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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1357506
審判番号 不服2018-12596  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-20 
確定日 2019-12-05 
事件の表示 特願2015-501309「無線通信システム、無線局、無線端末、通信制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日国際公開、WO2014/129120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)1月29日(国内優先権主張 平成25年2月22日)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 7月 2日 手続補正書の提出
平成29年 9月28日付け 拒絶理由通知書
平成29年11月30日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月16日付け 拒絶理由通知書
平成30年 3月13日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月26日付け 拒絶査定
平成30年 9月20日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 平成30年9月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
本件補正は、平成30年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「 第1のセルを運用する第1の無線局と、
第2のセルを運用する第2の無線局と、
前記第1のセル及び前記第2のセルを使用するDual Connectivityを行うことが可能な無線端末と、
を備え、
前記第1の無線局は、前記Dual Connectivityを行うための前記第1のセル及び前記第2のセルの無線リソース制御を前記無線端末との間で行うよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定の更新情報を前記第2の無線局に送信するよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を、前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信するよう構成されている、
無線通信システム。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「 第1のセルを運用する第1の無線局と、
第2のセルを運用する第2の無線局と、
前記第1のセル及び前記第2のセルを使用するDual Connectivityを行うことが可能な無線端末と、
を備え、
前記第1の無線局は、前記Dual Connectivityを行うための前記第1のセル及び前記第2のセルの無線リソース制御を前記無線端末との間で行うよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定の更新情報を前記第2の無線局に送信するよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを、前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信するよう構成されている、
無線通信システム。」

という発明(以下、「本件補正発明」という。)とすることを含むものである(下線は新たに追加された補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)。

2 補正の適否

(1)新規事項の有無

請求項1についての上記補正は、第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報の送信について、「前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信する」を「前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信するよう」と補正するものである。
一方、当初明細書の段落70には、「・・・ここで、eNB1は、無線リソース制御に関する設定をCell10においてUE3に送信しても良いし、eNB2を介してCell20においてUE3に送信しても良い。後者の場合、eNB1がeNB2にCell20における無線リソース制御に関する設定を含むメッセージをX2インタフェース又はS1インタフェース(或いは新規インタフェース)で送信するが、eNB2は当該メッセージのコンテンツを知らなくても良いし、知ることができるような構成にしても良い。・・・」と記載がある。ここで、当初明細書等には「第2の無線局」に対応するeNB2は、無線リソース制御に関する設定を含むメッセージのコンテンツを知らなくても良いし、知ることができるような構成にしても良いことは記載されているものの、当該メッセージが「前記第2の無線局を透過する態様で」前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信することは、直接的には記載されていない。また、前記段落70の記載のメッセージの「コンテンツを知らなくても良いし、知ることができるような構成にしても良い」とは、メッセージのコンテンツをeNB2が読み取る処理を行っても良いし,行わなくても良いうことを示唆しているとも考えられるが、メッセージを透過する態様で送信するか否かは特定していない。また,メッセージを読み取る処理を行わないことが「透過する態様」に含まれると考え得る技術的に合理的な根拠もない。仮に、メッセージを読み取る処理を行わないことが「透過する態様」に含まれるとしても、「透過する態様」には、メッセージを読み取る処理を行わないこと以外の態様を含み得るが、そのような態様は当初明細書等には記載も示唆もされていない。
さらに、無線局を含む通信ノードを介したメッセージの送信の際に、当該通信ノードにおいて、メッセージに適宜データを付加することや変更を行うことなど、無線局を透過しない態様で送信を行うことは通常行われることが当業者の技術常識であるから、「前記第2の無線局を透過する態様で」前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信する旨を特定しない前記段落70の記載から、「前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信する」ことが自明であるとは言えない。
また、当初明細書等には、ほかに前記事項を導く記載も認められない。

したがって、補正により追加された「前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信する」とは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、平成30年9月20日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)独立特許要件

上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、更に進めて、仮に、本件補正が限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項)を目的とするものであるとして、本件補正発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても以下に検討する。

ア 特許法第29条第2項について

(ア)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものと認める。

(イ)引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2012/101688号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】 本発明は、基地局、移動局、通信制御システム、及び通信制御方法に関し、特にCA(Carrier Aggregation)機能の実行に際して、複数のキャリアでの通信用の制御情報を伝送する技術に関する。
(中略)
【0011】 また、本発明の第3の態様に係る通信制御システムは、第1の基地局と、主キャリア及び複数の副キャリアを同時に送受信して、少なくとも前記第1の基地局との無線通信を行う移動局とを備える。前記第1の基地局は、第1の副キャリアでの通信用の第1の制御情報と、前記第1の制御情報及び他の副キャリア各々での通信用の第2の制御情報の間の第1の差分情報とを、前記主キャリアを介して前記移動局へ通知する。前記移動局は、前記第1の制御情報及び第1の差分情報を用いて、前記第2の制御情報を復元する。
(中略)
【0049】[実施の形態3] 図9に示すように、本実施の形態に係る通信制御システム1Bは、図6に示した通信制御システム1Aと同様に構成できる。また、各基地局10A及び10Bは、図7と同様に構成できる。但し、図9の例では、基地局10Aが、PCC 100a及び100b、並びに一部のSCC 101a及び101bを使用し、基地局10Bが残りのSCC 102a及び102bを使用する場合を扱っている。なお、各基地局10A及び10Bと移動局20の間で送受信されるSCCは複数存在しても良い。この場合も、以降の説明は同様に適用される。

【0050】 以下、本実施の形態の動作を、図10及び図11を参照して詳細に説明する。

【0051】 図10に示すように、CA機能(PCC 100及びSCC101)を使用して移動局20との通信を行っていた基地局10Aは、基地局10Bへ新たにSCC 102を追加すると決定する(ステップS1200)。なお、基地局10Aは、SCC 102の追加可否を、例えば移動局20から通知される隣接基地局についての測定結果に基づいて判定する。

【0052】 そして、基地局10Aは、基地局10Bに対して、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージを送信する(ステップS1201)。ここで、基地局10Aは、SCC 102を判別する識別子(例えば、SCC 102の搬送周波数値)を、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージに含める。また、基地局10Aは、基地局10Bに、SCC 102を介して移動局20から受信したデータを基地局10Aへ転送させるための伝送路(X2又はS1)の識別子も、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージに含める。

【0053】 X2-AP:SCC Setup Requestメッセージを受信した基地局10Bは、SCC 102を追加可能であるか否かを判定し(ステップS1202)、追加可能である場合、SCC 102での通信用の制御情報302を設定する(ステップS1203)。

【0054】 そして、基地局10Bは、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージへの応答として、X2-AP:SCC Setup Request Ackメッセージを基地局10Aへ送信する。ここで、基地局10Bは、制御情報302を、X2-AP:SCC Setup Request Ackメッセージに含める。また、基地局10Bは、SCC 102を介して移動局20へ送信すべきデータを基地局10Aから基地局10Bへ転送するための伝送路(X2又はS1)の識別子も、X2-AP:SCC Setup Request Ackメッセージに含める。

【0055】 X2-AP:SCC Setup Request Ackメッセージを受信した基地局10Aは、自局で使用するSCC 101の制御情報201と、基地局10Bから受信した制御情報302との間の差分情報404を抽出する(ステップS1205)。

【0056】 なお、差分情報404の抽出は、基地局10Bで行っても良い。この場合、基地局10Aは、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージに制御情報201を含めれば良い。また、制御情報302の設定は、基地局10Aで行っても良い。この場合、基地局10Aは、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージに自局で設定した制御情報302を含め、X2-AP:SCC Setup Request Ackを受信した場合に制御情報302を基地局10Bで承認されたものとして扱えば良い。

【0057】 また、SCCの追加に関するメッセージは、S1伝送路(交換局30)を介して送受信しても良い。

【0058】 そして、基地局10A及び10Bは、上記伝送路の識別子を用いて、データ転送路を確立する(ステップS1206)。

【0059】 この後、基地局10Aは、差分情報404を、RRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する(ステップS1207)。

【0060】 RRCConnectionReconfigurationメッセージを受信した移動局20は、制御情報201及び差分情報404を用いて、SCC 102用の無線パラメータを取得する(ステップS1208)。具体的には、移動局20は、制御情報201及び差分情報404を用いて制御情報302を復元すると共に、復元した制御情報302中からSCC 102用の無線パラメータを取得する。

【0061】 そして、移動局20は、RRC:RRCConnectionReconfigurationCompleteメッセージを基地局10Aへ送信する(ステップS1209)。これにより、追加SCCであるキャリア102a及び102bでの通信が開始されることとなる(ステップS1210)。

【0062】 なお、図10の例ではSCCを追加する場合を扱ったが、基地局10B及び移動局20の間で既に送受信されているSCCの無線パラメータを変更する場合も、このSCCの制御情報は、他のSCCの制御情報との差分情報を用いて復元できる。

【0063】 また、各基地局10A及び10Bは、図11に示す使用キャリア決定テーブル500に従って、移動局20と交換局30との間でデータを中継する。ここで、テーブル500には、音声データ、画像データ、…といった複数のデータ種別と、データ種別に応じて使用すべきキャリアとが予め対応付けて記憶されている。なお、テーブル500は、伝送遅延やロスを低減すること等を目的として、同一種別のデータが同一キャリアを用いて中継されるように設定しても良いし、重要度の高いデータが品質(予め測定した静的な品質)の高いキャリアを用いて中継されるように設定しても良い。

【0064】 このように、本実施の形態においては、CA機能を移動局と複数の基地局の間で実行する場合であってもPCCを効率良く利用でき、以て無線リソースの利用効率を更に改善することができる。」










上記の摘記した引用例1の記載及び当業者における技術常識からみて、

(a)段落49-52に記載されるように、基地局10Aが、PCC 100を使用し、基地局10Bが残りのSCC 102を使用するのだから、「PCC 100を使用する基地局10Aと、SCC 102を使用する基地局10B」が記載されているといえる。
また、段落1には、「特にCA(Carrier Aggregation)機能の実行に際して」と有るように、引用例1はCA機能を使用することが記載されており、図9及び段落49-52から、基地局及び移動局が、「PCC 100」及び、「SCC 102」を使用することが見て取れるから、引用例1には「前記PCC 100及び前記SCC 102を使用するCA機能を使用することが可能な移動局」を備えていることが示されている。

したがって、引用例1には「PCC 100を使用する基地局10Aと、SCC 102を使用する基地局10Bと、前記PCC 100及び前記SCC 102を使用するCA機能を使用することが可能な移動局」を備えることが記載されているといえる。

(b)段落51の「図10に示すように、CA機能(PCC 100及びSCC101)を使用して移動局20との通信を行っていた基地局10Aは、基地局10Bへ新たにSCC 102を追加すると決定する(ステップS1200)。」との記載、及び、図10のS1200の「(PCC 100及びSCC 101での通信中)」との記載から、基地局10Aは、CA機能を使用するためのPCC 100の制御情報を移動局へ送信してあることは明らかである。
段落52の「そして、基地局10Aは、基地局10Bに対して、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージを送信する(ステップS1201)。」、段落53の「X2-AP:SCC Setup Requestメッセージを受信した基地局10Bは、SCC 102を追加可能であるか否かを判定し(ステップS1202)、追加可能である場合、SCC 102での通信用の制御情報302を設定する(ステップS1203)。」、及び、段落56の「制御情報302の設定は、基地局10Aで行っても良い。この場合、基地局10Aは、X2-AP:SCC Setup Requestメッセージに自局で設定した制御情報302を含め、X2-AP:SCC Setup Request Ackを受信した場合に制御情報302を基地局10Bで承認されたものとして扱えば良い。」との記載から、引用例1には、基地局10Aは、SCC 102での制御情報を設定し、基地局10Bに送信することが記載されていると認められる。
段落55の「X2-AP:SCC Setup Request Ackメッセージを受信した基地局10Aは、自局で使用するSCC 101の制御情報201と、基地局10Bから受信した制御情報302との間の差分情報404を抽出する(ステップS1205)。」、段落59の「この後、基地局10Aは、差分情報404を、RRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する(ステップS1207)。」、段落60の「RRCConnectionReconfigurationメッセージを受信した移動局20は、制御情報201及び差分情報404を用いて、SCC 102用の無線パラメータを取得する(ステップS1208)。具体的には、移動局20は、制御情報201及び差分情報404を用いて制御情報302を復元すると共に、復元した制御情報302中からSCC 102用の無線パラメータを取得する。」との記載から、引用例1には、基地局10Aは、SCC 102での制御情報の差分情報をRRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する、ことが記載されていると認められる。

したがって、上記の摘記した引用例1の記載及び図面の記載並びに当業者における技術常識からみて、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


(引用発明)
「 PCC 100を使用する基地局10Aと、
SCC 102を使用する基地局10Bと、
前記PCC 100及び前記SCC 102を使用するCA機能を使用することが可能な移動局と、
を備え、
前記基地局10Aは、前記CA機能を使用するための前記PCC 100の制御情報を移動局へ送信するよう構成され、
前記基地局10Aは、前記SCC 102での制御情報を設定し、前記基地局10Bに送信するよう構成され、
前記基地局10Aは、前記SCC 102での制御情報の差分情報をRRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて前記移動局へ通知するよう構成されている、
無線通信制御システム。」


(ウ)引用例2
原査定の拒絶の理由で引用されたNEC,Consideration of the possible structures on the dual connectivity(当審仮訳:「デュアル・コネクティビティにおける可能な構造の考察」),3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #81 R2-130268,2013年 2月 1日,セクション3(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 「In addition to the above possible structures, if MeNB can send C-plane to UE through LPN e.g. in a scenario that the UE is not able to receive signalling from MeNB, 4 additional possible structures (2’, 3’, 4’, 5’) could be considered based on structure 2,3,4,5. In these cases, the MeNB could choose to send C-plane messages to UE via either MeNB or LPN

」(4/5ページ)

(当審仮訳:上記の可能な構造に加えて、MeNBは、LPNを介してUEにC-プレーンを送信することができる。例えば、UEがMeNBからのシグナリングを受信することができないシナリオでは、構造2,3,4,5に基づいて4つのさらなる可能な構造(2’, 3’, 4’, 5’)を考えることができる。これらの場合、MeNBは、MeNB又はLPNのいずれかを介して、C-プレーンメッセージをUEに送信することを選択することができる。)

ここで、LPNがLow Power Nodeを意味し、MeNBも、LPNもともに、基地局を意味することは当業者における技術常識である。そして、上記の摘記した引用例2の記載及び前記当業者における技術常識からみて、引用例2には、「MeNBがC-プレーンメッセージを、MeNB又はLPNを介してUEに送信する」発明が記載されていると認められる。

(エ)対比

a 本件補正発明と引用発明を対比すると、引用発明の「基地局10A」、「基地局10B」、「移動局」は、本件補正発明の「第1の無線局」、「第2の無線局」、「無線端末」に相当する。そして、引用発明の「PCC」及び「SCC」の「CC」はコンポーネント・キャリアを意味し、本件補正発明における「セル」との用語と文脈上同義であることは当業者の技術常識であるから、引用発明の「PCC 100」、「SCC 102」は、それぞれ、本件補正発明の「第1のセルを運用する第1の無線局」、「第2のセルを運用する第2の無線局」に相当する。

b 本件明細書の段落28には「異なる無線局によって運用される複数のセルのキャリアアグリゲーションという観点から、異なる無線局によって運用される複数のセルを使用する機能は、無線局間キャリアアグリゲーションと呼ぶことができる。また、上述のような複数のセルの同時使用の観点から、異なる無線局によって運用される複数のセルを使用する機能は、デュアル接続(Dual Connection)、デュアル接続性(Dual Connectivity)、マルチ接続(Multi Connection)、マルチ接続性(Multi Connectivity)、などと呼ぶこともできる。」と記載されている。これより、本願発明の「Dual connectivity」は、異なる無線局によって運用される複数のセルを使用する機能を含むものと解される。一方、引用発明のCA機能は、基地局10Aと基地局10Bという異なる無線局によって運用される複数のセルを使用する機能であることは明らかであり、本件補正発明の「Dual Connectivity」に含まれる。そして、引用発明の「前記PCC 100及び前記SCC 102を使用するCA機能を使用することが可能な移動局」は、本件補正発明の「前記第1のセル及び前記第2のセルを使用するDual Connectivityを行うことが可能な無線端末」に含まれる。

c 引用発明の「前記基地局10Aは、前記CA機能を使用するためのPCC 100の制御情報を移動局へ送信する」と事項における、制御情報を移動局に送信することは、無線リソース制御を前記無線端末との間で行うことに他ならない。また、引用発明の「基地局10Aは、SCC 102での制御情報の差分情報をRRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する」ことも、基地局10がSCC 102の無線リソース制御を前記無線端末との間で行うことに他ならない。してみれば、引用発明の前記2つの摘記事項は、本願発明の「前記第1の無線局は、前記Dual Connectivityを行うための前記第1のセル及び前記第2のセルの無線リソース制御を前記無線端末との間で行うよう構成され」に対応する。

d 引用発明における「前記基地局10Aは、SCC 102での制御情報を設定し、基地局10Bに送信するよう構成され」において、SCC 102での制御情報を設定することは、セルの無線リソース制御に関する設定の更新を意味するといえるから、本願発明の「前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定の更新情報を前記第2の無線局に送信するよう構成され」に相当する。

e 引用発明における「前記基地局10Aは、SCC 102での制御情報の差分情報をRRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する」において、RRCConnectionReconfigurationメッセージはRadio Resource Control (RRC)の一種であることは、当業者の技術常識である。また、SCC 102での制御情報の差分情報は無線リソース制御に関する設定情報を構成するものであることは明らかである。してみれば、本件補正発明の「前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを、前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信する」と、引用発明の「前記基地局10Aは、SCC 102での制御情報の差分情報をRRCConnectionReconfigurationメッセージに含めて移動局20へ通知する」とでは、「前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを、前記無線端末へ送信する」との点で共通する。


以上を総合すると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 第1のセルを運用する第1の無線局と、
第2のセルを運用する第2の無線局と、
前記第1のセル及び前記第2のセルを運用するDual Connectivityを行うことが可能な無線端末と、
を備え、
前記第1の無線局は、前記Dual Connectivityを行うための第1のセル及び、前記第2のセルの無線リソース制御を無線端末との間で行うよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの制御に関する設定の更新情報を前記第2の無線局に送信するよう構成され、
前記第1の無線局は、前記第2のセルの制御に関する設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを、前記無線端末へ送信するよう構成されている、
無線通信制御システム。」

(相違点)
「第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを、前記無線端末へ送信する」ことについて、本件補正発明では「前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して」前記無線端末へ送信するのに対し、引用発明では、第2の無線局を介することなく無線端末へ送信する点。

(オ)判断
以下、各相違点について検討する。
引用例1と同様の技術分野に属する引用例2には、「MeNBがC-プレーンメッセージを、MeNB又はLPNを介してUEに送信する」発明が記載されているところ、C-プレーンメッセージとしては、MeNB及びLPNのどちらを介しても同一のメッセージをUEに送信するものと解される。すなわちLPNを介した場合でも、C-プレーンメッセージとしては、同一のもの、変更がないという意味においては、透過する態様で送信することが示唆されているといえる。そして、MeNBからC-プレーンメッセージをUEに送信する際、MeNBから直接送信するか、LPNを介して送信するかは、当業者が適宜選択しえた事項であるといえる。また、Radio Resource Control (RRC) メッセージは、C-プレーンメッセージの一種であることは、技術常識である。
してみれば、引用発明の基地局10Aを引用例2のMeNB,基地局10Bを引用例2のLPNに対応させ、引用発明に引用例2に記載された発明を適用し、第1の無線局が、前記第2のセルのRadio Resource Control (RRC) メッセージを、無線端末へ送信する際に、前記第1の無線局は、前記第2のセルの無線リソース制御に関する設定情報を含むRadio Resource Message (RRC) メッセージを、前記第2の無線局を透過する態様で前記第2の無線局を介して前記無線端末へ送信することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び引用例2に記載された発明の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。
そうすると、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上を総合すると、本件補正発明は、引用発明、及び、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 まとめ

以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、本件補正が、仮に、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年9月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし48に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1に記載の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由1は、この出願の請求項1-48に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、請求項1に対して
引用例1. 国際公開第2012/101688号
引用例2. NEC,Consideration of the possible structures on the dual connectivity,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #81 R2-130268,2013年 2月 1日,セクション3
引用例3. Nokia Corporation, Nokia Siemens Networks,Discussion on small cells dual connectivity,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #81 R2-130453,2013年 2月 1日,セクション2
引用例4. 国際公開第2011/155256号
が引用されている。なお、引用例2-4は周知技術を示す文献として引用されている。

3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし2及びその記載事項は、前記第2 2 (2) ア (イ)、(ウ)に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明は、前記第2 2 (2)で検討した本件補正発明から、「(設定情報)を含むRadio Resource Control (RRC) メッセージを」、「前記第2の無線局を透過する態様で」との限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2 2に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-03 
結審通知日 2019-10-08 
審決日 2019-10-23 
出願番号 特願2015-501309(P2015-501309)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 祐介望月 章俊  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 本郷 彰
井上 弘亘
発明の名称 無線通信システム、無線局、無線端末、通信制御方法、及びプログラム  
代理人 家入 健  

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