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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1357443
審判番号 不服2018-8133  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-13 
確定日 2019-11-27 
事件の表示 特願2016-186716「リボン型光ファイバー構造体を有する円形で小径の光ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 4977〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月2日に出願した特願2015-510236号の一部を平成28年9月26日に新たな特許出願としたものであって、平成29年9月26日付け拒絶理由通知に対して平成30年1月29日付けで手続補正がなされたが、同年2月6日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月13日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について

1.本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成30年1月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも一つのパイプと、
並んで配置されていると共に長さに沿って間欠的に結合された複数の光ファイバーを含み、前記パイプ内に位置している少なくとも一つの光ファイバーリボンと、
前記少なくとも一つのパイプを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム合金ワイヤ及びアルミニウムクラッド鋼ワイヤと、
を備える光ファイバー複合架空地線ケーブル。」

2.引用文献
(1)特開平9-22619号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-22619号公報(以下「引用文献1」という。)には、「光ファイバ複合架空地線」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0016】(実施例1)図1は本発明に係る光ファイバ複合架空地線の一実施例を示したものである。図示するように、先ず、この光ファイバ複合架空地線は軸心部に位置するFRP(繊維強化プラスチック)からなるテンションメンバ1の周囲に、6本の光ユニット2,2,2,2,2,2が撚り合わされている。
【0017】この光ユニット2は、上記テンションメンバ1と略同径のプラスチックチューブ3内に光信号を伝達するための光ファイバ素線4が各々4本つづ挿入されると共に、これら光ファイバ素線4,4,4,4の間隙にジェリー等の充填剤5が充填されたものであり、この充填剤5によって各光ファイバ素線4,4,4,4同士が絡み合わないように適度に拘束すると共に、光ファイバ素線4,4,4,4同士の接触によって生ずる応力を緩和するようになっている。このようにFRP(繊維強化プラスチック)からなるテンションメンバ1を用いることによってコストが低減することは勿論、張力の変動に対する優れた抗張力を発揮することができる。また、この繊維強化プラスチックは水を含んでも可燃性になることがないため、落雷などによる発火を未然に防止することができる。
【0018】また、これら光ユニット2,2,2,2,2,2の周囲には全長に亘ってテープ6が巻き付けられており、揺れや張力の変動等の外力によって光ユニット2,2,2,2,2,2同士の撚りが弛んだり、ばらけたりしないようにテンションメンバ1側に固定されている。
【0019】さらに、これら光ファイバ素線4,4,4,4はプラスチックチューブ3の長さより0.5%の余長を有しており、その端部がプラスチックチューブ3の端部より、露出した状態となっている。具体的には、プラスチックチューブ3の長さが100mであるとすると、光ファイバ素線4,4,4,4はこれより、0.5%程度の余長を有することから、そのプラスチックチューブ3の両端部からは約25cm程度つづ、合計50cm程度の光ファイバ素線4,4,4,4の端部が露出した状態となっている。従って、接続や測定の際に、光ファイバ素線4,4,4,4の端末の取り出し作業が容易に行われる。
【0020】次に、これら光ユニット2,2,2,2,2,2の周囲には、板厚が0.5mmの薄肉のアルミニウム薄肉管7が形成されており、外部から水分が浸入しないように光ユニット2,2,2,2,2,2の周囲の気密性が保たれている。すなわち、このアルミニウム薄肉管7は板厚が0.5mmのアルミニウム薄板を管状に加工すると同時に、その突合わせ部をシーム溶接機に連続して溶接してなるものである。従って、各光ユニット2,2,2,2,2,2の各光ファイバ素線4,4,4,4への水中の水素の浸入による伝送損失の増加を未然に防止することができる。」

イ.「【0021】そして、さらに、このアルミニウム薄肉管7の周囲には、母材がアルミニウムからなる3本のアルミニウム素線8a,8a,8aと、鋼素線の周囲にアルミニウムが被覆された6本のアルミ覆鋼素線8b,8b,8b,8b,8b,8bとからなる導体8がアルミニウム薄肉管7に密着して撚り合わされている。」

・上記アによれば、複数の光ファイバ素線は、プラスチックチューブ内に挿入されるものである。
・上記イによれば、アルミニウム素線は、母材がアルミニウムからなるものである。また、アルミ覆鋼素線は、鋼素線の周囲にアルミニウムが被覆されたものある。
・上記ア及び図1によれば、光ファイバ複合架空地線は、複数のプラスチックチューブと、複数の光ファイバ素線と、複数のプラスチックチューブを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム素線及びアルミ覆鋼素線とを備えるものである。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「 複数のプラスチックチューブと、
プラスチックチューブ内に挿入された複数の光ファイバ素線と、
複数のプラスチックチューブを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム素線及びアルミ覆鋼素線と、
を備え、
アルミニウム素線は母材がアルミニウムからなるものであり、アルミ覆鋼素線は鋼素線の周囲にアルミニウムが被覆されたものある、
光ファイバ複合架空地線。」

(2)特開2007-279226号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-279226号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0002】
従来、光ファイバケーブルでは、当該光ファイバケーブルに収納される光ファイバとしては、光ファイバ同士を接続する時の作業性を向上させるために、複数本の光ファイバを並列に配置し、これを一括被覆した光ファイバテープ心線(又はリボン心線とも呼び、以下、「テープ心線」という)が多く用いられている。このテープ心線は、一括被覆した複数本の光ファイバを一括で融着接続あるいはコネクタ接続することが可能であるという大きなメリットがある。
・・・(中略)・・・
【0022】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバテープ心線によれば、従来のテープ心線と異なり、どの方向にも曲げることが可能である。また、光ファイバを接続する際は、容易に規定の配列に光ファイバを並列させ一括接続することが可能である。また、中間後分岐の際には、単心分離が容易である。また、連結部がテープ心線の幅方向にテープ状ではなく、間欠的なバンドル状であることから、単心線とほぼ同様のケーブル化が可能である。
・・・(中略)・・・
【0025】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバテープ心線1(以下、「テープ心線」という)は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3が3心以上、並列して構成されるものであり、図1では合計N本の光ファイバ3から構成されるものである。これらのN本の光ファイバ3のうちの互いに隣接する2心の光ファイバ3が連結部5により間欠的に連結されている。
【0026】
より詳しくは、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間のみを連結する複数の連結部5が、図2(A)に示されているようにテープ心線1の長手方向及び幅方向の2次元的に間欠的に配設されている。しかも、同一の光ファイバ3に施された前記連結部5の長さは前記同一の光ファイバ3の非連結部の長さよりも短く構成されている。例えば、1本目と2本目の光ファイバ3同士を連結する連結部51?2の長さAは同一の光ファイバ3の非連結部の長さSよりも短い構成である。さらに、テープ心線1の幅方向で隣り合う連結部51?2,52?3同士の間は互いに接触しないように離間距離B及びDが設けられていることを特徴とする。」

イ.「【0038】
図4を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブル13はセンタチューブ型の光ファイバケーブルであって、前述したテープ心線1が、図4の2点鎖線に示されているように光ファイバ3をテープ心線1の幅方向に丸めるようにバンドル状態にして集合せしめてケーブルコア15を形成する。このバンドル状態に集合したテープ心線1の外周に熱可塑性樹脂をチューブ状に押出成形し、このチューブの外周にポリエチレンなどの外被19でシースして構成されている。」

・上記ア及び図1によれば、リボン心線(テープ心線)は、光ファイバが複数並列して構成され、隣接する光ファイバが連結部により長手方向に間欠的に連結されているものである。
・上記アによれば、リボン心線(光ファイバテープ心線)は、光ファイバを接続する際に容易に規定の配列に光ファイバを並列させ一括接続することが可能である。
・上記イ及び図4によれば、リボン心線(テープ心線)は、光ファイバケーブルの外被内に位置しているものである。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献2には、「光ファイバが複数並列して構成され、隣接する光ファイバが連結部により長手方向に間欠的に連結されたリボン心線が光ファイバケーブルの外被内に位置しており、当該リボン心線は、光ファイバを接続する際に容易に規定の配列に光ファイバを並列させ一括接続することが可能である」技術事項が記載されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「複数のプラスチックチューブ」は、本願発明の「少なくとも一つのパイプ」に相当する。

(2)引用発明1の「アルミニウム素線」は、母材がアルミニウムからなるものである。これは一般的にアルミニウムを母材として他の物質を添加して作製されたアルミニウム合金による素線を指すものと解されるから、本願発明の「アルミニウム合金ワイヤ」に相当する。また、引用発明1の「アルミ覆鋼素線」は、鋼素線の周囲にアルミニウムが被覆されたものあるから、本願発明の「アルミニウムクラッド鋼ワイヤ」に相当する。よって、引用発明1の「複数のプラスチックチューブを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム素線及びアルミ覆鋼素線」は、本願発明の「前記少なくとも一つのパイプを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム合金ワイヤ及びアルミニウムクラッド鋼ワイヤ」に相当する。

(3)引用発明1の「光ファイバ複合架空地線」は、本願発明の「光ファイバー複合架空地線ケーブル」に相当する。

(4)引用発明1の「プラスチックチューブ内に挿入された複数の光ファイバ素線」は、パイプ内に位置している複数の光ファイバーといえるから、本願発明の「少なくとも一つの光ファイバーリボン」とは「パイプ内に位置している複数の光ファイバー」である点で共通するといえる。
ただし、パイプ内に位置している複数の光ファイバーについて、本願発明は「並んで配置されていると共に長さに沿って間欠的に結合された複数の光ファイバーを含」む「少なくとも一つの光ファイバーリボン」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「 少なくとも一つのパイプと、
前記パイプ内に位置している複数の光ファイバーと、
前記少なくとも一つのパイプを囲んで環状配列で配置された複数のアルミニウム合金ワイヤ及びアルミニウムクラッド鋼ワイヤと、
を備える光ファイバー複合架空地線ケーブル」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点>
パイプ内に位置している複数の光ファイバーについて、本願発明は「並んで配置されていると共に長さに沿って間欠的に結合された複数の光ファイバーを含」む「少なくとも一つの光ファイバーリボン」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。

引用文献2には、「光ファイバが複数並列して構成され、隣接する光ファイバが連結部により長手方向に間欠的に連結されたリボン心線が光ファイバケーブルの外被内に位置しており、当該リボン心線は、光ファイバを接続する際に容易に規定の配列に光ファイバを並列させ一括接続することが可能である」技術事項が記載されている。これによって、本願発明と同様に「マス・スプライシングが可能となる」という効果を奏する。
引用文献1の光ファイバ複合架空地線、引用文献2の光ファイバケーブルは、いずれも光ファイバに関するものであり、同一の技術分野に属するものである。さらに、光ファイバの接続の容易化を図ることは当該技術分野において自明な課題である。したがって、引用発明1のプラスチックチューブ内に挿入された複数の光ファイバ素線として、前記自明な課題を考慮して、引用文献2に記載された技術事項を採用して相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

この点について、請求人は、審判請求書にて「また、次の理由からも、光ファイバー複合架空地線におけるルース光ファイバーに替えて間欠的に結合されたリボンを用いることは、容易ではありませんでした。具体的には、光ファイバー複合架空地線に使用される光ファイバーは、他のケーブルと一緒にスプライスされ、且つ/又はコネクタで終端されなければなりませんでした。しかし、そのようなリボンのスプライシング及び/又は終端によって、ルース光ファイバーの単純なスプライス及び/又は終端では存在しなかった問題が生じてしまいました。また、特に光ファイバー複合架空地線を含む多くのケーブル設計には、典型的にゲルが利用されます。ゲルは、光ファイバーを取り囲んで光ファイバーと接触します。ゲルがこのようなリボンの間欠的な接続に悪影響を及ぼさないように、新たなゲル及び/又は新たなリボンの設計及び材料が必要とされて来ており、ゲルを使用しないドライケーブル設計では、そのような使用に耐えられるリボンの設計及び材料が必要でした。 ・・・(中略)・・・上記の説明から明らかなように、当業者であっても、引用文献2に開示の発明を引用文献1及び/又は引用文献3に開示の発明と組み合わせることはできなかったと思われます。」旨を主張している。
しかしながら、請求人の主張している、スプライシング及び/又は終端によって生じる問題の点、あるいは新たなゲル及び/又は新たなリボンの設計及び材料が必要とされる点の課題について、明細書には何ら記載しておらず、またその解決手段についても何ら記載していないため、請求人の当該主張は明細書の記載に基づくものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-27 
結審通知日 2019-07-02 
審決日 2019-07-16 
出願番号 特願2016-186716(P2016-186716)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山田 正文
佐々木 洋
発明の名称 リボン型光ファイバー構造体を有する円形で小径の光ケーブル  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 棚井 澄雄  

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