ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C |
---|---|
管理番号 | 1357140 |
審判番号 | 不服2018-14081 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-24 |
確定日 | 2019-11-14 |
事件の表示 | 特願2014- 78201「SMC成形品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-199221〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年4月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 4月25日付け:拒絶理由通知書 平成30年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 7月18日付け:拒絶査定 平成30年10月24日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成30年7月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「補強繊維材に樹脂コンパウンドを含浸させたSMCを複数枚重ね、金型に配置して加熱加圧成形するSMC成形品の製造方法であって、 最上層のベース色のSMCと、最下層のベース色のSMCの間に、少なくとも、加熱加圧成形時に、前記ベース色のSMCの樹脂コンパウンドの粘度より低い粘度となる樹脂コンパウンドが前記補強繊維材に含浸され、かつ切込みを入れて分割した前記ベース色に対して色調が異なるSMCを平面状に並べて挟んで重ねて金型に配置して加熱加圧することにより、前記ベース色に対して色調が異なるSMCの樹脂コンパウンドを流動させながら前記ベース色のSMCの樹脂コンパウンドに混合して成形することを特徴とするSMC成形品の製造方法。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりの理由を含むものである。 理由1 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開昭56-98137号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 「2.特許請求の範囲 1. 充填剤として水酸化アルミニウムを含む不飽和ポリエステル樹脂系組成物(A)を補強用繊維に含浸し増粘させシート状とした成形材料(B)を成形品の本体成形用材料とし、不飽和ポリエステル樹脂系組成物(A)と異なる色相の増粘させた不飽和ポリエステル樹脂系着色成形材料(C)を柄出用材料とし、成形材料(B)と不飽和ポリエステル系着色成形材料(C)とを成形用金型に載置し加熱加圧成形し大理石模様を有する成形品を製造する方法において、(I)成形材料(B)として成形材料(B)を厚さ1mmの平板状成形品としたとき該成形品の光線透過率が35?70%の範囲にあるものを用い、(II)不飽和ポリエステル樹脂系組成物(A)及び不飽和ポリエステル樹脂系着色成形材料(C)の増粘後の両者間の粘度差を40℃で20万ポイズ以下となるよう両者を増粘し、(III)成形材料(B)と不飽和ポリエステル系着色成形材料(C)を成形用金型内に載置する際に不飽和ポリエステル樹脂系着色成形材料を小片状又は短冊状とし、かつ成形材料(B)ではさみ直接金型に触れることなく載置することを特徴とする大理石模様を有する成形品の製造方法。」 「実施例 1 不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒化学工業(株)製、‘エポラツク・N-14’)100部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製‘ハイジライト・H-32’)70部、ステアリン酸亜鉛3部及びt-ブチルパーベンゾエート1部を混練し、更にそれに酸化マグネシウム0.9部を加え混練し、樹脂組成物(A-1)を得た。次いで、この樹脂組成物(A-1)とガラスチヨツプドストランド(長さ1インチ)60部を用い、従来公知のSMC製造手法に従つてシート状成形材料(B-1)を得た。この際、増粘は、40℃の恒温槽に24時間静置することにより行なつた。 尚、樹脂組成物(A-1)単独を40℃の恒温槽で24時間増粘させたところ、40℃で53万ポイズであつた。又、シート状成形材料(B-1)を厚さ1mmの平板に成形し、得られた平板について光線透過率を測定した。その結果は、65%であつた。 不飽和ポリエステル樹脂(‘エポラツク・N-14’)100部、水酸化アルミニウム(’ハイジライト・H-32‘)70部、ステアリン酸亜鉛3部、t-ブチルパーベンゾエート1部、酸化マグネシウム0.9部及び顔料5部を混練し組成物を得た。この組成物とガラスチヨプドストランド60部を用い従来公知のSMC製造手法に従つてSMCとし、次いで3mm×2mm×100?200mmに切り取り短冊状の樹脂着色材料(C-1)、即ち柄用材料とした。この際、顔料として柄用材料がブラウン(マンセル値:5YR4/5相当)とグリーン(マンセル値:5GY6.5/4相当)となる2種を用い、色相の異なる2種の柄用材料をそれぞれ得た。又、増粘は40℃の恒温槽で24時間静置することにより行なつた。 尚、SMC化する前の組成物を40℃で24時間増粘させたところ、ブラウンが47万ポイズ、グリーンが45万ポイズであつた。 たて40mm、横300mm、深さ200mmの箱型の成形用金型に、300mm×250mmのシート状成形材料(B-1)を5枚(1500グラム)積層し、内面側から1枚目と2枚目の間にグリーンとブラウンの柄用材料(C-1)(3mm×2mm×100?200mm)を各々10グラム相当分をはさみ込んだ状態で載置し、凸型145℃、凹型135℃、投影面積当り80Kg/cm^(2)の圧力で成形した。内面に深みのある大理石模様を有する箱型成形品が得られた。」(第4ページ左上欄第16行?同ページ右下欄第2行) 2 引用発明 引用文献1には、 SMCとして、「樹脂組成物(A-1)とガラスチョップドストランド(長さ1インチ)を用い、従来公知のSMC製造手法に従ってシート状成形材料(B-1)を得」ること、ブラウンとグリーン2種の顔料を用いた樹脂組成物とガラスチョップドストランドを用い従来公知のSMC製造手法に従ってSMCとし、次いで3mm×2mm×100?200mmに切り取り短冊状の樹脂着色材料(C-1)、即ち柄用材料」とすることが記載され、 成形品を得る方法として、「シート状成形材料(B-1)を5枚(1500グラム)積層し」、箱型の成形用金型の「凸型145℃、凹型135℃、投影面積当り80Kg/cm^(2)の圧力で成形」すること、 その際、「内面側から1枚目と2枚目の間にグリーンとブラウンの柄用材料(C-1)(3mm×2mm×100?200mm)を各々10グラム相当分をはさみ込んだ状態で載置」し、「内面に深みのある大理石模様を有する箱型成形品が得られた」ことが記載され、 樹脂組成物の粘度に関し、シート状成形材料(B-1)に用いる「樹脂組成物(A-1)単独を40℃の恒温槽で24時間増粘させたところ、40℃で53万ポイズであった」こと、柄用材料(C-1)に用いる「SMC化する前の組成物を40℃で24時間増粘させたところ、ブラウンが47万ポイズ、グリーンが45万ポイズ」であることが記載されている。 そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。 「ガラスチョップドストランドと樹脂組成物を用いて得られたSMCであるシート状成形材料(B-1)を5枚積層し、その内面側から1枚目と2枚目の間にグリーンとブラウンの柄用材料(C-1)であるSMCをはさみ込んだ状態で箱型の成形用金型に配置して、凸型145℃、凹型135℃、投影面積当り80Kg/cm^(2)の圧力で成形する方法であって、 シート状成形材料(B-1)に用いる樹脂組成物(A-1)の40℃で24時間増粘後の粘度は53万ポイズであり、柄用材料(C-1)に用いる組成物の40℃で24時間増粘後の粘度はブラウンが47万ポイズ、グリーンが45万ポイズの粘度であり、 上記柄用材料は、3mm×2mm×100?200mmに切り取り短冊状とされたものであって、シート状成形材料(B-1)にはさみ込んだ状態で載置されて成形された、内面に深みのある大理石模様を有する箱型成形品の製造方法」(以下「引用発明」という。) 第5 対比 引用発明の「ガラスチョップドストランド」及び「樹脂組成物」は、SMCの構成からみて、本願発明の「補強繊維材」及び「樹脂コンパウンド」にそれぞれ相当する。 引用発明の「シート状成形材料(B-1)」及び「柄用材料(C-1)」は、それぞれ本願発明の「ベース色のSMC」及び「ベース色に対して色調が異なるSMC」に相当し、その際、シート状成形材料(B-1)に用いる樹脂組成物(A-1)より、柄用材料(C-1)に用いる樹脂組成物の粘度が低いことは、本願発明においてベース色のSMCの樹脂コンパウンドの粘度よりベース色に対して色調が異なるSMCの樹脂コンパウンドの粘度のほうが低いことと一致する。 また、引用発明における柄用材料は「切り取り短冊状」とされたものであるから、切り取り短冊状とする前のものを「分割」したものであるといえる。そして、本願発明のベース色に対して色調が異なるSMCが「切込みを入れて分割」される点について、本願の明細書の段落【0056】に「分割した柄色のSMC22、23は、それぞれ分割した小片の間隔をあけて配置することが好ましい。」との記載があることをふまえると「切り取り短冊状」とすることと「切込みを入れて分割」することは、「分割」されたものである点において一致する。 さらに、引用発明の「箱型の成形用金型」及び「箱型成形品」は、本願発明の「金型」及び「SMC成形品」に相当し、引用発明における「成形」は温度圧力条件から、本願発明の「加熱加圧することにより、前記ベース色に対して色調が異なるSMCの樹脂コンパウンドを流動させながら前記ベース色のSMCの樹脂コンパウンドに混合して成形」することに相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。 「補強繊維材に樹脂コンパウンドを含浸させたSMCを複数枚重ね、金型に配置して加熱加圧成形するSMC成形品の製造方法であって、 最上層のベース色のSMCと、最下層のベース色のSMCの間に、少なくとも、加熱加圧成形時に、前記ベース色のSMCの樹脂コンパウンドの粘度より低い粘度となる樹脂コンパウンドが前記補強繊維材に含浸され、かつ分割した前記ベース色に対して色調が異なるSMCを挟んで重ねて金型に配置して加熱加圧することにより、前記ベース色に対して色調が異なるSMCの樹脂コンパウンドを流動させながら前記ベース色のSMCの樹脂コンパウンドに混合して成形するSMC成形品の製造方法。」 また、本願発明と引用発明は、以下の点で一応相違する。 相違点1 ベース色に対して色調が異なるSMC(柄用材料(C-1))の分割について、本願発明は「切込みを入れ」るものであるのに対し、引用発明においては、この点を特定しない点 相違点2 本願発明は「色調が異なるSMC」が「平面状に並べ」られているのに対し、引用発明においては、並べ方について特定しない点 第6 判断 1 相違点1について 「切込み」とは、一般に「物の中に刃物を深く入れて切る。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)ことをいうと解される。 そして、刃物を深く入れて切ることは、SMCの通常の加工方法であるといえるところ、引用発明においても当然に切込みによって分割されているといえるから、この点は、実質的な相違点ではない。 2 相違点2について 本願発明の「色調が異なるSMC」の並べ方について、平面状以外の戴置では、色調が異なるSMCの滞留によって特定部位の柄色が濃くなることは明らかである一方、引用発明において「内面に深みのある大理石模様」が得られていることから、引用発明においても柄用材料(本願発明の「色調が異なるSMC」)は、分散されて「平面状に並べ」られているといえる。そうすると相違点2は実質的な相違点ではない。 仮に、「色調が異なるSMC」を「平面状に並べ」ることが曲がりや捩じれを生じさせず整列させることを意味するとしても、「3mm×2mm×100?200mm」の短冊状(紐状)である引用発明の柄用材料について、色や大きさに基づく視認性や取扱性から、曲がりや捩じれを生じさせず整列させることに格別な困難性も認められない。引用発明も「内面に深みのある大理石模様」を得ることを目的とするものであり、求められる意匠性に鑑み、曲がりや捩じれを生じさせず整列させることは当業者が容易になし得ることといえる。 第7 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、引用発明における柄用材料は、短冊状(紐状)であることに起因して曲がりや捩じれが生じやすいので、平面状に並べるのは困難である旨主張する。 しかし、引用発明における柄用材料の形状による不具合があれば、引用発明も「内面に深みのある大理石模様」を得ることを目的とすることから曲がりや捩じれが生じた場合には、当然に修正を行い平面状に並べられるようにするものである。仮に、引用発明の柄用材料を平面状に並べることが困難であるからといって、そのことが技術的に不可能であるわけではないし、そのことを阻害する事由も見あたらない。 よって、請求人の主張は採用することができない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-06 |
結審通知日 | 2019-09-10 |
審決日 | 2019-09-27 |
出願番号 | 特願2014-78201(P2014-78201) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 113- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深草 祐一、▲高▼橋 理絵 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大畑 通隆 |
発明の名称 | SMC成形品の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |