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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1357617
異議申立番号 異議2018-700550  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-10 
確定日 2019-10-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6255844号発明「包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに包装用積層小袋レーザー印字体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6255844号の特許請求の範囲を令和元年5月31日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]について訂正することを認める。 特許第6255844号の請求項1、3、6、7に係る特許を維持する。 特許第6255844号の請求項2、4、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6255844号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年9月27日に出願され、平成29年12月15日にその特許権の設定登録がされ、平成30年1月10日に特許掲載公報が発行されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年7月10日:特許異議申立人 白澤榮樹(以下「申立人1」
という)による請求項1?7に係る特許に対する特許異議の
申立て(以下「申立1」という)
平成30年7月10日:特許異議申立人 有馬敬昭(以下「申立人2」
という)による請求項1?7に係る特許に対する特許異議の
申立て(以下「申立2」という)
平成30年10月25日付け:取消理由通知
平成30年12月27日:特許権者による意見書(以下「特許権者
意見書1」という)及び訂正請求書の提出
平成31年2月21日:申立人1による意見書の提出
(以下「申立人1意見書1」という)
平成31年2月21日:申立人2による意見書の提出
(以下「申立人2意見書1」という)
平成31年3月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和元年5月31日:特許権者による意見書(以下「特許権者意見書2」
という)及び訂正請求書の提出
(当該訂正請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を
「本件訂正」という)
令和元年7月12日:申立人2による意見書の提出
(以下「申立人2意見書2」という)

特許法第120条の5第5項の規定により、令和元年6月11日付けで、本件訂正の請求があった旨の通知を申立人1及び2に送付したが、申立人1から意見書は提出されなかった。
なお、上記平成30年12月27日になされた訂正の請求は、本件訂正の請求があったので特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。(訂正箇所に下線を付す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
印刷用下地層は、レーザー光の照射により発色する発色材料を含む、レーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である、包装用積層小袋材。」とあるのを、
「二軸延伸ポリアミドフィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である、包装用積層小袋材。」に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項3、6及び7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2、4及び請求項5を削除する。

(3)訂正事項3
ア.訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項2に記載の」とあるのを、
「請求項1に記載の」に、訂正する。

イ.訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1?5のいずれか1項に記載の」とあるのを、
「請求項1または3に記載の」に、訂正する。

ウ.訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1?5のいずれか1項に記載の」とあるのを、
「請求項1または3に記載の」に、訂正する。


2.訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求による訂正は当該一群の請求項[1?7]に対し請求されたものである。

(2)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1について、「基材」を「二軸延伸ポリアミドフィルム基材」に限定するとともに、「シーラント層」を「直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層」に限定し、さらに「印刷用下地層」について、「レーザー光の照射により発色する発色材料を含む、レーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層」を「低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という)には、以下の記載がある。
ア.「二軸延伸ポリアミドフィルム基材」及び「直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層」について
「【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
[実施例1]
厚さ15μmの厚さの二軸延伸ポリアミド(ナイロン)フィルム(基材)の一方の面上に、絵柄層として色インキをグラビアロールコート法により色インキ領域を塗工した。・・・次いで、該印刷層上に、2液硬化型のポリエステル系接着剤を用いてドライラミネート法によりシーラント層として厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを積層した。このことにより、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルム/絵柄色インキ印刷層/レーザー発色インキ層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層の層構成を有する3種類の包装用積層小袋材を得た。」

イ.「低出力のレーザー光」について
「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、多種多様な積層構造を有する包装材料において、・・・且つ、ベースとなるフィルムにダメージを与えない程度の低出力のレーザーを照射することにより、適当な太さを有し読み取り易い印字線が得られる、・・・包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びにそれらのレーザー印字体を提供することを目的とする。」

ウ.「ビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み」について
「【請求項2】
発色材料がビスマス系化合物である、請求項1に記載の包装用積層小袋材。」
「【0048】
本発明では、特に、レーザー発色インキとして、発色材料としてビスマス系化合物を少なくとも含有するものであって、その他に白色顔料として酸化チタンを含有するものが、好適に用いられる。」
「【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
[実施例1]
厚さ15μmの厚さの・・・その上に、発色材料として酸化ビスマスを5重量%(インキ組成物の固形分換算)含有し、白色インキ顔料として二酸化チタン15重量%を含むレーザー発色インキをグラビアロールコート法により全面に塗工し、発色インキ印刷層を設けた。・・・」

エ.「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり」について
「【0049】
低出力のレーザー光により発色するビスマス系化合物の発色材料は、インキ組成物に対して固形分換算で0.1?95.0重量%の範囲で含有される。本発明においては、その発色材料の含有量は、1?30重量%であることが好ましい。・・・」

オ.「発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で」について
「【0063】
本発明においてレーザー光により鮮明で印字ムラの生じない包装用積層小袋材を得るためには、インキの塗布量が、乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)であることが適している。」

カ.「膜厚が0.05?20μmである」について
「【0051】
レーザー発色インキ層は、膜厚が0.05?20μmが好ましく、より好ましくは0.1?7μm程度である。・・・」

よって、訂正事項1は、上記ア.?カ.の記載に基くものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2、4及び請求項5を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項3について
訂正事項3-1?訂正事項3-3は、訂正事項2によって請求項2、4、5が削除されたことに整合させるようとして、訂正前の請求項3、6、7が引用する請求項を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項3-1?訂正事項3-3は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3-1?訂正事項3-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?7]についての訂正を認める。


第3.取消し理由について
1.本件発明
本件訂正が認められることにより、本件特許の請求項1、3、6、7に係る発明(以下、「本件発明1」等という)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3、6、7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
二軸延伸ポリアミドフィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である、包装用積層小袋材。
【請求項3】
ビスマス系化合物が水酸化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマスおよび硝酸ビスマスから選ばれる1種類または2種類以上の化合物である、請求項1に記載の包装用積層小袋材。
【請求項6】
請求項1または3に記載の包装用積層小袋材を用いた包装用小袋体。
【請求項7】
請求項1または3に記載の包装用積層小袋材あるいは請求項6に記載の小袋体に、YAGまたはYVO_(4)レーザー光を基材側から照射することにより発色したインキ組成物の発色域が前記基材および印刷用下地層の境界に広がり、レーザー印字画像を有する包装用小袋レーザー印字体。」

2.取消理由の概要
平成31年3月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した本件発明1、3、6、7に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由4.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2013-146880号公報
(申立1における甲第1号証)

引用文献2:特開2012-131885号公報
(申立1における甲第2号証、申立2における甲第8号証)

引用文献3:特開2011-152735号公報
(申立2における甲第2号証)

参考文献A:特開2005-186507号公報
(申立2における甲第3号証)

(1)理由1(特許法第36条第4項第1号)について
本件特許明細書は、ビスマス系化合物を含まずにビスマス系化合物以外の「低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料」を用いることをその構成の一部とする本件発明1、4?7を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(2)理由2(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1の「発色材料」は、ビスマス系化合物のみを意味するものではない。一方で、本件特許明細書は、ビスマス系化合物を必須とする旨の記載しかなく、ビスマス系化合物を必須としない旨の記載も、ビスマス系化合物を含まずにビスマス系化合物以外の発色材料を用いることによって課題が解決できる旨の記載も示唆もない。よって、本件発明1、4?7は、課題を解決できないものも含むものであるから、発明の詳細な説明に記載した発明であるとはいえない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第2号)について
ア.請求項1の「発色材料」と「白色顔料」は、同種の材料でもよいから、その区別が明確でない。
請求項1は、1つの金属酸化物が「白色顔料」であり、且つ「発色材料」である場合を含むものであるから、「発色材料」と「白色顔料」の2つを含むものであるのか、1つの金属酸化物でよいのか不明である。

イ.請求項4において「発色インキ下地層の発色インキ」なる記載がなされているが、請求項4が引用する請求項1においては、「発色インキ」なる記載はない。請求項1に記載された「発色材料」、「白色顔料」を示すものであるとしても、「発色材料」と「白色顔料」のいずれを示すものであるのか、又は両方を示すものであるのか不明確である。
請求項5の「発色インキ下地層の発色インキ」も同様である。

(4)理由4(特許法第29条第2項)について
本件発明1?7は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。

3.当審の判断
(1)理由1(特許法第36条第4項第1号)について
ア.当審の判断
本件訂正により、請求項1には、「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、」と記載されたから、発色する材料としてビスマス系化合物は必須の成分である。

一方、本件特許明細書においては、「安価な材料からなり、製造が容易であり、印字位置の変更が容易であり、且つ、ベースとなるフィルムにダメージを与えない程度の低出力のレーザーを照射することにより、適当な太さを有し読み取り易い印字線が得られる、付加情報を適切かつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字し、視認性を向上」(段落【0014】)することを技術的課題としている。
そして、その解決手段は、「本発明では、低出力のレーザーにより発色する発色材料として、特に、ビスマス系化合物を少なくとも用いる。」、「なかでも、入手が容易であり、安価であるという観点から、好ましくは、硝酸ビスマス、水酸化ビスマスが望ましい。ビスマス系化合物としては、一種又は二種以上の化合物を含むことができる。また、本発明はビスマス系化合物を少なくとも含む発色材料を用いるものであって、レーザー光により発色する発色材料であればビスマス化合物以外のものを併用することもできる。」(段落【0041】)と記載されているから、低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料は、ビスマス系化合物を必須とするものである。
これは、実施例(段落【0085】?【0093】)においても、実施例1?4の全てがビスマス系化合物を含んでいることから、その記載は整合しているものである。

したがって、本件特許明細書は、発色する材料としてビスマス系化合物が必須の成分である本件発明1?7を、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項の規定を満たしており、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。

イ.申立人の主張について
理由1(特許法第36条第4項第1号)に関する申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
(ア)「本件訂正発明1の「低出力レーザー光の照射により発色する発色材料」と訂正しただけでは、ビスマス系化合物以外の低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料が含まれており、ビスマス系化合物以外の発色材料によっても「安価な材料」等の技術的課題を解決できることは記載されていないので、依然として、取消理由通知の認定は解消されていない。
また、本件訂正発明1では「低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料」は「1重量%未満」でも「適当な太さを有し読み取りやすい印字線が得られる」という課題が解決できなければならないが、本件明細書[0049]によれば「1重量%未満では、発色印字が不十分、不鮮明」となると記載されている。よって、発明の詳細な説明は、本件訂正発明1を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
また、レーザー光による発色への影響は、「出力」だけでなく、・・・例えば低出力のレーザー光であっても長時間照射することにより発色する発色材料も含まれる。・・・よって、発明の詳細な説明は、本件訂正発明1を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。」
(申立人2意見書1の3.(1))

本件訂正によって、本件発明1は、「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり」と特定されたから、申立人1の上記主張は、その前提において失当であり採用することができない。

(イ)「本件特許明細書の段落[0085]以降の実施例では、「発色材料として酸化ビスマスを5重量%」含むレーザー発色インキしか開示されていないところ、本件訂正発明1の「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」の内、「1?5重量%未満」においても「適当な太さを有し」「読み取り易い印字線が得られ」「付加情報を適切にかつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字」する技術的課題を解決できるかどうか不明である。」
(申立人2意見書2の3.(3))

本件特許明細書には、「本発明においては、その発色材料の含有量は、1?30重量%であることが好ましい。1重量%未満では、発色、印字が不十分、不鮮明となることなどの理由から好ましくなく、含有量が増加するほど印字の発色は濃くなって行くが、30重量%以上にしてもその濃度上昇による視認性が差が顕著に認識できるものではなく、むしろ、コストアップ、印刷下地層が硬くなり、ひび割れ、強度低下を導き、レーザー光の照射により発色する発色材料自体の顔料色が印刷下地層に色を付けてしまうこと等の理由から好ましくない。」(段落【0049】)と記載されている。
すなわち、請求項1の「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり」について、下限である1重量%未満が好ましくないこと、含有量が増加するほど印字の発色は濃くなって行くこと、上限である30重量%以上が好ましくないことが記載されているから、申立人2の主張する「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」の内、「1?5重量%未満」においても課題を解決できることが理解できる。
よって、申立人2の上記主張は、失当である。

(2)理由2(特許法第36条第6項第1号)について
ア.当審の判断
上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、発色する材料としてビスマス系化合物を必須の成分とするものである。
そして、上記(1)に示したとおり、本件発明1は、発色する材料としてビスマス系化合物を必須の成分とすることで課題を解決することができるものである。
したがって、本件発明1、及び本件発明1を引用する本件発明3、6、7は、本件発明の課題を解決できるものであるから、発明の詳細な説明に記載した発明であるといえるので、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしており、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。

イ.申立人の主張について
理由2(特許法第36条第6項第1号)に関する申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
(ア)「本件特許発明1の課題を解決するためには、所定量のビスマスを下地層に含むことが必須の構成である。
したがって、本件特許発明1は、所定量の「ビスマス系化合物」を含まない態様において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、請求項4?7も同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(ア))

本件訂正により、本件発明1は「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」含むことが特定されたから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(イ)「本件特許発明1の課題解決をすることができない比較例1,2を含む本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでないので、請求項4,5も同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(イ))

本件訂正により、本件発明1は「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含」むことが特定されたから、ビスマス系化合物を含まない比較例1、2を含むものではなくなった。
よって、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(ウ)「上記(3)の通り、本件訂正発明1及びこれを引用する本件訂正発明3,6,7は、課題を解決できないものを含むものであるから、発明の詳細な説明に記載した発明であるとはいえない。」
(申立人2意見書2の3.(4))

上記(1)イ.で示したように、本件特許明細書の記載によれば、申立人2の主張する「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」の内、「1?5重量%未満」においても課題を解決できることが理解できるから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第2号)について
ア.当審の判断
(ア)請求項1に記載されていた「発色材料」及び「白色顔料」については、本件訂正により、それぞれ「ビスマス系化合物」及び「酸化チタン顔料」に特定された。
よって、請求項1の記載は明確である。

(イ)請求項4、5に記載されていた「発色インキ」については、本件訂正により、請求項4、5が削除された。

よって、請求項1、3,6、7の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしているから、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。

イ.申立人の主張について
理由3(特許法第36条第6項第2号)に関する申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
(ア)「本件特許発明4,5の「発色インキ」は、本件特許発明1に記載がなく、不明確である。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(イ))

上記ア.(イ)のとおり、本件訂正により、請求項4、5は削除されたから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(イ)『本件訂正発明1の「低出力のレーザー光の照射により発色する」によって発色する発色材料が特定できないので不明確である。・・・
また、「低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料」と「白インキに用いられる白色顔料」とが明確に区別されておらず、不明確である。』
(申立人2意見書1の3.(3))

上記ア.(ア)のとおり、「発色材料」及び「白色顔料」については、本件訂正により、それぞれ「ビスマス系化合物」及び「酸化チタン顔料」に特定され明確に区別できるから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(ウ)「請求項4,5の「発色インキ」の記載は、訂正によって「発色インキ下地層の発色インキ」となったが、請求項1の発色インキ下地層には「発色材料」と「白色顔料」しかなく、いずれに該当するのかが不明確である。」
(申立人2意見書1の3.(3))

上記ア.(イ)のとおり、本件訂正により、請求項4、5は削除されたから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(4)理由4(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1について
(ア)刊行物の記載
a.引用文献1(特開2013-146880号公報)
引用文献1には、次の記載がある。
(a)「【請求項1】
少なくとも表層及びシール層が積層してなる包装フィルムに、レーザマーキングする方法において、フィルムとフィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層にレーザ光を照射して黒変させ、マーキング文字が読取に際して線が太く見えるようにもとの文字と斜め方向にずらした文字で構成され、且つ、レーザ光がもとの文字の黒変箇所に再照射しない、ずらした文字からなるフォントを用いることを特徴とする包装フィルムへのレーザマーキング方法。」(【特許請求の範囲】)

(b)「本発明は、食品等を包装する包装フィルムへのレーザマーキング方法、及びレーザマーキングされた包装体に関するものである。更に詳しくは、レーザ光の照射により、判読しやすい印字が高速で行えるレーザマーキングの印字体の技術に関する。」(段落【0001】)

(c)「本発明が解決しようとする課題は、・・・包装袋に特殊なインキを用いることなく、製造者記号、製造年月日等の情報印字が、外部摩擦によって消失することがなく、また、被包装物として食品類等と直接接触することもなく、しかも、読み取りを容易にかつ確実ならしめる表示を実現するのものである。・・・」(段落【0004】)

(d)「本発明による包装フィルムへのレーザマーキング方法、レーザマーキングされた包装体によれば、レーザ光が表面の表層を透過して、白色のインキ層の成分を黒色変化させることで白地に黒色のマーキングが可能となり、表面の表層越しに、商品名、日付、製造者記号などのマーキングを白地に黒文字として判読ができる。・・・」(段落【0010】)

(e)「本発明を以下、図面をもとに説明する。
図1に包装体に用いられる包装フィルムの代表的な構成を表した。すなわち、本発明に係る一実施例の包装フィルムは少なくとも表層、印刷層、シール層から構成され、印刷層は表層の内側に印刷されている包装フィルムで本発明を説明する。
表層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)などが挙げられるものであれば特に限定されない。
また、シール層としては、ヒートシール性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは無延伸ポリプロピレン(CPP)などが挙げられる。
印刷層は、例えば図1の断面図に示すように、透明延伸ポリプロピレンフィルムの内面に、グラビア印刷などによる印刷層が形成されている。より詳しくは、透明な延伸ポリプロピレンなどのフィルムの内面に、グラビア印刷などによる絵柄、文字情報の印刷層が形成され、さらにその上に白インキによる白色インキ層が形成されて見栄えを良くしている。この白色インキ層の一部に本発明のレーザマーキング方法による印字を行なうことができる。当然、レーザマーキング用に白色インキ層を設けることもできる。
」(段落【0012】?【0015】)

(f)「白色の印刷層の塗工量は0.1g/m2?5g/m2、好ましくは1.0g/m2?2.0g/m2である。」(段落【0019】)

(g)「一般に、レーザマーキングに用いられるレーザは、発振波長によって2つに大別される。その1は、発振波長が1064nmの近辺にあるものであり、光を増幅させる媒質・方式等の違いによって印字等の可能な対象物が異なっている。この発振波長1064nmのレーザは、樹脂及び金属の加工は良好であるが、透明な物体の加工を行うことはできない。この種のレーザの代表的なものとしては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ、YVO_(4)レーザ、FAYbレーザをあげることができる。YAGレーザは、金属の彫刻が可能であり、波長の低いものも提供されている。YVO_(4)レーザは、金属の印字が可能であり、微細なマーキングに向いている。また、FAYbレーザでは、機種によりパルス幅を短くして、熱影響が少なく、印字に有利な方式という特徴を有している。」(段落【0020】)

(h)「この点、YVO_(4)レーザは、微妙なパワー調整ができるため、略透明な表層を透過して、二酸化チタンを顔料として添加しているインキ層に黒色の発色を起こして文字等の印字ができるという特徴がある。また、黒変によるマーキングは、下地の白とのコントラストが大きく、判読可能に表示させることができるものである。」(段落【0024】)

(i)「・・・図4は包装機にレーザ装置を設置した実施例の一例を示したものである。
ロールのフィルムが搬送中にレーザ装置50で所定の位置に印字した後にフォーマー20で被包装体31を包む込み、背シール21で筒状に成形され、その後エンドシール22により上下がシールされ、そのシール上を切断することにより個別の包装体30を製造することを説明している。」(段落【0027】)

(j)「



」(【図1】)

(k)「



」(【図4】)

(l)上記(e)、(k)によると、包装フィルムは、表層、印刷層、シール層で構成されている。
表層として、透明延伸ポリプロピレンフィルムが記載されるとともに、延伸PP(OPP)のほかに延伸Ny(ONy)を選択可能であることが記載されている。
印刷層は、グラビア印刷などによる絵柄、文字情報の印刷層である。
シール層は、ヒートシール性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の樹脂で構成されている。

(m)上記(e)によると、「グラビア印刷などによる絵柄、文字情報の印刷層が形成され、さらにその上に白インキによる白色インキ層が形成」されているのだから、印刷層と白色インキ層が重なり合っている領域がある。

(n)上記(e)によると、「この白色インキ層の一部に本発明のレーザマーキング方法による印字を行なうことができる。」のであり、上記(d)によると「レーザ光が表面の表層を透過して、白色のインキ層の成分を黒色変化させることで白地に黒色のマーキングが可能となり、表面の表層越しに、商品名、日付、製造者記号などのマーキングを白地に黒文字として判読ができる。」のであるのだから、絵柄、文字情報の印刷層がなく白色インキ層のみの領域がある。

(o)上記(e)、(h)によると、YVO_(4)レーザのマーキングにより黒色の発色を起こすものは、顔料として含有している二酸化チタンであるから、YVO_(4)レーザのマーキングを行う白色インキ層の白インキは顔料として二酸化チタンを含有している。

(p)上記(f)の「g/m2」は、塗工量の単位であるのだから、「g/m^(2)」の明らかな誤記である。

(q)上記(i)、(k)によると、包装フィルムは、被包装体を包む袋状の包装体として用いられている。

上記(a)?(q)によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「表層、印刷層、シール層で構成される包装フィルムであって、
表層は透明延伸ポリプロピレンフィルムであって延伸Ny(ONy)を選択可能であり、
印刷層は絵柄、文字情報の印刷層と白色インキ層からなり、
シール層はヒートシール性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の樹脂で構成されており、
絵柄、文字情報の印刷層と白色インキ層が重なり合った領域と、白色インキ層のみの領域があり、
白色インキ層は、YVO_(4)レーザの照射により黒色に発色する二酸化チタンを顔料として含み、白色の印刷層の塗工量は0.1g/m^(2)?5g/m^(2)、好ましくは1.0g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、YVO_(4)レーザの照射により黒色の発色を起こしてマーキング文字を印字するものであり、
被包装体を包む袋状の包装体として用いられる、
包装フィルム。」

b.引用文献2(特開2012-131885号公報)
引用文献2には、次の記載がある。
(a)「【請求項1】
ビスマス系化合物と、その他の無機系化合物とを含むことを特徴とするレーザー記録用インキ組成物。
【請求項2】
前記ビスマス系化合物は、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマスおよび硝酸ビスマスから選ばれる一種類または二種類以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載のレーザー記録用インキ組成物。
【請求項3】
前記レーザー記録用インキ組成物中の前記ビスマス系化合物の含有量が、固形分換算で0.1?95.0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー記録用インキ組成物。
【請求項4】
前記その他の無機系化合物は、金属酸化物、銅系化合物、モリブデン系化合物、複合酸化物から選ばれる一種類または二種類以上の化合物であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のレーザー記録用インキ組成物。
【請求項5】
印刷基材上に、請求項1?4のいずれかに記載のレーザー記録用インキ組成物を塗布した塗布層と、被覆層とを設けたことを特徴とする記録用積層体。
【請求項6】
前記印刷基材は、紙、アルミ箔またはプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項5記載の記録用積層体。
【請求項7】
前記被覆層は、オーバーコートニス、樹脂、プラスチックフィルム、アルミ箔、紙であることを特徴とする請求項5または6に記載の記録用積層体。
【請求項8】
請求項5?7のいずれかに記載の記録用積層体にYAGレーザーまたはYVO_(4)レーザーを照射、印字して得られることを特徴とする記録体。
」(【特許請求の範囲】)

(b)「本発明は、レーザー照射により発色するレーザーマーキング記録用積層体に使用するレーザー記録用インキ組成物、印刷基材上に該インキ組成物の塗布層を有すると共にこれを保護する被覆層を設けた記録用積層体、および該記録用積層体にレーザーで印字した記録体に関する。」(段落【0001】)

(c)「包装や容器、電子部品、自動車部品、カード、ラベルなどの表面にはロット番号、シリアル番号、賞味期限、品質保証期限、バーコードなどの種々のマーキングが施されている。コストや利便性などから、スタンプ、インクジェット、刻印などが利用されている。しかしながら、スタンプやインクジェットは表面にマーキングが施されるため、擦れによって、読めなくなることや、剥がれたインキが食品などに付着するなどの衛生上の問題や汚染の問題になることがある。一方、刻印は衛生上の問題はないものの、視認性に乏しく、使用しづらい問題がある。」(段落【0002】)

(d)「従って、本発明は、安全性が高く、安価であり、かつ白色度が高く、レーザー照射後の印字濃度の高いレーザー記録用インキ組成物、当該インキ組成物用いて得られる耐久性に優れた記録用積層体、および当該記録用積層体に鮮明にレーザー印字した記録体を提供することを目的とする。」(段落【0007】)

(e)「本発明のインキ組成物中のビスマス系化合物の含有量は、固形分換算で、0.1?95.0重量%であることが好ましい。より好ましくは0.5?90重量%であり、さらに好ましくは1?85重量%である。ビスマス系化合物の含有量が0.1重量%より少ないとレーザー照射後の印字濃度が低く、95.0重量%より多いとインキ皮膜が硬くなりすぎて、もろくなる。」(段落【0014】)

(f)「金属酸化物としては、酸化チタン、・・・などが挙げられる。」(段落【0017】)

(g)「なかでも、レーザー照射後の印字濃度の高いことから、金属酸化物、銅系化合物、モリブデン系化合物、複合酸化物が好ましい。」(段落【0022】)

(h)「前記印刷基材としては、紙、アルミ箔またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。
前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、・・・ポリアミドフィルムまたは・・・これらは延伸、未延伸のどちらでも良く、・・・」(段落【0036】?【0037】)

(i)「前記印刷基材に塗布するインキ組成物の塗布層の厚さは、レーザー照射後において、その印字が明瞭に認識できる範囲内であれば、特に制限はないが、0.01?10μmである。より好ましくは0.1?3μmである。0.01μmより小さいと十分な濃度が得られない。10μmより大きいとインキ組成物を塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。」(段落【0043】)

(j)「本発明のインキ組成物を多色印刷機を用いて印刷した場合、当該インキ組成物の印刷のほかに、絵柄などの他の情報をインラインで同時に印刷することができる。」(段落【0045】)

(k)「前記印刷基材としてプラスチックフィルムを使用する場合、前記被覆層は、レーザーの透過を阻害しない透明もしくはレーザーの透過を阻害せず、かつ視認性を有する範囲で不透明な有機系ニス・・・樹脂を溶融押し出しする押出ラミネート法、フィルムを貼り合わせるドライラミネート法やウェットラミネート法、・・・などによって形成しても良く、・・・」(段落【0049】)

(l)「前記押出ラミネート法に使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、・・・」(段落【0054】)

(m)「本発明の記録用積層体は、1064nmの波長を有するレーザー照射に対する吸収を有するものである。すなわち、YAGレーザーやYVO_(4)レーザーが、被覆層を透過し、塗布層によって、酸化、分解、炭化などが起こり、記録用積層体が発色する。」(段落【0062】)

(n)上記(a)、(b)によると、引用文献2に記載されたものは、印刷基材、塗布層、被覆層を備える記録用積層体である。塗布層は、レーザー記録用インキ組成物を塗布したものである。レーザー記録用インキ組成物は、ビスマス系化合物と、その他の無機系化合物とを含むものである。その他の無機系化合物は、金属酸化物、銅系化合物、モリブデン系化合物、複合酸化物から選ばれる一種類または二種類以上の化合物である。

(o)上記(c)によると、記録用積層体は、包装や容器に用いられるものである。

(p)上記(d)によると、レーザー記録用インキ組成物は、白色である。

(q)上記(e)によると、ビスマス系化合物は、レーザー照射により発色する。

(r)上記(g)によると、その他の無機系化合物である金属酸化物、銅系化合物、モリブデン系化合物、複合酸化物は、レーザー照射により発色する。

(s)上記(h)によると、印刷基材は、延伸したポリアミドフィルムなどのプラスチックフィルムである。

(t)上記(j)によると、塗布層を構成するレーザー記録用インキ組成物を多色印刷機を用いて印刷した場合、当該インキ組成物の印刷のほかに、絵柄などの他の情報をインラインで同時に印刷することができる。

(u)上記(k)、(l)によると、被覆層は、樹脂を溶融押し出しする押出ラミネート法の場合はLLDPEを選択することができ、ドライラミネート法やウェットラミネート法の場合はフィルムとすることができる。

(v)上記(m)によると、印字のために照射されるレーザーは、YAGレーザーやYVO_(4)レーザーである。

上記(a)?(v)によると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用事項2」という。)が記載されている。
「印刷基材、塗布層、被覆層を備える記録用積層体であって、記録用積層体は、包装や容器に用いられるものであり、
印刷基材は、延伸したポリアミドフィルムなどのプラスチックフィルムであり、
被覆層は、樹脂を溶融押し出しする押出ラミネート法の場合はLLDPEを選択することができ、ドライラミネート法やウェットラミネート法の場合はフィルムとすることができるものであり、
塗布層は、塗布層を構成するレーザー記録用インキ組成物を多色印刷機を用いて印刷した場合、当該インキ組成物の印刷のほかに、絵柄などの他の情報をインラインで同時に印刷することができるものであり、
さらに塗布層は、YAGレーザーやYVO_(4)レーザーの照射により発色するビスマス系化合物を一種類または二種類以上と、その他の無機系化合物として酸化チタンを含むレーザー記録用インキ組成物を塗布したものであり、レーザー記録用インキ組成物は、ビスマス系化合物の含有量が固形分換算で0.1?95.0重量%であり、塗布層の厚さは0.1?3μmであり、YAGレーザーやYVO_(4)レーザーの照射により発色し印字可能な塗布層である記録用積層体。」

(イ)対比
本件発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「表層」は本件発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「絵柄、文字情報の印刷層」は「絵柄印刷層」に、「YVO_(4)レーザの照射により黒色の発色を起こしてマーキング文字を印字する」は「低出力のレーザー光により発色し印字可能」に相当する。
引用発明1の「白色インキ層」は、「グラビア印刷などによる絵柄、文字情報の印刷層が形成され、さらにその上に白インキによる白色インキ層が形成されて見栄えを良くしている。」(上記(ア)a.(e))ものであるのだから、絵柄、文字情報の印刷層の下地としての機能を有するものである。よって、引用発明1の「白色インキ層」は、本件発明1の「印刷用下地層」に相当するとともに、黒色の発色を起こすものであるから本件発明1の「発色インキ下地層」にも相当する。
引用発明1の「シール層」は、「ヒートシール性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の樹脂で構成」されているから、「直鎖状低密度ポリエチレンからなるシーラント層」である点で、本件発明1の「直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層」と一致する。
引用発明1の「絵柄、文字情報の印刷層と白色インキ層が重なり合った領域」は、本件発明1の「絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域」に相当するものであり、同様に「白色インキ層のみの領域」は、「印刷用下地層のみの領域」に相当するものである。
引用発明1の「包装フィルム」は、積層構造を有するものであって「被包装体を包む袋状の包装体として用いられる」ものであるから、「包装用積層袋材」である点で、本件発明1の「包装用積層小袋材」と一致する。
引用発明1の「YVO_(4)レーザの照射により黒色に発色する二酸化チタンを顔料として含み」は、「低出力のレーザー光の照射により発色する酸化チタン顔料を含み」である点で、本件発明1の「低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み」と一致する。
引用発明1の「白色の印刷層の塗工量」が「白色インキ層」の白色インキの塗工量を意味することは自明である。よって、引用発明1の「白色の印刷層の塗工量」は、本件発明1の「発色インキの塗布量」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
「基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及び直鎖状低密度ポリエチレンからなるシーラント層を備える包装用積層袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層袋材において、
印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色する酸化チタン顔料を含む、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である、包装用積層袋材。」

そして、本件発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、基材が「二軸延伸ポリアミドフィルム基材」であるのに対して、引用発明1の表層は、二軸延伸ポリアミドフィルムとは記載されていない点。

<相違点2>
本件発明1は、シーラント層が「直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層」であるのに対して、引用発明1のシール層は、直鎖状低密度ポリエチレンからなるシーラント層ではあるものの、フィルムであるのか否か不明である点。

<相違点3>
本件発明1は、印刷用下地層が「低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含」むのに対して、引用発明1の白色インキ層は、低出力のレーザー光の照射により発色する酸化チタン顔料を含むものの、ビスマス系化合物も含むことは記載されていない点。

<相違点4>
本件発明1は、印刷用下地層の「発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)」であるのに対して、引用発明1の白色インキ層は、白色の印刷層の塗工量が発色インキの塗布量を意味するものではあるものの、乾燥後の塗布量であるのか否か不明であり、また、数値範囲も0.1g/m^(2)?5g/m^(2)、好ましくは1.0g/m^(2)?2.0g/m^(2)としている点。

<相違点5>
本件発明1は、印刷用下地層の「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」であるのに対して、引用発明1の白色インキ層は、ビスマス系化合物に関する記載がない点。

<相違点6>
本件発明1は、印刷用下地層の「膜厚が0.05?20μm」であるのに対して、引用発明1の白色インキ層は、膜厚に関する記載がない点。

<相違点7>
本件発明1は、包装用積層「小」袋材としているのに対して、引用発明1は、包装用積層袋材という点で共通するものの大きさが明らかでなく、「小」袋材であるか否か不明な点。

(ウ)相違点についての検討
a.事案に鑑み、まず、印刷用下地層に関して密接に関連する<相違点3>?<相違点6>をあわせて検討する。

b.引用文献1には、印刷用下地層である白色インキ層について、低出力レーザーの照射により発色する材料を2種類併用すること、さらには、併用する発色材料としてビスマス系化合物を選択することについての記載も示唆もない。

c.ここで、引用事項2をみると、塗布層を構成するレーザー記録用インキ組成物において、YAGレーザーやYVO_(4)レーザーといった低出力レーザーの照射により発色する材料を2種類併用すること、特に酸化チタンとビスマス系化合物を用いる点を備えている。
しかしながら、引用事項2の塗布層は、塗布層を構成するレーザー記録用インキ組成物を多色印刷機を用いて印刷した場合、当該インキ組成物の印刷のほかに、絵柄などの他の情報をインラインで同時に印刷することができるものであるから、レーザー記録用インキ組成物と絵柄などの他の情報が重なり合ってレーザー記録用インキ組成物が下地層となるものではない。そして、引用文献2には、塗布層を下地層とすることについての示唆もない。
したがって、引用事項2のビスマス系化合物の含有量や、塗布層の厚さは、下地層としてのものではない。
さらに、引用事項2は、レーザー記録用インキ組成物の乾燥後の塗布量が不明である。

d.そうすると、下地層ではない引用事項2の塗布層を構成するレーザー記録用インキ組成物を、下地層である引用発明1の白色インキ層に適用する動機付けがないといわざるを得ない。
仮に適用したとしても、下地層ではない引用事項2のレーザー記録用インキ組成物の構成(ビスマス系化合物と酸化チタンを含む点、ビスマス系化合物の含有量、膜厚)が、下地層の構成として適当であるとする根拠はなく、また、引用発明1の塗布量は乾燥後の塗布量ではないし、下地層ではない引用事項2のレーザー記録用インキ組成物の塗布量として、下地層である引用発明1の白色インキの塗布量が適当であるとする根拠もない。

e.そして、本件発明1は、<相違点3>?<相違点6>に係る構成を備えることによって、以下のような格別の作用効果を発揮するものである。
(a)<相違点3>のビスマス系化合物と酸化チタン顔料の二種類を併用する構成によって、「本発明では、ビスマス系化合物を少なくとも含む発色材料を用いるものであって、さらにレーザー光により発色する発色材料及び又は発色効率を上げるため無機化合物を用いることができるものである。・・・低出力のレーザー光の照射であっても無機化合物が、ある場合は発色材料として機能すること及び又は無機化合物が発熱効率を上げるように機能することで発色材料の発色を助け、あるいは発色材料と白色顔料を含む白色インキの白色度アップするように機能するため無機化合物を添加することが好ましい。」(段落【0042】)という、発色度合いの向上、及び下地層としての白色度アップ。

(b)<相違点4>に係る「発色インキ」の塗布量の構成によって、「本発明においてレーザー光により鮮明で印字ムラの生じない包装用積層小袋材を得るために、印刷下地層のインキの塗布量が、乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)、より好ましくは2.7?3.3g/m^(2)であることが好ましい。これよりも印刷層が厚いと、フィルムがレーザー照射によるダメージを受け易くなる。逆に、これよりも薄いと、印字画像が不明瞭になり易い。」(段落【0060】)という、フィルムへのダメージが防止され、鮮明な印字画像が得られる。

(c)<相違点5>の「印刷用下地層」のビスマス系化合物含有量の構成によって、「低出力のレーザー光により発色するビスマス系化合物の発色材料は、インキ組成物に対して固形分換算で0.1?95.0重量%の範囲で含有される。本発明においては、その発色材料の含有量は、1?30重量%であることが好ましい。1重量%未満では、発色、印字が不十分、不鮮明となることなどの理由から好ましくなく、含有量が増加するほど印字の発色は濃くなって行くが、30重量%以上にしてもその濃度上昇による視認性が差が顕著に認識できるものではなく、むしろ、コストアップ、印刷下地層が硬くなり、ひび割れ、強度低下を導き、レーザー光の照射により発色する発色材料自体の顔料色が印刷下地層に色を付けてしまうこと等の理由から好ましくない。」(段落【0049】)という、十分な発色が得られ、コストアップを避けることができ、下地層として適当な強度と色が得られる。

(d)<相違点6>の「印刷用下地層」の膜厚の構成によって、「レーザー発色インキ層は、膜厚が0.05?20μmが好ましく、より好ましくは0.1?7μm程度である。膜厚が1μm以下、0.05μm未満であるとレーザー光線照射により発色する発色材料による発色、印字が不十分、不鮮明となる場合がある。一方、膜厚が増加するほど印字の発色は濃くなっていくが、膜厚20μmを越えると、レーザー光の照射により発色する発色材料による発色、印字は十分ではあるが、発色材料を多量に使用するためのコストアップ、印刷下地層の強度低下、レーザー光線照射により発色する発色材料自体の顔料色がレーザー発色インキ層に色を付けること等の理由から好ましくない。」(段落【0051】)という、十分な発色が得られ、コストアップを避けることができ、下地層として適当な強度と色が得られる。

f.よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)小括
上述のとおり、本件発明1は、引用発明1及び引用事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことはできない。

イ.本件発明2?7について
本件訂正によって、請求項2、4及び請求項5は削除された。
そして、本件発明3、6及び7は、本件発明1の構成要件を全て含むものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、特許法第29条第2項の規定に適合するものであり、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。

ウ.申立人の主張について
(ア)理由4(特許法第29条第2項)に関する申立人1の主張と、その判断は以下のとおりである。
a.「(イ)相違点
本件特許発明1は甲第1号証記載の発明と以下の点で相違する。すなわち、甲第1号証には、上記C「印刷用下地層は、レーザー光の照射により発色する発色材料を含む、レーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」ことについては記載されていない点(以下、「相違点1」とする。)において相違する。・・・
本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証を組み合わせることにより、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」
(申立1の特許異議申立書の(4-3-1))

b.「そして、訂正後の本件発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された発明には、「低出力のレーザー光の照射により発色する発色材料と白インキに用いられる白色顔料」を含む発色インキ下地層が記載されていない点で相違する。・・・
そうすると、甲第1号証に記載された発明における白色インキ層(白色印刷層)に用いる組成物について、上記当業者における周知の技術を採用することにより、訂正後の本件発明1とすることは当業者であれば容易である。」
(申立人1意見書の3(3))

本件訂正によって、本件発明1と引用発明1(申立1の甲第1号証記載の発明)の相違点は、上記(イ)に示した<相違点1>?<相違点7>となったから、申立人1の主張(a)及び(b)は、その前提である相違点が異なるため採用することができない。

(イ)理由4(特許法第29条第2項)に関する申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
a.「意見書における相違点A1、C1?C4の認定は全て誤りであり、取消理由通知の理由4-Aについての認定を覆すものではなく、訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2?7の発明は、引用文献1及び引用文献2から当業者が容易に発明できたものである。」
(申立人2意見書1の3(4)(理由4-Aについて))

本件訂正によって、本件発明1と引用発明1の相違点は、上記(イ)に示した<相違点1>?<相違点7>となったから、特許権者意見書1で主張する「相違点A1、C1?C4」とは異なるものとなった。
これにともない、申立人2の上記主張は、その前提である相違点が異なるものとなったため、採用することができない。

b.「特許発明が訂正請求により訂正されて引用文献1に記載された発明との相違点が増えたため、ここで、本件訂正発明1と引用文献2(特開2012-131885号公報)との一致点及び相違点を整理して説明する。・・・
よって、本件訂正発明1は、引用文献2及び引用文献1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。」
(申立人2意見書2の3.(6)(6-1)?(6-2))

引用文献2(特開2012-131885号公報)は、申立2における甲第8号証であり、申立2の申立理由1(特許法第29条第2項)において、副引例とした文献である。
そうすると、申立人2の上記主張は、主引例を引用文献2に換えて進歩性を否定する旨の主張であるから、実質的に新たな申立理由であり、当該主張は採用できないものであるが、念のため、以下に検討する。

引用文献2に記載された発明(引用事項2)は、上記(ア)b.に示したとおりである。
そして、引用事項2の塗布層は、上記(ウ)c.に示したとおり、レーザー記録用インキ組成物と絵柄などの他の情報が重なり合ってレーザー記録用インキ組成物が下地層となるものではなく、引用事項2のビスマス系化合物の含有量や、塗布層の厚さは、下地層としてのものではない。
そうすると、塗布層が絵柄層と下地層で構成されていない引用事項2において、引用発明1の下地層である白色インキ層に関する構成を適用する動機付けがないといわざるを得ない。
仮に適用したとしても、下地層ではない引用事項2のレーザー記録用インキ組成物の構成(ビスマス系化合物と酸化チタンを含む点、ビスマス系化合物の含有量、膜厚)が、下地層の構成として適当であるとする根拠はなく、また、引用発明1の塗布量は乾燥後の塗布量ではないし、下地層ではない引用事項2のレーザー記録用インキ組成物の塗布量として、下地層である引用発明1の白色インキの塗布量が適当であるとする根拠もない。
そして、本件発明1は、上記(ウ)e.に示したとおりの格別の作用効果を発揮するものである。
よって、本件発明1は、引用事項2及び1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人2の上記主張は、採用することができない。


第4.取消理由としなかった異議申立理由について
上記取消理由として採用しなかった異議申立理由について、念のために検討すると、以下のとおりである。
1.特許法第36条第6項第1号
申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
(1)「本件特許発明1において「印刷用下地層」の材質及び製造方法は記載されておらず、いかにして「安価な材料」で「製造が容易」とするのかが不明である。
したがって、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(ウ))

本件訂正により、本件発明1は「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」ことが特定された。
そして、本件特許明細書は、ビスマス系化合物の含有量や膜厚とコストの関係(段落【0049】、【0051】)や、製造工程を簡略化することができる塗布による積層等も記載されており、実施例(段落【0085】?【0087】)等の記載もあわせみれば、本件発明1が「安価な材料」、「製造が容易」といった課題を解決できることを当業者が理解できる程度に記載されているものといえる。
よって、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(2)「本件特許発明1の「レーザー光」にはどのような種類のレーザー光であって、どの程度の低出力であるかが記載されていないため、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書3.(4)エ.(エ))

本件訂正により、本件発明1は「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」ことが特定された。
これによれば、ビスマス系化合物の含有量、塗布量、膜厚が特定された印刷用下地層が発色する程度であって、積層構造にダメージを与えない程度の「低出力のレーザー光」であることが理解できる。
そして、本件特許明細書は、レーザー光について、YAGレーザー、YVO_(4)レーザーが例示(段落【0076】)されるとともに、パルス条件も例示(段落【0077】)されており、実施例(段落【0085】?【0087】)等の記載もあわせみれば、本件発明1が「低出力のレーザー光」によって課題を解決できることを当業者が理解できる程度に記載されているものといえる。
よって、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(3)「本件特許発明1の「印刷用下地層のみの領域」が「レーザー印字層」となるべきであるが、本件特許発明1では「絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なり合った領域」と規定されているため、「重なり合った領域」の「印刷用下地層」が「レーザー印字層」となることになり、発明が不明確かつ、サポート要件違反である。
また、「印刷下地層として機能する白色インキのみからなる領域」なのであるから、本件特許発明1の「印刷用下地層」は「白色インキ」のみから構成されるものでなければならないが、本件特許発明1の「印刷用下地層」が「白色インキ」以外のものも含むため、発明が不明確であり、かつサポート要件違反である。
したがって、本件特許発明1は明確でないため、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(カ))

本件特許の請求項1には、「二軸延伸ポリアミドフィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、」と記載されている。
これによると、「包装用積層小袋材」が、「二軸延伸ポリアミドフィルム基材」と「印刷層」と「シーラント層」を備えるものであり、そのうち「印刷層」は、「絵柄印刷層」と「印刷用下地層」からなること、「印刷用下地層」が「レーザー印字層となる」ものであること、「領域」には、「絵柄印刷層」と「印刷用下地層」とが「重なりあった領域」と、「印刷用下地層のみの領域」の2つあることが理解できる。
さらに、請求項1には、「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、・・・低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」と記載されているから、「レーザー印字層となる印刷用下地層」とは、「印刷用下地層」が「レーザー光により発色し印字可能」な層であることを意味することがわかる。
ここで、「印刷用下地層」は、「下地」であるのだから、「絵柄印刷層」の下側にあることが自明である。
そうすると、「絵柄印刷層」と「印刷用下地層」とが「重なりあった領域」では、「絵柄印刷層」が上側にあるため「印刷用下地層」にレーザー光を照射することができないのだから、「印刷用下地層」にレーザー光を照射する「領域」とは、「印刷用下地層のみの領域」であると理解できる。
そして、この理解は、本件特許明細書の「印刷下地層のみの領域を任意の位置に設けることができ、しかも該領域にレーザー照射してレーザー印字領域とすることができる。」(段落【0018】)等の、「印刷用下地層のみの領域」に印字するという記載と整合する。
よって、「「重なり合った領域」の「印刷用下地層」が「レーザー印字層」となることになり」という申立人2の主張は、採用することができない。

また、本件特許明細書には、「包装フィルムの印刷時の下地として普通に用いられる汎用的に使用されている白色インキを用いて、レーザー光により発色する発色材料を含有させて印字可能な白色インキ層として形成された印刷用下地層」(段落【0018】)、「本発明では、低出力のレーザーにより発色する発色材料として、特に、ビスマス系化合物を少なくとも用いる。」(段落【0041】)と記載されているから、「白色インキ」とは、汎用的な白色インキ成分のみではなく、発色材料として少なくともビスマス系化合物を含有させたものを意味することが理解できる。
そして、この理解は、請求項1の「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み」という記載と整合する。
よって、「本件特許発明1の「印刷用下地層」は「白色インキ」のみから構成されるものでなければならないが、本件特許発明1の「印刷用下地層」が「白色インキ」以外のものも含む」という申立人2の主張は、採用することができない。

(4)「本件訂正発明1は発色材料の材質、配合量、レーザー光の種類、出力、スキャンスピード等の諸条件が特定できていないので、発明の詳細な説明の記載がその実施をすることができる程度に明確かつ十分なものではないから、本件訂正発明1に課題を解決できないものも含むことになり、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載した発明であるとはいえない。」
(申立人2意見書1の3.(2))

上記第3.3.(2)イ.(ア)、(イ)及び上記(2)で述べたとおり、本件訂正により、申立人2の主張は、採用することができない。

2.特許法第36条第6項第2号
申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
(1)「「印刷用下地層」の染料・顔料と「絵柄印刷層」の染料・顔料とは同じ材料を用いることができる。 このことは、本件特許発明1の「絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域」における「絵柄印刷層」と「印刷用下地層」との差異を不明確とすることになり、例えば「印刷用下地層」を2層重ねたものをも含むことになる。
したがって、本件特許発明1は明確でないため、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(イ))

請求項1の「絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層」なる記載によれば、「絵柄印刷層」は絵柄が印刷された層であること、「印刷用下地層」は絵柄を印刷するための下地となる層であることがわかる。
このことを踏まえると、請求項1の「絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域」とは、「印刷用下地層」の上に絵柄が印刷されることによって「絵柄印刷層」が形成された領域であること、また、「印刷用下地層のみの領域」とは、「印刷用下地層」のみであって絵柄が印刷されていない領域であることがわかる。
よって、「絵柄印刷層」は、「印刷用下地層」の上に絵柄が印刷されることによって形成される層であるのに対して、「印刷用下地層」は、絵柄を印刷するための下地となる層であることが明確である。
すなわち、「絵柄印刷層」と「印刷用下地層」との差異は、含有する染料・顔料等によって区別されるものではないから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

(2)「本件特許発明1の「印刷用下地層のみの領域」が「レーザー印字層」となるべきであるが、本件特許発明1では「絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なり合った領域」と規定されているため、「重なり合った領域」の「印刷用下地層」が「レーザー印字層」となることになり、発明が不明確かつ、サポート要件違反である。
また、「印刷下地層として機能する白色インキのみからなる領域」なのであるから、本件特許発明1の「印刷用下地層」は「白色インキ」のみから構成されるものでなければならないが、本件特許発明1の「印刷用下地層」が「白色インキ」以外のものも含むため、発明が不明確であり、かつサポート要件違反である。
したがって、本件特許発明1は明確でないため、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(カ))

上記1.(3)で述べたとおり、
「「重なり合った領域」の「印刷用下地層」が「レーザー印字層」となることになり」、及び「本件特許発明1の「印刷用下地層」は「白色インキ」のみから構成されるものでなければならないが、本件特許発明1の「印刷用下地層」が「白色インキ」以外のものも含む」
という上記申立人2の主張、及び
「本件特許発明1の「印刷用下地層」は「白色インキ」のみから構成されるものでなければならないが、本件特許発明1の「印刷用下地層」が「白色インキ」以外のものも含む」という申立人2の主張は、採用することができない。」
という上記申立人2の主張は、採用することができない。

(3)「本件特許発明1の「小袋」とはどの程度の大きさであるのか不明である。また、本件特許発明1の「小袋」は内容物が直接充填されるものであるのか否かが不明である。さらに、本件特許発明の「小袋」は衛生上の問題がある食品用なのであるかが不明である。さらに、小袋における印字領域がどの程度まで狭いと付加情報の印字に課題があるのかが不明確であって、小袋材をどのようにすればこの課題を解決することができるかが本件特許発明1では不明確である。
したがって、本件特許発明1は明確でないため、本件特許発明2?7も同様に、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
(申立2の特許異議申立書の3.(4)エ.(キ))

申立人2の主張する本件特許明細書の段落【0005】、【0006】、【0084】等において、調味料や食品等が充填される小袋が記載されているが、これらは、「特に、印字領域が狭く、限定される包装体である包装用積層小袋において、付加情報を適切かつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字し、視認性を向上させた包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに印字体を提供することが求められている。」(段落【0005】)という課題を説明するための一例である。
すなわち、小袋材であるが故に印字領域が狭いことが課題に結びつくのであって、内容物や用途は、課題に直接結びつくものではなく、狭い領域に印字するための解決手段とも関係がない。
よって、本件発明1において、「包装用積層小袋材」の内容物や用途は、課題を解決するために必須の構成ではないから、申立人2の「「小袋」は内容物が直接充填されるものであるのか否かが不明である」、「「小袋」は衛生上の問題がある食品用なのであるかが不明である」という主張は、採用することができない。

また、請求項1の「包装用積層小袋材」なる記載から、包装用積層体という技術分野において一般的に小袋と称される大きさを意味していることは自明である。
この、包装用積層体という技術分野において一般的に小袋と称される大きさについて、本件特許明細書にも「特に、印字領域が狭く、限定される包装体である包装用積層小袋」(段落【0005】)との記載があるとおり、印字領域が狭く、限定される大きさであることは、当該技術分野の当業者であれば理解できる。
すなわち、請求項1の「包装用積層小袋材」の「小袋」がどの程度の大きさであるのかは明確であり、申立人2の「本件特許発明1の「小袋」とはどの程度の大きさであるのか不明である」という主張は、採用することができない。

そして、必要な文字の大きさや文字数等から導かれる、要求される印字に必要な広さに達していなければ、印字領域が狭く課題が生じることは、自明な事項である。
よって、申立人2の「小袋における印字領域がどの程度まで狭いと付加情報の印字に課題があるのかが不明確であって」という主張は、採用することができない。

また、「特に、印字領域が狭く、限定される包装体である包装用積層小袋において、付加情報を適切かつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字し、視認性を向上させた包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに印字体を提供することが求められている。」(段落【0005】)という課題が、本件発明1の、「低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層」である「印刷用下地層」のみの領域に印字することによって解決できることは明確である。
よって、「小袋材をどのようにすればこの課題を解決することができるかが本件特許発明1では不明確である」という主張は、採用することができない。

(4)「本件訂正発明1に新たに記載された「低出力のレーザー光」がどの程度のあるいは何に対して低いのか定義されておらず、不明確である。・・・
本件訂正発明1の「低出力のレーザー光により発色する」では、「安価な材料」、「製造が容易」、「印字位置の変更が容易」、「適当な太さを有し読み取りやすい印字線が得られる」等の課題を解決するための手段が特定できないため、不明確である。」
(申立人2意見書1の3.(3))

上記1.(2)、(4)で述べたとおり、本件訂正により、申立人2の主張は、採用することができない。

(5)「本件訂正発明1に記載された「インキ組成物」と「発色インキ」の関係が不明であり、「発色インキの塗布量」と「発色インキ下地層」との関係が不明であり、「発色インキの塗布量」と「膜厚」との関係が不明であるから、本件訂正発明1及びこれを引用する本件訂正発明3,6,7は、不明確である。」
(申立人2意見書2の3.(5))

請求項1の記載から、以下のように理解することができる。
ア.「印刷用下地層は、・・・である、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」と記載されているから、「発色インキ」は、「印刷用下地層」を構成するためのものであることが理解できる。
そうすると、「発色インキの塗布量」は、「印刷用下地層」を構成するためのものである「発色インキ」の塗布量であることが理解できる。

イ.「ビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、・・・である、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層」と記載されているから、「印刷用下地層」を構成するためのものである「発色インキ」は、「ビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含」むものである。
そして、「ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%」であるのだから、「ビスマス系化合物」を含有する「インキ組成物」について、「ビスマス系化合物」の重量が「インキ組成物」全体の重量に対して「固形分換算で1?30重量%」であることがわかる。
そうすると、「ビスマス系化合物」を含み「印刷用下地層」を構成するための「発色インキ」の「インキ組成物」全体の重量に対する「ビスマス系化合物」の重量の割合を特定するものであることが理解できる。

ウ.「印刷用下地層は、・・・発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、・・・である、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」のだから、「印刷用下地層」を構成するためのものである「発色インキ」の「塗布量」を「乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)」とすることがわかる。
また、「印刷用下地層は、・・・膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」のだから、「印刷用下地層」である「発色インキ下地層」の「膜厚」を「0.05?20μm」とすることがわかる。
よって、「発色インキの塗布量」と「膜厚」は、それぞれ明確である。

上記ア.?ウ.のとおり、請求項1の「インキ組成物」、「発色インキ」、「発色インキの塗布量」、「発色インキ下地層」、「膜厚」は、それぞれ明確であるから、申立人2の上記主張は、採用することができない。

3.特許法第29条第2項
申立人2の主張と、その判断は以下のとおりである。
「甲2発明に記載されたレーザー印字層となる白インキ層を甲1発明に記載された光遮断性層に適用することはその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に相当し得るものである。」(申立2の特許異議申立書の3.(4)イ?ウ)と主張し、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

そこで検討する。
本件発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

本件発明1が「印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である」のに対して、甲1発明の光遮断性層4は、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタンの白色顔料を含む下地層であり、白色インキ組成物が厚さ2g/m^(2)(乾燥状態)にコーティングされているものの、低出力のレーザー光の照射により発色すること、ビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含むこと、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であること、膜厚が0.05?20μmであることが記載されていない点。

ビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含むこと、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であることについては、甲1に記載されていないし、甲2にも記載されていない。
そうすると、甲2事項を甲1発明に適用することが容易になし得るものであるとしても、上記事項において依然として相違するから、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて容易に発明をすることができたものではないから、申立人2の上記主張は、採用することができない。


第4.むすび
以上のとおり、本件発明1、3、6、7に係る特許請求の範囲の記載、及び本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号、及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしており、その特許は特許法第113条第4号に該当しないから、取り消すことはできない。
また、本件発明1、3、6、7は、引用発明1及び引用事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、特許法第29条第2項の規定に適合するものであり、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
そして、ほかに本件発明1、3、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正により、請求項2、4、5は削除されたため、請求項2、4、5に係る特許に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリアミドフィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
印刷用下地層は、低出力のレーザー光の照射により発色するビスマス系化合物と酸化チタン顔料を含み、ビスマス系化合物の含有量がインキ組成物に対して固形分換算で1?30重量%であり、発色インキの塗布量が乾燥後の塗布量として1.5?4.5g/m^(2)で、膜厚が0.05?20μmである、低出力のレーザー光により発色し印字可能な発色インキ下地層である、包装用積層小袋材。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ビスマス系化合物が水酸化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマスおよび硝酸ビスマスから選ばれる1種類または2種類以上の化合物である、請求項1に記載の包装用積層小袋材。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項1または3に記載の包装用積層小袋材を用いた包装用小袋体。
【請求項7】
請求項1または3に記載の包装用積層小袋材あるいは請求項6に記載の小袋体に、YAGまたはYVO_(4)レーザー光を基材側から照射することにより発色したインキ組成物の発色域が前記基材および印刷用下地層の境界に広がり、レーザー印字画像を有する包装用小袋レーザー印字体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-30 
出願番号 特願2013-201211(P2013-201211)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近野 光知飛彈 浩一増田 亮子  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 横溝 顕範
久保 克彦
登録日 2017-12-15 
登録番号 特許第6255844号(P6255844)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに包装用積層小袋レーザー印字体  
代理人 結田 純次  
代理人 竹林 則幸  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  
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