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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P |
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管理番号 | 1357394 |
審判番号 | 不服2018-10869 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-08 |
確定日 | 2019-11-28 |
事件の表示 | 特願2014-105112「制御装置、駆動装置および画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月29日出願公開、特開2015-19563〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年5月21日(優先権主張平成25年6月10日)の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成30年 2月23日:拒絶理由通知 平成30年 4月13日:意見書及び手続補正書 平成30年 4月23日:拒絶査定 平成30年 8月 8日:審判請求及び手続補正書 平成31年 4月22日:拒絶理由通知 令和 元年 6月24日:意見書及び手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和元年6月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下に記載された事項により特定されるものある。 「モータから出力される磁極位相信号に応じて前記モータに電力を供給するモータ駆動部と、 前記磁極位相信号を変換して、前記モータの出力軸の回転量及び回転方向を表し、当該磁極位相信号に対して分解能の高い回転位置検出信号を出力する回転位置検出部と、 上位装置から入力される目標駆動信号から取得される前記モータの目標位置及び目標速度と、前記回転位置検出部から出力された前記回転位置検出信号から取得される前記モータの出力軸の回転方向および移動パルスに基づく前記モータの回転位置および回転速度とが一致するように、前記モータ駆動部に、PWM出力信号及び回転方向信号を含む制御信号を送信する制御部と、 を備えることを特徴とする制御装置。」 第3 拒絶の理由 平成31年4月22日の当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項若しくは引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特開2013-94037号公報 2.特開2013-99023号公報 3.特開2013-108971号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、「駆動装置及びそれを備えた画像形成装置」に関し、図面とともに次の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 (1)「【0038】 図2は、画像形成装置100が備える搬送ローラを駆動する駆動装置の概略構成図である。 【0039】 図2に示した駆動装置150は、図1に示した画像形成装置100の何れかの搬送ローラを駆動するDCモータ及びその制御回路等からなるものである。以下の説明では、図1に示した排紙ローラ18の駆動装置を例に挙げる。ただし、排紙ローラ18以外の搬送ローラについても同様に適用することができる。 【0040】 排紙ローラ18(18a、18bを含む。)の駆動装置150は、DCモータ101、減速ギヤ111?114、制御回路120、ドライバ回路115を備えている。なお、制御回路120は、本発明に係る制御手段を構成する。 【0041】 DCモータ101は、例えばDCブラシレスモータで構成され、出力軸102、この出力軸102に固定されたギヤ102a及びエンコーダ103を備えている。エンコーダ103は、エンコーダディスク103a、フォトセンサ103bを有する。なお、エンコーダ103は、本発明に係る回転位置検知手段を構成する。 【0042】 この構成により、DCモータ101は、ギヤ102a、減速ギヤ111?114を介し、排紙ローラ18a及び18bを回転させる。そして、排紙ローラ18a及び18bに挟まれながら用紙23が搬送されていく。 【0043】 また、エンコーダディスク103aは、周方向に所定の角度間隔で所定数のスリットを有し、出力軸102に垂直かつ同心にて固定され、出力軸102の回転とともに回転するようになっている。 【0044】 光学センサであるフォトセンサ103bは、エンコーダディスク103aを挟み込む形でDCモータ101に取り付けられ、エンコーダディスク103aのスリットにより光路の伝達・遮断がなされ、フォトセンサ103bの受光素子にてパルス信号となって制御回路120へと伝達する。 【0045】 制御回路120では、このパルス信号を計測することで、DCモータ101の回転量及び回転速度を導出し、排紙ローラ18a及び18bの位置及び速度情報から、用紙23の位置及び速度情報を得ることが可能となる。 【0046】 なお、フォトセンサ103bは、2組の発光素子と受光素子を有し、各々のパルス信号位相差が所定量(本実施形態ではπ/2[rad])となるように配置されている。 【0047】 制御回路120は、本体制御部30(図1参照)が出力する目標駆動信号及びフォトセンサ103bの出力信号に基づいてDCモータ101の動作信号を生成し、ドライバ回路115に動作信号を送り、その後、ドライバ回路115から動作信号に合った電流をDCモータ101に流すことで、排紙ローラ18a及び18bを駆動させるようになっている。」 (2)「【0048】 図3は、本発明の第1実施形態における画像形成装置の駆動装置のブロック構成図である。 【0049】 図3において、駆動装置150は、図1に示す画像形成装置100の何れかの搬送ローラを駆動するモータ及びその制御回路等を含む。 【0050】 駆動装置150において、本体制御部30(図1参照)に設けられた目標駆動信号生成手段110から、制御回路120内の目標位置・速度計算回路121に、回転方向信号と移動パルス数の信号が渡されるようになっている。すなわち、制御回路120内の目標位置・速度計算回路121は、目標駆動信号生成手段110から、目標駆動信号としての回転方向信号と移動パルス数の信号を取得するようになっている。 【0051】 目標位置・速度計算回路121では、得られた情報と図示しないオシレータの時間情報から、目標位置及び目標速度を導出し、位置・速度追従制御器130に信号を伝達するようになっている。 【0052】 また、制御回路120内のモータ位置・速度計算回路122では、2チャンネルフォトセンサとして構成されたフォトセンサ103bにて、エンコーダディスク103aのパルスを計測している。フォトセンサ103b及びエンコーダディスク103aは、2チャンネルロータリエンコーダとして構成されている。 【0053】 エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、本実施形態では100パルスとしている。エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、安価にDCモータ101の出力軸102の回転を検出するために、200パルス以下であることが好ましい。 【0054】 また、エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、ステッピングモータからインナーロータ型のDCブラシレスモータへの置き換えを容易にするためには、12×Nパルス(Nは自然数)又は50×Nパルスとすることが好ましい。 【0055】 ここで、2チャンネルフォトセンサとして構成されたフォトセンサ103bは、2組の発光素子と受光素子を有し、各々のパルス信号位相差が所定量(本実施形態ではπ/2[rad])となるように配置されている。そのため、モータ位置・速度計算回路122ではその位相差を利用して、回転方向を知ることができる。 【0056】 モータ位置・速度計算回路122では、得られた情報と図示しないオシレータの時間情報から、モータ位置及びモータ速度を導出し、位置・速度追従制御器130へと信号を伝達するようになっている。 【0057】 位置・速度追従制御器130では、目標位置とモータ位置が一致するよう、また目標速度とモータ速度が一致するよう制御し、必要に応じてPWM(パルス幅変調)出力、回転方向、スタートストップ、ブレーキといった信号をドライバ回路115へと送るようになっている。なお、位置・速度追従制御器130では、本発明に係る目標位置信号入力手段を構成する。 【0058】 ドライバ回路115は、4象限ドライバとして構成されており、位置・速度追従制御器130から得られた信号及びホールIC116からのホール信号から、モータ電流及びPWM電圧を制御するようになっている。 【0059】 すなわち、駆動装置150においては、制御回路120が、目標駆動信号から単位時間当りの目標回転量及び目標総回転量を求めるとともに、エンコーダディスク103a、フォトセンサ103bからの出力信号から単位時間当りのモータ回転量及びモータ総回転量を求め、その後、目標総回転量とモータ総回転量が等しく、かつ、単位時間当りの目標回転量と単位時間当りのモータ回転量が等しくなるようドライバ回路115への信号を変化させることで、DCモータ101の回転速度を制御するようになっている。」 (3)上記(2)の特に段落【0058】の記載から、ドライバ回路115は、ホールIC116からのホール信号に応じてDCモータ101に電力を供給することが理解できる。 (4)上記(1)の特に段落【0041】ないし【0045】の記載から、エンコーダ103は、エンコーダディスク103a、フォトセンサ103bを有し、フォトセンサ103bはDCモータ101の出力軸102の回転量及び回転方向を示すパルス信号を出力するものであるから、エンコーダ103は、DCモータ101の出力軸102の回転量及び回転方向を表すパルス信号を出力することが理解できる。 (5)上記(2)の特に段落【0050】の記載から、目標駆動信号生成手段110から、制御回路120内の目標位置・速度計算回路121に、回転方向信号と移動パルス数の信号が渡されるようになっており、また、段落【0051】の記載から、目標位置・速度計算回路121では、目標位置及び目標速度を導出するようになっているから、目標駆動信号生成手段110から入力される目標駆動信号からDCモータ101の目標位置及び目標速度が取得されることが理解できる。 (6)上記(1)の特に段落【0052】ないし【0056】の記載から、モータ位置・速度計算回路122は、エンコーダからのパルスを計測し、2チャンネルフォトセンサからのパルス信号位相差から回転方向を知ることができ、得られた情報とオシレータの時間情報からモータ位置及びモータ速度を導出するものであるから、エンコーダ103から出力されたパルス信号から取得されるDCモータ101の出力軸102の回転方向および移動パルスに基づいてDCモータ101の回転位置および回転速度が取得されることが理解できる。 (7)上記(2)の特に段落【0057】の記載から、位置・速度追従制御器130は、目標位置とモータ位置が一致するよう、また目標速度とモータ速度が一致するよう制御し、必要に応じてPWM出力、回転方向といった信号をドライバ回路115へと送るようになっているから、位置・速度追従制御器130は、DCモータの101の目標位置及び目標速度と、DCモータ101の回転位置および回転速度とが一致するように、ドライバ回路115に、PWM出力信号及び回転方向信号を含む制御信号を送信することが理解できる。 2 引用発明 上記1及び図面の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「ホールIC116からのホール信号に応じてDCモータ101に電力を供給するドライバ回路115と、 前記DCモータ101の出力軸102の回転量及び回転方向を表すパルス信号を出力するエンコーダ103と、 目標駆動信号生成手段110から入力される目標駆動信号から取得される前記DCモータ101の目標位置及び目標速度と、前記エンコーダ103から出力された前記パルス信号から取得される前記DCモータ101の出力軸102の回転方向および移動パルスに基づく前記DCモータ101の回転位置および回転速度とが一致するように、前記ドライバ回路115に、PWM出力信号及び回転方向信号を含む制御信号を送信する位置・速度追従制御器130と、 を備える駆動装置。」 3 引用文献2の記載 当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、「モータ駆動制御装置及び方法」に関し、図面とともに次の記載がある。 (1)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1に記載のモータ駆動制御装置においては、ホールセンサエッジ間隔において回転子の回転速度が変化すると回転子の回転位置変化の推定値と実際の回転変化とに誤差が生じ、正確な位相情報を得ることができない。 【0008】 また、特許文献2に記載のモータ駆動制御装置では、ホールセンサエッジ間隔よりも細かな間隔のFG信号を用いるためホールセンサエッジ間隔における回転速度変化にはある程度対応できるが、その構成を実現するためにセンサ信号、FG信号それぞれの計数処理装置やシステムクロック生成手段、FG信号発電機又はインクリメント方式の光学式エンコーダ、FG信号増幅器など装置規模の増大を招き駆動装置のコスト増が懸念される。 【0009】 さらに、特許文献3に記載の角度検出装置では、8つの磁気センサを必要としており、小型モータの場合にはセンサ配置スペース、コスト増が懸念事項として挙げられる。 【0010】 本発明の目的は以上の問題点を解決し、ロータリーエンコーダやFG信号発生器を用いることなく、安価で装置規模が小さく小型化可能であり、センサ信号変化間隔よりも多くの位相情報を有するモータ駆動制御装置及び方法を提供することにある。」 (2)「【0011】 第1の発明に係るモータ駆動制御装置は、複数相のコイルを有するモータの回転子の回転位置に応じた信号レベルを有する複数のセンサ信号に基づいて位相情報信号を発生してモータを駆動制御するモータ駆動制御装置において、 前記複数のセンサ信号を所定の複数のしきい値レベルと比較して位相を検出し、当該検出した位相を示す第1の位相情報信号を出力する第1の位相検出手段と、 前記複数のセンサ信号又はそれに対応する信号どうしを比較して位相を検出し、当該検出した位相を示す第2の位相情報信号を出力する第2位相検出手段と、 前記第1の位相情報信号及び前記第2の位相情報信号に含まれる検出された位相、又は前記第2の位相情報信号に含まれる検出された位相を所定の複数の位相区間に分ける位相分割手段と、 前記所定の複数の位相区間において前記複数のセンサ信号又はそれに対応する複数の信号の中から一つを選択する信号選択手段と、 前記分割された複数の位相区間において前記センサ信号選択手段により選択された前記センサ信号又はそれに対応する信号の信号レベルが前記回転子の所定の位相に応じた所定のしきい値レベルに到達したことを検出することにより、当該検出した位相を示す位相情報信号を出力する第3の位相検出手段とを備えたことを特徴とする。」 (3)「【0035】 次いで、第3の位相検出回路30からの位相情報信号phCと、第1の位相検出回路10及び第2の位相検出回路120からの各位相情報信号PhA,phBとを合成して2相のデジタル信号を出力する合成回路40の一例について以下に説明する。 【0036】 図6は図1、図3a及び図3bの第3の位相検出回路30の動作を示す各信号のタイミングチャートである。図6では、図4の選択信号Xと、電気角30°区間を5等分するようにLV(1)?LV(4)の所定のしきい値レベルを有する第3の位相検出回路30からの第3の位相情報信号phCを位相情報信号ph(1)?ph(4)とした場合を示している。合成回路40は、2種類の出力デジタル信号OUT1,OUT2を出力する。ここで、合成回路40は、位相情報信号ph(1),ph(3),比較結果信号U3,V3,W3を合成してその合成信号を出力デジタル信号OUT1として出力し、位相情報信号ph(2),ph(4),比較結果信号U2,V2,W2を合成してその合成信号を出力デジタル信号OUT2として出力する。これにより、光学エンコーダを備えなくとも周期1/4位相差を有するエンコーダ信号を簡単に得ることが可能となる。」 (4)上記(2)及び(3)並びに図4及び図6の記載から、モータの回転子の回転位置に応じた信号レベルを有する複数のセンサ信号(U1,U1-;V1,V1-;W1,W1-)を変換して、当該センサ信号に対して分解能の高い合成2相エンコーダ信号が得られることが理解できる。 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造、機能又は技術的意義からみて、引用発明における「ホールIC116からのホール信号」は本願発明における「モータから出力される磁極位相信号」に相当し、以下同様に、「DCモータ101」は「モータ」に、「ドライバ回路115」は「モータ駆動部」に、「ホール信号」は「磁極位相信号」に、「目標駆動信号生成手段110」は「上位装置」に、「位置・速度追従制御器130」は「制御部」に、「駆動装置」は「制御装置」にそれぞれ相当する。 また、引用発明における「前記DCモータ101の出力軸102の回転量及び回転方向を表すパルス信号」と本願発明における「前記磁極位相信号を変換して、前記モータの出力軸の回転量及び回転方向を表し、当該磁極位相信号に対して分解能の高い回転位置検出信号」とは「前記モータの出力軸の回転量及び回転方向を表す検出信号」という限りにおいて一致し、引用発明における「エンコーダ103」と本願発明における「回転位置検出部」とは「検出部」という限りにおいて一致する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「モータから出力される磁極位相信号に応じて前記モータに電力を供給するモータ駆動部と、 前記モータの出力軸の回転量及び回転方向を表す検出信号を出力する検出部と、 上位装置から入力される目標駆動信号から取得される前記モータの目標位置及び目標速度と、前記検出部から出力された前記検出信号から取得される前記モータの出力軸の回転方向および移動パルスに基づく前記モータの回転位置および回転速度とが一致するように、前記モータ駆動部に、PWM出力信号及び回転方向信号を含む制御信号を送信する制御部と、 を備える制御装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 検出信号及び検出部に関して、 本願発明においては、「磁極位相信号を変換し」た「当該磁極位相信号に対して分解能が高い」回転位置検出信号を出力する回転位置検出部であるのに対し、 引用発明においては、パルス信号を出力するエンコーダ103であり、パルス信号がホール信号に対して分解能が高いか否か不明である点。 第6 判断 相違点について、判断する。 上記「第4 3(1)ないし(3)」のとおり、引用文献2には、ロータリーエンコーダなどを用いることなく、安価で装置規模が小さく小型化可能であり、センサ信号変化間隔よりも多くの位相情報を有するモータ駆動制御装置を提供するために、モータの回転子の回転位置に応じた信号レベルを有する複数のセンサ信号(U1,U1-;V1,V1-;W1,W1-)を変換して、当該センサ信号に対して分解能の高い合成2相エンコーダ信号が得られるようにした技術が記載されている。ここで、引用文献2に記載された「センサ信号」は本願発明における「磁極位相信号」に相当し、引用文献2に記載された「合成2相エンコーダ信号」は本願発明における「回転位置検出信号」に相当する。 そして、引用発明におけるパルス信号と引用文献2に記載された合成2相エンコーダ信号とは、ともに、モータの回転位置及び回転速度制御を行うために用いることができる信号であるから、引用発明におけるエンコーダ103と引用文献2に記載された技術とはモータの回転位置及び回転速度制御を行うための信号を検出する手段である点で共通しており、また、DCモータの速度制御のための検出信号としてホール信号を用いることもエンコーダ信号を用いることもいずれも一般的であり、さらに、モータ駆動装置において、装置の小型化、簡素化などのために部品点数を減らすことは当業者が当然認識している課題であるところ、引用発明においても同様の課題が内在しており、かかる課題解決のため、引用発明において、引用文献2に記載されるようなセンサ信号を変換して分解能の高い合成2相エンコーダ信号を得る技術を採用して、エンコーダ103を不要にし、エンコーダ103からのパルス信号に代えて、当該変換回路からの合成2相エンコーダ信号を用いて、DCモータ101の回転位置及び回転速度制御を行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 請求人は、令和元年6月24日提出の意見書において、「したがいまして、引用文献1に記載のエンコーダを用いてモータを制御する構成に、引用文献2に記載のホール素子の磁極位相信号に基づいて位相情報信号を発生してモータを駆動制御する構成を適用したとしても、引用文献2にはホール素子の磁極位相信号に応じてモータを制御するのに必要な構成が記載されていないため、補正後の本願請求項1記載の発明のようにブラシレスDCモータの出力軸又は非駆動体に検出装置を備えることなく、位置・ホールド制御をすることは困難であります。」と主張している。 しかしながら、引用文献2には、ホール素子の磁極位相信号を変換して分解能の高い合成2相エンコーダ信号を得ることが記載されており、引用文献2にホール素子の磁極位相信号に応じてモータを制御するのに必要な構成が記載されていないとしても、かかる合成2相エンコーダ信号を、引用文献1に記載されるような2チャンネルロータリエンコーダの出力信号を用いてDCモータ101の回転位置及び回転速度制御を行う装置において、2チャンネルロータリエンコーダの出力信号の代わりに用いることができることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 そして、引用発明は、エンコーダ103からのパルス信号に基づいてDCモータ101を制御するのに必要な構成を備えており、上述のとおり、エンコーダ103からパルス信号に代えて、引用文献2に記載された合成2相エンコーダ信号を用いて、DCモータ101の回転位置及び回転速度制御を行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-25 |
結審通知日 | 2019-10-01 |
審決日 | 2019-10-16 |
出願番号 | 特願2014-105112(P2014-105112) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02P)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 貴俊 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 佐々木 芳枝 |
発明の名称 | 制御装置、駆動装置および画像形成装置 |
代理人 | 酒井 宏明 |