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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1357387
審判番号 不服2018-1771  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-07 
確定日 2019-11-28 
事件の表示 特願2015-176875号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月14日出願公開、特開2016-5672号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年10月31日に出願した特願2008-281706号の一部を平成25年11月11日に新たな特許出願(特願2013-233021号)とし、さらにその一部を平成27年9月8日に新たな特許出願(特願2015-176875号)としたものであって、平成28年9月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月11日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月27日付け(発送日:同年11月7日)で、同年6月16日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、同年10月30日に上申書が提出され、これに対し、当審において、令和1年5月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、令和1年7月16日付け提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものと認める(A?Eは分説のため当審で付した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技部材を備えた遊技機において、
B 前記遊技部材は、
B-1 前記遊技領域の少なくとも一部の領域に遊技機正面視で前後に重なる前側遊技領域と後側遊技領域とを有し、
B-2 前記前側遊技領域と前記後側遊技領域とは遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない位置に備えられ、
C 前記前側遊技領域は、無色透明な樹脂で形成されたものであり、
D 前記後側遊技領域は、
D-1 遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある導光部と、
D-2 前記導光部の遊技機裏面側より光を入射する光入射手段と、を備え、
D-3 前記導光部は、前記光入射手段から入射された光の少なくとも一部を前記前側遊技領域側へ導光し、
B-3 前記遊技部材は、遊技球が前記前側遊技領域を流下可能な状態と遊技球が前記後側遊技領域に案内される状態とに変移する案内手段を備える
E ことを特徴とする遊技機。」


第3 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由は、平成30年2月7日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平7-250954号公報
(当審拒絶理由では、周知の技術の例示として、
引用文献2:特開2003-159383号公報
引用文献3:特開平11-57124号公報
引用文献4:特開2008-259740号公報
引用文献5:特開2008-104584号公報
を例示している。)


第4 引用文献に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献1には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)「【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。図1は代表的な遊技機であるパチンコ遊技機の遊技盤1の正面図であり、図2は表示部前面領域保護ユニット2と可変表示装置3を外した状態における遊技盤1の斜視図である。



(2)「【0025】
遊技盤1は、厚手のベニヤ板の表面にガイドレール4やサイドケース5などの区画部材により囲まれた略円形の遊技領域6を形成し、該遊技領域6内の略上半部分に略半円形の貫通開口部7を開設し、該貫通開口部7に表示部前面領域保護ユニット2を嵌合して塞ぎ、表示部前面領域保護ユニット2のほぼ中央に本実施例では特別図柄表示装置として機能する可変表示装置3を取り付けて画像表示部8を前面に向け、該画像表示部8に対応する位置、即ち前方に画像表示部8を覆う状態で形成した表示保護面9により画像表示部8を保護してある。また、遊技領域6内の下半には障害釘を植設するとともに、特別図柄表示装置での可変表示ゲームを開始する条件を成立する始動口10、可変表示ゲームで大当りになった時などに行なう特別遊技状態で遊技者にとって不利な第1状態から遊技者にとって有利な第2状態に変換する変動入賞装置としてのアタッカー11、一般入賞口12、風車13などを配設し、遊技領域6の最下部にはアウト口14を開設してある。
【0026】
表示部前面領域保護ユニット2は、画像表示部8を保護するとともに、遊技球が流下する球案内面を球径以上の間隔を配して前後方向に積層して形成することにより、大きな画像表示部8の設置で狭められた遊技球流下範囲を前後に拡大し、これにより遊技球の流下の面白さを表現できるようにしたものである。図面に示す実施例では画像表示部8に対応する位置に画像表示部8を覆う状態で形成された透明プラスチック製表示保護面9と、該表示保護面9の外方に配設され、遊技盤1の遊技領域6とほぼ面一状に延在して遊技球障害部材を形成した透光プラスチック製の第1球案内面15と、表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在して遊技球障害部材を形成した第2球案内面16と、第1球案内面15を流下する遊技球を第2球案内面16に流入する球流入口17と、第2球案内面16を流下した遊技球を第1球案内面15側に流出する球流出口18とが主要な構成である。なお、第1球案内面15は貫通開口部7より少し大きな略半円形に形成して貫通開口部7を閉塞できるようにして、また、第2球案内面16は貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形に形成してある。
【0027】
本実施例では表示保護面9を第2球案内面16のほぼ中央に該第2球案内面16と一体成形してあるので、第1球案内面15は、表示保護面9に対応する部分に四角形の開口部19を開設し、該開口部19の上開口縁に沿って庇状の球受部20を突設するとともに前記球流入口17を横長に開設し、球受部20の左右端部から下方に側部区画壁21を前方に突出した状態で縦方向に形成し、また、開口部19の開口縁或はその近傍から後方に向けて左右の仕切り側壁22,上仕切り壁23、及び下仕切り壁24をそれぞれ延設し、左右の仕切り側壁22の下部に前記球流出口18を開設し、下仕切り壁24のほぼ中央に前縁が切り欠かれた凹部25を形成する。また、第1球案内面15の裏面には、円弧縁に沿ってその少し内側に壁26を形成して第2球案内面16を止着可能とし、裏面下部には球流出口18に向けて僅かに下り傾斜する底案内壁27を形成し、後述する第2球案内面16上を流下してきた遊技球が球流出口18に円滑に流れるように構成する。一方、第1球案内面15の表面には遊技球の流下方向に影響を与える遊技球障害部材としての障害柱28を球流入口17の上方に遊技球が通過できる間隔で並べて突設し、風車29を開口部19の横に夫々配置し、各風車29の上方(開口部19の側方)にも障害柱28を突設し、該障害柱28の近傍に略円弧状の球案内壁90を下端を風車29に向けて突設する。
・・・
【0030】
上記した構成からなる第1球案内面15の後方に止着する第2球案内面16は、ほぼ中央の少し下部寄りに可変表示装置3の前面部分が嵌合する大きさの窪部32を一体成型し、前方に突出した該窪部32の底部を表示保護面9とし、この表示保護面9の左右に位置する表面に遊技球障害部材として障害柱33を前方に向けて突設する。この障害柱33は、第1球案内面15の障害柱28と同様に、金属ピンをインサートすることにより補強することが望ましい。また、この第2球案内面16に形成する障害柱33は、第1球案内面15の障害柱28と前後に重ならない位置に配置し、遊技者から第2球案内面16の障害柱33で遊技球の流下方向が変わったことを認識し易くすることが望ましい。
・・・
【0033】
上記した第1球案内面15と第2球案内面16とを組み付けるには、図5に示すように、第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ、第2球案内面16の周縁に開設した止着孔内に止着手段としてのネジを挿通して該ネジの先端を第1球案内面15の裏側の壁26及び底案内壁27等の後端縁に開設したネジ孔内に締め込んで止着する。この様にして表示部前面領域保護ユニット2を組み立てると、第2球案内面16のほぼ中央に位置する表示保護面9が第1球案内面15のほぼ中央に開口する開口部19内に位置する。したがって、前方からは、表示保護面9によって保護された画像表示部8が第1球案内面15のほぼ中央に見える。また、第1球案内面15と第2球案内面16との間に遊技球の直径以上の間隙、即ち遊技球が流下できる空間が形成され、この第2球案内面16上の空間は、障害柱33が前後方向に横切り、上部は球流入口17を介して、また下部は球流出口18を介してそれぞれ第1球案内面15側と連通する。
【0034】
上記した表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に取り付けるには、遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、これにより貫通開口部7を塞ぎ、第1球案内面15の周縁に開設してある止着孔内に止着手段としてのネジを前方から挿通し、該ネジの先端を遊技盤1表面に締め込んで止着する。
【0035】
なお、表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1の貫通開口部7に止着する手段は前記ネジ止めに限らず、例えば図8に示すように、第1球案内面15の外周縁から後方に向けて弾性係止爪35を一体成型し、この係止爪35を遊技盤1の貫通開口部7の開口縁に係止させることにより表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に対して着脱可能な状態で止着するように構成してもよい。表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に対して着脱可能に止着すると、組立工場での組み付け、および遊技店に設置した後の保守点検作業並びに交換作業が容易である。
【0036】
この様にして表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に取り付けると、第1球案内面15が遊技盤1の遊技領域6とほぼ面一になり、また、遊技盤1の貫通開口部7内に第2球案内面16という遊技球の流下路が遊技盤1の厚みの範囲内遊技盤表面に沿って形成される。



(3)「【0037】
したがって、上記した遊技盤1を装着したパチンコ遊技機で遊技した場合に、発射された遊技球が遊技領域6の上部に打ち込まれると、図7に示すように、先ず球流入口17に入らなかった遊技球はそのまま第1球案内面15を流下し、途中で該第1球案内面15に突設した障害柱28や風車29などに当って流下方向を変換しながら流下し、遊技者に遊技球の流下の面白みを感じさせることができる。そして、第1球案内面15を通過した遊技球は、始動口10、一般入賞口12、アタッカー11などの入賞具に入賞して遊技盤1の裏側に取り込まれ、いずれにも入賞しなかった遊技球はアウト口14にアウト球として取り込まれる。
【0038】
また、遊技領域6の上部に打ち込まれて球受部20に受け止められて球流入口17に入った遊技球は、図7に示すように、上仕切り壁23上を左右いずれかに転動してから左右いずれかの第2球案内面16に流下し、第2球案内面16に突設してある障害柱33に当って流下方向を変換しながら流下し、底案内壁27上に落下する。そして、この第2球案内面16上を流下方向を変換しながら流下する遊技球(図7中ハッチングを付した遊技球)は透明な第1球案内面15を通して遊技者側から見える。したがって、遊技者側からは第1球案内面15上を流下する遊技球と第2球案内面16上を流下する遊技球とが前後方向に重なって見られ、これにより、遊技球の流路の幅が狭くても、遊技者に対して遊技球の流下の面白さを確実に感じさせることができ、また、第1球案内面15から奥に位置する第2球案内面16に三次元的に流下するとともに第1球案内面15と第2球案内面16との重合した球の流下により遊技球の新たな動きを表現することができる。なお、第1球案内面15の障害柱28と第2球案内面16の障害柱33とは重ならない位置に配置してあるので、いずれの障害柱28,33に当って流下方向を変換した遊技球であっても、流下方向の変換を前方の遊技者側から確実に視認することができる。
【0039】
第2球案内面16上を流下して底案内壁27上に落下した遊技球は、底案内壁27の下り傾斜によって転動し、球流出口18から下仕切り壁24上に排出される。下仕切り壁24は前方、即ち第1球案内面15側に極く僅か下り傾斜しているので、排出された遊技球はこの下り傾斜により転動して第1球案内面15側に戻る。また、下仕切り壁24には前縁が切り欠かれた凹部25が形成されているので、排出された遊技球のうち途中で第1球案内面15側に戻らなかったものはこの凹部25内に一旦落下し、前方の切り欠かれた部分から第1球案内面15側に戻る。そして、上記切り欠かれた部分のすぐ下方には始動口10が配設されているので、凹部25内に落下した遊技球の多くは始動口10に向かって流下する。したがって、始動口10への入賞確率が高まり、遊技者にとって有利になる。また、始動口10にすぐ下方にはアタッカー11が配設されているので、このアタッカー11が開いた状態では、始動口10に入賞しなかった遊技球がアタッカー11に入賞し易くなる。



(4)「【0046】
また、表示保護面9に障害柱40などの遊技球障害部材を形成し、第2球案内面16を流下した遊技球を表示保護面9直前を流下させるようにしてもよい。この場合、遊技球障害部材は表示映像に重ならない位置、例えば図16に示すように、表示保護面9の左右に配置することが望まし。また、第2球案内面16側に一旦入った遊技球を表示保護面9直前に流下させるために、第1球案内面15と第2球案内面16との間の仕切り壁に上球流出口41を開設する。この様に構成すると、球流入口17から第2球案内面16側に入った遊技球の内、その一部の遊技球が上球流出口41から表示保護面9の直前に排出され、表示保護面9に形成した障害柱40等に当って流下方向を変換しながら流下する。したがって、遊技球の流下の面白みを一層増大することができ、しかも画像表示の邪魔になることもない。そして、表示保護面9の直前を流下した遊技球は、第1球案内面15の開口部19の下縁に形成した下仕切り壁24上に落下し、ここから第1球案内面15側に流下する。したがって、前記第1実施例と同様に始動口10やアタッカー11などに入賞し易い。
【0047】
前述した第1球案内面15は単に透明なプラスチックで構成したが、第1球案内面15及び第2球案内面16を着色した透光性プラスチックで構成し、第2球案内面16の裏側にランプや発光ダイオード等の発光源(バックライト)を設けてもよい。この様に構成すると、第1,第2球案内面15,16を広範囲に渡って点灯、或は点滅させることができ、従来にない装飾効果を奏することができ、発光源を面発光させると一層効果が有る。また、第2球案内面16を流下する遊技球の流下方向に影響を与える遊技球障害部材は、前述した実施例では第2球案内面16の表面から障害柱33を前方に向けて突設したが、これに限らず第1球案内面15の裏面に後方、即ち第2球案内面16に向けて形成してもよい。この場合には第2球案内面16を平らな面にすればよいので製造が容易である。」

(5)【0034】の「表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に取り付けるには、遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、これにより貫通開口部7を塞ぎ、第1球案内面15の周縁に開設してある止着孔内に止着手段としてのネジを前方から挿通し、該ネジの先端を遊技盤1表面に締め込んで止着する。」との記載、及び、【0035】の「なお、表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1の貫通開口部7に止着する手段は前記ネジ止めに限らず、」「第1球案内面15の外周縁から後方に向けて弾性係止爪35を一体成型し、この係止爪35を遊技盤1の貫通開口部7の開口縁に係止させることにより表面部前面領域保護ユニット2を遊技盤1に対して着脱可能な状態で止着するように構成」との記載から、第1球案内面15は、遊技盤1に取り付けるための周縁部が形成されていることが示されていると認められる。

(6)【0026】の「第1球案内面15は貫通開口部7より少し大きな略半円形に形成し」、「第2球案内面16は貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形に形成し」との記載、及び、図6、図8における第1球案内面15と第2球案内面16の組み付けの断面図及び斜視図から、周縁部を除いた第1球案内面15と第2球案内面16とは同じ大きさ(面積)及び形状であることが示されていると認められる。

(7)【0026】に「表示部前面領域保護ユニット2は、画像表示部8を保護するとともに、遊技球が流下する球案内面を球径以上の間隔を配して前後方向に積層して形成することにより、大きな画像表示部8の設置で狭められた遊技球流下範囲を前後に拡大し、これにより遊技球の流下の面白さを表現できるようにしたものである。」との記載があること、【0030】の「第2球案内面16は、ほぼ中央の少し下部寄りに可変表示装置3の前面部分が嵌合する大きさの窪部32を一体成型し、前方に突出した該窪部32の底部を表示保護面9とし」との記載と【0026】の「表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在して遊技球障害部材を形成した第2球案内面16」との記載とから、「第2球案内面16」に「一体成型」される「表示保護面9」の領域は、「表示保護面9の外方に配設され」「遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在」する領域に比べて、「第1球案内面15」側に窪んでいる分、「第1球案内面15」との間隔が狭いこと、「表示保護面9」には遊技球障害部材が形成されないことのほか、【0046】に「表示保護面9に障害柱40などの遊技球障害部材を形成し、第2球案内面16を流下した遊技球を表示保護面9直前を流下させるようにしてもよい。この場合、遊技球障害部材は表示映像に重ならない位置、例えば図16に示すように、表示保護面9の左右に配置することが望まし(い)。」との、表示保護面9直前を流下させる態様を変形例とする記載があること、を総合すると、第2球案内面16に一体成型される表示保護面9には、遊技球が流下しないことが示されていると認められる。

そして、上記(1)?(4)に記載された事項及び図面に記載された事項、並びに(5)?(7)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本願発明A?Eに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用発明における引用箇所等を示す。)。

(引用発明)
「a 遊技球が流下する(【0037】)略円形の遊技領域6を形成する遊技盤1(【0025】)を備えたパチンコ遊技機(【0024】)において、
b、b-1、b-2 遊技領域6内の略上半部分に略半円形の貫通開口部7を開設し(【0025】)、
貫通開口部7に、ほぼ中央に可変表示装置3の画像表示部8を覆う状態で形成した表示保護面9を有する表示部前面領域保護ユニット2を嵌合して塞ぎ(【0025】)、
表示部前面領域保護ユニット2は、第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ、第2球案内面16の周縁に開設した止着孔内にネジを挿通して該ネジの先端を第1球案内面15の裏側のネジ孔内に締め込んで止着して組み立てられ(【0033】、図5)、
遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、貫通開口部7を塞ぎ、第1球案内面15の周縁に開設してある止着孔内にネジを前方から挿通し、遊技盤1表面に締め込んで止着し(【0034】)、
表示保護面9の外方に配設され、遊技領域6とほぼ面一状に延在して遊技球障害部材を形成した透光プラスチック製の第1球案内面15(【0026】)は、
表示保護面9に対応する部分に四角形の開口部19を開設され(【0027】)、
該開口部19の上開口縁に沿って庇状の球受部20を突設するとともに球流入口17を横長に開設され、球受部20の左右端部から下方に側部区画壁21を前方に突出した状態で縦方向に形成され、開口部19の開口縁から後方に向けて左右の仕切り側壁22、上仕切り壁23、及び下仕切り壁24をそれぞれ延設され(【0027】)、
遊技球障害部材として障害柱28を突設され、風車29を開口部19の横に配置され(【0027】)、
貫通開口部7より少し大きな略半円形に形成して貫通開口部7を閉塞できるよう形成され(【0026】)、
表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在して遊技球障害部材を形成した第2球案内面16(【0026】)は、
ほぼ中央の少し下部寄りに一体成型される可変表示装置3の前面部分が嵌合する大きさの窪部32の底部を表示保護面9(【0030】)とされ、
表示保護面9の左右に位置する表面に遊技球障害部材として障害柱33を前方に向けて突設され(【0030】)、
貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形に形成され(【0026】)、
第1球案内面15には遊技盤1に取り付けるための周縁部が形成され(認定事項(5))、
周縁部を除いた第1球案内面15と第2球案内面16とは同じ大きさ(面積)及び形状であり(認定事項(6))、
発射された遊技球が遊技領域6の上部に打ち込まれると、球流入口17に入らなかった遊技球はそのまま第1球案内面15を流下し、途中で該第1球案内面15に突設した障害柱28や風車29などに当って流下方向を変換しながら流下し(【0037】)、
遊技領域6の上部に打ち込まれて球受部20に受け止められて球流入口17に入った遊技球は、上仕切り壁23上を左右いずれかに転動してから左右いずれかの第2球案内面16に流下し、第2球案内面16に突設してある障害柱33に当って流下方向を変換しながら流下し(【0038】)、第2球案内面16に一体成型される表示保護面9には遊技球が流下せず(認定事項(7))、
c 第1球案内面15及び第2球案内面16を着色した透光性プラスチックで構成し(【0047】)、
d、d-2、d-3 第2球案内面16の裏側に発光ダイオード等の発光源(バックライト)を設け(【0047】)、着色した透光性プラスチックで構成される第1,第2球案内面15,16を点灯、或は点滅させ装飾し(【0047】)、
b-3 第1球案内面15には、開口部19の上開口縁に沿って庇状の球受部20とともに開設され(【0027】)、球受部20に受け止められた遊技球を第2球案内面16に流入させる球流入口17(【0026】、【0038】)を備える
e パチンコ遊技機(【0024】)。」


第5 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(a)引用発明の「遊技球が流下する略円形の遊技領域6」及び「遊技盤1」は、それぞれ、本願発明の「遊技球が流下する遊技領域」及び「遊技部材」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(b、b-1)引用発明の「第1球案内面15」のうち、「遊技盤1に取り付けるための周縁部」と、「表示保護面9に対応する部分」に「開設」される「四角形の開口部19」とを除く領域は、「遊技領域6とほぼ面一状に延在し」、「球流入口17に入らなかった遊技球」が「途中で該第1球案内面15に突設した障害柱28や風車29などに当って流下方向を変換しながら流下」する領域であるから、「遊技領域」としての機能を有する(以下、「第1球案内面15の遊技領域」という。)。
ここで、「表示部前面領域保護ユニット2」は、「第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ」「組み立てられ」、「遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合」するという組み立て構造であることから、「第1球案内面15」は、遊技機の前側に配置される(当該配置については、図2、図3、図5からも明らかである。)。
そして、「第1球案内面15の遊技領域」は「第1球案内面15」内の領域であることは明らかである。
したがって、引用発明の「第1球案内面15の遊技領域」は、本願発明の「前側遊技領域」に相当する。

引用発明の「表示保護面9の外方に配設され」る「第2球案内面16」は、「球流入口17に入った遊技球」が「上仕切り壁23上を左右いずれかに転動してから左右いずれかの第2球案内面16に流下」し、「第2球案内面16に突設してある障害柱33に当って流下方向を変換しながら流下」する領域を有する一方で、「第2球案内面16に一体成型される表示保護面9には遊技球が流下せず」とあるように、「表示保護面9」の領域には遊技球は流下しない。
すなわち、「第2球案内面16」のうち、「一体成型」される「表示保護面9」を除いた「表示保護面9の外方に配設」される領域については、「遊技領域」としての機能を有する(以下、「第2球案内面16の遊技領域」という。)。
そして、「第2球案内面16の遊技領域」は、「第1球案内面15の奥(後方)」に「第1球案内面15とほぼ平行に延在」する「第2球案内面16」内の領域であるから、「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)の後方に配置される。
したがって、引用発明の「第2球案内面16の遊技領域」は、本願発明の「後側遊技領域」に相当する。

ここで、引用発明の、
「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」は、いずれも、「表示保護面9の外方に配設」されること、
「第1球案内面15」は「貫通開口部7より少し大きな略半円形」であること、
「第2球案内面16」は「貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形」であること、
「第1球案内面15には遊技盤1に取り付けるための周縁部が形成され、周縁を除いた第1球案内面15と第2球案内面16とは同じ大きさ(面積)及び形状」であること、
「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」は、「第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ」「組み立て」、「遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、貫通開口部7を塞」ぐ配置構造であること、
を総合すると、引用発明の「第1球案内面15の遊技領域」と「第2球案内面16の遊技領域」の形状及び配置関係は、本願発明の「前側遊技領域」と「後側遊技領域」が「遊技機正面視で前後に重なる」との形状及び配置関係に相当する。

さらに、引用発明の「第1球案内面15」と「第2球案内面16」から「組み立てられ」る「表示部前面領域保護ユニット2」が「嵌合」される「遊技領域6内の略上半部分に開設する略半円形の貫通開口部7」の領域は、「遊技領域6」(遊技領域)の一部の領域に他ならないから、本願発明の「遊技領域の少なくとも一部の領域」に相当する。

してみると、引用発明の構成b、b-1の、
「表示保護面9の外方に配設され、遊技領域6とほぼ面一状に延在」し、
「表示保護面9に対応する部分」に「開設され」る「四角形の開口部19」を除く「遊技球障害部材として障害柱28を突設し、風車29を開口部19の横に配置」する領域であって、「(第1球案内面15に開設される)球流入口17に入らなかった遊技球」が「途中で該第1球案内面15に突設した障害柱28や風車29などに当って流下方向を変換しながら流下」する領域を有し、
「貫通開口部7より少し大きな略半円形」で「遊技盤1に取り付けるための周縁部が形成され」、「周縁部を除いた第1球案内面15と第2球案内面16とは同じ大きさ(面積)及び形状」である
「第1球案内面15」と、
「表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在し」、
「ほぼ中央の少し下部寄りに一体成型される可変表示装置3の前面部分が嵌合する大きさの窪部32の底部を表示保護面9とし、この表示保護面9の左右に位置する表面に遊技球障害部材として障害柱33を前方に向けて突設」する領域であって、
「(第1球案内面15に開設される)球流入口17に入った遊技球」が「(第1球案内面15に形成される)上仕切り壁23上を左右いずれかに転動してから左右いずれかの第2球案内面16に流下」し「突設してある障害柱33に当って流下方向を変換しながら流下」する領域を有し、
「第2球案内面16に一体成型される表示保護面9には遊技球が流下せず」、
「貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形」である
「第2球案内面16」とを、
「第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ」「組み立て」、「遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、貫通開口部7を塞」ぐとの事項は、
本願発明の構成B、B-1の「前記遊技部材は、前記遊技領域の少なくとも一部の領域に遊技機正面視で前後に重なる前側遊技領域と後側遊技領域とを有し」との事項に相当する。

(b-2)引用発明の「可変表示装置3」及び「画像表示部8」は、それぞれ、本願発明の「表示装置」及び「表示画面」に相当する。
ここで、上記(b、b-1)にて説示したように、引用発明の「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)は、「第1球案内面15」のうち、「遊技盤1に取り付けるための周縁部」と、「表示保護面9に対応する部分」に「開設」される「四角形の開口部19」とを除く領域であるから、引用発明の「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)は、遊技機正面視で「可変表示装置3」(表示装置)の「画像表示部8」(表示画面)の前方を塞がず、「画像表示部8」(表示画面)に重ならない。
したがって、引用発明の「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)は、本願発明の「前記前側遊技領域」「は遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない」との構成を具備する。

また、上記(b、b-1)にて説示したように、引用発明の「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)は、「第2球案内面16」に「一体成型」される「表示保護面9」を除いた「表示保護面9の外方に配設」される領域であるから、引用発明の「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)が、遊技機正面視で「可変表示装置3」(表示装置)の「画像表示部8」(表示画面)の前方を塞がず、「画像表示部8」(表示画面)に重ならない。
したがって、引用発明の「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)は、本願発明の「前記後側遊技領域」「は遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない」との構成を具備する。

よって、引用発明の「表示部前面領域保護ユニット2」が「第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ」「組み立てられ」、「遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合」するとの組み立て構造による「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)と「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)との配置関係は、本願発明の「前記前側遊技領域と前記後側遊技領域とは遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない位置に備えられ」との配置関係を具備する。

してみると、引用発明の構成b-2の、
「表示保護面9の外方に配設され、遊技領域6とほぼ面一状に延在」し、
「表示保護面9に対応する部分」に「開設され」る「四角形の開口部19」を除く「遊技球障害部材として障害柱28を突設し、風車29を開口部19の横に配置」する領域であって、「(第1球案内面15に開設される)球流入口17に入らなかった遊技球」が「途中で該第1球案内面15に突設した障害柱28や風車29などに当って流下方向を変換しながら流下」する領域を有し、
「貫通開口部7より少し大きな略半円形」で「遊技盤1に取り付けるための周縁部が形成され」、「周縁部を除いた第1球案内面15と第2球案内面16とは同じ大きさ(面積)及び形状」である
「第1球案内面15」と、
「表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在し」、
「ほぼ中央の少し下部寄りに一体成型される可変表示装置3の前面部分が嵌合する大きさの窪部32の底部を表示保護面9とし、この表示保護面9の左右に位置する表面に遊技球障害部材として障害柱33を前方に向けて突設」する領域であって、
「(第1球案内面15に開設される)球流入口17に入った遊技球」が「(第1球案内面15に形成される)上仕切り壁23上を左右いずれかに転動してから左右いずれかの第2球案内面16に流下」し「突設してある障害柱33に当って流下方向を変換しながら流下」する領域を有し、
「第2球案内面16に一体成型される表示保護面9には遊技球が流下せず」
「貫通開口部7内に嵌合できる大きさの略半円形」である
「第2球案内面16」とを、
「第2球案内面16の前面を第1球案内面15の裏側に臨ませ」「組み立て」、「遊技盤1の貫通開口部7の前方から表面部前面領域保護ユニット2の後部、即ち第2球案内面16の裏側を臨ませ、この状態で第1球案内面15の周縁の裏面が遊技盤1表面に当接するまで後退させて貫通開口部7内に嵌合し、貫通開口部7を塞」ぐとの事項は、
本願発明の構成B-2の「前記前側遊技領域と前記後側遊技領域とは遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない位置に備えられ」る事項に相当する。

(c)引用発明の「第1球案内面15」が「着色した透光性プラスチックで構成される」ことは、本願発明の「前側遊技領域」に相当する部材(上記(b、b-1)の説示参照)が、着色されて有色であるものの、透明な樹脂で形成されることを意味する。
してみると、引用発明の構成cと、本願発明の構成Cとは、「前記前側遊技領域は、」「透明な樹脂で形成されたもの」である点で共通する。

(d、d-2、d-3)引用発明の「第2球案内面16の裏側」は「遊技機裏面側」に相当する。
ここで、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」は、「第2球案内面16の裏側」(遊技機裏面側)に設けられること以外に、その具体的な実装手段について特定されていないが、バックライトのような照明に用いる発光ダイオード等の発光源の実装に際し、発光ダイオード等の発光源を基板に実装し、当該基板を発光ダイオード等の発光源からの光を意図する照射方向以外は遮光するケース内に配置することは技術常識であるから、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」も当該実装手段を有することは自明である。
一方、本願の【0119】には「光入射部材80は、図8,図10,図11に示すように、前面側に複数個の発光ダイオード(LED81)を実装したLED実装基板82と、このLED実装基板82が内側に取り付けられたケース部品83とを備え」との記載があり、同【0121】には「上述した光入射部材80が本発明における光入射手段に相当し、」との記載があることから、本願発明の「光入射手段」は、発光ダイオード(LED81)、発光ダイオード(LED81)を実装したLED実装基板82及びケース部品83から構成されるものと解される。
そうすると、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」は、本願発明の「光入射手段」に相当する。

また、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)が設置される領域は、「第2球案内面16の裏側」(遊技機裏面側)の領域であること以外に特定されていないが、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)の「着色した透光性プラスチックで構成される第1,第2球案内面15,16を点灯、或は点滅させ装飾」する機能と、引用発明の「表示保護面9」が、「第2球案内面16」に「一体成型」される「可変表示装置3の前面部分が嵌合する」「窪部32」である構造とに鑑み、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)が配置される領域は、「第2球案内面16」の裏側の領域のうち、「表示保護面9」を除いた「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)であることは明らかである。
したがって、引用発明の「第2球案内面16の裏側に発光ダイオード等の発光源(バックライト)を設け」ることは、本願発明の「前記後側遊技領域は」「遊技機裏面側より光を入射する光入射手段を」「備える」ことに相当する。
してみると、引用発明の構成d、d-2、d-3と、本願発明の構成D、D-2、D-3とは、「前記後側遊技領域は」「遊技機裏面側より光を入射する光入射手段を」「備える」点で共通する。

(b-3)引用発明の「球流入口17」は、「球受部20に受け止められた遊技球を第2球案内面16に流入させる」ものであるから、遊技球を「第1球案内面15の遊技領域」(前側遊技領域)を流下する状態と、遊技球を「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)を流下する状態とに振り分ける振り分け手段に他ならない。
してみると、引用発明の構成b-3は、本願発明の構成B-3と「前記遊技部材は、遊技球が前記前側遊技領域を流下」するか、「遊技球が前記後側遊技領域に流下」するかを振り分ける振り分け手段を備える点で共通する。

(e)引用発明の「パチンコ遊技機」は、遊技機の一種に他ならないから、本願発明の「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

そうすると、上記(a)?(e)によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技部材を備えた遊技機において、
B 前記遊技部材は、
B-1 前記遊技領域の少なくとも一部の領域に遊技機正面視で前後に重なる前側遊技領域と後側遊技領域とを有し、
B-2 前記前側遊技領域と前記後側遊技領域とは遊技機正面視で表示装置における表示画面の前方を塞がない位置であって、前記表示画面に重ならない位置に備えられ、
C’ 前記前側遊技領域は、透明な樹脂で形成されたものであり、
D’ 前記後側遊技領域は、遊技機裏面側より光を入射する光入射手段を備え、
B-3’ 前記遊技部材は、遊技球が前記前側遊技領域を流下するか、遊技球が前記後側遊技領域を流下するかを振り分ける振り分け手段を備える
E 遊技機。」

(相違点1)(構成Cについて)
本願発明は、前側遊技領域を構成する透明な樹脂が「無色透明な樹脂」であるのに対し、引用発明は、同領域を構成する樹脂が「着色した透光性プラスチック」であって、「第2球案内面16の裏側」(遊技機裏面側)に配置される「発光ダイオード」(光入射手段)からの光で「点灯、或は点滅」する程度の透明度は有する(引用発明の構成d、d-2、d-3参照)ものの、「無色」ではない点。

(相違点2)(構成D、D-1、D-2、D-3について)
本願発明は、「前記後側遊技領域」が「遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある導光部」を備え、「前記導光部は、(前記導光部の遊技機裏面側より光を入射する)前記光入射手段から入射された光の少なくとも一部を前記前側遊技領域側へ導光」するとの事項を有するのに対し、
引用発明は、「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)の裏面側(遊技機裏面側)に「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)を備え、当該「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)によって「第1,第2球案内面15,16を点灯、或は点滅させ装飾」するものの、本願発明のように「遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある導光部」を具備するものでなく、それ故、「前記光入射手段から入射された光の少なくとも一部を前記前側遊技領域側へ導光」するとの事項を有しない点。

(相違点3)(構成B-3について)
遊技球が前側遊技領域を流下するか遊技球が後側遊技領域を流下するかを振り分ける振り分け手段が、本願発明は、「遊技球が前記前側遊技領域を流下可能な状態と遊技球が前記後側遊技領域に案内される状態とに変移する」との、能動的な振り分け手段であるのに対し、
引用発明は、「球受部20に受け止められた遊技球を第2球案内面16に流入させる」との、受動的な振り分け手段である点。


第6 判断
上記相違点1?3について検討する。

1 相違点1及び相違点2について
上記相違点1及び相違点2とは、遊技領域の光装飾技術に関する点で密接に関連するので、まとめて判断する。なお、判断順序は相違点の順序とは異なる。
遊技機の技術分野において、発光ダイオードによる光装飾効果を高めるために、遊技機裏面側より光を入射する発光ダイオードから入射された光を、遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある柱状導光部によって遊技領域前方へ導光する技術は、本願の遡及日前に周知の技術である(以下、「周知技術1」という。)。
(特開2003-159383号公報には、光装飾を高めるために(【0027】)、棒状の光誘導体81(本願発明の「導光部」に相当)の後端部を光源92(LED)と近接させ、LEDが発する光を拡散を防止しながら前方に透過させる構成(【0018】、【0020】、図3、図4)、光誘導体81が、縦通路部50bを流れる球Bに接触してその球Bの流速を減速させる減速機能を兼ね備えること(【0020】、図3)、光源92(LED)の点灯・点滅時期を図柄変動に関連して設定することで演出効果を高めること(【0027】)、が記載されている。
同様に、特開平11-57124号公報には、電飾効果を得るために(【0003】)、発光ダイオ-ド10(光入射手段)からの光を導く光透過部材で形成した長手形状(すなわち、柱状)の光ガイド部材11(本願発明の「導光部」に相当)の先端より発光ダイオ-ド10(光入射手段)からの光を発するようにして、従来にない電飾効果を得ること(【0011】)、また、光ガイド部材11(導光部)をパチンコ玉をガイドするガイド釘3(本願発明の「遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材」に相当)としても良いこと(【0014】)、が記載されている。)
ここで、引用発明の構成d、d-2、d-3の「第2球案内面16の裏側に発光ダイオード等の発光源(バックライト)を設け、着色した透光性プラスチックで構成される第1,第2球案内面15,16を点灯、或は点滅させ装飾し」との構成から、引用発明は、第1球案内面15及び第2球案内面16を用いて装飾するものであるため、引用発明は、装飾効果を向上させるという課題を解決するものである。
そうすると、引用発明と周知技術1とは、遊技機における装飾効果を向上させるとの、共通の課題を解決するものである。
したがって、引用発明の「障害柱33」に柱状導光部に関する周知技術1を適用し、引用発明の「第2球案内面16」の「表示保護面9の左右に位置する表面に」「突設」される「柱」状の「障害柱33」を、「第2球案内面16の遊技領域」(後側遊技領域)の裏面側(遊技機裏面側)に設置される「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」(光入射手段)の光を「第1球案内面15」側へ透過させる柱状導光部として用いることは、当業者にとって容易になし得ることである。
ここで、引用文献1の【0047】の「前述した第1球案内面15は単に透明なプラスチックで構成したが、第1球案内面15及び第2球案内面16を着色した透光性プラスチックで構成し、・・・てもよい。」との記載によれば、引用文献1には、第1球案内面15として、着色のない(すなわち、無色)透明なプラスチック(樹脂)で構成する態様も記載されており、引用発明は、電飾効果を奏する範囲内で「第1球案内面15」を無色透明から「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」を有色透明にしたのであるから、「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」のうち片方だけを有色透明にしても電飾効果はあるものと認められる。
また、LEDが発光することで装飾効果を発揮することは自明であるから、「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」のうち、「第1球案内面15」が無色透明で電飾効果がなくとも、「第2球案内面16」とLEDの発光による装飾効果はあるものとなることから、引用発明の「第1球案内面15」を無色透明とすることは、引用発明に周知技術1を適用するにあたり、装飾効果を奏する範囲内で、当業者が選択する設計的事項にすぎない。
そして、引用発明の「障害柱33」に柱状導光部に関する上記周知技術1を適用した際、「第2球案内面16の裏側」に設ける「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」からの光は、「障害柱33」を介して「第1球案内面15」に導光されることとなり、「第2球案内面16」の遊技領域を流下する遊技球によって妨げられることはないから、「第2球案内面16」の装飾効果を向上させることができることは明らかであり、本願発明の有する「パチンコ機前面側の光が奥側遊技領域71aの流下球で遮られることがなく、奥側遊技領域71aの流下球で遮られることがない分だけ奥側遊技領域71aの発光装飾を向上させることができる。」(本願の【0123】参照。)と同様の効果を奏するものである。
よって、引用発明に、周知技術1を適用して、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。


2 相違点3について
遊技機の技術分野において、遊技機正面視で前後に重なる前側遊技領域と後側遊技領域の間を流下する構造を備えると共に、遊技球の流下する遊技領域について、一方の遊技領域のみ流下する状態と、他方の遊技領域に案内される状態とを、所定の条件によって変移させる案内手段を備えることは、例えば、特開2008-259740号公報や特開2008-104584号公報に記載されているように、本願の遡及日前に周知の技術である(以下、「周知技術2」という。)。
(特開2008-259740号公報の【0030】、【0031】、図2-4には、「第2クリア部材42」(本願発明の「前側遊技領域」に相当)と「遊技盤5」(本願発明の「後側遊技領域」に相当)との遊技機正面視で前後に重なる遊技領域を有する遊技機1において、「第2クリア部材42」(前側遊技領域)は「導入口421」を有し、「遊技盤5」(後側遊技領域)は「導入口421」と対応する位置に「誘導部57a」を配置し「上方から流下してきた遊技球を受け止めて導入口に向けて誘導する誘導部材」として機能する「鎧部材57」を有しており、「遊技盤5」(後側遊技領域)から「第2クリア部材42」(前側遊技領域)に遊技球を案内する構造の一態様として、「遊技盤5の表面から突出することで流下してきた遊技球を導入口421に向けて誘導可能となる誘導状態と、後方に退避することで流下してきた遊技球を導入口421に向けて誘導困難あるいは誘導不能となる非誘導状態とに変換可能な誘導部材を設け、所定のタイミングで誘導部材を誘導状態あるいは非誘導状態に変換することにより、導入口421への遊技球導入状況を変化させるようにしても良い。」と記載されている。
同様に、特開2008-104584号公報の【0030】-【0032】、【0048】、【0049】、【0056】、【0128】、図2、3、5、14には、第1の遊技盤14aの「第1の遊技領域15a」(本願発明の「前側遊技領域」に相当)及び「第2の遊技盤14b」の「第2の遊技領域15b」(本願発明の「後側遊技領域」に相当)を重合配置される(遊技機正面視で前後に重なる)パチンコ遊技機10において、「第1の遊技領域15a」(前側遊技領域)には、遊技球を第2の遊技盤14b側に誘導する遊技球誘導路29と、遊技球誘導路29(図5)を開閉する誘導路開閉手段としての遊技球誘導部材27a、27b(図3。本願発明の「案内手段」に相当)を設け、大当たり遊技終了後の通常遊技状態において、変更抽選によって確率状態が高確率状態から低確率状態に変更されたことを報知する転落報知処理として、遊技球誘導部材27a、27bの開放時間、開放頻度及び開放角度を制御する遊技球誘導部材制御処理を実行(【0128】、図14)し、当選確率が変更された後の所定期間中、遊技球誘導部材27a,27b(案内手段)を動作させて遊技球誘導路29を開通し、遊技球を「第1の遊技領域15a」(前側遊技領域)から、この第1の遊技領域よりも多数の入賞口を具備する「第2の遊技領域15b」(後側遊技領域)へと導く制御を実行することで、転落したことの報知(転落報知)とする(【0032】)ことが記載されている。)
ここで、引用発明と上記周知技術2とは、共に、遊技機正面視で前後に重なる前側遊技領域と後側遊技領域を有し、遊技球が前記前側遊技領域を流下するか遊技球が前記後側遊技領域を流下するかを振り分ける振り分け手段としての機能を有する点で共通する。
そして、遊技機の技術分野において、遊技球が前記前側遊技領域を流下するか遊技球が前記後側遊技領域を流下するかを振り分ける振り分け手段の構成としては、振り分け手段の機能を発揮する頻度を、遊技球のランダムな動きによる偶然に委ねる構成とするか、コントロールする構成とするかの二者択一であるといえる。
したがって、引用発明における振り分け手段である「球流入口17」に対し、上記周知技術2に基づき、遊技球が「第1球案内面15」を遊技球が流下する状態と「第2球案内面16」を流下する状態とを、所定の条件によって能動的に変移させることによって、上記相違点3における本願発明の特定事項を具備させることに、格別の困難性は認められない。
よって、引用発明に、周知技術2を適用して、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。


3 本願発明が奏する効果について
本願発明は「前面の遊技領域30aとは別の奥側遊技領域71aとしても活用でき」ることで、「遊技領域30aの減少を低減できるパチンコ機(遊技機)を提供することができる。」(本願の【0123】等参照。)との効果を奏するが、引用発明においても、「遊技球が流下する球案内面を球径以上の間隔を配して前後方向に積層して形成することにより、大きな画像表示部8の設置で狭められた遊技球流下範囲を前後に拡大し、これにより遊技球の流下の面白さを表現できるようにしたものである。」(引用文献1の【0026】等参照。)とあるように、上記本願発明の有する効果と同様の効果を奏する。
そして、本願発明によってもたらされる作用効果の全体を検討してみても、当業者が、引用発明、周知技術1及び周知技術2から予測し得るものであって、格別のものということはできない。


4 小括
上記1?3の検討内容からみて、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易になし得たものである。


5 請求人の主張について
請求人は、令和1年7月16日提出の意見書において、本願発明と引用発明とは、少なくとも、「「前記後側遊技領域」は、「遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある導光部」を備え、「前記導光部は、前記光入射手段から入射された光の少なくとも一部を前記前側遊技領域側へ導光し、」に相当する構成」を引用発明が備えない点で相違し、当該相違点に関して、引用発明に周知技術1(光入射手段による光装飾効果を高めるために、遊技機裏面側より光を入射す光入射手段から入射された光を、遊技球が衝突または接触することで遊技球の流下経路を形成する部材であって導光性のある導光部によって遊技領域前方へ導光する態様)を適用するとの当審拒絶理由における判断は、本願発明を「前記前側遊技領域は、無色透明な樹脂で形成されたものであり、」と特定する補正により、意見書において「該当しない理由その1」「該当しない理由その2」とする以下の主張から、該当しなくなるため、補正後の本願発明は引用文献1?5からは容易に想到できるとは言えなくなる旨主張する。

(該当しない理由その1)
「引用例1には、段落「0026」を参照すれば「・・・遊技盤1の遊技領域6とほぼ面一状に延在して遊技球障害部材を形成した透光プラスチック製の第1球案内面15と、表示保護面9の外方に配設され、第1球案内面15の奥(後方)に遊技球の直径以上の間隙を配して第1球案内面15とほぼ平行に延在して遊技球障害部材を形成した第2球案内面16と、・・・」と記載され、段落「0047」を参照すれば「前述した第1球案内面15は単に透明なプラスチックで構成したが、第1球案内面15及び第2球案内面16を着色した透光性プラスチックで構成し、第2球案内面16の裏側にランプや発光ダイオード等の発光源(バックライト)を設けてもよい。この様に構成すると、第1,第2球案内面15,16を広範囲に渡って点灯、或は点滅させることができ、従来にない装飾効果を奏することができ、発光源を面発光させると一層効果が有る。・・」と記載され」ている点、及び、「引用例1には、第1球案内面15を透明なプラスチックで構成することが記載されていますが、第1球案内面15を透明なプラスチックで構成した場合に、第2球案内面16の裏側にランプや発光ダイオード等の発光源を設けることまでは記載され」ていない点から、「引用例1の第1球案内面15を透光プラスチック製(透明なプラスチック)で構成した場合は、第2球案内面16は、透光プラスチック製では構成せず、第2球案内面16の裏側に発光源を設けない構成となるため、本願発明の構成要件(C-1)(C-3)の「導光部」に相当する構成だけでなく構成要件(C-2)の「前記導光部の遊技機裏面側より光を入射する光入射手段」に相当する構成も備えないものとなります。」と解釈し、「したがいまして、引用例1の第1球案内面15を透光プラスチック製(透明なプラスチック)で構成した場合は、そもそも第2球案内面16の後から光を照射する構成も備えなくなりますので、『・・・光源から出射された光は、光照射対象部材である「第1,第2球案内面15,16」に届くまでに面的に広がりながら到達する・・・』とういう動機付けの前提もなくなります。その結果、引用例1?3に基づいても上記相違点に係る構成を容易に想到できるとは言えなくなります。」との理由(以下、「主張1」という。)。

(該当しない理由その2)
「第1球案内面15を透明なプラスチックで構成し、第2球案内面16を着色した透光性プラスチックで構成することが想起できたと仮定しましても」、「引用例2は、意匠レンズ体に対して拡散透過光と拡散防止された透過光との2種類の光によって光装飾性を向上させていますが、拡散透過手段70(拡散レンズ体71)と拡散防止透過手段80(光誘導体81)を意匠レンズ体の後側に配置することによって遊技者から拡散レンズ体71と光誘導体81が直接目に入り難くなるように構成」しているため、「仮に引用例1に引用例2,3を適用することが想起できるとすればその理由は、引用例1の第1球案内面15,第2球案内面16が着色した透光性プラスチックで構成されているから、第2球案内面16における光装飾効果を高めるために、第2球案内面16に代えて(または第2球案内面16の一部の領域に)拡散レンズ体71と光誘導体81とが一体に形成された部材を設けても、着色した透光性プラスチックによって、拡散レンズ体71と光誘導体81とが遊技者の視野に入りにくくなるからと推測されます。これをもし仮に、引用例1において第1球案内面15を透明なプラスチックとし、第2球案内面16を着色した透光性プラスチックとした構成にすれば、第2球案内面16の代わりに配される拡散レンズ体71と光誘導体81は、遊技者の視野に入ってしまいますので、却って光装飾効果の妨げになります。したがいまして、引用例1において第1球案内面15を透明なプラスチックとし、第2球案内面16を着色した透光性プラスチックとする構成にした場合、第2球案内面16の代わりに拡散レンズ体71と光誘導体81を配することは、却って光装飾効果の妨げになりますので、通常では想起されないものと思料します。」との理由(以下、「主張2」という。)。

上記主張1について検討する。
引用発明は、引用発明の構成d、d-2、d-3において、「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」を「着色した透光性プラスチックで構成される第1,第2球案内面15,16」とあるように、「第1球案内面15」及び「第2球案内面16」とは、着色透明とする構成を備える。
また、「第5 本願発明と引用発明の対比」「(d、d-2、d-3)」で説示したとおり、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」は、技術常識に基づけば、発光ダイオード等の発光源を基板に実装し、当該基板をケース内に配置して実装されるものと解されること、他方、本願発明の「光入射手段」は、本願の【0121】等の記載によれば、発光ダイオード(LED81)、発光ダイオード(LED81)を実装したLED実装基板82及びケース部品83から構成される手段と解されることから、引用発明の「発光ダイオード等の発光源(バックライト)」は、本願発明の「光入射手段」に相当する。
したがって、引用発明は、周知技術1を組み合わせる動機付けの前提となる構成を有することから、上記主張1は理由がない。

上記主張2について検討する。
「第6 判断」「1 相違点1及び相違点2について」では、特開2003-159383号公報(意見書でいう「引例2」)における周知技術1としての認定に際し、令和1年7月16日付け提出の手続補正書により補正が加わったことに対応させ、当審拒絶理由における引例2の認定から、「意匠レンズ61」を用いずに認定するよう変更した。
そして、引用発明に周知技術1を適用した電飾効果を有する遊技機の構成として、引用発明の「第1球案内面15」を無色透明とする点については、「第6 判断」「1 相違点1及び相違点2について」で説示したとおりであるから、上記主張2は理由がない。

したがって、令和1年7月16日提出の意見書における審判請求人の主張は、いずれも理由がない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-27 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-16 
出願番号 特願2015-176875(P2015-176875)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 真彦  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 牧 隆志
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 杉谷 勉  

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