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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1357197 |
審判番号 | 不服2018-11073 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-13 |
確定日 | 2019-11-13 |
事件の表示 | 特願2016-551232「オープンセル発泡体を用いた血液サンプルの管理」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060795、平成29年 3月 2日国内公表、特表2017-506340〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)9月22日(パリ条約による優先権主張 2014年10月14日 米国、2015年8月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月5日付けで拒絶査定されたところ、同年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、平成29年11月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの本願発明1は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 サンプルを受け取るように適合している、試料の混合および移送デバイスにおいて、 第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁を有するハウジング、 細孔を含むオープンセル発泡体であって、前記ハウジング内に配置されているオープンセル発泡体、および、 前記オープンセル発泡体の前記細孔内の乾燥抗凝固剤粉末 を備えた、試料の混合および移送デバイス。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5、7?11に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2003-019126号公報 引用文献2:国際公開第2007/145328号 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-019126号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。) (引1ア) 「【0021】 【実施例】本発明による実施例のいくつかについて、図1?図14を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限らず、これらをさらに組み合わせたり、この明細書の特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも当然応用することができる。 【0022】本発明によるキットが図1にK_(1)として示されている。キットK_(1)は、図3に示されるようなポイントオブケア検査カートリッジ12と、図4に示されるような鈍端カニューレアセンブリ14とを含む。 【0023】キットK_(1)は、図2に示されるような注射器アセンブリ10と共に用いられる。図2に示されるような注射器アセンブリ(以下、単に注射器と略称する)10は、基端部18と末端部20とを有する注射器本体16を含んでいる。筒部22は、基端部18から末端部20側に延在して基端部18にて大きく開口する円筒状の流体受容チャンバ24を画成している。円錐台状をなすテーパー状の先端部26は、筒部22から注射器本体16の末端部20まで延在している。先端部26には、筒部22の流体受容チャンバ24と連通する細い円筒状の通路28が形成されている。ルアーカラー30は、筒部22から末端部20側に突出し、先端部26を同心状に囲んでいる。ルアーカラー30には、多条雌ねじ山32が与えられている。注射器10は、流体受容チャンバ24に対して摺動可能かつ流体受容チャンバ24の円筒状壁に対して液密嵌合状態のプランジャ34をさらに含む。プランジャ34は、先端部26の通路28を通る流体を流体受容チャンバ24の中または外に付勢するため、基端部18側または末端部20側に交互に動かされることができる。 【0024】キットK_(1)のポイントオブケア検査カートリッジ(以下、単に検査カートリッジと略称する)12が図3に示されており、これは従来技術デザインの何れかであってよく、i-STAT 株式会社,Diametrics Medical 社,AVL Scientific 株式会社にて製造されたものや、使用可能であるか、また使用可能となるような他の任意の検査カートリッジを含む。1つのこのような検査カートリッジが米国特許第5638828号に開示されており、この開示内容は、これを参照することによってこの明細書に組み入れられる。 【0025】検査カートリッジ12は、ほぼ38.1?50.8mmの長さと、約25.4mmの幅と、約6.35mmの厚さとを持った概ね矩形の本体、すなわちハウジング56を含む。液体を収容するリザーバ58は、検査カートリッジ12のハウジング56の内側に形成され、65μlから110μlの範囲の容積を有する。ハウジング56は、リザーバ58と連通する入口ポート60をさらに含む。入口ポート60は、ハウジング56の外側の相対的大径部から、よりリザーバ58に近接する相対的小断面部までわずかにテーパ状にされている。検査カートリッジ12は、リザーバ58内の血液のサンプルに対する種々のポイントオブケア診断検査を行うため、かつポイントオブケアおよび/または離れた場所で医療技術者が用いられることのできる種々の出力データをもたらすため、携帯型臨床分析器と連通状態に置かれることのできるそれぞれ複数の接触パッドおよびセンサ62をさらに有する。 【0026】キットK_(1)の鈍端カニューレアセンブリ14がより明瞭に図4?図6に示されている。鈍端カニューレアセンブリ14は鈍端カニューレ64を含み、これは登録商標の INTERLINKR という名称で Becton Dickinson により販売された型式のものであってよい。より明瞭に図5に示されるように、鈍端カニューレ64は、プラスチック材料から一体成形され、25.4mmをわずかに越える長さを規定するような基端部68と末端部70とを含む。管状空間72が基端部68と末端部70との間に延在している。基端部68に隣接する管状空間72の部分は、図示しない針アセンブリのハブにおけるテーパー状通路の寸法および形状に対してほぼ合致するテーパー状入口を画成する。従って、鈍端カニューレ64の基端部68における管状空間72に対するテーパー状入口は、注射器本体16のテーパー状先端部26と液密摩擦係合状態をもたらすことができる。基端部68に隣接する管状空間72の部分は、およそ4.2926mmの最大内径を規定する。管状空間72に対するテーパー状の基端部入口の末端部に座部73が画成されている。管状空間72は、約1.3716mmの一定内径で座部73から末端部70側に延びている。鈍端カニューレ64の基端部68は、ルアーカラー30の多条雌ねじ山32と係合するような寸法形状、つまり山谷が正反対に形成された一対の突起部74によってさらに特徴付けられている。従って、突起部74は、管状空間72のテーパー状基端部開口端を注射器本体16の末端部20のテーパー状をなす先端部26に対して液密摩擦嵌合状態にするため、ルアーカラー30にねじ込まれて螺合されることができる。他の実施例において、注射器がルアーカラーを有さなくてもよく、この場合には鈍端カニューレ64が末端部20の先端部26に対して液密摩擦嵌合状態へと軸線方向に単に動かされることができる。 【0027】末端部70に隣接する鈍端カニューレ64の部分は、末端部70にておよそ1.8288mmの最小外径から、末端部70から約1.143mmの距離だけ離れた位置で2.54mmの最大外径まで有する円錐台状テーパー部を画成する。鈍端カニューレ64は、およそ2.54mmのほぼ一定外径で末端部70からおよそ10.16mm離れた位置まで延びている。末端部70での最小外径および円錐台状テーパ部に隣接する2.54mmの最大外径の両方共、注射器本体16の末端部20の先端部26の対応する寸法よりも充分小径である。さらに、鈍端カニューレ64の末端部70におけるテーパー角度は、注射器本体16の先端部26のテーパー角度よりも大きい。 【0028】図4に戻り、鈍端カニューレアセンブリ14の安全シールド66は、閉じた末端部76と口が開いた基端部78とを含む。安全シールド66の基端部78は、鈍端カニューレ64の末端部70を覆うように嵌め込まれることができ、鈍端カニューレ64の基端部68と末端部70との間の部分に対し摩擦係合状態になるができる。 【0029】図5に示されるように、鈍端カニューレ64には、管状空間72の大断面部と小断面部との間の座部73に隣接するフィルタ80Aが設けられている。このフィルタ80Aは、0.2?5.0マイクロメートルの孔径を持ち、ホウケイ酸系のガラス繊維,Orlon(商標),グラスウール,Dacron(商標),ナイロンまたはセラミック繊維から形成されることが好ましい。フィルタ80Aは、全血の少なくとも特定の細胞成分を分離し、それによって血漿がフィルタ80Aを通過することを可能とする。さらに、フィルタ80Aは、フィルタ80Aを通過する血漿の凝固を遅延または阻止するためにヘパリンの如き抗凝固剤で処理されるかまたはこれを含むことができる。 【0030】図6は、機械的または化学的に接合されることができる第1のフィルタ層81と第2のフィルタ層82とを有する複層フィルタ80Bを持った鈍端カニューレ64を示している。2つのフィルタ層81,82は、フィルタ80Aとして取り扱われる複数の選択材料のうちの2つから選定されることができる。しかしながら、細胞成分の完全な分離に導く段階的出口を作り出すと共に分析のための血漿液をもたらすようにフィルタの組み合わせが選定される。 【0031】フィルタ80Bは、構造上、フィルタ80Aと同じにすべきであり、従って0.2?5マイクロメートルの範囲の孔径を含む。さらに、この材料はそれぞれ見かけ上、0.13g/cmの低密度と高密度とのため、0.13g/cmの低密度から0.5g/cmの高密度までの範囲を有することが好ましい。 【0032】図1のキットK_(1)は、患者から採取された全血の血漿に対する診断検査を行うため、図2の注射器10と共に用いられることができる。より具体的には、注射器10は患者から血液サンプルを採取するために伝統的な方法で用いられる。この場合、注射器10は、患者の血管に直接アクセスするために一般的な金属製針カニューレと共に用いられることができる。あるいは、注射器本体16の先端部、すなわちルアーチップ26があらかじめ患者の血管と連通状態に置かれているIVラインの接続部材と接続されることができる。さらにまた、注射器本体16のルアーチップ26が血液採取セットと共に交代で用いられる接続部材と連通状態に置かれることもできる。これらの選択肢のそれぞれに関し、プランジャ34の基端部18側への動きが血液を注射器本体16の流体受容チャンバ22内に引き込む。次に、注射器10が血液源から分離され、鈍端カニューレアセンブリ14がルアーチップ26に取り付けられる。特に図7に示されるように、鈍端カニューレアセンブリ14は注射器本体16のルアーチップ26と係合されることができる。次に、鈍端カニューレアセンブリ14の安全キャップ66が図8に示されるように鈍端カニューレ64を露出するために取り外される。 【0033】次に、図9に示されるように鈍端カニューレ64の末端部70が検査カートリッジ12の入口ポート60に挿入される。プランジャ34は、フィルタ80Aまたは二重フィルタ80Bを通って採取された選択された量の血液を検査カートリッジ12側に導くため、末端部20に付勢される。フィルタ80Aまたは二重フィルタ80Bは、注射器本体16の流体受容チャンバ22から付勢される全血中の細胞成分を分離する。従って、プランジャ34の力が血漿液を分析のための検査カートリッジ12に導く。装置の目詰まりが比較的早く生ずるため、鈍端カニューレ64の全体的な歩留りは高くない可能性がある。しかしながら、検査カートリッジ12は、採取された被検物の分析を達成するためにごく小量(65μl?110μl)のみ血漿液が必要である。従って、フィルタ80A,80Bは、装置が目詰まりする前に検査カートリッジ12に対して充分な量の血漿を通常もたらすことができよう。必要な量の血漿が検査カートリッジ12に供給された後、注射器10および鈍端カニューレ64が検査カートリッジ12から分離される。次に、入口ポート60が閉じられ、検査カートリッジ12が収集された血漿被検物の診断検査のために携帯型臨床分析器に渡される。」 (引1イ)図2 (引1ウ)図3 (引1エ)図5 (引1オ)図8 (引1カ)図9 したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基端部68と末端部70とを含み、管状空間72が基端部68と末端部70との間に延在している、プラスチック材料から一体成形された鈍端カニューレ64であって、 管状空間72の大断面部と小断面部との間の座部73に隣接するフィルタ80Aが設けられており、このフィルタ80Aは、0.2?5.0マイクロメートルの孔径を持ち、ホウケイ酸系のガラス繊維,Orlon(商標),グラスウール,Dacron(商標),ナイロンまたはセラミック繊維から形成されたものであって、 さらに、フィルタ80Aは、フィルタ80Aを通過する血漿の凝固を遅延または阻止するためにヘパリンの如き抗凝固剤で処理されているかまたはこれを含み、 鈍端カニューレ64は、その基端部68における管状空間72に対するテーパー状入口は、注射器本体16のテーパー状先端部26と液密摩擦係合状態をもたらすことができ、血液を注射器本体16の流体受容チャンバ22内に引き込んでいる注射器本体16に係合され、 鈍端カニューレ64の末端部70が検査カートリッジ12の入口ポート60に挿入され、 プランジャ34の付勢によりフィルタ80Aを通って血液が検査カートリッジ12に導かれる、 鈍端カニューレ64。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(国際公開第2007/145328号)には、次の事項が記載されている。 (引2ア) 「 [0037] 本発明の血液処理フィルターについて、図面を参照して詳細に説明する。図1は血液処理フィルターの平面図、図2は図 1の X? X線端面図である。 <血液処理フィルター > 図 1、2に示すように、血液処理フィルター1は、ハウジング2と、ハウジング2内に収納され、血球成分として赤血球、血小板および白血球を含む血液をろ過するフィルター部7とを備える。以下、各構成について説明する。なお、ここで、血液は、ドナーから採血後24時間以内のものであることが好ましい。ドナーから採血後 24時間を超えた場合には、血液中にタンパク質や血球成分が凝集した凝集塊が形成されるため、血液をろ過する際に、凝集塊がフィルタ一部7 (プレフィルタ一部10)で捕捉され、目詰まりを起こし、血液が流れ難くなるからである。」 (引2イ) 「[0077] 本発明の血液処理フィルターの具体的な実施例について説明する。 (実施例1?17) 図1、2に示すような形状のポリカーボネイト製の蓋部および底部からなるハウジングの内部に、メインフィルター部としてポリエーテル型ポリウレタン製スポンジ状多孔質膜、プレフィルター部としてポリエーテル型ポリウレタン製スポンジ状多孔質膜を使用して、それぞれの周縁部を高周波融着したフィルター部を収納し、外部からハウジングの周縁部を高周波融着することにより血液処理フィルターを作製した。ここで、融着部(非ろ過機能部位)を除いたフィルタ一部の有効面積は50cm^(2)となるように作製した。」 したがって、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。 「血液をろ過するフィルターとして、ポリエーテル型ポリウレタン製スポンジ状多孔質膜が使用されていること」 第5 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 1 引用発明1の「基端部68と末端部70とを含」むことは、本願発明1の「第1の端部と第2の端部と」「を備え」ることに相当する。 また、引用発明1における「基端部68と末端部70との間に延在している」「管状空間72」は管によって形成されていることは明らかであって、この管が、本願発明1の「第1の端部と、第2の端部と、」「の間に延びる側壁」に相当する。 すると、引用発明1の「基端部68と末端部70とを含み、管状空間72が基端部68と末端部70との間に延在している、プラスチック材料から一体成形された鈍端カニューレ64」は、本願発明1の「第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁を有するハウジング」に相当する。 2 引用発明1の「管状空間72には、」「0.2?5.0マイクロメートルの孔径を持ち、ホウケイ酸系のガラス繊維,Orlon(商標),グラスウール,Dacron(商標),ナイロンまたはセラミック繊維から形成された」「フィルタ80Aが設けられて」いることと、本願発明1の「細孔を含むオープンセル発泡体であって、前記ハウジング内に配置されているオープンセル発泡体」「を備える」ことは、「細孔を含む部材であって、前記ハウジング内に配置されている部材を備える」点で共通する。 3 引用発明1の「フィルタ80Aは、フィルタ80Aを通過する血漿の凝固を遅延または阻止するためにヘパリンの如き抗凝固剤で処理されているかまたはこれを含」むことと、本願発明1の「前記オープンセル発泡体の前記細孔内の乾燥抗凝固剤粉末を備え」ていることは、「細孔を含む部材の細孔内の抗凝固剤を備える」点で共通する。 4 引用発明1の「鈍端カニューレ64」は、「注射器本体16」の「流体受容チャンバ22内」の「血液が」、「ヘパリンの如き抗凝固剤で処理されているかまたはこれを含」む「フィルタ80Aを通って血液が検査カートリッジ12に導かれる」ものであり、「血液」が「抗凝固剤で処理されているかまたはこれを含む」「フィルタ80Aを通」る際に、「血液」と「抗凝固剤」が混合されることは明らかであるから、注射器から流入した血液を抗凝固剤と混合するものである。 また、「鈍端カニューレ64は、その基端部68における管状空間72に対するテーパー状入口は、注射器本体16のテーパー状先端部26と液密摩擦係合状態をもたらすことができ、血液を注射器本体16の流体受容チャンバ22内に引き込んでいる注射器本体16に係合され、鈍端カニューレ64の末端部70が検査カートリッジ12の入口ポート60に挿入され、プランジャ34の付勢によりフィルタ80Aを通って血液が検査カートリッジ12に導かれる」ことから、「血液を注射器本体16の流体受容チャンバ22」から「検査カートリッジ12」に移送するものである。 すると、「鈍端カニューレ64」は、本願発明1の「サンプルを受け取るように適合している、試料の混合および移送デバイス」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「サンプルを受け取るように適合している、試料の混合および移送デバイスにおいて、 第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁を有するハウジング、 細孔を含む部材であって、前記ハウジング内に配置されている部材、および、 前記部材の前記細孔内の抗凝固剤 を備えた、試料の混合および移送デバイス。」 (相違点1)細孔を含む部材であって、前記ハウジング内に配置されている部材が、本願発明1では「オープンセル発泡体」であるのに対して、引用発明1では、「ホウケイ酸系のガラス繊維,Orlon(商標),グラスウール,Dacron(商標),ナイロンまたはセラミック繊維から形成されたもの」である点。 (相違点2)細孔を含む部材の細孔内の抗凝固剤が、本願発明1では「乾燥抗凝固剤粉末」であるのに対して、引用発明1では単に「ヘパリンの如き抗凝固剤を含み」とあるだけで、「乾燥」「粉末」であるとの特定はない点。 第6 判断 1 相違点1について 一般に、フィルタとして、種々繊維からなるものやスポンジ状のものを使用することは周知であり、また、引用文献2に記載の技術的事項に示されているように、血液をろ過するフィルターとして、ポリエーテル型ポリウレタン製スポンジ状多孔質膜が使用されていることからすると、引用発明1のフィルター80Aに、そのようなポリエーテル型ポリウレタン製スポンジ状多孔質膜のフィルターを用いることは当業者が適宜選択しうることである。 ここで、技術常識からすると、スポンジ状多孔質膜が発泡体であることは明らかであるし、また、血液を通過させるために用いられるスポンジ状多孔質膜の構造は液透過性でなければならないことから、細孔が連通している連続気泡型であることも明らかである。そして、一般的に連続気泡型の発泡体のことを、オープンセル型発泡体と称していることもあるから、引用文献2に記載の技術的事項に示されているようなスポンジ状多孔質膜とは、オープンセル型発泡体であるということができる。 以上のとおりであるから、引用発明1に引用文献2に記載の技術的事項を採用し、引用発明1の「フィルタ80A」を、細孔を含むオープンセル発泡体とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 2 相違点2について 引用発明1には、フィルタ80Aの細孔内に「乾燥抗凝固剤粉末」を含むことは特定されていないものの、フィルターに薬剤を保持させる際に、フィルターを薬剤の溶液に浸漬し、その後乾燥させて粉末状態の薬剤を保持した構成とすることは普通に行われていることであるから、引用発明1のフィルター80Aに抗凝固剤を含ませる際に、乾燥抗凝固剤粉末を含ませる構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。 してみると、引用発明1において、フィルタ80Aの細孔に乾燥抗凝固剤粉末を含んだ構成とすることは当業者が適宜なし得たことである。 3 効果について また、引用発明1のフィルタ80Aを、細孔を含むオープンセル発泡体とするとともに、オープンセル発泡体の細孔内に乾燥抗凝固剤粉末を備えた構成にしたことによる、当業者の予測の範囲を超える格別な効果を見出すことはできない。 4 請求人の主張について 請求人は、平成30年8月13日付け審判請求書の(3)本願発明が特許されるべき理由(3.2)本願発明の特許性において、「発泡体」について主張しているので、当該請求人の主張について検討する。 請求人は審判請求書の当該箇所において、「両引用文献のいずれにも、フィルターの材料に関して「発泡体」という用語が記載されていない」、「メインフィルター11のメインフィルター11のスポンジ状多孔膜構造はオープンセル発泡体とは異なるものであることにご注意頂きたいと思料致します。これら2つのタイプの材料は互いに同等のものではありません。」と主張している。当該請求人の主張は、要するに引用文献2のスポンジ状多孔質膜は、オープンセル発泡体とは異なるものであるという主張であると解されるが、スポンジ状多孔質膜とオープンセル発泡体とは、上記1で検討したとおりであるところ、請求人は、スポンジ状多孔質膜とオープンセル発泡体とがどのように異なるものなのかは説明しておらず、請求人の当該主張には根拠がない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-06-12 |
結審通知日 | 2019-06-18 |
審決日 | 2019-07-02 |
出願番号 | 特願2016-551232(P2016-551232) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西浦 昌哉 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 三木 隆 |
発明の名称 | オープンセル発泡体を用いた血液サンプルの管理 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |