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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1357408
審判番号 不服2019-5418  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-23 
確定日 2019-11-28 
事件の表示 特願2016-211629号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-131628号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月28日(優先権主張 平成28年1月27日)の出願であって、平成30年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月11日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年1月23日付け(謄本送達日:同年2月5日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成31年4月23日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成31年4月23日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年10月11日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技演出を表示可能な表示装置と、
通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態において入賞容易性が低い第1状態から入賞容易性が高い第2状態に変換可能な特別入賞装置と、
前記通常遊技状態および前記特別遊技状態において入賞容易性が変換不可能な一般入賞口と、
前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段と、
を含む遊技機。」とあったものを、

「遊技演出を表示可能な表示装置と、
通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態において入賞容易性が低い第1状態から入賞容易性が高い第2状態に変換可能な特別入賞装置と、
前記通常遊技状態および前記特別遊技状態において入賞容易性が変換不可能な一般入賞口と、
前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段と、
を含む遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「特別入賞演出表示」に関して、「前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示」とする補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「一般入賞演出表示」に関して、「前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示」とする補正。

2 本件補正の目的及び根拠
(1)ア 上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【1125】ないし【1137】、図171及び図172等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「特別入賞演出表示」を「前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する」ものから「前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する」ものに限定するものである。
イ 上記1(2)イの補正は、当初明細書等の【1125】ないし【1137】、図171及び図172等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「一般入賞演出表示」を「前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する」ものから「前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する」ものに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしEは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技演出を表示可能な表示装置と、
B 通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態において入賞容易性が低い第1状態から入賞容易性が高い第2状態に変換可能な特別入賞装置と、
C 前記通常遊技状態および前記特別遊技状態において入賞容易性が変換不可能な一般入賞口と、
D 前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段と、
E を含む遊技機。」

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-215370号公報(平成25年10月24日出願公開、以下「引用例1」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域に設けられた入賞領域への遊技球の入賞に基づき、所定数の遊技球を払い出す遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
始動入賞口への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備え、変動表示ゲームの結果が予め定められた特別結果となった場合に遊技者に遊技価値を付与する特別遊技状態を発生する遊技機が知られている。このような遊技機において、特定の箇所を遊技球が通過することでポイントが溜まり、ポイントを遊技者に報知するとともにポイントに応じてリーチなどの演出が異なるようにした遊技機が開示されている・・・・・。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定の箇所を遊技球が通過しても遊技者に付与されるのは演出上の価値であるポイントであり、多量の遊技球の獲得を目指して遊技している遊技者にとってはあまり意味のあるものではなく、遊技者に十分な満足感を与えることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、遊技領域に設けられた入賞領域への遊技球の入賞に基づき、所定数の遊技球を払い出す遊技機において、遊技球の獲得に対する満足感を与え、遊技の興趣を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、遊技領域に設けられた入賞領域への遊技球の入賞に基づき、所定数の遊技球を払い出す遊技機において、
前記入賞領域への遊技球の入賞に関する情報を報知可能な入賞情報報知手段を備え、
前記入賞領域には、
遊技球の入賞に基づき、表示装置で複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームの開始条件が成立する始動入賞口と、
前記変動表示ゲームの結果が予め定められた特別結果となった場合に発生する特別遊技状態において遊技球の入賞が容易な状態とされる特別変動入賞装置と、
遊技球の入賞に基づき所定数の遊技球の払い出しのみが行われる一般入賞口と、が含まれ、
前記入賞情報報知手段は、
前記特別遊技状態における前記特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への遊技球の入賞に関する情報を報知可能であることを特徴とする。
【0007】
ここで、入賞に関する情報を報知するとは、入賞した遊技球数や、入賞した遊技球に基づき払い出された遊技球数を直接的に報知することや、入賞数や賞球数を直接的に報知せずに、その量を段階的に報知(例えば100個以下、100?199個、200?299個、300以上の何れであるかを報知又はキャラクタや表示態様の変化により報知)することなどである。また、所定の入賞領域は、特別変動入賞装置以外の入賞領域のうち一つでも良いし複数でも良い。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、従来入賞したことも気づきにくい特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への入賞に関する情報を表示することで、当該入賞領域に入賞させようと遊技者は思うようになるので興趣を高めることができる。また所定の入賞領域に入賞したことを遊技者に認識させることができ、特別遊技状態における特別変動入賞装置以外の入賞領域への入賞による賞球の獲得に対して満足感を与え、より遊技の興趣を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊技機であって、前記所定の入賞領域は、前記一般入賞口であることを特徴とする。
【0010】
ここで、一般入賞口を複数備える場合は、全ての一般入賞口を所定の入賞領域としても良いし、一部の一般入賞口を所定の入賞領域としても良い。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、変動表示ゲームとの関連がなく遊技者の関心が低い一般入賞口への入賞に関する情報を表示することで、当該一般入賞口への入賞に対する関心を持たせることができ、従来の遊技機にはない興趣を持たせることができる。また一般入賞口に入賞したことを遊技者に認識させることができ、特別遊技状態における一般入賞口への入賞による賞球の獲得に対して満足感を与え、より遊技の興趣を高めることができる。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の遊技機の説明図である。
【0023】
本実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は本体枠(外枠)11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図2参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠(内枠)12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15が取り付けられている。
・・・略・・・
【0028】
遊技盤30の表面には、ガイドレール31で囲われた略円形状の遊技領域32が形成されている。遊技領域32は、遊技盤30の四隅に各々設けられた樹脂製のサイドケース33及びガイドレール31に囲繞されて構成される。遊技領域32には、ほぼ中央に表示装置41を備えたセンターケース40が配置されている。表示装置41は、センターケース40に設けられた凹部に、センターケース40の前面より奥まった位置に取り付けられている。即ち、センターケース40は表示装置41の表示領域の周囲を囲い、表示装置41の表示面よりも前方へ突出するように形成されている。
【0029】
表示装置41は、例えば、LCD(液晶表示器)、CRT(ブラウン管)等の表示画面を有する装置で構成されている。表示画面の画像を表示可能な領域(表示領域)には、複数の識別情報(特別図柄)や特図変動表示ゲームを演出するキャラクタや演出効果を高める背景画像等の遊技に関する情報が表示される。表示装置41の表示画面においては、識別情報として割り当てられた複数の特別図柄が変動表示(可変表示)されて、特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームが行われる。また、表示画面には遊技の進行に基づく演出のための画像(例えば、大当り表示画像、ファンファーレ表示画像、エンディング表示画像等)が表示される。
・・・略・・・
【0030】
センターケース40の下方には、第1特図変動表示ゲームの開始条件を与える入賞領域をなす始動入賞口36(第1始動入賞口)が設けられ、その下方には特図変動表示ゲームの結果によって遊技球を受け入れない状態と受け入れ易い状態とに変換可能な入賞領域をなす特別変動入賞装置(大入賞口)38が配設されている。さらに特別変動入賞装置38の下方には、入賞口などに入賞しなかった遊技球を回収するアウト口30aが設けられている。
【0031】
特別変動入賞装置38は、上端側が手前側に倒れる方向に回動して開放可能になっているアタッカ形式の開閉扉38cを有しており、補助遊技としての特図変動表示ゲームの結果如何によって大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な状態)に変換する。即ち、特別変動入賞装置38は、例えば、駆動装置としての大入賞口ソレノイド38b(図8参照)により駆動される開閉扉38cによって開閉される大入賞口を備え、特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与するようになっている。なお、大入賞口の内部(入賞領域)には、当該大入賞口に入った遊技球を検出する検出手段としてのカウントスイッチ38a(図8参照)が配設されている。
【0032】
遊技領域32に臨むセンターケース40の右側には、普図変動表示ゲームの開始条件を与える普通図柄始動ゲート(普図始動ゲート)34と、第2特図変動表示ゲームの開始条件を与える入賞領域をなす普通変動入賞装置37(第2始動入賞口)が設けられている。また、普通変動入賞装置37の左下方には遊技球の入賞に基づき所定数の遊技球の払い出しのみが行われる入賞領域をなす一般入賞口35が配置されている。」

(ウ)「【0045】
図6には、特別遊技状態における報知例を示した。特別遊技状態では表示装置41において、大当り図柄(特別結果の種類)、実行中のラウンド数、当該ラウンドで特別変動入賞装置38に入賞した遊技球の数であるカウント数が表示される。さらに、実行中の特別遊技状態で特別変動入賞装置38への入賞に基づき払い出された遊技球(賞球)の数を大入賞口ボーナスとして表示し、実行中の特別遊技状態で一般入賞口35への入賞に基づき払い出された遊技球(賞球)の数をおまけボーナスとして表示する。
【0046】
このように、従来入賞したことも気づきにくい一般入賞口35への入賞に関する情報を表示することで、当該入賞領域に入賞させようと遊技者は思うようになるので興趣を高めることができる。また一般入賞口35に入賞したことを遊技者に認識させることができ、特別遊技状態における特別変動入賞装置38以外の入賞領域への入賞による賞球の獲得に対して満足感を与え、より遊技の興趣を高めることができる。」

(エ)「【0168】
〔表示カウントアップ処理〕
図24には、一般入賞口35への入賞に関する処理である上述の入賞数カウンタ更新処理1における表示カウントアップ処理(ステップS256)を示した。なお、特別変動入賞装置38への入賞に関する処理である後述するカウントスイッチ監視処理(図30参照)においてもこの表示カウントアップ処理を行う。
【0169】
この表示カウントアップ処理においては、まず、大入賞口(特別変動入賞装置38)への入賞に基づく処理の実行中であるかを判定する(ステップS271)。大入賞口への入賞に基づく処理の実行中でない場合(ステップS271;No)、すなわち一般入賞口35への入賞に基づく処理の実行中である場合は、一般入賞口カウント表示更新の準備をし(ステップS272)、コマンド設定処理(図22参照)を行い(ステップS274)、表示カウントアップ処理を終了する。また、大入賞口への入賞に基づく処理の実行中である場合(ステップS271;Yes)は大入賞口カウント表示更新の準備をし(ステップS273)、コマンド設定処理を行い(ステップS274)、表示カウントアップ処理を終了する。
【0170】
この処理により、特別遊技状態における特別変動入賞装置38への入賞に関する情報(入賞数や賞球数に関する情報)である大入賞口カウントコマンドや、特別遊技状態及び時短状態における一般入賞口35への入賞に関する情報(入賞数や賞球数に関する情報)である一般入賞カウントコマンドが演出制御装置300に送信されるようになる。演出制御装置300ではこの情報に基づき、図6や図7に示したような表示装置41での報知や、一般入賞口35に設けた装飾装置80の制御を行う。」

(オ)「【0352】
〔入賞情報報知処理〕
図78には、上述の入賞情報報知処理(ステップC24)を示した。この入賞情報報知処理では、まず、大入賞口カウントコマンドを受信したかをチェックする(ステップC41)。大入賞口カウントコマンドは、特別遊技状態中での特別変動入賞装置38への遊技球の入賞に基づき表示カウントアップ処理(図24参照)において設定され、演出制御装置300に送信されるコマンドである。
【0353】
この大入賞口カウントコマンドを受信していない場合(ステップC42;No)は、一般入賞カウントコマンドを受信したかをチェックする(ステップC45)。また、大入賞口カウントコマンドを受信した場合(ステップC42;Yes)は、大入賞口ボーナスカウンタを更新する(ステップC43)。大入賞口ボーナスカウンタは、特別変動入賞装置38への入賞により発生した賞球数をカウントするカウンタであり、この処理により大入賞口カウントコマンドの受信毎に対応する賞球数が加算される。
【0354】
その後、大入賞口ボーナス表示を更新し(ステップC44)、一般入賞カウントコマンドを受信したかをチェックする(ステップC45)。大入賞口ボーナス表示の更新により、大入賞口ボーナス表示として大入賞口ボーナスカウンタの値が表示されるようになり、図6に示したように実行中の特別遊技状態で特別変動入賞装置38への入賞に基づき払い出された遊技球(賞球)の数が報知されるようになる。
【0355】
そして、一般入賞カウントコマンドを受信した場合(ステップC46;Yes)は、おまけボーナスカウンタを更新する(ステップC47)。おまけボーナスカウンタは、一般入賞口35への入賞により発生した賞球数をカウントするカウンタであり、この処理により一般入賞カウントボーナスコマンドの受信毎に対応する賞球数が加算される。
【0356】
次に、SPリーチ演出画像の表示中であるかを判定する(ステップC48)。SPリーチ演出画像とは、図7(d)、(e)に示すようなSPリーチで表示される画像であり、このSPリーチ演出画像の表示中でない場合(ステップC48;No)は、おまけボーナス表示を更新し(ステップC49)、特別遊技状態の終了タイミングであるかを判定する(ステップC56)。おまけボーナス表示の更新により、おまけボーナス表示としておまけボーナスカウンタの値が表示されるようになり、図6や図7に示したように特別遊技状態や時短状態で一般入賞口35への入賞に基づき払い出された遊技球(賞球)の数が報知されるようになる。
【0357】
また、SPリーチ演出画像の表示中である場合(ステップC48;Yes)は、報知保留カウンタを更新し(ステップC49)、特別遊技状態の終了タイミングであるかを判定する(ステップC56)。報知保留カウンタは、一般入賞口35への入賞により発生した賞球数をすぐに報知しない場合に、未だ報知していない賞球数を報知保留値としてカウントするカウンタである。このようにSPリーチ演出画像の表示中である場合は、おまけボーナス表示の更新を行わないので、図7(f)に示すように賞球数の報知が保留される。」

(カ)「【図5】

【図6】



(キ)「【図9】



(ク)「【図78】



(ケ)上記(イ)の【0023】、【0028】及び【0029】の下線を付した箇所の記載からみて、遊技機10は、遊技の進行に基づく演出のための画像を表示する表示装置41を含むものと認められる。

(コ)上記(イ)の【0023】、【0028】、【0030】及び【0031】の下線を付した箇所の記載からみて、遊技機10は、遊技球を受け入れない状態と受け入れ易い状態とに変換可能な入賞領域をなし、特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開いた状態(遊技者にとって有利な状態)に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせる特別変動入賞装置38を含むものと認められる。

(サ)上記(イ)の【0023】、【0028】及び【0032】の下線を付した箇所の記載からみて、遊技機10は、遊技球の入賞に基づき所定数の遊技球の払い出しのみが行われる一般入賞口35を含むものと認められる。また、上記(カ)の図5及び図6の符号「35」が付された一般入賞口の図示より、一般入賞口35は、入賞容易性が変換可能な可動部材、所謂チューリップ等を看取できないとともに、入賞容易性が変換可能であれば「普通変動入賞装置37」のように「変動」入賞口のような表現をすることが技術常識であるから、一般入賞口35は、入賞容易性が変換不可能なものであると認められる。

(シ)上記(キ)の遊技機の制御系の構成例を示すブロック図である図9の記載からみて、遊技機10は、演出制御装置300を含むものと認められる。

(ス)上記(ア)ないし(シ)からみて、引用例1には、次の発明が記載されている。なお、a1ないしe1については本願補正発明のAないしEに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a1 遊技の進行に基づく演出のための画像を表示する表示装置41(上記(ケ))と、
b1 遊技球を受け入れない状態と受け入れ易い状態とに変換可能な入賞領域をなし、特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開いた状態(遊技者にとって有利な状態)に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせる特別変動入賞装置38(上記(コ))と、
c1 遊技球の入賞に基づき所定数の遊技球の払い出しのみが行われ入賞容易性が変換不可能な一般入賞口35(上記(サ))と、
d1’特別遊技状態における特別変動入賞装置38への入賞数や賞球数に関する情報である大入賞口カウントコマンドや、特別遊技状態及び時短状態における一般入賞口35への入賞数や賞球数に関する情報である一般入賞カウントコマンドが送信され、この情報に基づき、表示装置41での報知の制御を行う演出制御装置300(【0170】)であって、特別遊技状態で、特別変動入賞装置38への入賞に基づき、すなわち大入賞口カウントコマンドの受信毎に、対応する賞球数を加算して大入賞口ボーナスとして表示装置41に更新表示し、一般入賞口35への入賞に基づき、すなわち一般入賞カウントボーナスコマンドの受信毎に対応する賞球数を加算しておまけボーナスとして表示装置41に更新表示する(【0045】、【0353】ないし【0356】)、演出制御装置300(上記(シ))と、
e1 を含む遊技機10(【0023】)。」(以下「引用発明」という。)

イ 優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-180041号公報(平成25年9月12日出願公開、以下「引用例2」という。)には、パチンコ遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は遊技球が始動口に入球した場合に大当りであるか否かが判定されるパチンコ遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記パチンコ遊技機には特別入球口を備えたものがある。この特別入球口は遊技球が入球不能な閉鎖状態および入球可能な開放状態相互間で切換えられるものであり、遊技球が始動口に入球したことで大当りと判定された場合には特別入球口を開放状態とする大当り遊技が行われる。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には表示器に獲得球数を表示することが記載されている。この獲得球数は大当り遊技中に遊技球が始動口および特別入球口を含む全ての入球口に入球したことで賞球払出し装置から遊技者に賞品として払出される遊技球の総数であり、遊技者は獲得球数の表示から大当り遊技中に獲得した遊技球の個数を知ることができる。この特許文献1は大当り遊技中の獲得球数を遊技者に報知するだけでのものあり、遊技内容が単調である。
・・・略・・・
【発明の効果】
・・・略・・・
【0007】
大当り遊技中に特別入球口を狙って遊技球が発射されている場合には遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球可能となり、遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球した場合には賞球払出し装置から遊技球が賞品として払出されることで遊技者が遊技球を獲得する。この普通入球口は遊技者が始動口を狙って遊技球を第1の勢いで発射している場合に遊技球が入球不能となり、遊技者が始動口から特別入球口に狙いを変えて遊技球を第2の勢いで発射することで始めて遊技球が入球可能となるものであり、遊技者は大当り遊技中に普通入球口に遊技球が入球したことで遊技球を獲得した場合に遊技球をおまけと感じる。しかも、大当り遊技中に遊技球が普通入球口に入球した場合には遊技球が普通入球口に入球したとわざわざ報知されるので、遊技球をおまけとして獲得したと遊技者に明確に感じさせることができる。この大当り遊技中には遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球する毎に表示器の獲得球数の表示が更新されるので、遊技者は大当り遊技中に遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球したことで獲得した合計の獲得球数を表示器の獲得球数の表示から知ることができる。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
・・・略・・・
【0026】
特別入賞口41には、図2に示すように、扉43が装着されている。この扉43は下端部の水平な軸44を中心に回動可能にされたものであり、特別入賞口ソレノイド45(図3参照)の出力軸に連結されている。この扉43は特別入賞口ソレノイド45の電気的なオフ状態で垂直な閉鎖状態となることで特別入賞口41の前面を遊技球が入賞不能に閉鎖するものであり、特別入賞口ソレノイド45の電気的なオン状態では遊技盤16の前面に対して前へ水平に突出した開放状態となり、扉43の開放状態では遊技球が扉43に乗って特別入賞口41内に前面から入賞可能となる。
・・・略・・・
【0069】
・・・略・・・
[2-5]大当り遊技演出処理
図19はステップS212の大当り遊技演出処理であり、演出制御回路90のCPU91はステップS231でRAM93に大当り遊技開始コマンドが記録されているか否かを判断する。ここでRAM93に大当り遊技開始コマンドが記録されていないと判断した場合にはステップS235へ移行し、RAM93に大当り遊技開始コマンドが記録されていると判断した場合にはステップS232へ移行する。
【0070】
CPU91はステップS232へ移行すると、表示制御回路100に再生開始コマンドを送信する。この表示制御回路100のVROMには大当り遊技演出用のビデオデータが予め記録されており、表示制御回路100のVDPは再生開始コマンドを受信した場合にはVROMから大当り遊技演出用のビデオデータを検出し、ビデオデータの検出結果を再生開始することで装飾図柄表示器56に大当り遊技演出の映像を表示開始する。図20の(a)は大当り遊技演出の映像であり、大当り遊技演出の映像は恐竜が前進する内容に設定されている。
【0071】
CPU91はステップS232で表示制御回路100に再生開始コマンドを送信すると、ステップS233で表示制御回路100に総数表示開始コマンドを送信する。そして、ステップS234でRAM93から大当り遊技開始コマンドを消去し、ステップS235へ移行する。この表示制御回路100のVDPは総数表示開始コマンドを受信した場合にはVROMから総数表示開始コマンドに応じた画像データを検出し、画像データの検出結果を再生開始することで装飾図柄表示器56に獲得球数の映像を表示開始する。
【0072】
図20の(a)は獲得球数の映像であり、獲得球数の映像は大当り遊技が開始されてから終了するまでの大当り遊技中に継続的に表示される。この獲得球数の映像は大当り遊技中に遊技球が特別入賞口41内および特定普通入賞口47内に入賞したことで賞球払出し装置52から上皿4内に払出された遊技球の総数を遊技者に報知するものであり、大当り遊技演出の映像の前方に重ねて表示される。この獲得球数の映像は文字(獲得球数 ****個)からなるものであり、総数表示開始コマンドを受信した場合には(****個)として(0000個)が表示される。
【0073】
CPU91はステップS235へ移行すると、RAM93に総数コマンドが記録されているか否かを判断する。ここでRAM93に総数コマンドが記録されていないと判断した場合にはステップS239へ移行し、RAM93に総数コマンドが記録されていると判断した場合にはステップS236へ移行する。ここで総数表示変更コマンドを設定し、ステップS237で表示制御回路100に総数表示変更コマンドの設定結果を送信する。この総数表示変更コマンドは総数コマンドで通知されたカウンタMN2の値の加算結果を表示することを指令するものであり、CPU91はステップS237で総数表示変更コマンドの設定結果を送信した場合にはステップS238でRAM93から総数コマンドを消去し、ステップS239へ移行する。
【0074】
表示制御回路100のVDPは総数表示変更コマンドの設定結果を受信した場合にはVROMから総数表示変更コマンドの設定結果に応じた画像データを検出し、画像データの検出結果を再生することでカウンタMN2の値の加算結果を装飾図柄表示器56に数字で表示する。このカウンタMN2の値の加算結果は獲得球数の映像のうち(****個)を変更することで表示されるものであり(図20のb参照)、大当り遊技中には遊技球が特別入賞口41内に入賞する毎および特定普通入賞口47内に入賞する毎のそれぞれに獲得球数の映像が(15)だけカウントアップされる。
【0075】
CPU91はステップS239へ移行すると、RAM93におまけ入賞コマンドが記録されているか否かを判断する。ここでRAM93におまけ入賞コマンドが記録されていないと判断した場合にはステップS242へ移行し、RAM93におまけ入賞コマンドが記録されていると判断した場合にはステップS240で表示制御回路100におまけ入賞表示コマンドを送信する。そして、ステップS241でRAM93からおまけ入賞コマンドを消去し、ステップS242へ移行する。
【0076】
表示制御回路100のVDPはおまけ入賞表示コマンドを受信した場合にはVROMからおまけ入賞表示コマンドに応じた画像データを検出し、画像データの検出結果を再生することで装飾図柄表示器56におまけ入賞の映像を一定時間(2.0×1000msec)だけ表示する。図20の(c)はおまけ入賞の映像である。このおまけ入賞の映像は文字(+15個)からなるものであり、大当り遊技演出の映像の前方に重ねて表示される。即ち、大当り遊技中には遊技球が特定普通入賞口47内に入賞する毎にランプカバー50が点滅することで遊技球が特定普通入賞口47内に入賞したと遊技者に報知され、装飾図柄表示器56におまけ入賞の映像が表示されることで15個の遊技球が払出されると遊技者に報知される。
【0077】
CPU91はステップS242へ移行すると、RAM93に大当り入賞コマンドが記録されているか否かを判断する。ここでRAM93に大当り入賞コマンドが記録されていないと判断した場合にはステップS245へ移行し、RAM93に大当り入賞コマンドが記録されていると判断した場合にはステップS243で表示制御回路100に大当り入賞表示コマンドを送信する。そして、ステップS244でRAM93から大当り入賞コマンドを消去し、ステップS245へ移行する。
【0078】
表示制御回路100のVDPは大当り入賞表示コマンドを受信した場合にはVROMから大当り入賞表示コマンドに応じた画像データを検出し、画像データの検出結果を再生することで大当り遊技演出の映像の前方に重ねて大当り入賞の映像を一定時間(1.0×1000msec)だけ表示する。図20の(d)は大当り入賞の映像である。この大当り入賞の映像はおまけ入賞の映像と同一の文字(+15個)からなるものであり、文字(+15個)のサイズと色彩とフォントのそれぞれがおまけ入賞の映像と同一に設定され、文字(+15個)の表示位置がおまけ入賞の映像と異なる位置に設定されている。即ち、大当り遊技中には遊技球が特別入賞口41内に入賞する毎に大当り入賞の映像が表示されることで遊技球が特別入賞口41内に入賞したと遊技者に報知されると共に15個の遊技球が払出されると遊技者に報知される。
・・・略・・・
【0084】
上記実施例1においては、遊技球が特定普通入賞口47内に入賞した場合には特別入賞口41内に入賞した場合とは異なる数の遊技球を賞球払出し装置52から上皿4内に払出しても良い。この場合にはおまけ入賞の映像として(+10個)等の遊技球の払出し数に応じた映像を表示することが好ましい。」
(ウ)「【図20】


(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「遊技球が始動口に入球した場合に大当りであるか否かが判定されるパチンコ遊技機(【0001】)において、従来は、大当り遊技中の遊技球が始動口および特別入球口を含む全ての入球口に入球したことで賞球払出し装置から遊技者に賞品として払出される遊技球の総数である獲得球数を遊技者に報知するだけのものであり、遊技内容が単調であるという課題を有していたところ(【0004】)、当該課題を解決するために、大当り遊技中に遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球したことで獲得した合計の獲得球数を表示器の獲得球数の表示から遊技者が知ることができるようにするために、大当り遊技中には遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球する毎に表示器の獲得球数の表示を更新するようにした(【0007】)、パチンコ遊技機であって、
具体的には、大当り遊技中には、遊技球が扉43の開放状態にある特別入賞口41内に入賞する毎および特定普通入賞口47内に入賞する毎のそれぞれに獲得球数の映像が(15)だけカウントアップされ(【0026】、【0074】)、遊技球が特定普通入賞口47内に入賞する毎に、装飾図柄表示器56に、文字(+15個)からなるおまけ入賞の映像が表示されることで15個の遊技球が払出されると遊技者に報知し(【0076】)、遊技球が特別入賞口41内に入賞する毎に、おまけ入賞の映像と異なる位置に、文字(+15個)からなる大当り入賞の映像が表示されることで遊技球が特別入賞口41内に入賞したと遊技者に報知されると共に15個の遊技球が払出されると遊技者に報知する(【0078】)、
パチンコ遊技機。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(e)は、本願補正発明のAないしEに対応させている。

(a)引用発明の「表示装置41」は、「遊技の進行に基づく演出のための画像を表示する」ものであり、遊技演出を表示するものといえるから、本願補正発明の「遊技演出を表示可能な表示装置」に相当する。

(b)引用発明の「特別遊技状態」は、本願補正発明の「特別遊技状態」に相当し、引用発明の「特別遊技状態」でない状態は、本願補正発明の「通常遊技状態」に相当する。また、引用発明の「『遊技球を受け入れない状態』又は『大入賞口を閉じた状態』」、「『遊技球を受け入れ易い状態』又は『大入賞口を開いた状態』」は、それぞれ本願補正発明の「入賞容易性が低い状態」、「入賞容易性が高い状態」に相当する。さらに、引用発明の「特別変動入賞装置38」は、「特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開いた状態(遊技者にとって有利な状態)に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせる」ことにおいて、「大入賞口を」「開いた状態(遊技者にとって有利な状態)」が、「特別遊技状態」でない状態中の「大入賞口」の状態でないことは明らかであるから、「特別遊技状態」は「特別遊技状態」でない状態よりも遊技者に有利な状態であると認められる。
すると、引用発明の「特別変動入賞装置38」は、本願補正発明の「特別入賞装置」に相当する。

(c)引用発明の「一般入賞口35」は、「遊技球の入賞に基づき所定数の遊技球の払い出しのみが行われ入賞容易性が変換不可能」である、すなわち、いかなる遊技状態においても入賞容易性が変換不可能であるといえるから、本願補正発明の「一般入賞口」に相当する。

(d)引用発明の「特別遊技状態における特別変動入賞装置38への入賞数や賞球数に関する情報である大入賞口カウントコマンドや、特別遊技状態及び時短状態における一般入賞口35への入賞数や賞球数に関する情報である一般入賞カウントコマンドが送信され、この情報に基づき、表示装置41での報知の制御を行う演出制御装置300であって、特別遊技状態で、特別変動入賞装置38への入賞に基づき、すなわち大入賞口カウントコマンドの受信毎に、対応する賞球数を加算して大入賞口ボーナスとして表示装置41に更新表示し、一般入賞口35への入賞に基づき、すなわち一般入賞カウントボーナスコマンドの受信毎に、対応する賞球数を加算しておまけボーナスとして表示装置41に更新表示する、演出制御装置300」において、「対応する賞球数」は、本願補正発明の「入賞により獲得した入賞単位の賞球数」に相当し、「コマンドの受信毎に、対応する賞球数を加算して」「更新表示」することは、「更新表示」の前後の数値の差によって、特別入賞装置又は一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する表示を表示装置に表示しているといえるから、引用発明の特定事項d1’と、本願補正発明の特定事項Dとは、「前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段」である点で一致する。

(e)引用発明の「遊技機10」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技演出を表示可能な表示装置と、
B 通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態において入賞容易性が低い第1状態から入賞容易性が高い第2状態に変換可能な特別入賞装置と、
C 前記通常遊技状態および前記特別遊技状態において入賞容易性が変換不可能な一般入賞口と、
D’前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段と、
E を含む遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点(特定事項D)
「制御手段」が「表示装置に」「表示させる」「特別入賞演出表示」及び「一般入賞演出表示」は、
本願補正発明では、それぞれ「前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数」及び「前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数」であるのに対し、
引用発明では、賞球数を加算して更新表示された大入賞口ボーナス及びおまけボーナスであり、入賞する毎に獲得した入賞単位の賞球数とはいえない点。

(5)判断
相違点について検討する。
ア 引用発明は、引用例1の【0005】や【0008】に記載されているように、パチンコ遊技機分野において、従来入賞したことも気づきにくい特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への入賞に関する情報を表示することで、当該入賞領域に入賞させようと遊技者は思うようになるので興趣を高めることができ、特別遊技状態における特別変動入賞装置以外の入賞領域への入賞による賞球の獲得に対して満足感を与え、より遊技の興趣を高めることを目的とするものである。

イ 引用例2の記載事項は、上記(3)イ(エ)で示したように、パチンコ遊技機分野において、従来、大当り遊技中の遊技球が始動口および特別入球口を含む全ての入球口に入球したことで賞球払出し装置から遊技者に賞品として払出される遊技球の総数である獲得球数を遊技者に報知するだけのものであり、遊技内容が単調であるという課題を有していたところ、当該課題を解決するために、大当り遊技中に遊技球が特別入球口および普通入球口のそれぞれに入球したことで獲得した合計の獲得球数を表示器の獲得球数の表示から遊技者が知ることができるようにすることを目的とするものである。

ウ 引用例2の記載事項の「大当り遊技」、「特別入賞口41」、「文字(+15個)からなる大当り入賞の映像」、「特定普通入賞口47」、「文字(+15個)からなるおまけ入賞の映像」は、技術常識からみて、それぞれ本願補正発明の「特別遊技状態」、「特別入賞装置」、「特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示」、「一般入賞口」及び「一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示」に相当する。そして、引用例2の記載事項は、大当り遊技(特別遊技状態)中に、遊技球が特定普通入賞口47(一般入賞口)内に入賞する毎に、装飾図柄表示器56に、文字(+15個)からなるおまけ入賞の映像(一般入賞演出表示)が表示されることで、おまけ入賞の15個の遊技球が払出されることを遊技者に報知し、遊技球が特別入賞口41(特別入賞装置)内に入賞する毎に、おまけ入賞の映像と異なる位置に、文字(+15個)からなる大当り入賞の映像(特別入賞演出表示)が表示されることで、大当り入賞の15個の遊技球が払出されることを遊技者に報知するものである。
また、引用例2の記載事項が装飾図柄表示器56に表示をさせる制御手段を備えることは、技術常識からみて、当業者に自明である。
そうすると、引用例2の記載事項は、本願補正発明の特定事項Dを備えるものである。

エ 上記ア及びイからみて、引用発明と、引用例2の記載事項は、パチンコ遊技機分野において、従来入賞したことも気づきにくい特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への入賞に関する情報を表示することで、当該入賞領域に入賞させようと遊技者は思う場合もあるので興趣を高めることができ、特別遊技状態における特別変動入賞装置以外の入賞領域への入賞による賞球の獲得に対して満足感を与え、より遊技の興趣を高めることを目的とするもので共通する。そうすると、引用発明と引用例2の記載事項とは、課題及び目的で共通するものといえるから、共通する目的を達成しようとするために、当業者であれば、引用発明において、引用例2の記載事項を適用しようと試みるものである。
そして、具体的には、引用発明は、入賞したことも気づきにくい特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への入賞に関する情報を表示することで、当該入賞領域に入賞させようと遊技者は思う場合もあり、該遊技者であれば、前記特別変動入賞装置及び前記所定の入賞領域の各入賞に対応する賞球数の各累計だけによっても、特別変動入賞装置以外の所定の入賞領域への入賞を把握することも可能であるが、引用例2の記載事項のように、「文字(+15個)からなる大当り入賞の映像」(入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示)及び「文字(+15個)からなるおまけ入賞の映像」(入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示)のように、さらに詳細な各入賞毎の賞球数を前記「入賞に関する情報」として知りたいと思うことは遊技者にとって当然のことである。

オ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。

カ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2の記載事項の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(6)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において、以下のとおり概略主張している。
「(3)本願発明が特許されるべき理由
・・・略・・・
(d)本願発明と引用発明との対比
本願発明では「前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により獲得した入賞単位の賞球数を表示する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる」のに対し、引用文献1では入賞に応じて加算されていく大入賞口ボーナスや、おまけボーナスを表示しており、獲得した入賞単位の賞球数を表示するものでない点で相違する。
そして、引用文献1に開示の大入賞口ボーナスや、おまけボーナスは、入賞に応じて加算した累積数を表示するものであり、特別遊技状態や時短状態などの状態ごとの入賞状況を把握可能にするものに過ぎないため(段落番号〔0045〕,〔0047〕参照)、現在の発射勢でどの入賞口・入賞装置にどれだけの遊技球が入賞したのかを把握容易に案内できない。
すなわち、引用文献1に開示の大入賞口ボーナスや、おまけボーナスは、遊技球の発射勢の調整の参考になる情報とはいえず、引用文献1は、遊技者が遊技球の発射勢を調整する際の判断材料を提供するものではない。
これに対して、請求項1に記載の発明は、「特別入賞演出表示」と「一般入賞演出表示」を入賞ごとに表示するため、現在の発射勢でどの入賞口・入賞装置にどれだけの遊技球が入賞したのかを把握容易に案内できる(たとえば、図176参照)。すなわち、請求項1は、遊技者が遊技球の発射勢を調整する際の判断材料を提供することができる。」

イ 上記(5)で説示したとおり、引用発明によっても、現在の発射勢でどの入賞口・入賞装置にどれだけの遊技球が入賞したのかを把握することは可能であるが、引用例2には「獲得した入賞単位の賞球数を表示する」が記載されており、当該記載事項に基づけば、引用発明において、本願補正発明の特定事項となすことにより、引用発明よりもさらに容易に現在の発射勢でどの入賞口・入賞装置にどれだけの遊技球が入賞したのかを把握することが可能になることは、当業者が容易に予測し得ることである。

(7)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基いて、容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年10月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。なお、記号AないしEは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技演出を表示可能な表示装置と、
B 通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態において入賞容易性が低い第1状態から入賞容易性が高い第2状態に変換可能な特別入賞装置と、
C 前記通常遊技状態および前記特別遊技状態において入賞容易性が変換不可能な一般入賞口と、
D’前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段と、
E を含む遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成30年10月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及びその出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2013-215370号公報

3 引用例
(1)引用例1(引用文献1)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明の特定事項AないしC、Eは、本願補正発明の特定事項AないしC、Eと同一であるから、上記第2〔理由〕3(4)に記載したとおり、引用発明の特定事項aないしc、eは、本願発明の特定事項AないしC、Eに相当する。
また、引用発明の「演出制御装置300」は、上記第2〔理由〕3(4)ア(d)に記載したとおり、特別入賞装置又は一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する表示を表示装置に表示しているといえるから、本願発明の特定事項D’の「前記特別遊技状態において、前記特別入賞装置へ入賞する毎に前記特別入賞装置への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する特別入賞演出表示と、前記一般入賞口へ入賞する毎に前記一般入賞口への入賞により入賞単位で獲得した遊技価値に関する一般入賞演出表示と、を前記表示装置に表示させる制御手段」に相当する構成を備えるといえる。
してみると、引用発明は、本願発明の特定事項を全て備えるから、本願発明は、引用発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-25 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-16 
出願番号 特願2016-211629(P2016-211629)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 島田 英昭
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人扶桑国際特許事務所  

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