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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1357206
審判番号 不服2018-752  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-19 
確定日 2019-12-03 
事件の表示 特願2016- 79566「画像符号化データ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開、特開2016-158283、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)6月5日(優先権主張 平成23年6月30日)を国際出願日とする出願である特願2013-522711号の一部を、数次の分割を経て平成28年4月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 4月18日付け:拒絶理由通知
同年 6月22日 :意見書の提出、手続補正
同年 8月 9日付け:拒絶理由通知
同年10月12日 :意見書の提出、手続補正
同年12月 7日付け:拒絶査定
平成30年 1月19日 :拒絶査定不服審判請求、手続補正
平成31年 4月26日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 1年 6月25日 :意見書の提出、手続補正

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(発明該当性)この出願の請求項5に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
記: 請求項5の記載は、当該データ構造に含まれるデータの意味内容(データの用いられ方も含む)を定義したものに過ぎず、そのような定義は人為的な取決めに止まるものであるから、請求項5に記載されたものは、全体としてみて、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審における平成31年4月26日付け拒絶理由の概要は次のとおりである。
なお、審判請求と同時に行われた手続補正は、請求項1?4を削除し、請求項5を新たな請求項1にするものである。

[理由1](発明該当性)この出願の請求項1に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
記: 請求項1に係る「符号化データ」は、「画像復号装置」がそれらの情報を所定の処理に用いることは記載されているものの、情報の提示についての技術的特徴は認められず、情報の単なる提示を行うものに該当し、「技術的思想」に当たらない。
したがって、請求項1に係る「符号化データ」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。

[理由2](明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記: 請求項1の記載は「符号化データ」のデータの構造が明確でない。

第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年6月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(D2)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成D2と称する。

(本願発明)
(A)画像を分割した複数の最大ブロックからなるスライス単位に、スライス単位の情報と当該スライス内の複数の最大ブロックの符号化データとを含む画像符号化データであって、
上記画像符号化データは、上記スライス単位の情報と、当該情報に続くように、上記複数の最大ブロックの符号化データとが多重化され、
(B)上記符号化データは、
(B1)上記最大ブロックから階層的に分割されるブロックを特定する分割状態を示す情報と、
(B2)上記分割状態を示す情報によって特定される上記ブロック単位の情報であって、上記画像の上記ブロックの予測モードを示す符号化モード情報と、
(B3)上記ブロックの上記画像と、上記符号化モード情報の上記予測モードを用いて予測された上記ブロックの予測画像との差分画像が圧縮された圧縮データと、
を有し、
(C)上記スライス単位の情報は、
(C1)上記圧縮データから生成された差分画像と上記符号化モード情報に基づいて生成された上記ブロックの予測画像とを加算した復号画像に対して上記スライス単位のフィルタの強度を定めるフィルタパラメータの基準値に対するオフセットを含み、
(D1)上記分割状態を示す情報、上記符号化モード情報及び上記圧縮データは、
上記画像符号化データを復号する画像復号装置によって、上記分割状態を示す情報に基づいて上記最大ブロックから階層的に分割される上記ブロックを特定し、上記ブロックにおいて、上記圧縮データから生成された差分画像と上記符号化モード情報に基づいて生成された予測画像とを加算した上記復号画像を生成する処理、に用いられ、
(D2)上記オフセットは、
上記画像復号装置の歪み除去手段によって、上記復号画像に対して、隣接する予測ブロックの境界に生じるブロック歪みを除去するフィルタリング処理をするために用いられるとともに、
上記フィルタリング処理が適用される上記隣接する予測ブロックの少なくとも1つに対応する上記符号化モード情報の上記予測モードがイントラ予測モードかどうかの条件にしたがって、上記オフセットを用いて上記フィルタパラメータを導出し、上記フィルタパラメータにより、異なる複数のフィルタリング処理から1つのフィルタリング処理を選択するために用いられる
(A)ことを特徴とする画像符号化データ。

第5 判断
1.当審における拒絶理由通知の[理由1](発明該当性)について
(1)本願発明の「画像符号化データ」の発明特定事項について
ア.「画像符号化データ」の構成
本願発明の「画像符号化データ」は、構成Aに示されるように、「画像を分割した複数の最大ブロックからなるスライス単位」に「スライス単位の情報」と当該情報に続く「当該スライス内の複数の最大ブロックの符号化データ」とが多重化されて含まれているものである。
そして、本願発明の「画像符号化データ」は、構成Bに示されるように、「最大ブロックの符号化データ」が「最大ブロックから階層的に分割されるブロックを特定する分割状態を示す情報」(構成B1)、「ブロック単位の情報であって、画像のブロックの予測モードを示す符号化モード情報」(構成B2)及び「ブロックの画像と、符号化モード情報の予測モードを用いて予測されたブロックの予測画像との差分画像が圧縮された圧縮データ」(構成B3)を有し、構成Cに示されるように、「スライス単位の情報」が「圧縮データから生成された差分画像とブロックの予測画像とを加算した復号画像に対してスライス単位のフィルタの強度を定めるフィルタパラメータの基準値に対するオフセット」(構成C1)を含むものである。

イ.「画像符号化装置」によって「復号画像」が生成されること
本願発明の「画像符号化データ」は、「画像復号装置」に入力することにより「画像復号装置」において復号される(構成D1及び構成D2)。
詳細には、「画像復号装置」において、「画像符号化データ」の「最大ブロックの符号化データ」が有する「差分画像が圧縮された圧縮データ」から、「画像符号化データ」の「スライス単位の情報」に含まれる「オフセット」、「最大ブロックの符号化データ」が有する「分割状態を示す情報」及び「符号化モード情報」を用いて「復号画像」を生成する。

ウ.「画像符号化データ」に基づき実行される情報処理
「画像符号化データ」に含まれる情報及びデータは、構成D1に示されるように、「最大ブロックの符号化データ」の中にある「分割状態を示す情報」、「符号化モード情報」及び「差分画像が圧縮された圧縮データ」が、「画像復号装置」によって「分割状態を示す情報に基づいて最大ブロックから階層的に分割される上記ブロック」を特定し「ブロックにおいて、圧縮データから生成された差分画像と符号化モード情報に基づいて生成された予測画像とを加算した復号画像を生成する処理」に用いられる。
そして、構成D2に示されるように、「スライス単位の情報」の中にある「オフセット」が、「画像復号装置の歪み除去手段」によって「復号画像に対して、隣接する予測ブロックの境界に生じるブロック歪みを除去するフィルタリング処理をする」ために用いられ、詳細には「オフセットを用いてフィルタパラメータを導出」し、「フィルタリング処理が適用される隣接する予測ブロックの少なくとも1つに対応する符号化モード情報の予測モードがイントラ予測モードかどうかの条件にしたがって、フィルタパラメータにより、異なる複数のフィルタリング処理から1つのフィルタリング処理を選択する」ために用いられる。

(2)発明該当性についての判断
ア.「自然法則を利用したもの」について
動画像符号化/復号技術(動画像の符号化処理/動画像の復号処理に関する技術)は、動画像の情報は多くの冗長な情報を有し、且つ画像同士に強い相関関係があるという「動画像の物理的性質」を利用して、予測画像との差分画素情報を取得すること、差分画素情報を周波数成分へ変換すること等の符号化処理を行い、冗長な情報を取り除くことによって、動画像の情報を圧縮した動画像符号化データを生成し、また、その逆の復号処理により動画像符号化データから動画像の情報を生成する処理を行う技術である。
また、その際の動画像の圧縮効率は、動画像の特徴に応じて最適な符号化の条件が設定されることにより最大化されるものであって、動画像の特徴に応じて、予測を行う単位であるブロックの大きさ、予測の手法(符号化モード)、量子化パラメータ、局所復号画像に適用するフィルタのフィルタパラメータなどの符号化関連情報が探索により決定される。そして、それらの符号化に用いた符号化モード、パラメータ等の符号化関連情報は、動画像符号化データに多重化されて復号側に伝送され、復号側において復号処理に利用される。

上記(1)イのとおり、本願発明の「画像符号化データ」は、上記「動画像の物理的性質」を利用して生成される「差分画像が圧縮された圧縮データ」と、符号化関連情報である「分割状態を示す情報」、「符号化モード情報」及び「オフセット」を有するものであって、「画像復号装置」に入力することにより、「動画像の物理的性質」を利用した具体的な復号処理が実現されるものである。
したがって、本願発明の「画像符号化データ」は、全体として「自然法則を利用したもの」に該当する。

イ.「画像符号化データ」が「データ構造」を有していること
MPEG等の国際標準映像符号化方式により生成される「符号化データ」は、一般的に、パケット化されたビデオストリーム、オーディオストリーム、制御情報などを多重化し、特定のフォーマット(データ構造)にパッケージ化したビットストリームである。
そして、ビデオストリームのビデオ符号化データは、階層構造を有し、その階層構造は、上位層からシーケンス、ピクチャ、スライス、ブロックなどの各階層からなり、各階層の符号化の処理パラメータ及び当該ビデオ符号化データに関する情報を記述した各階層の符号化関連情報(ヘッダ又はパラメータセット)と、スライスにおける階層のビデオ符号化データから構成されるものである。

本願発明の「画像符号化データ」は、上記(1)アのとおり、スライスの階層のデータである「スライス単位の情報」と「スライス内の複数の最大ブロックの符号化データ」から構成される(構成A)。
そして、複数の「最大ブロックの符号化データ」のそれぞれは、ブロックの階層のデータである「分割状態を示す情報」(構成B1)、「符号化モード情報」(構成B2)及び「差分画像が圧縮された圧縮データ」(構成B3)を有している。
また、「スライス単位の情報」は「オフセット」を含んでいる(構成C1)。
すなわち、本願発明の「画像符号化データ」は、ビデオ符号化データのスライス、ブロックに基づく階層構造及び各階層におけるデータを備えた「データ構造」を有するデータである。

よって、本願発明の「画像符号化データ」は、データの内容を単に提示するものではなく、「自然法則を利用したもの」について、「もの」としての構造を有することを示すものである。
したがって、本願発明の「画像符号化データ」は、「実施」の対象となる「もの」に該当する。

ウ.「データ構造に基づく情報処理を具体的に行うもの」について
本願発明の「画像符号化データ」は、上記(1)ウのとおり、「画像復号装置」において、ブロックの階層のデータである「画像符号化データ」の「最大ブロックの符号化データ」が有する「差分画像が圧縮された圧縮データ」から、同じく「最大ブロックの符号化データ」が有する「分割状態を示す情報」及び「符号化モード情報」を用いて「復号画像」を生成する。
そして、本願発明の「画像符号化データ」に基づいて「復号画像」を生成する際には、「画像復号装置の歪み除去手段」において、「復号画像」に対して隣接する予測ブロックの境界に生じるブロック歪みを除去するフィルタリング処理をするために、「画像符号化データ」のスライスの階層のデータである「スライス単位の情報」に含まれる「復号画像に対してスライス単位のフィルタの強度を定めるフィルタパラメータの基準値に対するオフセット」を用いて、「フィルタパラメータ」を導出し、「フィルタリング処理が適用される隣接する予測ブロックの少なくとも1つに対応する符号化モード情報の予測モードがイントラ予測モードかどうかの条件にしたがって」、「フィルタパラメータにより、異なる複数のフィルタリング処理から1つのフィルタリング処理を選択」する。

以上のとおり、スライスの階層のデータである「復号画像に対してスライス単位のフィルタの強度を定めるフィルタパラメータの基準値に対するオフセット」とブロックの階層のデータである「符号化データ」などの「画像符号化データ」の「データ構造」が「画像復号装置」と協働することにより、本願明細書の段落[0075]に「例えば、スライスレベルでフィルタ強度bSの値をシグナリングするか否かを示す識別情報を多重することで、スライス毎に、フィルタ強度bSの設定値を変更できるように構成してもよい。」及び「設定値のシグナリングは値そのものでもよいし、フィルタ強度bSをデフォルト値とするオフセット値の形式でも構わない。」と記載されるような、スライスレベルでフィルタ強度の設定値を変更するという処理が実現されるものである。

このように、本願発明は、「データ構造」を有するデータである「画像符号化データ」に配置された符号化データ及び符号化関連情報が、「画像復号装置」に入力され「画像復号装置」と協働することにより、「画像復号装置」において復号画像を生成する復号処理が実現されるものである。
したがって、本願発明は、「画像符号化データ」の階層構造及び各階層に配置された符号化データ及び符号化関連情報に基づいて、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に行うものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本願発明の「画像符号化データ」は、情報の単なる提示に該当するものではなく、情報の提示それ自体に「画像符号化データ」の情報及び構造に関する技術的特徴を有するものであるから、「自然法則を利用した技術的思想」に該当する。
したがって、本願発明の「画像符号化データ」は、特許法第2条第1項において定義されている「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであるから、特許法第29条第1項柱書に規定されている「発明」に該当する。

2.当審における拒絶理由通知の[理由2](明確性)について
上記1.(2)イの『「画像符号化データ」が「データ構造」を有していること』に示したように、請求項1の記載は「画像符号化データ」のデータの構造が明確となった。
よって、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に違反しない。

第6 原査定についての判断
原査定の拒絶の理由については、上記「第5 判断」の「1.当審における拒絶理由通知の[理由1](発明該当性)について」に示した判断と同様に、本願の請求項1に記載されたものは、「発明」に該当する。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願は、原査定の理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2016-79566(P2016-79566)
審決分類 P 1 8・ 1- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 清水 正一
川崎 優
発明の名称 画像符号化データ  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 井上 和真  
代理人 濱田 初音  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 中島 成  
代理人 田澤 英昭  
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