• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B21D
管理番号 1357244
審判番号 不服2019-5134  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-18 
確定日 2019-12-10 
事件の表示 特願2015-52993「異形管体孔穿設装置及び異形管体の孔穿設方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月29日出願公開、特開2016-172264、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成27年3月17日の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 7月13日付け:拒絶理由通知
同 年11月 7日 :意見書、及び、手続補正書の提出
平成31年 2月22日付け:拒絶査定
同 年 4月18日 :審判請求

第2.原査定の概要
原査定(平成31年2月22日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

平成30年11月7日提出の手続補正書により補正された本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、また、平成30年11月7日提出の手続補正書により補正された本願請求項2ないし8に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平5-111724号公報
2.国際公開第2006/095754号
3.特開2010-280001号公報(周知技術を示す文献)

第3.本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本願発明1」などという。)は、平成30年11月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管の該中間部の周壁に貫通孔を穿設するための異形管体孔穿設装置において、
該異形管の外側から押圧することで該貫通孔を該周壁に穿設するためのパンチと、
棒状に伸びた棒状部の先端にダイが形成され、該ダイに該パンチが挿通可能な形状と位置のダイ側孔を有し、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側に該ダイが当接可能に一方の該端部の開口から挿入されるダイ部と、
棒状に伸びた棒状部の先端に支持部が形成され、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側と対向する内壁内側に該支持部が当接可能に該一方の端部の開口から挿入されるバックアップ部と、
棒状に伸びた棒状部に該パンチにより穿設された該貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有し、該ダイ部と該バックアップ部との間に該一方の端部の開口から挿入されるスペーサ部とを備え、
該抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させることを特徴とする異形管体孔穿設装置。
【請求項2】
前記異形管の一方の開口の周部を当接させて、前記パンチ、前記ダイ部、前記バックアップ部及び前記スペーサ部に対する該異形管の位置決めを行うための突当部材を備えることを特徴とする請求項1記載の異形管体孔穿設装置。
【請求項3】
前記ダイ部の前記スペーサ部側と、該スペーサ部の該ダイ部側とに、軸方向に伸びる溝部又は筋部をそれぞれに有し、
該スペーサ部が、該ダイ部と前記バックアップ部との間に挿入されるとき、該溝部と該筋部とが嵌合しつつ、該ダイ部に該スペーサ部が密接して一体化されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の異形管体孔穿設装置。
【請求項4】
前記抜きカスを、前記スペーサ部の前記抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を前記ダイ部と前記バックアップ部との間から抜き取った後、該抜きカスが該抜き孔から脱落したことを確認する検知手段を備えることを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の異形管体孔穿設装置。
【請求項5】
管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管の該中間部の周壁に貫通孔を穿設するための異形管体の孔穿設方法において、
棒状に伸びた棒状部の先端にダイが形成され、該ダイにパンチが挿通可能な形状と位置のダイ側孔を有するダイ部を、該異形管の一方の該端部の開口から挿入し、
該ダイ部を、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側に該ダイが当接するように移動させ、
棒状に伸びた棒状部の先端に支持部が形成されたバックアップ部を、該異形管の該一方の端部の開口から挿入し、
該バックアップ部を、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側と対向する内壁内側に該支持部が当接するように移動させ、
棒状に伸びた棒状部に該パンチにより穿設された該貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有するスペーサ部を、該ダイ部と該バックアップ部との間に該一方の端部の開口から挿入し、
該パンチにより、該異形管の外側から押圧することで該貫通孔を該周壁に穿設し、該抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させることを特徴とする異形管体の孔穿設方法。
【請求項6】
前記ダイ部を前記異形管に挿入するに先立ち、
該異形管の一方の開口の周部を突出部に当接させて、前記パンチ、該ダイ部、前記バックアップ部及び前記スペーサ部に対する該異形管の位置決めを行うことを特徴とする請求項5記載の異形管体の孔穿設方法。
【請求項7】
前記ダイ部の前記スペーサ部側と、該スペーサ部の該ダイ部側とに、軸方向に伸びる溝部又は筋部をそれぞれに有し、該スペーサ部が、該ダイ部と前記バックアップ部との間に挿入されるとき、該溝部と該筋部とが嵌合しつつ、該ダイ部に該スペーサ部が密接して一体化されることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の異形管体の孔穿設方法。
【請求項8】
前記抜きカスを、前記スペーサ部の前記抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を前記ダイ部と前記バックアップ部との間から抜き取った後、該抜きカスが該抜き孔から脱落したことを、検知手段で確認することを特徴とする請求項5?請求項7のいずれかに記載の異形管体の孔穿設方法。」

第4.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「パイプ材の孔あけ時における雌型の支持装置及び支持方法」に関し、図面(特に【図1】ないし【図3】及び【図10】を参照。)とともに次の事項が記載されている。なお、(下線は当審が付したものである。以下、同じ。)

ア.「【請求項1】 パイプ材の周面にプレスで孔を打ち抜く場合における雌型の支持装置であって、ロッドの先端部に設けられ下面に作動部が設けられた雌型と、駆動杆の先端部に設けられ上面に押圧部が設けられた雌型支持具より成るものであり、該駆動杆を該パイプ材の外部から長手方向に移動させることにより、該雌型支持具の押圧部と該雌型の作動部を摺動させることによって該雌型の上面部と該雌型支持具の下面部を該パイプ材の内周面に接当させることを特徴とするパイプ材の孔あけ時における雌型の支持装置。」

イ.「【請求項3】 雌型支持具は、ロッドに連結された別体の支持具を介してパイプ材の内周面に接当されるものである請求項1又は請求項2記載のパイプ材の孔あけ時における雌型の支持装置。」

ウ. 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パイプ材にプレスで孔を設ける場合における雌型の支持装置及び支持方法に関するものである。」

エ.「【0010】このように、長尺のロッドの先端部に設けられた雌型に対してパイプ材を差し込んで任意の位置に穿孔させるため、穿孔時において該雌型を確実に固定する必要があり、かつ、パイプ材を移動させるときには、その固定を解除する必要がある。このため、雌型の下面に作動部を設け、この作動部により上面に押圧部が設けられている雌型支持具を作動させることで、少なくとも該雌型の型形成部と該型形成部に対向する側の雌型支持具の下面部を該パイプ材の内周面に押圧接当させて固定する。この型形成部とは、雌型の孔により形成されている型自体の周辺部をいう。丸パイプ材に穿孔する場合における雌型等の曲率は、穿孔すべき丸パイプ材の内径と同一にするのが好ましいが、汎用性を高めるために曲率を小さくしても特に問題はない。
【0011】また、雌型支持具は直接パイプ材の内周面に接当させるだけでなく、別体の支持具を雌型支持具とパイプ材の間に介在させるようにしてもよい。この支持具は雌型と同様にロッド等の先端に連結され固定されるものである。支持具を介在させることによって穿孔時にパイプ材の変形を防止できる利点がある。
【0012】「作動部と押圧部」とは、これらが摺動することにより、雌型の上面部と雌型支持具の下面部との距離を変化させる構造のものをいう。例えば、傾斜面と傾斜面或いは傾斜面と突部などの組み合わせである。要は雌型支持具を移動させて、押圧部で作動部が上昇する状態になるものであればよい。これらが摺動する方向は、パイプ材の長手方向の他、該長手方向に対して斜方向としてもよい。」

オ.「【0015】以上の構成から、雌型と雌型支持具より成るパイプ材支持具に、パイプ材を孔を設ける位置まで挿通し、駆動杆を作動させて該雌型をパイプ材内部に固定させ、プレス装置により雄型で穿孔させる。パイプ材の位置決めは、予め孔を設ける位置に印をしておき、手動で移送させてもよいが、例えばパルスエンコーダなどで穿孔位置まで自動的に送るようにしてもよい。このように孔を設ける位置を予め入力して自動送りにすれば、駆動杆及びプレス装置をこれらに連動させることにより、複数の孔を全て自動的に穿孔させることが可能となる。」

カ.「【0017】図1(a)(b)は、本発明に係るパイプ支持装置1の一例を示すもので、先端の上面に傾斜面(押圧部)2を設けた雌型支持具3の該傾斜面2上に、下面に傾斜面(作動部)2を設けた雌型4を支持したものである。雌型4はロッド5の先端に連結され、該ロッド5の他端は固定されている。本例では雌型4とロッド5は、ボルトで着脱可能に連結しており、雌型4の取り替えを容易にしている。雌型支持具3は、パイプの先端部を斜めに切断することによって形成されたもので、パイプ自体が駆動杆6となり、穿孔すべきパイプ材7の外部から該パイプ材7の長手方向に駆動される。雌型支持具3もネジ部を設けるなどの方法で駆動杆6と着脱できるようにしてもよい。雌型4の上方部には、プレス装置8に取り付けられた雄型9が存在する。図1(a)に示した状態でパイプ材7を挿通する。この状態では、雌型4の上面との間に隙間が存在し、パイプ材7を任意の位置まで移送することができる。
【0018】パイプ材7を穿孔すべき位置まで挿通した後、駆動杆6を押し込むと、図2(a)(b)に示すように雌型4が上昇し、雌型4の上面と雌型支持具3の下面がパイプ材7の内周面に押圧接当され、雌型4が固定されることとなる。この状態で雄型9を打ち込んで穿孔する。本例では駆動杆6を押し込むことにより雌型4をパイプ材7内面に接当させるようにしているが、傾斜面2の傾斜方向を夫々逆にして、駆動杆6を引くことで雌型4が上昇するようにしてもよい。
【0019】図3は、パイプ支持装置1を組み込んだ穿孔装置10の一例を示すもので、雌型支持具3が先端部に設けられている駆動杆6をエアシリンダ11で駆動するようにしたものである。エアシリンダ11を作動させることにより、ロッド5で固定されている雌型4は、傾斜面2に沿って上下動することとなる。穿孔は、前述した要領で行なう。パイプ材7は、パイプ支持装置1に挿通してから抜く方向に順次穿孔すれば、打抜片が堆積せず、穿孔がスムーズに行えるので好ましいが、特に限定するものではない。」

キ.「【0027】図10はパイプ材支持装置1の他の例を示すもので、雌型4と雌型支持具3の他に別体の支持具16を設けたものである。この支持具16は雌型4と同様ロッド5に連結され固定されたもので、雌型支持具3がこの上面を摺動する。・・・(後略)・・・」

ク.「【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るパイプ材支持装置及びパイプ材の支持方法によれば、パイプ内に挿通する雌型を極めて簡単確実に保持固定することができ、しかもその解除も容易であるため、パイプ材の穿孔工程及び所定位置への送り工程がスムーズであり、一つのパイプ材に複数穿孔する場合でも連続的にその作業を行なえるので、自動化も容易になるという、実用上極めて有益な効果を有するものである。」

(2)引用文献1に記載された技術的事項
これらの記載事項及び図示事項から、引用文献1には、以下のア.ないしカ.の技術的事項が記載されているということができる。
ア.【請求項1】の「パイプ材の周面にプレスで孔を打ち抜く場合」との記載、段落【0015】の「パイプ材を孔を設ける位置まで挿通し、駆動杆を作動させて該雌型をパイプ材内部に固定させ、プレス装置により雄型で穿孔させる。」との記載、及び段落【0019】の「図3は、パイプ支持装置1を組み込んだ穿孔装置10の一例を示す」との記載、並びに【図1】(a)及び【図3】によれば、パイプ材7の穿孔装置10は、パイプ材7の周面に孔を穿孔するためのものであることが理解できる。

イ.段落【0018】の「図2(a)(b)に示すように雌型4が上昇し、雌型4の上面と雌型支持具3の下面がパイプ材7の内周面に押圧接当され、雌型4が固定されることとなる。この状態で雄型9を打ち込んで穿孔する。」との記載、及び【図2】(a)によれば、雄型9は、パイプ材7の外側からパイプ材7を押圧することでパイプ材7の中間部の周面に孔を穿孔することが理解できる。

ウ.段落【0017】の「雌型4はロッド5の先端に連結され」との記載、段落【0018】の「雌型4の上面と雌型支持具3の下面がパイプ材7の内周面に押圧接当され、雌型4が固定されることとなる。この状態で雄型9を打ち込んで穿孔する。」との記載、及び段落【0027】の「雌型4と雌型支持具3の他に別体の支持具16を設けたものである。」との記載、並びに【図2】(a)及び【図10】によれば、ロッド5の先端に雌型4が形成され、雌型4は、孔が穿孔されるパイプ材7の内周面に当接可能であることが理解でき、また、雌型4に雄型9が挿通可能な形状と位置の雌型側孔を有することは明らかである。

エ.段落【0027】の「雌型4と雌型支持具3の他に別体の支持具16を設けたものである。この支持具16は雌型4と同様ロッド5に連結され固定されたもので、雌型支持具3がこの上面を摺動する。」との記載、及び【図10】によれば、ロッド5の先端に支持具16が形成されることが理解でき、また、孔が穿設されるパイプ材7の内周面と対向する周面内側に該支持具16が当接することは明らかである。

オ.段落【0017】の「雌型支持具3は、パイプの先端部を斜めに切断することによって形成されたもので、パイプ自体が駆動杆6となり、穿孔すべきパイプ材7の外部から該パイプ材7の長手方向に駆動される。」との記載、段落【0018】の「雌型4の上面と雌型支持具3の下面がパイプ材7の内周面に押圧接当され、雌型4が固定されることとなる。」との記載、及び段落【0027】の「図10はパイプ材支持装置1の他の例を示すもので、雌型4と雌型支持具3の他に別体の支持具16を設けたものである。この支持具16は雌型4と同様ロッド5に連結され固定されたもので、雌型支持具3がこの上面を摺動する。」との記載、並びに【図10】によれば、雌型支持具3が、テーパー状となっていることが看取されることから、該ロッド5及び雌型4からなる部材と該ロッド5及び支持具16からなる部材との間に駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材を有し、雌型支持具3が雌型4及び支持具16の間に入り込むよう駆動されることで、雌型4の上面と支持具16の下面がパイプ材7の内周面に押圧固定されることが理解できる。

カ.段落【0015】の「雌型と雌型支持具より成るパイプ材支持具に、パイプ材を孔を設ける位置まで挿通し」との記載、及び段落【0027】の「雌型4と雌型支持具3の他に別体の支持具16を設けたものである。この支持具16は雌型4と同様ロッド5に連結され固定されたもので、雌型支持具3がこの上面を摺動する。」並びに、【図3】及び【図10】によれば、パイプ材7が、雌型4及び雌型支持具3にむけて挿通されること、すなわち、雌型4及び雌型支持具3と、パイプ材7との相対移動により、ロッド5及び雌型4からなる部材、並びに、駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材が、パイプ材7の一方の端部の開口から挿入されることが理解でき、同様の理由により、ロッド5及び支持具16からなる部材が、パイプ材7の一方の端部の開口から挿入されることが理解できる。

3.引用発明
上記(1)の記載事項、及び上記(2)の技術的事項、並びに技術常識を参酌して整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。) が記載されていると認められる。

「パイプ材7の中間部の周面に孔を穿孔するためのパイプ材7の穿孔装置10において、
該パイプ材7の外側から押圧することで該孔を該周面に穿孔するための雄型9と、
ロッド5の先端に雌型4が形成され、該雌型4に該雄型9が挿通可能な形状と位置の雌型側孔を有し、該孔が穿孔される該パイプ材7の周面内側に該雌型4が当接可能に一方の端部の開口から挿入されるロッド5及び雌型4からなる部材と、
ロッド5の先端に支持具16が形成され、該孔が穿設される該パイプ材7の周面内側と対向する周面内側に該支持具16が当接可能に該一方の端部の開口から挿入されるロッド5及び支持具16からなる部材と、
駆動杆6と外形がテーパー状の雌型支持具3を有し、該ロッド5及び雌型4からなる部材と該ロッド5及び支持具16からなる部材との間に該一方の端部の開口から挿入される駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材が入り込むよう駆動されることで雌型4の上面と支持具16の下面がパイプ材7の内周面に押圧固定されるパイプ材の穿孔装置1。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「ワーク周壁における貫通孔の穿設方法及び穿設装置」に関し、図面(特に【図1】及び【図2】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.「[0015]以下、本発明にかかるワーク周壁における貫通孔の穿設方法及び穿設装置の最良の形態の一例を添付図面と共に詳細に説明する。図1は本発明にかかる穿設装置及び金型にワークをセットした状態を示す正面の断面図(a)及び右側面の断面図(b)である。また、図2は本発明にかかる穿設装置によってワークに貫通孔を開けた状態を示す正面の断面図(a)及び右側面の断面図(b)である。
この穿設装置は、ワークの筒状部の周壁に外側からプレス打ち抜きで貫通孔を穿設する装置である。また、本形態例は、軸線方向の中途部の筒状部における内径が端部の開口よりも大きく形成されたワークについて、その筒状部の周壁にプレス打抜きによって貫通孔を穿設する装置となっている。
[0016] 10はワークであり、筒状部12を少なくとも一部に有するものの一例である。図3に示すように、一方の端部が開口10aしており、軸線方向の中途部10bが開口側の部分よりも太く形成されている。また、他方側が徐々に小径となっている(図面せず)。内径も開口側の部分に比べて中途部10bの方が大きくなっている。つまり、ワーク10は中途部10bが太く形成された管状の部材である。なお、ワーク10の他方は中心が僅かに透孔となっているが、実質的に閉じた形状となっている(図示せず)。・・・(後略)・・・」

イ.「[0017] 20はダイユニットであり、ダイ部21、支持部31及び中間挿入部41という3つの構成要素から設けられている。図1では、3つの構成要素がワーク10の内部に挿入されて、ダイユニット20としてセットされた状態を示している。
ダイ部21は、先端側にダイ22が形成され、貫通孔70が開けられるべき筒状部12の周壁内面15aへ前記ダイ22が当接されるように挿入される。
また、このダイ部21は、ワーク10の端部の開口10a(図3等参照)から挿入可能に、先端側にダイ22が形成されると共にその先端側より後端側の支え棒状部23が細く形成されている。このため、ダイ22を、筒状部12内に挿入した後、軸線方向に直交する方向へ移動させて周壁内面15aへ当接させることができる。
さらに、ダイ部21の後端部には、ワーク10の端面11が当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部24が形成されている。
[0018] このダイ部21の先端部には底部25を有する穴26が形成されることでダイ22が形成されている。その底部25にはプレス打抜き方向へ貫通する小孔27が設けられている。これによれば、その小孔27にピン(図示せず)を通して抜きカス80(図2)を除去できる。また、底部25を有することで、ダイ22の強度を高めることができる。
なお、穴26の深さは、図2に示すように、パンチ50が下死点に下降した場合でも、抜きカス80と底面との間に所定の隙間26aを確保できるように設定すればよい。
[0019] 31は支持部であり、先端側にダイを支持する部位32が形成され、貫通孔70が開けられるべき筒状部12の周壁内面15aと反対の周壁内面15bへダイを支持する部位32が当接されるように挿入される。
また、この支持部31は、ワーク10の端部の開口10a(図3等参照)から挿入可能に、先端側にダイを支持する部位32が形成されると共に先端側より後端側の支え棒状部33が細く形成されている。このため、ダイを支持する部位32を、筒状部15内に挿入した後、軸線方向に直交する方向へ移動させて反対の周壁内面15bへ当接させることができる。
さらに、支持部31の後端部には、ワーク10の端面11が当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部34が形成されている。
[0020] 41は中間挿入部であり、ダイ部21及び支持部31と一体化して筒状部12内にプレス打抜き方向に隙間なく配されるダイユニット20を構成するため、ダイ部21と支持部31の間に挿入される。
この中間挿入部41は、くさび型の先端42を備える先端側が一方へ延設されると共に根元部である後端部がベース60に固定されて片持ち状態に保持されている。
このように中間挿入部41が保持されているため、ダイ部21及び支持部31と一体化して形成されるダイユニット20の回転方向の位置決めを好適に行うことができる。
また、中間挿入部41には軸線方向に延びる溝部43又は筋部44が設けられている。ダイ部21及び支持部31には中間挿入部41の溝部43又は筋部44と嵌り合ってその中間挿入部41の挿入を案内すべく軸線方向に延びる筋部28又は溝部35が設けられている。
これによって、ダイ部21、支持部31及び中間挿入部41という3つの構成要素を好適に一体化でき、ダイユニット20を好適に筒状部12内に配することができる。
[0021] 50はパンチであり、筒状部12の内部に配されたダイユニット20のダイ22に対応して設けられ、筒状部12の外側から打ち込んで貫通孔70を穿設する。
このパンチ50は、加圧手段(図示せず)によって下降し、図2に示すように貫通孔70を穿設する。加圧手段の加圧装置としては、例えばシリンダ装置を用いればよい。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項
これらの記載事項及び図示事項から、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。) が記載されていると認められる。
「軸線方向の中途部10bが開口側より太く形成された管状の部材10の該中途部10bの周壁に貫通孔70を穿設するための貫通孔の穿設装置において、
該管状の部材10の外側から押圧することで該貫通孔70を該周壁に穿設するためのパンチ50と、
棒状に伸びた棒状部23の先端にダイ22が形成され、該ダイ22に該パンチ50が挿通可能な形状と位置のプレス打抜方向に貫通する小孔27を備えた底部25を有する穴26を有し、該貫通孔70が穿設される該管状の部材10の周壁内側に該ダイ22が当接可能に一方の該端部の開口10aから挿入されるダイ部21と、
棒状に伸びた棒状部33の先端にダイを支持する部位32が形成され、該貫通孔70が穿設される該管状の部材10の周壁内側と対向する内壁内側に該ダイを支持する部位32が当接可能に該一方の端部の開口10aから挿入される支持部31と、
棒状に伸びた該ダイ部21と該支持部31との間に該一方の端部の開口10aから挿入される中間挿入部41とを備える貫通孔の穿設装置。」

3.引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献3には、「工作物の精密切断及び/又は変形の際の工具の破断を防止するための装置及び方法」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0005】
他の公知の解決方法は、工具内の打ち抜き屑又は他の異物を検出するために、光学センサ又は超音波センサを使用する。」

第5.対比及び判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「周面」は、その構造及び機能からみて、本願発明1の「周壁」に相当し、以下、同様に、「孔」は「貫通孔」に、「穿孔」は「穿設」に、「雄型9」は「パンチ」に、「ロッド5」は「棒状に伸びた棒状部」に、「雌型側孔」は「ダイ側孔」に、「ロッド5及び雌型4からなる部材」は「ダイ部」に、「支持具16」は「支持部」に、「ロッド5及び支持具16からなる部材」は「バックアップ部」に、「駆動杆6」は「棒状に伸びた棒状部」に、「駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材」は「スペーサ部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「パイプ材7」は、「管体」であることを限度として、本願発明1の「管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管」と一致し、また、引用発明における「パイプ材7の穿孔装置10」は、「管体孔穿設装置」であることを限度として、本願発明1の「異形管体孔穿設装置」と一致する。

よって、本願発明1と引用発明は、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「管体の中間部の周壁に貫通孔を穿設するための管体孔穿設装置において、
該管体の外側から押圧することで該貫通孔を該周壁に穿設するためのパンチと、
棒状に伸びた棒状部の先端にダイが形成され、該ダイに該パンチが挿通可能な形状と位置のダイ側孔を有し、該貫通孔が穿設される該管体の周壁内側に該ダイが当接可能に一方の該端部の開口から挿入されるダイ部と、
棒状に伸びた棒状部の先端に支持部が形成され、該貫通孔が穿設される該管体の周壁内側と対向する内壁内側に該支持部が当接可能に該一方の端部の開口から挿入されるバックアップ部と、
棒状に伸びた、該ダイ部と該バックアップ部との間に該一方の端部の開口から挿入されるスペーサ部とを備えた管体孔穿設装置。」

<相違点>
本願発明1は、穿設の対象となる「管体」が、「管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管(以下、「異形管」ともいう。)であって、「スペーサ部」が、「棒状部に該パンチにより穿設された該貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有」し、「該抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させる」ものであるのに対し、引用発明は、穿設の対象となる「管体」が、異形管であるかどうか、駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材(本願発明1の「スペ-サ部」に相当。)」が、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有するかどうかが明らかでなく、駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材を、ロッド5及び雌型4からなる部材(本願発明1の「ダイ部」に相当。)とロッド5及び支持具16からなる部材(本願発明1の「バックアップ部」に相当。)との間から抜き取ることにより抜きカスを外部に排出させるものであるかどうかが明らかでない点。

(2)相違点についての判断
引用発明の「駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材」(本願発明1の「スペーサ部」に相当。)における「雌型支持具3」は、【図10】によれば孔らしきもの「以下、「雌型支持具3の孔」という。)を有することが見て取れるが、この「雌型支持具3の孔」が「貫通孔」であるかどうかは明らかでない。また、雌型支持具3は外径がテーパー状であるところ、【図10】をみても、雌型支持具3を引き抜く方向ではテーパーによって固定されてしまうから、抜きカスが、この雌型支持具3の孔に収納されていたとしても、「駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材」を、「ロッド5及び雌型4からなる部材」(本願発明1の「ダイ部」に相当。)と「ロッド5及び支持具16からなる部材(本願発明1の「バックアップ部」に相当。)との間から抜き取ることができるとは解されない。
そうすると、引用発明においては、「抜きカス」は、「駆動杆6及び雌型支持具3からなる部材」を「ロッド5及び雌型4からなる部材」と「ロッド5及び支持具16からなる部材」との間から抜き取ることにより、管体の外部に排出させることができるとは解されない。
次に、引用文献2に記載された技術的事項について検討する。
本願発明1と引用文献2に記載された技術的事項とを対比すると、引用文献2に記載された技術的事項における「軸線方向の中途部10bが開口側より太く形成された管状の部材10」は、本願発明1における「管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管」に相当し、以下同様に、「軸線方向の中途部10b」は「中間部」に、「貫通孔70」は「貫通孔」に、「貫通孔の穿設装置」は「異形管体孔穿設装置」に、「パンチ50」は「パンチ」に、「棒状部23」は「棒状部」に、「ダイ22」は「ダイ」に、「底部25を有する穴26」は「ダイ側孔」に、「開口10a」は「開口」に、「ダイ21を支持する部位32」は「支持部」に、「支持部31」は「バックアップ部」に、「中間挿入部41」は「スペーサ部」に、それぞれ相当するから、引用文献2に記載された技術的事項は、「管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管の該中間部の周壁に貫通孔を穿設するための異形管体孔穿設装置において、該異形管の外側から押圧することで該貫通孔を該周壁に穿設するためのパンチと、棒状に伸びた棒状部の先端にダイが形成され、該ダイに該パンチが挿通可能な形状と位置のプレス打抜方向に貫通する小孔27を備えた底部25を有するダイ側孔を有し、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側に該ダイが当接可能に一方の該端部の開口から挿入されるダイ部と、棒状に伸びた棒状部の先端に支持部が形成され、該貫通孔が穿設される該異形管の周壁内側と対向する内壁内側に該支持部が当接可能に該一方の端部の開口から挿入されるバックアップ部と、棒状に伸びた棒状部からなり、該ダイ部と該バックアップ部との間に該一方の端部の開口から挿入されるスペーサ部とを備える異形管体孔穿設装置。」ということができる。
そうすると、引用文献2に記載された技術的事項は、管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管の該中間部の周壁に貫通孔を穿設するための異形管体孔穿設装置ということはできるものの、本願発明1の発明特定事項のように、「スペーサ部」が、「パンチにより穿設された貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有」するものではなく、「抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させる」ものではない。
加えて、引用文献2に記載された技術的事項は、ダイ側孔が小孔27を備えた有底のものとすることでダイ側孔に抜きカスを留め、ピンを小孔に挿入して取り出すものであるから、ダイ側孔を貫通孔としてスペーサ部に抜きカスを収容することは予定していないというべきである。
してみると、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することができたとしても、本願発明1のように「スペ-サ部」が、「パンチにより穿設された該貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有」し、「抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させる」ものとはならない。
そして、本願発明1は係る構成を有することにより、明細書の段落【0015】に「本願の発明によれば、抜きカスを、スペーサ部の抜き孔に収納した状態で、スペーサ部をダイ部とバックアップ部との間から抜き取ることにより、抜きカスを異形管の外部に排出させることができることから、穿設作業の効率向上が可能である。」と記載されるような効果を奏するものである。
したがって、相違点に係る発明特定事項を具備する本願発明1は、上記引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を直接的に引用するものであって、本願発明1の発明特定事項を全て有するから、上記相違点を有する。
一方、審査段階で引用された引用文献3は、上記相違点に係る構成を示すものではない。
よって、本願発明2ない4は、本願発明1と同様の理由により、上記引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明1は装置の発明であるのに対して、本願発明5は方法の発明であるが、本願発明1と同様に「管体」が、「管体の両方の端部が、軸方向の中間部に比べ縮径している異形管」であって、「スペーサ部」が、「棒状部に該パンチにより穿設された該貫通孔の抜きカスを収容可能な形状と位置の、該ダイ側孔よりも開口が大きい抜き孔を有」し、「該抜きカスを、該スペーサ部の該抜き孔に収納した状態で、該スペーサ部を該ダイ部と該バックアップ部との間から抜き取ることにより、該抜きカスを該異形管の外部に排出させる」とする発明特定事項を有している。
そうすると、本願発明5と引用発明とは、上記相違点と実質的に同様の相違点を有するものである。
一方、審査段階で引用された引用文献3は、上記相違点に係る構成を示すものではない。
よって、本願発明5は、本願発明1と同様の理由により、上記引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4.本願発明6ないし8について
本願発明6ないし8は、本願発明5を直接的に引用するものであって、本願発明5の発明特定事項を全て有するから、本願発明6ないし8は、本願発明5と同様の理由により、上記引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-28 
出願番号 特願2015-52993(P2015-52993)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 健一  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 中川 隆司
大山 健
発明の名称 異形管体孔穿設装置及び異形管体の孔穿設方法  
代理人 加藤 道幸  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ