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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1357402 |
審判番号 | 不服2018-15968 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-30 |
確定日 | 2019-11-28 |
事件の表示 | 特願2017- 88390「情報コードおよび情報コード読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-126389〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年5月28日(優先権主張:平成23年6月29日(以下,「優先日」という。))に出願した特願2012-120768号の一部を,平成28年2月9日に新たな特許出願とした特願2016-22392号の一部をさらに,平成29年4月27日に新たな特許出願としたものであって,同日付けで審査請求がなされ,平成30年1月31日付けで拒絶理由通知(同年2月6日発送)がなされ,同年4月6日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年8月27日付けで拒絶査定(同年9月4日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許をすべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成30年11月30日付けで本件審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ, そして,同年12月28日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。 第2 平成30年11月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年11月30日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について ア 本件補正の内容は,平成30年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コードであって、 前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には、前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ、前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ、 前記コード領域は、前記コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコードとして構成され、 前記被覆部は、前記コード領域の外形に合わせた形状であって、当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い、前記位置検出パターンを含んだ当該コード領域を全て被覆するように配置されることを特徴とする情報コード。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) を, 「【請求項1】 第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コードであって、 前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には、前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ、前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ、 前記コード領域は、前記コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコードとして構成され、 前記被覆部は、単色にて前記コード領域の外形に合わせた形状であって、当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い、前記位置検出パターンを含んだ当該コード領域を全て被覆するように配置されることを特徴とする情報コード。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) (なお,下線は,補正箇所を示すものとして,請求人が付与したものである。) に補正することを含むものである。 イ そして,本件補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「被覆部」について「単色にて」と限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 ウ したがって,本件補正の目的は,請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下,「限定的減縮」という。)に該当し,特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると解することができる。 2 独立特許要件 以上のように,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)は,補正前の請求項1に対して,限定的減縮を行ったものと認められる。そこで,本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。 (1)補正後の発明 本件補正発明は,前記「1 補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。 「第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コードであって、 前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には、前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ、前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ、 前記コード領域は、前記コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコードとして構成され、 前記被覆部は、単色にて前記コード領域の外形に合わせた形状であって、当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い、前記位置検出パターンを含んだ当該コード領域を全て被覆するように配置されることを特徴とする情報コード。」 (2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 本願の優先日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成30年1月31日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である,特表平09-509516号公報(平成9年9月22日出願公表。以下,「引用文献」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「図1は、本発明に基づく基体10を概略的に示す。基体10の材料自体は、通常、紙であるが、梱包材、プラスチック、フィルムまたは基体上の明確な機械可読なイメージングを受け取り、保持することができる任意の材料とすることができる。図1において点線11で示される所定の領域において、第1の機械可読識別コード12が基体10上にイメージングされる。第1のコード12はバーコードであるが、その他の機械可読コードとしてもよい。それは、通常、電子ビームやイオン沈積またはインクジェット、電子写真またはエレクトログラフ法のような類似した技法により施されるトナーを用いてイメージングされる。トナーは、電磁エネルギーの第1の所定波長範囲の領域内において基体10のトナーに対照的であるが、第2のコード13の反応に干渉しないスペクトル反応を有するものが好ましい。第1のコード12は、電磁エネルギーの第1の所定波長範囲(例えば、実質的に光の赤外領域)に不透過であり、第1の範囲とは異なる電磁エネルギーの第2の所定波長範囲(例えば、実質的に可視光スペクトル)には透過である。」(第10頁17行?第11頁2行) B 「 図6は、本発明に基づく他の例示的な実施態様を示す。この実施態様において、図1のものと同じ構成要素には同じ参照符号が付されている。図6の実施態様では、基体10は、より多くの情報を小さい領域の中に詰め込むように設計されていない(ただし、これは図1に示す2つのバーコード12、13を設けた後、後述するようにこれらを重ねることによって十分に達成することができる)。むしろ、図6の実施態様の主要な機能は、バーコード12が「不可視」となるようにバーコード12を隠す機密保護機能を提供することである。図1の実施態様では、機密保護機能がそこでも提供されるように、バーコード13が実質的にバーコード12を「隠す」が、上部バーコード13は容易に見ることができる。図6の実施態様では、バーコード12はまったく認識できない。 図6の実施態様では、実質的に完全にバーコード12および所定領域11を被覆するオーバーレイ27が設けられ、実際に基体10の重ね合わせ領域28を被覆する。バーコード12は図1に記載のとおりであるが、機密保護27ブロックという形式を取るオーバーレイは、コード12が不透過である光の波長に透過であり、電磁エネルギーの第2の所定波長には不透過であるトナーにより構成する。この実施態様では、ブロック27がコード12を隠すのに十分に不透明の物である限り、スペクトルの可視領域内で透過である必要はない。」(第13頁16行?第14頁5行) C 本発明の他の変更態様を示す図1と同様の図である【図6】から,“点線で示される所定の領域11は,第1の機械可読識別コード12領域の外形に合わせた形状であり,オーバーレイ27の外形となる四辺が前記第1の機械可読識別コード12領域の四辺に沿い,前記第1の機械可読識別コード12領域を全て被覆する”態様が読み取れる。 ここで,上記引用文献に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの「所定の領域において、第1の機械可読識別コード12が基体10上にイメージングされる」との記載,上記Aの「第1のコード12は、電磁エネルギーの第1の所定波長範囲(例えば、実質的に光の赤外領域)に不透過であり、第1の範囲とは異なる電磁エネルギーの第2の所定波長範囲(例えば、実質的に可視光スペクトル)には透過である」との記載,上記Bの「図6は、本発明に基づく他の例示的な実施態様を示す。この実施態様において、図1のものと同じ構成要素には同じ参照符号が付されている」との記載,及び上記Bの「バーコード12は図1に記載のとおりである」との記載からすると,引用文献には,図6の実施態様において,“電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には不透過であるが,第1の範囲とは異なる電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には透過である第1の機械可読識別コード12”が記載されている。 (イ)上記(ア)の検討内容,上記Bの「図6の実施態様の主要な機能は、バーコード12が「不可視」となるようにバーコード12を隠す機密保護機能を提供すること…(中略)…図6の実施態様では、バーコード12はまったく認識できない」との記載,及び上記Bの「図6の実施態様では、実質的に完全にバーコード12および所定領域11を被覆するオーバーレイ27が設けられ、実際に基体10の重ね合わせ領域28を被覆する。バーコード12は図1に記載のとおりであるが、機密保護27ブロックという形式を取るオーバーレイは、コード12が不透過である光の波長に透過であり、電磁エネルギーの第2の所定波長には不透過であるトナーにより構成する」との記載からすると,引用文献には,“第1の機械可読識別コード12を「不可視」となるように隠し,まったく認識できないようにするものであって,光の赤外領域には透過であるが,可視光スペクトルには不透過であるオーバーレイ27が設けられ”る態様が記載されている。 (ウ)上記(ア)の検討内容,上記Aの「第1のコード12はバーコードであるが、その他の機械可読コードとしてもよい」との記載,及び上記Bの「バーコード12は図1に記載のとおりである」との記載からすると,引用文献には,図6の実施態様において,“第1の機械可読識別コード12は,バーコードであるが,その他の機械可読コードとしてもよい”ものである態様が記載されている。 (エ)上記(ア)の検討内容,上記Bの「図6の実施態様では、実質的に完全にバーコード12および所定領域11を被覆するオーバーレイ27が設けられ、実際に基体10の重ね合わせ領域28を被覆する」との記載,及び上記Cの“点線で示される所定の領域11は,第1の機械可読識別コード12領域の外形に合わせた形状であり,オーバーレイ27の外形となる四辺が前記第1の機械可読識別コード12領域の四辺に沿い,前記第1の機械可読識別コード12領域を全て被覆する”態様からすると,引用文献には,“オーバーレイ27は,第1の機械可読識別コード12領域の外形に合わせた形状であり,該オーバーレイ27の外形となる四辺が前記第1の機械可読識別コード12領域の外形の四辺に沿い,前記第1の機械可読識別コード12領域を全て被覆するものであ”る態様が記載されている。 以上,(ア)ないし(エ)で指摘した事項を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には不透過であるが,第1の範囲とは異なる電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には透過である第1の機械可読識別コード12であって, 前記第1の機械可読識別コード12を「不可視」となるように隠し,まったく認識できないようにするものであって,前記電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には透過であるが,前記電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には不透過であるオーバーレイ27が設けられ, 前記第1の機械可読識別コード12は,バーコードであるが,その他の機械可読コードとしてもよいものであり, 前記オーバーレイ27は,第1の機械可読識別コード12領域の外形に合わせた形状であり,該オーバーレイ27の外形となる四辺が前記第1の機械可読識別コード12領域の外形の四辺に沿い,前記第1の機械可読識別コード12領域を全て被覆するものである ことを特徴とする第1の機械可読識別コード12。 (3)本件補正発明と引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「電磁エネルギーの第2の所定波長範囲」,「電磁エネルギーの第1の所定波長範囲」,及び「第1の機械可読識別コード12」は,本件補正発明の「第1波長帯の光」,「第2波長帯の光」,及び「情報コード」に対応する。そして,引用発明の「第1の機械可読識別コード12」は,「バーコードであるが,その他の機械可読コードとしてもよいものであ」るところ,バーコードは,明色の反射特性を示す白線と暗色の反射特性を示す黒線とがコード領域内に複数配列されているものである。そうすると,引用発明の「第1の機械可読識別コード12」は,電磁エネルギーの第2の所定波長範囲とは異なる電磁エネルギーの第1の所定波長範囲が照射されたときに,第1の所定波長範囲には不透過であることから,明色の反射特性を示す白線と暗色の反射特性を示す黒線が認識されバーコードとして読み取ることができるものであるといえる。してみると,引用発明の「電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には不透過であるが,第1の範囲とは異なる電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には透過である第1の機械可読識別コード12」は,本件補正発明の「第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コード」に相当するといえる。 (イ)引用発明の「オーバーレイ27」は,本件補正発明の「被覆部」に対応付けられるものであるところ,引用発明の「オーバーレイ27」は,第1の機械可読識別コード12を「不可視」となるように隠し,まったく認識できないようにするものであることから,電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には透過であるが,電磁エネルギーの第2の所定波長範囲を遮光し,第1の機械可読識別コード12を解読不能とするものであるといえる。してみると,引用発明の「前記第1の機械可読識別コード12を「不可視」となるように隠し,まったく認識できないようにするものであって,電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には透過であるが,電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には不透過であるオーバーレイ27が設けられ」ることは,本件補正発明の「前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には、前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ、前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ」ることに相当する。 (ウ)引用発明の「前記オーバーレイ27は,第1の機械可読識別コード12領域の外形に合わせた形状であり,該オーバーレイ27の外形となる四辺が前記第1の機械可読識別コード12領域の外形の四辺に沿い,前記第1の機械可読識別コード12領域を全て被覆する」ことは,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「前記被覆部は、」「前記コード領域の外形に合わせた形状であって、当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い、前記位置検出パターンを含んだ当該コード領域を全て被覆する」点で共通する。 イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) 第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに,明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コードであって, 前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には,前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ,前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ, 前記被覆部は,前記コード領域の外形に合わせた形状であって,当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い,当該コード領域を全て被覆するように配置されることを特徴とする情報コード。 (相違点1) 本件補正発明の「情報コード」が「コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコード」であるのに対して,引用発明の「第1の機械可読識別コード12」は,「バーコードであるが,その他の機械可読コードとしてもよいもの」である点。 (相違点2) 本件補正発明の「被覆部」が,「単色」であるのに対して,引用発明の「オーバーレイ27」は,「単色」であると明記されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点1及び相違点2について検討する。 ア 相違点1について 本願の発明の詳細な説明の段落【0083】に,「コード領域20は、QRコードと同様に明色モジュールおよび暗色モジュールとが二次元的に複数配列されて構成されることに限らず、一次元コード(バーコード等)および二次元コード(データマトリックスコード、マキシコード等)などの他のコード種別と同様に構成されてもよい」と記載されるように,本願発明の「情報コード」は,バーコード等の他の情報コードに応用することを否定しないものである。一方,引用発明の「第1の機械可読識別コード12」は,「バーコードであるが,その他の機械可読コードとしてもよいもの」であり,その他の機械可読コードとして,「QRコード」を採用することは,当業者が必要に応じて選択可能な設計的事項に過ぎないものである。そして,QRコードが「コード領域の三隅に位置検出パターンが配置される」構成であることは,当該技術分野における技術常識である。 してみると,引用発明の「第1の機械可読識別コード12」として,「コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコード」を採用し,本件補正発明と同様の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 よって,相違点1は格別なものではない。 イ 相違点2について 引用発明の「オーバーレイ27」は,「第1の機械可読識別コード12を「不可視」となるように隠し,まったく認識できないようにするものであって,前記電磁エネルギーの第1の所定波長範囲には透過であるが,前記電磁エネルギーの第2の所定波長範囲には不透過である」ものであることから,これを複数色のような光学特性が異なるものとすることは,通常想起し得ず,これを実現するために,例えば,バーコード等の第1の機械可読識別コード12と同色の単色にて第1の機械可読識別コード12の外形に合わせた形状を完全に被覆するように構成することは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。 してみると,引用発明の「オーバーレイ27」を単色にて構成し,本件補正発明と同様の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 よって,相違点2は格別なものではない。 (5)小括 上記で検討したごとく,相違点1及び相違点2は,いずれも格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,上記引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.むすび 以上のように,上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 平成30年11月30日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「第1波長帯の光と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示す明色モジュールと暗色の反射特性を示す暗色モジュールとがコード領域内に複数配列される情報コードであって、 前記コード領域のうち遮光されることで当該情報コードが解読不能となる所定領域上には、前記第2波長帯の光が照射されたときに当該コード領域を構成する複数の前記明色モジュールおよび前記暗色モジュールからの反射光を透過させ、前記第1波長帯の光の透過を妨げる被覆部が設けられ、 前記コード領域は、前記コード領域の三隅に位置検出パターンが配置されるQRコードとして構成され、 前記被覆部は、前記コード領域の外形に合わせた形状であって、当該被覆部の外形となる四辺が前記コード領域の外形の四辺に沿い、前記位置検出パターンを含んだ当該コード領域を全て被覆するように配置されることを特徴とする情報コード。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特表平9-509516号公報 3 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「第2 平成30年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記「第2 平成30年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」で検討した本件補正発明から「単色にて」を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,上記「第2 平成30年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」の「(3)本件補正発明と引用発明との対比」及び「(4)当審の判断」に記載したとおり,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-17 |
結審通知日 | 2019-09-24 |
審決日 | 2019-10-09 |
出願番号 | 特願2017-88390(P2017-88390) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 甲斐 哲雄 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 田中 秀人 |
発明の名称 | 情報コードおよび情報コード読取装置 |
代理人 | 田下 明人 |