したがって、本件発明1?8、10及び12?14に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)証拠方法 甲第1号証:特開2012-98715号公報 甲第2号証:特表2011-507041号公報 甲第3号証:特開2001-40209号公報 甲第4号証:特表2009-517716号公報 甲第5号証:特開2011-248328号公報 甲第6号証:国際公開第2004/053583号 (以下、甲第1ないし6号証を順に「甲1」ないし「甲6」と略して記載する。) 2 当審の判断 (1)申立理由(1)について 申立理由のうち、取消理由で採用しなかった具体的な申立理由は、 ・請求項11に係る発明は、甲2に記載された発明に該当する、 というものであった。 本件発明11は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定され、この事項について、甲2には記載がない。 したがって、請求項11に係る発明は甲2に記載された発明ではない。 よって、申立理由(1)はその理由がなく、請求項11に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、これらの特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。 (2)申立理由(2)について 申立理由のうち、取消理由で採用しなかった具体的な申立理由は、 ・請求項1、5、11?14に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、又は、甲5に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得るものである、 ・請求項6、7、9に係る発明は、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲3に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、又は、甲5に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得るものである、 ・請求項10に係る発明は、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得るものである、 というものであった。 そこで、訂正により削除された請求項1?3を除いた請求項5?7、9?14について検討する。 請求項5、11?14は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定され、この事項について、甲1、甲3?6には記載がないから、請求項5、11?14に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、又は、甲5に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 請求項6、7、9は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定され、この事項について、甲1?6には記載がないから、請求項6、7、9に係る発明は、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲3に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明、又は、甲5に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 請求項10は、訂正により、「フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である」ことが限定され、この事項について、甲1、甲2、甲6には記載がないから、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない よって、申立理由(2)はその理由がなく、請求項5?7、9?14に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではないから、これらの特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。 (3)申立理由(3)について まず、請求項1?3は、訂正により削除された。 次に、(B)重合体の構造として、請求項4?8、10及び12?14では、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分であり、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下であることが特定されている。 また、本件特許の解決しようとする課題として、本件の明細書の段落【0008】には「残留電荷の蓄積量が少なくかつ高い電圧保持率を示す液晶表示素子を得ることができる液晶配向膜の製造方法を提供する」と記載されている。 そして、本件の明細書の段落【0071】には「[(B)重合体] 本発明の光配向剤に含有される(B)重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、上記(A)重合体とは異なる重合体である。光配向剤の重合体成分を(A)重合体のみとした場合に、液晶表示素子において電圧保持率の低下や残留電荷の蓄積が生じる場合にも、異なる樹脂のブレンドとすることによってこれを改善することが可能となる。」、段落【0075】には「(B)重合体は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一種(以下、「特定原子」ともいう。)の含有率が、上記(A)重合体とは異なる重合体であることが好ましい。一般に、特定原子の含有率が異なる2種の重合体をブレンドした場合、表面エネルギーの相違によって、特定原子の含有率が高い方の重合体が上層に偏在し、特定原子の含有率が低い方の重合体が下層に偏在する傾向があることが知られている。こうした事象を利用し、(A)重合体と(B)重合体とで特定原子の含有率を異なるものとすることにより、(A)重合体及び(B)重合体のそれぞれについて、液晶配向膜中で分布の偏りを生じさせることができるものと推測される。」と記載されていることからしても、当該課題は、(B)重合体の特定のみで解決できるものではなく、(A)重合体と(B)重合体を特定し、解決しているものと認められる、 そうすると、請求項4?8、10及び12?14は、(A)重合体と(B)重合体を特定しており、上記課題を解決しているものと認められる。 したがって、本件発明4?8、10及び12?14は、上記課題を解決し得る発明であり、発明の詳細な説明に記載のものである。 よって、申立理由(3)はその理由がなく、請求項4?8、10及び12?14に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものであるから、これらの特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項4?14に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項4?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項1?3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜を製造する方法であって、 ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体である液晶配向剤を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射して液晶配向膜とする工程と、を含み、 フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、 前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、 前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下である、液晶配向膜の製造方法。 【化1】 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。) 【請求項5】 前記(A)重合体と前記(B)重合体との含有比率が、重量比(A/B)で2/8?8/2である、請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項6】 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、下記式(2-1)で表される構造、下記式(2-2)で表される構造(但し、モノマーの重合によって形成されるアミド結合中に含まれるものを除く。)及び窒素含有複素環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(Z)を有する、請求項4又は5に記載の液晶配向膜の製造方法。 【化2】 (式(2-1)中、R^(1)は、ハロゲン原子、炭素数1?10のアルキル基又は炭素数1?10のアルコキシ基であり、r1は0?2の整数であり、r2は0?3の整数である。但し、r1+r2≦4を満たす。「*1」は結合手を示す。式(2-2)中、R^(2)は、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である。「*2」は結合手を示す。) 【請求項7】 前記構造(Z)を有する重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記構造(Z)を有する繰り返し単位の含有割合が2?40モル%である、請求項6に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項8】 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうちの少なくともいずれかは、フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子を有し、 前記(A)重合体及び前記(B)重合体のうち、前記特定原子の含有率が低い方の重合体が前記構造(Z)を有する、請求項6又は7に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項9】 前記(B)重合体は前記構造(Z)を有する、請求項6?8のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項10】 前記(A)重合体は、前記構造(Y)と、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一種の特定原子と、を有し、 前記(B)重合体は、前記構造(Z)を有し、かつ前記(A)重合体よりも前記特定原子の含有率が低い、請求項6?9のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項11】 前記(B)重合体は、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体である、請求項4?10のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【請求項12】 前記(A)重合体は、下記式(3)で表される構造を主鎖に有する、請求項4?11のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。 【化3】 (式(3)中、k及びiは、それぞれ独立に0又は1であり、lは2?9の整数であり、jは1?4の整数である。「*」はそれぞれ結合手を示す。) 【請求項13】 横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜形成用の光配向剤であって、 ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体成分として(A)重合体と(B)重合体とを含み、かつ前記(A)重合体が、下記式(1)で表される構造(Y)を主鎖に有する重合体であり、 フッ素原子及びケイ素原子のうちの少なくとも一種の特定原子の含有率が前記(A)重合体と前記(B)重合体とで異なり、 前記(A)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が1?70モル%であり、 前記(B)重合体において、当該重合体の全繰り返し単位に対する、前記特定原子を有する繰り返し単位の含有割合が0.5モル%以下であることを特徴とする光配向剤。 【化4】 (式(1)中、X^(1)は、硫黄原子又は酸素原子である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。) 【請求項14】 請求項4?12のいずれか一項に記載の方法により製造した液晶配向膜を具備する横電界方式の液晶表示素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-09-11 |
出願番号 | 特願2014-138141(P2014-138141) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G02F)
P 1 651・ 537- YAA (G02F) P 1 651・ 113- YAA (G02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 野村 伸雄 |
登録日 | 2018-07-27 |
登録番号 | 特許第6372200号(P6372200) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | 液晶配向膜の製造方法、光配向剤及び液晶表示素子 |
代理人 | 日野 京子 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 日野 京子 |