ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
---|---|
管理番号 | 1357507 |
審判番号 | 不服2018-13879 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-18 |
確定日 | 2019-12-05 |
事件の表示 | 特願2017-568311「キャリアテープ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月11日国際公開、WO2018/008691〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成29年7月5日(優先権主張 平成28年7月7日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年12月28日に手続補正書が提出され、平成30年4月3日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年5月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年7月31日付けで拒絶査定がされた。 これに対して、平成30年10月18日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において令和元年5月27日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、上記の令和元年7月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 平坦部と、前記平坦部に形成された凹状の収納部とを有するシートであるキャリアテープであって、前記収納部の裏面の面積が前記収納部の開口部の面積に対して90.4%以上99.9%以下の大きさであり、 前記収納部の裏面の面積は、前記収納部の底部を構成する前記シートの裏面部分からなる平らな外底面の面積であり、 前記収納部の開口部の面積は、前記収納部の平らな内側面と、前記収納部の開口部を囲む曲面からなる開口周縁部との境界線で囲まれる開口面の面積である、キャリアテープ。」 第3.当審で通知した拒絶理由の概要 当審において令和元年5月27日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)の概要は次のとおりである。 1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由1(特許法第36条第6項第2号)について 1.請求項1の「前記収納部の裏面の面積」及び「前記収納部の開口部の面積」は、明確でない。 2.請求項2の「前記収納部の開口周縁部の曲率半径」は、明確でない。 ●理由2(特許法第36条第6項第1号)について 1.本願の請求項1?5に係る発明は、その解決すべき課題を把握することができないから、課題を解決できないものを含むといわざるを得ない。 すなわち、発明の詳細な説明からは、本願発明が解決すべき課題、及び課題を解決する手段(特に請求項1の「前記収納部の裏面の面積が前記収納部の開口部の面積に対して90.4%以上99.9%以下の大きさであること」のみ)について、従来技術のどのような課題を解決するものであるのかが理解できず、課題を解決する手段を把握できない。 2.本願発明は、課題を解決できないものも含むものであるから、発明の詳細な説明に記載した発明であるとはいえない。 請求項1の「前記収納部の裏面の面積が前記収納部の開口部の面積に対して90.4%以上99.9%以下の大きさであること」は、「前記収納部の裏面の面積」が「前記収納部の開口部の面積」よりも小さいのだから、発明の詳細な説明の段落【0004】の「収納部同士が嵌合しにくく」なるとはいえない。 第4.当審拒絶理由についての検討 1.当審の判断 (1)当審拒絶理由の「理由2(特許法第36条第6項第1号)」の「2.」について検討する。 本願発明の課題は、「リールに巻き取られたキャリアテープの収納部同士が嵌合しにくく、収納部の変形が抑制されたキャリアテープを提供すること」(段落【0004】)である。 そして、本願発明の「前記収納部の裏面の面積が前記収納部の開口部の面積に対して90.4%以上99.9%以下の大きさであること」 について、 「前記収納部の裏面の面積は、前記収納部の底部を構成する前記シートの裏面部分からなる平らな外底面の面積であり、 前記収納部の開口部の面積は、前記収納部の平らな内側面と、前記収納部の開口部を囲む曲面からなる開口周縁部との境界線で囲まれる開口面の面積である」 と特定されている。 (2)そして、本願発明は、収納部の厚さ(底部、側部等の厚さ)や、各部の形状・大きさ(外底面と外側面の間の面取りの有無・大きさ、側面の傾斜が開口に向けて広がっているかすぼまっているか等)について特定されておらず、「前記収納部の裏面の面積が前記収納部の開口部の面積に対して90.4%以上99.9%以下の大きさである」という面積の関係のみを特定する発明であるが、この特定のみでは、リールに巻き取られたキャリアテープの上側収納部の裏面部分が、下側収納部の開口部分を通過し入り込んで嵌合する発明をも含んでいることが明らかである。 すなわち、本願発明は、依然として、「収納部同士が嵌合しにくく」なるとはいえないものを含んでいる。 (3)したがって、本願発明は、「リールに巻き取られたキャリアテープの収納部同士が嵌合しにくく」という課題を解決できないものを含むものであるから、発明の詳細な説明に記載した発明であるとはいえず、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.請求人の主張について (1)審判請求人は、令和元年7月24日付け意見書において、参考図A?Cを示しつつ、 「一方、本願発明においては、請求項1に規定した通り、裏底面面積A/開口面積Bが90.4%以上99.9%以下としたことにより、上側収納部の裏面が下側収納部の内部に殆ど入り込まず(入り過ぎることはなく)、嵌合による収納部の変形が起こりません。このメカニズムについて下記の参考図Bを参照してご説明致します。参考図Bは、キャリアテープのリール巻き取り時に、下側収納部の開口に、上側収納部の裏面が載置された様子を示す断面図です。参考図Bにおいて、上側収納部の裏面面積が下側収納部の開口面積よりも若干小さいだけなので、リール巻き取りの応力を受けても、上側収納部の裏面部分が下側収納部の開口部分を通過するには至りません。したがって、本願明細書の表1?表2の各実施例で示したように、比較例と比べて充分に「嵌合による収納部の変形」を抑制することができます。」 と主張している。 (2)参考図 ア.「 」 イ.「 」 (3)しかし、当該参考図Bにおいて、収納部の裏面が、平らな外底面とR部と外側面で構成されており、裏面のR部と、開口部の開口周縁部とが接触しているところ、参考図Bの裏面にR部がない、若しくはR部がきわめて小さい収納部の場合(参考図Bの収納部底面に付されたドットで外底面と外側面が連結する場合)、本願発明は、「前記収納部の裏面の面積」が「前記収納部の開口部の面積」よりも小さいのだから、裏面にある外側面と、開口部にある開口周縁部又は内側面とが接触することは、自明である。 すなわち、裏面にR部がない、若しくはR部がきわめて小さい場合は、上側収納部の裏面部分が下側収納部の開口部分を通過して入り過ぎてしまうことが明らかである。 そうすると、比較例1?6(参考図A)と同様に、リール巻き取りの応力により、下側収納部の内部へ導かれ、上側収納部の外側面が下側収納部の開口に嵌合し、さらにその開口を押し広げることとなるから、「嵌合による収納部の変形」が大きく発生するものである。 (4)よって、審判請求人の主張は、少なくとも、裏面にR部がない、若しくはR部がきわめて小さい場合には、本願発明の課題を解決できないことが明らかであるから、採用することができない。 第5.むすび 以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、その余の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-10-02 |
結審通知日 | 2019-10-08 |
審決日 | 2019-10-23 |
出願番号 | 特願2017-568311(P2017-568311) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B65D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 基樹 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 佐々木 正章 |
発明の名称 | キャリアテープ |
代理人 | 西澤 和純 |
代理人 | 伏見 俊介 |
代理人 | 川越 雄一郎 |