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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60K
管理番号 1356854
異議申立番号 異議2019-700543  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-10 
確定日 2019-11-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6461123号発明「車両のオートマチックトランスミッションの操作要素をロックするための装置、このような装置を運転するための方法及び車両のオートマチックトランスミッションをシフトするためのシフト装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6461123号の請求項1、3、5ないし7、10及び11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6461123号(以下「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、2014年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年10月17日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成31年1月11日に特許の設定登録がされ、平成31年1月30日に特許掲載公報が発行され、その後、令和1年7月10日に、その請求項1、3、5?7、10及び11に係る特許に対し特許異議申立人岡林茂(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1、3、5?7、10及び11の特許に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1、3、5?7、10及び11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本件発明1」、「本件発明3」、「本件発明5」?「本件発明7」、「本件発明10」及び「本件発明11」という。)。
「【請求項1】
車両(100)のオートマチックトランスミッション(104)の操作要素(106)をロックするための装置(108)であって
装置(108)が、カム状に配置された復数の隆起を備える環状の係止輪郭を備えかつ直接的に操作要素(106)と連結可能で回転可能に支承された、ロック輪郭(200)を有する係止カム(110)と、第1の位置でロック輪郭(200)外に配置され、これにより、操作要素(106)の変位運動を許容するために係止カム(110)を回転運動のために解放し、第2の位置でロック輪郭(200)内に配置され、これにより、操作要素(106)をロックするために係止カム(110)を固定するように形成されたロック要素(112)を備えるものにおいて、
装置(108)が、第1の位置と第2の位置の間でロック要素(112)を案内するための制御輪郭(202)を有する回転可能に支承された調整リング(114)を備えること、を特徴とする装置(108)。
【請求項3】
制御輪郭(202)が、調整リング(114)内に延在する溝によって構成され、溝が、第1の溝部分(204)で、調整リング(114)の内輪郭(210)よりも外輪郭(208)の近くに延在し、第2の溝部分(206)で、調整リング(114)の内輪郭(210)に接近し、第1の溝部分(204)が、ロック要素(112)を第1の位置で案内するように形成され、第2の溝部分(206)が、ロック要素(112)を第1の位置から第2の位置へ案内するように形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の装置(108)。
【請求項5】
係止カム(110)が、調整リング(114)と操作要素(106)の間に配置され、ロック要素(112)が、係止カム(110)と調整リング(114)に対して半径方向に配置され、係止カム(110)と調整リング(114)に対して半径方向に第1の位置と第2の位置の間を移動されるように形成されていること、を特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の装置(108)。
【請求項6】
装置(108)が、更に係止ピン(300)を備え、この係止ピンが、第1の位置で係止カム(110)の係止輪郭へ係合し、第2の位置で係止カム(110)を回転運動のために解放するように形成され、係止カム(110)が、更にストッパ要素を備え、回転可能に支承された調整リング(114)が、更に制御カム(218)とノーズ(220)を備え、制御カム(218)が、調整リング(114)の回転運動時に係止ピン(300)を第1の位置から第2の位置へ移動させるように形成され、ノーズ(220)が、調整リング(114)の回転運動時にストッパ要素を連行し、これにより、操作要素(106)をパーキングポジションへ変位させるために係止カム(110)を回転させるように形成されていること、を特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の装置(108)。
【請求項7】
制御輪郭(202)が、制御カム(218)の領域内で調整リング(114)内に延在すること、を特徴とする請求項6に記載の装置(108)。
【請求項10】
装置(108)が、カム状に配置された複数の隆起を備える環状の係止輪郭を備えかつ直接的に操作要素(106)と連結可能で回転可能に支承された、ロック輪郭(200)を有する係止カム(110)と、第1の位置でロック輪郭(200)外に配置され、これにより、操作要素(106)の変位運動を許容するために係止カム(110)を回転運動のために解放し、第2の位置でロック輪郭(200)内に配置され、これにより、操作要素(106)をロックするために係止カム(110)を固定するように形成されたロック要素(112)と、第1の位置と第2の位置の間でロック要素(112)を案内するための制御輪郭(202)を有する回転可能に支承された調整リング(114)を備える、車両(100)のオートマチックトランスミッション(104)の操作要素(106)をロックするための装置(108)を運転するための方法(600)において、
方法(600)が、制御輪郭(202)によってロック要素(112)を第1の位置から第2の位置へ移動させ、これにより、操作要素(106)をロックするために係止カム(110)を固定するように、調整リング(114)を回転させるステップ(602)を備えること、を特徴とする方法。
【請求項11】
方法(600)が、制御輪郭(202)によってロック要素(112)を第2の位置から第1の位置へ移動させ、これにより、操作要素(106)の変位運動を許容するために係止カム(110)を回転運動のために解放するように、調整リング(114)を逆回転させるステップ(604)を備えること、を特徴とする請求項10に記載の方法。」

第3 申立理由の概要
1 申立理由1
異議申立人は、証拠として下記の甲第1?3号証を提出し、本件発明1、3、5、10及び11は甲第1及び2号証に基いて、本件発明6及び7は甲第1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張している。
甲第1号証:国際公開第2013/123375号
甲第2号証:特表2008-511063号公報
甲第3号証:特表2010-522115号公報

2 申立理由2
異議申立人は、本件発明3及び5?7の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」は、それぞれ本件発明1の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」と同一のものか異なるものかが明確でないから、本件発明3及び5?7は明確でなく、
また、本件発明11の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」は、それぞれ本件発明10の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」と同一のものか異なるものかが明確でないから、本件発明11は明確でなく、
したがって、本件発明3、5?7及び11は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものである旨を主張している。

第4 甲第1及び2号証の記載
1 甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(和文は、異議申立人が提示した甲第1号証の翻訳文を基に、当審において仮訳したものである。下線は当審で付与。)。
(1)「[0018] Figures 1, 2 and 3 depict a structure of an exemplary rotary selector switch 10. ・・・(中略)・・・ As drawn, knob 12 and shaft 14 are connected with each other in a fixed relationship.」
([0018]図1、図2及び図3は、例示的な回転式選択スイッチ10の構造を示す。図1を参照すると、例示的な回転式選択スイッチ10の分解図が示されている。例示的な回転選択ノブ12が示されている。ノブ12は、特定の所望の位置を選択するためにユーザによって直接的又は間接的に回転される。例えば、ユーザはノブ12を回して自動車のギヤからギヤに切り換えることができる。ノブ12は、任意の数の形状に形成することができ、1つ又は複数のプラスチックを含むがこれに限定されない任意の数の材料から製造することができる。図の実施形態では、ノブ12はシャフト14と一体的に回転するようにシャフト14と動作可能に連絡している。描かれているように、ノブ12とシャフト14は固定関係で互いに接続されている。)

(2)「[0019] Shaft 14 is rotatable in a controlled manner through its interactions with at least one bearing surface ・・・(中略)・・・ an outer surface of interface 18a and 18b is attachable to an inner surface of a rim on platform 20.」
([0019]シャフト14は、回転式選択スイッチ10内の少なくとも1つの支持面との相互作用によって制御された方法で回転可能である。そのような支持面は、ハウジング50又は回転式選択スイッチ10内の他の構造と一体であるか、それに追加されるか、又はそうでなければその一部にされる。シャフト14は、ディテントプランジャアッセンブリ16が嵌合する開口部を有する。例示的なディテントプランジャアッセンブリ16は、それらの間に弾性部材16cを有するディテントプランジャ16a及び16bを含む。弾性部材16cは、例えば圧縮ばねであるが、ばねの他のタイプ及び弾性特性を有する構造が考えられる。インタフェイス18a及び18bは、弓形として描かれているが、他の形状も適切である。インタフェイス18a及び18bは、別々の部品であっても互いに一体に形成されてもよく、及び/又は、プラットフォーム20上又はハウジング50内あるいはハウジング50上の他の構造上のリム又は壁と一体に形成されてもよい。インタフェイス18a及び18bは、ディテントプランジャ16a及び16bと相互作用する形状の内面を含み、このため、ノブ12が位置間を移動又は浮動しているときと区別されるように、ノブ12がその意図される位置にあるときをユーザが感じることができる。その内面の形状は、ディテントプランジャ16a及び16bの終端部の形状と相補的又は他の係合可能なものにされる。インタフェイス18a及び18bは、それらがプラットフォーム20と一体に形成されていない場合には、それらの外面を介してプラットフォーム20に取り付け可能にされる。図のように、インタフェイス18a及び18bの外面は、プラットフォーム20上のリムの内面に取り付け可能にされる。)

(3)「[0020] In the depicted embodiment, a printed circuit board (PCB) 22 is attached ・・・(中略)・・・ what gears may or may not be used under certain braking conditions.
([0020]図示の実施形態では、プリント回路基板(PCB)22がハウジング50に取り付けられるか又はハウジング50内に固定されている。この取り付け又は固定は、機械的なもの又は化学的なもののうちの1つ又は複数である。PCB22は、それと電気的及び/又は機械的に連絡している1つ又は複数のセンサを有している。図5は、回転式選択スイッチ10のPCB22を含む電子機器が車両の他の構成要素とどのように電気的に連絡しているかについての例示的な概略図を示す。一般に、回転式選択スイッチ10は車両通信バスと双方向に電気通信する。車両通信バスは、制御装置と呼ばれることもある変速機制御モジュール600と双方向に電気通信する。変速機制御モジュール600は、車両の物理的トランスミッション700と双方向に電気通信する。ブレーキスイッチ800は、トランスミッション制御モジュールと電気的に連絡しており、特定の制動条件下でどのギヤが使用されてもよいか又は使用されなくてもよいかに関する入力を提供する。)

(4)「[0024] The shaft 14 also includes structure designed to interact with code disc 30 ・・・(中略)・・・ and operably connected with knob 12 and shaft 14 such they rotate together.」
([0024]シャフト14はまた、コードディスク30と相互作用してシャフト14とコードディスク30との間に固定回転関係を生じさせるように設計された構造を含む。図の実施形態では、コードディスク30は、ノブ12及びシャフト14と機械的かつ動作可能に接続されて一緒に回転する。)

(5)「[0027] When the motor 90 is energized, it rotates the cam 36, and with it the cam profile 37. ・・・(中略)・・・ Plunger 80 may slide along a bearing surface on or in housing 50 for a controlled sliding action.」
([0027]モータ90が駆動されると、モータ90がカム36を回転させ、それと共にカム輪郭37を回転させる。カム輪郭37は、カム36の外周でカム36の厚さに沿って延びている。カム輪郭37は、コードディスク30と相互作用するカム36の表面に対してほぼ垂直又は実質的に垂直である。カム輪郭37の位置に応じて、プランジャ80は、カム輪郭37に許容される距離までスライドして横方向に移動する。プランジャ80は、ばね付勢されてもよく、そうでなければカム輪郭37に向けて付勢されてもよい。図2には、付勢方法の一例としてばね82が示されている。プランジャ80は、制御されたスライド動作のために、ハウジング50上又はハウジング50内の支承面に沿ってスライドできる。)

(6)「[0028] In the depicted embodiment, plunger 80 is shaped such that its lower portion interfaces ・・・(中略)・・・ and a plunger 80 in plunger position C is blocked from movement by protrusions in track 3.」
([0028]図の実施形態では、プランジャ80は、その下部がカム輪郭37と接し、その上部がコードディスク30と接するように形成されている。カム輪郭37とコードディスク30とが結合して、プランジャ80が特定の方向に動くのを阻止するためのブロックを有するトラックを形成する。図6の実施形態では、トラック1において、カム輪郭37は、カム36の外周に対してその最小凹部位置にあり、あらゆる回転阻止を許容する。トラック2では、カム輪郭37はその中間凹部位置にあり、トラック3では、カム輪郭37はその最大凹部位置にある。すなわち、プランジャ80がプランジャ位置Aに移動すると、コードディスク30の外周からの凹部に対するトラック1の突起として示されるコードディスク30の形状がプランジャ80の回転移動を阻止する。プランジャ位置Bにあるプランジャ80はトラック2の突起による移動を阻止され、プランジャ位置Cにあるプランジャ80はトラック3の突起による移動を阻止される。)

(7)「[0029] Referring to Figure 7, an exemplary code disc 30 has recesses relative to its circumference, ・・・(中略)・・・ Blocks, on the other hand, may or may not flank the end of the plunger 80 with closely fitted protrusions.」
([0029]図7を参照すると、例示的なコードディスク30は、その外周に対する凹部と、その凹部に対する突起と、を有している。プランジャ80はロックとなる位置に示されている。本明細書で使用するとき、『ロック』とは、コードディスク30の凹部がその中に挿入可能なプランジャ80の端部と相補的であるか又は実質的にそうである状態を指す。すなわち、プランジャの端部がプランジャの端部より僅かに大きいだけの凹部内に挿入されることは、凹部に隣接する突起がプランジャ80の移動を阻止することを意味する。ユーザがギヤを変更するために回転選択スイッチを動かす等の条件変更がされないと又はされるまで、ロックは時計回りまたは反時計回りの方向への移動を阻止する。一方、ブロックは、突起にぴったり嵌合するプランジャ80の端部に隣接してもしなくてもよい。)

(8)「[0031] Referring to Fig. 8, in the PARK diagram, ・・・(中略)・・・ through the corresponding recess flanked with protrusions in the linearized code disc 30' .」
([0031]図8を参照すると、PARK図において、参照番号37’は理解を容易にするために線形化されたカム輪郭37を示す。プランジャ80の一部は、トラック1の37’と接触し、線形化コードディスク30’の突起と隣接する対応する凹部を介してPARKにロックされる。)

(9)「[0032] Referring the PARK + BRAKE linearized diagram, ・・・(中略)・・・ where protrusions in track 2 could block movement, or into a position where protrusions in track 3 could block movement.」
([0032]PARK+BRAKE線形化図を参照すると、プランジャ80は全く係止されておらず、プランジャ80は解放状態にある。プランジャ80は線形化カム輪郭37’に向かって付勢されていることを理解すると、プランジャ80が下降するにつれて、プランジャ80はトラック2の突起が移動を係止できる位置又はトラック3の突起が移動を係止できる位置に移動する。)

(10)「[0033] Referring to the circular diagrams of Fig. 8, configurations are shown ・・・(中略)・・・ when the brake is applied, causing the plunger 80 to be disengaged from blocks in any of the tracks.」
([0033]図8の円形図を参照すると、PARK位置及びPARK+BRAKE位置において構成が示されている。PARK位置において、ディテントプランジャ16a及び16bは、それぞれインタフェイス18a及び18bの内面の形状に係合されている。2つの円形図を比較すると、違いは、ブレーキがかけられたときのカム輪郭37の時計回りの動きであり、プランジャ80が任意のトラックのブロックから外れている。)

(11)「[0035] Under certain predetermined conditions, a block is desired to prevent accidental rotation. ・・・(中略)・・・ As depicted, this means when the plunger 80 has slid into the appropriate position.」
([0035]ある所定の条件下では、偶然の回転を防ぐためにブロックが望まれる。例えば、車両が100khで前進している場合、ブロックは、ミスマッチを引き起こし得るREVERSEへのシフトを開始する回転を妨げる。ブロックを要求する所定の条件が満たされると、信号が直接的又は間接的にPCB22上の電子機器に送信される。そして、モータ90を励磁するために信号が送信される。モータギヤ輪郭91は、回転して、カム36を回転させる。カム36の回転は、条件に基づいて、プランジャ80を適切なトラックに移動させる。コードディスク30は、その後、ノブ12の更なる回転を妨げる物理的ブロックを引き起こす。平歯車44及びそれに関連するPCB22上のセンサ24からのフィードバックは、直接的又は間接的に、プランジャ80が適切なトラックにある時にモータ90がモータギヤ輪郭91の駆動を停止させる制御ループを生成する。図示のように、これはプランジャ80が適切な位置にスライドした時を意味する。)

(12)「[0036] Under certain predetermined conditions, a block should be removed. ・・・(中略)・・・ when the plunger has been moved into its appropriate position based upon the feedback.」
([0036]ある所定の条件下では、ブロックを除去する必要がある。これは、例えばブレーキが押された時に起こる。ブロックの除去を要求する所定の条件が満たされると、信号がPCB22上の電子機器又はPCB22を介して電子機器に送信されて、ブロックを解放する。プランジャ80がノブ12の回転を妨げないために、信号が送られて、モータ90を励磁することで、カム36を回転させて、プランジャ80を適切なトラックに駆動する。平歯車44及びそれに関連するPCB22上のセンサ24からのフィードバックは、直接的又は間接的に、フィードバックに基づいてプランジャがその適切な位置に移動された時にモータ90がモータギヤ輪郭91の駆動を停止させる制御ループを生成する。)

(13)甲第1号証のFIG.1?3及び6?8の記載を参照すると、次の「ア」?「ウ」の事項が分かる。
ア コードディスク30は、円板状の外周面に所定角度範囲にわたって形成された複数の凹部を有すること。

イ プランジャ80は、コードディスク30の凹部外に配置されているとき(以下「第一位置」という。)は、コードディスク30が回転可能となり、ノブ12の回転運動が許容され、
また、プランジャ80が、コードディスク30の凹部に配置されているとき(以下「第二位置」という。)は、コードディスク30の回転が阻止され、ノブ12の回転運動が阻止されるようなっていること。

ウ 回転式選択スイッチ10は、シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16cが係合する、プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面に周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸を備えていること。

(14)上記の記載事項及び図面の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、実施形態として次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両のトランスミッション700のノブ12の回転を妨げるための回転式選択スイッチ10であって
回転式選択スイッチ10が、シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16cが係合する、プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面に周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸を備え、
ノブ12及びノブ12と固定関係で互いに接続されているシャフト14と、機械的かつ動作可能に接続されて一緒に回転して、円板状の外周面に所定角度範囲にわたって形成された複数の凹部を有するコードディスク30と、第一位置で凹部外に配置され、これにより、ノブ12の回転運動が許容されるようにするために、コードディスク30が回転可能となるようにし、第二位置で凹部に配置され、これにより、ノブ12の回転運動が阻止されるようにするためにコードディスク30の回転を阻止するように形成されたプランジャ80を備えるものにおいて、
回転式選択スイッチ10が、第一位置と第二位置の間でプランジャ80を案内するためのカム輪郭37を有する回転可能に支承されたカム36を備える、回転式選択スイッチ10。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0039】
回転つまみ1は一体的に、環状に延びる係止輪郭5に結合されている。係止輪郭5に沿って、ばね負荷された係止片6が滑動する。係止片6および圧縮ばね7は、操作装置の、ここには図示しないハウジング内に設けられる相応の切欠内に配置されている。係止輪郭5は、操作装置の人間工学の意味で、手動操作時に回転つまみ1の知覚可能な掛合を提供する。 ・・・(後略)」

(2)【図1】?【図3】を参照すると、回転つまみ1に一体的に結合されている係止輪郭5は、複数の隆起を備える環状のカムであるといえる。

(3)上記の記載事項を総合すると、甲第2号証には、操作装置の回転つまみ1に一体的に結合されている、複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5に、ばね負荷された係止片6が滑動することにより、手動操作時に回転つまみ1の知覚可能な掛合を提供することが開示されている。

第5 判断
1 申立理由1について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「車両」は、本件発明1の「車両(100)」に相当する。
以下同様に、「トランスミッション700」は、「オートマチックトランスミッション(104)」に、
「ノブ12」は、「操作要素(106)」に、
「ノブ12の回転を妨げる」ことは、「操作要素(106)をロックする」ことに、
「回転式選択スイッチ10」は、「装置(108)」に、
「ノブ12及びノブ12と固定関係で互いに接続されているシャフト14と、機械的かつ動作可能に接続されて一緒に回転」することは、「直接的に操作要素(106)と連結可能で回転可能に支承され」ていることに、
「円板状の外周面に所定角度範囲にわたって形成された複数の凹部」は、「ロック輪郭(200)」に、
「コードディスク30」は、「係止カム(110)」に、
「プランジャ80」は、「ロック要素(112)」に、
「第一位置」は、「第1の位置」に、
プランジャ80が、「凹部外に配置され」ることは、ロック要素(112)が「ロック輪郭(200)外に配置され」ることに、
「ノブ12の回転運動が許容されるようにするために、コードディスク30が回転可能となるように」することは、「操作要素(106)の変位運動を許容するために係止カム(110)を回転運動のために解放」することに、
「第二位置」は、「第2の位置」に、
プランジャ80が、「凹部に配置され」ることは、ロック要素(112)が「ロック輪郭(200)内に配置され」ることに、
「ノブ12の回転運動が阻止されるようにするためにコードディスク30の回転を阻止する」ことは、「操作要素(106)をロックするために係止カム(110)を固定する」ことに、
「カム輪郭37」は、「制御輪郭(202)」に、
「カム36」は、「調整リング(114)」に、それぞれ相当する。

甲1発明の「シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16cが係合する」「周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸」と、本件発明1の係止カム(110)に備えられた「カム状に配置された復数の隆起を備える環状の係止輪郭」とは、「復数の隆起を備える係止輪郭」である点において共通する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「車両のオートマチックトランスミッションの操作要素をロックするための装置であって
装置が、復数の隆起を備える係止輪郭を備え、
直接的に操作要素と連結可能で回転可能に支承された、ロック輪郭を有する係止カムと、第1の位置でロック輪郭外に配置され、これにより、操作要素の変位運動を許容するために係止カムを回転運動のために解放し、第2の位置でロック輪郭内に配置され、これにより、操作要素をロックするために係止カムを固定するように形成されたロック要素を備えるものにおいて、
装置が、第1の位置と第2の位置の間でロック要素を案内するための制御輪郭を有する回転可能に支承された調整リングを備えた、装置。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
「復数の隆起を備える係止輪郭」に関して、本件発明1においては、「カム状に配置された復数の隆起を備える環状の係止輪郭」であり、その備えられた場所は「係止カム(110)」であるのに対して、
甲1発明においては、シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16cが係合する、周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸であり、その備えられた場所は、コードディスク30ではなく、プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面である点。

上記相違点について検討する。
甲1発明の「シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16c」、及び当該ディテントプランジャ16a、16cが係合する「プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面に周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸」は、「インタフェイス18a及び18bは、ディテントプランジャ16a及び16bと相互作用する形状の内面を含み、このため、ノブ12が位置間を移動又は浮動しているときと区別されるように、ノブ12がその意図される位置にあるときをユーザが感じることができる。」([0019]、上記「第4 1(2)」を参照。)という機能を奏するものである。
一方、甲第2号証に記載された事項(上記「第4 2(3)」を参照。)の「複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5」は、本件発明1の「カム状に配置された復数の隆起を備える環状の係止輪郭」に相当するものであり、甲第2号証に記載された事項の「ばね負荷された係止片6」、及び「複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5」は、手動操作時に回転つまみ1の知覚可能な掛合を提供するという機能を奏するものである。
そうすると、甲1発明の「シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16c」、及び当該ディテントプランジャ16a、16cが係合する「プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面に周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸」と、甲第2号証に記載された事項における上記「ばね負荷された係止片6」、及び「複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5」とは、同種の機能を奏するものといえる。

また、甲第2号証(上記「第4 2(3)」を参照。)には、複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5を、操作装置の回転つまみ1に一体的に結合することが開示されているところ、甲第2号証に記載された事項における回転つまみ1は、手動操作する部材であるから、甲1発明の「ノブ12」に対応する部材である。

以上のことから、仮に甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用する場合には、甲1発明の「シャフト14に嵌合するディテントプランジャアッセンブリ16のディテントプランジャ16a、16c」、及び当該ディテントプランジャ16a、16cが係合する「プラットフォーム20に取り付けられたインタフェイス18a、18bの内面に周方向の所定の範囲にわたって設けられた凹凸」が設けられている場所に、当該ディテントプランジャ16a、16c及び凹凸に換えて、当該ディテントプランジャ16a、16c及び凹凸と同種の機能を奏するものである甲第2号証に記載された事項の「ばね負荷された係止片6」、及び「複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5」を設けるか、あるいは、甲1発明のノブ12に、「複数の隆起を備える環状のカムである係止輪郭5」を一体的に結合するのが自然であり、それ以外の箇所に上記係止輪郭5を設けることが甲第2号証に示唆されているものではない
そうすると、たとえ甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用したとしても、係止輪郭5は、コードディスク30(本件発明1の「係止カム(110)」に相当。)に備えられたものとはならないから、相違点に係る本件発明1の構成に至らない。

甲第3号証は、特許異議申立書において本件発明6及び7に対して挙げられた文献であり、また、当該甲第3号証は、甲1発明において、コードディスク30に係止輪郭を設けることを示唆するものではない。
そして、たとえ甲1発明に甲第3号証に記載された事項を適用したとしても、係止輪郭は、コードディスク30に備えられたものとはならないから、相違点に係る本件発明1の構成に至らない。

以上のことから、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、甲第2及び3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件発明3及び5?7について
本件発明3及び5?7は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明3及び5?7は、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の「装置(108)」を「運転するための方法(600)」であり、本件発明1の「カム状に配置された復数の隆起を備える環状の係止輪郭」を備える「係止カム(110)」と、同一の構成を備えるものであるから、本件発明10は、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10を更に減縮したものであるから、本件発明11は、上記本件発明10についての判断と同様の理由により、甲第1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 申立理由2について
(1)本件発明3及び5?7は本件発明1を直接または間接的に引用しており、更に、本件発明3及び5?7の「操作要素(106)」の符号「106」は、本件発明1の「操作要素(106)」の符号「106」と同じである。
そうすると、本件発明3及び5?7の「操作要素(106)」は、本件発明1の「操作要素(106)」と同じものと解するのが相当である。
また、本件特許の明細書及び図面を参照しても、本件発明3及び5?7の「操作要素(106)」が、本件発明1の「操作要素(106)」とは異なるものであることを示唆する記載はない。
したがって、本件発明3及び5?7の「操作要素(106)」が、本件発明1の「操作要素(106)」と同一のものであることは、当業者であれば明らかな事項である。

(2)上記「(1)」において示した理由と同様の理由から、本件発明3及び5?7の「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」が、それぞれ本件発明1の「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」と同一のものであることは、当業者であれば明らかな事項である。

(3)上記「(1)」において示した理由と同様の理由から、本件発明11の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」が、それぞれ本件発明10の「操作要素(106)」、「係止カム(110)」、「ロック要素(112)」、「調整リング(114)」及び「制御輪郭(202)」と同一のものであることは、当業者であれば明らかな事項である。

以上のことから、本件発明3、5?7及び11は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

3 小括
以上のことから、異議申立人が主張する申立理由1及び2は、理由がない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3、5?7、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3、5?7、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-10-29 
出願番号 特願2016-522109(P2016-522109)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (B60K)
P 1 652・ 121- Y (B60K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 尾崎 和寛
小関 峰夫
登録日 2019-01-11 
登録番号 特許第6461123号(P6461123)
権利者 レムフェルダー エレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
発明の名称 車両のオートマチックトランスミッションの操作要素をロックするための装置、このような装置を運転するための方法及び車両のオートマチックトランスミッションをシフトするためのシフト装置  
代理人 篠原 淳司  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  
代理人 江崎 光史  
代理人 中村 真介  
代理人 江崎 光史  
代理人 中村 真介  

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