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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1357445 |
審判番号 | 不服2018-11717 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-31 |
確定日 | 2019-11-27 |
事件の表示 | 特願2015-531661「モバイル3Dワイヤレス超音波画像取得装置及び超音波イメージングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日国際公開、WO2014/041448、平成27年11月 5日国内公表、特表2015-531642〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)8月22日(パリ条約による優先権主張 2012年9月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月23日付けで拒絶理由が通知され、同年11月22日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月26日付けで拒絶査定されたところ、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年8月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年8月31日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 3次元超音波イメージングシステムを形成するために、画像プロセッサを有するモバイルコンソールと共に使用される3次元超音波画像取得装置であって、 超音波受信信号を供給するトランスデューサアレイと、 前記トランスデューサアレイを制御するとともに、前記超音波受信信号を受け取り、ビーム成形された画像信号を供給するビームフォーマと、前記画像信号を受け取り、画像データを供給する信号プロセッサと、を有する画像取得ハードウェアアセンブリと、 前記3次元超音波画像取得装置を前記モバイルコンソールと接続するためのワイヤレスインタフェースと、 を有し、 前記ビームフォーマが、主ビームフォーマ及び複数のマイクロビームフォーマを有し、前記主ビームフォーマが、前記複数のマイクロビームフォーマをサブグループにグループ化し、 前記主ビームフォーマが、前記マイクロビームフォーマから受信されるビーム成形された音響信号にビームフォーミングを行って、前記ビーム成形された画像信号を生成し、 前記ワイヤレスインタフェースが、前記ビーム成形された画像信号を、前記モバイルコンソールの前記画像プロセッサにワイヤレス送信する、3次元超音波画像取得装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年11月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 3次元超音波イメージングシステムを形成するためにモバイルコンソールと共に使用される3次元超音波画像取得装置であって、 超音波受信信号を供給するトランスデューサアレイと、 前記トランスデューサアレイを制御するとともに、前記超音波受信信号を受け取り、ビーム成形された画像信号を供給するビームフォーマと、前記画像信号を受け取り、画像データを供給する信号プロセッサと、を有する画像取得ハードウェアアセンブリと、 前記3次元超音波画像取得装置を前記モバイルコンソールと接続するためのワイヤレスインタフェースと、 を有し、 前記ビームフォーマが、主ビームフォーマ及び複数のマイクロビームフォーマを有し、前記主ビームフォーマが、前記複数のマイクロビームフォーマをサブグループにグループ化し、 前記主ビームフォーマが、前記マイクロビームフォーマから受信されるビーム成形された音響信号にビームフォーミングを行って、前記ビーム成形された画像信号を生成し、 前記ワイヤレスインタフェースが、前記ビーム成形された画像信号を、前記モバイルコンソールにワイヤレス送信する、3次元超音波画像取得装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「モバイルコンソール」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2010-528696号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。) (引1ア) 「【0011】 図2a?2cは、本発明の無線超音波プローブに対する適切な基地局ホストシステムの例を示す。図2aは、システム電子機器及び電源に関する低位筐体を持つカート輸送の超音波システム40を示す。このシステム40は、システム動作を制御するのに使用される制御パネル42を持ち、無線プローブを制御するのに使用されることができる。プローブを制御するために使用されることができるコントロールパネル上の制御部は、トラックボール、選択キー、利得操作ノブ、画像凍結ボタン、モード制御等を含む。無線プローブから受信される信号から生成される超音波画像が、ディスプレイ46に表示される。本発明の原理によれば、カート輸送システム40は、無線プローブとホストシステムとの間の信号16の送信及び受信のための1つ又は複数のアンテナ44を持つ。プローブとシステムとの間の赤外線データリンクといった無線周波数信号以外の他の通信技術が代替的に採用されることができる。 【0012】 図2bは、ラップトップコンピュータ形式の要素において構成されるホストシステムを示す。ケース50は、無線プローブとの通信用のトランシーバを含むホストシステムの電子機器を収容する。トランシーバは、ケース50の内部、例えばメディアドライブ又はバッテリ用のベイといったケースのアクセサリベイに配置されることができる。トランシーバは、国際特許公開第2006/111872号(Poland)に記載されるように、PCMCIAカード又はこのシステムに対するUSB接続アクセサリとして構成されることもできる。1つ又は複数のアンテナ54がトランシーバに接続される。無線プローブが、システムのコントロールパネル52から制御されることができ、プローブ信号から生成される超音波画像が、ディスプレイ56に表示される。 」 (引1イ) 「【0014】 図3は、2次元イメージングのために構築される本発明の無線プローブ10を示す。2次元画像平面をスキャンするため、プローブ10は、プローブの音響ウィンドウにあるプローブの遠位端部12に配置される1次元(1D)トランスデューサアレイ70を使用する。トランスデューサアレイは、セラミック圧電トランスデューサ要素、圧電性高分子(PVDF)により形成されることができるか、又は例えば要素のPMUT(圧電MUT)又はCMUT(容量MUT)アレイといった半導体ベースのマイクロマシン超音波トランスデューサ(MUT)とすることができる。1Dアレイトランスデューサ70が、1つ又は複数のマイクロビーム形成器低減ASIC72により駆動され、エコーが、1つ又は複数のマイクロビーム形成器低減ASIC72により処理される。マイクロビーム形成器72は、1Dトランスデューサアレイの要素からエコー信号を受信し、遅延させ、要素ごとのエコー信号をわずかな数の部分的にビーム形成された信号へと結合する。例えば、マイクロビーム形成器72は、128のトランスデューサ要素からエコー信号を受信し、8つの部分的にビーム形成された信号を形成するようこれらの信号を結合することができる。これにより、信号経路の数が128から8まで減らされる。マイクロビーム形成器72は、上述した米国特許第6,142,946号にて説明されるように、アクティブ開口の全ての要素からの完全にビーム形成された信号を生成するために実現されることもできる。好ましい実施形態では、許容可能なリアルタイム撮像を提供するレートまでデータレートを低下させるよう、完全にビーム形成された検出信号が、基地局ホストに対する無線通信のためプローブにより生成される。ビーム形成器72での使用に適したマイクロビーム形成技術は、米国特許第5,229,933号(Larson III)、第6,375,617号(Fraser)、及び第5,997,479号(Savord他)に記載される。ビーム形成されたエコー信号が、このビーム形成された信号をホストシステムに送信するプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74に結合される。このビーム形成された信号は、更にビーム形成されることができ、その後画像処理され、表示されることができる。プローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74は、プローブがホストから制御されるときホストシステムからの制御信号も受信し、例えば所望の深さでビームを焦束させるため、又は所望のモード(ドップラー、Bモード)の信号を画像の所望の領域へ及びから送信及び受信するため、対応する制御信号をマイクロビーム形成器72に結合する。以下に説明されるプローブに電力を供給する電源サブシステム及びバッテリは、この説明では図示されていない。」 (引1ウ) 「【0016】 図4は、本発明の無線プローブ10の別の例である。この例では、無線プローブは、プローブセンサとして2次元及び3次元撮像を両方可能にする2次元行列アレイトランスデューサ80を含む。2Dアレイトランスデューサ80は、アレイトランスデューサスタックに直接付けられる「フリップチップ」ASICとして好ましくは実現されるマイクロビーム形成器82に結合される。図3の無線プローブの場合のように、完全にビーム形成された検出エコー信号及びプローブ制御信号が、マイクロビーム形成器及びプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74の間で結合される。」 (引1エ) 「【0017】 本発明の無線プローブのための典型的なプローブコントローラ及びトランシーバサブシステムが、図5に示される。バッテリ92は、無線プローブに電力を供給し、電力供給及び調整回路90に結合される。電力供給及び調整回路は、トランスデューサアレイを含む無線プローブの要素により必要とされる多数の電圧へとバッテリ電圧を変換(translate)する。例えば、典型的な構成のプローブは、9つの異なる電圧を必要とする場合がある。電力供給及び調整回路は、バッテリ92の充電の間、電荷制御部も提供する。構築された実施形態において、バッテリは、プリズムリチウムポリマー電池であり、プローブケース内部の利用可能なバッテリ空間のため適切な形状で形成されることができる。 【0018】 取得モジュール94は、マイクロビーム形成器及びトランシーバの間の通信を提供する。取得モジュールは、タイミング及び制御信号をマイクロビーム形成器に提供し、超音波の送信を方向付け、及び少なくとも部分的にビーム形成されたエコー信号をマイクロビーム形成器から受信する。この信号は、復調及び検出され(及びオプションでスキャンコンバートされ)、並びに基地局ホストへの送信のためトランシーバ96に通信される。適切な取得モジュールの詳細なブロック図が図7に示される。この例では、後述するように必要に応じてUSBケーブルが使用されることができるよう、取得モジュールは、パラレル又はUSBバスを介してトランシーバと通信する。USB又は他のバスが使用される場合、このモジュールは、ケーブルを介して基地局ホストに対する代替的な有線接続を提供することができる。こうして、後述するようにトランシーバ部分96が迂回される。 ・・・ 【0020】 トランシーバは、この例ではウルトラワイドバンド・チップセット96である。ウルトラワイドバンド・トランシーバは、許容可能なレベルのバッテリ消費に関する許容可能な範囲だけでなく許容可能なリアルタイム撮像フレームレートを提供するデータ通信レートを持つことが分かった。ウルトラワイドバンド・チップセットは、例えば、カリフォルニア州サンディエゴのGeneral Atomics、テキサス州アレンのWiQuest、カリフォルニア州ミルピータスのSigma Designs、オレゴン州ヒルズボロのFocus Semiconductor、テキサス州オースチンのAlereon、及びカリフォルニア州キャンプベルのWisairといった様々なソースから入手可能である。 【0021】 図6aは、ラップトップ構成50で示される基地局ホストでの無線プローブ信号経路を示す。アンテナ54は、ホストでのトランスセプション(transception:送受信)を実行する、同一の又は互換性あるウルトラワイドバンド・チップセット96に結合される。ラップトップ構成に関する好ましい実施形態において、アンテナ54及びウルトラワイドバンド・チップセットは、図6bに示されるUSB接続可能な「ドングル」110として構成される。これは、ホストシステム50のUSBポートに差し込まれ、このポートを介して電力供給される。」 (引1オ)図2b (引1カ)図3、図4 (引1キ)図5 (引1ク)図6a イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。 (ア)「図2a?2cは、本発明の無線超音波プローブに対する適切な基地局ホストシステムの例を示す。」(【0011】)、「図2bは、ラップトップコンピュータ形式の要素において構成されるホストシステムを示す。ケース50は、無線プローブとの通信用のトランシーバを含むホストシステムの電子機器を収容する。・・・プローブ信号から生成される超音波画像が、ディスプレイ56に表示される。」(【0012】)、「図4は、本発明の無線プローブ10の別の例である。この例では、無線プローブは、プローブセンサとして2次元及び3次元撮像を両方可能にする2次元行列アレイトランスデューサ80を含む。」(【0016】)などの記載を踏まえると、超音波画像がディスプレイに表示されるラップトップコンピュータ形式の基地局ホストシステムと無線通信し、3次元撮影を可能にする無線超音波プローブが記載されていることが分かる。 (イ)【0014】(図3)及び【0016】(図4)などの記載を踏まえると、無線超音波プローブは、少なくとも、トランスデューサアレイ、マイクロビーム形成器、プローブコントローラ及びトランシーバサブシステムを備えていることが分かる。 (ウ)「マイクロビーム形成器72は、1Dトランスデューサアレイの要素からエコー信号を受信し」(【0014】)などの記載を踏まえると、トランスデューサアレイは、エコー信号を出力することが分かる。 (エ)「1Dアレイトランスデューサ70が、・・・複数のマイクロビーム形成器低減ASIC72により駆動され」(【0014】)、「取得モジュールは、タイミング及び制御信号をマイクロビーム形成器に提供し、超音波の送信を方向付け」(【0018】)などの記載を踏まえると、マイクロビーム形成器は、複数個備え、トランスデューサアレイにおける超音波の送信を制御することが分かる。 (オ)「マイクロビーム形成器72は、1Dトランスデューサアレイの要素からエコー信号を受信し、遅延させ、要素ごとのエコー信号をわずかな数の部分的にビーム形成された信号へと結合する。例えば、マイクロビーム形成器72は、128のトランスデューサ要素からエコー信号を受信し、8つの部分的にビーム形成された信号を形成するようこれらの信号を結合することができる。これにより、信号経路の数が128から8まで減らされる。」(【0014】)などの記載を踏まえると、トランスデューサアレイの画素を128個の要素に分け、各要素ごとにマイクロビーム形成器を備え、128個のマイクロビーム形成器は、1組16個のマイクロビーム形成器からなる群が8組構成されていることが理解できる。 したがって、マイクロビーム形成器(128個)は、トランスデューサアレイの要素ごとのエコー信号を入力し、部分的にビーム形成された信号を結合(1組16個)して、わずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を出力することが分かる。 (カ)上記(オ)に加えて、「マイクロビーム形成器72は、・・・アクティブ開口の全ての要素からの完全にビーム形成された信号を生成するために実現されることもできる。好ましい実施形態では、許容可能なリアルタイム撮像を提供するレートまでデータレートを低下させるよう、完全にビーム形成された検出信号が、基地局ホストに対する無線通信のためプローブにより生成される。・・・ビーム形成されたエコー信号が、このビーム形成された信号をホストシステムに送信するプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74に結合される。このビーム形成された信号は、更にビーム形成されることができ、その後画像処理され、表示されることができる。」(【0014】)、「図3の無線プローブの場合のように、完全にビーム形成された検出エコー信号・・・が、マイクロビーム形成器及びプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74の間で結合される。」(【0016】)、「取得モジュールは、・・・少なくとも部分的にビーム形成されたエコー信号をマイクロビーム形成器から受信する。」(【0018】)などの記載をあわせて読むと、マイクロビーム形成器が出力したわずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を入力して、完全にビーム形成された信号を生成、出力するためのビーム形成部が存在していることは明らかである。 (キ)「好ましい実施形態では、許容可能なリアルタイム撮像を提供するレートまでデータレートを低下させるよう、完全にビーム形成された検出信号が、基地局ホストに対する無線通信のためプローブにより生成される。・・・ビーム形成されたエコー信号が、このビーム形成された信号をホストシステムに送信するプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74に結合される。」(【0014】)、「完全にビーム形成された検出エコー信号・・・が、マイクロビーム形成器及びプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74の間で結合される。」(【0016】)、「典型的なプローブコントローラ及びトランシーバサブシステムが、図5に示される。・・・取得モジュール94は、マイクロビーム形成器及びトランシーバの間の通信を提供する。取得モジュールは、・・・少なくとも部分的にビーム形成されたエコー信号をマイクロビーム形成器から受信する。この信号は、復調及び検出され(及びオプションでスキャンコンバートされ)、並びに基地局ホストへの送信のためトランシーバ96に通信される。」(【0017】、【0018】)などの記載を踏まえると、プローブコントローラ及びトランシーバサブシステムは、取得モジュールとトランシーバを含み、取得モジュールは、ビーム形成部が出力した完全にビーム形成された信号を入力し、復調及び検出された完全にビーム形成された信号、すなわち、完全にビーム形成された検出信号をトランシーバに出力することが分かる。 (ク)「この信号は、復調及び検出され(及びオプションでスキャンコンバートされ)、並びに基地局ホストへの送信のためトランシーバ96に通信される。」(【0018】)、「トランシーバは、この例ではウルトラワイドバンド・チップセット96である。」(【0020】)、「図6aは、ラップトップ構成50で示される基地局ホストでの無線プローブ信号経路を示す。アンテナ54は、ホストでのトランスセプション(transception:送受信)を実行する、同一の又は互換性あるウルトラワイドバンド・チップセット96に結合される。」(【0021】)などの記載を踏まえると、トランシーバは、取得モジュールが出力した完全にビーム形成された検出信号を基地局ホストシステムへ無線送信することが分かる。 (ケ)「ビーム形成されたエコー信号が、このビーム形成された信号をホストシステムに送信するプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74に結合される。このビーム形成された信号は、更にビーム形成されることができ、その後画像処理され、表示されることができる。」などの記載を踏まえると、基地局ホストシステムは、トランシーバが無線送信した完全にビーム形成された検出信号を、画像処理し、超音波画像として表示することが分かる。 (コ)なお、引用文献1には、完全にビーム形成された検出信号を基地局ホストシステムに無線送信する態様(下記「引用発明」)だけでなく、基地局ホストシステムがビーム形成部を有し、わずかな数の部分的にビーム形成された検出信号を無線送信し、前記基地局ホストシステムのビーム形成部が、無線送信されたわずかな数の部分的にビーム形成された検出信号を、完全にビーム形成された検出信号に生成し、その後画像処理され、超音波画像として表示される態様(1)(「このビーム形成された信号をホストシステムに送信するプローブコントローラ及びトランシーバサブシステム74に結合される。このビーム形成された信号は、更にビーム形成されることができ、その後画像処理され、表示される」(【0014】))や、画像処理部が基地局ホストシステムにある場合だけでなく、無線超音波プローブが画像処理部を有し、(完全に、部分的に)ビーム形成された検出信号が画像処理(「オプションでスキャンコンバートされ」(【0018】))され、その後画像処理された信号を無線送信し、基地局ホストシステムにおいて、超音波画像が表示される態様(2)についての記載があることに留意されたい。 ウ 上記ア及びイから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「超音波画像がディスプレイに表示されるラップトップコンピュータ形式の基地局ホストシステムと無線通信し、3次元撮影を可能にする無線超音波プローブであって、 少なくとも、トランスデューサアレイ、マイクロビーム形成器、プローブコントローラ及びトランシーバサブシステムを備え、 前記アレイトランスデューサは、エコー信号を出力し、 前記マイクロビーム形成器は、複数個(128個)備え、前記トランスデューサアレイにおける超音波の送信を制御し、前記トランスデューサアレイの要素ごとのエコー信号を入力し、部分的にビーム形成された信号を結合(1組16個)して、わずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を出力し、 前記マイクロビーム形成器が出力したわずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を入力して、完全にビーム形成された信号を生成、出力するためのビーム形成部が存在し、 前記プローブコントローラ及びトランシーバサブシステムは、取得モジュールとトランシーバを含み、前記取得モジュールは、前記ビーム形成部が出力した完全にビーム形成された信号を入力し、復調及び検出された完全にビーム形成された信号、すなわち、完全にビーム形成された検出信号を前記トランシーバに出力し、 前記トランシーバは、前記取得モジュールが出力した完全にビーム形成された検出信号を前記基地局ホストシステムへ無線送信し、 前記トランシーバから無線送信された完全にビーム形成された検出信号が、前記基地局ホストシステムによって、画像処理され、超音波画像として表示される、 無線超音波プローブ。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「3次元撮影を可能にする無線超音波プローブ」と「基地局ホストシステム」をあわせたシステムが、本件補正発明の「3次元超音波イメージングシステム」に相当する。また、引用発明の「画像処理」部を有する「ラップトップコンピュータ形式の基地局ホストシステム」は、本件補正発明の「画像プロセッサを有するモバイルコンソール」に相当する。そして、引用発明の「3次元撮影を可能にする無線超音波プローブ」は、本件補正発明の「3次元超音波画像取得装置」に相当する。 よって、引用発明の「画像処理」部を有する「ラップトップコンピュータ形式の基地局ホストシステムと無線通信し、3次元撮影を可能にする無線超音波プローブ」は、本件補正発明の「3次元超音波イメージングシステムを形成するために、画像プロセッサを有するモバイルコンソールと共に使用される3次元超音波画像取得装置」に相当する。 イ 引用発明の「エコー信号」及び「トランスデューサアレイ」は、本件補正発明の「超音波受信信号」及び「トランスデューサアレイ」に相当する。 よって、引用発明の「エコー信号を出力」する「トランスデューサアレイ」は、本件補正発明の「超音波受信信号を供給するトランスデューサアレイ」に相当する。 ウ 引用発明の「マイクロビーム形成器」及び「完全にビーム形成された信号」は、本件補正発明の「マイクロビームフォーマ」及び「ビーム成形された画像信号」及び「ビーム成形された音響信号」に相当する。 そして、引用発明の「エコー信号を入力」する「マイクロビーム形成器」と、「完全にビーム形成された信号を」「出力する」「ビーム形成部」は、全体としてみれば、「エコー信号を入力」し、「完全にビーム形成された信号を」「出力する」「ビーム形成器」といえることから、本件補正発明の「前記超音波受信信号を受け取り、ビーム成形された画像信号を供給するビームフォーマ」に相当する。 よって、引用発明の「前記トランスデューサアレイにおける超音波の送信を制御し、」「エコー信号を入力」する「マイクロビーム形成器」と、「完全にビーム形成された信号を」「出力する」「ビーム形成部」は、本件補正発明の「前記トランスデューサアレイを制御するとともに、前記超音波受信信号を受け取り、ビーム成形された画像信号を供給するビームフォーマ」に相当する。 エ 本願明細書に「信号プロセッサ36は、検出された音響データ、いわゆる画像データを生成する」(【0040】)と記載されていることを踏まえると、引用発明の「完全にビーム形成された検出信号」及び「取得モジュール」は、本件補正発明の「画像データ」及び「信号プロセッサ」に相当する。 よって、引用発明の「前記処ビーム形成部が出力した完全にビーム形成された信号を入力し、」「完全にビーム形成された検出信号を」「出力」する「取得モジュール」は、本件補正発明の「前記画像信号を受け取り、画像データを供給する信号プロセッサ」に相当する。 オ 引用発明の「トランスデューサアレイ」と「マイクロビーム形成器」と「処理部」と「取得モジュール」とをあわせたものが、本件補正発明の「トランスデューサアレイ」と「ビームフォーマ」と「信号プロセッサ」とを有する「画像取得ハードウェアアセンブリ」に相当する。 カ 引用発明の「無線超音波プローブ」が備える「完全にビーム形成された検出信号を前記基地局ホストシステムへ無線送信」するための「トランシーバ」は、本件補正発明の「前記3次元超音波画像取得装置を前記モバイルコンソールと接続するためのワイヤレスインタフェース」に相当する。 キ 引用発明の「ビーム形成部」は、本件補正発明の「主ビームフォーマ」に相当する。 よって、上記ウを踏まえると、引用発明の「前記ビーム形成部」と「複数個(128個)備え」る「前記マイクロビーム形成器」とが、本件補正発明の「主ビームフォーマ及び複数のマイクロビームフォーマを有」する「前記ビームフォーマ」に相当する。 ク 引用発明の「複数個(128個)」の「前記マイクロビーム形成器」が、「前記トランスデューサアレイの要素ごとの」「部分的にビーム形成された信号を結合(1組16個)して、わずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を出力」することは、「1組16個のマイクロビーム形成器」からなるサブクループを「8組」にグループ化し、「わずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号」として「出力」しているといえる。 また、前記グループ化によって、後段に続く「ビーム形成部」へ信号の数は大幅に減少されることから、「ビーム形成部」が、前記グループ化をしているとみることができる。 よって、引用発明の「複数個(128個)」の「前記マイクロビーム形成器」から「前記トランスデューサアレイの要素ごとの」「部分的にビーム形成された信号を結合(1組16個)して、わずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を出力し」、当該信号を「ビーム形成部」に「入力」することは、本件補正発明の「前記主ビームフォーマが、前記複数のマイクロビームフォーマをサブグループにグループ化」することに相当する。 ケ 引用発明の「部分的にビーム形成された信号」は、本件補正発明の「ビーム成形された音響信号」に相当する。 よって、引用発明の「ビーム形成部」が、「前記マイクロビーム形成器が出力したわずかな数(8組)の部分的にビーム形成された信号を入力して、完全にビーム形成された信号を生成」することは、本件補正発明の「前記主ビームフォーマが、前記マイクロビームフォーマから受信されるビーム成形された音響信号にビームフォーミングを行って、前記ビーム成形された画像信号を生成」することに相当する。 コ 本件補正発明の「前記ワイヤレスインタフェースが、前記ビーム成形された画像信号を、前記モバイルコンソールの前記画像プロセッサにワイヤレス送信する」は、本件補正発明において、「ビーム成形された画像信号を供給するビームフォーマと、前記画像信号を受け取り、画像データを供給する信号プロセッサ」が特定されていることから、「前記ワイヤレスインタフェースが、前記ビーム成形された画像信号の前記画像データを、前記モバイルコンソールの前記画像プロセッサにワイヤレス送信する」ことを意味するものと解せる。 一方、引用発明では、「前記トランシーバは、前記取得モジュールが出力した完全にビーム形成された検出信号を前記基地局ホストシステムへ無線送信し、」「前記トランシーバから無線送信された完全にビーム形成された検出信号が、前記基地局ホストシステムによって、画像処理され」ることから、引用発明の「前記トランシーバは、(完全にビーム形成された検出信号の)完全にビーム形成された検出信号を前記基地局ホストシステム」の「画像処理」部「へ無線送信し」ていることは明らかである。 よって、引用発明の「前記トランシーバは、(完全にビーム形成された検出信号の)完全にビーム形成された検出信号を前記基地局ホストシステム」の「画像処理」部「へ無線送信」することは、本件補正発明の「前記ワイヤレスインタフェースが、前記ビーム成形された画像信号を、前記モバイルコンソールの前記画像プロセッサにワイヤレス送信する」ことに相当する。 (4)判断 したがって、本件補正発明と引用発明との間に相違するところはないことから、本件補正発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)請求人の主張 請求人は、「完全にビーム形成された検出信号」を、「完全にビームフォーミングされた送信エコー信号に応じて検出された受信エコー信号」(下線は当審において付した。)と解釈するのが適当であると主張するが、上記下線部の「送信エコー信号」が、「送信」信号なのか「エコー(受信)」信号なのか不明であり、仮に、「完全にビームフォーミングされた送信信号に応じて検出された受信エコー信号」と解釈するのが適当であるとの主張であるなら、上記(2)ウにおいて、引用発明を認定したとおり、「完全にビーム形成された検出信号」は、「取得モジュール」により、「ビーム形成部が出力した完全にビーム形成された信号を入力し、復調及び検出された完全にビーム形成された信号」であるから、請求人の主張における上記解釈は採用できない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年8月31日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成29年11月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の要旨は、次のとおりである。 本願の請求項1?3、5?13に係る発明は、引用文献1(特表2010-528696号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「モバイルコンソール」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も、引用発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-06-27 |
結審通知日 | 2019-07-02 |
審決日 | 2019-07-16 |
出願番号 | 特願2015-531661(P2015-531661) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) P 1 8・ 113- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 門田 宏 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | モバイル3Dワイヤレス超音波画像取得装置及び超音波イメージングシステム |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |