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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1357446
審判番号 不服2018-12367  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-14 
確定日 2019-11-27 
事件の表示 特願2016-544107号「転倒防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月9日国際公開、WO2015/102630、平成29年 1月12日国内公表、特表2017-501084号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月2日を国際出願日とする出願であって、平成28年8月29日に手続補正書が提出され、平成29年9月28日付けで拒絶理由が通知され、平成30年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明は、平成30年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
車両が車両の動作の非転倒ステアリング範囲内でステアリングを切ることを許すが、車両が車両の転倒しきい値を超えてステアリングを切ることを防止することを特徴とする転倒防止装置。」
なお、請求項1は、補正されていない。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
[理由1]
この出願の請求項1?8及び20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]
この出願の請求項1?8及び20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平2-117467号公報

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「2.特許請求の範囲
・・・・
(2)ステアリングシャフトと、該シャフトの回転によりタイヤを回動させるステアリングラックと、該ラックに形成される係止手段と、該係止手段に係止可能なソレノイドと、該ソレノイドを制御する電子制御装置とを備え、車速と舵角、または車速に応じて前記ソレノイドを制御し、ステアリングラックの移動を制限することを特徴とするステアリングの安全機構。
・・・
(4)上記係止手段は、ステアリングラックに形成される切欠溝部または突起部であり、該切欠溝部または突起部が階段状に形成されることを特徴とする請求項2または請求項3記載のステアリングの安全機構。」(1ページ左欄4行?右欄17行)
(1b)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、運転者が急ハンドルを操作したときに有効なステアリングの安全機構に関する。
〔従来の技術〕
従来、ハンドルを回す力を人力だけでなく油圧或いは電動モータの力でアシストするパワーステアリングが知られている。これは、車速、舵角に応じてハンドルのパワーアシスト量を調整し、操舵性、安全性を考慮したステアリングであり、低速操舵時には、運転者の負担を軽減をするためにパワーアシストし、高速時にはハンドルの軽すぎによる不安定を防止するために、パワーアシストを制限するものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、従来のパワーステアリングにおいては、低速操舵時における運転者の負担を軽減をするためにパワーアシストすることが主眼であり、例えば、高速走行時において、遠心力による車両の横すべり、横転が生じるような急ハンドルを操作したときに、ステアリングを拘束するとか或いは復元力を積極的に与えることを考慮していない。
また、最近、前輪および後輪を電動モータにより90度まで操舵可能にし、車両の小回り或いは平行移動を可能にする電気自動車が開発されているが、かかる方式においては、急ハンドルを操作したきに、ステアリングを拘束するとか或いは復元力を積極的に与えないと、車両の横すべり、横転が生じる恐れがある。
本発明は、上記問題を解決するものであって、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができるステアリングの安全機構を提供することを目的とする。」(2ページ左上欄10行?左下欄2行)
(1c)
「第4図および第5図は本発明の他の実施例を示している。
第4図の実施例は、ステアリングラック6に切欠溝部15を設け、該切欠溝部15に対向してソレノイド16を設け、車速センサ11により車速が所定値以上になると、これを電子制御装置10が判断してソレノイド16をオンし、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させるものである。従って、ステアリングラック6が摺動するとき、プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接し、切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することができる。なお、ソレノイド16をオフしたときに、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させるようにしてもよく、その場合には、ソレノイド16に断線等の故障が生じても操舵を制限することができる。また、切欠溝部15の代わりに突起部を設けるようにしてもよい。
第5図の実施例は、ステアリングラック6の切欠溝部15を階段15aを形成し、車速に応じてソレノイド16への出力を変化させ、プランジャ16aの突出長を制御するものである。従って、車速に応じて操舵制限範囲を可変にすることができる。」(3頁右上欄20行?右下欄2行)

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1c)に記載の実施例は、摘記(1a)に記載された「ステアリングの安全機構」の発明を、具体的に説明するものであり、摘記(1b)の課題を解決することを目的とするものであることは、明らかである。
このことと、摘記(1a)?(1c)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「ステアリングラック6に切欠溝部15を設け、該切欠溝部15に対向してソレノイド16を設け、車速センサ11により車速が所定値以上になると、これを電子制御装置10が判断してソレノイド16をオンし、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させ、ステアリングラック6が摺動するとき、プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接し、切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することにより、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる、
ステアリングの安全機構。」

第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)

「操舵」は、「かじをあやつって船の針路を保ち、または方向を変えること。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、「ステアリング」は、「自動車のハンドル。ステアリング‐ホイール。また、ハンドルの切れぐあい。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、引用発明は、「ステアリングの安全機構」であるから、引用発明の「操舵可能」の「操舵」は、車両のハンドルすなわちステアリングを切ることで車両の方向を変えることであり、ステアリングを切る動作を含むものと理解できる。

引用発明は、「車速センサ11により車速が所定値以上になると、これを電子制御装置10が判断してソレノイド16をオンし、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させ、ステアリングラック6が摺動するとき、プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接し、切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限する」ものである。
したがって、引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、「プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接」するまでの範囲であり、「切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能」であるから、「操舵可能」な範囲内であり、上記アを踏まえると、ステアリングを切ることがきる範囲内であるといえる。

また、引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、「切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することにより、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」ことから、上記イに加えて、「運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」範囲内でもあるといえる。
「横転」は、「横ざまにころがること。『列車が?する』[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、「転倒」は、「ひっくりかえること。ひっくりかえすこと。『斜面で?する』[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であるから、「横転」も「転倒」も、車両の動作としては、同様の動作を定義しているものといえる(本願明細書の段落【0003】の「-通常、車両が横転したり仰向けに回転する車両事故として定義される-車両転倒は、車両衝突事故の極めて危険な形態である。」という記載も参照。)。
そして、上記アを踏まえると、引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、「運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」範囲内であるから、すなわち、運転者が急にステアリングを切っても、車両が横すべりも転倒もしない範囲内であるといえる。

したがって、引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、車両が横すべりも転倒もしない範囲内であり(上記ウ)、かつ、ステアリングを切ることがきる範囲内である(上記イ)といえる。
そして、車両が横すべりも転倒もしないことは、車両の動作であり、ステアリングを切ることがきる範囲内は、ステアリング範囲内といえるから、引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、車両の動作の横すべりも転倒もしないステアリング範囲内であるといえる。
(2)
引用発明の「車速センサ11」や「電子制御装置10」が、車両に搭載されていることは技術常識であり、引用発明の「切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限すること」は、「ステアリングラック6に切欠溝部15を設け、該切欠溝部15に対向してソレノイド16を設け、車速センサ11により車速が所定値以上になると、これを電子制御装置10が判断してソレノイド16をオンし、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させ、ステアリングラック6が摺動するとき、プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接」することによって行われるから、上記(1)ウ及びエを踏まえると、車両に搭載された電子制御装置10すなわち車両が、車両の動作の横すべりも転倒もしないステアリング範囲内でステアリングを切ることを許すといえる。
(3)

本願発明の「車両が車両の動作の非転倒ステアリング範囲内でステアリングを切ることを許す」ことの「非転倒ステアリング範囲内」は、非転倒という所定のステアリング範囲内であるといえる。

上記(1)及び(2)を踏まえると、引用発明の「ステアリングラック6に切欠溝部15を設け、該切欠溝部15に対向してソレノイド16を設け、車速センサ11により車速が所定値以上になると、これを電子制御装置10が判断してソレノイド16をオンし、ソレノイド16のプランジャ16aを突出させ、ステアリングラック6が摺動するとき、プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接し、切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することにより、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」構成(以下「構成A」ともいう。)は、車両が、車両の動作の横すべりも転倒もしないステアリング範囲内でステアリングを切ることを許す構成であるといえる。
そして、横すべりも転倒もしないステアリング範囲内は、横すべりも転倒もしないという所定のステアリング範囲内であるといえる。

したがって、引用発明の構成Aと、本願発明の「車両が車両の動作の非転倒ステアリング範囲内でステアリングを切ることを許す」構成とは、「車両が車両の動作の所定のステアリング範囲内でステアリングを切ることを許す」構成の限りで共通している。
(4)

引用発明の「切欠溝部15の範囲内」は、車両が横すべりも転倒もしない範囲内であり(上記(1)ウ)、引用発明の「切欠溝部15の範囲」の両側は、「切欠溝部15の範囲」外とのしきい値となっており、車両が横すべりも転倒もしないしきい値を示しているといえる。
そうすると、引用発明の「切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することにより、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」ことは、車両の横すべりも転倒もしないしきい値を超えてステアリングを切ることを防止することであり、上記(3)を踏まえると、車両が、車両の横すべりも転倒もしないしきい値を超えてステアリングを切ることを防止することであるといえる。
したがって、引用発明の構成Aは、車両が車両の横すべりも転倒もしないしきい値を超えてステアリングを切ることを防止する構成も含むといえる。

本願発明の転倒しきい値は、所定のしきい値といえる。
引用発明の構成Aが含む、横すべりも転倒もしないしきい値も、所定のしきい値といえる。
したがって、引用発明の上記アの構成を含む構成Aと、本願発明の「車両が車両の転倒しきい値を超えてステアリングを切ることを防止すること」の構成とは、「車両が車両の所定のしきい値を超えてステアリングを切ることを防止すること」の構成の限りで共通している。
(5)
引用発明の「ステアリングの安全機構」は、「運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる」ものであるから、横すべり、転倒防止装置であり(上記(1)ウも参照)、引用発明の「ステアリングの安全機構」と本願発明の「転倒防止装置」とは、「防止装置」の限りで共通している。

2 一致点及び相違点
以上から、本願発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「車両が車両の動作の所定のステアリング範囲内でステアリングを切ることを許すが、車両が車両の所定のしきい値を超えてステアリングを切ることを防止する防止装置。」
<相違点>
所定のステアリング範囲内、車両の所定のしきい値、及び、防止装置に関して、本願発明は、「非転倒」ステアリング範囲内であり、「転倒」しきい値であり、「転倒」防止装置であるのに対して、引用発明は、「プランジャ16aが切欠溝部15の端に当接し、切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限することにより、運転者が急ハンドルを操作しても、車両の横すべり、横転を防止することができる、ステアリングの安全機構」、すなわち、横すべりも転倒もしないステアリング範囲内であり(上記1(1))、車両の横すべりも転倒もしないしきい値であり(上記1(4))、横すべり、転倒防止装置である(上記1(5))点。

第6 判断
1 相違点についての検討
以下、相違点について検討する。
(1)
引用発明の横すべりも転倒もしないステアリング範囲内は、転倒しないステアリング範囲内、すなわち、非転倒ステアリング範囲内であるといえる。
したがって、引用発明の横すべりも転倒もしないステアリング範囲内は、本願発明の「非転倒」ステアリング範囲内に相当する。
同様に、引用発明の車両の横すべりも転倒もしないしきい値は、転倒しきい値であるといえるし、引用発明の横すべり、転倒防止装置は、横すべりも転倒も防止する装置であると理解できるから、転倒防止装置であるといえる。
したがって、引用発明の車両の横すべりも転倒もしないしきい値、及び、横すべり、転倒防止装置は、それぞれ、本願発明の「転倒」しきい値、及び、「転倒」防止装置に相当する。
以上から、上記の相違点は、相違点とはいえず、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)である。
(2)
引用発明が、横すべりを防止することをも含むことにより、転倒を防止することを対象としている本願発明と、実質的に上記の相違点で相違しているとした場合についても、以下に検討する。
「横転」は大事故となる虞があり(本願明細書の段落【0003】も参照)、「横すべり」よりも危険な状態であるといえるところ、引用発明は「安全機構」であるから、より危険な「横転」すなわち転倒を防止することは、必須の事項であるといえる。
そうすると、引用発明において、必要不可欠な転倒を防止することに着目して、転倒を防止するように、ステアリングを切ることができる範囲及びそれに対応するしきい値を定め、転倒防止装置とすることで、上記相違点に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。

2 審判請求人の主張について
2-1
審判請求人は、審判請求書(5.(2)?(4))において、
「よって、引用例1においては、横すべりや横転が生じるような急ハンドルを操作した場合においても、実際に横すべりや横転が生じないようステアリングシャフトに復元力を与えたり拘束力を与える発明が開示されています。
(3)すなわち、引用例1では、転倒のしきい値を超えるような急ハンドルを操作した場合に、実際の転倒が生じないような技術を提供するものであり、本願発明のように『車両が車両の転倒しきい値を超えてステアリングを切ることを防止する』ものではありません。
引用例1においては、高速走行時に急ハンドルを切ったあとの転倒を防止する事後的な対処技術を開示していますが、これに対して本願発明では転倒のしきい値を超えるステアリング操作を防止する予防的な技術を開示するものであります。
(4)このように、転倒しきい値を超えるハンドル操作を予め防止する本願発明と、高速時の急ハンドル操作後の転倒を事後的に抑制する引用例1では、転倒を防止するための概念と技術が大きく異なります。
したがって、本願発明の『車両が車両の転倒しきい値を超えてステアリングを切ることを防止する』という特徴は、引用例1に記載されたものではなく、急ハンドルを切った後の事後的な対処策を開示している引用例1から当業者が容易に想到しうるものではありません。」
と主張する。
2-2
審判請求人は、「引用例1では、転倒のしきい値を超えるような急ハンドルを操作した場合」と主張するが、引用発明は、「急ハンドルを操作」するものであっても、「切欠溝部15の範囲」でステアリングが切られるものであって、「転倒のしきい値を超えるような急ハンドルを操作」することはできず、本願発明と同様に、「車両が車両の転倒しきい値を超えてステアリングを切ることを防止する」ものである(上記1を参照。)。
そして、引用発明は、「車速センサ11により車速が所定値以上になると」、「切欠溝部15の範囲内でのみ操舵可能に制限する」ものであるところ、引用文献1には、他の実施例である第5図の実施例について、「ステアリングラック6の切欠溝部15を階段15aを形成し、車速に応じてソレノイド16への出力を変化させ、プランジャ16aの突出長を制御するものである。従って、車速に応じて操舵制限範囲を可変にすることができる。」(摘記(1c))と記載され、「車速と舵角、または車速に応じて前記ソレノイドを制御し、ステアリングラックの移動を制限すること」(摘記(1a)))も記載されていることから、引用発明は、諸条件応じて自動的にステアリング範囲を変更できるようにすること(例えば、本願の請求項3に係る発明や本願の第4実施例(図5?7A等)に係る発明とすること)も想定されているものである。
これらのことから、引用発明は、「事後的な対処技術」ではなく、本願発明と同様に「予防的な技術」であるといえる。
したがって、上記2-1の審判請求人の主張は、採用できない。

3 まとめ
以上から、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、また、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-19 
結審通知日 2019-06-25 
審決日 2019-07-17 
出願番号 特願2016-544107(P2016-544107)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
P 1 8・ 113- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 泰貴  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
島田 信一
発明の名称 転倒防止装置  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

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