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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない A47K
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない A47K
管理番号 1357324
審判番号 訂正2019-390079  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2019-07-02 
確定日 2019-11-18 
事件の表示 特許第6421286号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許第6421286号(以下、「本件特許」という。)は、平成30年3月30日に出願され、平成30年10月19日に特許権の設定登録がなされ、その後、令和1年7月2日に本件訂正審判が請求され、当審において、令和1年7月30日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、請求人により、令和1年8月26日付けで意見書が提出されたものである。

第2 請求の要旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6421286号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
そして、本件審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の訂正事項1は、以下のとおりである。

(訂正事項1)
願書に添付した明細書の段落【0014】を削除する。
具体的には、上記段落【0014】の「パッドのゴムには、シリコンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等があり、シリコンゴムについては透明系のものも用いることができる。。」という記載を削除する。

第3 訂正拒絶理由の概要
令和1年7月30日付けで、当審が通知した訂正拒絶理由の概要は、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第一ないし四号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、本件訂正は認められない、というものである。

第4 当審の判断
1 本件訂正の目的の適否について
(1)「明瞭でない記載の釈明」について
請求人は、本件訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである旨を主張する(意見書第2頁第5?10行)ので、以下、検討する。
「明瞭でない記載の釈明」とは、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意味を明らかにすることをいう。
そして、「明瞭でない記載の釈明」が認められるためには、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面に明瞭でない記載が存在することが必要である。
そこで検討するに、訂正前の明細書の段落【0014】は、【発明を実施するための形態】の項の一部の段落であり、当該段落【0014】には、「シリコンゴム」、「ニトリルゴム」、「天然ゴム」、「スチレンブタジエンゴム」という、パッドのゴムに用いることができるゴム材料の名前が列挙されているとともに、これらの末尾に、列挙されたものが例であることを指示する意味がある「等」の記載がある。このことから、段落【0014】に記載されたゴム材料の名前は、発明を実施する際のゴム材料の具体例を例示するものであると理解することができる。
一方、訂正前の明細書の他の段落(【0007】【0011】【0012】)や、特許請求の範囲には、「ゴム」との記載があり、具体的なゴム材料の名前では記載されていないが、このことと、上記のように段落【0014】がゴムの具体例を例示することに矛盾はないと理解することができる。
上記理解をふまえると、上記段落【0014】の記載は、パッドのゴムに用いることができるものとして、シリコンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等があり、特に、シリコンゴムについては透明系のものを用いることができる点につき、具体例としてその内容を明瞭に示すものであるから、それ自体意味の不明瞭な記載であるとはいえない。
また、訂正前の明細書の他の段落及び特許請求の範囲発明の記載との関係をみても、特許請求の範囲に記載された「ゴム」の意味内容が、訂正前の明細書の一部の段落である段落【0014】の記載を削除することによって、より明瞭になるものでもない。
よって、訂正前の段落【0014】の記載は、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面に存在する明瞭でない記載であるとはいえない。
したがって、訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではない。

(2)「明瞭でない記載の釈明」以外の目的について
ア 「特許請求の範囲の減縮」について
訂正事項1は明細書に係るものであって、特許請求の範囲を直接減縮するものではない。また、訂正前の段落【0014】の記載は「パッドのゴム」の具体例を例示列挙したものであって、その存否によって、特許請求の範囲の解釈に変更が生じるものではない。そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を生じるものではないから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではないことは明らかである。

イ 「誤記又は誤訳の訂正」について
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。
そして、「誤記の訂正」が認められるためには、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要である。
そこで検討するに、段落【0014】には、パッドのゴムに用いることができるものとして、シリコンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等があり、特に、シリコンゴムについては透明系のものも用いることができることについての記載が適切になされており、段落【0014】には、誤記の根拠となる記載が存在しているとは認められない。
また、訂正事項1が、「誤訳の訂正」を目的とするものではないことは、明らかである。
したがって、訂正事項1は、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものではない。

ウ 「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」について
訂正事項1が、明細書の段落【0014】の訂正に係るものであることから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものではないことは明らかである。

2 請求人の主張について
請求人は、甲第1号証及び甲第2号証を提出するとともに、請求項1及び請求項2の中でゴムと記載し、訂正前の明細書の段落【0014】でゴム材料のいくつかの具体例を記載していては、段落【0014】で記載したゴム材料以外のゴムが、請求項1及び請求項2に含まれないか否か不明瞭であり、また、明細書の段落【0014】で表したいくつかのゴム材料の具体例の記載は、限定材料を記載又は全材料の網羅を記載したものではなく、はっきりとゴム材料を定めていない明瞭でない記載であって、請求項1及び請求項2の中核であるゴムの本来の意が、いくつかのゴム材料にとらわれて損なわれることとなる記載なので、段落【0014】の削除は、「明瞭でない記載の釈明」に該当する、旨主張している。(意見書1頁下から3行?2頁13行)

<甲号証一覧>
甲第1号証:訂正審判 54-00 P 第1頁
(https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/document/sinpan-binran_18/54-00.pdf)
甲第2号証:5-2.訂正審判 訂正要件(1)第23頁
(https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/document/index/gaiyou.pdf)

しかしながら、上記のとおり、訂正前の明細書の段落【0014】の記載は、発明を実施する際の「パッドのゴム」のゴム材料の具体例の記載であるから、当該段落【0014】において、前記具体例の記載をすることにより、請求項1及び請求項2に記載の「パッドのゴム」の用語が不明瞭になるとはいえないし、「パッドのゴム」の用語の意味が損なわれることにはならないといえる。
また、当該段落【0014】の記載は、上記のとおり、そもそも明瞭な記載であるから、当該段落の記載を削除したことにより、明瞭でない記載が釈明されることにもならないといえる。
なお、請求人が提出した甲第1号証及び甲第2号証は、訂正審判の制度趣旨ないし訂正要件に係るものであるが、これらの証拠をみても、訂正事項1が、明瞭でない記載の釈明を目的とするものということはできない。

したがって、請求人の主張を採用することはできない。

3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」のいずれの事項を目的とするものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第一ないし四号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、本件訂正は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-20 
結審通知日 2019-09-26 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2018-68130(P2018-68130)
審決分類 P 1 41・ 853- Z (A47K)
P 1 41・ 852- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 百合子  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 西田 秀彦
須永 聡
登録日 2018-10-19 
登録番号 特許第6421286号(P6421286)
発明の名称 便座除菌用パッド器具  

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