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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1357176
審判番号 不服2018-9147  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-03 
確定日 2019-11-11 
事件の表示 特願2017-81408「ユーザに作業指示を与えることに関連するサービスを提供するためのサーバ装置、そのサーバ装置において実行される方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-181051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月20日付け :拒絶理由通知書
平成29年10月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月21日付け :拒絶理由通知書
平成30年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月27日付け :拒絶理由通知書
平成30年 4月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月18日付け :拒絶査定
平成30年 7月 3日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
令和 1年 6月26日付け :拒絶理由通知書
令和 1年 8月21日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ユーザに作業内容を指示するための作業指示に関連するサービスを提供するためのサーバ装置であって、前記サーバ装置は、少なくとも1つのユーザ装置とネットワークを介して通信することが可能なように構成されており、
前記サーバ装置は、前記サーバ装置の動作を制御するプロセッサ部を含み、
前記プロセッサ部は、
前記サーバ装置の監視対象のデータが複数の所定の条件のうちの1つを満たすか否かを判定することであって、前記複数の所定の条件のそれぞれは、前記監視対象のデータが異常または異常の予兆についての条件である、ことと、
前記監視対象のデータが前記複数の所定の条件のうちの1つを満たすと判定されたことに応答して、少なくとも1つの作業指示と、前記少なくとも1つのユーザ装置のうち前記少なくとも1つの作業指示が送信されるべき少なくとも1つのユーザ装置とを特定することであって、どの作業指示が特定されるのかおよびどのユーザ装置が特定されるのかは、前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され、前記少なくとも1つの作業指示は、前記異常または異常の予兆の発生場所において行われるべき少なくとも1つの作業ステップを含み、前記少なくとも1つの作業指示を特定することは、前記少なくとも1つの作業指示に含まれる前記少なくとも1つの作業ステップのうちの1つ以上の作業ステップを特定することを含み、どの作業ステップが特定されるのかは、前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され、前記少なくとも1つの作業指示は、前記少なくとも1つの作業指示に従って前記ユーザが前記1つ以上の作業ステップを実施することにより、前記ユーザが前記異常または異常の予兆に対処することを可能にするものである、ことと、
前記特定された少なくとも1つの作業指示を前記ネットワークを介して前記特定された少なくとも1つのユーザ装置に送信することと
を少なくとも実行するように構成されている、サーバ装置。」

第3 拒絶の理由
令和1年6月26日の当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願請求項1-7、16及び17に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
本願請求項8-15に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び3に記載された発明並びに引用文献2に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2002-203064号公報
引用文献2:特開2004-265159号公報
引用文献3:特開2008-9510号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)

(1)段落【0011】-【0013】
「【0011】
【発明の実施の形態】以下添付図面を参照して本発明の実施の形態に係る保守管理システム及び保守管理方法を説明する。本発明に係る保守管理システムは、図1に示されるように、情報管理センタ1を中心とて遠隔監視制御システム2、位置情報システム3、人事情報システム4、保全保守データベースシステム5が接続されている。
【0012】遠隔監視制御システム2には、監視対象機器である装置21-1?21-nに接続された遠隔監視装置20が設けられている。遠隔監視装置20は、装置21-1?21-nの障害を監視し、装置21-1?21-nの障害内容情報および障害発生位置情報を情報管理センタ1へ通知する。
【0013】位置情報システム3には、エリアQ1?Q3を管轄領域とする基地局30-1、30-2、30-3と、監理局31が設けられている。基地局30-1、30-2、30-3は、自局のエリアQ1?Q3に存在する保守員が携帯している携帯無線電話機やPHS端末等の携帯無線端末32-1?32-5の位置情報(いずれのエリアに存在するか)を監理局31へ通知する。監理局31は、これらの位置情報を情報管理センタ1へ送信する。監理局31と情報管理センタ1は、図2に示すような位置情報と保守員識別情報及びその保守員が携帯している携帯無線端末32-1?32-5の電話番号を対応付けたテーブルを有し、この内容を更新している。なお、遠隔監視制御システム2における装置21-1?21-nは、エリアエリアQ1?Q3のいずれかに存在しているものとする。」

(2)段落【0015】-【0016】
「【0015】保全保守データベースシステム5は、装置21-1?21-nの障害内容に対応して各保守能力を有する保守員へ提供すべき保守保全マニュアル情報を保持するものである。この情報はファイル51に記憶されており、この保全保守データベースシステム5内の入力装置により或いは情報管理センタ1の入力装置により更新可能となっている。
【0016】ファイル51内の情報は、例えば、図4に示されるようである。つまり、装置の識別情報と障害の症状に対応して、各スキルレベル毎に保守保全マニュアル情報が用意されている。例えば、装置21-1がS1という症状のときに、スキルレベル1の保守員には、チェックリストと保守保全操作が示された動画像と音声による説明とが用意されている。」

(3)段落【0017】-【0018】
「【0017】情報管理センタ1は、例えば、図5に示されるように構成されている。つまり、CPU10がメインメモリ11のプログラムやデータにより処理を行うワークステーションやパーソナルコンピュータの構成を有し、CPU10から延びるバス12には、表示コントローラ13、入力コントローラ15、記憶コントローラ17及びインタフェース19が接続されている。
【0018】表示コントローラ13は、接続されている表示装置14を制御して情報を表示させ、入力コントローラ15は、入力装置16の操作により発生される情報を受け取ってCPU10へ与える。記憶コントローラ17は、CPU10の制御により記憶装置18からデータを読み出し或いは書き込みを行う。インタフェース19は、遠隔監視制御システム2、位置情報システム3、人事情報システム4、保全保守データベースシステム5とのインタフェースである。」

(4)段落【0019】-【0025】
「【0019】情報管理センタ1には、リスティング手段61、取出手段62、送信制御手段63が備えられている。リスティング手段61は、遠隔監視制御システム2から障害を発生した機器の障害内容情報および障害発生位置情報が通知されると、位置情報システム3に保持されている情報に基づき障害発生位置に近い保守員をリスティングするものである。
【0020】取出手段62は、リスティング手段61がリスティングした保守員の保守能力情報を人事情報システム4から取り出すものである。送信制御手段63は、取出手段62により取り出された保守員の保守能力情報に基づき保守保全データベースシステム5から対応の保守員へ送る保守保全マニュアル情報を得て該当の無線端末へ送信するものである。
【0021】以上の各手段は、CPU10が記憶装置18やメインメモリ11に記憶された図7のフローチャートに対応するプログラムを実行することにより実現されるので、上記のフローチャートに基づく動作を説明する。CPU10は、遠隔監視装置20から障害情報が到来するのを待つ(S1)。
【0022】上記ステップS1において、障害情報が到来すると、保守員候補番号iを1にセットする(S2)。遠隔監視装置20から送られる障害情報は、図6に示されるように障害情報以外に障害発生位置情報が付加されたものである。障害情報には、障害に係る装置の機種や症状が含まれ、障害発生位置情報には、障害に係る装置装置が配置されているエリア(Q1?Q3のいずれか)の情報が含まれている。
【0023】そこで、障害情報を受け取ったCPU10は、その中の障害発生位置情報から位置情報システム3により得られている図2の如きテーブルを検索し、障害が発生した装置のエリアにいる保守員のリストを得る(S3)。例えば、エリアQ1に存在する装置に障害が発生した場合には、図2のテーブルから保守員aと保守員bがリスティングされる。
【0024】次に、上記ステップS3においてリストにした保守員のID(識別情報)に基づき、人事情報システム4にあるファイル41を検索して対応する保守能力情報を得て、候補を選択する(S4)。上記の例では、保守員aと保守員bがリスティングされているので、図3のファイル41を参照すると、スキルレベルにおいて保守員bが保守員aに優っているので、保守員bが第1候補として選択されることとなる。
【0025】次に、第i番目の候補に対応する保守保全マニュアルをスキルレベルに基づき取得して、第i番目の候補へ送信する(S5)。上記の例では、第1番目の候補である保守員bについて、図4のファイルから保守保全マニュアルを得る。ここで、障害発生の装置が装置21-1であり、症状がS1であるとすると、保守員bのスキルレベルは「3」であるから、チェックリストと静止画による音声ガイド付のマニュアルが検索されて取り出され、対応する電話番号「9876543」により監理局31(もしくは、図示せぬ網)を介して送信がなされる。」

(5)また、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
上記(2)の記載から、「保守保全マニュアル情報」は、障害の症状に対応して用意されていると認められる。
また、引用文献1に記載された「保守保全マニュアル情報」は、例えば「保守保全操作が示された動画像と音声による説明」であるから、そこに少なくとも1つの「作業指示」が含まれることは明らかである。
また、一般的に、機器の保守保全操作には複数の操作(作業ステップ)が含まれており、引用文献1に記載された「保守保全操作が示された動画像と音声による説明」等の作業指示には、障害発生位置において行われるべき少なくとも1つの作業ステップが含まれると認められる。そして、当該「保守保全操作」を実施することにより、保守員が障害に対処することを可能にすることは明らかである。

2 引用発明
上記1の記載事項及び図面で図示された内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「保守員に障害の症状に対応して用意される保守保全マニュアル情報を提供するための情報管理センタ1であって、前記情報管理センタ1は、少なくとも1つの携帯無線端末32-1?32-5とネットワークを介して通信することが可能なように構成されており、
前記情報管理センタ1は、前記情報管理センタ1の動作を制御するCPU10を含み、
前記CPU10は、
前記情報管理センタ1の監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取る、ことと、
前記監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取ることに応答して、少なくとも1つの作業指示と、前記少なくとも1つの携帯無線端末32-1?32-5のうち前記少なくとも1つの作業指示が送信されるべき少なくとも1つの携帯無線端末とを特定することであって、どの作業指示が特定されるのかおよびどの携帯無線端末が特定されるのかは、前記障害情報に応じて決定され、前記少なくとも1つの作業指示は、障害発生位置において行われるべき少なくとも1つの作業ステップを含み、前記少なくとも1つの作業指示は、前記少なくとも1つの作業指示に従って前記保守員が前記1つ以上の作業ステップを実施することにより、前記保守員が前記障害に対処することを可能にするものである、ことと、
前記特定された少なくとも1つの作業指示を前記ネットワークを介して前記特定された少なくとも1つの携帯無線端末に送信することと
を少なくとも実行するように構成されている、情報管理センタ1。」

3 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(1)段落【0032】
「【0032】
管理装置6が行う管理の内容としては、異常診断、省エネ自動制御、報告書自動作成等がある。
異常診断は、以下のような管理内容である。管理装置6が異常診断を行う場合には、制御装置4から送られる空気調和装置3の運転データ、異常コード、及び異常予知コードを参照して、物件2に設置されるそれぞれの空気調和装置3が異常状態や異常前兆状態になっていないか確認する。なお、制御装置4から異常予知コードが出力されない場合にも、管理装置6は、空気調和装置3の運転データに基づいて、空気調和装置3が異常前兆状態か否かをチェックする。その結果、管理装置6は、空気調和装置3が異常前兆状態であると判断すると異常予知コードを出力する。異常状態や異常前兆状態であると判断した場合、管理装置6は、物件2の管理者等に通知し、さらに異常コード及び異常予知コードに基づいて保守及び修理を行うべき箇所(保守箇所)を抽出した後にサービスセンタ8の端末31に連絡する。端末31への連絡内容には、保守箇所が含まれている。この後に、サービスセンタ8に所属するサービスマンに、連絡内容に基づいて空気調和装置3の出張保守及び出張修理(点検、修理など)を行わせるために物件2へと出動させる。」

(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「空気調和装置3の運転データを参照して、当該空気調和装置3が異常状態や異常前兆状態になっていないか確認すること。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「保守員」は本願発明の「ユーザ」に相当し、以下同様に「情報管理センタ1」は「サーバ装置」に、「携帯無線端末32-1?32-5」は「ユーザ装置」に、「CPU10」は「プロセッサ部」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明の「障害」と本願発明の「異常または異常の予兆」とを対比すると、「異常」という点で一致し、同様に、引用発明の「障害発生位置」と本願発明の「異常または異常の予兆の発生場所」とを対比すると、「異常の発生場所」という点で一致する。

(3)引用発明の「障害の症状に対応して用意される保守保全マニュアル情報」は、例えば「チェックリストと保守保全操作が示された動画像と音声による説明」からなるものであって、保守員の作業内容を指示するための作業指示に関連するものであるから、引用発明の「障害の症状に対応して用意される保守保全マニュアル情報」は本願発明の「作業内容を指示するための作業指示に関連するサービス」に相当する。

(4)引用発明の「前記情報管理センタ1の監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取る、こと」は、その結果監視対象機器が異常であるか否か判定できるものであり、本願発明の「監視対象のデータが複数の所定の条件のうちの1つを満たすか否かを判定することであって、前記複数の所定の条件のそれぞれは、前記監視対象のデータが異常または異常の予兆についての条件である」は、監視対象が異常または異常の予兆を示すかを判定することであるから、引用発明の「前記情報管理センタ1の監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取る、こと」と本願発明の「前記サーバ装置の監視対象のデータが複数の所定の条件のうちの1つを満たすか否かを判定することであって、前記複数の所定の条件のそれぞれは、前記監視対象のデータが異常または異常の予兆についての条件である、こと」とを対比すると、「前記サーバ装置の監視対象の異常を判定する、こと」という点で一致する。
同様に、引用発明の「前記監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取ることに応答して」と本願発明の「前記監視対象のデータが前記複数の所定の条件のうちの1つを満たすと判定されたことに応答して」とを対比すると、「前記監視対象の異常が判定されたことに応答して」という点で一致する。
また、引用発明の「前記障害情報に応じて決定され」は、障害に係る装置の機器や症状等の内容に応じて決定されることであり、本願発明の「前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され」は、どの異常または異常の予兆についての条件が満たされたかに応じて決定されることであるから、引用発明の「前記障害情報に応じて決定され」と本願発明の「前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され」とを対比すると、「前記異常の内容に応じて決定され」という点で一致する。

2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「ユーザに作業内容を指示するための作業指示に関連するサービスを提供するためのサーバ装置であって、前記サーバ装置は、少なくとも1つのユーザ装置とネットワークを介して通信することが可能なように構成されており、
前記サーバ装置は、前記サーバ装置の動作を制御するプロセッサ部を含み、
前記プロセッサ部は、
前記サーバ装置の監視対象の異常を判定する、ことと、
前記監視対象の異常が判定されたことに応答して、少なくとも1つの作業指示と、前記少なくとも1つのユーザ装置のうち前記少なくとも1つの作業指示が送信されるべき少なくとも1つのユーザ装置とを特定することであって、どの作業指示が特定されるのかおよびどのユーザ装置が特定されるのかは、前記異常の内容に応じて決定され、前記少なくとも1つの作業指示は、前記異常の発生場所において行われるべき少なくとも1つの作業ステップを含み、前記少なくとも1つの作業指示は、前記少なくとも1つの作業指示に従って前記ユーザが前記1つ以上の作業ステップを実施することにより、前記ユーザが前記異常に対処することを可能にするものである、ことと、
前記特定された少なくとも1つの作業指示を前記ネットワークを介して前記特定された少なくとも1つのユーザ装置に送信することと
を少なくとも実行するように構成されている、サーバ装置。」

【相違点1】
本願発明は、監視対象の「異常または異常の予兆」を判定し、当該「異常または異常の予兆」の発生場所において行われるべき作業ステップを特定し、当該作業ステップを実施することにより、ユーザが「異常または異常の予兆」に対処することを可能にしているのに対し、引用発明は、「監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報を受け取る」ことにより障害(異常)を判定し、「障害発生位置」において行われるべき作業ステップを特定し、当該作業ステップを実施することにより、保守員が「障害」に対処することを可能にしているものの、「異常の予兆」については言及していない点。

【相違点2】
異常の判定、及び、それに基づく作業指示及び当該作業指示を送信するユーザ装置の特定について、本願発明は、「監視対象のデータが」「異常または異常の予兆についての条件である」「前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され」るのに対し、引用発明は、「前記情報管理センタ1の監視対象機器である装置21-1?21-nの障害情報」「に応じて決定され」る点。

【相違点3】
作業指示の特定について、本願発明は、「前記少なくとも1つの作業指示を特定することは、前記少なくとも1つの作業指示に含まれる前記少なくとも1つの作業ステップのうちの1つ以上の作業ステップを特定することを含み、どの作業ステップが特定されるのかは、前記複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定され」るのに対し、引用発明は、作業指示に含まれる作業ステップの特定について記載されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
1 相違点1について
機器を監視する際、当該監視対象機器の「異常」そのものだけでなく「異常の予兆」も判定することは、前記第4 3(2)のとおり、引用文献2に、空気調和装置3の運転データを参照して、当該空気調和装置3が異常状態や異常前兆状態になっていないか確認する技術として記載されているように、本願出願前から周知の技術である。
引用発明において、前期周知の技術に基づいて、「障害(異常)」のみならず「障害(異常)の予兆」も判定し、「障害及び障害の予兆の発生位置」において行われるべき作業ステップを特定し、当該作業ステップを実施することにより、保守員が「障害及び障害の予兆」に対処することを可能にすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
機器の異常または異常の予兆を判定するために、監視対象(機器)のデータが、異常または異常の予兆についての条件を満たすか否かを判定することは、前記第4 3(2)のとおり、引用文献2に、空気調和装置3の運転データを参照して、当該空気調和装置3が異常状態や異常前兆状態になっていないか確認する技術として記載されているように、本願出願前から周知の技術である。
引用発明において、監視対象機器である装置21-1?21-nの異常または異常の予兆を判定するために、遠隔監視装置20から障害情報を受け取る代わりに、前記周知技術に基づいて、各種障害に対応する運転データの異常または異常の予兆についての条件を設定し、監視対象機器である装置21-1?21-nのデータを受け取り、当該データが、どの異常または異常の予兆についての条件を満たすかを判定すること、及び、当該判定結果に応じて、作業指示及び当該作業指示を送信する携帯無線端末32-1?32-5を特定することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
前記第4 1(5)に記載のとおり、一般的に、機器の保守保全操作には複数の操作(作業ステップ)が含まれており、引用発明においても、「障害の症状に対応して用意される保守保全マニュアル情報」に含まれる動画や静止画には、例えば、各障害の症状に対して共通の作業ステップが含まれるかもしれないが、各障害の症状に対応する個別の作業ステップも含まれていることは明らかである。そして、各障害の症状S1、S2・・・に応じて保守保全マニュアル情報(作業指示)を特定することは、当該保守保全マニュアル情報(作業指示)中の、症状特有の作業ステップを特定することに他ならない。
つまり、引用発明において、障害情報(障害の症状S1、S2・・・)に応じて作業指示を特定すると、障害の症状S1、S2・・・に特有の作業ステップも特定されることになる。言い換えると、引用発明においては、障害情報に応じて、作業指示と同時に症状特有の作業ステップも特定されているといえる。
また、仮に1つの保守保全マニュアル情報(作業指示)が1つの作業ステップから成る場合には、保守保全マニュアルが特定されると、必然的にその作業ステップも特定されることとなる。
よって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって容易である。

3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、令和1年8月21日付け意見書において、「補正後の請求項1に係る発明によれば、サーバ装置の監視対象のデータが複数の所定の条件のうちの1つを満たすと判定されたことに応答して、少なくとも1つの作業指示が特定され、その少なくとも1つの作業指示に含まれる少なくとも1つの作業ステップのうちの1つ以上の作業ステップが特定され、どの作業ステップが特定されるのかは、複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定されます。これにより、監視対象のデータが異常または異常の予兆についてのどの条件を満たしたかに応じて、異常または異常の予兆の発生場所においてどの作業ステップを行うべきかが特定されることが可能です。その結果、ユーザは、異常または異常の予兆に対処する際にどの作業ステップが重要であるのかを容易に把握することが可能です。
引用文献1は、補正後の請求項1に係る発明の上述した特徴を教示も示唆もしていません。その理由は、引用文献1は、少なくとも1つの作業指示を特定することを記載しているものの、少なくとも1つの作業指示に含まれる少なくとも1つの作業ステップのうちの1つ以上の作業ステップを特定することを教示も示唆もしていないからです。さらに、引用文献1は、少なくとも1つの作業指示に含まれる少なくとも1つの作業ステップと監視対象のデータが満たすべき複数の所定の条件との関係性に何ら言及していません。このような関係性は、公知でも周知でもありません。従って、引用文献1は、少なくとも1つの作業指示に含まれる少なくとも1つの作業ステップのうちのどの作業ステップが特定されるのかが、複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて決定されることを教示または示唆し得ないというべきです。」旨を主張している。
しかし、前述のとおり、引用文献1では、障害情報に応じて、作業指示と同時に症状特有の作業ステップも特定しているといえ、引用文献2に記載のとおり、機器の異常または異常の予兆の把握のために、監視対象のデータが、異常または異常の予兆についての条件を満たすか否かを判定することは周知技術であることから、複数の所定の条件のうちどの所定の条件が満たされたかに応じて、症状S1、S2等の障害の症状を把握し、当該把握された障害の症状に応じた作業指示及び作業ステップを特定することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-17 
結審通知日 2019-09-18 
審決日 2019-10-01 
出願番号 特願2017-81408(P2017-81408)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒田 暁子  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 小川 悟史
青木 良憲
発明の名称 ユーザに作業指示を与えることに関連するサービスを提供するためのサーバ装置、そのサーバ装置において実行される方法およびプログラム  
代理人 大塩 竹志  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 健策  
代理人 石川 大輔  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 森下 夏樹  
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