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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1357465
審判番号 不服2018-13083  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-01 
確定日 2019-12-17 
事件の表示 特願2018- 24143「電子機器、プログラムおよび制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-181307、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月4日に出願した特願2017-74757号の一部を平成30年2月14日に新たな特許出願としたものであって、平成30年4月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年6月22日付けで手続補正がされ、平成30年6月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年 6月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.請求項1-7に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-125670号公報
2.特許第6101881号公報


第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成30年10月 1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
近接センサと、
料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定し、前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記近接センサからの出力に基づいて、前記ユーザの自機器を触らないジェスチャの方向を決定するコントローラと、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記ジェスチャの方向を判定するための判定基準を決定し、該決定した判定基準を用いて、前記ジェスチャの方向を決定する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記コントローラは、前記操作する手が右手である場合に、右手の判定基準を用いて前記ジェスチャの方向を決定する、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記コントローラは、前記操作する手が左手である場合に、左手の判定基準を用いて前記ジェスチャの方向を決定する、請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記自機器に触らずに操作するモードにおいて、当該電子機器のディスプレイにレシピが表示される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
近接センサと、コントローラと、を備える電子機器に、
当該電子機器が料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定するステップと、
前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記近接センサからの出力に基づいて、前記ユーザの自機器を触らないジェスチャの方向を決定するステップと
を実行させるプログラム。
【請求項7】
近接センサと、コントローラと、を備える電子機器が実行する制御方法であって、
当該電子機器が料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定するステップと、
前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記近接センサからの出力に基づいて、前記ユーザの自機器を触らないジェスチャの方向を決定するステップと
を含む制御方法。」


第4 引用例、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 段落【0015】
「【0015】
まず投射装置及び検出部の構成に関して説明する。図1は、実施例1の投射装置の概観図である。本実施例の構成は、投射装置1、検出素子2、スクリーン10、投射装置配置台11を有する。投射装置1は、投射装置配置台11上に配置されており、その内部からの画像光を投射ミラー4eで反射してスクリーン10に画像を投射する。尚、反射ミラー19は折り畳み可能に構成されており、不使用時には反射面が投射装置1と対向するように閉じられる。検出素子2は、検出範囲2aで為されたジェスチャとしての、操作者の手の動きまたは動きの方向を検出する。検出素子2は、ジェスチャを検出するための光源を有しても良いし、光源を有さないパッシブ型のセンサであっても良い。また検出素子2として、移動体(すなわち人の手)の温度を検出する温度センサ(例えばパッシブ型のセンサである焦電型センサ)を使用してもよい。」

(2) 段落【0022】-【0023】
「【0022】
次に、最適な検出範囲に制御する検出範囲制御部について説明する。図3は、本実施例に係る投射装置1の内部構成を示すブロック図である。投射装置1は、ジェスチャ検出部14と投射部4を有する。
【0023】
まずジェスチャ検出部14に関して説明する。ジェスチャ検出部14は、検出信号演算部3と検出範囲切替部5を有する。検出信号演算部3は信号検出部3a、ジェスチャ判定部3b、操作信号生成部3cを有する。検出信号演算部3では、信号検出部3aが検出素子2から供給された操作者のジェスチャ情報を含む信号を検出して、ジェスチャ判定部3bに出力する。次いで、ジェスチャ判定部3bは信号検出部3aから出力された信号に基づき、様々なジェスチャの動きを判別する信号処理を行う。さらに、操作信号生成部3cは、ジェスチャ判定部3bの出力信号に応じた、画像を制御又は操作するための操作信号を生成し、PC(Personal Computer)、スマートフォンなどの外部機器6に出力する。外部機器6は、操作信号生成部3cからの操作信号に応じて投射装置1に供給する画像信号を制御する。」

(3) 段落【0090】-【0091】
「【0090】
図48は、「y軸方向の手の動作」に関する課題を解決するための本実施例に係る処理のフローチャートの一例を示している。図48において、S481で、y軸方向の互いに異なる2方向(+y→-y方向、及び-y→+y方向)のジェスチャを検出する。このとき、+y→-y方向のジェスチャの検出を時間t1で、-y→+y方向のジェスチャの検出を時間t2で行ったものとする。続いてS482で、t1とt2の時間差を算出し、その時間差が所定時間(Tges_en)未満であるか否かを判定する。所定時間(Tges_en)以上であればS484へ進み、当S481で検出したジェスチャを無効化する。所定時間(Tges_en)未満であればS483へ進み、ここで現在投射装置1がジェスチャ無効モード中か否かを判定する。ジェスチャ無効モード中であれば、S485へ進みジェスチャ無効モードを解除する。ジェスチャ無効モード中でなければ(すなわち通常モード=ジェスチャ有効モード中であれば)、S486へ進みジェスチャ無効モードに移行する
次に人間の手振りを利用したノイズ低減による感度調整について図28を参照しながら説明する。図28は操作者が+xから-x方向へ右手で手振した様子を示している。
例えば検出素子2が複数のセンサを内蔵しており、図中Aの位置とBの位置とで検出するセンサがそれぞれ異なる場合を考える。図28のような系においてセンサが観測する対象は、位置Aでは掌、位置Bでは手の甲となる。掌と手の甲では温度が異なり、また色が異なるため光に対する反射率も異なる。この場合、位置Aと位置Bから検出される信号レベルが異なる。一般に、センサの信号は増幅器で増幅した後信号処理を行う。その際、増幅器のゲインが高いとその分ノイズレベルが高くなり、応答速度も遅くなる。そのため相対的にノイズレベルが高いと予想される上級尾では増幅器のゲインを下げることが望ましい。そこで本実施例では、A側センサとB側センサのうち一方のセンサに対応する増幅器のゲインを下げることで、ノイズレベルの低減と応答速度の向上を実現する。例えば掌の温度と手の甲の温度では一般的に掌の方が高いため、右手で手振りをする場合は掌を検出するA側センサに対応する増幅器のゲインを下げ、逆に左手で手振りする場合はB側センサに対応する増幅器のゲインを下げる。これにより、複数のセンサを備えた場合において、ノイズを低減して高精度でジェスチャを検出できる。
【0091】
手振りの手の切替え、すなわち右手モードと左手モードの切替は、例えば投射装置1に備えられたスイッチや表示画像のメニューにより行うようにしてもよい。」

(4) 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「投射装置1、検出素子2、スクリーン10、投射装置配置台11を有し、
投射装置1は、ジェスチャ検出部14と投射部4を有し、
検出素子2は、検出範囲2aで為されたジェスチャとしての、操作者の手の動きを検出し、
ジェスチャ検出部14は、検出信号演算部3と検出範囲切替部5を有し、検出信号演算部3は信号検出部3a、ジェスチャ判定部3b、操作信号生成部3cを有し、
検出信号演算部3では、信号検出部3aが検出素子2から供給された操作者のジェスチャ情報を含む信号を検出して、ジェスチャ判定部3bに出力し、
次いで、ジェスチャ判定部3bは信号検出部3aから出力された信号に基づき、様々なジェスチャの動きを判別する信号処理を行い、
操作者が+xから-x方向へ右手で手振りする際、
センサが観測する対象は、位置Aでは掌、位置Bでは手の甲となり、掌と手の甲では温度が異なり、
掌の温度と手の甲の温度では一般的に掌の方が高いため、右手で手振りをする場合は掌を検出するA側センサに対応する増幅器のゲインを下げ、逆に左手で手振りする場合はB側センサに対応する増幅器のゲインを下げ、
手振りの手の切替え、すなわち右手モードと左手モードの切替は、例えば投射装置1に備えられたスイッチや表示画像のメニューにより行う、
投射装置1。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0037】-【0038】には、以下の記載がある。
「【0037】
(キッチンモード)
図5は、ユーザがジェスチャにより電子機器1を操作する状況の一例を示す。図5の例で、ユーザは料理のレシピを電子機器1のディスプレイ14に表示しながら、キッチンでレシピに従って料理をしている。このとき、近接センサ18はユーザのジェスチャを検出する。そして、コントローラ11は近接センサ18が検出したジェスチャに基づく処理を行う。例えば、コントローラ11は特定のジェスチャ(例えばユーザが手を上下に動かすジェスチャ)に応じてレシピをスクロールする処理が可能である。料理中は、ユーザの手が汚れたり、濡れたりすることがある。しかし、ユーザは電子機器1に触れることなくレシピをスクロールすることができる。したがって、ディスプレイ14が汚れること、および料理中のユーザの手にディスプレイ14の汚れがうつることを回避できる。
【0038】
ここで、電子機器1はモードを複数有する。モードとは電子機器1の全体の動作について制限等を与える動作モード(動作状態または動作状況)を意味する。モードは同時に1つだけ選択可能である。本実施形態において、電子機器1のモードは第1モードおよび第2モードを含む。第1モードは、例えばキッチン以外の部屋および外出先等での使用に適している通常の動作モード(通常モード)である。第2モードは、キッチンでレシピを表示しながら料理を行うのに最適な電子機器1の動作モード(キッチンモード)である。上記で説明したように、第2モードの場合には、ジェスチャによる入力操作が可能であることが好ましい。つまり、電子機器1のモードが第2モードに切り替わる場合には、連動して近接センサ18を動作させてジェスチャを検出可能にすることが好ましい。本実施形態の電子機器1は、以下に説明するユーザインターフェースを備えることによって、第2モード(キッチンモード)への切り替えと近接センサ18の動作とを連動させることが可能である。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「検出素子2」は、「検出範囲2aで為されたジェスチャ」を検出するから、本願発明1の「近接センサ」に相当する。

イ 引用発明においては、
「操作者が+xから-x方向へ右手で手振りする際、
センサが観測する対象は、位置Aでは掌、位置Bでは手の甲となり、掌と手の甲では温度が異なり、
掌の温度と手の甲の温度では一般的に掌の方が高いため、右手で手振りをする場合は掌を検出するA側センサに対応する増幅器のゲインを下げ、逆に左手で手振りする場合はB側センサに対応する増幅器のゲインを下げ」る必要がある。
そのため、引用発明では、左右どちらの手がジェスチャを行うか決定するために「手振りの手の切替え、すなわち右手モードと左手モードの切替は、例えば投射装置1に備えられたスイッチや表示画像のメニューにより行」っている。
したがって、引用発明の「手振りの手の切替え、すなわち右手モードと左手モードの切替は、例えば投射装置1に備えられたスイッチや表示画像のメニューにより行う」ことは、本願発明1の「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」することと、「片方の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」する点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「ジェスチャ検出部14」は、本願発明1の「コントローラ」に相当する。
引用発明において、「検出素子2」は、「操作者が+xから-x方向へ右手で手振りする」ような、「操作者の手の動きを検出」すると、「操作者のジェスチャ情報を含む信号」を出力するものである。
したがって、引用発明において、「ジェスチャ検出部14」が、
「右手で手振りをする場合は掌を検出するA側センサに対応する増幅器のゲインを下げ、逆に左手で手振りする場合はB側センサに対応する増幅器のゲインを下げ」、
「信号検出部3aが検出素子2から供給された操作者のジェスチャ情報を含む信号を検出して、ジェスチャ判定部3bに出力し、
次いで、ジェスチャ判定部3bは信号検出部3aから出力された信号に基づき、様々なジェスチャの動きを判別する」構成は、
本願発明1の「前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記近接センサからの出力に基づいて、前記ユーザの自機器を触らないジェスチャの方向を決定する」構成に対応する。

エ 引用発明の「投射装置1」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「近接センサと、
片方の手をユーザが自機器を触らずに操作する手として決定し、前記ユーザが自機器を触らずに操作する手に応じて、前記近接センサからの出力に基づいて、前記ユーザの自機器を触らないジェスチャの方向を決定するコントローラと、
を備える電子機器。」

[相違点1]
本願発明1は「料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に」、コントローラが所定の動作をするのに対し、引用発明は「料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモード」が存在しない点。

[相違点2]
本願発明1はさらに、「料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に」、「ユーザの利き手とは反対の手」を「ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定し」ているのに対し、引用発明は「ユーザの利き手」の知識を利用することについて特定されていない点。

(2)判断
ア [相違点1]について
引用文献2には、料理のレシピを電子機器1のディスプレイ14に表示しながら、ジェスチャによる入力操作によって、電子機器1に触れることなくレシピをスクロールすることができる、「キッチンモード」についての記載がある。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の「キッチンモード」についての技術を適用することによって、料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモード構成を備えること自体は当業者が容易になし得たものである。

イ [相違点2]について
引用発明及び引用文献2には、いずれも「ユーザの利き手」の知識を利用することについての記載や示唆は無い。
また、引用発明は、ユーザ自身がスイッチや表示画面のメニューを操作することによって、ユーザが直接「右手モード」「左手モード」を選択する構成であるから、任意の時点でユーザの利き手、又は利き手とは反対の手をユーザが自機器を触らずに操作する手として決定することが可能であるため、引用発明において、ユーザが操作する手を推定するために、機器の動作モードや、ユーザの利き手についての情報を取得することの動機は見出し難い。
よって、引用発明に、「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」する構成を適用することには動機がなく、むしろ阻害要因があるといえる。
また、「料理のレシピを表示しながら自機器に触らずに操作するモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」することが、周知技術であることも認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の上記相違点2に係る所定のモードの場合に「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6-7について
本願発明6は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明7は本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点2に係る所定のモードの場合に「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
1.理由1(特許法第36条6項2号)について
原査定は、
「出願人は、「所定のモード」を「自機器に触らずに操作するモード」とする補正をし、意見書で『これに対し、本出願人は、上述の通り、補正前の請求項1の「所定のモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定し」との記載を、「自機器に触らずに操作するモードの場合に、ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定し」との記載に変更する補正を行い、特許請求の範囲を明確にしました。』と述べているが、依然として「自機器に触らずに操作する」モードの場合に、「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」するという処理の技術的意味、特定する事項の範囲、及び、当該記載によって特定される情報の処理加工が明確になっているとはいえない。
したがって、依然として請求項1-7に係る発明は明確でない。」
というものである。
しかしながら、本願明細書(【0074】)には
「コントローラ11は、例えば、電子機器1が上述したキッチンモードである場合、ユーザの利き手とは反対の手を、ジェスチャを行う手として決定してよい。電子機器1がキッチンモードである場合、ユーザは、利き手で包丁等の調理器具を使用している可能性が高い。この場合、ユーザは、利き手とは反対の手でジェスチャを行う可能性が高いと推定できることから、コントローラ11は、利き手とは反対の手を、ジェスチャを行う手として決定できる。」
との記載がある。
よって、キッチンモードである場合、ユーザの利き手とは反対の手を、ジェスチャを行う手、すなわち「ユーザが自機器を触らずに操作する手」とすることで、ユーザは、利き手で包丁等の調理器具を使用しながら、ジェスチャ入力できるという技術的意義が得られるものと認められる。
よって、本願発明における所定のモードの場合に「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」との事項については、本願明細書を参照すれば、その技術的意味が把握でき、また、特定する事項の範囲、及び、情報処理内容も不明確であるともいえないので、本願発明は明確である。
したがって、請求項1-7に係る発明は明確であり、原査定を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条2項)について
原査定は、請求項1-7について上記引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年 6月22日付け手続補正により補正された請求項1は、上記相違点2に係る所定のモードの場合に「ユーザの利き手とは反対の手を該ユーザが自機器を触らずに操作する手として決定」する構成を有するものとなっており、上記のとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-02 
出願番号 特願2018-24143(P2018-24143)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 岩田 玲彦
野崎 大進
発明の名称 電子機器、プログラムおよび制御方法  
代理人 河合 隆慶  
代理人 杉村 憲司  

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