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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B63B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B63B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B63B |
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管理番号 | 1357448 |
審判番号 | 不服2018-17197 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-06 |
確定日 | 2019-11-27 |
事件の表示 | 特願2018-22495号「CO_(2)削減システム」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月1日出願公開、特開2019-127250号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年1月24日の出願であって、同年6月1日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日付け(差出日同年7月17日)で意見書及び手続補正書が提出され、同年8月31日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月26日付け(差出日同年9月25日)で意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月7日付けで補正の却下の決定がされるとともに同日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月6日に(同年12月7日付けで)拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 補正の却下の決定の適否 審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、平成30年11月7日付けの補正の却下の決定は適法でない旨主張しているので、まず、この補正の却下の決定が適法であるか否かについて、以下に検討する。 1 平成30年9月26日付けの補正 平成30年9月26日付けの手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、当審が付した。以下同様である。)。 「 【請求項1】 海上CO_(2)削減・発電システム船は天然ガス(NG),空気,電解H_(2)の混焼燃料ガスを使用する 省NG,省CO_(2),H_(2)MACC発電機、海水?冷却用水設備、蒸留水?電解H_(2)発生器、 発電時の排気ガス中のCO_(2)を回収液化する硅石PTSA方式CO_(2)回収液化設備、を搭載し排出CO_(2)除去済みのクリ-ン化された生活用役(電気都市ガス)を供給する 又船側には輸入LNG受入の浮揚LNG貯留槽、その貯留槽の上部に再生可能エネルギ-でシステム電力用の発電々力電源設備を搭載配備し 発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化とすれば 発電コストの低減、 省化石燃料化で 枯渇資源緩和 が図れる 更に 海上システム船で製造の液化N_(2)冷熱と電解H_(2)(MCH)を陸上に輸送 都市ガスを再液化設備で液化 大型ディゼル車輌 液化燃料コンテナ-化で排気ガス中のCO_(2)削減 長距離走行が図れる 電解H_(2)(MCH)はN_(2)冷熱とH_(2)タ-ビンでの 再液化設備で液化 大型ディゼル車輌 液化H_(2)燃料コンテナ-化と燃料電池で 無CO_(2)排出 長距離走行が図れる そして海上システム船で製造の液化CO_(2)を高圧液化CO_(2)化 海底深層に圧入し CCS貯留量増加と効率化で 大気中のCO_(2)残留量の削減で温暖化防止緩和が図れる 又高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性で プレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化で 地震災害の緩和が図れる CO_(2)削減で生活環境保全対策を特徴とする 海上CO_(2)削減・発電システム船。」 2 平成30年11月7日付けの補正の却下の決定の概要 [結論] 平成30年9月25日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、次の理由によって却下します。 合議体注:なお、上記「平成30年9月25日付け手続補正書」は、「平成30年9月26日付け手続補正書」の誤記である。 [理由] 上記手続補正書による特許請求の範囲の補正は、以下「理由(新規事項)」に示すとおり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、上記結論のとおり決定します。 理由(新規事項) (1)請求項1には「・・・発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化・・・」とあります。この記載は、「電機補器」、「冷却用水設備」、「電解H_(2)発生器」、「CO_(2)回収液化設備」、「液化N_(2)化の動力」の「電源化」を意味するのか、「電機補器」、「冷却用水設備」、「電解H_(2)発生器」、「CO_(2)回収液化設備」、「液化N_(2)化」の「動力」を「電源化」することを意味するのか、それ自体記載が不明確ですが、いずれにせよ、上記の各機器等を「電源化」することは当初明細書等に記載されていません。 (2)請求項1には「海上システム船で製造の液化N_(2)冷熱と電解H_(2)(MCH)を陸上に輸送」とあります。しかし、「液化N_(2)冷熱」を陸上に輸送することは当初明細書等に記載されていません。 (3)請求項1に記載の「H_(2)タ-ビン」は当初明細書等に記載されていません。 (4)請求項1に記載の「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」は当初明細書等に記載されていません。この点について図3を補正の根拠としていますが、少なくとも「デコルマ滑歪断層間」、「滑摩擦応力」との事項は読み取れません。 なお、上記手続補正書による補正が仮にいわゆる新規事項に該当しないものであったとしても、以下の理由により、この出願は特許を受けることができません。 ・理由 第36条第6項第2号 ・請求項1 上記「理由(新規事項)」の(1)で述べた「・・・発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化・・・」との記載、「都市ガスを再液化設備で液化 大型ディゼル車輌 液化燃料コンテナ-化」との記載、「電解H_(2)(MCH)はN_(2)冷熱とH_(2)タ-ビンでの 再液化設備で液化 大型ディゼル車輌 液化H_(2)燃料コンテナ-化と燃料電池で 無CO_(2)排出 長距離走行が図れる」との記載は、用語と用語のかかりを含む文法体系等が明確でないため日本語として不明確であり、発明の構成が不明確です。 ・理由 第36条第4項第1号及び第6項第2号 ・請求項1 (1)「CCS」が何を意味するのか、またCCS貯留量の効率化が何を意味するのか不明確です。そのため、発明の詳細な説明には、「CCS貯留量増加と効率化で 大気中のCO_(2)残留量の削減で温暖化防止緩和が図」る事項を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められません。 (2)「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」は、それ自体、技術的な原理等が不明確です。そのため、発明の詳細な説明には、上記の事項を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められません。 3 当審の判断 平成30年9月26日付けの補正(上記1参照)を、以下「本願補正2」といい、当該補正により補正された請求項1を、以下「補正2の請求項1」という。 補正2の請求項1は、「発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化」という事項、「液化N_(2)冷熱」「を陸上に輸送」という事項、「H_(2)タービン」という事項、及び、「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」という事項を含んでいる。 そこで、これらの事項が、当初明細書等に記載した事項であり、本願補正2が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて、以下に検討する。 (1)「発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化」という事項について ア 当初明細書等には、「電源」等に関して、以下の事項が記載されている(その事項が記載されている段落番号ないし請求項を、(【 】)で示す。また、関連する図も示す。以下同様である。)。 (ア) 「省NG,省CO_(2),H_(2),発電機の排出ガス中CO_(2)(12)を浮揚LNG貯留槽(19)に搭載した太陽光,風力発電動力(17)」(【請求項3】) 「システム電源設備仕様の決定。」(【0010】) 「海上 浮揚LNG貯留槽と電源設備の効用」(【0014】) 「*パリ協定遵守 周辺海洋国のクリ-ンエネルギ-対策として。自然用役電源能力と排ガス中CO_(2)の液化」(【0015】) 「(3)電解H_(2)(海水?淡水?蒸留水?電気分解?H_(2),NGとCOの省量化 無料自然用役で燃焼ガス化) (4)システム船 搭載 コンバインド サイクルMACC発電機(N.G.空気H_(2)の混合ガス燃料発電) (5)電気(再生可能エネでシステム電気動力化 省NG・省CO_(2) MACCの発電々力は生活用役) ・・・ (7)海水(自然用役)?膜浸透?淡水化(海水からシステム冷却 用水) (8)淡水(熱排ガスを水洗塔で予冷)?(システム補機の冷却水) (9)蒸気(スチ-ム用役-MACC発電機 蒸気タ-ビン用高圧スチ-ム化) (10)蒸留水(蒸気タ-ビン駆動 復水器で蒸留水化)?(水洗塔からの淡水と合流)?(排熱回収ボイラで高圧スチ-ム化)?(分流蒸留水は電気分解H_(2)発生器に) (11)電解H_(2)発生器(蒸留水の電気分解でH_(2)とO_(2)のガス化) (12)排気ガス中CO_(2)削減(冷水塔水で水洗塔にて冷却、PTSA附着塔の上部低温硅石表面に水分を附着,中部硅石表面にはCO_(2)附着,乾燥低温N_(2)O_(2)は分離塔N_(2)タ-ビンで極低温化しPTSA切替で脱着塔に流入、附着富化CO_(2)は水分を短時初期放出後、富化CO_(2)はPTSA CO_(2)回収液化装置に圧送、N_(2)は冷水塔に送り排気ガス中CO_(2)を冷却のサイクル) (13)液化N_(2)(附着塔でCO_(2)除去の低温乾燥N_(2)O_(2)は下部分離塔で富化N_(2)と富化O_(2)に分離、富化N_(2)は濃縮N_(2)タ-ビンで冷熱化し液化低温N_(2)化し多種排気ガス中CO_(2)液化源化。 (14)空気冷熱(大気空気を圧縮乾燥液化、空気タ-ビンで冷熱発生、CO_(2)液化の冷熱源化) (15)液化H_(2)(海水-電解H_(2)-MCH-陸上で液化 FCV-燃料電池-H_(2)燃料ガス化で排気ガス浄化) (16)液化H_(2)コンテナ-(FCV車輌の液コンテナ-化で車輌の小型化と走行性能向上) (17)太陽光 風力 発電(大量なシステム電源、広大な面積と安全性を確保の必要性) (18)浮遊システム電源設備(自然再生エネルギ-電源確保 輸入LNG受入貯留槽の上面利用) (19)浮揚LNG冷熱貯留槽(輸入LNG海上受入 LNG資源枯渇課題 LNG冷熱利用改善) (20)硅石PTSA方式CO_(2)回収液化設備(自然石 火力発電 排気ガス中CO_(2)回収液化システム 排気ガス分離とLNG冷熱の利用 液化CO_(2)自然災害小規模化活用 CO_(2)削減の安全設備)」(【0019】) (イ) 図1、2は、以下のとおりである。 【図1】 【図2】 イ 当初明細書等には、「動力電源化」という用語は記載されておらず(上記ア等参照)、「発電機補器、冷却用水設備、電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化」の「動力電源化」という事項は、記載されていない。 ウ (ア) 審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「補正の却下の決定(平成30年11月7日付け)」において、「(1)請求項1「電源化」の意味 海上「浮揚LNG貯留槽に搭載配備された再生可能エネで発電した電力をシステム設備の電気動力とする電源化。」と主張している(後記の(6)ア(ア)を参照。)。 (イ) 後記の(6)ア(ア)の主張は、全体的にどのようなことを主張しているのか定かではないが、この主張の上記の「システム設備」が、仮に、補正2の請求項1の「発電機補器、冷却用水設備、電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化」を示しているとした場合、補正2の請求項1の「浮揚LNG貯留槽、その貯留槽の上部に再生可能エネルギ-でシステム電力用の発電々力電源設備を搭載配備し 発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化とすれば」という事項は、浮揚LNG冷熱貯留槽(19)の上部に、再生可能エネルギ-で発電する、例えば、太陽光 風力 発電(17)や浮遊システム電源設備(18)から構成される、電源設備を搭載配備し(上記補正2の請求項1の「浮揚LNG貯留槽、その貯留槽の上部に再生可能エネルギ-でシステム電力用の発電々力電源設備を搭載配備し」に対応する。)、浮揚LNG冷熱貯留槽(19)の上部に搭載配備した電源設備からの電力によって、システム設備である、「発電機補器」、「冷却用水設備」、「電解H_(2)発生器(11)」、「CO_(2)回収液化設備」及び「液化N_(2)化」の、それぞれが駆動されること(上記補正2の請求項1の「発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化」に対応する。)を意味していると解することもできる。 このことを踏まえ、さらに検討する。 (ウ) a 「発電機補器」という事項は、当初明細書等に記載されておらず、上記ア(ア)の記載事項(特に「(17)太陽光 風力 発電(・・・システム電源・・・)」、「(8)淡水(熱排ガスを水洗塔で予冷)?(システム補機の冷却水)」及び「(9)蒸気(・・・MACC発電機・・・)」)や図1(特に符号「(17)」、「(8)」及び「9」が示す箇所)等を参照しても、浮揚LNG冷熱貯留槽(19)の上部に搭載配備した電源設備からの電力によって「発電機補器」が駆動されることが記載されているとはいえないし、それが記載されているといえる根拠もない。 b また、上記ア(ア)の記載事項(特に「(11)電解H_(2)発生器」)や図1(特に符号「(11)」の示す箇所)等を参照しても、浮揚LNG冷熱貯留槽(19)の上部に搭載配備した電源設備からの電力によって「電解H_(2)発生器」が駆動されることが記載されているとはいえないし、それが記載されているといえる根拠もない。 c さらに、「冷却用水設備」及び「液化N_(2)化」という事項は、当初明細書等に記載されておらず、上記ア(ア)の記載事項(特に符号「(7)」、「(8)」、「(12)」、「(13)」、「(17)」、「(20)」の意味)や図1(特にそれらの符号が図1において示している箇所)等を参照しても、浮揚LNG冷熱貯留槽(19)の上部に搭載配備した電源設備からの電力によって「冷却用水設備」、「CO_(2)回収液化設備」及び「液化N_(2)化」が駆動されることが記載されているとはいえないし、それが記載されているといえる根拠もない。 エ したがって、補正2の請求項1の「発電機補器、冷却用水設備、 電解H_(2)発生器、CO_(2)回収液化設備と液化N_(2)化の動力電源化」という事項は、当初明細書等に記載されていないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 (2)「液化N_(2)冷熱」「を陸上に輸送」という事項について 補正2の請求項1の「液化N_(2)冷熱」「を陸上に輸送」という事項は、当初明細書等に記載されていない。 (3)「H_(2)タ-ビン」という事項について ア 当初明細書等には、「タービン」、「H_(2)」等に関して、以下の事項が記載されている。 (ア) 「自然用役(海水7,太陽光風力発電17,)で海水(7)?膜浸透-淡水(8)?蒸気(9)?蒸留水(10)?電解H_(2)(11)設備でH_(2)発生を省NG,省CO_(2),H_(2),MACC発電機の燃料ガス使用、混合ガスの燃焼効率化とガスタ-ビン 蒸気タ-ビン 排熱回収ボイラの性能と混合ガス燃焼効率を保持して省NG化と排気ガス中CO_(2)(12)削減を図る。」(【請求項2】) 「5省NG,CO_(2),H_(2) MACC発電機(NG空気H_(2)量,燃焼温度,排ガス温度圧力,CO_(2)濃度のタ-ビン技術) 6排熱回収ボイラ(海水-膜-淡水-冷却水-スチ-ム-蒸気タ-ビン-発電-蒸留水化-電解H_(2).水処理技術)」(【0001】) 「N_(2)膨張タ-ビン発生冷熱量」(【0016】) 「【図4】 液化H_(2)活用(FCV車輌)」(【0017】) 「(13)液化N_(2)(附着塔でCO_(2)除去の低温乾燥N_(2)O_(2)は下部分離塔で富化N_(2)と富化O_(2)に分離、富化N_(2)は濃縮N_(2)タ-ビンで冷熱化し液化低温N_(2)化し多種排気ガス中CO_(2)液化源化。 (14)空気冷熱(大気空気を圧縮乾燥液化、空気タ-ビンで冷熱発生、CO_(2)液化の冷熱源化) (15)液化H_(2)(海水-電解H_(2)-MCH-陸上で液化 FCV-燃料電池-H_(2)燃料ガス化で排気ガス浄化) (16)液化H_(2)コンテナ-(FCV車輌の液コンテナ-化で車輌の小型化と走行性能向上)」(【0019】) (イ) 図4は、以下のとおりである。 【図4】 イ 当初明細書等(上記ア等参照)には、「H_(2)タービン」という事項は記載されていない。 ウ また、図4の記載と、図4に記載された符号「(13)」ないし「(16)」が示す意味(上記ア(ア))を併せて参照しても、図4に、「H_(2)タービン」が記載されているといえる根拠はない。 エ したがって、補正2の請求項1の「H_(2)タービン」という事項は、当初明細書等に記載されていないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 (4)「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」という事項について ア 当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 (ア) 「深海底貯留層に高圧液化CO_(2)(21)注入し深海層CCS貯留量(22)の増加と能率化、又巨大地震々源域のプレ-ト摩擦歪蓄積部(23)に注入、滑り潤滑性効果で地震力の小規模化を図り、」(【請求項3】) 「2海底プレ-ト移動と地殻探査 液化CO_(2)の潤滑性で地震の小規模化の実証試験。」(【0008】) 「【図3】 液化CO_(2)活用」(【0017】) 「(21)高圧液化CO_(2)(特性の液ポンプで高圧化 輸送 深層海底えの高圧注入と貯留性の向上) (22)海底深層 CCS貯留(液化CO_(2)貯留量の増大効率化) (23)プレ-ト摩擦部潤滑性(地震歪部に高圧液化CO_(2)注入で潤滑性で地震の小規模化)」(【0019】) (イ) 図3は、以下のとおりである。 【図3】 イ (ア) 当初明細書等(上記ア参照)には、「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入」という事項は、記載されていない。 (イ) 「デコルマ」という用語について、「褶曲の単位層の間にはすべり面が生じており、このすべり面の大規模なものをデコルマン(デコルマ)とよぶ。」(「日本大百科全書(ニッポニカ)」株式会社小学館、及び、「コトバンク」株式会社朝日新聞社)と記載されていることから、補正2の請求項1の「デコルマ」は、層と層とのすべり面、あるいは、プレートとプレートとのすべり面を意味しているものと理解できる。 したがって、補正2の請求項1の「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入」という事項は、高圧液化CO_(2)を海底の層と層とのすべり面(デコルマ)に圧入すること、すなわち、高圧液化CO_(2)を海底のすべり面を構成する層と層との間に圧入することを意味していると理解できる。 このことを踏まえ、以下に検討する。 (ウ) 当初明細書等には、「デコルマ」という事項は記載されていないし、層と層とのすべり面という事項も記載されていない。 そこで、層と層とのすべり面(デコルマ)や、その位置を、「プレ-ト摩擦歪蓄積部」や「地震歪部」等の当初明細書に記載された事項から、導き出すことができるか否かについて、さらに検討する。 当初明細書等には、「巨大地震々源域のプレ-ト摩擦歪蓄積部(23)に注入、滑り潤滑性効果で地震力の小規模化を図り」及び「(23)プレ-ト摩擦部潤滑性(地震歪部に高圧液化CO_(2)注入で潤滑性で地震の小規模化)」(上記ア(ア))と記載されているから、図3における符号「(23)」は、「巨大地震々源域のプレ-ト摩擦歪蓄積部」及び「プレ-ト摩擦部潤滑性(地震歪部に高圧液化CO_(2)注入で潤滑性で地震の小規模化)」を意味するといえるが、図3において、その符号「(23)」の位置及び上記の意味を参照しても、「巨大地震々源域のプレ-ト摩擦歪蓄積部」の場所や、「プレ-ト摩擦部潤滑性」となっているといえる「地震歪部」の場所を、具体的かつ明確に特定することはできない。 さらに、「巨大地震々源域のプレ-ト摩擦歪蓄積部」や「地震歪部」の全ての部分が、層と層とのすべり面(デコルマ)を構成しているといえる根拠もないから、上記符号「(23)」の意味と当初明細書等の図3の記載を併せても、図3のものにおいて、層と層とのすべり面(デコルマ)自体が存在するのか否か、存在すればどこに存在しているのか特定することはできない。 したがって、当初明細書等の記載から、層と層とのすべり面(デコルマ)や、その位置を導き出すことはできない。 (エ) さらに、高圧液化CO_(2)を海底の層と層とのすべり面(デコルマ)に圧入すること、すなわち、高圧液化CO_(2)を海底のすべり面を構成する層と層との間に圧入することについては、以下のことがいえる。 当初明細書等には、「深海底貯留層に高圧液化CO_(2)(21)注入」と記載されているから、高圧液化CO_(2)(21)を「層」に「注入」するという事項は認められるものの、高圧液化CO_(2)(21)を「層」と「層」との間に「圧入」するという、ましてや、すべり面を構成する「層」と「層」との間に「圧入」するという事項が記載されているとはいえない。 そして、図3においては、「LCO_(2)高圧注入(21)」の配管がプレートとプレートとの間に位置しているようにも見えるが、その配管の先端がプレートとプレートとの間に位置しているか否かは不明であるし(例えば、プレートとプレートとの間より離れた位置に存在しているプレ-ト摩擦歪蓄積部に位置している可能性もある。)、仮に、その先端がプレートとプレートとの間に位置していたとしても、図3において、その先端が位置する部分やプレートとプレートとの間の全ての面が、層と層とのすべり面(デコルマ)に該当するか否かは不明であるから(上記(イ)及び(ウ))、「LCO_(2)高圧注入(21)」の配管の先端がデコルマに位置しているといえる根拠はなく、当初明細書の等の記載から、高圧液化CO_(2)を海底の層と層とのすべり面(デコルマ)に圧入すること、すなわち、高圧液化CO_(2)を海底のすべり面を構成する層と層との間に圧入することを導き出すことはできない。 (オ) そうすると、「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入」という事項が、当初明細書等に記載されているとはいえないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 ウ さらに、「滑摩擦応力」という事項も、当初明細書等には、記載されていないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 エ したがって、補正2の請求項1の「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」という事項は、当初明細書等に記載されていないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 (5)新たな技術的事項の導入について 上記のとおり、上記(1)ないし(4)の事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、技術常識を踏まえてみても当初明細書等から自明な事項であるとはいえないことから、当該事項を含む平成30年9月26日付けの補正(本願補正2)は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等)に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 (6)審判請求人の主張について ア 審判請求人の主張 審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「補正の却下の決定(平成30年11月7日付け)」において、以下のとおり主張している。 (ア) 「@理由(新規事項)」において、 「(1)請求項1「電源化」の意味 海上「浮揚LNG貯留槽に搭載配備された再生可能エネで発電した電力を システム設備の電気動力とする電源化。 「発電機補機」、「冷却用水設備」、「電解H_(2)発生機」、「硅石PTSA方式CO_(2)回収 液化設備と その内部設備で液化N_(2)化する」、システム電気動力電源。 *-1 当初登録請求〔請求項3〕に記載。」(以下「主張A」という。) 及び、 「(2)請求項1の「液化N_(2)冷熱」を陸上に輸送・・の記載なし *-2 当初登録請求〔書類名〕〔図面1〕で海上輸送の図示(赤印) (〔図面4〕H_(2)液化設備に液化N_(2)冷熱利用の図示、〔0019〕(13)に記載) (3)請求項1のH_(2)タ-ビン・・記載なし *-3 当初登録請求〔書類名〕〔図面4〕H_(2)液化設備,H_(2)タ-ビン,の名称 赤印追加記載 (4)請求項1の「デコルマ滑歪断層間」「滑摩擦応力」・・記載なし *-4 当初登録請求〔0019〕(23)に記載、〔図3〕デコルマ層の名称 赤印追加記載」(以下「主張B」という。) (イ) 「@拒絶査定不服審査 請求 文法体系 発明構成 明確 の不充分性」「・理由 第36条 第4条 第1号 及び 第6項 第2号」「・請求項1」「(2)」において、 「(2)「高圧液化CO2を海底デコルマ滑歪断層に圧入・・・」 大地震は プレ-ト境界断層(デコルマ地殻変動、可逆方向プレ-ト摩擦歪応力蓄積層)の 破壊で発生と予想、デコルマ摩擦層の荒砕多亀裂異質層に高圧液化CO_(2)注入で亀裂層間 摩擦応力を潤滑性で破壊力を緩和し 地震動と地震の小規模化を図る。」(以下「主張C」という。) イ 検討 (ア)主張Aについて 上記(1)及び(5)で述べたとおりであり、主張Aを踏まえて新規事項の追加の有無について検討した。 (イ)主張Bについて 当初明細書等とは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のことである(第2 2[理由]を参照)。 主張Bの「(赤印)」や「赤印追加記載」は、当初明細書等に、新たに記載を追加したものであると理解できるから、当初明細書等に記載されていることを示す根拠にはならない。 したがって、上記の主張Bは採用できない。 (ウ)主張Cについて a 主張Cは、上記の補正の却下の決定における、「なお、上記手続補正書による補正が仮にいわゆる新規事項に該当しないものであったとしても、以下の理由により、この出願は特許を受けることができません。」という記載の「以下の理由」に該当する「・理由 第36条第4項第1号及び第6項第2号」(以下「なお書きの理由」という。上記第2 2[理由]を参照。)に対する主張であると理解でき、なお書きの理由は、仮に、上記補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであったとしても、その補正された請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであり(特許出願の際独立して特許を受けることができず)、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである、というものである。 b 補正された請求項1に係る発明の「高圧液化CO_(2)を海底デコルマ滑歪断層間に圧入 滑摩擦応力を液CO_(2)潤滑性でプレ-ト滑摩擦地震々動の小規模化」は、本願明細書の記載などを参照しても、技術的な原理を理解することができず、「プレ-ト滑摩擦地震々動小規模化」が実現できるという実験結果も示されていないから、当業者であっても実施することはできず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしているとはいえない。 したがって、「摩擦応力を潤滑性で破壊力を緩和」することができる等のなお書きの理由に対する主張Cも採用できない。 (7)小括 以上のとおり、平成30年9月26日付けの補正(本願補正2)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(当初明細書等)の範囲内においてしたものでない。 よって、平成30年9月26日付けの補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法第53条第1項の規定により却下するとした、平成30年11月7日付けの補正の却下の決定は、適法なものである。 第3 本願発明 平成30年9月26日付けの補正は、平成30年11月7日付けの補正の却下の決定により却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年7月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 海上CO_(2)削減・発電システム船は天然ガス(NG),空気,電解H_(2),の混合ガス燃料使用する省NG,省CO_(2),H_(2),MACC発電機と海水?蒸気タービン駆動後の蒸留水?電解H2燃料発生器、 発電排ガス中のCO_(2),PM,を削減する硅石PTSA方式CO_(2)回収液化設備、を搭載しCO_(2),PM,除去済のクリーン化された生活用役(電気 都市ガス)を供給、 又 船側に輸入LNG受入 浮揚LNG貯留槽、その槽に搭載の再生可能エネルギーシステム電源設備、その電力で蒸留水を電気分解の電解H_(2)化と硅石PTSA方式CO_(2)回収液化装置の排ガス中CO_(2),PM,の削減、液化N_(2)化 動力源、化石燃料の省消費量化で枯渇緩和対策、 更に海上システムで製造の液化CO_(2),N_(2),冷熱を利用 大型車輌の液化燃料化で排ガス浄化、 長距離走行性能向上、大気中CO_(2)残留量の減少化を図り、 そして高圧液化CO_(2)を海底深層圧入 CCS貯留増量と効率化で大気中CO_(2)残留量削減、 海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換 天然ガス化で化石資源の枯渇緩和対策、 海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化 自然災害の緩和対策、 生活環境保全に活用することを特徴とする海上CO_(2)削減・発電システム船。」 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 [理由1](新規事項) 平成30年7月18日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 [理由2](明確性) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 [理由3](実施可能要件・明確性) この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1 理由1について (1)請求項1に記載の「PM,を削減する」、「PM,除去済」、「PM,の削減」は当初明細書等に記載されていません。 (2)請求項1には「浮揚LNG貯留槽、その槽に搭載の再生可能エネルギーシステム電源設備」と記載されていますが、浮揚LNG貯留槽に再生可能エネルギーシステム電源設備を搭載することは当初明細書等に記載されていません。 (3)請求項1に記載の「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換 天然ガス化で化石資源の枯渇緩和対策、海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」は当初明細書等に記載されていません。 2 理由2について ・請求項1 請求項1の記載において、用語と用語のかかり、名詞、動詞、助詞、あるいは主語、述語、目的語等の文法体系等が明確でなく、発明の構成が著しく不明確です。 例えば、「船側に輸入LNG受入 浮揚LNG貯留槽、その槽に搭載の再生可能エネルギーシステム電源設備、その電力で蒸留水を電気分解の電解H_(2)化と硅石PTSA方式CO_(2)回収液化装置の排ガス中CO_(2),PM,の削減、液化N_(2)化 動力源、化石燃料の省消費量化で枯渇緩和対策、更に海上システムで製造の液化CO_(2),N_(2),冷熱を利用 大型車輌の液化燃料化で排ガス浄化、長距離走行性能向上、大気中CO_(2)残留量の減少化を図り」は「船側に」がどの用語までかかるのか不明確ですし、動詞が「図り」しかなく「船側に・・・図る」では日本語としても不明確です。 また、「・・・枯渇緩和対策、」のように動詞で終わるべきと思われる末尾が名詞となっており、日本語としても不明確です。 3 理由3について ・請求項1 (1)上記理由2とも関連しますが、船において「大型車輌の液化燃料化で排ガス浄化、長距離走行性能向上、大気中CO_(2)残留量の減少化を図」ることの意味が発明の詳細な説明の記載も含めて不明確です。 (2)船において、「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」、「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」をどのようにして実施するのかが発明の詳細な説明の記載を踏まえても不明確です。 第5 当審の判断 1 理由1(特許法第17条の2第3項違反:新規事項)について 平成30年7月18日付けの手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第3に記載したとおり補正された。 この平成30年7月18日付けの補正を、以下「本願補正1」といい、当該補正により補正された請求項1を、以下「補正1の請求項1」という。 補正1の請求項1は、「PM,を削減する」、「PM,除去済」及び「PM,の削減」という事項、「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」という事項、「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」という事項を含んでいる。 そこで、これらの事項が、当初明細書等に記載した事項であり、本願補正1が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて、以下に検討する。 (1) 「PM,を削減する」、「PM,除去済」及び「PM,の削減」という事項について 当初明細書等には、「クリーン化済み生活用役を消費会社に供給する」(【請求項1】)、「排気ガス中のCO_(2)削減」、「排気ガス中CO_(2)を削減」、「排ガス中CO_(2)削減」、「排気ガス中CO_(2)削減」(【0001】、【0018】ないし【0019】)及び「省CO_(2)発電で大気浄化」(【0003】)という事項が、記載されている。 しかしながら、当初明細書等には、「PM」という事項は記載されていない。 そして、補正1の請求項1の「PM,を削減する」、「PM,除去済」及び「PM,の削減」という事項は、当初明細書等に記載されていないし、これらの事項が記載されているといえる根拠もない。 (2) 「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」という事項について 補正1の請求項1の「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」という事項は、当初明細書等に記載されていないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 (3) 「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」という事項について 補正1の請求項1の「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」という事項は、「デコルマ」について、上記第2 3(4)イ(ウ)で述べたことを参照すると、当初明細書等に記載されているとはいえないし、その事項が記載されているといえる根拠もない。 (4) 上記のとおり、上記(1)ないし(3)の事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、技術常識を踏まえてみても当初明細書等から自明な事項であるとはいえないことから、当該事項を含む平成30年7月18日付けの補正(本願補正1)は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2 理由2(特許法第36条第6項第2号違反:明確性違反)について (1) 請求項1の記載は、例えば、「船側に輸入LNG受入 浮揚LNG貯留槽、その槽に搭載の再生可能エネルギーシステム電源設備、その電力で蒸留水を電気分解の電解H_(2)化と硅石PTSA方式CO_(2)回収液化装置の排ガス中CO_(2),PM,の削減、液化N_(2)化 動力源、化石燃料の省消費量化で枯渇緩和対策、更に海上システムで製造の液化CO_(2),N_(2),冷熱を利用 大型車輌の液化燃料化で排ガス浄化、長距離走行性能向上、大気中CO_(2)残留量の減少化を図り」は、「船側に」が、どの用語までかかるのか不明であり、また、動詞が「図り」しかなく、「船側に・・・図る」では、日本語として不明確である。 このように、請求項1の記載は、用語と用語のかかり、主語、述語、目的語等の文法体系等が明確でなく、さらに、多数の発明特定事項が羅列されている記載となっているため、それらの相互の関係を特定することができず、請求項1に係る発明を特定することができない。 (2) したがって、特許請求の範囲の記載は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 理由3(特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号違反:実施可能要件及び明確性違反)について (1) 請求項1には、「大型車輌の液化燃料化で排ガス浄化、長距離走行性能向上、大気中CO_(2)残留量の減少化を図」るという事項が記載されているが、請求項1においては、「液化燃料」が、どのような燃料であるのか(例えば、ガソリンなども、この液化燃料に該当するのか否かなど)特定されておらず、また、「大型車輌の液化燃料化」により、「排ガス浄化」、「長距離走行性能向上」及び「大気中CO_(2)残留量の減少化」「を図」ることができるという根拠(実験結果など)、及び、それを実施するための具体的な手段が不明であり(都市ガスを液化して燃料として使用する場合に、具体的に、どのように液化し、どのようなエンジンにどのようにして供給するのかなど、不明であり)、その手段が発明の詳細な説明に記載されていないため、当該事項は、明確でなく、当業者であっても当該事項を実施することはできない。 (2) 請求項1には、「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」及び「海上CO_(2)削減・発電システム船」という事項が記載されているが、「反応」や「転換」に関して、何が何とがどのように「反応」し、何が何に「転換」されるのか不明であるから、当該事項は明確でなく、「海上CO_(2)削減・発電システム船」において、「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」ができるという根拠及びそれを実施するための具体的な手段が不明であり、また、その手段が発明の詳細な説明に記載されていないため、当業者であっても当該事項を実施することはできない。 (3) 請求項1の「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」という事項は、技術的な原理が不明であり、具体的な手段も特定することができず、「地震の小規模化」の具体的な実験結果も示されていないから、当業者であっても当該事項を実施することはできない。 (4) したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を実施できるように記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載は、明確でないから、同法同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 4 原査定に対する審判請求人の主張について (1)審判請求人の主張 審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、以下のとおり主張している。 「理由1(1)「PM・・」記載されていません。・・・との指示に対して、 特許願(平成30年1月24日付け)〔請求項1〕内で「クリ-ン化済み生活用役を 消費社会に供給する」と記載してあります。 意見書(平成30年7月18日付け)〔意見の内容〕1で「発電機の排気ガス中CO_(2),PM、 を 硅石PTSA方式CO2回収液化設備で除去し・・」と記載してあります。 理由1(2)「・・システム電源設備を搭載・・・」が 記載されていません。との指示、 システム電源設備は船側に配置、当初明細書〔符号の説明〕〔0019〕(17)(18)項と 〔書類名〕〔図2〕で、図示してます。 理由1(3)「・海底デコルマ滑歪断層・」当初明細書等に記載されていません。の指示、 特許願(平成30年1月24日付け)〔符号の説明〕(21)(22)(23)と 〔書類名〕〔図1〕で 図示説明。 理由2 発明の構成が不明確、・・特許願〔書類名〕〔図1〕〔図2〕・・参照願います。 「船側に」・・「システム船の両側に 輸入LNG発電燃料 受入浮揚LNG貯留槽を配し その槽の上に 再生可能エネルギ-のシステム動力電源設備を搭載し 船内に搭載された 排熱回収ボイラと海水?水処理設備、(〔技術分野〕〔0001〕(6))、 電解H_(2)発生器(〔符号の説明〕(10))、硅石PTSA方式CO_(2)回収液化装置(〔符号の 説明〕(12))、の電気動力電源設備で発電し 供給の電気動力で電解H2発生器を稼動、 発生の電解H_(2)を 天然ガス燃料発電機の混焼ガスに使用する事で 天然ガス燃料の軽減、 化石資源の枯渇緩和と搭載のMACC発電機が出す排ガス中のCO_(2)とPMを削減。 又 LNG冷熱で 回収液化装置で 液化CO_(2)化、PM浄化、液化N_(2)化(〔技術分野〕 〔0001〕1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,技術を使って〔発明の概要〕〔発明が解決しようとする課 題〕〔0007〕1.2.3.4.)の課題解決を図る。 理由3 ・請求項1 (1)船において「大型車輌の液化燃料化・・・」詳細説明 記載 不明確・・の件。 特許願〔解決手段〕3.の詳細な説明。 *大型車輌 燃料補給所には 船より送られた 都市ガスとMCH?H_(2)の燃料ガスが必要。 手段1;船上で製造された液化N_(2)を陸上の大型車輌 燃料補給所に液化N_(2)冷熱 液体輸送、 手段2;燃料ガスを圧縮乾燥?液化N2冷熱で低温化?N_(2)又 H2タ-ビンで低圧低温化? 液ガス分離筒でガス状と液体に分離、液体H_(2)=大型車輌 液化燃料H_(2)。手段3;液化燃料(液化容積はガス状容積の数百分の1)?低温液化燃料コンテナ-に充填、 コンテナー内低温蒸発ガスをホンプで 車輌エンジンに供給。 手段4;都市ガスからの液化燃料をCNG大型車輌に使用の場合、排ガス中CO_(2)40%減、 燃料携帯 同重量と同容積とすれば 約2倍の走行距離が可能。 手段5:MCH?H_(2)液体燃料と燃料電池のFCV大型車輌に使用の場合 排ガス中CO_(2)はO。 燃料携帯 同重量と同容積とすれば 約2倍の走行距離が可能。 (2)*船上から 高圧液化CO_(2)を 海底の約300℃の熱水噴出孔に含まれる硫化H_(2)と CH_(4)化合、CO_(2)を海底に貯留させる。又 枯渇海底油田に注入、天然ガス生成。 *船上から 高圧液化CO_(2)を 海底プレ-ト境界 滑歪 亀裂部に注入、境界部の可逆 性滑摩擦応力を潤滑性で移動力分散 地震の小規模化を図るのに液化CO_(2)を使用。」 (2)検討 上記主張では、「海底地熱、微生物とCO_(2)反応でCH_(4)転換」についての説明や、「海底デコルマ滑歪断層の潤滑性で地震の小規模化」の具体的な原理についての説明はなされておらず、また、意見書や審判請求書の説明のための図面は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等)や願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面ではないから、上記1?3で述べたとおりであって、当該主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願は、平成30年7月18日付けの補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が、同法同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-11 |
結審通知日 | 2019-09-17 |
審決日 | 2019-10-03 |
出願番号 | 特願2018-22495(P2018-22495) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(B63B)
P 1 8・ 561- Z (B63B) P 1 8・ 537- Z (B63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畔津 圭介 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
岡▲さき▼ 潤 出口 昌哉 |
発明の名称 | CO2削減システム |