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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F28D
管理番号 1357099
審判番号 不服2018-15619  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-26 
確定日 2019-12-03 
事件の表示 特願2015- 78673号「冷却器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-200293号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月7日の出願であって、平成30年5月7日付けで拒絶理由が通知され、平成30年6月25日に意見書が提出されたが、平成30年8月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して平成30年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[理由]
本願の請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1、2に、本願の請求項3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?3に、それぞれ記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-214906号公報
2.国際公開第2009/099057号(周知技術を示す文献)
3.実願昭49-136304号(実開昭51-62147号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2、3を補正後の請求項1、2とするものであるから、係る補正は、請求項の削除を目的とするものである。
よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反していないことは明らかである。

第4 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年11月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるところ、請求項1及び2に記載された発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒が入っている加熱部空間(14a)が形成されており、発熱体(121、122)の熱を前記加熱部空間内の前記冷媒へ放熱させることにより該冷媒を加熱し気化させる加熱部(14)と、
前記加熱部空間へ連通している冷却部空間(16a)が形成されており、前記加熱部で気化され前記冷却部空間へ流入してきた前記冷媒を冷却して液化させる冷却部(16)と、
前記冷却部空間へ連通している吸収部空間(18a)が形成されており、該吸収部空間の膨張と収縮とによって前記冷媒の加熱および冷却による体積変化を吸収する吸収部(18)とを備え、
前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒に気化と液化とを繰り返させることにより、前記加熱部空間から前記冷却部空間にわたる空間(14a、16a)内において、前記加熱部空間内に含まれる上死点位置(P0)と前記冷却部空間内に含まれる下死点位置(P1)との間で前記冷媒の気液界面(26)を往復させ、
前記加熱部は、前記冷媒のうちの液相部分が浸透する浸透部(142、143)を有し、
該浸透部は前記加熱部空間内に配置され、前記上死点位置を跨いで前記気液界面の往復方向(DRv)に沿った一方側から他方側にかけて形成されており、
前記気液界面は、前記加熱部空間では、該加熱部空間のうち前記浸透部が占有する部位を除いた界面形成空間(14b)に形成され、
前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっていることを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記発熱体は、該発熱体の熱を前記加熱部へ伝える伝熱面(121a、122a)を有し、
前記加熱部は、前記発熱体の伝熱面に接触し該伝熱面から前記発熱体の熱を受ける受熱部(141a、141b)を有し、
前記浸透部は前記受熱部に対して固定され、該浸透部には、前記発熱体の熱が前記受熱部から伝導されることを特徴とする請求項1に記載の冷却器。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1には、「冷却器」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
(1)引用文献1の記載
「【請求項1】
発熱体(12)からの熱により、管状の収容空間(24)内に封入された冷媒流体の一部を加熱し気化させる加熱部(141)と、
前記加熱部で気化された前記冷媒流体を冷却して液化させる冷却部(142)とを備え、
前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、前記収容空間内で前記冷媒流体を自励振動させ、
該自励振動に伴い前記発熱体を冷却する冷却器(10)であって、
前記冷媒流体の自励振動を促進するようにパルス状の圧力変動を前記冷媒流体に与える振動促進装置(18、20、34、36)を備えていることを特徴とする冷却器。」(【特許請求の範囲】)
「【0006】
本発明は上記点に鑑みて、流体の自励振動変位を伴い発熱体を冷却する冷却器であって、その自励振動変位が継続的に停止することを防止できる冷却器を提供することを目的とする。」
「【0013】
発熱体12は、冷却器10により冷却される部材であり、具体的には、冷却が必要な半導体素子などである。一例を挙げれば、インバータのパワーカードである。
【0014】
冷媒容器14の内部には、冷媒が収容される管状の管状空間22が形成されている。その管状空間22の一端は閉塞されているが、他端は、駆動補助装置16に形成された伸縮空間28aに連通している。すなわち、その管状空間22と伸縮空間28aとが一体となって、冷媒を封入する管状の収容空間24を形成している。
【0015】
また、冷媒容器14は、加熱部141と冷却部142とを有している。その加熱部141と冷却部142とは、管状空間22の長手方向に沿って、管状空間22の一端側から並んで配置されている。
【0016】
加熱部141には発熱体12が設けられている。具体的には、発熱体12は、管状空間22のうち加熱部141に属する部分である加熱部管状空間221内に収容されている。発熱体12の電気端子12a、12bは加熱部141から突き出ており、発熱体12は、その電気端子12a、12bに通電されることにより発熱する。このような構成から、加熱部141は、発熱体12からの熱により、収容空間24内に封入された冷媒の一部を沸騰させ気化させる。具体的には、加熱部管状空間221内の冷媒を沸騰させ気化させる。」
「【0018】
また、冷却部管状空間222は、その長手方向に直交する管路断面積が極めて小さい管路で構成されている。そのため、冷却部管状空間222内に冷媒の気液界面26が存在する場合には、その気液界面26は、重力方向に拘わらず冷媒の表面張力により、冷却部管状空間222の長手方向に直交する方向を向くように維持される。すなわち、冷却部管状空間222の長手方向において、気液界面26を境に加熱部141側には気体冷媒が存在し、その反対側には液体冷媒が存在する。
【0019】
例えば、冷媒が加熱部141で加熱されることにより気体冷媒の体積が増すほど、気液界面26は管状空間22の他端方向すなわち図1の左方向に移動する。そうすると、冷却部142は、液体冷媒も冷却するが、それと共に、加熱部で気化された気体冷媒も冷却し凝縮させる。
【0020】
駆動補助装置16は、伸縮空間28aが形成された伸縮部28と、錘30とを備えている。伸縮部28は、例えば蛇腹等で構成されており、重力方向の上下に伸縮する。伸縮部28が上下に伸縮すると、それに伴い、伸縮空間28aも上下に伸縮する。伸縮空間28a内は液体の冷媒で満たされている。また、伸縮部28はその下端において冷媒容器14に固定されており、伸縮部28の上端には錘30が固定されている。
【0021】
また、伸縮空間28aの上端は閉塞されており、伸縮空間28aの下端は、前述したように管状空間22の他端に連通している。従って、管状空間22内の冷媒が伸縮空間28a内に流入すると、伸縮空間28aが伸びて伸縮部28の上端が上昇する。逆に、伸縮空間28a内の冷媒が管状空間22内へ流出すると、伸縮空間28aが縮んで伸縮部28の上端が下降する。
【0022】
また、伸縮部28は、加熱部管状空間221の全体が伸縮部28の最も縮んだ状態においても伸縮空間28aの上端より下方に位置するように構成されている。また、発熱体12からの発熱が止まれば、冷媒の気液界面26は加熱部管状空間221内において発熱体12よりも上側に位置することになり、そのため、発熱体12が液体冷媒に浸ることになる。」
「【0026】
このように構成された冷却器10では、加熱部管状空間221内の液体冷媒が発熱体12により加熱され沸騰させられると冷媒の気体部分が増し、それと共に冷媒全体の体積が増加し伸縮部28の上端が上昇する。冷媒の気体部分がある程度増し例えば気液界面26が図1のように冷却部管状空間222内に入ると、冷却部142が、その冷媒の気体部分を冷却し凝縮させる。【0027】
冷媒の気体部分が凝縮することにより気体部分が少なくなると、それと共に冷媒全体の体積が減少し伸縮部28の上端が下降する。そして、発熱体12の一部または全部が液体冷媒に浸かるようになる。発熱体12が液体冷媒に浸かると、上述したように再び加熱部管状空間221内の液体冷媒が沸騰し蒸発する。
【0028】
このように、冷却器10において加熱部141および冷却部142は、冷媒に蒸発と凝縮とを繰り返させることにより、収容空間24内で冷媒の気液界面26を自励振動させる。要するに、収容空間24内で冷媒を自励振動させる。また、伸縮部28は、冷媒の自励振動に伴う冷媒全体の体積変化を吸収するように伸縮するので、その冷媒全体の体積変化を吸収する振動吸収部として機能する。更に、伸縮部28は、所定のばね定数を持っているので、その伸縮部28の伸縮方向における釣合い点に向って伸縮量に応じた反力を生じ、冷媒の自励振動を補助する役割を果たす。」
「【0046】
また、ピストン部182の瞬間的な突出しにより気液界面26の振動が始まると発熱体12が周期的に液体冷媒に浸るので、発熱体12の冷却が促進され、発熱体温度TMPxが温度閾値T1に対し十分に低い温度にまで低下している。」
「【図1】


(2)引用発明
上記(1)及び図面の記載を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「加熱部管状空間(221)内に収容された発熱体(12)からの熱により、管状の収容空間(24)内に封入された冷媒流体の一部を加熱し気化させる加熱部(141)と、
前記加熱部で気化された前記冷媒流体を冷却して液化させる冷却部(142)と、
伸縮空間(28a)が形成された伸縮部(28)とを備え、
前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、前記収容空間内で前記冷媒流体を自励振動させ、
該自励振動に伴い前記発熱体を冷却する冷却器(10)であって、
前記冷媒流体の自励振動を促進するようにパルス状の圧力変動を前記冷媒流体に与える振動促進装置(18、20、34、36)を備えており、
冷媒流体が伸縮空間(28a)内に流入すると、伸縮空間(28a)が伸びて伸縮部(28)の上端が上昇し、伸縮空間(28a)内の冷流体媒が流出すると、伸縮空間(28a)が縮んで伸縮部(28)の上端が下降し、 冷却部(142)の冷却部管状空間(222)内に冷媒流体の気液界面(26)が存在する場合には、その気液界面(26)は、重力方向に拘わらず冷媒の表面張力により、冷却部管状空間(222)の長手方向に直交する方向を向くように維持され、
冷媒流体の気体部分が凝縮することにより気体部分が少なくなると、それと共に冷媒流体全体の体積が減少し、発熱体(12)の一部または全部が液体冷媒流体に浸かるようになる、
冷却器。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には、「自励振動形ヒートパイプ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている
(1)引用文献2の記載
「[0011] 図1Aに示す自励振動型ヒートパイプ1(以下、ヒートパイプ1という場合がある)は、作動流体Mと、加熱部2及び冷却部3と、加熱部2に内蔵されたウイック4と、加熱部2及び冷却部3を連結する連結流路5とから概略構成されている。
このヒートパイプ1では、連結流路5内に冷却部3から作動流体Mが流入して液プラグLが形成される。また、加熱部2において、作動流体Mが気化されて蒸気プラグBが形成される。液プラグLが連結流路5内を自励振動することによって熱伝導が行われる。
なお、本実施形態のヒートパイプ1は、どのような姿勢でも作動可能だが、長手方向に沿って水平に設置して使用することが有効熱伝導率を高くできる点で好ましい。
[0012] 加熱部2には、連結流路5に連通された中空部2aが設けられている。この中空部2aの内壁面にウイック4が配置されている。また、冷却部3は、図1Aに示す例では作動流体Mを満たす容器3aである。この容器3aに作動流体Mが満たされる。また作動流体Mはヒートパイプ1の外部に面し、ヒートパイプ1の内圧に束縛されない、自由液面M1を形成する。また、容器3aの側壁に連結流路5が取り付けられる。連結流路5の容器3a側の端部は開放端である。この開放端により容器3aと連結流路5とが連通されている。」
「[0020] ウイック4は、毛細管現象によって液状の作動流体を輸送できるものであれば従来公知のウイックでよい。ウイック4は、例えば銅などの熱伝導性に優れた金属網、グラスウール、脱脂綿等の綿状体等でよい。また、ウイック4は、加熱部2の長手方向全部の領域に充填されていてもよい。あるいは、ウイック4の一端が加熱部2と連結流路5との接合部8に一致するようにしてウイック4が加熱部2の長手方向の一部(例えば長手方向全長の2/3程度)にのみ充填されていてもよい。
[0021] 作動流体Mは、ヒートパイプ1の作動温度に合わせて適宜選択すればよい。作動流体Mは、例えば、純水、エタノールなどの有機液体、フロンなどの冷媒、アンモニアなどの液化ガス等が好ましい。
ヒートパイプ1の作動前には、連結流路5及び加熱部2に、予め脱気された作動流体を完全に満たしておくことが好ましい。ヒートパイプ1の加熱部2を加熱することにより、加熱部2に満たされた作動流体Mが気化して蒸気プラグBが形成される。この蒸気プラグBによって作動流体Mが加熱部2から押し出される。作動流体Mは、連結流路5に残って液プラグLを形成する。その後、定常状態に至ると、液プラグLの先端のメニスカスMにおいて、作動流体Mの蒸発と凝縮とが交互に起こる。このため、連結流路5内で液プラグLが自励振動する。連結流路5を目視すると、蒸気プラグBと液プラグLとの気液界面となるメニスカスMが、連結流路5内を往復振動していることが確認でき、これによって自励振動の有無を判定できる。
また、蒸気プラグBの形成時及び自励振動の発生時において、液プラグLの一部が冷却部3(容器3a)に押し出されるが、容器3aに満たされた作動流体Mは自由液面M1を有するので、押し出された液プラグLを吸収できる。
[0022] 上記のヒートパイプ1は、作動流体Mと、加熱部2と冷却部3との間に配されて作動流体Mが流通する直線状の連結流路5を備える。連結流路5の流路断面積が、加熱部2の流路断面積より小さく、更に加熱部2にウイック4が備えられている。このため、有効熱伝導率及び最大熱輸送量を従来の自励振動型ヒートパイプに比べて格段に高めることができる。
特に、加熱部2にウイック4が備えられることで、加熱部2において作動流体Mの蒸発を安定して起こすことができ、結果として有効熱伝導率及び最大熱輸送量を更に格段に高めることができる。
また、上記のヒートパイプ1は、水平設置した場合に自励振動を安定して持続させることができる。
更に、上記のヒートパイプ1によれば、加熱部2と連結流路5とを相互に直接に連通させている。このため、液プラグLの先端のメニスカスMが、加熱部2と連結流路5との接合部8に来るごとに、液体の一部が加熱部2に供給される。従って、加熱部2に作動流体を保持させて常に蒸発を起こすことができる。これにより作動流体を安定して自励振動させることができ、有効熱伝導率及び最大熱輸送量を高くできる。」
「[図1A]


(2)引用文献2に記載された技術
上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献2には以下の技術(以下「引例2技術」という。)が記載されていると認められる。
「加熱部2にウイック4が備えられ、加熱部2と連結流路5とを相互に直接に連通され、液プラグLの先端のメニスカスMが、加熱部2と連結流路5との接合部8に来るごとに、液体の一部が加熱部2に供給されるヒートパイプ1。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には、「ヒートパイプ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている
(1)引用文献3の記載
「図中、1は内部に動作液を封入した密封状のパイプで、その蒸発部2には複数個のプレート3を放射状に一体的に設けてあり、また凝縮部4にはアルミニウム等の放熱フィン5を嵌合させてある。
パイプ1の内壁全面には梨地状ウィック6を設けてある。梨地状ウィック6はパイプ1の内壁にサンドブラストを行なうか、あるいは網線、真鍮線等の円形ブラシをパイプ1の内壁に押しつけて回転させるか、または硝酸と弗酸の混合液にパイプを浸漬エッチングする等の方法により容易に形成することができる。」(公報2ページ4?15行)
「本考案のヒートパイプは以上のように構成されるが、その使用に際しては、蒸発部2は下方に、凝縮部4は上方にした姿勢で使用される。
このようなヒートパイプのプレート3に冷却せんとする半導体部品等の発熱部品9を取付ける。
発熱部品9の発熱はプレート3を介してヒートパイプの蒸発部2に伝えられるが、該部の内壁の梨地状ウィック6は凝縮部4で凝縮した動作液の重力による落下で一様にぬれており、この動作液は蒸発部2に伝えられた熱により蒸発し、その蒸発は凝縮部4に導かれ、そこで凝縮して潜熱を放出する。この潜熱は放熱フィン5から外気に放散される。」(公報2ページ下から2行?3ページ12行)
(2)引用文献3に記載された技術
上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献3には以下の技術(以下「引例3技術」という。)が記載されていると認められる。
「ヒートパイプの蒸発部2の内壁に梨地状ウィック6が形成されること。」

第5 原査定についての判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「加熱部管状空間(221)」は、文言の意味、機能または作用等からみて、本願発明1における「加熱部空間(14a)」に相当し、以下同様に、「発熱体(12)」は「発熱体(121、122)」に、「冷媒流体」は「冷媒」に、「加熱部(141)」は「加熱部(14)」に、「冷却部管状空間(222)」は「冷却部空間(16a)」に、「冷却部(142)」は「冷却部(16)」に、「伸縮空間(28a)」は「吸収部空間(18a)」に、「伸縮部(28)」は「吸収部(18)」に、「気液界面(26)」は「気液界面(26)」に、「冷却器(10)」は「冷却器」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「加熱部管状空間(221)内」に「冷媒流体」が入っていることは明らかであるから、引用発明は、本願発明1の「冷媒が入っている加熱部空間(14a)が形成され」たものである。
また、引用発明の「発熱体(12)からの熱により、管状の前記収容空間(24)内に封入された冷媒流体の一部を加熱し気化させる」ことは、本願発明1の「発熱体(121、122)の熱を前記加熱部空間内の前記冷媒へ放熱させることにより該冷媒を加熱し気化させる」ことに相当する。
また、引用発明の「加熱部管状空間(221)」と「冷却部管状空間(222)」とは、その配置からみて連通したものであり、引用発明は、本願発明1の「前記加熱部空間へ連通している冷却部空間(16a)が形成されて」いるものである。そして、引用発明の「前記加熱部で気化された前記冷媒流体を冷却して液化させる冷却部(142)」は、本願発明1の「前記加熱部で気化され前記冷却部空間へ流入してきた前記冷媒を冷却して液化させる冷却部(16)」といえる。
さらに、引用発明の「冷却部管状空間(221)」と「伸縮部(28)」とは、その配置からみて連通したものであり、引用発明は、本願発明1の「前記冷却部空間へ連通している吸収部空間(18a)が形成され」たものである。
引用発明の「伸縮空間(28a)が形成された伸縮部(28)」が「冷媒流体が伸縮空間(28a)内に流入すると、伸縮空間(28a)が伸びて伸縮部(28)の上端が上昇し、伸縮空間(28a)内の冷媒が流出すると、伸縮空間(28a)が縮んで伸縮部(28)の上端が下降」することは、その態様からみて、冷媒流体の体積の変化を吸収しているといえるから、本願発明1の「該吸収部空間の膨張と収縮とによって前記冷媒の加熱および冷却による体積変化を吸収する吸収部(18)とを備え」ることに相当する。
また、引用発明では、「前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、前記収容空間内で前記冷媒流体を自励振動」しており、冷却部における振動端部の引用発明の「気液界面」の位置は、本願発明1の「冷却部空間内に含まれる下死点位置(P1)」に相当し、同じく加熱部における振動端部の引用発明の「気液界面」の位置は、同じく「加熱部空間内に含まれる上死点位置(P0)」に相当する。そうすると、引用発明の「前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、前記収容空間内で前記冷媒流体を自励振動させ」る態様は、本願発明1の「前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒に気化と液化とを繰り返させることにより、前記加熱部空間から前記冷却部空間にわたる空間(14a、16a)内において、前記加熱部空間内に含まれる上死点位置(P0)と前記冷却部空間内に含まれる下死点位置(P1)との間で前記冷媒の気液界面(26)を往復させ」る態様に相当する。
引用発明の「気液界面」は、引用文献1の図1の気液界面(26)の形状を踏まえると、冷却部の気液界面が形成させる空間である界面形成空間においてメニスカスが維持され、前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持されるものである。そうすると、引用発明の「冷却部管状空間(222)内に冷媒の気液界面(26)が存在する場合には、その気液界面(26)は、重力方向に拘わらず冷媒の表面張力により、冷却部管状空間(222)の長手方向に直交する方向を向くように維持され」ることと、本願発明1の「前記気液界面は、前記加熱部空間では、該加熱部空間のうち前記浸透部が占有する部位を除いた界面形成空間(14b)に形成され、前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっていること」とは、「前記気液界面は、界面形成空間に形成され、前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっている空間を有する」との限りで一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「冷媒が入っている加熱部空間が形成されており、発熱体の熱を前記加熱部空間内の前記冷媒へ放熱させることにより該冷媒を加熱し気化させる加熱部と、
前記加熱部空間へ連通している冷却部空間が形成されており、前記加熱部で気化され前記冷却部空間へ流入してきた前記冷媒を冷却して液化させる冷却部と、
前記冷却部空間へ連通している吸収部空間が形成されており、該吸収部空間の膨張と収縮とによって前記冷媒の加熱および冷却による体積変化を吸収する吸収部とを備え、
前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒に気化と液化とを繰り返させることにより、前記加熱部空間から前記冷却部空間にわたる空間内において、前記加熱部空間内に含まれる上死点位置(P0)と前記冷却部空間内に含まれる下死点位置(P1)との間で前記冷媒の気液界面を往復させ、
前記気液界面は、界面形成空間に形成され、
前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっている空間を有する、冷却器。」

[相違点1]
本願発明1は、「加熱部は、前記冷媒のうちの液相部分が浸透する浸透部(142、143)を有し、 該浸透部は前記加熱部空間内に配置され、前記上死点位置を跨いで前記気液界面の往復方向(DRv)に沿った一方側から他方側にかけて形成されて」いるのに対して、引用発明は、浸透部を有していない点。

[相違点2]
界面形成空間に形成される気液界面について、本願発明1は、「前記加熱部空間では、該加熱部空間のうち前記浸透部が占有する部位を除いた界面形成空間(14b)に形成され、前記気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっているのに対して、引用発明は、「冷却部管状空間(222)内に冷媒の気液界面(26)が存在する場合には、その気液界面(26)は、重力方向に拘わらず冷媒の表面張力により、冷却部管状空間(222)の長手方向に直交する方向を向くように維持され」るものである点。

(2) 相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明は、「加熱部管状空間(221)内に収容された発熱体(12)からの熱により、管状の前記収容空間(24)内に封入された冷媒流体の一部を加熱し気化させる」ものである。そして、引用文献1に、「冷媒の気体部分が凝縮することにより気体部分が少なくなると、それと共に冷媒全体の体積が減少し伸縮部28の上端が下降する。そして、発熱体12の一部または全部が液体冷媒に浸かるようになる。発熱体12が液体冷媒に浸かると、上述したように再び加熱部管状空間221内の液体冷媒が沸騰し蒸発する。」(【0026】)と記載されるにように、発熱体が液体冷媒に浸かることによって、液体冷媒を沸騰させるものである。そうすると、引用発明は、加熱部において、液体冷媒に発熱体を漬けるものであることから、加熱部が浸透部を有する必要性はなく、加熱部に浸透部を設けると、液体冷媒が浸透部に保持されることになり、発熱体が液体冷媒に漬かりにくくなることを考慮すると、上記引例2技術のように、引用文献2に、加熱部にウイックを備えることが記載されているとしても、引用発明に当該技術を適用することについては、むしろ阻害要因があるともいえる。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者であっても、容易に想到し得たことではない。

イ 相違点2について
引用発明は、気液界面について、「冷却部管状空間(222)内に冷媒の気液界面(26)が存在する場合には、その気液界面(26)は、重力方向に拘わらず冷媒の表面張力により、冷却部管状空間(222)の長手方向に直交する方向を向くように維持され」るとするもので、気液界面が冷却部管状空間(222)の長手方向に直交する方向を向くように維持されるのは、気液界面が冷却部管状空間に存在する場合であって、気液界面が、加熱部に存在する場合に、気液界面が冷媒に作用する重力の向きとの関係でどのような態様となるかについては、引用文献1には記載も示唆もなされていない。
そして、引用発明の加熱部は、「加熱部管状空間(221)内に収容された発熱体(12)」との構成を備えるものであるところ、そのような形態のものにおいて、冷媒流体が液化したものが加熱部に存在する際に、気液界面の形態がどのようなものとなるか特定できない以上、「気液界面の往復方向に沿った方向から見た前記界面形成空間の断面は、前記冷媒に作用する重力の向きに拘わらず前記気液界面のメニスカスが維持される形状になっている」ということもできない。この点は、引用文献2に記載も示唆もなされていない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者であっても、容易に想到し得たことではない。
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願の特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載したものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本願発明2も、引用発明と対比すると、上記相違点1及び2を少なくとも有しており、上記「ア 相違点1について」及び「イ 相違点2について」において、検討したことは同様であり、さらに、引用文献3においても、上記相違点1及び2について、記載も示唆もするところはない。
以上のとおりであるから、本願発明2は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に、本願発明2は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に記載された事項に、それぞれ基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2015-78673(P2015-78673)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F28D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金丸 治之久島 弘太郎  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
山崎 勝司
発明の名称 冷却器  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  

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