• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
管理番号 1356841
異議申立番号 異議2018-700748  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-14 
確定日 2019-10-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6293484号発明「吸水性樹脂粒子、吸水性樹脂粒子を製造する方法、吸収体、吸収性物品及び止水材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6293484号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第6293484号の請求項1ないし5、7、8及び10ないし12に係る特許を維持する。 特許第6293484号の請求項6、9及び13ないし15に係る特許に対する本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6293484号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-526820号、以下「本願」という。)は、出願人住友精化株式会社(以下「特許権者」ということがある。)により平成24年7月23日(優先権主張:平成23年8月3日(6件)及び平成23年9月30日(2件)、日本国)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であり、平成30年2月23日に特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、平成30年3月14日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件異議申立の趣旨・審理範囲
本件特許につき平成30年9月14日付けで特許異議申立人株式会社日本触媒(以下「申立人」という。)により「特許第6293484号の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。
したがって、本件特許異議の申立てに係る審理においては、請求項1ないし15、すなわち、全請求項を審理対象とし、審理対象でない請求項は存しない。

3.以降の手続の経緯
その後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年10月11日付け 異議申立書副本送付(特許権者あて)
平成30年12月25日付け 取消理由通知
平成31年 3月 8日 意見書・訂正請求書
平成31年 3月25日付け 通知書(申立人あて)
令和 元年 6月18日付け 訂正拒絶理由通知
令和 元年 7月18日 意見書・手続補正書(訂正請求書)

なお、平成31年3月8日付けで訂正請求がされたことに基づき、申立人に対して意見書を提出することを求める平成31年3月25日付け通知書を送付したが、申立人からの意見書の提出はなかったから、以降、申立人に意見を聴くまでもない「特別の事情」があるものとして、申立人に意見書の提出機会を与えなかった。

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第10号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし7が存するとしているものと認められる。

●取消理由1:本件特許の請求項6、9及び13ないし15の記載では、各項に係る発明が明確でないから、本件特許の請求項6、9及び13ないし15の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項6、9及び13ないし15に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由2:本件特許の請求項1、4及び7に記載されている「HLBが6以上の界面活性剤」につき、その数値の意義を明確に理解することができず、各項の記載では、各項に係る発明が明確でないから、本件特許の請求項1、4及び7の記載並びに同各項を引用する請求項2、3、5、6及び8ないし15の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていない。
また、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載では、上記「HLB」の求め方が明らかではなく、当業者が明細書及び図面の記載並びに当業者の技術常識に基づいて、本件特許の請求項1、4及び7に記載されている「HLBが6以上」との数値の意義を明確に理解することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号における「経済産業省令で定めるところにより」記載したものではなく、同条同項同号の規定を満たしていない。
よって、本件の請求項1ないし15に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定及び同条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由3:本件特許の請求項4に記載されている「水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し」につき、その粘度に係る数値の意義を明確に理解することができず、請求項4の記載では、同項に係る発明が明確でないから、本件特許の請求項4の記載及び同項を引用する請求項5、6及び10ないし15の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていない。
また、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載では、上記「粘度」の測定方法につきスピンドルの選択が明らかではなく、当業者が明細書及び図面の記載並びに当業者の技術常識に基づいて、本件特許の請求項4に記載されている「20mPa・s以上の粘度」との数値の意義を明確に理解することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号における「経済産業省令で定めるところにより」記載したものではなく、同条同項同号の規定を満たしていない。
よって、本件の請求項4ないし6及び10ないし15に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定及び同条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由4:本件発明1ないし3及び10ないし12は、いずれも甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができるものではなく、請求項1ないし3及び10ないし12に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由5:本件発明4ないし15は、いずれも甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明4ないし15は、いずれも甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができるものではなく、請求項4ないし15に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由6:本件発明7、8及び10ないし12は、いずれも、甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものであって、請求項7、8及び10ないし12に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
●取消理由7:本件発明6、9及び13ないし15は、いずれも甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲第3号証に記載された発明に基づいて、甲第4号証又は甲第5号証に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができるものではなく、請求項6、9及び13ないし15に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開平10-147606号公報
甲第2号証:特開平2-196802号公報
甲第3号証:国際公開第2011/065368号
甲第4号証:国際公開第2009/025235号
甲第5号証:特開2006-68731号公報
甲第6号証:平成30年8月22日に株式会社日本触媒の片田好希が作成したものと認められる「実験成績証明書」
甲第7号証:特開平6-345819号公報
甲第8号証:「新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展開」2006年6月20日、株式会社テクノシステム発行、第163?165頁
甲第9号証:Elcometer Limitedが作成したものと解される「Elcometer2300 回転式粘度計とViscosityMasterソフトウェア」なる粘度計及び処理ソフトに係る取扱説明書(頒布日不明)第10頁及び第19?24頁
甲第10号証:下記URLのNPO法人PDNのホームページに掲載された「Chapter2 経腸栄養 5.半固形栄養剤 5.1 基礎的な知識」の部分のプリントアウト
URL=www.peg.or.jp/lecture/enternal_nutrition/05-01.pdf
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲10」と略していう。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が、平成30年12月25日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
「当審は、
申立人が主張する上記取消理由1、4ないし7により、本件の請求項1ないし15に係る発明についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。以下詳述する。

I.取消理由1について
・・(中略)・・
3.小括
したがって、本件の請求項6、9及び13ないし15の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、本件の請求項6、9及び13ないし15につき、取消理由1は理由がある。

II.取消理由4ないし7について
・・(中略)・・
オ.取消理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3及び10ないし12は、いずれも甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないものであり、また、本件発明3は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、いずれにしても、本件発明1ないし3及び10ないし12についての特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、取消理由4は理由がある。
・・(中略)・・
ク.取消理由5についてのまとめ
以上のとおり、本件発明4ないし6及び10ないし12は、いずれも甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないものであって、また、本件発明4ないし12についての特許は、いずれも甲2に記載された発明に基づいて、必要に応じて甲7の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明4ないし12についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、取消理由5は理由がある。
・・(中略)・・
エ.取消理由6についてのまとめ
以上のとおり、本件発明7、8及び10ないし12は、いずれも甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないものであって、また、本件発明7、8及び10ないし12についての特許は、いずれも甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明7、8及び10ないし12についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、取消理由6は理由がある。

(4)取消理由7について
甲3に記載された発明に基づく取消理由7に係る検討においては、申立人が主張する本件発明6、9及び13ないし15に加えて、職権により、本件発明4、5、7、8及び10ないし12についても検討する。事案に鑑み、本件発明4、5、7、8及び10ないし12につきまず検討し、本件発明6、9及び13ないし15につき順次検討する。
・・(中略)・・
(ウ)小括
したがって、本件発明4は、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、甲2記載の当業者に公知の技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
・・(中略)・・
(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、甲7の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・(中略)・・
サ.取消理由7についてのまとめ
以上のとおり、本件発明4ないし15は、いずれも甲3に記載された発明又は甲3に記載された発明に必要に応じて甲7の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明4ないし15についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、取消理由7は理由がある。

(5)取消理由4ないし7に係るまとめ
以上のとおり、(1)本件発明1ないし3及び10ないし12に係る特許につき、取消理由4は理由があり、(2)本件発明4ないし12に係る特許につき、取消理由5は理由があり、(3)本件発明7、8及び10ないし12に係る特許につき、取消理由6は理由があり、(4)本件発明4ないし15に係る特許につき、取消理由7は理由がある。
よって、本件発明1ないし15に係る特許については、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」

第4 平成31年3月8日付けの訂正請求について
上記平成31年3月8日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。

I.訂正請求に係る手続補正の適否
上記平成31年3月8日付けの訂正請求書については、上記令和元年7月18日付けの手続補正書で補正されているから、当該手続補正の適否につきまず検討する。

1.令和元年6月18日付けで通知した訂正拒絶理由の概要
上記平成31年3月8日付けの訂正請求書では、訂正事項3、5及び7ないし9に係る各訂正が、いずれも、訂正前の請求項6、9及び13ないし15に係る「吸水性樹脂粒子」、「吸収体」、「吸収性物品」又は「止水材」なる「物」の発明であったものを、訂正後の請求項6、9及び13ないし15に係る「吸水性樹脂粒子の製造方法」、「吸収体の製造方法」、「吸収性物品の製造方法」又は「止水材の製造方法」なる「物の製造方法」の発明にして、発明のカテゴリーを変更する訂正をしているから、訂正の前後において、上記各請求項に係る特許請求の範囲を実質的に変更していることが明らかであって、当該各訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定を満たしておらず、不適法なものである。
そして、当該訂正は、訂正前の請求項1ないし15、すなわち全ての請求項を一群の請求項としてその一群の請求項ごとに訂正するものであるところ、その一部の訂正事項に係る訂正は不適法であるから、当該一群の請求項に含まれる全ての請求項(請求項1ないし請求項15)に係る他の訂正事項による訂正についても不適法となる。
よって、当該訂正請求における訂正事項3、5及び7ないし9による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に規定の要件を満たしていないから、その余につき検討するまでもなく、本件の全ての訂正事項に係る訂正は、いずれも不適法である旨を上記訂正拒絶理由として通知した。

2.特許権者の応答に係る検討
上記訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は、令和元年7月18日付け意見書において、訂正事項3、5及び7ないし9に係る訂正前の請求項6、9及び13ないし15に係る訂正内容を各請求項の記載内容を全て削除する訂正内容に補正するとし、当該補正は訂正請求書の要旨を変更するものではないものとして取り扱われるべきである旨主張するとともに、上記手続補正書により、訂正事項3、5及び7ないし9を、訂正前の請求項6、9及び13ないし15につき各請求項の記載内容を全て削除するものに補正した。
そこで、上記補正につき検討すると、特許権者の上記意見書における主張については首肯し得るものであり、上記請求項の記載事項を変更する各訂正事項を請求項の記載事項を全て削除する訂正事項とする補正は、上記訂正請求書の要旨を変更するものとは認められない。

3.小括
したがって、上記補正は、特許法第17条の5第1項の規定に基づいてされたものであって、同法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するものであるから、上記手続補正書による訂正請求書及びそれに添付された訂正特許請求の範囲に係る補正は、適法なものである。

II.上記訂正請求の適否について
上記I.で説示したとおり、令和元年7月18日付けの手続補正書による補正は適法であるから、補正された平成31年3月8日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき以下検討する。

1.訂正内容
本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1ないし15(すなわち全請求項)について一群の請求項ごとに訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下の訂正事項1ないし9のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「第二重合工程」とあるのを、「第二重合工程(ただし、反応媒体中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で重合温度で導入するものを除く。)」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、「前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有する、」とあるのを、「前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有し、前記重合工程により得られる含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程を更に備え、該後架橋工程に供される該含水ゲル状重合体の水分率が、該含水ゲル状重合体を構成する前記水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分を100質量%として、20?130質量%であり、前記界面活性剤が、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを含む、」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「少なくとも1種の化合物を含む」とあるのを「少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である」と訂正し、「吸水性樹脂粒子を製造する方法」とあるのを、「吸水性樹脂粒子を製造する方法(ただしソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?5、7、8のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、「請求項1?3、7、8のいずれか一項に記載の方法。」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15を削除する。

2.検討
以下の検討において、上記訂正前の請求項1ないし15をそれぞれ「旧請求項1」ないし「旧請求項15」といい、訂正後の請求項1ないし15をそれぞれ「新請求項1」ないし「新請求項15」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。

ア.訂正事項1について
上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項1に記載された事項により特定される発明のうち、一部の態様を除外しているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
してみると、上記訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

イ.訂正事項2について
上記訂正事項2に係る訂正は、旧請求項4につき、界面活性剤の種類を限定するとともに、明細書の記載に基づき、「後架橋工程」に付することを外的に付加し、その際の含水ゲル状重合体の水分量に係る規定を併せて規定したものであって、旧請求項4に係る特許請求の範囲を減縮したものと認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

ウ.訂正事項3、5及び7ないし9について
上記訂正事項3、5及び7ないし9に係る各訂正は、それぞれ、旧請求項6、9及び13ないし15に記載された事項を全て削除したものであるから、いずれも同各項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
してみると、上記訂正事項3、5及び7ないし9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

エ.訂正事項4について
上記訂正事項4に係る訂正は、旧請求項7につき、使用する親水性高分子分散剤の分子量範囲に係る事項を明細書の記載に基づき付加するとともに、同項記載の事項で特定される発明のうち、一部の態様を除外したものであって、いずれも旧請求項7に係る特許請求の範囲の減縮を減縮したものと認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

オ.訂正事項6について
上記訂正事項6に係る訂正は、旧請求項10につき引用する請求項の一部を削除したものであるから、同項に係る特許請求の範囲を減縮したものと認められる。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

カ.小括
以上のとおり、上記訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし9に係る訂正により、新請求項1ないし15は、特許請求の範囲が旧請求項1ないし15に記載された事項に対して実質的に減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし9による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし9による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし15に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正を認める。

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
上記本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし15には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第一の水性液と、HLBが6以上の界面活性剤とを含有し、前記第一の水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、含水ゲル状重合体を含む懸濁液を得ることを含む、第一重合工程と、
45℃以上の前記含水ゲル状重合体を含む懸濁液を、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液と混合して、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む、第二重合工程(ただし、反応媒体中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で重合温度で導入するものを除く。)と、
をこの順に備える、吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記第二重合工程において、前記懸濁液を前記第二の水性液と混合し終わった時点の、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液の温度が35℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一重合工程において、前記油性液が、前記第一の水性液に含まれる前記水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して50?650質量部の前記炭化水素分散媒を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有し、
前記重合工程により得られる含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程を更に備え、該後架橋工程に供される該含水ゲル状重合体の水分率が、該含水ゲル状重合体を構成する前記水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分を100質量%として、20?130質量%であり、
前記界面活性剤が、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを含む、
生理食塩水の吸水速度が1?15秒である吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【請求項5】
前記水性液が水溶性増粘剤をさらに含み、該水溶性増粘剤がヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロースより選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記水性液が親水性高分子分散剤をさらに含み、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有し、
前記親水性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である、吸水性樹脂粒子を製造する方法(ただし、ソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)。
【請求項8】
前記水性液が、前記水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001?10質量部の前記親水性高分子分散剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?3、7、8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?5、7、8、10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素分散媒が、炭素数6?8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6?8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?5、7、8、10、11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)」
(以下、上記訂正後の請求項1ないし15に記載された事項により特定される各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明15」といい、併せて「本件発明」ということがある。)

第6 当審の判断
当審は、
申立人が主張する取消理由1ないし7及び当審が通知した取消理由はいずれも理由がなく、適法な訂正がされた本件の請求項1ないし5、7、8及び10ないし12に係る発明についての特許を取り消すことはできないものであり、
訂正後の請求項6、9及び13ないし15に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、訂正によりそれら各項の技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである、
と判断する。以下詳述する。

I.取消理由1について

1.申立人が主張し、当審が通知した取消理由1の詳細
申立人が主張する取消理由1につき、申立書第30頁第20行ないし第35頁第4行で主張するところに従い、さらに具体的に確認すると、本件の請求項6における「請求項4又は5に記載の方法により得ることのできる」との記載及び請求項9における「請求項7又は8に記載の方法により得ることのできる」との記載が、請求項6又は9に係る「吸水性樹脂粒子」なる物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当する、すなわち、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであるところ、当該記載に関し、出願時においてその物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情が存するものではないから、請求項6又は9並びに同各項を引用して記載されている物の発明に係る請求項13ないし15の記載では、同各項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でない、というものと認められる。

2.検討
しかるに、当該取消理由の対象となる本件の請求項6、9及び13ないし15は、いずれも、上記訂正により同各項の記載事項が全て削除され、取消理由の対象となる請求項の記載が消失したから、当該取消理由1は解消したものといえる。

II.取消理由2について

1.申立人が主張する取消理由2の詳細
申立人が主張する取消理由2につき、申立書第35頁第5行ないし第19行で主張するところに従い、さらに具体的に確認すると、本件の請求項1、4及び7における「HLBが6以上の界面活性剤」との記載につき、HLBが界面活性剤の親水性-親油性のバランスを示すものであること及びそのHLB数値の求め方が種々存在することが当業者に周知であるところ、本件特許明細書中には、HLB値の具体的な求め方が何ら記載されていないから、本件の請求項1、4及び7における「HLBが6以上の界面活性剤」との数値の意義を明確に理解することができず、請求項1、4及び7並びに同各項を引用する請求項5、6及び10ないし15に係る記載では、同各項に係る発明が明確でない、というものと認められる。

2.検討
しかるに、「HLB」につき、界面活性剤、特にノニオン系界面活性剤に係る親水性-親油性のバランスを示す物性値であることは、申立人が主張するとおり、当業者に周知であり、また、「HLB」なる物性値概念が、Griffinにより創案・提唱された上記バランスについての考え方であること(甲8又は下記参考文献等参照)からみて、定義付けとしては、Griffin式により算出された値として理解するのが自然である。
してみると、本件の各発明における「HLBが6以上の界面活性剤」は、その技術的意義が明確であり、発明が明確でないということもできない。
したがって、申立人が主張する取消理由2は理由がない。
(よって、当審は、この取消理由を通知しなかった。)

参考文献:藤本武彦著「全訂版 新・界面活性剤入門」、2003年10月(第5刷)、三洋化成工業株式会社発行、第128?133頁

III.取消理由3について

1.申立人が主張する取消理由3の詳細
申立人が主張する取消理由3につき、申立書第35頁第20行ないし第36頁末行で主張するところに従い、さらに具体的に確認すると、本件の請求項4における「水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し、」との記載につき、当該粘度の測定条件のうち、スピンドルの選択又は測定容器の口径によっても粘度の測定値が変化することが当業者に周知であるところ、本件特許明細書中には、スピンドルの選択又は測定容器の口径につき記載されていないから、本件の請求項4における「水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有」するとの数値の意義を明確に理解することができず、請求項4及び同項を引用する請求項5、6及び10ないし15に係る記載では、同各項に係る発明が明確でない、というものと認められる。

2.検討
しかるに、「(溶液などの)粘度」のブルックフィールド型粘度計による測定においては、試料の粘度の見積り値の範囲に従い、回転数とスピンドルとの適当な組合せを適宜選択すべきことは、JIS K 7117-1規格等で見られるとおり、当業者に周知であり、また、スピンドルに対してずり応力の点で影響があるような(口径の)測定容器を避けるべきことも当業者の技術常識であるものと理解するのが自然である。
そして、本件特許明細書(【0180】)には、粘度の測定方法として、「スピンドル回転数60rpm、20℃の条件で、ブルックフィールド回転粘度計(LVDV-I)を用いて測定され」ることが記載されているから、スピンドル回転数に適合するスピンドルにより、粘度の測定値に影響が出ないような測定容器中で測定されたものと理解することができ、粘度は当該測定方法で測定されている一義的測定値であるものと解するのが自然である。
してみると、本件の各発明における「水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し、」は、その技術的意義が明確であり、発明が明確でないということもできない。
したがって、申立人が主張する取消理由3は理由がない。
(よって、当審は、この取消理由を通知しなかった。)

IV.取消理由4ないし7について

1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明
以下、上記取消理由4ないし7につき検討するにあたり、当該取消理由4ないし7はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし甲10に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1ないし3及び7に記載された発明の認定を行う。
なお、各甲号証の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。

(1)甲1

ア.甲1に記載された事項
上記甲1には、申立人が申立書第16頁下から第2行ないし第19頁第11行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(a1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 HLBが8?12である界面活性剤の炭化水素溶液を攪拌しながら、この炭化水素溶液中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物の水溶液を攪拌しながら導入し、ラジカル重合開始剤と温度との複合作用下に逆相懸濁重合させ、上記モノマーが重合した時点で反応媒体中に第2の親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で導入し、この第2のモノマーが重合した時点で蒸留および乾燥によって炭化水素相と水とを抽出する、直鎖または分岐鎖を有し、必要に応じて架橋された、水または水性流体中への溶解または膨潤速度が速い粉末状の親水性ポリマーの製造方法において、
第2のモノマーを重合温度で導入し、
モノマー水溶液の量を炭化水素相に対する水溶液相の容量比率が0.6?1.2となるような量にすることを特徴とする方法。
【請求項2】 第1の親水性モノマーを重合温度で導入する請求項1に記載の方法。
【請求項3】 HLBが8?12である界面活性剤がソルビタンモノラウレートである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 親水不飽和モノマーがアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらのN-置換誘導体、例えばN-メチロールアクリルアミドまたはN-メチロールメタクリルアミド、(メタ)アクリル酸またはメタクリル酸のカチオンエステル、例えばジメチル-またはジエチルアミノ(エチルまたはプロピル)(メタ)アクリレート、これらアクリル酸のカチオンエステルの塩、これらカチオンエステルの第4級アンモニウム誘導体の塩、例えば塩化アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸から成る群の中から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】 重合温度が75±10℃である請求項1?3のいずれか一項に記載の方法。」

(a2)
「【0021】実施例2
本発明のポリアクリル増粘剤・超吸収剤用親水ポリマーの調製
段階(a)
固体または液体の反応物の導入手段、攪拌器、不活性ガスのパージ系、温度計および加熱/冷却装置を備えた1リットル容の反応器中で600回転/分に攪拌しながら、523.5gのヘプタンに周囲温度で0.81gのソルビタンモノラウレートを溶解する。次いで、混合物を70℃に加熱し、窒素パージを200ml/分の速度で開始する。
【0022】段階(b)
別に、ビーカー中で、80重量%のアクリル酸を含む水溶液95.26gを141gの22.5%の苛性ソーダ液で中和する。この操作は溶液の温度が25℃以下になるように実施する。次いで、5.6gの脱塩水に溶解した0.114gの過硫酸カリウムを添加する。
【0023】段階(c)
反応器を70℃、600回転/分で攪拌および200ml/分の速度で窒素パージしながら、段階(b)で調製した水溶液を導入する。短い制止時間の後に、重合が開始し、温度は70℃以上に上昇する。反応終了時の温度は、反応器の設定温度すなわち70℃に戻る。
【0024】段階(d)
段階(c)の操作を行いながら、95.26gの80%アクリル酸を141gの22.5%苛性ソーダ液で中和して第2の水溶液を別に調製する。この操作は溶液の温度が25℃以下になるように実施する。次いで、2重量%のエチレングリコールジグリシジルエーテルを含む水溶液3.6gを添加する。
【0025】段階(e)
次いで、段階(d)で調製された水溶相を段階(c)の終了時と同様に重合反応器に導入する。導入は約20分かけて行う。窒素パージ200ml/分と攪拌600回転/分を維持する。設定温度は70℃のまま固定する。短い制止時間の後、重合が開始する。重合は30分間続けることができる。
【0026】段階(f)
次いで、ジャケットを120℃に上げることによって反応器内の温度を上昇させて水およびヘプタンを除去する。蒸発完了後、親水ポリマーが得られる。この特徴は下記の通り:
粒径:100μmの篩を通過する微細粉末含有率は約1%
生成物の粘度特性は下記の通り:
η(H_(2)O中1%)>60,000mPa s
η(H_(2)O中1%+0.1%NaCl)=20,000mPa s 」

(a3)
「【0034】実施例4
従来法および本発明でソルビタンモノラウレート(HLB=8.6)の存在下で逆相懸濁重合で製造したラズベリー型のアクリルポリアクリル親水性ポリマーの比較
【0035】実施例2の条件下でモノマーを1回導入してポリマーP1を製造するが、下記の点が相違する:段階(a)で、ソルビタンモノラウレート溶液を36℃に維持する。段階(c)で、反応器の温度が70℃に上がる前にモノマーの導入を完了する。段階(d)および段階(e)は実施しない。これら条件は欧州特許第36463号の実施例1に記載の従来法の条件に類似している。
【0036】実施例2の条件下でモノマーを2回導入してポリマーP2を製造するが、下記の点が相違する:段階(a)で、ソルビタンモノラウレート溶液を36℃に維持する。段階(c)で、反応器の温度が70℃に上がる前にモノマーの導入を完了し、段階終了時に、反応器の温度を10℃に戻す。段階(e)で、2回目のモノマーの導入は段階(d)の低い終了温度で行う。設定温度はモノマーを全て反応器に導入し終わった後にのみ設定される。この実施例は欧州特許第4411507号の実施例1に記載の従来法の環境を再現している。
【0037】ポリマーP3は本発明の実施例2のポリマーである。ポリマーP4は実施例2の方法によって得られる本発明のポリマーであるが、段階(e)で第2のモノマーの導入を20分でなく60分かけて行った。得られた結果を〔表1〕に示す。
(1)吸収能は超吸収樹脂の固有吸収能であり、いわゆる「ティーバッグ」試験(EDANA,European Association of Nonwovens:「ティーバッグを用いた吸着能と保持能の測定」)で求められる。この試験では熱溶着可能な紙袋に入れた乾燥樹脂を塩化ナトリウムの0.9%水溶液に約20分浸漬し、約10分間水切りした後に、乾燥樹脂の重量に対して取り込まれた水分量(重量)を測定する。次いで、同じ袋を規定速度で3分間遠心分離し、秤量する。この重量から塩水保持能を求める。
【0038】(2)GST値はゲル化時間の値である。ゲルGSTの測定では3gの超吸収粉末を外径60mm、250ml容のビーカーに入れ、寸法45×8mmの電磁攪拌器をビーカー中に入れ、全体を電磁攪拌プレート上に置く。ストップウォッチを始動させる直前に0.9%の塩水溶液100mlをビーカーに注入し、それと同時に攪拌を600回転/分に調節する。攪拌渦が消える瞬間にストップウォッチを止める。ストップウォッチで示す時間(秒)がゲル化時間に相当する。
【0039】(3)5kPaCS値は加圧下での毛細管吸収能(CS)を表している。毛細管吸収能(CS)は荷重(ここでは5kPaとなるように選択した)下で1.5gの超吸収物のベッドが濃度0.9%食塩水を吸収する能力を測定する。これは「圧力下または荷重下での毛細管吸収・吸引能」(”Absorption under load”の省略形AULが一般に用いられる)とよばれる特性である。操作法は広く知られている。その説明は例えば欧州特許第EP-A1-0258120号に見られる。
【0040】
【表1】


【0041】
本発明方法は、使用SE炭化水素溶媒に対する最終製品の比率が優れているという生産効率の利点と、温度管理が極めて容易になるという利点があり、しかも従来技術の製品と完全に同等さらにはそれ以上の品質の超吸収体が生産できるという点で有利である。」

イ.甲1に記載された発明
上記甲1には、上記ア.の記載(特に当審が付した下線部)からみて、
「HLBが8?12である界面活性剤の炭化水素溶液を攪拌しながら、この炭化水素溶液中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物の水溶液を攪拌しながら導入し、ラジカル重合開始剤と温度との複合作用下に逆相懸濁重合させ、上記モノマーが重合した時点で反応媒体中に第2の親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で導入し、この第2のモノマーが重合した時点で蒸留および乾燥によって炭化水素相と水とを抽出する、直鎖または分岐鎖を有し、必要に応じて架橋された、水または水性流体中への溶解または膨潤速度が速い粉末状の親水性ポリマーの製造方法において、
第2のモノマーを75±10℃である重合温度で導入することを特徴とする方法。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)甲2

ア.甲2に記載された事項
上記甲2には、申立人が申立書第19頁第15行ないし第20頁第12行、同書第20頁第20行ないし第22頁第25行(末行)及び同書第23頁第12行ないし第24頁第15行でそれぞれ指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(b1)
「1.平均粒径が100?600μm、粒径分布が対数標準偏差値σζ0.35以下であって、粒子表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂。
2.粒子の平均長径と平均短径の比が1.5?20で角を有しない非球状であって、粒子表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂。
3.クレーム2において、粒子の長径が100?10,000μm、短径が10?2,000μmである吸水性樹脂。
4.平均粒径が100?600μm、粒径分布が対数標準偏差値σζ0.35以下の重合体粉体の表面を架橋処理する吸水性樹脂の製造方法。
5.粒子の平均長径と平均短径の比が1.5?20で角を有しない非球状の重合体粉体の表面を架橋処理する吸水性樹脂の製造方法。
6.クレーム4または5において、重合体粉体の含水率が10重量%未満である吸水性樹脂の製造方法。
7.クレーム4、5または6において、重合体粉体が、ブルックフィールド回転粘度計(25℃、0.6rpm)による粘度が15cps以上の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を、分散剤としてショ糖脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、重合不活性な疎水性有機溶剤中に分散・懸濁させ、ラジカル重合開始剤で重合させることにより得られたものである吸水性樹脂の製造方法。
8.クレーム7において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を15?5,000cpsに調整するようにする吸水性樹脂の製造方法。
9.クレーム7において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を5,000?1,000,000cpsに調整し、分散剤としてショ糖脂肪酸エステルのみを用いるようにする吸水性樹脂の製造方法。
10.クレーム4、5、6、7、8または9において、架橋処理に当たり、架橋剤として重合体の官能基に対し反応性の基を分子内に2個以上有するものを用いるようにする吸水性樹脂の製造方法。
11.クレーム10において、架橋剤は、これを水および親水性有機溶剤と混合してなる処理溶液の形で用いるようにする吸水性樹脂の製造方法。
12.クレーム11において、処理溶液中の架橋剤、水および親水性有機溶剤の配合割合を、重合体粉体に対してそれぞれ0.005?20重量%、0.1?5重量%、0.01?6重量%となるようにする吸水性樹脂の製造方法。
13.クレーム11または12において、重合体粉体を処理溶液と混合した後、40?250℃で加熱して、前記重合体粉体の表面を架橋処理するようにする吸水性樹脂の製造方法。」(第1頁左下欄第5行?第2頁左上欄第16行、2.特許請求の範囲)

(b2)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は吸水性樹脂とこれを製造する方法に関するものであり、更に詳しくは、特定範囲の平均粒径を有し、かつ粒径分布の狭い表面が均一に改質された吸水性樹脂、特に吸水倍率、吸水速度、吸引力、ゲル強度等に優れ、かつこれら吸水特性間のバランスに優れるとともに、水可溶性の樹脂(以下、水可溶成分という。)の溶出の少ない、衛生材料等として好適な吸水性樹脂および該吸水性樹脂の製造方法に関するものである。さらに本発明は角を有しない非球状であって取扱い性に優れ、表面が改質された新規な吸水性樹脂および該吸水性樹脂の製造方法に関するものである。」(第2頁左上欄第18行?右上欄第11行)

(b3)
「本発明に用いる重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体の例としてはアクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のノニオン性親水基含有単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アアリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその4級化物、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート並びに(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種又は2種以上のものである。単量体水溶液中の単量体濃度は一般に広い範囲にわたって可変であるが20重量%以上?飽和濃度までが望ましい。」(第3頁右下欄第19行?第4頁右上欄第9行)

(b4)
「これらの架橋剤の例としては、・・(中略)・・反応性官能基を有するものとしては、例えば不飽和単量体がカルボキシル基を有する場合には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の如き多価アルコール類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の如き多価グリシジル化合物類;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス〔3-(1-アジリジニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン-ビス-4,4’-N,N’-ジエチレンウレア等の如き多価アジリジン類;エピクロルヒドリン、α-メチルクロルヒドリン等の如きハロエポキシ化合物類;グルタルアルデヒド、グリオキサール等の如き多価アルデヒド類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の如き多価アミン類;2,4-トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の如き多価イソシアネート類;・・(中略)・・などを例示することができる。・・(中略)・・これらの架橋剤の使用量は、一般に水溶性エチレン性不飽和単量体に対して0.01?1.0モル%程度である。」(第4頁右上欄第14行?第5頁左上欄第7行)

(b5)
「本発明に好適に使用できる重合体を得るには水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液粘度を15cps以上に調整し、かつ分散剤としてショ糖脂肪酸エステルおよび/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用い逆相懸濁重合する方法がもっとも好ましいが、この場合水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を、ブルックフィールド回転粘度計(25℃、0.6rpm)で測定した粘度(以下、単に粘度という。)が、15cps以上となるように調整しておくことが必要である。粘度が15cpsよりも低いと、重合を行っても得られる平均粒径が小さく、かつその粒径分布も広いものとなる。
又、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を15?5000cps内でコントロールすることにより、その粘度に応じて、平均粒径が100?600μmの範囲内でかつその粒径分布が非常に狭い本発明に好適に利用できる球状の重合体を得ることができる。また、一般に同1条件では単量体水溶液の粘度が高くなるほど得られる樹脂の平均粒径が大きくなり、粘度を調整するという簡単な操作によって種々の平均粒径のものが得られる。得られる重合体粉体の好ましい平均粒径はその用途に応じて異なるがたとえば衛生材料に用いる場合には平均粒径が通常100?600μm、好ましくは150?400μm程度であり、その場合には単量体水溶液の粘度を15?5000cps、好ましくは20?3000cpsに調整することにより得られる。このようにして得られた重合体粉体は、しかもその粒径分布が非常に狭いものである。たとえば粒径分布を対数確率紙にプロットした場合、その分布の均一性をあらわす指標となる対数標準偏差値σζの値が0.35以下、好ましくは0.30以下という従来の方法では得られなかった狭い粒径分布を有する重合体が得られるのである。
他方、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を5,000?1,000,000cpsの範囲に調整したときには、撹拌の条件にもよるが、下記のように定められる、粒子の平均長径と平均短径の比が1.5?20の範囲にあり、角を有しない非球状の、たとえば、ウインナーソーセージ状の粉体が得られる。この重合体は、長径が100?10,000μm、好ましくは1000?10,000μm、短径が10?2000μm、好ましくは100?2000μmであり、かつ、上述のように平均長径と平均短径の比が1.5?20の範囲内にあるから、基材からの脱落がおきにくい等の点で極めて取り扱い性が良く、様々な基材との組み合わせの範囲も広がる。この新規な形状を有する重合体粉体の形状を表わすための径は、以下の様に定められる。
・・(中略)・・
上記5,000cps以上の粘度範囲内であっても、粘度が5,000?20,000cpsでは、非球状重合体と球状重合体が混在し、粘度が20,000cpsより高くなると、ほぼ 非球状重合体のみが得られる。なお、粘度が1,000,000cpsよりも高いと、単量体水溶液を反応器に供給する場合に困難を伴うことがある。
上記のような粘度調整に用いることのできる増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリアクリル酸架橋体、ポリアクリル酸(部分)中和物架橋体、デキストリン、アルギン酸ナトリム等をあげることができるが、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリアクリル酸(部分)中和物架橋体である。水溶性のポリアクリル酸(部分)中和物を用いる場合は、その5%水溶液の粘度が30cps以上のものが好ましい。又、架橋体の如き水不溶性のものを用いる場合は、その粒径が30μm程度以下の粉末状のものが好ましい。
これらの増粘剤を用いて所定の粘度に水溶液を増粘するためには、その単量体の種類、濃度、増粘剤の分子量によっても異なるが、増粘剤を単量体に対して一般に0.05?20重量%の範囲で使用するのが好ましい。」(第5頁左上欄第8行?第6頁左上欄第12行)

(b6)
「又、この場合に使用される分散剤は、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルである。ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖とステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等から選ばれた1種以上の脂肪酸とのモノ、ジ及びトリエステル等が挙げられる。他方、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、縮合度が10以下のポリグリセリンとステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リシノール酸等から選ばれた少なくとも1種の脂肪酸とのモノ、ジ及びトリエテル等があげられる。これらの非イオン系界面活性剤の中でも、特にHLBが2?6のものが好ましい。分散剤の使用量は、一般に水溶性エチレン性不飽和単量体に対し、0.05?10重量%、好ましくは0.5?5重量%である。
なお、本発明に好適に利用できる重合体の1つである、角を有しない非球状の吸水性重合体を得るためには、分散剤としてショ糖脂肪酸エステルのみを用いる必要があり、他の分散剤ではこのような得意な形状の吸水性樹脂は得られない。」(第6頁左上欄第13行?右上欄第13行)

(b7)
「本発明に用いる重合体粉体を得るために、上記のごとく逆相懸濁重合を採用する際、使用する非重合性の疎水性有機溶剤としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘブタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等の置換基を有してもよい芳香族炭化水素類;クロルベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類があげられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用できるが、特に好ましくは、n-ヘキサン,n-ヘブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、四塩化炭素である。
有機溶剤と水溶性エチレン性不飽和単量体の比率は、重合熱の除去、温度のコントロール、又は安定な分散性の点から、一般に、1:1?5:1が適当である。
ラジカル重合開始剤としては、当該分野に常用されるものであれば制限なく使用することができるが、特に水溶性のものが好ましい。具体的には例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ化合物等があげられる。これらの重合開始剤は、2種以上混合して使用することも可能であり、更には亜硫酸塩、l-アスコルビン酸、第2鉄塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を用いることもできる。
本発明に用いる吸水性重合体を得るために上記のような逆相懸濁重合を行なった場合は重合後乾燥工程を経るようにすれば、得られた重合体をビーズ状又はソーセージ状の粉体として取り出すことができる。この乾燥工程としては、重合に用いた疎水性有機溶剤との共沸で水を留去する方法や、含水ゲル状物を濾過後、通常の熱風乾燥器、減圧乾燥器や流動床乾燥器により乾燥する方法等がある。」(第6頁右上欄第14行?右下欄第14行)

(b8)
「〔実施例〕
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが本発明の範囲は、これらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例中に特にことわりのない限り%は重量%を、部は重量部を示すものとする。
なお、吸水性樹脂の吸水性能は、以下に示す方法により測定した。
(1)平均粒径及び粒径分布
平均粒径は、JIS標準ふるい(20メッシュ、32メッシュ、48メッシュ、60メッシュ、100メッシュ、145メッシュ、200メッシュ、350メッシュ)を用いて重合体粉体を篩分級した後、残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、R=50%に相当する粒径を平均粒径とした。
又、粒径分布は、その指標として下記の式であらわされる対数標準偏差値σζを用いた。ここでは、σζの値が小さいほど粒径分布が狭いことを意味する。
σζ=1/2・In(x_(2)/x_(1))
(x_(1)はR=84.1%、x_(2)はR=15.9%のときのそれぞれの粒径)
(2)吸水倍率
吸水性樹脂0.2gを不織布製のティーバッグ式袋(40mm×150mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して10分と30分後に、このティーバッグ式袋を引き上げ、一定時間水切りした後、その重量を測定し、以下の式で吸水倍率を算出した。尚、ティーバッグ式袋のみを浸漬した場合の吸水重量をブランクとした。


(3)吸水速度
人工尿(尿素1.9重量%、塩化ナトリウム0.8重量%、塩化カルシウム0.1重量%、硫酸マグネシウム0.1重量%含有)20ml中に吸水性樹脂1.0gを加え、吸水性樹脂がすべての人工尿を吸収して膨潤ゲルの流動性がなくなるまでの時間でもって吸水速度とした。
(4)吸引力
ティッシュペーパー(55mm×75mm)の上に人工尿20mlを加えて人工尿を含んだ基材を作成し、その基材の上に、吸水性樹脂1.0gを置いた。10分後に膨潤ゲルを採取して、その重量を測定することにより、ティッシュペーパーからの液の吸引力とした。また同時に加えた吸水性樹脂のママコの有無を観察した。
(5)樹脂表面から溶出する水可溶成分量
不織布、綿状パルプ、吸水紙および防水フィルムからなる市販の子供用紙おむつ(重量72g)を半分に切り、ポリマー2.5gを綿状パルプと吸水紙の間に均一に散布し、上記人工尿120mlを加えて37℃で16時間放置した。16時間後ポリマー上部の綿状パルプのみをとり、1000mlの純水でこのパルプに移行した水可溶成分を抽出し、濾紙で濾過した後、濾液中のポリマー分を酸-塩基滴定により測定して、吸水性樹脂に対する全溶出水可溶成分量(重量%)を求めた。
実施例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、DK-エステルF-50、HLB=6)4.0gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹きこんで溶存酸素を追い出した。別にフラスコ中にアクリル酸ナトリウム84.6g、アクリル酸21.6gおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、HEC-ダイセルEP-850)0.53gを溶解させ、モノマー濃度35重量%、粘度40cpsのモノマー水溶液を調整した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹きこんで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。
次いでこのフラスコ内の単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて230rpmで撹拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、濾過し、80℃で減圧乾燥し、球状の重合体粉体〔A01〕を得た。得られた重合体粉体〔A01〕の含水率は5.6%であった。
該重合体粉体〔A01〕100部にジエチレングリコール0.3部、水4部、イソプロパノール0.5部からなる処理溶液をパドル型混合機で混合した。混合時には大きな塊が全く発生せず、混合物を20メッシュの金網(目開き840μm)に通したところ、すべての混合物が通過した。得られた混合物をパドルドライヤーで180℃、1時間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A11〕を得た。得られた吸水性樹脂〔A11〕の諸特性については表-1にまとめて示した。
実施例2
増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SP-600)を2.2gを用いた以外は実施例1と同様の条件で重合を行った。モノマー水溶液の粘度は800cpsで、得られた球状重合体粉体〔A02〕の含水率は6.8%であった。
該重合体粉体〔A02〕100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水3部、メタノール6部からなる処理溶液をパドル型混合機で混合した。混合物を20メッシュの金網に通したところ、すべての混合物が通過した。得られた混合物をパドルドライヤーで100℃、1時間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A12〕を得た。その諸性能の測定結果を表-1に示した。
・・(中略)・・
実施例6
実施例1においてモノマー水溶液に加えるヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、HEC-ダイセルEP-850)の量を1.6gに変更し、モノマー水溶液の粘度を2000cpsに調整した以外は実施例1と同様の条件で重合を行ない、全てが球状の重合体粉体〔A06〕を得た。得られた重合体粉体〔A06〕の含水率は6.4%であった。
この重合体粉体〔A06〕を実施例1と同様に表面架橋処理して吸水性樹脂〔A16〕を得た。吸水性樹脂の諸性能については表-1にまとめて示した。
実施例7
実施例2においてモノマー水溶液に加えるヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、HEC-ダイセルSP-600)の量を0.3gとし、モノマー水溶液の粘度を17cpsに調整した以外は実施例2と同様の条件で重合を行ない、全てが球状の重合体粉体〔A07〕を得た。得られた重合体粉体〔A07〕の含水率は5.9%であった。
この重合体粉体〔A07〕を実施例1と同様に表面架橋処理して吸水性樹脂〔A17〕を得た。吸水性樹脂の諸性能については表-1にまとめて示した。
・・(中略)・・
比較例1
実施例1の重合体粉体〔A01〕については諸性能を測定し、表-1に示した。
比較例2
実施例1において分散剤としてショ糖脂肪酸エステルの代わりにソルビタンモノステアレート(花王(株)製、レオドールSP-S10)3.5gを用いた以外は実施例1と同様の重合を行ない、含水率6.2%、平均粒径80μm、σζ=0.43の比較用重合体粉休〔B01〕を得た。
得られた比較用重合体粉体〔B01〕を実施例1と同じ処理溶液とパドル型混合機で混合した。混合時に20メッシュの金網を通過しない塊が8.6%生成した。得られた20メッシュの金網を通過した混合物をパドルドライヤーで180℃、1時間加熱処理することにより比較用吸水性樹脂〔B11〕を得た。その諸性能の測定結果を表-1に示した。
比較例3
実施例1においてヒドロキシエチルセルロースをモノマー水溶液に添加しない以外は同様の操作を行ない、含水率4.7%、平均粒径100μm、σζ=0.41の比較用重合体粉体〔B02〕を得た。この時モノマー水溶液の粘度は7cpsであった。
得られた比較用重合体粉体〔B02〕を実施例2と同じ処理溶液をパドル型混合機で混合した。混合時に20メッシュの金網を通過しない塊が8.2%生成した。得られた混合物を流動層乾燥器で100℃、1時間加熱処理することにより比較用吸水性樹脂〔B12〕を得た。その諸性能の測定結果を表-1に示した。
比較例4
実施例1において分散剤としてショ糖脂肪酸エステルの代わりにテトラグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-4010)4.0gを用いたヒドロキシエチルセルロースをモノマー水溶液に添加しない以外は同様の操作を行ない、含水率5.9%、平均粒径150μm、σζ=0.40の比較用重合体粉体〔B03〕を得た。
得られた比較用重合体粉体〔B03〕を実施例1と同じ処理溶液とパドル型混合機で混合した。混合時に20メッシュの金網を通過しない塊が7.6%生成した。得られた混合物をパドルドライヤーで180℃、1時間加熱処理することにより比較用吸水性樹脂〔B13〕を得た。その諸性能の測定結果を表-1に示した。
比較例5
実施例8の重合体粉体〔A08〕については諸性能を測定し、表-1に示した。
比較例6
実施例10において28メッシュ金網を通過する部分のみをとり比較用重合体粉体〔B04〕を得た。
この比較用重合体粉体を実施例1と同様に表面架橋処理して比較用吸水性樹脂〔B14〕を得た。
表-1



(第9頁左上欄第1行?第13頁下段)

イ.甲2に記載された発明
上記甲2には、上記ア.の記載(特に下線部)からみて、
「シクロヘキサン及び分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)を含有する有機溶剤溶液に、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース及び過硫酸カリウムを含有する粘度40cps、800cps又は2000cpsのモノマー水溶液を分散させて重合して得られた球状の重合体粉体を、さらにジエチレングリコール又はエチレングリコールジグリシジルエーテルを含有する水性処理溶液で処理してなる吸水性樹脂球状粉体の製造方法。」
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)及び
「甲2発明1の製造方法により製造された平均粒径400?550μm、吸水倍率60?65g/g、吸水速度21?42秒を有する吸水性樹脂球状粉体。」
に係る発明が記載されているものといえる。

(3)甲3

ア.甲3に記載された事項
上記甲3には、申立人が申立書第25頁第15行ないし第26頁第18行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(c1)
「 請求の範囲
[請求項1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8?12の界面活性剤の存在下、炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程、及び、 前記含水ゲル状重合体の水分率を、前記含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30?110質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を有する
ことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
[請求項2] HLBが8?12の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
[請求項3] 後架橋剤が、グリシジルエーテル化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
[請求項4] 水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対する後架橋剤の添加割合が、0.0001?1モル%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
[請求項5] 水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対する後架橋剤の添加割合が、下記式(1)の範囲内であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
(-0.0002Z+0.023)≦Y≦(-0.0002Z+0.050) (1)
式(1)中、Yは後架橋剤の添加割合(モル%)、Zは後架橋剤混合時の含水ゲル状重合体の水分率(質量%)を示す。
[請求項6] 請求項1、2、3、4又は5記載の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
[請求項7] 平衡膨潤性能が10?28mm、吸水速度が1?20秒、及び、中位粒径が80?400μmであることを特徴とする請求項6記載の吸水性樹脂粒子。
[請求項8] 液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に、請求項6又は7記載の吸水性樹脂粒子を有する吸収体を挟持してなることを特徴とする吸収性物品。
[請求項9] 2枚以上の液体透過性シートの間に、請求項6又は7記載の吸水性樹脂粒子を30?300g/m^(2)で有する吸収体を挟持してなることを特徴とする止水材。」(第27頁第1行?第28頁第7行)

(c2)
「技術分野
[0001] 本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、止水材及び吸収性物品に関する。更に詳しくは、特定の製造条件を経ることで、高い平衡膨潤性能と、速い初期膨潤性能または優れた吸水速度を有し、かつ、粒径が適度な大きさでハンドリング性に優れた吸水性樹脂粒子を得る製造方法、それにより得られる止水性能に優れた吸水性樹脂粒子、及び、該吸水性樹脂粒子を用いた止水材及び吸収性物品に関する。」

(c3)
「[0009] 本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、まず、水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8?12の界面活性剤の存在下、炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程を行う。
[0010] 上記水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタアクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及び、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。なかでも、工業的に入手が容易という観点から、アクリル酸、メタアクリル酸又はそのアルカリ塩、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。
[0011] 上記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。上記水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%?飽和濃度以下の範囲であることが好ましい。また、W/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高くなるという観点から、25?45質量%がより好ましく、30?42質量%であることが更に好ましく、35?40質量%であることが特に好ましい。
[0012] 上記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、その酸基をアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和しておいてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化アンモニウム等の水溶液が挙げられる。これらアルカリ性中和剤は単独で用いても、併用してもよい。
[0013] 上記アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、10?100モル%の範囲が好ましく、30?90モル%の範囲がより好ましく、50?80モル%の範囲が更に好ましく、65?78モル%の範囲が特に好ましい。」

(c4)
「[0014] 水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加されるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-〔1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。」

(c5)
「[0018] 本発明では、HLBが8?12の界面活性剤を用いる。上記HLBが8?12の界面活性剤を用いることで、W/O型逆相懸濁の状態が良好となり、好適な粒子径を有する粒子が得られる。なお、上記界面活性剤のHLBは8.5?10.5が好ましい。
[0019] 上記界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル〔(ポリ)とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。以下同じ〕、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、等のノニオン系界面活性剤;・・(中略)・・等が挙げられる。なかでも、W/O型逆相懸濁の状態が良好で、止水材に好適な形態の粒子が好適な粒径で得られやすく、工業的に入手が容易という観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルが好ましく、なかでも、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高いという観点から、ソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[0020] 本発明では、W/O型逆相懸濁の状態を安定させる目的で、上記界面活性剤と高分子保護コロイドとを併用してもよい。上記高分子保護コロイドとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン-ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-無水マレイン酸共重合体、ブタジエン-無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、W/O型逆相懸濁の安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体が好ましい。これらの高分子保護コロイドは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[0021] 上記界面活性剤の添加量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な添加量を選択する観点から、逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100質量部に対して、0.1?5質量部が好ましく、0.2?3質量部がより好ましく、0.4?2質量部が更に好ましい。」

(c6)
「[0022] 上記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、工業的に入手が容易である観点から、n-ヘキサン、n-ヘプタン及びシクロヘキサンが好ましい。なかでも、本発明におけるW/O型逆相懸濁の状態が良好で、止水材に好適な形態の粒子が好適な粒径で得られやすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能も良好な観点から、n-ヘプタンがより好ましい。」

(c7)
「[0026] 本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、上記含水ゲル状重合体の水分率を、上記含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30?110質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を行う。
・・(中略)・・
[0028] 上記1次乾燥工程を行った後、後架橋反応を行う。前記のようにして得られた含水ゲル状重合体に対して、特定の条件での後架橋反応を施すことにより、優れた膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる。
[0029] 上記後架橋剤としては、前記水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、前記アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物であり、また、好ましくは水溶性の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;・・(中略)・・等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、反応性に優れている観点から、グリシジルエーテル化合物が好ましく、なかでも、水溶性が高く、後架橋剤としてのハンドリング性が良いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールグリシジルエーテルがより好ましく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルが更に好ましい。
・・(中略)・・
[0031] 本発明において、含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合は、上記含水ゲル状重合体の水分率を特定の範囲に調整した後に行う。このように、含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合時における水分率をコントロールすることにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
・・(中略)・・
[0034] 含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合の際には、後架橋剤を均一に分散させるため、溶媒として、水を用いてもよく、親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、必要に応じて、水と混合したり、2種以上を混合して用いてもよい。
[0035] 吸水性樹脂を後架橋剤で架橋反応させる際の反応温度は60℃以上であり、好ましくは70?200℃であり、より好ましくは80?150℃である。反応温度が60℃未満の場合、架橋反応が進みにくく、反応に過大な時間を要する傾向があり、反応温度が200℃を超える場合、得られる吸水性樹脂粒子が劣化し、吸水性能が低下する傾向がある。
後架橋の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1?300分間、好ましくは5?200分間である。」

(c8)
「[0040] 本発明の吸水性樹脂粒子は、平衡膨潤性能(10分値)が10?28mmであることが好ましい。このように高い膨潤性能を有することで、ケーブル外部素材の亀裂による初期浸水を防止した後、長時間の浸水防止効果を維持し、かつケーブルの素材劣化を促進しない程度の適度な膨潤圧力を発揮することができる。また、上記平衡膨潤性能は、11?24mmであることがより好ましく、12?20mmであることが更に好ましく、13?18mmが特に好ましい。
[0041] 本発明の吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の吸水速度が1?20秒であることが好ましい。このように優れた吸水速度を有することで、ケーブルの亀裂による浸水をより速く防止することができる。また、上記吸水速度は、1?15秒がより好ましく、2?10秒が更に好ましい。
[0042] 本発明の吸水性樹脂粒子は、中位粒径が80?400μmであることが好ましい。このような中位粒径を有することで、止水材の製造時における粉体としてのハンドリング性を良好に保ち、かつ、止水材を薄くすることができる。また、上記中位粒径は、100?350μmが好ましく、120?300μmがより好ましく、130?250μmが更に好ましい。
[0043] 本発明の吸水性樹脂粒子の初期膨潤性能(1分値)は、平衡膨潤性能(10分値)に対する比率が70?100%であることが好ましく、80?100%がより好ましく、85?100%が更に好ましい。
[0044] 本発明の吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は特に限定されないが、より多くの水を吸収するほうが好ましいことから、35?80g/gが好ましく、45?75g/gがより好ましく、55?70g/gが更に好ましい。
[0045] 本発明の吸水性樹脂粒子の初期膨潤性能(1分値)、平衡膨潤性能(10分値)、生理食塩水吸水速度、生理食塩水吸水量及び中位粒径は、いずれも後述する実施例に記載の測定方法によって測定したときの値である。なお、本発明における膨潤性能測定方法は、約1mmの差であっても、充分な再現性が得られるため、製造方法による吸水性樹脂粒子の膨潤性能の違いを確認するには、好適な測定方法であり、止水材用途の吸水性樹脂粒子の評価に広く用いられている。」

(c9)
「[0047] 液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に、本発明の吸水性樹脂粒子を有する吸収体を挟持することにより、吸収性物品を得ることができる。このような吸水性物品もまた本発明の1つである。本発明の吸収性物品としては、例えば、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤等が挙げられる。
なお、本発明の吸収性物品を身体に接触する製品に用いる場合は、液体透過性シートは、身体と接触する側に配され、液体不透過性シートは、身体と接触する側の反対側に配される。
[0048] 上記液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる不織布、多孔質の合成樹脂シート等が挙げられ、上記液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるフィルム、これらの合成樹脂と不織布との複合材料からなるシート等が挙げられる。
[0049] なお、本発明の吸収性樹脂粒子を有する吸収体とは、吸水性樹脂粒子と親水性繊維(綿状パルプ、ケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等)とを有する積層体、又は、シート状に積層された親水性繊維の間に吸水性樹脂粒子が散布された積層体をティッシュペーパー又は不織布等の透水性シートで包んだ構造のものが挙げられる。
[0050] 本発明にかかる吸収性物品の1例として、止水材について以下に説明する。
止水材としては、例えば、2枚以上の液体透過性シートの間に、本発明の吸水性樹脂粒子を30?300g/m^(2)で有する吸収体を挟持することにより、得ることができる。
本発明の止水材としては、具体的には、粘着剤を用いて液体透過性シートと吸水性樹脂粒子とを固定してシート化したものが挙げられる。本発明の止水材は、電力ケーブルや光通信ケーブルの中心部を巻いて保護するように用いられ、外部素材が劣化し、発生した亀裂から漏れこんだ水分を吸収するとともに、膨潤してケーブル内に圧力を持たせることで、ケーブル中心部に水が到達するのを防止するものである。
[0051] 本発明の止水材は、本発明の吸水性樹脂粒子を30?300g/m^(2)で有することが好ましく、100?250g/m^(2)で有することがより好ましい。
[0052] 上記液体透過性シートとしては、上記吸収性物品の場合と同様のものが用いられ、上記粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)等のスチレン系エラストマー接着剤;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレン-アクリル酸誘導体共重合系接着剤;エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)接着剤;共重合ナイロン等のポリアミド系接着剤;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系接着剤;ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合ポリエステル等のポリエステル系接着剤等、及びアクリル系接着剤が用いられる。」

(c10)
「発明を実施するための形態
[0055] 以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[0056][実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン550mLをとり、界面活性剤としてのHLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP-20R)0.84gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、40℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液70g(0.783モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液112.3gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.084gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液のポリマー固形分相当量は69.3g、水分量は113gであった。
撹拌機の回転数を800rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、78.4gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液1.40g(0.00016モル)を添加した〔1次乾燥工程〕。このときの水分量は1.37gであり、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率(対ポリマー固形分)は、52質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。
その後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって〔2次乾燥工程〕、顆粒状の吸水性樹脂粒子を72.1g得た。
[0057][実施例2?4]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を、それぞれ74.9g、64.5g、81.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液量をそれぞれ、1.05g(0.00012モル)、0.7g(0.00008モル)、1.75g(0.0002モル)とし、水分率(対ポリマー固形分)をそれぞれ、57質量%、71質量%、48質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子をそれぞれ72.8g、72.7g、73.1g得た。
[0058][実施例5]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を81.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルに代えて、ポリグリセロールグリシジルエーテルの2%水溶液2.47g(0.00019モル)を添加し、水分率(対ポリマー固形分)を49質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を72.4g得た。
[0059][実施例6]
実施例1において、界面活性剤としてHLB9.4のジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製、ポエムDL-100)1.40gを添加する以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を70.8g得た。
[0060][実施例7]
実施例1において、界面活性剤としてHLB9のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、S-970)1.75gを添加する以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を71.1g得た。
[0061][実施例8]
実施例1において、重合終了後の重合液に、非晶質シリカ粉末(徳山ソーダ社製、トクシールP)0.02gを入れた以外は実施例1と同様の操作を行い、凝集した顆粒状の吸水性樹脂粒子73.2gを得た。
[0062][比較例1]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を97.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の添加量を4.2g(0.00048モル)とし、水分率(対ポリマー固形分)を28質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を71.8g得た。
[0063][比較例2]
攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口丸底フラスコにシクロヘキサン213gをとり、HLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP-20R)1.9gを仕込んだ。攪拌下室温にて界面活性剤を溶解させたのち、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に200mlの三角フラスコ中に80質量%のアクリル酸水溶液48.8g(0.542モル)をとり、外部より冷却しつつ、25.9質量%の苛性ソーダ水溶液67.0gを滴下して80モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.13gを加えて溶解した。なお、この単量体水溶液のポリマー固形分相当量は48.6g、水分量は67.1g(水分率:138質量%)であった。
このアクリル酸部分中和水溶液を四つ口フラスコに加えて分散させ再び系内を窒素で充分に置換したのち昇温を行い、浴温を55?60℃に保持して3時間重合反応を行った。この重合液にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05g(0.00029モル)を加えた後、水及びシクロヘキサンを蒸留で除去、乾燥することによって微顆粒状の乾燥重合体48.5gを得た。
[0064][比較例3]
実施例2において、内部架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド7.0mg(45μモル)を重合前の単量体水溶液に追加した以外は、実施例2と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子を72.1g得た。
[0065][比較例4]
内容積500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38質量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジエーテル18.4mg(106μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mgを添加し、これを第1段目重合用の単量体水溶液(a)とした。一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n-ヘプタン340g(500mL)と、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ社製、商品名:S-370、HLB値3.0〕0.92gを加えてn-ヘプタンに溶解させた後、内温を35℃にした。その後、上記の第1段目重合用の単量体水溶液(a)を加えて35℃に保ち、攪拌下で懸濁し、系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行った。
次に、これとは別に、内容積500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38質量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(53μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム18.4mgを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)とした。第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを50℃に冷却し、界面活性剤が溶解している状態で、第2段目重合用の単量体水溶液(b)を系内に滴下し、50℃に保ちながら30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで充分に置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を1.5時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、250gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテル110mg(0.00063モル)を添加した〔1次乾燥工程〕。このとき、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率(対ポリマー固形分)は、25質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。
その後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって〔2次乾燥工程〕、球状の吸水性樹脂粒子を188.3g得た。
[0066](評価)
実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
[0067](1)吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量
500mLビーカーに0.9質量%食塩水500gを入れ、これに吸水性樹脂粒子2.0gを添加して60分間攪拌した。目開き75μmのJIS標準篩いの質量Wa(g)をあらかじめ測定しておき、これを用いて、前記ビーカーの内容物をろ過し、篩いを水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。
吸水ゲルの入った篩いの質量Wb(g)を測定し、以下の式により、吸水量を求めた。
生理食塩水吸水量=(Wb-Wa)/2.0
[0068](2)吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水速度
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂粒子の吸水速度とした。
[0069](3)吸水性樹脂粒子の中位粒径
吸水性樹脂粒子100gに、滑剤として、0.5gの非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン社製、商品名:Sipernat 200)を混合した。
前記吸水性樹脂粒子を、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50質量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50質量%以上が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒径とした。
[0070](4)吸水性樹脂粒子の膨潤性能
吸水開始から1分後及び10分後の膨潤性能は、膨潤性能測定装置を用いて測定した。膨潤性能測定装置の概略説明図を図1に示す。図1に示した膨潤性能測定装置Xは、移動距離測定装置1と凹型円形カップ2(高さ30mm、内径80.5mm)、プラスチック製の凸型円形シリンダー3(外径80mm、吸水性樹脂粒子との接触面に直径2mmの貫通孔7が均等に60個配設)及び不織布4(目付量12g/m^(2)の液体透過性不織布)からなっている。膨潤性能測定装置Xは、レーザー光6により距離の変位を0.01mm単位で測定することができるようになっている。凹型円形カップ2は、所定量の吸水性樹脂粒子を均一に散布することができるようになっている。凸型円形シリンダー3は、吸水性樹脂粒子5に対して90gの荷重を均一に加えることができるようになっている。
凹型円形カップ2に試料(吸水性樹脂粒子5)0.1gを均一に散布し、その上に不織布4を敷く。凸型円形シリンダー3を不織布4の上に静かにのせ、移動距離測定装置1のセンサーのレーザー光6がシリンダーの中央部にくるように設置する。予め20℃に調節したイオン交換水130gを凹型円形カップ2内に投入し、吸水性樹脂粒子5が膨潤して凸型円形シリンダー3を押し上げた距離を測定する。吸水開始から1分秒後及び10分後における凸型円形シリンダー3の移動距離を初期膨潤性能(1分値)及び平衡膨潤性能(10分値)とした。そして、平衡膨潤性能(10分値)に対する初期膨潤性能(1分値)の比率(初期膨潤比率)を算出した。
[0071][表1]


[0072] 表1に示すように、実施例1?8で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、高い膨潤性能を有し、かつ、中位粒径が適度であることがわかる。一方、比較例で得られた吸水性樹脂粒子は、膨潤性能が充分ではないことがわかる。」

イ.甲3に記載された発明
上記甲3には、上記ア.の記載事項(特に下線部)からみて、
「水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8?12の界面活性剤及び高分子保護コロイドの存在下、炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程、及び、 前記含水ゲル状重合体の水分率を調整した後、後架橋反応させる工程を有する吸水性樹脂粒子の製造方法。」
に係る発明(以下「甲3発明1」という。)、
「甲3発明1の製造方法を用いて得られる吸水性樹脂粒子であって、平衡膨潤性能が10?28mm、吸水速度が1?20秒、中位粒径が80?400μm及び生理食塩水吸水量が35?80g/gである吸水性樹脂粒子。」
に係る発明、
「甲3発明2の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とを有する積層体を透水性シートで包んだ構造の吸収体。」
に係る発明、
「液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に、甲3発明3の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とを有する吸収体を挟持してなる吸収性物品。」
に係る発明、及び
「2枚以上の液体透過性シートの間に、甲3発明2の吸水性樹脂粒子を有する甲3発明3の吸収体を挟持してなる止水材。」
に係る発明がそれぞれ記載されているものといえる。

(4)甲7

ア.甲7に記載された事項
上記甲7には、申立人が申立書第28頁第16行ないし第29頁第12行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(d1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸水溶性塩とを主成分とする水溶性不飽和モノマーを架橋剤の存在下または不存在下にラジカル重合開始剤を用いて炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合させることにより1次粒子径が280?450μmの高吸水性樹脂を製造するにあたり、上記逆相懸濁重合を、水溶性高分子、ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルの共存下に行うこと、およびそのときの各成分の配合割合を、前記水溶性不飽和モノマーに対し、水溶性高分子は0.05?1重量%、ソルビタン脂肪酸エステルは0.05?5重量%、ショ糖脂肪酸エステルは0.05?5重量%に設定し、かつソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定することを特徴とする高吸水性樹脂の製造法。」

(d2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1次粒子径が適度に大きい高吸水性樹脂を安定して得ることのできる高吸水性樹脂の製造法に関するものである。
・・(中略)・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】高吸水性樹脂は、粒子径が大きいほど水や体液と接触したときママコ現象が防止される。また粒子径が大きいと、たとえば不織布など目の粗い材料と組み合わせて用いたときであっても粒子がその材料の目から漏れ出ないことになる。従って、重合により粒子径が適度に大きい粒子が得られることが強く望まれる。この場合、見掛けの粒子径は大きくても、その粒子が1次粒子の集合体であると、たとえば紙おしめに適用した場合、尿を吸収したときに細かな1次粒子に戻ってしまい、不織布などの材料の目から漏れ出してしまうことがある。
・・(中略)・・
【0011】
本発明は、このような背景下において、重合により1次粒子径が280?450μm というように適度に大きい粒子を安定して得ることのできる高吸水性樹脂の製造法を提供することを目的とするものである。」

(d3)
「【0016】架橋剤は存在させても存在させなくてもよい。架橋剤を用いるときの架橋剤としては、・・(中略)・・(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどがあげられる。架橋剤の使用量は、モノマー成分に対し0.0001?0.5重量%程度とすることが多い。
【0017】ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、セリウム塩などが例示され、特に水溶性であるものが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー成分に対して0.01?1重量%程度とすることが多い。
【0018】炭化水素溶媒としては、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オリタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素・・(中略)・・が例示され、溶媒の沸点、融点、コスト、工業的入手の容易性などを総合考慮すると、n-ヘキサンおよびシクロヘキサンが特に重要である。
【0019】(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸水溶性塩とを主成分とする水溶性不飽和モノマーを架橋剤の存在下または不存在下にラジカル重合開始剤を用いて炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合させる。重合温度は50?90℃、重合時間は0.5?5時間程度が適当である。
【0020】そして本発明においては、上記逆相懸濁重合を、水溶性高分子、ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルの共存下に行う。
【0021】水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミンなどが例示できる。
【0022】ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリステアレートなどがあげられる。
【0023】ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖と、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸などの脂肪酸とのモノ、ジまたはトリエステルがあげられる。
・・(中略)・・
【0025】重合終了後は、常法に従って生成粒子をろ別し、洗浄、乾燥すれば、目的とする粒子径、つまり1次粒子の径が280?450μmの高吸水性樹脂が得られる。なおここで言う粒子径は、標準篩を用いて篩分けを行ったときに50重量%が通過するときの篩目に基いて定めた平均粒子径である。
【0026】本発明の方法により得られる高吸水性樹脂は、生理用品や衛生用品において体液や排泄物を吸収し漏出を防止する体液吸収剤として特に有用である。そのほか、土壌の保水剤、種子コーティング剤、止水剤、増粘剤、結露防止剤、脱水剤、乾燥剤、調湿剤、汚泥・液状廃棄物の凝固剤、重金属吸着材、薬剤・芳香剤の徐放剤、パップ剤などの用途にも使用できる。」

(d4)
「【0028】
【実施例】次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。以下「%」とあるのは重量%である。
【0029】実施例1
下記に詳述する逆相懸濁重合法により、ポリアクリル酸部分中和塩系高吸水性樹脂を製造した。
【0030】撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を付けた2リットルのセパラブルフラスコAに、シクロヘキサン800ml、ソルビタンモノステアレート1.56gおよびショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社製の「DKエステルF-50」)1.56gを仕込み、窒素バブリングを30分間行って、溶存空気およびフラスコ内の空気を追い出した。
【0031】別のセパラブルフラスコBに80%アクリル酸260gを仕込んだ後、28%水酸化ナトリウム水溶液310gを冷却下に徐々に滴下して中和した。ついで、0.5%N,N´-メチレンビスアクリルアミド水溶液8gとヒドロキシエチルセルロース(フジケミカル株式会社製の「AX-15」)1.04gを添加し、溶解した。溶解後、10%過硫酸アンモニウム水溶液4gを加え、撹拌しながら窒素バブリングを行い、溶存空気を追い出した。
【0032】フラスコAを73℃に昇温した後、フラスコB内の溶液を1.5時間かけて滴下した。重合時の回転数は350rpmに設定した。その後、ジャケットの温水を95℃に保ち、シクロヘキサンと水とを共沸させ、水230mlを追い出した(水の脱水率は70%)。その後、デカンテーションして、生成粒子を温度105℃で3時間乾燥し、目的粒子を得た。この粒子の平均粒子径は300μmであった。
【0033】実施例2?3
ソルビタンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースの添加量を種々変更したほかは実施例1を繰り返した。条件および結果を表1に示す。なお実施例1の条件および結果についても併せて表1に示す。
【0034】比較例1?5
ソルビタンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースの添加量を種々変更したほかは実施例1を繰り返した。条件および結果を表1に併せて示す。
【0035】比較例6
ソルビタンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースの対モノマー重量%をそれぞれ0.75%、0.75%、2%前後にしたほかは実施例1を繰り返した。しかしながら、1%を越える量のヒドロキシエチルセルロースの溶解は長時間を要するので実用的でなく、溶解可能な量は2%前後までにとどまり、また中和後の粘度が高くなって取り扱いが困難となる。
【0036】
【表1】




イ.甲7に記載された発明
上記甲7には、上記ア.の記載(特に下線部)からみて、
「(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸水溶性塩とを主成分とする水溶性不飽和モノマーを架橋剤の存在下または不存在下にラジカル重合開始剤を用いて炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合させることにより1次粒子径が280?450μmの高吸水性樹脂を製造するにあたり、上記逆相懸濁重合を、水溶性高分子、ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルの共存下に行うこと、およびそのときの各成分の配合割合を、前記水溶性不飽和モノマーに対し、水溶性高分子は0.05?1重量%、ソルビタン脂肪酸エステルは0.05?5重量%、ショ糖脂肪酸エステルは0.05?5重量%に設定し、かつソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定する1次粒子の平均粒子径が280?450μmの高吸水性樹脂の製造法。」
に係る発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものといえる。

(5)他の甲号証の記載事項

ア.甲4に記載された事項
上記甲4には、申立人が申立書第26頁第21行ないし第27頁第13行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(e1)
「 請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中で界面活性剤の存在下に逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂であって、前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂。
[2] 逆相懸濁重合を2段以上の多段で行い、かつ1段目の逆相懸濁重合を、
(A)水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒に添加して分散させ、
(B)得られた分散液に界面活性剤を添加して更に分散させた後、
(C)必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて行うことにより得られる、
請求項1記載の吸水性樹脂。
[3] 工程(A)において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を高分子系分散剤の存在下に石油系炭化水素分散媒に添加して分散させることにより得られる、請求項2記載の吸水性樹脂。
[4] 工程(B)において、界面活性剤と共に高分子系分散剤を添加することにより得られる、請求項2または3記載の吸水性樹脂。
[5] 工程(A)?(C)を含む多段の逆相懸濁重合終了後に得られた吸水性樹脂の前駆体に、後架橋剤を添加し、後架橋することにより得られる、請求項2?4のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
[6] 界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1?5のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
・・(中略)・・
[8] 水溶性エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、ならびにアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1?7のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
[9] 石油系炭化水素分散媒が、炭素数6?7の脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1?8のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
[10] 請求項1?9のいずれか1項に記載の吸水性樹脂と親水性繊維からなる吸収体。
[11] 請求項10に記載の吸収体を、液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に保持してなる吸収性物品。」(第26頁第1行?第27頁第11行)

(e2)
「発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明の目的は、逆相懸濁重合法で製造された吸水性樹脂において、前記吸水性樹脂中に含まれる逆相懸濁重合に使用された石油系炭化水素分散媒の残存量が少なく、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気が低減された、衛生材用途に適した吸水性樹脂、吸収体および吸収性物品を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気と、吸水性樹脂の製造時に使用された石油系炭化水素分散媒との関係を鋭意検討した結果、吸水性樹脂の製造において、2段以上の多段の逆相懸濁重合を行うこと、ならびに1段目の逆相懸濁重合において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の石油系炭化水素分散媒への分散後に得られた分散液に界面活性剤を添加することにより、前記吸水性樹脂中の石油系炭化水素分散媒の残存量が特定量以下である吸水性樹脂が得られ、それにより、従来技術により得られた吸水性樹脂と比較して、吸水性樹脂において有意に臭気が低減されることを見出した。
[0010] すなわち、本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中で界面活性剤の存在下に逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂であって、前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂に関する。
[0011] また、本発明は、上記の吸水性樹脂を用いた吸収体および吸収性物品に関する。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気が低減された、衛生材用途に適した吸水性樹脂を提供することができる。また、本発明の吸水性樹脂を用いた吸収体および吸収性物品は、臭気の発生による不快感が少ないため、衛生材料として最適である。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 本発明の吸水性樹脂は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中で界面活性剤の存在下に逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂であって、前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下であることを特徴とする。
[0014] 本発明の吸水性樹脂中における石油系炭化水素分散媒の残存量は、前記吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気を低減する観点から、2000ppm以下であり、1500ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、750ppm以下がさらに好ましく、500ppm以下がよりさらに好ましい。臭気に対する感覚は、石油系炭化水素分散媒の種類によっても異なるが、残存量が2000ppm以下であれば、従来技術により得られた吸水性樹脂と比較して、有意に臭気が低減されたと感じられる。また、残存量が500ppm以下になれば、臭気がほとんど感じないレベルとなる。
なお、本発明において「石油系炭化水素分散媒の残存量」とは、後述する測定方法により測定した値である。」

(e3)
「[0076](4)残存分散媒量
吸水性樹脂に残存する石油炭化水素系分散媒の量をヘッドスペース・ガスクロマトグラフを用いて測定した。
(a)検量線の作成
50mlスクリューバイアルにサンプルを重合する際に用いた石油炭化水素系分散媒(以後「分散媒」と表記)を0.1g精秤し、そこにDMF(ジメチルフォルムアミド)を加え、40gにして精秤し、スターラチップで撹拌して標準試料液とした。
20ml容のバイアル瓶(マルエム社製、No.5)に上記標準試料液より、0.01、0.04、0.2、0.5gを精秤し、そこにDMFを加え、各バイアル瓶の内容量を0.75gとした。更に各バイアルに蒸留水0.75gを加え、セプタムゴム、アルミキャップで栓をして締め付けた。
このバイアル瓶を110℃で2時間加温し、気相部を1ml採取し、ガスクロマトグラフに注入し、クロマトグラムを得た。
各バイアル瓶中の分散媒の仕込量と、そのクロマトグラムのピーク面積より、検量線を作成した。(なお、分散媒として石油系炭化水素の混合物を用いた場合、複数のピークが表れるため、その面積の総和値と仕込量で検量線を作成した。)
[0077](b)サンプルの残存分散媒量の測定
測定するサンプルを約2g、アルミカップに入れ、105℃の熱風乾燥機にて2時間乾燥させ、含有する水分量を調整した。
20ml容のバイアル瓶(マルエム社製、No.5)に上記サンプルを0.10g精秤し、DMFを0.75g加え、更に蒸留水0.75gを加えて瓶を振り軽く撹拌した後、セプタムゴム、アルミキャップで栓をして締め付けた。(DMF存在下で蒸留水を加えることで、吸水性樹脂をゆっくりと均一に膨潤させ、内包された分散媒を抽出・検出させた。)
このバイアル瓶を110℃で2時間加温し、気相部を1ml採取し、ガスクロマトグラフに注入し、クロマトグラムを得た。
得られたクロマトグラムのピーク面積を基に先に作成した検量線から、サンプル0.10gに含まれる分散媒量を算出し、サンプル1gあたりに含まれる分散媒量[ppm]に換算した。
[0078] 本発明において残存分散媒量の測定に使用したガスクロマトグラフの条件は下記のとおりである。
機種:島津製作所製 GC-14A+HSS2B(ヘッドスペースオートサンプラ)
充填剤:Squalane 25% Shimalite(NAW)(101)
80-100mesh
カラム:3.2mmφ×2m
カラム温度:80℃
注入口温度:180℃
検出器温度:180℃
検出器:FID
ガスキャリア:N2
バイアル瓶加熱温度:110℃
シリンジ設定温度:110℃
[0079](5)臭気官能試験
吸水性樹脂の膨潤時の分散媒に由来する臭気を次の方法にて比較した。容量140mLの蓋付ガラス瓶(マヨネーズ瓶)に、25℃の0.9質量%食塩水20.0gを加え、長さ3cmの回転子を入れて攪拌した。吸水性樹脂4.0gを前記ガラス瓶に添加し密閉した。前記ガラス瓶中の分散媒由来の臭気を、次に示す「6段階臭気強度表示法」に準じて、5人のパネラーが判定し、その平均値で評価した。
[0080][表1]




イ.甲5の記載事項
甲5には、申立人が申立書第27頁第16行ないし第28頁第3行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(f1)
「【特許請求の範囲】
・・(中略)・・
【請求項3】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを逆相懸濁重合してなる吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下
・・(中略)・・
【請求項8】
さらに、下記(f)を満たす、請求項1から7のいずれかに記載の粒子状吸水剤。
(f)生理食塩水への1.9kPaでの加圧下吸収倍率が20g/g以上
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の粒子状吸水剤の製造方法であって、
酸酸及びプロピオン酸の含有量が500ppm以下、かつアクリル酸ダイマーの含有量が1000ppm以下であるアクリル酸を準備する工程、
該アクリル酸及び/又はその塩をモノマーの主成分とする不飽和モノマーを疎水性有機溶媒中で、逆相懸濁重合する反応工程、
重合して得られた、下記(a)、(b)及び(c)を満たす架橋ポリマー粒子に、有機溶媒を含まない、表面架橋剤水溶液を添加する工程、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子が0質量%以上5質量%以下
並びに
温度150℃以上250℃以下で加熱して表面架橋する工程
を含む製造方法。
・・(中略)・・
【請求項13】
糞、尿又は血液の吸収性物品であって、請求項1から8のいずれかに記載の粒子状吸水剤及び親水性繊維を含んで成形された吸収性物品。
・・(後略)」

(f2)
「【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤に関する。さらに詳しくは、オムツなど吸収性物品での実使用時に、臭気が発生せず、さらに優れた吸収能を発揮する粒子状吸水剤に関する。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツ等の吸収体において吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸水性樹脂濃度が高い(吸水性樹脂の質量比が高い)吸収体となる傾向を示しており、従来の吸水性樹脂では、高濃度での使用に十分な性能が示されず、また高濃度では消臭性能も十分とはいえないという問題がある。また、オムツ中の吸水性樹脂の使用量が増加するに伴い、残存モノマーの低減がより求められるようになっている。
【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来、吸水性樹脂の消臭性能の検討において、尿の臭いに注目されていたが、本発明者は、さらなる付加機能として、吸水性樹脂の消臭性能を鋭意検討する過程で、吸水性樹脂、特に逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂自体が特異的な臭気を有することを見出し、この吸水性樹脂自体の臭気が実使用時の消臭性能を低下させていることを見出した。さらに、オムツでの実使用に重要な因子として、吸水性樹脂が特定の狭い粒度分布及び特定の吸収倍率を有すること、そして粒子形状が重要であることが見出された。
【0014】
そして、逆相懸濁重合による吸水性樹脂自体が特異的な臭気を有する原因を鋭意検討した結果、逆相懸濁重合による吸水性樹脂は、従来残存モノマー量が少ないと考えられていたが、実は残存モノマーが発生増加することを見出した。そして、臭気の原因を探った結果、この残存モノマーの増加、逆相懸濁重合で使用される揮発性有機溶媒、及びその他の逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物に由来する臭気の発生が見出された。
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の逆相懸濁重合による吸水剤においては低沸点の有機溶媒中(例えば、シクロヘキサン/沸点80.7℃)で重合、表面架橋、及び乾燥・造粒が行なわれていたため、従来の製法や市販の製品等では微量の有機溶媒が残存し、この有機溶媒がオムツでの実使用時の臭気となっていることを見出した。本発明においては、臭気低減の手段として、モノマー、特にアクリル酸中の微量成分(酢酸、プロピオン酸、アクリル酸ダイマー等)を制御した上で、逆相懸濁重合後の表面架橋時に実質有機溶媒を使用せず、かつ高温加熱(好ましくは150℃以上250℃以下)を行い、造粒時にも実質有機溶媒を使用しないことでかかる問題を解決した。」

(f3)
「【実施例】
・・(中略)・・
【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」

ウ.甲6の記載事項
上記甲6は、申立人の従業者である片田好希が平成30年8月22日付けで作成したものと認められる実験成績証明書であり、それには、申立人が申立書第28頁第5行ないし第12行で指摘したとおりの、甲2の実施例7に係る追試結果として、実施例7に係る製造方法で製造した吸水性樹脂(粒子)につき、生理食塩水の吸水量が61g/g、中位粒子径が150μm、生理食塩水の吸水速度が18秒、平衡膨潤性能が21.1mm及び残存揮発成分量が0.81質量%であったことが報告されている。

エ.甲8の記載事項
甲8には、申立人が申立書第29頁下から第3行ないし末行で主張するとおり、HLB値の算出式が複数存在し、単一の試料であっても、どの式を用いるかにより、HLB値の絶対値が有意に異なること(「図3」)が記載されている。

オ.甲9の記載事項
甲9には、申立人が申立書第30頁第4行ないし第5行で主張するとおり、多種多岐にわたる形状のスピンドル(回転軸)が存在することが開示されているとともに、回転速度等の測定条件、試料の仮想粘度及びその必要分解能等に従い、スピンドルを使い分けすべきであることも開示されている。

カ.甲10の記載事項
甲10には、単一円筒形回転粘度計(B型粘度計)による粘度測定において、回転させるローターには数種類があり、目標とする粘度により採用すべきローターが決まる(第3頁左欄)とともに、当該測定においては、安定した測定値が得られにくいこと(同頁右欄)も記載されている。

2.取消理由4ないし7に係る検討
以下、上記取消理由4ないし7につき、それぞれ順次検討する。

(1)取消理由4について
甲1に記載された発明に基づき、取消理由4につき以下検討する。

ア.本件発明1について

(ア)対比・検討
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「界面活性剤の炭化水素溶液を攪拌しながら、この炭化水素溶液中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物の水溶液を攪拌しながら導入し、ラジカル重合開始剤と温度との複合作用下に逆相懸濁重合させ」及び「上記モノマーが重合した時点で反応媒体中に第2の親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で導入し、この第2のモノマーが重合した」は、それぞれ、本件発明1における「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第一の水性液と、・・界面活性剤とを含有し、前記第一の水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、含水ゲル状重合体を含む懸濁液を得ることを含む、第一重合工程」及び「前記含水ゲル状重合体を含む懸濁液を、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液と混合して、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む、第二重合工程」に相当するものと認められ、甲1発明においては「上記モノマーが重合した時点で反応媒体中に第2の親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で導入し」ており、前者の「逆相懸濁重合」が先に行われ、後から「第2の親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を・・導入し」て、最終的に「粉末状の親水性ポリマー」を「製造する方法」としているから、本件発明1における「第一重合工程と・・第二重合工程と、をこの順に備える、吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
また、甲1発明における「HLBが8?12である界面活性剤」は、本件発明1における「HLBが6以上の界面活性剤」に相当するものといえる。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第一の水性液と、HLBが8?12の界面活性剤とを含有し、前記第一の水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、含水ゲル状重合体を含む懸濁液を得ることを含む、第一重合工程と、
前記含水ゲル状重合体を含む懸濁液を、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液と混合して、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む、第二重合工程と、
をこの順に備える、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A:本件発明1では、「45℃以上の前記含水ゲル状重合体を含む懸濁液を・・第二の水性液と混合して、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる」が、「(ただし、反応媒体中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で重合温度で導入するものを除く。)」のに対して、甲1発明では、「第2のモノマーを75±10℃である重合温度で導入する」点

(イ)検討
上記相違点Aにつき検討すると、本件発明1では、「反応媒体中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で重合温度で導入する」場合が(意図的に)除外されたことにより、甲1発明における「第2のモノマーを75±10℃である重合温度で導入する」点で実質的に相違するものとなったものといえる。
そして、上記相違点Aにつき、他の甲号証の記載及び当業者の技術常識に照らしても、甲1発明において当業者が適宜なし得るとすべき技術が存するものでもない。
してみると、上記相違点Aは、実質的な相違点であって、甲1発明に基づき、当業者が容易に想到し得るものでもない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

イ.本件発明2、3及び10ないし12について

(ア)検討
本件発明1を引用する本件発明2、3及び10ないし12につき検討すると、本件発明1は、上記ア.で説示したとおり理由により、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明1を引用する本件発明2、3及び10ないし12についても、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

ウ.取消理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3及び10ないし12は、いずれも甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできないから、上記取消理由4は理由がない。

(2)取消理由5について
上記甲2に記載された発明に基づき、以下検討する。

ア.本件発明4について

(ア)対比
本件発明4と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における「シクロヘキサン及び分散剤・・を含有する有機溶剤溶液」、「アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、N,N’-メチレンビスアクリルアミド・・を含有する・・モノマー水溶液」及び「吸水性樹脂球状粉体の製造方法」は、それぞれ、本件発明4における「炭化水素分散媒を含む油性液」、「水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液」及び「吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
そして、甲2発明1における「有機溶剤溶液に、・・モノマー水溶液を分散させて重合して得られた」は、「有機溶剤溶液」中に「モノマー水溶液」を分散させたものであるから、「懸濁液」の状態になっているものと理解され、当該「重合」は、「モノマー水溶液」に含有される「モノマー」が重合されているものと理解するのが自然であるから、本件発明4における「前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程」に相当するものといえる。
また、甲2発明1における「分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)」は、当該「分散剤」が、有機溶剤溶液中にモノマー水溶液を安定的に分散させるために使用するものであり、「界面活性剤」と機能として同一であることが当業者に自明であるから、本件発明4における「HLBが6以上の界面活性剤」に相当するものといえる。
してみると、本件発明4と甲2発明1とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記懸濁液が、HLBが6の界面活性剤をさらに含有する、
吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点B1:本件発明4では「水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有」するのに対して、甲2発明1では「粘度40cps、800cps又は2000cpsのモノマー水溶液」である点
相違点B2:製造する「吸水性樹脂粒子」につき、本件発明4では「生理食塩水の吸水速度が1?15秒である」のに対して、甲2発明1では「吸水性樹脂球状粉体」の吸収速度につき特定されていない点
相違点B3:本件発明4では「前記重合工程により得られる含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程を更に備え、該後架橋工程に供される該含水ゲル状重合体の水分率が、該含水ゲル状重合体を構成する前記水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分を100質量%として、20?130質量%であ」るのに対して、甲2発明1では「さらにジエチレングリコール又はエチレングリコールジグリシジルエーテルを含有する水性処理溶液で処理してな」り、重合体粉体の水分率につき特定されていない点
相違点B4:本件発明4では「界面活性剤が、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを含む」のに対して、甲2発明1では「分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)」を含む点

(イ)検討
・相違点B4について
事案に鑑み、相違点B4につき検討すると、甲2には、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することが専ら記載されており、界面活性剤(又は分散剤)として、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを使用することについては開示されていないから、上記相違点B4は実質的な相違点である。
また、他の甲号証の記載及び当業者の技術常識に照らしても、甲2発明1において分散剤として使用されるショ糖脂肪酸エステル(又はポリグリセリン脂肪酸エステル)をHLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルに代えるべき動機となる事項が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点B4は実質的な相違点であり、また、甲2発明1において、当業者が適宜なし得ることということもできない。

(ウ)小括
したがって、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明4は、甲2発明1、すなわち、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

イ.本件発明5、11及び12について
本件発明4を引用する本件発明5、11及び12につき検討すると、本件発明4は、上記ア.で説示したとおり理由により、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明4を引用する本件発明5、11及び12についても、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

ウ.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における「シクロヘキサン及び分散剤・・を含有する有機溶剤溶液」、「アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、N,N’-メチレンビスアクリルアミド・・を含有する・・モノマー水溶液」及び「吸水性樹脂球状粉体の製造方法」は、それぞれ、本件発明7における「炭化水素分散媒を含む油性液」、「水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液」及び「吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
そして、甲2発明1における「有機溶剤溶液に、・・モノマー水溶液を分散させて重合して得られた」は、「有機溶剤溶液」中に「モノマー水溶液」を分散させたものであるから、「懸濁液」の状態になっているものと理解され、当該「重合」は、「モノマー水溶液」に含有される「モノマー」が重合されているものと理解するのが自然であるから、本件発明7における「前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程」に相当するものといえる。
また、甲2発明1における「分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)」は、当該「分散剤」が、有機溶剤溶液中にモノマー水溶液を安定的に分散させるために使用するものであり、「界面活性剤」と機能として同一であることが当業者に自明であるから、本件発明7における「HLBが6以上の界面活性剤」に相当するものといえる。
してみると、本件発明7と甲2発明1とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記懸濁液が、HLBが6の界面活性剤をさらに含有する、
吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点B5:本件発明7では「前記水性液が親水性高分子分散剤をさらに含み、・・前記親水性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である」のに対して、甲2発明1では「水性液が親水性高分子分散剤をさらに含」むことにつき特定されていない点
相違点B6:本件発明7では「(ただしソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)」のに対して、甲2発明1では「HLBが6の界面活性剤」であり、上記設定のものを包含するのか否か不明である点

(イ)検討
・相違点B5について
事案に鑑み、相違点B5につき検討すると、甲2には、ポリエチレングリコールなどの高分子材料を水性液の粘度調整のための増粘剤として使用することは開示されている(摘示(b5))ものの、当該高分子材料を分散剤として使用することにつき開示されておらず、その分子量についても特定されていない。そして、甲2発明1に係る実施例であるものと認められる実施例(比較例)の記載を検討しても、分子量不明のヒドロキシエチルセルロース又はポリアクリル酸ナトリウムを使用した場合のみであり、本件発明7で使用するポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子分散剤に相当する高分子材料を使用することも記載されていない。
してみると、上記相違点B5は実質的な相違点である。
また、甲2及び他の甲号証の記載及び当業者の技術常識に照らしても、甲2発明1において分散剤として使用されるショ糖脂肪酸エステル(又はポリグリセリン脂肪酸エステル)に加えて、特定分子量の親水性高分子分散剤を更に使用すべき動機となる事項が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点B5は実質的な相違点であり、また、甲2発明1において、当業者が適宜なし得ることということもできない。

(ウ)小括
したがって、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明1、すなわち、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

エ.本件発明8及び10ないし12について
本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12につき検討すると、本件発明7は、上記ウ.で説示したとおりの理由により、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12についても、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

オ.取消理由5についてのまとめ
以上のとおり、本件発明4、5、7、8及び10ないし12は、いずれも甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできないから、上記取消理由5は理由がない。

(3)取消理由6について
上記甲7に記載された発明に基づいて、以下検討する。

ア.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と上記甲7発明とを対比すると、甲7発明における「(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸水溶性塩とを主成分とする水溶性不飽和モノマーを架橋剤の・・不存在下にラジカル重合開始剤を用いて炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合させる」及び「高吸水性樹脂の製造法」は、それぞれ、本件発明7における「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え」及び「吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
また、甲7発明における「ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステル」はいずれもノニオン系界面活性剤であることが当業者に自明であるから、本件発明7における「界面活性剤」に相当し、さらに、甲7発明における「逆相懸濁重合を、・・ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルの共存下に行うこと」は、逆相懸濁重合液中にソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルが含有されていることが明らかであるから、本件発明7における「懸濁液が、・・界面活性剤をさらに含有し」に相当する。
してみると、本件発明7と甲7発明とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記懸濁液が、界面活性剤をさらに含有する
吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
で一致し、下記の点で一応相違する。

相違点C1:「界面活性剤」につき、本件発明7では「HLBが6以上の界面活性剤」であるのに対して、甲7発明では「ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステル」である点
相違点C2:本件発明7では「前記水性液が親水性高分子分散剤をさらに含み、・・前記親水性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である」のに対して、甲7発明では「逆相懸濁重合を、水溶性高分子・・の共存下に行う」であり、「水溶性高分子」の分子量につき特定されていない点
相違点C3:本件発明7では「(ただしソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)」のに対して、甲7発明では「ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステル」である点

(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点C3につきまず検討すると、甲7発明において、「ソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定する」ことは、発明の構成に欠くことができない技術事項であるから、それを除外する本件発明7における「(ただしソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)」との事項は、実質的な相違点であることが明らかである。
また、当該除外事項は、意図的に除外されたことが明らかであって、甲7発明において、さらに他の甲号証に照らしても、相違点C3に係る事項が当業者が適宜なし得ることというべき技術事項が存するものとも認められない。

(ウ)小括
してみると、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7は、甲7発明、すなわち、甲7に記載された発明であるということはできないし、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

イ.本件発明8及び10ないし12について
本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12につき検討すると、本件発明7は、上記ア.で説示したとおり理由により、甲7に記載された発明であるということはできず、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12についても、甲7に記載された発明であるということはできず、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

ウ.取消理由6についてのまとめ
以上のとおり、本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12は、いずれも甲7に記載された発明であるということはできず、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできないから、上記取消理由6は理由がない。

(4)取消理由7について
甲3に記載された発明に基づく取消理由7に係る検討においては、申立人が主張する本件発明6、9及び13ないし15に加えて、職権により、本件発明4、5、7、8及び10ないし12についても検討する。事案に鑑み、本件発明4、5、7、8及び10ないし12につきまず検討し、本件発明6、9及び13ないし15につき順次検討する。

ア.本件発明4について

(ア)対比
本件発明4と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1における「水溶性エチレン性不飽和単量体を、・・炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程」は、甲3の実施例に係る記載(摘示(c10)[0055]?[0071])からみて、n-ヘプタンに対してソルビタンモノラウレートを溶解して油性相とし、別途、アクリル酸水溶液につき水酸化ナトリウム水溶液により中和したものに過硫酸カリウムを添加した水性相を滴下し、油中水型懸濁液として逆相懸濁重合にすることが記載されているから、本件発明4の「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、」に相当し、甲3発明1における「吸水性樹脂粒子の製造方法」は、本件発明4における「吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
そして、甲3発明1における「HLBが8?12の界面活性剤」は、本件発明4における「HLBが6以上の界面活性剤」に相当し、甲3発明1における「界面活性剤・・の共存下」は、当該「界面活性剤」が逆相懸濁重合液中に含有されていることが明らかであるから、本件発明4における「前記懸濁液が、・・界面活性剤をさらに含有する」に相当する。
してみると、本件発明4と甲3発明1とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有する、
吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点D1:本件発明4では「前記水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し、」であるのに対して、甲3発明1では「水性液(水性相)」の粘度につき特定されていない点
相違点D2:製造される「吸水性樹脂粒子」につき、本件発明4では「生理食塩水の吸水速度が1?15秒である」のに対して、甲3発明1では、当該「吸水速度」につき特定されていない点
相違点D3:本件発明4では「重合工程により得られる含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程を更に備え、該後架橋工程に供される該含水ゲル状重合体の水分率が、該含水ゲル状重合体を構成する前記水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分を100質量%として、20?130質量%であ」るのに対して、甲3発明1では「前記含水ゲル状重合体の水分率を調整した後、後架橋反応させる工程を有する」であり、上記「水分率」につき特定されていない点
相違点D4:本件発明4では「界面活性剤が、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを含む」のに対して、甲3発明1では「HLBが8?12の界面活性剤」である点

(イ)検討
事案に鑑み、相違点D1につき検討すると、甲2にも記載されている(摘示(b5)参照)とおり、逆相懸濁重合による吸水性樹脂粒子の製造において、当該粒子の粒径を100?600μm程度の所望の範囲のものに調整するために、水溶性モノマーを含有する水性相の粘度を水溶性高分子増粘剤等を添加使用して15cps以上、すなわち15mPa・s以上とすることは、当業者に少なくとも公知の技術であるものと一応認められる。
しかしながら、甲3発明1において、当該甲2に記載の公知技術を組み合わせるにあたり、甲2に記載の技術では、後架橋工程において含水ゲル状重合体粒子の水分率を10%未満とした上で後架橋すべきものとされ、10%以上とした場合、得られる吸水性樹脂の吸水倍率が小さくなることがある旨記載されている(第7頁右上欄ないし左下欄)から、後架橋時の水分率を含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30?110質量%とする(甲3[請求項1])甲3発明1において、当該甲2の技術を組み合わせるにあたっての阻害要因が存するものと認められる。
してみると、甲3発明1において、上記甲2に記載された当業者に公知の技術に基づき、水性相の粘度を15mPa・sを超える20mPa・s以上とすることは、当業者が適宜なし得ることということはできない。
また、他の甲号証を検討しても、上記相違点D1につき、甲3発明1において、適宜なし得ることであるとすべき事項が存するものでもない。

(ウ)小括
したがって、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明4は、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ.本件発明5、11及び12について
本件発明4を引用する本件発明5、11及び12については、上記ア.で説示したとおりの理由により、本件発明4が、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないのであるから、本件発明5、11及び12についても、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

ウ.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1における「水溶性エチレン性不飽和単量体を、・・炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程」は、甲3の実施例に係る記載(摘示(c10)[0055]?[0071])からみて、n-ヘプタンに対してソルビタンモノラウレートを溶解して油性相とし、別途、アクリル酸水溶液につき水酸化ナトリウム水溶液により中和したものに過硫酸カリウムを添加した水性相を滴下し、油中水型懸濁液として逆相懸濁重合にすることが記載されているから、本件発明7の「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、」に相当し、甲3発明1における「吸水性樹脂粒子の製造方法」は、本件発明7における「吸水性樹脂粒子を製造する方法」に相当する。
そして、甲3発明1における「HLBが8?12の界面活性剤」は、本件発明7における「HLBが6以上の界面活性剤」に相当し、甲3発明1における「界面活性剤・・の共存下」は、当該「界面活性剤」が逆相懸濁重合液中に含有されていることが明らかであるから、本件発明7における「前記懸濁液が、・・界面活性剤をさらに含有し」に相当する。
してみると、本件発明7と甲3発明1とは、
「炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有する、
吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点D5:本件発明7では「前記水性液が親水性高分子分散剤をさらに含み、・・前記親水性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である」のに対して、甲3発明1では、特定分子量範囲の「親水性高分子分散剤」の使用につき特定されていない点
相違点D6:本件発明7では「(ただしソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)」のに対して、甲3発明1では、当該特定がない点
相違点D7:甲3発明1では「 前記含水ゲル状重合体の水分率を調整した後、後架橋反応させる工程を有する」のに対して、本件発明7では、当該「工程」を有する点につき必須とされていない点

(イ)検討
上記相違点D5及びD6につき併せて検討すると、甲7にも記載されている(甲7発明及び【0021】)とおり、アクリル酸などの水溶性不飽和モノマーを炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合して高吸水性樹脂(粒子)を製造するにあたり、高吸水性樹脂(粒子)の1次粒子径を280?450μmの適度に大きいものとするために、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルとともに、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子を適量共存させて重合を行うことは、当業者に周知の技術であるものと一応認められる。
しかしながら、甲3発明1において、相違点D5に係る事項に至るべく、当該甲7に記載の周知技術を組み合わせるにあたり、甲7に記載の技術では、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを重量比で9:1?1:9の割合で併用することを前提とするもの(甲7【請求項1】)であるから、相違点D6に係る除外事項に抵触するものと認められ、甲3発明1において、当該甲7の技術を組み合わせるにあたっての阻害要因となるものと認められる。
してみると、甲3発明1において、上記甲7に記載された当業者に周知の技術に基づき、相違点D5及びD6に係る事項を同時に具備することはできず、少なくともいずれか一方の相違点に係る事項を、当業者が適宜なし得ることということはできない。
また、他の甲号証を検討しても、上記相違点D5及びD6につき、甲3発明1において、同時に適宜なし得ることであるとすべき事項が存するものでもない。

(ウ)小括
したがって、本件発明7は、相違点D7につき検討するまでもなく、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、甲7の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

エ.本件発明8及び10ないし12について
本件発明7を引用する本件発明8及び10ないし12については、上記ア.で説示したとおりの理由により、本件発明7が、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないのであるから、本件発明8及び10ないし12についても、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

オ.本件発明6、9及び13ないし15について
本件発明6、9及び13ないし15については、上記補正された本件訂正により、請求項6、9及び13ないし15の各記載事項が全て削除されたから、特許性の判断をすべき対象となる発明がない。

カ.取消理由7についてのまとめ
以上のとおり、本件発明4、5、7、8及び10ないし12は、いずれも甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができないから、取消理由7は理由がない。

3.取消理由4ないし7に係るまとめ
よって、本件発明1ないし5、7、8及び10ないし12に係る特許につき、申立人が主張し、当審が通知した取消理由4ないし7はいずれも理由がない。

V.当審の判断のまとめ
以上のとおり、申立人が主張する取消理由及び証拠並びに当審が通知した取消理由では、本件請求項1ないし5、7、8及び10ないし12に係る特許につき取り消すことができず、他の取消理由も発見しない。
よって、本件請求項1ないし5、7、8及び10ないし12に係る特許については、維持すべきものである。
また、請求項6、9及び13ないし15に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、訂正によりそれら各項の技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、特許第6293484号の特許請求の範囲を、令和元年7月18日付けで手続補正された平成31年3月8日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認めるべきものである。
また、上記訂正後の特許第6293484号の請求項1ないし5、7、8及び10ないし12に係る特許を維持すべきものである。
そして、上記訂正後の特許第6293484号の請求項6、9及び13ないし15に係る特許に対する本件特許異議の申立ては却下すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第一の水性液と、HLBが6以上の界面活性剤とを含有し、前記第一の水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、含水ゲル状重合体を含む懸濁液を得ることを含む、第一重合工程と、
45℃以上の前記含水ゲル状重合体を含む懸濁液を、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液と混合して、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む、第二重合工程(ただし、反応媒体中に親水性不飽和モノマーまたは親水性不飽和モノマーの混合物を水溶液の形で重合温度で導入するものを除く。)と、
をこの順に備える、吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記第二重合工程において、前記懸濁液を前記第二の水性液と混合し終わった時点の、前記第二の水性液をさらに分散させた懸濁液の温度が35℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一重合工程において、前記油性液が、前記第一の水性液に含まれる前記水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して50?650質量部の前記炭化水素分散媒を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記水性液が20℃において、20mPa・s以上の粘度を有し、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有し、
前記重合工程により得られる含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程を更に備え、該後架橋工程に供される該含水ゲル状重合体の水分率が、該含水ゲル状重合体を構成する前記水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分を100質量%として、20?130質量%であり、
前記界面活性剤が、HLB7?16のソルビタン脂肪酸エステルを含む、生理食塩水の吸水速度が1?15秒である吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【請求項5】
前記水性液が水溶性増粘剤をさらに含み、該水溶性増粘剤がヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロースより選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
炭化水素分散媒を含む油性液と、水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含み前記水性溶媒が水を含む水性液とを含有し、前記水性液が前記油性液中に分散された懸濁液中で、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備え、
前記水性液が親水性高分子分散剤をさらに含み、
前記懸濁液が、HLBが6以上の界面活性剤をさらに含有し、
前記親水性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記親水性高分子分散剤の質量平均分子量が20000?1500000である、吸水性樹脂粒子を製造する方法(ただし、ソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの割合を重量比で9:1?1:9に設定するものを除く。)。
【請求項8】
前記水性液が、前記水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001?10質量部の前記親水性高分子分散剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?3、7、8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?5、7、8、10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素分散媒が、炭素数6?8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6?8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1?5、7、8、10、11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-30 
出願番号 特願2013-526820(P2013-526820)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 橋本 栄和
大▲わき▼ 弘子
登録日 2018-02-23 
登録番号 特許第6293484号(P6293484)
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子、吸水性樹脂粒子を製造する方法、吸収体、吸収性物品及び止水材  
代理人 沖田 英樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 近藤 絵美  
代理人 近藤 絵美  
代理人 清水 義憲  
代理人 石村 理恵  
代理人 有永 俊  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ