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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06Q
管理番号 1356819
異議申立番号 異議2019-700157  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-27 
確定日 2019-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6383838号発明「情報処理装置、情報処理方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6383838号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕、4、〔5?7〕、8、9について訂正することを認める。 特許第6383838号の請求項1?3、5?9に係る特許を維持する。 特許第6383838号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6383838号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成29年6月1日に出願され、平成30年8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成31年2月27日に特許異議申立人河井 清悦(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年5月30日(発送:同年6月3日)に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和元年8月2日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア?オのとおりである。
ア 請求項1?3
請求項1に「前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、を備え」とあるのを、「前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、を備え」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。)
イ 請求項4
請求項4を削除する。
ウ 請求項5?7
請求項5に「前記クラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する測定部をさらに備える、前記請求項4に記載の情報処理装置。」とあるのを、「広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、
前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、
前記クラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する測定部と、
を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理装置。」と訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。)
エ 請求項8
請求項8に「前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定し、」とあるのを、「前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定し、前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成し、」と訂正する。
オ 請求項9
請求項9に「前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定させ、」とあるのを、「前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定させ、前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成させ、」と訂正する。

本件訂正請求のうち、上記ア?ウは、一群の請求項〔1?7〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 請求項1?3
請求項1?3の「情報処理装置」について、更に「前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部」を具備することを特定することにより限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部」は、訂正前の請求項4及び明細書の段落【0009】【0013】【0115】?【0117】に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
イ 請求項4
請求項4の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書に記載されていない新たな技術的事項を導入するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
ウ 請求項5?7
請求項5?7についての訂正は、訂正前の請求項5のうち訂正前の請求項4を引用する部分について請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項としたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、明細書に記載されていない新たな技術的事項を導入するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
エ 請求項8
請求項8の「情報処理方法」について、更に「前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成」することを特定することにより限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成」することは、訂正前の請求項4及び明細書の段落【0009】【0013】【0115】?【0117】に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
オ 請求項9
請求項9の「プログラム」について、更に「前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成させ」ることを特定することにより限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成させ」ることは、訂正前の請求項4及び明細書の段落【0009】【0013】【0115】?【0117】に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕、4、〔5?7〕、8、9について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?3、5?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明3」、「本件発明5」?「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3、5?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

[本件発明1]
広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、
前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理装置。

[本件発明2]
前記移動履歴は、GPSを用いて取得される座標を示す、前記請求項1に記載の情報処理装置。

[本件発明3]
前記広告情報は、前記ユーザが前記広告に接する領域を示し、
前記判定部は、前記ユーザが移動したルートの少なくとも一部と前記領域とが重なる場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、前記請求項1又は2に記載の情報処理装置。

[本件発明5]
広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、
前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、
前記クラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する測定部と、
を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理装置。

[本件発明6]
前記記憶部は、ユーザの属性を示す登録情報を格納し、
前記クラスタから所定の属性を有するユーザのサブクラスタを生成するサブクラスタ生成部をさらに備え、
前記測定部は、前記サブクラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する、前記請求項5に記載の情報処理装置。

[本件発明7]
前記測定部は、前記クラスタのユーザが所持する端末のアクセスログに基づいて前記広告の効果を測定する、前記請求項5又は6に記載の情報処理装置。

[本件発明8]
プロセッサが実行する情報処理方法であって、
ユーザの移動履歴を取得し、
前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定し、
前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成し、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定することは、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理方法。

[本件発明9]
プロセッサに、
ユーザの移動履歴を取得させ、
前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定させ、
前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成させ、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定させることは、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定させ、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定させる、プログラム。

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1?3、8、9に係る特許に対して、当審が令和元年5月30日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(いずれも職権で通知したものである。)
ア 請求項1?3、8、9に係る発明は、甲第3号証(特許異議申立理由では従たる証拠として提出された文献)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 請求項1?3、8、9に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)甲号証の記載
甲第3号証(特開2011-243023号公報)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与した。以下同様。)

「【0001】本発明は、広告効果集計システムに関し、特に街頭広告の効果を測定する広告効果集計システムに関する。」

「【0017】携帯端末10は、利用者が街頭広告を見た際に操作する端末であり、位置情報を取得する機能を有する。」

「【0021】携帯端末10の位置情報の例として、GPS(Global Positioning System)位置情報を想定している。但し、実際には、GPS位置情報に限定されない。例えば、最寄の中継装置や基地局(base station)の識別情報もしくは位置情報でも良い。」

「【0048】実績データは、位置情報と、フラグ(カウント数)を含む。
【0049】位置情報は、広告を視認した際の携帯端末10の位置情報と対比させて、広告を特定するための位置情報である。ここでは、位置情報は、「北緯」、「東経」等の緯度・経度情報により示されるものとする。この位置情報が、広告の所在位置を示す。例えば、実績データを保持するサーバは、実績データの位置情報として、広告の正面/周囲の一定の範囲を示すエリア(領域)情報を事前に登録しておき、携帯端末10の位置情報が、この実績データの位置情報に示された一定の範囲内であれば、この実績データの位置情報に対応した広告を、利用者が見た広告と判断する。あるいは、携帯端末10の位置情報の最寄の実績データの位置情報に存在する広告を、利用者が見た広告と推定する。なお、実績データを保持するサーバは、広告と実績データの位置情報とを対応付ける情報を別途保持しているものとする。
【0050】フラグ(カウント数)は、広告を視認したことに応じて、何らかの操作・行動をした携帯端末10の所有者の数、及び行動回数をカウントするためのフラグ情報である。すなわち、フラグ(カウント数)は、広告に応じて何らかの操作・行動をした利用者の人数、又はその操作・行動の回数を集計したものである。例えば、利用者又は携帯端末の識別を行わない場合、同一人が複数回行った操作・行動であっても1回毎にカウントする。また、利用者又は携帯端末の識別を行い、利用者1人につき最初(1回目)の操作・行動のみカウントする場合、フラグ(カウント数)は利用者の人数を示す。ここでは、フラグ(カウント数)は、「Webサイト閲覧」、「予約」、「来場」、「特定行動」等をカウントするために用いられる。なお、実際には、フラグ毎に、別々の実績データとして管理するようにしても良い。」

「【0081】<第4実施形態>以下に、本発明の第4実施形態について説明する。
携帯端末10が位置情報を取得した時間に関する情報(時間情報)を、位置情報と対応付けるようにすると更に好適である。
【0082】例えば、期間限定セールの案内等、街頭広告の掲示期間が決まっている場合、携帯端末10が位置情報を保持した時間があれば、その時間に掲示されている街頭広告を特定することができるようになる。また、車体の外側に掲示された広告のように、街頭広告が移動するものであっても、位置情報と時間情報があれば、利用者が見た街頭広告を、ある程度は特定/推定することが可能になる。
【0083】本実施形態では、携帯端末10は、位置情報と時間情報を対応付けて保持する。この場合、施設内センサー20や事業者サーバ30は、携帯端末10から位置情報と共に時間情報を受信する。事業者サーバ30や広告効果測定サーバ40は、図6に示すような形式で、実績データを記憶する。或いは、事業者サーバ30は、位置情報と共に時間情報を対応付けたログを作成し、このログを広告効果測定サーバ40に通知するようにしても良い。
【0084】なお、図6に示された実績データの位置情報は、それぞれ異なる位置を示すものとする。実績データの位置情報が同じ表記となっているものは、所在位置が異なる同一内容の広告を示している。また、実績データの時間情報は、街頭広告の掲示期間のように、一定の時間帯を示すようにしても良い。例えば、携帯端末10の位置情報が実績データの位置情報の範囲内であり、携帯端末10が位置情報を取得した時間が実績データの時間情報に示す時間帯であれば、実績データの位置情報と時間情報に対応した広告を、利用者が見た広告と判断する。
【0085】また、携帯端末10は、携帯端末10が位置情報を取得した時間から一定時間(例えば1ヶ月)が経過した場合、その街頭広告は効果が無かったものとして、携帯端末10の記憶部13に記憶している位置情報を自動的に消去するようにしても良い。或いは、実績データを保持するサーバは、携帯端末10が位置情報を取得した時間から一定時間(例えば1ヶ月)が経過している場合、その街頭広告は効果が無かったものとして、携帯端末10の位置情報を取得しない/集計しないようにしても良い。」

これらの記載からみて、甲第3号証には、その「第4実施形態」に関連して、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

図6に示すような形式で実績データを記憶する広告効果測定サーバを含み、街頭広告の効果を測定する広告効果集計システムであって、(【0001】、【0083】)
GPS(Global Positioning System)位置情報が想定された位置情報と時間情報を対応付けて保持する携帯端末から位置情報と時間情報を受信し、(【0021】、【0083】)
実績データの位置情報が同じ表記となっているものは同一内容の広告を示しており、また、実績データの時間情報は街頭広告の掲示期間のような一定の時間帯を示すものであり、(【0084】)
携帯端末の位置情報が実績データの位置情報の範囲内であり、携帯端末が位置情報を取得した時間が実績データの時間情報に示す時間帯であれば、実績データの位置情報と時間情報に対応した広告を、利用者が見た広告と判断するものであり、(【0084】)
実績データの位置情報は、広告を視認した際の携帯端末の位置情報と対比させて、広告を特定するための位置情報であって、広告の所在位置を示すものであり、例えば、広告の正面/周囲の一定の範囲を示すエリア(領域)情報を事前に登録しておき、携帯端末の位置情報が、この実績データの位置情報に示された一定の範囲内であれば、この実績データの位置情報に対応した広告を、利用者が見た広告と判断するものであり、(【0049】)
実績データのフラグ(カウント数)は、広告を視認したことに応じて、何らかの操作・行動をした携帯端末10の所有者の数、及び行動回数をカウントするためのフラグ情報であり、(【0050】)
実績データを保持するサーバは、広告と実績データの位置情報とを対応付ける情報を別途保持している、(【0049】)
システム。

(3)当審の判断
ア 特許法第29条第1項第3号について
本件発明1と引用発明とを対比すると、両発明は、

広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定
部と、
を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、移動履歴に基づいて広告情報が示す場所に滞在していた期間と広告情報が示す期間とに重なり合いがある場合にユーザが広告に接したと判定する、
情報処理装置

の点で一致するものの、少なくとも、本件発明1が「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」という技術的事項を有するのに対して、引用発明が「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」という技術的事項を有していない点で相違する。
よって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 特許法第29条第2項について
本件発明1と引用発明とを対比すると、両者は、アにおいて上述した点で相違する。
この点について検討すると、引用発明においては、「広告を視認した」ことの判断は行われるものの、その判断は、広告に応じて「Webサイト閲覧」、「予約」、「来場」、「特定行動」等の操作・行動をした者の人数やその操作・行動の回数を集計するにあたってこれらの操作・行動の起点であるそれらの者が視認した広告の特定のために行われるものである。そして、甲第3号証の課題である「街頭広告の効果」(甲第3号証、段落【0001】)として測定されるのは、あくまでこれらの操作・行動をした者の人数やその操作・行動の回数であり、つまり、これらの操作・行動をした者のクラスタの特徴量を広告の効果として測定するものであって、「街頭広告の効果」として広告を視認した者のクラスタの特徴量を測定するものとは前提が異なり、この前提を変更すると、甲第3号証の課題の解決ができなくなるものである。
このことに照らせば、甲第3号証に記載された発明である引用発明を「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ものへと変更することについて、動機づけがないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2乃至3、5乃至7、8、9について
本件発明2ないし3は、本件発明1の従属請求項に係る発明であり、また、本件発明5ないし7は、本件発明1と同じ相違点の構成を有するものである。また、本件発明8、9は、それぞれ、装置発明である本件発明1に対応する方法発明、プログラム発明である。これらについても、上記相違点に対応する構成を有し、この相違点について容易想到ということはできない。

エ 特許異議申立人の意見について
(ア) 訂正前の請求項4に係る特許は、通知した取消理由の対象としていないところ、訂正により請求項1、2、3、8、9に追加された、上記相違点にかかる「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ことに係る事項は、訂正前の請求項4の発明特定事項とされていた事項である。つまり、訂正後の請求項1、8、9に係る発明(本件発明1)は、実質的には、取消理由を通知していない訂正前の請求項4に係る発明と同じであり、請求項2、3は、請求項1の従属項であるから、訂正を認容しても、特許異議申立人の意見を改めて聴くまでもないことが明らかである。
このことを踏まえ、ここでは、訂正前の請求項4についての特許異議申立人の主張について検討する。

(イ)特許異議申立人は、甲第5号証(特開2010-146412号公報)を示し、「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ことに係る事項に対応する事項が甲第5号証に記載されている旨を主張している。
しかし、甲第5号証は、「街頭広告のような不特定多数の人が見る表示媒体」(【0002】)に向けて「配信すべきコンテンツを自動的に選択する」際「その表示装置の周囲にいる人々をコンテンツ配信先としてターゲッティングを行う」にあたって「表示装置の周囲にいる人を単純に抽出した」のでは「抽出された人々がコンテンツを見ることができるかを判別することができない」(【0003】)こと、その解決策として、「人の顔の向きに着目し、顔が表示装置に向いていればコンテンツをみていると判定する方法」【0004】があるもののの、「大型の街頭広告のように広範囲に向けて広告を提示する端末の場合」に「エリア内の人すべての人の顔の向きを判定する処理」は「撮影機器設置コストや処理時間の問題」が生じる(【0005】)ことから、大型ディスプレイに表示される街頭広告の周囲にいる人々の中から、その街頭広告を視聴する可能性がある人のみを抽出することを可能」として「コンテンツ選択を補助する」ことを記載した文献である。そして、「視聴可能性算出部」において、「端末」を持ち歩いている人が街頭ディスプレイを視聴可能かどうかを、街頭ディスプレイの方向と各端末から送信される情報に基づいて判定しているところ、この判定は、「広告に接した」ことの判定ではない上、その目的も広告(「コンテンツ」)の選択のためというものであって、「広告」の「効果」の測定と無関係である。
してみると、甲第5号証は、「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ことに係る事項に対応する事項を示すものでない。
また、イに示したとおり、甲第3号証に記載された発明である引用発明を「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ものへと変更することが動機づけられるものでもない。
よって、この特許異議申立人の主張を勘案しても、訂正後の請求項1、2、3、8、9について、引用発明に基づいて容易想到であるということはできない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由は、訂正前の請求項1?9に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるというものであり、その主たる証拠として、甲第1号証(特開2014-157497号公報)が提出されている。
(なお、従たる証拠として、上記した甲第3号証の他、甲第2号証(特開2016-71069号公報)、甲第4号証(特開2010-277540号公報)、甲第5号証(特開2010-146412号公報)、甲第6号証(特開2015-32921号公報)、甲第7号証(特開2009-245364号公報)、甲第8号証(特開2008-112401号公報)、甲第9号証(特開2009-187329号公報)が提出されている。)

甲第1号証には、次の事項が記載されている。

「【0001】本発明は、広告システムおよび広告効果判定方法に関する。」

「【0007】本願は、上記に鑑みてなされたものであって、デジタルサイネージによる広告効果を判定することができる広告システムおよび広告効果判定方法を提供することを目的とする。
・・・
【0009】実施形態の一態様によれば、デジタルサイネージによる広告効果を判定することができる広告システムおよび広告効果判定方法を提供することができる。」

「【0015】デジタルサイネージ4は、無線LANアクセスポイント31のAP通信エリア61内に配置され、広告コンテンツを表示する。デジタルサイネージ4に表示される広告コンテンツは、無線LANアクセスポイント32の設置場所に対応する広告コンテンツである。これにより、無線LANアクセスポイント31の設置店舗を送客側店舗とし、無線LANアクセスポイント32の設置店舗を集客側店舗とする広告サービスを提供することができる。
・・・
【0017】広告配信管理装置5は、無線LANアクセスポイント31、32から送信される無線端末2の情報を取得し、取得した情報に基づいてデジタルサイネージ4に表示させた広告コンテンツによる広告効果を判定する。・・・
【0018】図1Bに示すように、広告配信管理装置5は、送客側店舗に設置された無線LANアクセスポイント31のAP通信エリア61内に配置されたデジタルサイネージ4へ広告コンテンツを送信する(ステップS1)。デジタルサイネージ4へ送信される広告コンテンツは、無線LANアクセスポイント32が設置された集客側店舗に関する広告を含む情報である。
【0019】デジタルサイネージ4は、広告配信管理装置5から広告コンテンツを取得すると、かかる広告コンテンツを表示する(ステップS2)。無線LANアクセスポイント31は、デジタルサイネージ4に広告コンテンツが表示されている状態で、AP通信エリア61に進入した無線端末2から無線信号を取得すると(ステップS3)、無線端末2の情報を含む検出情報を広告配信管理装置5へ送信する(ステップS4)。
【0020】広告配信管理装置5は、無線LANアクセスポイント31から検出情報を受信すると、広告コンテンツに関連付けて検出情報を記憶する(ステップS5)。これにより、デジタルサイネージ4に表示された広告コンテンツを視認した可能性のあるユーザの無線端末2と広告コンテンツを関連付けることができる。
【0021】その後、無線端末2のユーザが集客側店舗へ移動してAP通信エリア62に進入すると、無線LANアクセスポイント32は、無線端末2から無線信号を取得し(ステップS6)、無線端末2の情報を含む検出情報を広告配信管理装置5へ送信する(ステップS7)。
【0022】広告配信管理装置5は、無線LANアクセスポイント32から検出情報を受信すると、無線端末2のユーザが広告コンテンツによって集客側店舗へ誘導されたと判定し、広告コンテンツによる送客結果の情報を更新する(ステップS8)。例えば、広告配信管理装置5は、広告コンテンツによって集客側店舗へ誘導されたと判定する度に広告コンテンツに対応する送客カウント値をインクリメントする。これにより、広告コンテンツによって集客側店舗へ誘導された無線端末2のユーザの数を把握することができる。
【0023】広告配信管理装置5は、デジタルサイネージ4への広告コンテンツの表示が終了すると、広告コンテンツの広告料を決定する(ステップS9)。広告料は、デジタルサイネージ4への広告コンテンツの表示に対する対価であり、集客側店舗側が広告システム1のサービス運営者(以下、広告サービス運営者と記載する)側へ広告料を支払う。広告サービス運営者は、集客側店舗側から広告料を取得すると、送客側店舗に対して、アフィリエイト(affiliate)料として広告料の一部(例えば、広告料に対して一定割合の金額)を支払う。
・・・
【0025】なお、広告配信管理装置5は、AP通信エリア61のうちデジタルサイネージ4を視認する可能性が高いデジタルサイネージ4前方の所定範囲にある場合に、無線端末2と広告コンテンツを関連付けるようにしてもよい。このようにすることで広告コンテンツの広告効果をより精度よく判定することができる。広告配信管理装置5は、デジタルサイネージ4前方の所定範囲に無線端末2が進入したか否かを、無線LANアクセスポイント31が検出する無線端末2の無線信号の電波強度により判断することができる。」

「【0050】〔1.4.広告配信管理装置5の構成〕次に、実施形態に係る広告配信管理装置5の具体的構成について説明する。図2に示すように、広告配信管理装置5は、通信部30と、記憶部31と、制御部32とを有する。さらに、記憶部31は、広告情報DB41と、AP情報DB42とを有し、制御部32は、配信部51と、取得部52と、更新部53と、決定部54とを有する。
・・・
【0053】制御部32は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。また、制御部32は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)によって内部の記憶装置に記憶されたプログラムがRAMを作業領域として実行されることで、配信部51、取得部52、更新部53および決定部54として機能する。なお、制御部32の構成は、かかる構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。」

「【0054】〔1.4.1.配信部51〕配信部51は、広告情報DB41に記憶されたDS情報テーブルに基づいて広告コンテンツをデジタルサイネージ4へ送信する。DS情報テーブルには、各デジタルサイネージ4に対する広告コンテンツの表示スケジュールが設定される。
【0055】図4は、広告情報DB41に記憶されたDS情報テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、DS情報テーブルは、「DS-ID」毎に、「画面サイズ」、「AP-ID」、「広告表示時間」および「広告ID」が関連付けられた情報である。
【0056】「DS-ID」は、デジタルサイネージ4の識別情報である。なお、デジタルサイネージ4が通信ネットワーク7に直接接続されている場合には、DS-IDとして、デジタルサイネージ4に割り当てられる通信ネットワーク7のネットワークアドレスを用いることができる。
・・・
【0058】「AP-ID」は、デジタルサイネージ4に対応して設置される無線LANアクセスポイント3の識別情報であり、例えば、無線LANアクセスポイント3の通信部22に割り当てられる通信ネットワーク7のネットワークアドレスである。
【0059】「広告表示時間」は、デジタルサイネージ4に広告コンテンツを表示する時間であり、かかる広告表示時間に対応して「広告ID」が設定される。「広告ID」は広告コンテンツの識別情報である。例えば、広告コンテンツのデータを所定のハッシュ関数に入力して求められるハッシュ値を広告IDとしてもよい。」

「【0063】配信部51は、広告情報DB41からの広告コンテンツの読み出しを広告情報テーブルに基づいて行う。図5は、広告情報DB41に記憶された広告情報テーブルの一例を示す図である。図5に示すように、広告情報テーブルは、「広告ID」毎に、「広告情報」、「注文内容」、「表示済み回数」、「集客側AP-ID」および「送客カウント値」が関連付けられた情報である。
・・・
【0068】「送客カウント値」は、広告コンテンツの広告効果を示す情報であり、送客カウント値が大きいほど広告コンテンツによる広告効果が高いことを意味する。かかる送客カウント値は、更新部53によってカウントアップされる。」

「【0069】〔1.4.2.取得部52〕取得部52は、無線LANアクセスポイント3から送信される検出情報を取得する。取得部52は、無線LANアクセスポイント3から検出情報を取得すると、検出情報に含まれる端末ID、電波強度、検出時刻およびAP-IDに基づき、AP情報DB42の検出情報データを更新する。
【0070】図6は、AP情報DB42に記憶される検出情報データの一例を示す図である。図6に示すように、検出情報データは、「AP-ID」毎に、「端末ID」、「検出時刻」および「電波強度」が関連付けられた情報である。」

「【0074】〔1.4.3.更新部53〕更新部53は、検出情報データ、DS情報テーブルおよび広告情報テーブルに基づき、送客側通信エリアに進入した後に集客側通信エリアに進入した無線端末2を検出し、送客カウント値を更新する。
【0075】具体的には、更新部53は、検出情報データおよびDS情報テーブルに基づき、送客側通信エリアに進入した無線端末2を検出する。送客側通信エリアは、広告コンテンツのデジタルサイネージ4に対応付けられた無線LANアクセスポイント3のAP通信エリア6である。
・・・
【0080】更新部53は、送客側のデジタルサイネージ4の画面サイズに対応するカウント条件をカウント判定テーブルから読み出し、送客判定候補端末の送客側通信エリアでの電波強度や滞在時間がカウント条件を満たす場合に、広告コンテンツに対応するカウント値をインクリメントする。
【0081】ここで、DS情報テーブルが図4に示す状態であり、広告情報テーブルが図5に示す状態であり、検出情報テーブルが図6に示す状態であるとする。この場合、更新部53は、広告ID「O1」の広告コンテンツに関する送客カウント値の更新を以下のように行う。
【0082】図4のDS情報テーブルに示すように、広告ID「O1」の広告コンテンツは、2月1日の10時40分?10時45分の期間においては、DS-ID「D2」のデジタルサイネージ4に表示される。したがって、更新部53は、2月1日の10時40分?45分の期間において、AP-ID「A2」に対応するAP通信エリア6が広告ID「O1」に対応する送客側通信エリアであると判定する。
【0083】また、図5の広告情報テーブルに示すように、広告ID「O1」は、集客側AP-ID「A1」に対応しており、広告ID「O1」の広告コンテンツの広告対象は、AP-ID「A1」の無線LANアクセスポイント3の商業空間である。したがって、更新部53は、AP-ID「A1」に対応するAP通信エリア6が広告ID「O1」に対応する集客側通信エリアであると判定する。
【0084】図6の検出情報データに示すように、端末ID「T1」の無線端末21は2月1日の10時43分16秒?10時44分30秒の間にAP-ID「A2」の無線LANアクセスポイント3のAP通信エリアに進入している。したがって、更新部53は、広告ID「O1」に対応する送客側通信エリアに端末ID「T1」の無線端末21が進入したと判定する。
【0085】また、図6の検出情報データに示すように、端末ID「T1」の無線端末21は2月1日の12時26分11秒にAP-ID「A1」の無線LANアクセスポイント3のAP通信エリア6に進入している。したがって、更新部53は、広告ID「O1」に対応する集客側通信エリアに端末ID「T1」の無線端末21が進入したと判定する。
【0086】端末ID「T1」の無線端末21は、送客側通信エリアへ進入した後に集客側通信エリアへ進入していることから、更新部53は、広告ID「O1」の広告コンテンツに関し、端末ID「T1」の無線端末21が送客判定候補端末であると判定する。
【0087】次に、更新部53は、検出した送客判定候補端末がカウント判定テーブルに設定されたカウント条件を満たすか否かを判定し、判定結果に応じて、広告コンテンツ単位で、送客カウント値を更新する。2月1日の10時40分?10時45分の期間において、広告ID「O1」の広告コンテンツを表示したデジタルサイネージ4はDS-ID「D2」のデジタルサイネージ4である。そして、図4に示すように、DS-ID「D2」のデジタルサイネージ4の画面サイズは、50インチである。
【0088】図7に示すカウント判定テーブルにおいて、50インチは、50インチ以上70インチ未満に含まれることから、更新部53は、電波強度閾値が「6」であり、滞在時間閾値が「8秒」であると判定する。したがって、更新部53は、検出情報テーブルに基づき、送客側通信エリア内において、送客判定候補端末の電波強度が6以上の状態が8秒以上続いたか否かを判定する。
【0089】 送客側通信エリア内において、送客判定候補端末の電波強度が6以上の状態が8秒以上続いている場合、更新部53は、広告情報テーブルにおいて、広告ID「O1」に対応する「送客カウント値」を「1」だけインクリメントする。
・・・
【0091】このように、更新部53は、送客側通信エリアに進入した後に集客側通信エリアに進入した無線端末2を検出し、送客カウント値を更新する。広告コンテンツが表示される送客側通信エリアに進入した後に集客側通信エリアに進入した無線端末2のユーザは、広告コンテンツによって集客側通信エリアへ誘導されたと推定できることから、送客カウント値に基づき広告コンテンツによる広告効果を迅速かつ適切に判定することができる。」

これらの記載によれば、甲第1号証には、

デジタルサイネージによる広告効果を判定することができる広告システム(【0007】)であって、
無線LANアクセスポイント31の設置店舗を送客側店舗、無線LANアクセスポイント32の設置店舗を集客側店舗とする広告サービスを提供するものであり(【0017】)、
送客側店舗に設置された無線LANアクセスポイント31のAP通信エリア61内に配置されたデジタルサイネージ4に無線LANアクセスポイント32の設置店舗である集客側店舗に関する広告を含む広告コンテンツを表示し(【0015】?【0017】)、
無線LANアクセスポイント31は、デジタルサイネージ4に広告コンテンツが表示されている状態で、AP通信エリア61に進入した無線端末2から無線信号を取得すると(ステップS3)、無線端末2の情報を含む検出情報を広告配信管理装置5へ送信し(【0019】)、
その後、無線端末2のユーザが集客側店舗へ移動してAP通信エリア62に進入すると、無線LANアクセスポイント32は、無線端末2から無線信号を取得し(ステップS6)、無線端末2の情報を含む検出情報を広告配信管理装置5へ送信し(【0021】)、
広告配信管理装置5は、無線LANアクセスポイント31、32から送信される無線端末2の情報を取得し、取得した情報に基づいてデジタルサイネージ4に表示させた広告コンテンツによる広告効果を判定するものであり(【0017】、具体的には、無線LANアクセスポイント31から検出情報を受信すると、広告コンテンツに関連付けて検出情報を記憶し、その後に、無線LANアクセスポイント32から検出情報を受信すると、無線端末2のユーザが広告コンテンツによって集客側店舗へ誘導されたと判定し、広告コンテンツによる送客結果の情報(広告コンテンツに対応する送客カウント値)をインクリメント(更新)することにより、広告コンテンツによって集客側店舗へ誘導された無線端末2のユーザの数を把握することができるものであり、(【0020】?【0022】)、
デジタルサイネージ4への広告コンテンツの表示が終了すると、広告コンテンツの広告料を決定し、集客側店舗側が広告サービス運営者側へ広告料を支払い、広告サービス運営者が集客側店舗側から広告料を取得すると送客側店舗に対してアフィリエイト料として広告料の一部を支払うものであり(【0023】)、
各デジタルサイネージ4に対する広告コンテンツの表示スケジュールが設定されるDS情報テーブルに基づいて広告コンテンツをデジタルサイネージ4へ送信され、このDS情報テーブルは、デジタルサイネージ4の識別情報である「DS-ID」毎に、「画面サイズ」、各通信エリアに対応する「AP-ID」、「広告表示時間」および「広告ID」が関連付けられた情報を格納するものであり(【0054】?0059)、
広告配信管理装置5は、AP通信エリア61のうちデジタルサイネージ4を視認する可能性が高いデジタルサイネージ4前方の所定範囲にある場合に、無線端末2と広告コンテンツを関連付けるようにしてもよく、デジタルサイネージ4前方の所定範囲に無線端末2が進入したか否かは、無線LANアクセスポイント31が検出する無線端末2の無線信号の電波強度により判断することができ(【0025】)、
その場合、送客側通信エリア進入後に集客側通信エリアに進入した無線端末を送客判定候補端末とし、送客側通信エリア内において、送客判定候補端末の電波強度が所定期間続いている場合に当該広告に対応する送客カウント値をインクリメントされるところ、このうちの、送客側通信エリア進入や集客側通信エリア進入の判定にあたって、AP-ID毎に無線端末を示す端末ID、検出時刻及び電波強度が関連付けられた情報である検出情報データにより、例えば、端末ID「T1」の無線端末21が検出データが示す2月1日の10時43分16秒?10時44分30秒の間にAP-ID「A2」の無線LANアクセスポイント3のAP通信エリアに進入している、端末ID「T1」の無線端末21は2月1日の12時26分11秒にAP-ID「A1」の無線LANアクセスポイント3のAP通信エリア6に進入している、等と判断される、(【0074】?【0089】)
広告システム
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「送客側通信エリア」は、本件発明1の「場所」に相当する。

甲1発明の、「各デジタルサイネージ4に対する広告コンテンツの表示スケジュールが設定されるDS情報テーブル」は、広告を示す広告IDと場所を含む各通信エリアに対応する「AP-ID」とその広告の表示時間とが関連付けられた情報を格納するから、広告の場所が「広告に接する場所」か否か定かでないものの、「広告の場所及び広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部」に相当する。

甲1発明は、送客側通信エリアへの進入を判断するにあたって、検出情報データが示す検出時刻の情報を用いてこの場所に進入と退去の日時の間の滞在期間を特定して、これと場所に広告が表示される期間との重なりがあることを条件の一つとしているから、「時系列」の「ユーザの座標を示」す「移動履歴」に基づくものでなく、また、ユーザが広告に接したとの判定でないものの、場所に進入した日時と場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがあることを判定する判定部を有する点で、本件発明1と共通する。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
広告の場所及び広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
場所に進入した日時と場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なりがあることを判定する判定部と、を備えた、
情報処理装置

<相違点>
(相違点1)
本件発明1は、「時系列」での「ユーザの座標」である「ユーザの移動履歴」を「取得」する「取得部」を備え、判定部は「移動履歴に基づいて」滞在期間を特定するのに対し、甲1発明は、検出情報データを取得し、これに基づいて滞在期間を特定する点。

(相違点2)
本件発明1では、広告の場所が「広告に接する場所」であり、判定部は「広告に接したか」を判定し、「前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部」を備えるのに対し、甲1発明では、広告の場所が送客側通信エリアであり、送客側通信エリア進入後に集客側通信エリアに進入した無線端末を送客判定候補端末とし、送客側通信エリア内において、送客判定候補端末の電波強度が所定期間続いている場合等に当該広告に対応する送客カウント値をインクリメントするものであって、広告に接したユーザのクラスタを生成するものではない点。

相違点の判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明は、送客側通信エリア進入後に集客側通信エリアに進入した無線端末を送客判定候補端末とし、送客側通信エリア内において、送客判定候補端末の電波強度が所定期間続いている場合等に当該広告に対応する送客カウント値をインクリメントするものであり、甲第1号証の課題である「広告効果」(甲第1号証、段落【0001】【0017】)として測定されるのは、あくまで送客側通信エリア進入後に集客側通信エリアに進入したことで送客側店舗で表示された広告コンテンツによって集客側通信エリアへ誘導されたと推定できるユーザのクラスタの特徴量を広告の効果として測定するものであって、「街頭広告の効果」として広告を視認した者のクラスタの特徴量を測定するものとは前提が異なり、この前提を変更すると、甲第1号証の課題の解決ができなくなるものである。
このことに照らせば、甲1発明を「広告に接した」と「判定」された「ユーザ」の「クラスタ」を「生成する」ものへと変更することについて、動機づけがないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2乃至3、5乃至7、8、9について
本件発明2ないし3は、本件発明1の従属請求項に係る発明であり、また、本件発明5ないし7は、本件発明1と同じ相違点2の構成を有するものである。また、本件発明8、9は、それぞれ、装置発明である本件発明1に対応する方法発明、プログラム発明である。これらについても、上記相違点2に対応する構成を有し、この点について容易想到ということはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正後の本件請求項1?3、5?7、8、9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に訂正後の本件請求項1?3、5?7、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、本件請求項4についての特許異議の申立ては、請求項4が訂正により削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、
前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理装置。
【請求項2】
前記移動履歴は、GPSを用いて取得される座標を示す、前記請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記広告情報は、前記ユーザが前記広告に接する領域を示し、
前記判定部は、前記ユーザが移動したルートの少なくとも一部と前記領域とが重なる場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、前記請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報を格納する記憶部と、
ユーザの移動履歴を取得する取得部と、
前記移動履歴と広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定する判定部と、
前記判定部が前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成するクラスタ生成部と、
前記クラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する測定部と、
を備え、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定部は、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理装置。
【請求項6】
前記記憶部は、ユーザの属性を示す登録情報を格納し、
前記クラスタから所定の属性を有するユーザのサブクラスタを生成するサブクラスタ生成部をさらに備え、
前記測定部は、前記サブクラスタのユーザに対する前記広告の効果を測定する、前記請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記測定部は、前記クラスタのユーザが所持する端末のアクセスログに基づいて前記広告の効果を測定する、前記請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
プロセッサが実行する情報処理方法であって、
ユーザの移動履歴を取得し、
前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定し、
前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成し、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定することは、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定し、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定する、情報処理方法。
【請求項9】
プロセッサに、
ユーザの移動履歴を取得させ、
前記移動履歴と広告に接する場所及び前記広告が表示される期間を示す広告情報とに基づいて前記ユーザが前記広告に接したかを判定させ、
前記判定において前記広告に接したと判定したユーザのクラスタを生成させ、
前記移動履歴は、時系列での前記ユーザの座標を示し、
前記判定させることは、前記移動履歴に基づいて前記場所に進入した日時と前記場所から退去した日時との間の滞在期間を特定させ、前記滞在期間と前記広告が表示される期間とに重なり合いがある場合に、前記ユーザが前記広告に接したと判定させる、プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-18 
出願番号 特願2017-109458(P2017-109458)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G06Q)
P 1 651・ 121- YAA (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岸 健司  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 相崎 裕恒
田中 秀樹
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6383838号(P6383838)
権利者 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 井上 正  
代理人 井上 正  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
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