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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01L
管理番号 1357413
審判番号 不服2018-1576  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-05 
確定日 2019-11-29 
事件の表示 特願2016-524099「エンジン・バルブを作動させるための崩壊機構及び拡張機構を備える装置及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月11日国際公開、WO2015/085206、平成28年10月27日国内公表、特表2016-533452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月5日(US)アメリカ合衆国、2014年9月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成29年3月1日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年8月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月3日(発送日) :拒絶査定
平成30年2月5日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年11月22日(発送日):拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶 理由」という。)
平成31年3月22日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成31年3月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「エンジン・シリンダと関連付けられる少なくとも1つのエンジン・バルブを作動させるための装置であって、
前記少なくとも1つのバルブを作動させるために往復運動するように構成され、運動受け取り端部を有するロッカー・アームと、
前記ロッカー・アームの前記運動受け取り端部の中に配置され、主バルブ作動運動源から主バルブ作動運動を受け止めるように構成された崩壊機構であって、前記崩壊機構は、前記ロッカー・アームの内部に形成された第1のボアの中に摺動可能に配置された第1のピストンを備え、前記エンジン・シリンダの第1の状態において、前記崩壊機構は、前記主バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達される、拡張状態で動作するように制御され、前記エンジン・シリンダの第2の状態において、前記崩壊機構は、前記主バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達されない、収縮状態で動作するように制御される、崩壊機構と、
前記ロッカー・アームの中に配置され、前記ロッカー・アームが、補助バルブ作動運動を前記少なくとも1つのエンジン・バルブのうち少なくとも第1のエンジン・バルブへ伝達することを可能とする拡張機構であって、前記拡張機構は、前記ロッカー・アームの内部に形成された第2のボアの中に摺動可能に配置された第2のピストンを備え、前記エンジン・シリンダの前記第1の状態において、前記拡張機構は、前記補助バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達されない、収縮状態で動作するように制御され、前記エンジン・シリンダの前記第2の状態において、前記拡張機構は、前記補助バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達される、拡張状態で動作するように制御される、拡張機構と、
前記ロッカー・アーム内部に形成され、前記拡張機構と連通する第1の流体経路であって、前記第1の流体経路への流体の供給が、前記拡張機構の動作を制御する、前記第1の流体経路と、
前記ロッカー・アーム内部に形成され、前記崩壊機構と連通する第2の流体経路であって、前記第2の流体経路への流体の供給が、前記崩壊機構の動作を制御する、前記第2の流体経路と、
を備える、装置。」

第3 当審における拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由のうち、理由1は次のとおりのものである。

(進歩性)本願の請求項1ないし21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.実願昭56-69407号(実開昭57-182205号)のマイクロフィルム
2.特開昭59-77018号公報
3.特表2013-536347号公報
4.特開昭59-43912号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
(1)平成30年11月21日付け(発送日:平成30年11月22日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(実願昭56-69407号(実開昭57-182205号)のマイクロフィルム)には、「バルブ駆動装置」に関して、図面(特に第1図ないし第3図を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

「本考案はエンジンのバルブ駆動装置に関する。
一般にエンジンは高速高負荷運転の場合は、バルブリフト量を大きくし且つバルブ開角度も大きくするのが好ましく、低速低負荷運転の場合は、バルブリフト量もバルブ開角度も小さい方が好ましい傾向を有している。
しかしながら、従来のエンジンのバルブ駆動装置においては、バルブリフト量、バルブ開閉時期等のバルブ開閉要素は一律的に定められているため、運転条件に対応して適切なバルブ開閉要素を設定することができない不具合を有していた。
このため第1図乃至第3図に示すように1本のバルブに対しバルブリフト量、バルブ開角度の異る低速用の第1カム111と高速用の第2カム112とを1本のカム軸110に設け、第1カム111と当接する第1当接部材108をロツカアーム101の他端107aに設けると共に、第2カム112と当接する、摺動可能であるとともに摺動阻止もできる第2当接部材109を他の他端107bに設け、この第2当接部材109は前記他端107bに削設されたシリンダ113と、このシリンダ113内を摺動するピストン114と、シリンダ113とピストン114とにより形成された油室115と、油室115に内設されたばね116と、油室115に油を供給する図示しないオイルポンプと逆止弁117と油圧制御弁126とより構成し、バルブ開閉時期、バルブリフト量等のバルブ開閉要素を低速低負荷、高速高負荷の運転条件によって低速高速カム111,112にそれぞれ切換えるバルブ駆動装置が提案されているが、この機構では切換および作動が不確実な欠点があった。」(明細書1ページ末行ないし3ページ10行)

(2)上記(1)の記載及び図面(特に第1図ないし第3図)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「エンジンと関連付けられる少なくとも1つのバルブを作動させるためのバルブ駆動装置であって、
前記少なくとも1つのバルブを作動させるために往復運動するように構成され、他端107a、107bを有するロツカアーム101と、
前記ロツカアーム101の前記他端107bの中に配置され、第2カム112から第2カム112の運動を受け止めるように構成された第2当接部材109であって、前記第2当接部材109は、前記ロツカアーム101の内部に形成されたシリンダ113の中に摺動可能に配置されたピストン114を備え、前記エンジンの高速高負荷運転において、前記第2当接部材109は、前記第2カム112の運動が前記ロツカアーム101により伝達される、当接状態で動作するように制御され、前記エンジンの低速低負荷運転において、前記第2当接部材109は、前記第2カム112の運動が前記ロツカアーム101により伝達されない、非当接状態で動作するように制御される、第2当接部材109と、
前記ロツカアーム101に配置され、前記ロツカアーム101が、第1カム111の運動を前記少なくとも1つのバルブのうち少なくとも第1のバルブへ伝達することを可能とする第1当接部材108であって、前記エンジンの前記高速高負荷運転において、前記第1当接部材108は、前記第1カム111の運動が前記ロツカアーム101により伝達されない、非当接状態で動作するように制御され、前記エンジンの前記低速低負荷運転において、前記第1当接部材108は、前記第1カム111の運動が前記ロツカアーム101により伝達される、当接状態で動作するように制御される、第1当接部材108と、
前記ロツカアーム101内部に形成され、前記第2当接部材109と連通する油路であって、前記油路への油の供給が、前記第2当接部材109の動作を制御する、前記油路と、
を備えるバルブ駆動装置。」

2 引用文献2
(1)平成30年11月21日付け(発送日:平成30年11月21日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2(特開昭59-77018号公報)には、「内燃機関の動弁装置」に関して、図面(第1図及び第2図を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

ア 「本発明は、内燃機関の吸気バルブを開閉するための動弁装置に関する。
従来、内燃機関においては吸気バルブを開放してシリンダ内に空気(又は混合気)を吸入するが、この吸気バルブを開閉する動弁装置として、例えば内燃機関の回転によって回動されるカムによりタペツト及びプツシユロッドを介してロツカアームを揺動せしめ、このロツカアームを介して吸気バルブを開閉せしめるものが知られている。かかる動弁装置においては、吸気バルブの開閉時期は、上記カムの形状によって設定されるが、内燃機関の低回転域から高回転域まで常に一定であった。」(1ページ右下欄14行ないし2ページ左上欄8行)

イ 「本発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、その目的は、少なくとも吸気バルブの閉弁時期を切換えて内燃機関の低回転域から高回転域までシリンダ内に十分な吸気を供給することができる内燃機関の動弁装置を提供するものである。
本発明によれば、内燃機関に揺動自在に装着されたロツカアームと、該ロツカアームの揺動によって開閉される吸気バルブと、少なくとも該吸気バルブの閉弁時期を早める第1のロツカアーム作動機構と、少なくとも該吸気バルブの閉弁時期を遅延させる第2のロツカアーム作動機構とを備え、内燃機関が低回転のとき、該第1のロツカアーム作動機構を作動状態にし、また、内燃機関が所定回転数以上の高回転のとき、該第2のロツカアーム作動機構を作動状態にして少なくとも該吸気バルブの閉弁時期を切換えることを特徴とする内燃機関の動弁装置が提供される。」(2ページ右上欄7行ないし左下欄6行)

ウ 「第1図において、番号2で示す内燃機関のシリンダヘッドには、吸気通路4が形成されている。この吸気通路4の吸気口には、シリンダヘッド2に移動自在に装着されている吸気バルブ6の弁部8が配設されている。吸気バルブ6の頭部にはばねシート部材10が固定され、このばねシート部材10とシリンダヘッド2の上面との間にばね部材12が配設されている。従って、上記吸気バルブ6は、ばね部材12の作用によって弁部8が吸気通路4の吸気口を閉塞するように働く。
上記シリンダヘッド2には、更に、ロッカシャフト14が設けられ、このロッカシャフト14にロッカアーム16が揺動自在に装着されている。ロッカアーム16の先端部16aは、第1図から容易に理解される如く、上記吸気バルブ6の頭部6aに当接可能である。
このロッカアーム16は、その後端部16b側に配設されている第1のロッカアーム作動機構18及び第2のロッカアーム作動機構20によって揺動せしめられる。第1のロッカアーム作動機構18は、内燃機関の回転に関連して回動されるカムシャフト22aに設けられている、少なくとも吸気バルブ6の閉弁時期を早める特性を有するカム24aと、内燃機関のシリンダブロック26に移動自在に装着されている流体圧タペット28aと、流体圧タペット28aに旋回自在に装着されているプッシュロッド30aを含み、流体圧タペット28aがカム24aに当接されている。」(2ページ左下欄10行ないし3ページ左上欄3行)

エ 「また、第2のロッカアーム作動機構20は、上述した第1のロッカアーム作動機構18と実質上同一の構成であり、内燃機関の回転に関連して回動されるカムシャフト22bに設けられている、少なくとも吸気バルブ6の閉弁時期を遅延させる特性を有するカム24bと、シリンダブロック26に移動自在に装着されている流体圧タペット28bに旋回自在に装着されているプッシュロッド30bを含み、流体圧タペット28bがカム24bに当接されている。」(3ページ左上欄6行ないし16行)

オ 「上述した流体圧タペット28aは、第2図に図示する如く、一端がカム24aに当接するタペット本体34aを備えている。このタペット本体34a内にはプランジャ36aが移動自在に配設され、プランジャ36aによって流体圧室38aが形成されている。」(3ページ右上欄7行ないし12行)

カ 「上述した流体圧タペット28aを有する第1のロッカアーム作動機構18及び流体圧タペット28bを有する第2のロッカアーム作動機構20は、全体を番号60で示す流体圧制御手段によって作動制御される。」(3ページ右下欄10行ないし14行)

キ 「上記方向制御弁62は電磁制御弁から構成されており、内燃機関の回転数を検出する回転数検出器Rからの信号に起因して制御器Cにて生成される出力信号によって切換えられる。この方向制御弁62においては、内燃機関が低回転のとき、電磁ソレノイドSが不作動となって、第2図に図示する如く、流体圧供給流路66と第1の流体圧送給流路70、及び流体圧排出流路68と第2の流体圧戻り流路78とが夫々連通状態となり、また内燃機関が所定回転数(例えば最大出力時の回転数が2300rpm程度のものでは、1400rpm)以上の高回転のとき、電磁ソレノイドSが励磁されて流体圧供給流路66と第2の流体圧送給流路72、及び流体圧排出流路68と第1の流体圧戻り流路76とが連通状態となる。
上述した第1の流体圧送給流路70及び第2の流体圧送給流路72は、夫々、シリンダブロック26に形成されている通路80及び82を含んでおり、また、第1の流体圧戻り流路76及び第2の流体圧戻り流路78は、夫々、シリンダブロック26に形成されている通路84及び86を含んでいる。」(4ページ左上欄12行ないし右上欄16行)

ク 「内燃機関が低回転のときは、回転数検出器Rからの信号に起因して方向制御弁62の電磁ソレノイドSが不作動となり、第2図に図示する如く、流体圧供給流路66と第1の流体圧送給流路70、及び流体圧排出流路68と第2の流体圧戻り流路78とが夫々連通状態となる。流体圧供給流路66と第1の流体圧送給流路70とが連通状態となると、供給装置Pによって圧力流体が流体圧供給流路66、第1の流体圧送給流路70、タペット本体34aの流体圧供給口50a、プランジャ36aの通路52a及び一方向弁54a(一方向弁54aは圧力流体の作用によって開となる)を介して流体圧タペット28aの流体圧室38aに供給され、かくしてタペット本体34aの移動に伴なってプランジャ36aが流体圧室38a内の圧力流体を介して移動される(流体圧タペット28aが伝達可能状態となる)。一方、流体圧排出流路68と第2の流体圧戻り流路78とが連通状態になると、タペット本体34bの移動に伴なって流体圧室38b内の圧力流体がタペット本体34bの流体圧排出口74b、第2の流体圧戻り流路78及び流体圧排出流路68を介して流体溜64内に排出され、かくしてプランジャ36bに対してタペット本体34bのみが移動される(流体圧タペット28bが非伝達状態となる)。従って、かくの如く夫々連通状態となると、上述した記載から容易に理解される如く、第1のロッカアーム作動機構18が作動状態となり、内燃機関の回転に関連して回動されるカム24a、流体圧タペット28a(詳しくは、タペット本体34a、流体圧室38a内の圧力流体及びプランジャ36a)、及びプッシュロッド30aを介してロッカアーム16が揺動せしめられる。かくして、吸気バルブ6はカム24aによって開閉され、少なくともこの吸気バルブ6の閉弁時期が早められる。」(4ページ左下欄14行ないし5ページ左上欄14行)

ケ 「他方、内燃機関の回転数が上昇して所定回転数(例えば最大出力時の回転数が2300rpm程度のものでは、1400rpm)以上の高回転になると、回転数検出器Rからの信号に起因して制御器Cにて生成される出力信号によって方向制御弁62の電磁ソレノイドSが励磁され、流体圧供給流路66と第2の流体圧送給流路72、及び流体圧排出流路68と第1の流体圧戻り流路76とが夫々連通状態となる。流体圧供給流路66と第2の流体圧送給流路72とが連通状態となると、供給装置Pによって圧力流体が流体圧供給流路66、第2の流体圧送給流路72、タペット本体34bの流体圧供給口50b、プランジャ36bの通路52b及び一方向弁54b(一方向弁54bは圧力流体の作用によって開となる)を介して流体圧タペット28bの流体圧室38bに供給され、かくしてタペット本体34bの移動に伴なってプランジャ36bが流体圧室38b内の圧力流体を介して移動される(流体圧タペット28bが伝達可能状態となる)。一方、流体圧排出流路68と第1の流体圧戻り流路76とが連通状態になると、タペット本体34aの移動に伴なって流体圧室38a内の圧力流体がタペット本体34aの流体圧排出口74a、第1の流体圧戻り流路76及び流体圧排出流路68を介して流体溜64内に排出され、かくしてプランジャ36aに対してタペット本体34aのみが移動される(流体圧タペット28aが非伝達状態となる)。従って、かくの如く夫々連通状態となると、上述した記載から容易に理解される如く、第2のロッカアーム作動機構20が作動状態となり、内燃機関の回転に関連して回動されるカム24b、流体圧タペット28b(詳しくは、タペット本体34b、流体圧室38b内の圧力流体及びプランジャ36b)、及びプッシュロッド30bを介してロッカアーム16が揺動せしめられる。かくして、吸気バルブ6はカム24bによって開閉され、少なくともこの吸気バルブ6の閉弁時期が遅延される。」(5ページ左上欄15行ないし右下欄1行)

コ 「以上記載したように、上述した動弁装置においては、内燃機関が低回転のとき、第1のロッカアーム作動機構18を作動状態にし、また内燃機関が所定回転数以上の高回転のとき、第2のロッカアーム作動機構を作動状態にして吸気バルブ6を開閉しているため、低回転域から高回転域までシリンダ内に十分な吸気を供給することができ、かくして内燃機関の性能を向上させることができる。」(5ページ右下欄2行ないし9行)

(2)上記(1)の記載及び図面(第1図及び第2図)の記載から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「シリンダと関連付けられる少なくとも1つの吸気バルブ6を作動させるための内燃機関の動弁装置であって、
少なくとも1つの吸気バルブ6を作動させるために往復運動するように構成され、後端部16bを有するロツカアーム16と、
流体圧タペット28bを備える第2のロツカアーム作動機構20と、
流体圧タペット28aを備える第1のロツカアーム作動機構18と、
前記第1のロツカアーム作動機構18と連通する第1の流体圧送給流路70であって、前記第1の流体圧送給流路70への流体の供給が前記第1のロツカアーム作動機構18の動作を制御する、前記第1の流体圧送給流路70と、
前記第2のロツカアーム作動機構20と連通する第2の流体圧送給流路72であって、前記第2の流体圧送給流路72への流体の供給が、前記第2のロツカアーム作動機構20の動作を制御する、前記第2の流体圧送給流路72と、
を備える内燃機関の動弁装置。」

第5 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「エンジン」は、その技術的意義からみて、本願発明における「エンジン・シリンダ」に相当し、以下同様に、「バルブ」は「エンジン・バルブ」に、「第1のバルブ」は「第1のエンジン・バルブ」に、「バルブ駆動装置」は「装置」に、「他端107a、107b」は「運動受け取り端部」に、「ロツカアーム101」は「ロッカー・アーム」に、「第2カム112」は「主バルブ作動運動源」に、「第2カム112の運動」は「主バルブ作動運動」に、「第2当接部材109」は「崩壊機構」に、「第1当接部材108」は「拡張機構」に、「シリンダ113」は「第1のボア」に、「ピストン114」は「第1のピストン」に、「高速高負荷運転」は「第1の状態」に、「当接状態」は「拡張状態」に、「低速低負荷運転」は「第2の状態」に、「非当接状態」は「収縮状態」に、「第1カム111の運動」は「補助バルブ作動運動」に、「油路」は「第2の流体経路」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「エンジン・シリンダと関連付けられる少なくとも1つのエンジン・バルブを作動させるための装置であって、
前記少なくとも1つのバルブを作動させるために往復運動するように構成され、運動受け取り端部を有するロッカー・アームと、
前記ロッカー・アームの前記運動受け取り端部の中に配置され、主バルブ作動運動源から主バルブ作動運動を受け止めるように構成された崩壊機構であって、前記崩壊機構は、前記ロッカー・アームの内部に形成された第1のボアの中に摺動可能に配置された第1のピストンを備え、前記エンジン・シリンダの第1の状態において、前記崩壊機構は、前記主バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達される、拡張状態で動作するように制御され、前記エンジン・シリンダの第2の状態において、前記崩壊機構は、前記主バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達されない、収縮状態で動作するように制御される、崩壊機構と、
前記ロッカー・アームに配置され、前記ロッカー・アームが、補助バルブ作動運動を前記少なくとも1つのエンジン・バルブのうち少なくとも第1のエンジン・バルブへ伝達することを可能とする拡張機構であって、前記エンジン・シリンダの前記第1の状態において、前記拡張機構は、前記補助バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達されない、収縮状態で動作するように制御され、前記エンジン・シリンダの前記第2の状態において、前記拡張機構は、前記補助バルブ作動運動が前記ロッカー・アームにより伝達される、拡張状態で動作するように制御される、拡張機構と、
前記ロッカー・アーム内部に形成され、前記崩壊機構と連通する第2の流体経路であって、前記第2の流体経路への流体の供給が、前記崩壊機構の動作を制御する、前記第2の流体経路と、
を備える、装置。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明は、拡張機構がロッカーアーム「の中」に配置され、「前記拡張機構は、前記ロッカー・アームの内部に形成された第2のボアの中に摺動可能に配置された第2のピストンを備え」、「前記ロッカー・アーム内部に形成され、前記拡張機構と連通する第1の流体経路であって、前記第1の流体経路への流体の供給が、前記拡張機構の動作を制御する、前記第1の流体経路」を備えるのに対し、引用発明1は、かかる構成を備えていない点。

2 判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の第1図に記載されたものは、他の他端107b側にシリンダ113、ピストン114、油室115及びばね116(以下、「油圧ピストン機構」という。)を設けたものである。
ところで、引用文献2には、上記引用発明2が記載されている。
本願発明と引用発明2とを対比すると、後者の「シリンダ」は、前者の「エンジン・シリンダ」に相当し、以下同様に、「吸気バルブ6」は「エンジン・バルブ」に、「内燃機関の動弁装置」は「装置」に、「後端部16b」は「運動受け取り端部」に、「ロツカアーム16」は「ロッカー・アーム」に、「第2のロツカアーム作動機構20」は「崩壊機構」に、「第1のロツカアーム作動機構18」は「拡張機構」に、「第1の流体圧送給流路70」は「第1の流体経路」に、「第2の流体圧送給流路72」は「第2の流体経路」に、それぞれ相当する。
また、後者の「流体圧タペット28b」は「第1のピストン」に、「流体圧タペット28a」は「第2のピストン」に、それぞれ相当する。
したがって、引用発明2は、本願発明の用語を用いて、
「エンジン・シリンダと関連付けられる少なくとも1つのエンジン・バルブを作動させるための装置であって、
少なくとも1つのバルブを作動させるために往復運動するように構成され、運動受け取り端部を有するロッカー・アームと、
第1のピストンを備える崩壊機構と、
第2のピストンを備える拡張機構と、
前記拡張機構と連通する第1の流体経路であって、前記第1の流体経路への流体の供給が前記拡張機構の動作を制御する、前記第1の流体経路と、
前記崩壊機構と連通する第2の流体経路であって、前記第2の流体経路への流体の供給が、前記崩壊機構の動作を制御する、前記第2の流体経路と、
を備える装置。」
と言い表すことができる。
引用発明1と引用発明2とは、内燃機関が低速回転のときと高速回転のときに適したバルブ開閉時期とバルブリフト量とするという共通の課題を有し、内燃機関の回転速度に応じて低速用のカムと高速用のカムを切り替えるという共通の作用を奏するものである。
そうすると、引用発明1と引用発明2に接した当業者であれば、引用発明1において、他端107a側と、他の他端107b側の両方に対し、引用発明2を踏まえて油圧ピストン機構及びその動作を制御する油路を設けることは容易に想到し得たことである。
その際に、他端107a側の第1当接部材108に設ける油圧ピストン機構及びその動作を制御する油路は、他の他端107bの第2当接部材109と同様なものになることは自明である。
また、この油圧ピストン機構がロッカーアーム「の中」に配置されるものになることもまた自明である。
そうすると、引用発明1において、他の他端107bの第2当接部材109(本願発明の「崩壊機構」に相当)と同様に、他端107aの第1当接部材108にも、油圧ピストン機構及びその動作を制御する油路を設けることにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明1及び引用発明2から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-05 
結審通知日 2019-07-09 
審決日 2019-07-22 
出願番号 特願2016-524099(P2016-524099)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 渋谷 善弘
金澤 俊郎
発明の名称 エンジン・バルブを作動させるための崩壊機構及び拡張機構を備える装置及びシステム  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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