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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
管理番号 1357654
異議申立番号 異議2019-700463  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-07 
確定日 2019-11-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6435684号発明「配管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6435684号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6435684号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6435684号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年7月23日の出願であって、平成30年11月22日にその特許権の設定登録がされ、平成30年12月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和元年6月7日に特許異議申立人齋藤 啓太(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年8月2日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和元年10月3日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、申立人は、特許異議の申立てにおいて、意見書の提出を希望しないとしている。

第2 訂正について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、本件訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 振動源(31)に接続され、内部を流体が流れる配管(50)であって、
断面積が拡大する拡大部(32,70)と、
前記拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。」
と記載されているのを、
「 振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)と、
前記拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3,4も同様に訂正する)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「 振動源(31)に接続され、内部を流体が流れる配管(50)であって、
断面積が縮小する縮小部(80)と、
前記縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。」と記載されているのを、
「 振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)と、
前記縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

ウ 訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0007】に記載された
「 本発明は、少なくとも1つの曲げ部(51)を含み、曲げ部(51)は、拡大部(32,70)から振動源(31)の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管である。」を
「 本発明は、振動源(31)に接続され、振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、配管に接続され、配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)と、拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)を含み、曲げ部(51)は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、拡大部(32,70)から振動源(31)の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管である。」に訂正する。

エ 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0008】の記載に、
「 また別の本発明は、振動源(31)に接続され、振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、配管に接続され、配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)と、縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、曲げ部は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、縮小部から振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管である。
このような本発明に従えば、配管には曲げ部が設けられている。そして曲げ部は、縮小部から振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される。流路の断面積が縮小すると、縮小する縮小位置では脈動の腹となる。脈動の腹から脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置は、脈動の節となる。このような脈動の節の部分に曲げ部を設ければ、振動の小さい領域であるので、曲げ部の壁面に衝突する脈動が小さくなり、曲げ部における配管の振動の発生を抑制することができる。したがって曲げ部をどの位置に設けるかによって、配管の振動を抑制することができる。このように適切な位置に曲げ部を設けるという簡単な構成によって、曲げ部における配管の振動を抑制することができる。」の記載を追加する訂正をする。

なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?4〕に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、訂正前の「内部を流体が流れる配管(50)」を「前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)」とすることにより、配管(50)の内部を流れる流体の特性を限定し、訂正前の「断面積が拡大する拡大部(32,70)」を「前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)」とすることにより、拡大部(32,70)の接続関係及び流路断面積を限定し、さらに、訂正前の「前記曲げ部は、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」を「前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」とすることにより、曲げ部の配置される位置を限定するもの(訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項3及び4においても同様)であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許明細書等における明細書の段落【0030】における「配管50内を流れる流体には、次式(1)のように、圧縮機31の回転数N(rpm)に同期した周波数f(Hz)の脈動が発生する。」との記載、段落【0035】における「凝縮器32は、配管50よりも流路断面積が大きく、配管50から流れる冷媒が凝縮器32にて拡散する。したがって凝縮器32は、冷媒が流れる流路の断面積が拡大する拡大部となる。」との記載、段落【0038】における「第1配管501は、圧縮機31が6000rpmにおける荷重低減を狙い、L1が200mmの位置に曲げ部51を設けている。第2配管502は、圧縮機31が8000rpmにおける荷重低減を狙い、L2が400mmの位置に曲げ部51を設けている。」との記載及び段落【0039】における「図8に示すように、第1配管501では6000rpm、第2配管502では8000rpmにおいて作用荷重が低減する。したがって脈動分布が小さい位置に曲げ部51を設けることによって、振動を低減することができる。」との記載並びに図1?8の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ここで、配管(50)の内部を流れる流体の特性を限定したことについて、段落【0030】の記載を、拡大部(32,70)の接続関係及び流路断面積を限定したことについて、段落【0035】並びに図1?3の記載を、さらに、曲げ部の配置される位置を限定したことについて、段落【0038】及び【0039】並びに図3?8の記載を参照。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2において、訂正前の「内部を流体が流れる配管(50)」を「前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)」とすることにより、配管(50)の内部を流れる流体の特性を限定し、訂正前の「断面積が縮小する縮小部(80)」を「前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)」とすることにより、縮小部(80)の接続関係及び流路断面積を限定し、さらに、訂正前の「前記曲げ部は、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される」を「前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される」とすることにより、曲げ部の配置される位置を限定するもの(訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項3においても同様)であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許明細書等における明細書の段落【0011】における「また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。」との記載、段落【0030】における「配管50内を流れる流体には、次式(1)のように、圧縮機31の回転数N(rpm)に同期した周波数f(Hz)の脈動が発生する。」との記載、段落【0038】における「第1配管501は、圧縮機31が6000rpmにおける荷重低減を狙い、L1が200mmの位置に曲げ部51を設けている。第2配管502は、圧縮機31が8000rpmにおける荷重低減を狙い、L2が400mmの位置に曲げ部51を設けている。」との記載、段落【0039】における「図8に示すように、第1配管501では6000rpm、第2配管502では8000rpmにおいて作用荷重が低減する。したがって脈動分布が小さい位置に曲げ部51を設けることによって、振動を低減することができる。」との記載、段落【0046】における「図10に示すように、配管50の途中または前後の端に流路の断面積が縮小する縮小部80が設けられる。」との記載及び段落【0047】における「これによって前述の第2実施形態と同様に、縮小部80を適宜設けることによって、脈動の節の位置を調節することができる。これによって曲げたい位置の脈動を小さくし、配管50の振動を抑制することができる。」との記載並びに図1?8及び10の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ここで、配管(50)の内部を流れる流体の特性を限定したことについて、段落【0030】の記載を、縮小部(80)の接続関係及び流路断面積を限定したことについて、段落【0011】及び【0046】並びに図1、2及び10の記載を、さらに、曲げ部の配置される位置を限定したことについて、段落【0011】、【0038】、【0039】及び【0047】並びに図3?8及び10の記載を参照。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0007】の記載を、訂正事項1により訂正された請求項1の記載と整合させたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、上記(ア)のとおり、発明の詳細な説明の記載について訂正事項1により訂正された請求項1の記載と整合させたものであり、上記ア(イ)と同様に、特許明細書等における明細書の段落【0030】、【0035】、【0038】及び【0039】の記載並びに図1?8の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記(ア)のとおり、発明の詳細な説明の記載について明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を、訂正事項2により訂正された請求項2の記載と整合させ、請求項1に係る発明の効果の記載と整合させて請求項2に係る発明の効果について記載したものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上記(ア)のとおり、発明の詳細な説明の記載について訂正事項2により訂正された請求項2の記載と整合させたものであり、上記イ(イ)と同様に、特許明細書等における明細書の段落【0011】、【0030】、【0038】、【0039】、【0046】及び【0047】の記載並びに図1?8及び10の記載に基づくものであると共に、効果について段落【0008】及び【0046】の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記(ア)のとおり、発明の詳細な説明の記載について明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり本件訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
訂正特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)と、
前記拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。
【請求項2】
振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)と、
前記縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。
【請求項3】
前記配管は、冷凍サイクル(35)を構成し、内部を流れる流体が冷媒であり、
前記振動源は、前記冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)であることを特徴とする請求項1または2に記載の配管。
【請求項4】
前記配管は、冷凍サイクル(35)を構成し、内部を流れる流体が冷媒であり、
前記振動源は、前記冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)であり、
前記配管は、前記圧縮機と、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮する凝縮器(32)とを接続し、
前記拡大部は、前記凝縮器であることを特徴とする請求項1に記載の配管。」

第4 取消理由通知について
1 取消理由の内容
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して、当審が令和元年8月2日付けで特許権者に通知した取消理由の内容は、次のとおりである。なお、取消理由は、申立人が主張する全ての申立理由を含み、その証拠方法も全て採用したものである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(明確性)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)取消理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。



●取消理由1(サポート要件)について
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明は、「前記曲げ部は、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」という特定事項を備えるところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の半波長が変化し(本件特許の明細書の段落【0032】の式(2)及び甲第1号証の151頁の音波の基本式)、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、発明の詳細な説明には、通常変化しうる圧縮機の回転数のうちの特定の回転数(6000rpm又は8000rpm)、すなわち、振動源の特定の周波数における特定の振動源の脈動の半波長の整数倍だけ拡大部から離れた特定の位置(図6のL1:200mm又は図7のL2:400mm)のみに曲げ部を配置して、配管の振動を低減ないし抑制する例が示されている(段落【0036】?【0040】、図6?8)のみである。
そして、振動源の周波数の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
そうすると、請求項1に係る発明は、振動源の周波数の変化がある場合には、「簡単な構成で曲げ部の振動を抑制することができる配管を提供する」という本件発明の課題を解決することはできず、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
以上については、配管を流れる流体の温度についても、温度が変化すると、音速が変わり(甲第1号証の152頁の「音の速さ」の「音速と圧力」の説明)、振動源の脈動の半波長が変化するから、同様である。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。

イ 請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、「前記曲げ部は、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される」という特定事項を備えるところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の1/4波長が変化し(本件特許の明細書の段落【0032】の式(2)及び甲第1号証の151頁の音波の基本式)、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、振動源の周波数の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
そうすると、請求項2に係る発明は、振動源の周波数の変化がある場合には、「簡単な構成で曲げ部の振動を抑制することができる配管を提供する」という本件発明の課題を解決することはできず、請求項2に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
以上については、配管を流れる流体の温度についても、温度が変化すると、音速が変わり、振動源の脈動の1/4波長が変化するから、同様である。
よって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。

ウ 請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明又は請求項2に係る発明の発明特定事項を置き換えることなく全て含むから、請求項1に係る発明又は請求項2に係る発明についてと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。

エ 請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を置き換えることなく全て含むから、請求項1に係る発明についてと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。

●取消理由2(明確性)について
ア 請求項1について
請求項1には、「前記曲げ部は、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」と記載されているところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の半波長が変化し、曲げ部が配置される位置が異なることとなり、曲げ部の位置を特定することができない。
なお、発明の詳細な説明においては、通常変化しうる圧縮機の回転数のうちの特定の回転数(6000rpm又は8000rpm)、すなわち、振動源の特定の周波数における特定の振動源の脈動の半波長の整数倍だけ拡大部から離れた特定の位置(図6のL1:200mm又は図7のL2:400mm)のみに曲げ部を配置することが記載されている。
また、配管を流れる流体の温度が変化する場合も、音速が変わり、振動源の脈動の半波長が変化するから、同様に曲げ部の位置を特定することができない。
よって、請求項1に係る発明は明確ではない。

イ 請求項2について
請求項2には、「前記曲げ部は、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される」と記載されているところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の1/4波長が変化し、曲げ部が配置される位置が異なることとなり、曲げ部の位置を特定することができない。
また、配管を流れる流体の温度が変化する場合も、音速が変わり、振動源の脈動の1/4波長が変化するから、同様に曲げ部の位置を特定することができない。
よって、請求項2に係る発明は明確ではない。

ウ 請求項3について
請求項3は、請求項1又は2を引用して記載したものであるから、請求項1又は2についてと同様の理由により、請求項3に係る発明は明確ではない。

エ 請求項4について
請求項4は、請求項1を引用して記載したものであるから、請求項1についてと同様の理由により、請求項4に係る発明は明確ではない。

●取消理由3(実施可能要件)について
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明は、「前記曲げ部は、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」という特定事項を備えるところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の半波長が変化し、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、発明の詳細な説明には、通常変化しうる圧縮機の回転数のうちの特定の回転数(6000rpm又は8000rpm)、すなわち、振動源の特定の周波数における特定の振動源の脈動の半波長の整数倍だけ拡大部から離れた特定の位置(図6のL1:200mm又は図7のL2:400mm)のみに曲げ部を配置して、配管の振動を低減ないし抑制する例が示されている(段落【0036】?【0040】、図6?8)のみであり、振動源の周波数の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
また、請求項1に係る発明には、配管を流れる流体の温度の変化に応じて、振動源の脈動の半波長が変化し、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、配管を流れる流体の温度の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

イ 請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、「前記曲げ部は、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを」という特定事項を備えるところ、振動源を特定しておらず、周波数が変化する振動源に接続する場合も含むものであるから、振動源の周波数の変化に応じて、振動源の脈動の1/4波長が変化し、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、振動源の周波数の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
また、請求項2に係る発明には、配管を流れる流体の温度の変化に応じて、振動源の脈動の1/4波長が変化し、曲げ部の配置が変化する態様も含まれる。
しかしながら、配管を流れる流体の温度の変化に応じて、曲げ部の配置を変化させることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もなく、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項2に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

ウ 請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明又は請求項2に係る発明の発明特定事項を置き換えることなく全て含むから、請求項1に係る発明又は請求項2に係る発明についてと同様の理由により、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

エ 請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を置き換えることなく全て含むから、請求項1に係る発明についてと同様の理由により、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

2 取消理由で採用した証拠方法
甲第1号証:力武常次,外1名,「新物理」,初版,数研出版株式会社,1989年2月1日,p.150-153(以下「甲1」という。)

3 当審の判断
(1)訂正明細書及び図面の記載
本件特許の訂正明細書及び図面には、本件発明1?4に関して以下の記載がある。なお、「・・・」は以下記載の省略を示す。
ア 「【0029】
次に、冷凍サイクル35を構成する配管50に関して説明する。配管50の内部は、冷媒が流れる。配管50には、前述のように圧縮機31、凝縮器32、膨張弁34、蒸発器23、アキュムレータ33が接続されている。冷凍サイクル35を車両に搭載する際には、設置スペースを考慮して、配管50には曲げ部51が設けられる。換言すると、配管50をエンジンルームへの搭載するとき、エアコン以外の製品を回避しながら圧縮機31などを接続するため配管50には少なくとも1つの曲げ部51が必要になる。そして圧縮機31は振動源であって、圧縮機31が吐出された冷媒は脈動している。
【0030】
配管50内を流れる流体には、次式(1)のように、圧縮機31の回転数N(rpm)に同期した周波数f(Hz)の脈動が発生する。
f=N/60 …(1)
【0031】
そして図2に示すように、脈動が配管50の曲げ部51の壁面に当たると配管50に荷重が作用し、配管50が振動する。
【0032】
脈動の波長λ(m)は、周波数f(Hz)、脈動の音速c(m/sec)によって次式
(2)で表される。
λ=c/f …(2)
【0033】
ここで音速cと、冷媒温度Tと冷媒圧力Pとの関係は、式(3)および式(4)にって
表される。
【数1】

【0034】
Κ:冷媒の比熱比、R:冷媒の気体定数、M:冷媒の平均分子量、ρ:冷媒の密度である。したがって音速cは、冷媒の特性によって算出できるので波長λも求めることができる。
【0035】
凝縮器32は、配管50よりも流路断面積が大きく、配管50から流れる冷媒が凝縮器32にて拡散する。したがって凝縮器32は、冷媒が流れる流路の断面積が拡大する拡大部となる。図3に示すように、配管50の途中または前後の端に凝縮器32のように流路の断面積が拡大すると、配管50の後端では脈動が最小になる。これは断面積の拡大率が大きい場合は配管50の後端が開放端に類似し、この開放端では、圧力が0になり、節になるからである。このように断面積が拡大する拡大位置から半波長(λ/2)の整数倍だけ離れた位置、すなわち脈動の節の位置において脈動が小さくなる。したがって脈動の節の位置に曲げ部51を設ければ、曲げ部51における作用荷重は理論上発生しない。
【0036】
次に、本実施形態の実験結果に関して説明する。図4に示すように、配管50の下流側に、断面積拡大部60を設け、圧縮機31と凝縮器32に相当した容積部間を繋ぐ配管50を用いて実験する。配管50には4つの計測位置として、第1計測位置P1?第4計測位置P4が図4に示されている。第1計測位置P1は、先端から100mmの位置であり、第2計測位置P2は200mm、第3計測位置P3は400mm、第4計測位置P4は600mmの位置である。各計測位置において、脈動分布が計測される。また配管50に作用する荷重は、図4にFにて示すように、第4計測位置P4と断面積拡大部60との間で測定する。
【0037】
図5では、圧縮機31の回転数が6000rpmと8000rpmの時の脈動分布の測定結果を示している。脈動は、6000rpmのときは第2計測位置(200mm)で最小になる。また8000rpmときは第3計測位置(400mm)で最小になる。したがって式(1)および式(2)で示したように、圧縮機31の回転数によって脈動分布が異なり、脈動の節の位置が異なることがわかる。
【0038】
図5の結果に基づいて、図6および図7に示すような位置に曲げ部51を設けた配管50を用いて実験する。第1配管501は、圧縮機31が6000rpmにおける荷重低減を狙い、L1が200mmの位置に曲げ部51を設けている。第2配管502は、圧縮機31が8000rpmにおける荷重低減を狙い、L2が400mmの位置に曲げ部51を設けている。
【0039】
図8に示すように、第1配管501では6000rpm、第2配管502では8000rpmにおいて作用荷重が低減する。したがって脈動分布が小さい位置に曲げ部51を設けることによって、振動を低減することができる。
【0040】
以上説明したように本実施形態の配管50には曲げ部51が設けられている。そして曲げ部51は、拡大部である凝縮器32から振動源である圧縮機31の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される。配管50から凝縮器32に流れ込む部分は、脈動が小さい領域、すなわち脈動の節となる。脈動の節から脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置も、脈動の節となる。このような脈動の節の部分に曲げ部51を設ければ、振動の小さい領域であるので、曲げ部51の壁面に衝突する脈動が小さくなり、曲げ部51における配管50の振動の発生を抑制することができる。したがって曲げ部51をどの位置に設けるかによって、配管50の振動を抑制することができる。このように適切な位置に曲げ部51を設けるという簡単な構成によって、曲げ部51における配管50の振動を抑制することができる。
【0041】
また本実施形態では、配管50は、冷凍サイクル35を構成し、内部を流れる流体が冷媒である。そして振動源は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機31である。圧縮機31から吐出される冷媒は、圧縮機31の回転数によって脈動分布が変化する。このような圧縮機31の回転数に基づいて、曲げ部51の位置を設定することによって、配管50に発生する振動を抑制することができる。
【0042】
さらに本実施形態では、曲げ部51は圧縮機31と凝縮器32とを連結する配管50に設けられる。圧縮機31からの脈動が最もつわたりやすい配管50の適切な位置に曲げ部51を設けるので、振動抑制効果を大きくすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図9を用いて説明する。本実施形態では、圧縮機31と凝縮器32との間に、拡張室70が設けられている点に特徴を有する。
【0044】
冷凍サイクル352の搭載上、圧縮機31と凝縮器32との間に設けたい曲げ部51の位置と半波長の整数倍との位置が異なる場合、圧縮機31と凝縮器32との間に図9に示すように拡張室70を設ける。マフラーなどの拡張室70は、断面積が拡大する拡大部として機能する。拡張室70の位置は、曲げ部51を設けたい位置から半波長の整数倍下流側に設けられる。これによって曲げたい位置の脈動を小さくし、配管50の振動を抑制することができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図10を用いて説明する。本実施形態では、圧縮機31と凝縮器32との間の配管50の一部が縮小している点に特徴を有する。
【0046】
図10に示すように、配管50の途中または前後の端に流路の断面積が縮小する縮小部80が設けられる。本実施形態では、凝縮器32との接続部分に縮小部80が設けられている。図10に示すように、流路の断面積が縮小すると、配管50の後端では脈動が最大になる。これは断面積の拡大率が0に近い場合は配管50の後端が閉端に類似し、この閉端では、圧力が最大になり、腹になるからである。このように断面積が縮小する縮小位置から1/4波長の奇数倍だけ離れた位置、すなわち脈動の節の位置において脈動が小さくなる。
【0047】
これによって前述の第2実施形態と同様に、縮小部80を適宜設けることによって、脈動の節の位置を調節することができる。これによって曲げたい位置の脈動を小さくし、配管50の振動を抑制することができる。」

イ 「



(2)甲1の記載
申立人が提出した甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載がある。
ア 「音波の基本式
音は波であるから,波一般の基本式が成り立つ.すなわち,音波の波長λ,周期T,振動数f,伝搬速度(進行速度)Vの間には,次の関係がある.・・・λ=VT, V=fλ (f=1/T)」(151ページ)

イ 「○2(当審注:○付き数字の表記を改めた)音波と速度 0℃およびt〔℃〕の空気中の音速と密度を,それぞれ・・・およびV,・・・とすると
・・・
V=・・・=331.5+0.6t〔m/s〕
○3音速と圧力 温度が一定ならば,圧力と密度とは比例し(ボイルの法則)・・・であるから,音速は圧力に関係ない.」(152ページ)

(3)取消理由1(サポート要件)について
ア 本件発明1について
本件発明1は、本件訂正後の請求項1に記載された「前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される」という発明特定事項(以下「特定事項A」という。)備えるものである。
特定事項Aによれば、配管に含まれる曲げ部の位置は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように設定されるのであるから、配管の内部を流れる流体に発生する脈動の周波数が変動したとしても、位置が不変であり、曲げ部の位置が変化する態様は含まれないものとなった。
ところで、上記(2)の甲1の記載によれば、配管の内部を流れる流体の温度の変化に応じて、音速が変化し、脈動の波長も変化することとなり、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0029】?【0034】において、冷媒等の流体の特性から音速cを算出すること(代表的な所定の温度に特定したものといえる。)により、脈動の波長(λ=c/f)を特定することが記載されているが、上記(2)イで示した甲1の記載によると、V(音速)=331.5+0.6t(温度℃)[m/s]であって、V(音速)に及ぼす温度(℃)の影響はわずか(10℃の変化で2%程度)であり、曲げ部を脈動が抑制されるように配置するのに支障がある程度に、曲げ部の位置が変化することはない。そして、曲げ部の位置を設定した後においても、配管の内部を流れる流体の温度が変化して脈動の波長が変化した場合には、当該曲げ部の位置で抑制される周波数が多少変化するのみであって、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数が抑制されることに変わりはない。
また、配管の性質上、一度設定した配管の曲げ部の位置は、特別な構造を採用しない限り変更されることはないから、配管の内部を流れる流体の温度が変化することをもって曲げ部の位置を変化させる必然性はない。
そうすると、特定事項Aにより、曲げ部の配置の位置が特定されるものであり、「簡単な構成で曲げ部の振動を抑制することができる配管を提供する」(段落【0005】)という本件発明の課題を解決することはできるものである。
そして、特定事項Aのように曲げ部の配置の位置を特定した実施形態は、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0029】?【0044】並びに図1?9に記載されている。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件訂正後の請求項2に記載された「前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される」という発明特定事項(以下「特定事項B」という。)を備えるものである。
特定事項Bによれば、配管に含まれる曲げ部の位置は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように設定されるのであるから、配管の内部を流れる流体に発生する脈動の周波数が変動したとしても、位置が不変であり、曲げ部の位置が変化する態様は含まれないものとなった。
ところで、上記(2)の甲1の記載によれば、配管の内部を流れる流体の温度の変化に応じて、音速が変化し、脈動の波長も変化することとなり、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0029】?【0034】において、冷媒等の流体の特性から音速cを算出すること(代表的な所定の温度に特定したものといえる。)により、脈動の波長(λ=c/f)を特定することが記載されているが、上記(2)イで示した甲1の記載によると、V(音速)=331.5+0.6t(温度℃)[m/s]であって、V(音速)に及ぼす温度(℃)の影響はわずか(10℃の変化で2%程度)であり、曲げ部を脈動が抑制されるように配置するのに支障がある程度に、曲げ部の位置が変化することはない。そして、曲げ部の位置を設定した後においても、配管の内部を流れる流体の温度が変化して脈動の波長が変化した場合には、当該曲げ部の位置で抑制される周波数が多少変化するのみであって、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数が抑制されることに変わりはない。
また、配管の性質上、一度設定した配管の曲げ部の位置は、特別な構造を採用しない限り変更されることはないから、配管の内部を流れる流体の温度が変化することをもって曲げ部の位置を変化させる必然性はない。
そうすると、特定事項Bにより、曲げ部の配置の位置が特定されるものであり、「簡単な構成で曲げ部の振動を抑制することができる配管を提供する」(段落【0005】)という本件発明の課題を解決することはできるものである。
そして、特定事項Bのように曲げ部の配置の位置を特定した実施形態は、特許明細書等における発明の詳細な説明の段落【0011】、【0029】?【0039】、【0046】及び【0047】並びに図1?8及び10に記載されている。
したがって、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2についての検討を踏まえると、発明の詳細な説明に記載されたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1についての検討を踏まえると、発明の詳細な説明に記載されたものである。

オ まとめ
以上のとおり、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の請求項1?4に係る特許は、取消理由1により取り消すことができない。

(4)取消理由2(明確性)について
ア 請求項1について
本件訂正後の請求項1は、特定事項Aが記載されたものとなった。
上記(3)アの検討を踏まえると、特定事項Aにより、曲げ部の配置の位置を特定することができるから、本件発明1は明確である。

イ 請求項2について
本件訂正後の請求項2は、特定事項Bが記載されたものとなった。
上記(3)イの検討を踏まえると、特定事項Bにより、曲げ部の配置の位置を特定することができるから、本件発明2は明確である。

ウ 請求項3について
請求項3について、請求項1又は2についての検討を踏まえると、本件発明3は明確である。

エ 請求項4について
請求項4について、請求項1についての検討を踏まえると、本件発明4は明確である。

オ まとめ
以上のとおり、請求項1?4について、本件発明1?4は明確であるから、本件特許の請求項1?4に係る特許は、取消理由2により取り消すことができない。

(5)取消理由3(実施可能要件)について
ア 本件発明1について
上記(3)アの検討を踏まえると、本件発明1は、特定事項Aを備えることにより、脈動の周波数の変化又は配管の内部を流れる流体の温度の変化に応じて、配管の曲げ部の配置の位置が変化する態様は含まれないものとなった。
そして、発明の詳細な説明には、通常変化しうる圧縮機の回転数のうちの1つの特定の回転数(6000rpm又は8000rpm)、すなわち、振動源の1つの特定の周波数における特定の振動源の脈動の半波長の整数倍だけ拡大部から離れた特定の位置(図6のL1:200mm又は図7のL2:400mm)のみに曲げ部を配置して、配管の振動を低減ないし抑制する例(段落【0036】?【0040】及び図6?8)が、特定事項Aに対応して示されている。
そうすると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

イ 本件発明2について
上記(3)イの検討を踏まえると、本件発明2は、特定事項Bを備えることにより、脈動の周波数の変化又は配管の内部を流れる流体の温度の変化に応じて、配管の曲げ部の配置の位置が変化する態様は含まれないものとなった。
そして、発明の詳細な説明には、通常変化しうる圧縮機の回転数のうちの1つの特定の回転数(6000rpm又は8000rpm)、すなわち、振動源の1つの特定の周波数における特定の振動源の脈動の半波長の整数倍だけ拡大部から離れた特定の位置(図6のL1:200mm又は図7のL2:400mm)のみに曲げ部を配置して、配管の振動を低減ないし抑制する例(段落【0036】?【0044】及び図6?9)と同様に、縮小部80を適宜設けた例(段落【0011】及び【0045】?【0047】並びに図10)が、特定事項Bに対応して示されている。
そうすると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

ウ 本件発明3について
本件発明1又は本件発明2についての検討を踏まえると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

エ 本件発明4について
本件発明1についての検討を踏まえると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

オ まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件特許の請求項1?4に係る特許は、取消理由3により取り消すことができない。

第5 むすび
上記第4のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動源から伝わる振動を抑制する配管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給排水用の配管、ガス管およびエア搬送で用いる配管など、内部に流体が流れる配管は、配管の内部を流体が流れるときに、流体の流れに伴って騒音が発生する場合がある。曲げ部がある配管において、騒音の原因の一つは、流体の脈動が曲げ部の壁面に衝突して配管が振動することにある。そこで特許文献1に記載の配管には、曲げ部に制振構造を設けて、振動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-214996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の配管では、制振構造を設けるので、部品点数が多くなり、曲げ部が大型化し、配管の重量が大きくなる。これによって搭載性が悪化するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で曲げ部の振動を抑制することができる配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明は、振動源(31)に接続され、振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、配管に接続され、配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)と、拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)を含み、曲げ部(51)は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、拡大部(32,70)から振動源(31)の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管である。
【0008】
このような本発明に従えば、配管には曲げ部が設けられている。そして曲げ部は、拡大部から振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される。配管から拡大部に流れ込む部分は、脈動が小さい領域、すなわち脈動の節となる。脈動の節から脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置も、脈動の節となる。このような脈動の節の部分に曲げ部を設ければ、振動の小さい領域であるので、曲げ部の壁面に衝突する脈動が小さくなり、曲げ部における配管の振動の発生を抑制することができる。したがって曲げ部をどの位置に設けるかによって、配管の振動を抑制することができる。このように適切な位置に曲げ部を設けるという簡単な構成によって、曲げ部における配管の振動を抑制することができる。
また別の本発明は、振動源(31)に接続され、振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、配管に接続され、配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)と、縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、曲げ部は、振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、縮小部から振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管である。
このような本発明に従えば、配管には曲げ部が設けられている。そして曲げ部は、縮小部から振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置される。流路の断面積が縮小すると、縮小する縮小位置では脈動の腹となる。脈動の腹から脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置は、脈動の節となる。このような脈動の節の部分に曲げ部を設ければ、振動の小さい領域であるので、曲げ部の壁面に衝突する脈動が小さくなり、曲げ部における配管の振動の発生を抑制することができる。したがって曲げ部をどの位置に設けるかによって、配管の振動を抑制することができる。このように適切な位置に曲げ部を設けるという簡単な構成によって、曲げ部における配管の振動を抑制することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用空調装置10を簡略化して示す図である。
【図2】曲げ部51を拡大して示す図である。
【図3】冷凍サイクル35の一部を簡略化して示す図である。
【図4】配管50の計測位置を示す図である。
【図5】計測位置と脈動分布の測定結果を示すグラフである。
【図6】第1配管501を示す平面図である。
【図7】第2配管502を示す平面図である。
【図8】第1配管501および第2配管502の配管作用荷重を示すグラフである。
【図9】第2実施形態の冷凍サイクル352の一部を簡略化して示す図である。
【図10】第3実施形態の冷凍サイクル353の一部を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1?図8を用いて説明する。車両用空調装置10は、走行用に水冷エンジン11を搭載する自動車などの車両において、車室内を空調する空調ユニットをエアコンECUによって制御するように構成されたいわゆるオートエアコンシステムである。車両用空調装置10における室内空調ユニットは、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されて、その外殻を形成する空調ケース21内に室内用ブロワ22、蒸発器23、ヒータコア24等を収容している。
【0013】
空調ケース21は、車室内に送風される送風空気の空気通路を内部に形成しており、たとえばポリプロピレン等の樹脂にて成形されている。空調ケース21内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切り替え導入する内外気切替箱25が配置されている。
【0014】
内外気切替箱25には、空調ケース21内に内気を導入させる内気導入口26および外気を導入させる外気導入口27が形成されている。さらに、内外気切替箱25の内部には、内気導入口26および外気導入口27の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア28が配置されている。
【0015】
内外気切替ドア28は、空調ケース21内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。内外気切替ドア28は、内外気切替ドア28用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、エアコンECUから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0016】
内外気切替箱25の空気流れ下流側には、内外気切替箱25を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する室内用ブロワ22が配置されている。この室内用ブロワ22は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であり、エアコンECUから出力される制御電圧によって回転数が制御される。
【0017】
室内用ブロワ22の空気流れ下流側には、蒸発器23が配置されている。蒸発器23は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器23は、圧縮機31、凝縮器32、アキュムレータ33、膨張弁34等とともに、冷凍サイクル35を構成している。
【0018】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル35において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機31は、車両のエンジンルーム内に搭載されたエンジン11の出力軸によるベルト駆動されて、冷媒を吸入して、圧縮して吐出する。
【0019】
凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外ファンから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。室外ファンは、エアコンECUから出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0020】
アキュムレータ33は、凝縮液化された冷媒を気液分離して余剰液冷媒を蓄えるとともに、液冷媒のみを下流に流す。膨張弁34は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器23は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる。
【0021】
冷房サイクル運転時の冷媒の流れについて説明する。冷房サイクルは、圧縮機31、凝縮器32、膨張弁34、蒸発器23、アキュムレータ33の順に流れて、再び、圧縮機31に戻る。このように冷媒が流れる配管によって、冷凍サイクル35の構成要素が環状に接続することによって形成されている。圧縮機31は、冷媒を吸入して吐出する。凝縮器32は、圧縮機31から吐出された冷媒が流入し、流入する冷媒が空気と熱交換して放熱する。凝縮器32を流出した冷媒は、膨張弁34によって減圧されて冷却される。蒸発器23には、膨張弁34で減圧された冷媒が流入し、蒸発して送風空気を冷却する。その後、蒸発器23を通過した冷媒をアキュムレータ33に流入させ、アキュムレータ33で蒸発器23の出口冷媒の気液を分離し、アキュムレータ33内のガス冷媒を圧縮機31に吸入させる。
【0022】
空調ケース21内において、蒸発器23の空気流れ下流側には、蒸発器23を通過した後の空気を流す温風通路41および冷風通路42といった空気通路、並びに、温風通路41および冷風通路42から流出した空気を混合させる混合空間43が形成されている。
【0023】
温風通路41には、蒸発器23を通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア24が、送風空気流れ方向に向かって配置されている。ヒータコア24は、車両走行用駆動力を出力するエンジン11の冷却水と蒸発器23を通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器23を通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア24とエンジン11との間に冷却水の流路が設けられて、ヒータコア24とエンジン11との間を冷却水が循環する冷却水回路44が構成されている。そして、この冷却水回路44には、冷却水を循環させるためのウォータポンプ(図示せず)が設置されている。ウォータポンプは、エアコンECUから出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0024】
冷風通路42は、蒸発器23を通過後の空気を、ヒータコア24を通過させることなく、混合空間43に導くための空気通路である。したがって、混合空間43にて混合された送風空気の温度は、温風通路41を通過する空気および冷風通路42を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0025】
本実施形態では、蒸発器23の空気流れ下流側であって、温風通路41及び冷風通路42の入口側には、温風通路41及び冷風通路42へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア45を配置している。したがって、エアミックスドア45は、混合空間43内の空気温度を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア45は、エアミックスドア45用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、エアコンECUから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0026】
さらに、空調ケース21の送風空気流れ最下流部には、混合空間43から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口が配置されている。この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。また各吹出口の空気流れ上流側には、各吹出口の開口面積を調整するドアが配置されている。
【0027】
エアコンECUは、制御手段であって、走行用エンジン11の始動および停止を司るイグニッションスイッチが入れられた時に、車両に搭載された車載電源であるバッテリー(図示せず)から直流電源が供給される。そしてエアコンECUは、電力が供給されると演算処理や制御処理を開始するように構成されている。エアコンECUには、他のECUから出力される通信信号、車室内前面に設けられたコントロールパネル上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。
【0028】
エアコンECUの内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAMなどのメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。各種センサからのセンサ信号がI/OポートまたはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力される。エアコンECUには、運転席の周囲の空気温度(内気温)Trを検出する内気温検出手段としての内気温センサ、および車室外温度(外気温)を検出する外気温検出手段としての外気温センサが接続されている。またエアコンECUには、エバポレータを通過した直後の空気温度(エバ後温度TE)を検出するエバ後温度検出手段としてのエバ後温度センサ、車室内に差し込む日射量を検出する日射センサが接続されている。さらにエアコンECUには、エアミックスドア45の実際の位置を検出するポテンションメータ、およびエンジン冷却水温度を検出する冷却水温センサが接続されている。
【0029】
次に、冷凍サイクル35を構成する配管50に関して説明する。配管50の内部は、冷媒が流れる。配管50には、前述のように圧縮機31、凝縮器32、膨張弁34、蒸発器23、アキュムレータ33が接続されている。冷凍サイクル35を車両に搭載する際には、設置スペースを考慮して、配管50には曲げ部51が設けられる。換言すると、配管50をエンジンルームへの搭載するとき、エアコン以外の製品を回避しながら圧縮機31などを接続するため配管50には少なくとも1つの曲げ部51が必要になる。そして圧縮機31は振動源であって、圧縮機31が吐出された冷媒は脈動している。
【0030】
配管50内を流れる流体には、次式(1)のように、圧縮機31の回転数N(rpm)に同期した周波数f(Hz)の脈動が発生する。
f=N/60 …(1)
【0031】
そして図2に示すように、脈動が配管50の曲げ部51の壁面に当たると配管50に荷重が作用し、配管50が振動する。
【0032】
脈動の波長λ(m)は、周波数f(Hz)、脈動の音速c(m/sec)によって次式(2)で表される。
λ=c/f …(2)
【0033】
ここで音速cと、冷媒温度Tと冷媒圧力Pとの関係は、式(3)および式(4)にって表される。
【数1】

【0034】
Κ:冷媒の比熱比、R:冷媒の気体定数、M:冷媒の平均分子量、ρ:冷媒の密度である。したがって音速cは、冷媒の特性によって算出できるので波長λも求めることができる。
【0035】
凝縮器32は、配管50よりも流路断面積が大きく、配管50から流れる冷媒が凝縮器32にて拡散する。したがって凝縮器32は、冷媒が流れる流路の断面積が拡大する拡大部となる。図3に示すように、配管50の途中または前後の端に凝縮器32のように流路の断面積が拡大すると、配管50の後端では脈動が最小になる。これは断面積の拡大率が大きい場合は配管50の後端が開放端に類似し、この開放端では、圧力が0になり、節になるからである。このように断面積が拡大する拡大位置から半波長(λ/2)の整数倍だけ離れた位置、すなわち脈動の節の位置において脈動が小さくなる。したがって脈動の節の位置に曲げ部51を設ければ、曲げ部51における作用荷重は理論上発生しない。
【0036】
次に、本実施形態の実験結果に関して説明する。図4に示すように、配管50の下流側に、断面積拡大部60を設け、圧縮機31と凝縮器32に相当した容積部間を繋ぐ配管50を用いて実験する。配管50には4つの計測位置として、第1計測位置P1?第4計測位置P4が図4に示されている。第1計測位置P1は、先端から100mmの位置であり、第2計測位置P2は200mm、第3計測位置P3は400mm、第4計測位置P4は600mmの位置である。各計測位置において、脈動分布が計測される。また配管50に作用する荷重は、図4にFにて示すように、第4計測位置P4と断面積拡大部60との間で測定する。
【0037】
図5では、圧縮機31の回転数が6000rpmと8000rpmの時の脈動分布の測定結果を示している。脈動は、6000rpmのときは第2計測位置(200mm)で最小になる。また8000rpmときは第3計測位置(400mm)で最小になる。したがって式(1)および式(2)で示したように、圧縮機31の回転数によって脈動分布が異なり、脈動の節の位置が異なることがわかる。
【0038】
図5の結果に基づいて、図6および図7に示すような位置に曲げ部51を設けた配管50を用いて実験する。第1配管501は、圧縮機31が6000rpmにおける荷重低減を狙い、L1が200mmの位置に曲げ部51を設けている。第2配管502は、圧縮機31が8000rpmにおける荷重低減を狙い、L2が400mmの位置に曲げ部51を設けている。
【0039】
図8に示すように、第1配管501では6000rpm、第2配管502では8000rpmにおいて作用荷重が低減する。したがって脈動分布が小さい位置に曲げ部51を設けることによって、振動を低減することができる。
【0040】
以上説明したように本実施形態の配管50には曲げ部51が設けられている。そして曲げ部51は、拡大部である凝縮器32から振動源である圧縮機31の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置される。配管50から凝縮器32に流れ込む部分は、脈動が小さい領域、すなわち脈動の節となる。脈動の節から脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置も、脈動の節となる。このような脈動の節の部分に曲げ部51を設ければ、振動の小さい領域であるので、曲げ部51の壁面に衝突する脈動が小さくなり、曲げ部51における配管50の振動の発生を抑制することができる。したがって曲げ部51をどの位置に設けるかによって、配管50の振動を抑制することができる。このように適切な位置に曲げ部51を設けるという簡単な構成によって、曲げ部51における配管50の振動を抑制することができる。
【0041】
また本実施形態では、配管50は、冷凍サイクル35を構成し、内部を流れる流体が冷媒である。そして振動源は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機31である。圧縮機31から吐出される冷媒は、圧縮機31の回転数によって脈動分布が変化する。このような圧縮機31の回転数に基づいて、曲げ部51の位置を設定することによって、配管50に発生する振動を抑制することができる。
【0042】
さらに本実施形態では、曲げ部51は圧縮機31と凝縮器32とを連結する配管50に設けられる。圧縮機31からの脈動が最もつわたりやすい配管50の適切な位置に曲げ部51を設けるので、振動抑制効果を大きくすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図9を用いて説明する。本実施形態では、圧縮機31と凝縮器32との間に、拡張室70が設けられている点に特徴を有する。
【0044】
冷凍サイクル352の搭載上、圧縮機31と凝縮器32との間に設けたい曲げ部51の位置と半波長の整数倍との位置が異なる場合、圧縮機31と凝縮器32との間に図9に示すように拡張室70を設ける。マフラーなどの拡張室70は、断面積が拡大する拡大部として機能する。拡張室70の位置は、曲げ部51を設けたい位置から半波長の整数倍下流側に設けられる。これによって曲げたい位置の脈動を小さくし、配管50の振動を抑制することができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図10を用いて説明する。本実施形態では、圧縮機31と凝縮器32との間の配管50の一部が縮小している点に特徴を有する。
【0046】
図10に示すように、配管50の途中または前後の端に流路の断面積が縮小する縮小部80が設けられる。本実施形態では、凝縮器32との接続部分に縮小部80が設けられている。図10に示すように、流路の断面積が縮小すると、配管50の後端では脈動が最大になる。これは断面積の拡大率が0に近い場合は配管50の後端が閉端に類似し、この閉端では、圧力が最大になり、腹になるからである。このように断面積が縮小する縮小位置から1/4波長の奇数倍だけ離れた位置、すなわち脈動の節の位置において脈動が小さくなる。
【0047】
これによって前述の第2実施形態と同様に、縮小部80を適宜設けることによって、脈動の節の位置を調節することができる。これによって曲げたい位置の脈動を小さくし、配管50の振動を抑制することができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0049】
上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0050】
前述の第1実施形態では、曲げ部51は1カ所だけであったが、1カ所に限るものではなく、複数箇所であってもよい。また複数の曲げ部51を設ける場合、全ての曲げ部51を脈動の節の位置に設けることが好ましい。しかし設置条件の制約の関係上、全ての曲げ部51を節の位置に設置できない場合であっても、少なくとも1つの曲げ部51が節の位置に配置されていればよい。また曲げ部51を設ける位置は、圧縮機31と凝縮器32との間の配管50に限るものではなく、冷凍サイクル353を構成する配管50のどの位置に設けてもよい。
【0051】
前述の第1実施形態では、振動源は圧縮機31であったが、振動源は圧縮機31に限るものではない。たとえば振動源がエンジン11の場合には、エンジン11の冷却水回路44の配管にエンジン11からの振動を抑制するように曲げ部51を設けてもよい。また配管50は、循環する配管に限るものではない。
【符号の説明】
【0052】
10…車両用空調装置 31…圧縮機(振動源)
32…凝縮器(拡大部) 35…冷凍サイクル
50…配管 51…曲げ部
60…断面積拡大部 70…拡張室(拡大部)
80…縮小部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が拡大する拡大部(32,70)と、
前記拡大部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記拡大部から前記振動源の脈動の半波長の整数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。
【請求項2】
振動源(31)に接続され、前記振動源に同期した周波数の脈動が発生する流体が内部を流れる配管(50)であって、
前記配管に接続され、前記配管よりも流路断面積が縮小する縮小部(80)と、
前記縮小部の上流側に位置する少なくとも1つの曲げ部(51)と、を含み、
前記曲げ部は、前記振動源に同期した周波数の範囲の内の1つの周波数の脈動が抑制されるように、前記縮小部から前記振動源の脈動の1/4波長の奇数倍だけ離れた位置に配置されることを特徴とする配管。
【請求項3】
前記配管は、冷凍サイクル(35)を構成し、内部を流れる流体が冷媒であり、
前記振動源は、前記冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)であることを特徴とする請求項1または2に記載の配管。
【請求項4】
前記配管は、冷凍サイクル(35)を構成し、内部を流れる流体が冷媒であり、
前記振動源は、前記冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)であり、
前記配管は、前記圧縮機と、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮する凝縮器(32)とを接続し、
前記拡大部は、前記凝縮器であることを特徴とする請求項1に記載の配管。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-29 
出願番号 特願2014-150101(P2014-150101)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F16L)
P 1 651・ 536- YAA (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大谷 光司  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 塚本 英隆
槙原 進
登録日 2018-11-22 
登録番号 特許第6435684号(P6435684)
権利者 株式会社SOKEN 株式会社デンソー
発明の名称 配管  
代理人 野々部 泰平  
代理人 久保 貴則  
代理人 野々部 泰平  
代理人 久保 貴則  
代理人 野々部 泰平  
代理人 矢作 和行  
代理人 矢作 和行  
代理人 久保 貴則  
代理人 矢作 和行  

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