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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  C09D
管理番号 1357668
異議申立番号 異議2019-700199  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-12 
確定日 2019-11-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6388249号発明「インクセット及びそれを用いた記録方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6388249号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 特許第6388249号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6388249号の請求項1?18に係る特許についての出願は、平成26年5月28日(優先権主張 平成25年8月21日、平成25年9月3日、日本国)の出願であって、平成30年8月24日にその特許権の設定登録がされ、同年9月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年3月12日に特許異議申立人藤江桂子(以下、「申立人」という。)は特許異議の申立てを行い、当審は、令和元年5月16日付けで取消理由を通知した。この取消理由通知に対して、特許権者は、同年7月19日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その訂正の請求に対して、申立人は同年8月23日に意見書を提出した。
なお、本件特許に係る出願の特許請求の範囲及び明細書について、平成30年1月9日付け及び同年6月26日付けで手続補正がなされている。

第2 訂正の可否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求の請求の趣旨は、特許第6388249号の特許請求の範囲の記載を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるというものであって、本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1?3のとおりである。なお、訂正前の請求項1?18は、請求項2?18が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1?18について請求されている。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を加熱する工程と、」とあるのを、「前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程と、」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項17に、「前記加熱する工程における前記被記録媒体の表面温度が45℃以下である、」とあるのを、「前記加熱する工程における前記被記録媒体の表面温度が45℃以下であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?16000:1である、」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であり、」とあるのを、「前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であり、」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、明細書の【0132】の【表4】の実施例14の「記録中の被記録媒体表面温度(ヒートアシスト)」の欄の「45℃」という記載に基づいて、請求項1の加熱する工程における被記録媒体の表面温度の上限を「45℃」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、明細書の【0106】の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体の、第1インクと第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、反応液に含まれる凝集剤のモル数(単位:mol)と、第1インク及び第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eは、800:1?31000:1が好ましく、800:1?16000:1がより好ましく」という記載に基づき、該比Eを800:1?16000:1に限定するものであり、かかる限定は、比Eについて明記のなかった訂正前の請求項1に係る記録方法を、所定の比Eを満たすものへ減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、明細書の【0106】の上記記載に基いて、該比Eを800:1?31000:1に限定するものであり、かかる限定は、比Eについて明記のなかった訂正前の請求項1に係る記録方法を、所定の比Eを満たすものへ減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)小括
上記のとおり、訂正事項1?3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?18〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?18に係る発明(以下「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用い、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体に、前記反応液を付与する反応液付与工程と、
前記反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程と、
前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程と、を有し、
前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であり、
前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであり、
前記第1インク及び前記第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクである、
記録方法。
【請求項2】
前記凝集剤が、多価金属塩及び有機酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記反応液に含まれる前記多価金属塩のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる前記色材の総質量(単位:g)との比(色材:多価金属塩)が、1000:1?31000:1である、
請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記反応液に含まれる前記有機酸のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクの色材に含まれる総質量(単位:g)との比(色材:有機酸)が、800:1?5500:1である、
請求項2又は3に記載の記録方法。
【請求項5】
前記第1インクが白色色材を含む白インクまたはメタリック色材を含むメタリックインクであり、
前記第2インクがカラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクである、
請求項1?4のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項6】
前記反応液の表面張力が、25℃において、55mN/N以下である、
請求項1?5のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項7】
前記反応液が、反応液の次に付与されるインクの受容層となる成分、並びに、カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
請求項1?6のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項8】
前記反応液に含まれる、前記受容層となる成分、並びに、前記カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種(単位:g)と、前記第1インクに含まれる色材(単位:g)との質量比(色材:群より選ばれる少なくとも1種)が、7:1?70:1である、
請求項7に記載の記録方法。
【請求項9】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる多価金属塩のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比(色材:多価金属塩)が、1000:1?31000:1である、
請求項1?8のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項10】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる有機酸のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比(色材:有機酸)が、800:1?5500:1である、
請求項1?9のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項11】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる、前記第1インク及び前記第2インクの受容層となる成分、並びに、カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の質量(単位:g)と、前記第1インクに含まれる色材の質量(単位:g)との比(色材:群より選ばれる少なくとも1種)が、7:1?70:1である、
請求項1?10のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項12】
前記第1工程と前記第2工程における、前記被記録媒体の表面温度が40℃以下である、
請求項1?11のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項13】
前記反応液付与工程後で前記第1工程前に、前記被記録媒体を加熱する工程を備える、
請求項1?12のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項14】
前記反応液付与工程における前記被記録媒体の表面温度が40℃以下である、
請求項1?13のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項15】
前記揮発量が、10?80%である、
請求項1?14のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項16】
前記揮発量が、10?60%である、
請求項1?15のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項17】
前記加熱する工程における前記被記録媒体の表面温度が45℃以下であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?16000:1である、
請求項1?16のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項18】
前記非吸収性被記録媒体が、インク吸収層を有していないプラスチックフィルムであり、
前記低吸収性被記録媒体が、塗工紙である、
請求項1?17のいずれか1項に記載の記録方法。」

第4 取消理由の概要
1 本件訂正前の請求項1?18に係る特許に対して、当審が令和元年5月16日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
(1)理由1(進歩性)本件の請求項1?18に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(刊行物)
引用例1:特開2006-341407号公報(甲第2号証。以下、甲各号証は、単に、甲2などという。)
引用例2:特開2010-158884号公報(甲1)
引用例3:特開2011-195687号公報(甲3)
引用例4:特開2009-96175号公報(甲4)
引用例5:特開2010-23339号公報(甲5)
(2)理由2(明確性要件)本件は、特許請求の範囲の請求項1?18の記載が下記Aの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)理由3(実施可能要件)本件は、発明の詳細な説明の記載について下記Aの点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?18に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)理由4(サポート要件)本件は、特許請求の範囲の請求項1?18の記載が下記Bの点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 理由2、3の上記A、理由4の上記Bについて
A 理由2(明確性要件)、理由3(実施可能要件)について
請求項1には、「反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量」について規定されているが、「揮発成分の揮発量」は、本件明細書の【0122】に、「揮発成分の揮発量の測定の際には、測定用に用意した被記録媒体を用いることが簡便である。測定は、電子天秤により測定した。」と記載されているものの、具体的にどのように求められるのか不明であって、測定条件によって、その値が変化するものといえることから、「反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量」についての規定は、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、明確とはいえない(たとえば、本件明細書の図1に示されたような、ラインプリンターを用いた場合、反応液、第1インク、第2インクを、それぞれ付与する際の被記録媒体の揮発成分の揮発量を特定するためには、プリンター内部から被記録媒体を取り出し、また、プリンター内部に戻すことが必要となり、しかも、揮発成分は、時々刻々と揮発するものであるから、プリンター内部から取り出し、揮発量を測定してプリンター内部に戻す際に、費やされる時間によって、第2インクが付与される第2工程における被記録媒体の揮発成分の揮発量が正確に求められないものとなることは明らかである。すなわち、どのような手順で、どのような時間をかけて測定するかによって、その値は異なるものとなる。)。
したがって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?18は、明確ではなく、請求項1?18の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。
また、「反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量」について、具体的に、どのように測定するかが明らかではないことから、本件発明1?18について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない。
B 理由4(サポート要件)について
本件発明の課題は、「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体上に複数のインクを重ねて記録した場合に、それらのインク間でのブリードが防止でき、かつ目詰りしにくいインクセットを提供すること」(【0006】)と解せられる。
これに対し、本件明細書には、「反応液を用いずに被記録媒体を加熱すると、高い加熱のエネルギーが必要であり、目詰りが生じるという問題がある。」(【0005】)と記載されているところ、被記録媒体を高温に加熱すれば、反応液にかかわらずノズルが高温となり、インクによってはノズルの目詰りが生じることは明らかである。
そして、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?18は、被記録媒体を加熱する工程を有しているところ、本件明細書の実施例には、「第1工程の後であって、第2工程前に被記録媒体を加熱する工程」を有する態様が示されておらず、上記加熱する工程を有する場合に、本件発明の課題が解決できるのか明らかではないので、「目詰りしにくいインクセットを提供する」という本件発明の課題を解決しない発明を包含するといわざるを得ない。

第5 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断
1 理由1について
(1)引用例の記載(下線は当審が付与した。)
ア 引用例1(甲2)
引用例1には、「インクジェット記録方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
多価金属イオンを含んでなる反応液と、金属コロイドを含んでなる液体組成物とを被記録媒体に付与し、これらを被記録媒体上で混合させて実質的に白色の画像を形成する過程を少なくとも有するインクジェット記録方法であって、上記金属コロイドが、光触媒作用を抑制させるための表面処理が施された表面処理酸化チタンであることを特徴とするインクジェット記録方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み行われたものであって、本発明の目的は、インクジェット記録方法を用いて白色画像を形成する際における、前記したインクの吐出安定性等の達成や、高い隠蔽性を有する白色画像の形成の実現等の画像形成における信頼性の問題は勿論、更には、該方法によって形成された白色画像に生じることのある経時的な変色の問題や、白色画像上に形成した着色インクによる記録画像の退色の問題のない良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、多価金属イオンを含んでなる反応液と、金属コロイドを含んでなる液体組成物とを被記録媒体に付与し、これらを被記録媒体上で混合させて実質的に白色の画像を形成する過程を少なくとも有するインクジェット記録方法であって、上記金属コロイドが、光触媒作用を抑制させるための表面処理が施された表面処理酸化チタンであることを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0008】
上記本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。上記表面処理酸化チタンが、亜鉛、セリウム、アルミニウム、ケイ素、コバルト、マンガン、チタニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、タングステン及び鉄から選ばれた金属の酸化物又は含水酸化物で被覆されてなるものであるインクジェット記録方法。上記表面処理酸化チタンの平均粒子径が、5nm以上50nm以下であるインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるインクジェット記録方法によれば、吐出安定性等の信頼性に優れる表面処理酸化チタンを含んだ液体組成物と、多価金属イオンを含んだ反応液とを併用し、これらを被記録媒体上で混合することで、高い隠蔽性を有する高品位な白色画像が形成され、しかも、形成された白色画像は、光による変色を受けることがなく、且つ、該白色画像上に形成された着色インクによる記録画像の退色問題が発生することが抑制されたインクジェット記録方法が提供される。」
「【0022】
[多価金属イオンを含む反応液]
本発明において使用する反応液は、少なくとも多価金属イオンを含んでなるものであればよい。多価金属塩としては、2価以上の多価金属イオンと、これら多価金属イオンと結合する陰イオンとから構成され、水に可溶であれば使用することができる。多価金属イオンの具体例としては、例えば、Ca^(2+)、Cu^(2+)、Ni^(2+)、Mg^(2+)、Zn^(2+)及びBa^(2+)等の2価金属イオン、Al^(3+)、Fe^(3+)、Cr^(3+)等の3価金属イオン等が挙げられる。陰イオンの具体例としては、例えば、Cl^(-)、NO^(3-)、I^(-)、Br^(-)、ClO^(3-)、SO_(4)^(2-)及びCH_(3)COO^(-)等が挙げられる。これらの中でも、特に、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムを含有してなる反応液を使用することが好ましい。これら金属塩の反応液中の含有量としては、例えば、反応液の全質量に対して0.5?15質量%、好ましくは1?10質量%である。
【0023】
反応液に使用する水性媒体は、好ましくは水及び水溶性有機溶剤からなるものである。水溶性有機溶剤は、前記液体組成物において使用する水溶性有機溶剤と同じものを使用することができる。本発明で使用する液体組成物は、先に説明した液体組成物と同様にインクジェット記録によって被記録媒体上に付与してもよいが、これに限定されず、例えば、ローラーによる塗布等の方法で被記録媒体上に付与してもよい。本発明で使用する反応液は、多価金属イオンを含んでなるものであればいずれの構成のものでもよく、被記録媒体上への付与方法に応じて適宜に構成すればよい。」
「【0036】
(水性媒体)
顔料インク、或いは本発明で使用する液体組成物及び反応液において好適な水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。」
「【0046】
[インクジェット記録方法]
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、多価金属イオンを含んでなる反応液と、金属コロイドを含んでなる液体組成物とを被記録媒体に付与し、これらを被記録媒体上で混合させて実質的に白色の画像を形成する過程を少なくとも有することを特徴とする。そして、前記したように、液体組成物及び反応液を用いて被記録媒体上に白色画像を形成し、更にその上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成してもよい。
【0047】
本発明のインクジェット記録方法で使用する前記した構成を有する金属コロイドを含有してなる液体組成物、及び反応液、更には、必要に応じて使用される顔料インク等の各液体組成物を適用することが好適な、液体組成物カートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びこれらの装置に好適に用いられる液体吐出ヘッドの構成の具体例を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0048】
図1は、本発明で使用するインクジェット記録装置に好適な、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式のインクジェット記録ヘッドとしての液体吐出ヘッド、及びこのヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。」
「【0053】
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下単に「カートリッジ」という場合がある)1012Y、1012M、1012C及び1012Bが各色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック顔料を含有した顔料インクとして、1012Wが金属コロイド液体組成物、1012Sが反応液として、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。」
「【0066】
[実施例で使用する液体組成物]
<金属コロイド含有液体組成物の調製>
・上記で得た鉄で表面処理された表面処理酸化チタン
(鉄の含有量1%) 10%
・ジエチレングリコール 10%
・サーフィノール465(日信化学社製) 0.2%
・ポリビニルピロリドン 1%
・水 残量」
「【0069】
[反応液の調製]
被記録媒体上で、金属コロイド含有液体組成物と混合させて白色画像を得るための反応液の組成は、下記の通りである。
・硝酸カルシウム4水和物 15%
・ジエチレングリコール 10%
・サーフィノール465(日信化学社製) 0.2%
・水 残量」
「【0071】
印刷パターンは、先ず、反応液を600×600dpiの密度でOHPシートに付与した。次いで、各金属コロイド含有液体組成物を、反応液が付与されているOHPシートの部分に、600×600dpiの密度で付与した。各金属コロイド含有液体組成物の付与を2回繰り返して白色ベタ画像を形成した。白色ベタ画像の大きさは10cm×10cmとした。このようにして作成した白色ベタ画像を、アトラス社、キセノンフェードメーターにセットし、キセノン光を50時間照射した。そして、照射後の黄変の度合いを目視にて観察した。」

イ 引用例2(甲1)
引用例2には、「画像記録方法、記録物、画像記録システム」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に下地層形成用インク組成物により下地層を記録する第一の工程と、前記下地層の揮発成分残存量が5?50質量%となった状態で、前記下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する第二の工程と、を有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記第一の工程において下地層を形成してから前記第二の工程によってカラー画像層を形成するまでの間に前記下地層を乾燥させるための乾燥工程を有することを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記下地層形成用インク組成物が、金属顔料を含有する光輝性インク組成物、または、金属化合物および中空樹脂粒子の何れかを白色色材として含む白色インク組成物であることを特徴とする請求項1または2記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記基材がインク非吸収性または低吸収性であることを特徴とする請求項1?7の何れか一項に記載の画像記録方法。」
「【発明を実施するための形態】
【0011】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、基材上に下地層形成用インク組成物により下地層を記録する第一の工程と、前記下地層の揮発成分残存量が5?50質量%となった状態で、前記下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する第二の工程と、を有することを特徴とする。」
「【0013】
下地層中の揮発成分の残存量が50質量%を超えている段階で、下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像を形成すると、下地層が湿潤し過ぎるため、カラー画像ににじみが顕著に発生する。一方、下地層中の揮発成分の残存量が5質量%未満となった段階で、下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像を形成すると、下地層は揮発成分が略揮発した状態であるにもかかわらず、カラー画像ににじみが顕著に発生する。より好ましい上記揮発成分の残存量は、8?40質量%であり、特に好ましくは10?25質量%である。」
「【0015】
1.下地層形成用インク組成物
まず、本発明に使用される下地層形成用インク組成物について説明する。本発明においては下地層形成用インク組成物は特に限定されることはなく、好ましくは金属顔料を含有する光輝性インク組成物、または、金属化合物および中空樹脂粒子の何れかを白色色材として含有する白色インク組成物が挙げられる。」
「【0080】
1-2.白色インク組成物
本発明における白色インク組成物は、白色色材として金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種と、前記色材を定着する樹脂成分とを含むことが望ましい。
【0081】
金属化合物としては、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明における金属化合物としては、二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1?20質量%であり、より好ましくは5?15質量%である。金属酸化物の含有量が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。」
「【0112】
2.プロセスカラーインク組成物
次に、本発明の第二の工程で使用されるカラー画像を形成するためのプロセスカラーインク組成物について説明する。
本発明におけるプロセスカラーインク組成物は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)またはK(ブラック)の色材を含むものであればよく、白色以外を呈するカラーインク組成物である。本発明におけるプロセスカラーインク組成物は特に限定されることなく、市販のプロセスカラーインク組成物を使用することができる。
カラー色材としては、顔料系および染料系のいずれでも良く、例えば、特開2003-192963号、特開2005-23253号公報、特開平9-3380号公報、特開2004-51776号公報に記載されたカラーインク組成物を好適に使用することができる。
また、本発明における“カラー”とは特定の色領域ではなく一般的に色があると言われている領域全てを指す。つまり、“L*a*b*座標上でL*=100、a*=0、b*=0(理想的な白)以外の座標に位置する色”を示す。
本発明で用いられるプロセスカラーインク組成物は主溶媒として水を含むものであることが望ましい。」
「【0120】
3-2.乾燥処理
本発明の画像形成方法では、上記揮発成分量を達成するために、第一の工程の直後に、形成された下地層を乾燥することが好ましい。乾燥方法は特に制限されないが、例えば、基材に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど基材に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。加熱温度は基材の種類や下地層の顔料種にもよるが、30?80℃が好ましく、40?60℃がより好ましい。熱をかけないでファンなどによって風を送る方法もよく、自然乾燥も可能である。」
「【0123】
4.基材
本発明で用いられる基材とは、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体である。インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、インクの吸収層を備えていない、あるいは、インクの吸収層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、印字面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。また金属、ガラス等も挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙等が挙げられる。」

ウ 引用例3(甲3)
引用例3には、「インク組成物、インクセット及びインクジェット記録方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
顔料、活性エネルギー線により重合する重合性モノマー、活性エネルギー線により前記重合性モノマーの重合を開始する開始剤及び水を少なくとも含むインク組成物であって、前記インク組成物中に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数が2万個/μl以下であることを特徴とするインク組成物。」
「【請求項12】
請求項1?8のいずれかに記載のインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程、を備えたインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記インク付与工程が、第一のインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与した後、さらに第二のインク組成物を当該記録媒体にインクジェット法で付与する工程であって、
第一のインク組成物及び第二のインク組成物は請求項1?8のいずれかに記載のインク組成物であって、第二のインク組成物中に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数が、第一のインク組成物中に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数より少ない、ことを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
さらに、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程、を備えた請求項12又は13に記載のインクジェット記録方法。」
「【0030】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、顔料、活性エネルギー線により重合する重合性モノマー、活性エネルギー線により前記重合性モノマーの重合を開始する開始剤及び水を少なくとも含み、かつ当該インク組成物に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数が2万個/μl以下であることを特徴とする。本発明のインク組成物は特にインクジェット記録用として好適に使用される。
本発明のインク組成物は、顔料、活性エネルギー線により重合する重合性モノマー、開始剤及び水を少なくとも含む。必要に応じて、更にポリマー粒子、分散剤等そのほかの添加剤を含んでいてもよい。以下、これらを説明する。
【0031】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0032】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
【0033】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。」
「【0128】
<インクセット>
本発明のインクセットは、上記本発明のインク組成物と、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液とを設けて構成されたものであれば限定的でない。
本発明のインクセットは、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクを少なくとも含むインクセットである場合は、前記シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのいずれかひとつでも本発明のインク組成物であればよいが、そのすべてが本発明のインク組成物から構成されていることが好ましい。」
「【0131】
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。」
「【0147】
(処理液付与工程)
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の顔料及びポリマー粒子をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。なお、処理液は凝集剤を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。」
「【0149】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0150】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m^(2)以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2?0.7g/m^(2)となる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m^(2)以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m^(2)以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。」
「【0151】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0152】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。」
「【0153】
(記録媒体)
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0154】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0155】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦過性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。」
「【0207】
画像の記録はまず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出した後、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを水性処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した水性処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40?45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃の温風をあて、風量を変えて所定の乾燥量になるように調整した。続いて、シアンインク吐出用ヘッド30Cにより、シアンインク(第一のインク組成物:実験番号101?107、301?306、501?504)をシングルパスで吐出して画像を記録した後、マゼンタインク吐出用ヘッド30Mにより、マゼンタインク(第二のインク組成物:実験番号101?107、301?306、501?505)を吐出して画像を記録した。また、実験番号201?204では、マゼンタインク吐出用ヘッド30Mにより、マゼンタインク(第一のインク組成物)をシングルパスで吐出して画像を記録した後、イエローインク吐出用ヘッド30Yにより、イエローインク(第二のインク組成物)を吐出して画像を記録した。また、実験番号601?604ではシアンインク吐出用ヘッド30Cにより、シアンインクを吐出して画像を記録した。その後、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cm2になるように照射して画像を硬化した。」

エ 引用例4(甲4)
引用例4には、「画像形成方法及び画像形成装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含有するインク液と、前記色材を凝集させる成分を含有する凝集処理剤とを用いて、画像形態体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記画像形成上に前記凝集処理剤からなると共に含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成する凝集処理層形成工程と、
前記凝集処理層が形成された前記画像形成体に対して前記インク液を液滴化して打滴するインク打滴工程と、
前記インク打滴工程の後に、前記画像形成体上の液体溶媒を除去する溶媒除去工程と、を備えたことを特徴とする画像形成方法。」
「【0076】
(描画部)
図4に示すように、描画部14は、描画ドラム70と、この描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置されたインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kで構成される。インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向(図4において反時計回り方向)に上流側から順に配置される。」
「【0173】
(記録媒体)
本発明においては、印刷用コート紙等の緩浸透性の記録媒体22を好適に使用することができる。特に以下にあげる記録媒体を好適に使用することができる。
【0174】
緩浸透性の記録媒体22の例として、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微コート紙、上質紙、再生紙、合成紙、感圧紙、エンボス紙、等のグロスあるいはマット紙が好適に使用される。より具体的には、OKエルカード+(王子製紙社製)、SA金藤+(王子製紙社製)、サテン金藤N(王子製紙社製)、OKトップコート+(王子製紙社製)、ニューエイジ(王子製紙社製)、特菱アート両面N(三菱製紙社製)、特菱アート片面N(三菱製紙社製)、ニューVマット(三菱製紙社製)、オーロラコート(日本製紙社製)、オーロラL(日本製紙社製)、ユーライト(日本製紙社製)、リサイクルコートT-6(日本製紙社製)、リサイクルマットT-6(日本製紙社製)、アイベストW(日本板紙社製)、インバーコートM(SPAN CORPORATION社製)、ハイマッキンレーアート(五條製紙社製)、キンマリHi-L(北越製紙社製)、Signature True(Newpage corporation社製)、Sterling Ultra(Newpage corporation社製)、Anthem(Newpage corporation社製)、Hanno ArtSilk(Sappi社製)、Hanno Art gross(Sappi社製)、Consort Royal Semimatt(Scheufelen社製)、Consort Royal Gross(Scheufelen社製)、Zanders Ikono Silk(m-real社製)、Zanders Ikono Gross(m-real社製)、の坪量60?350g/m^(2)のものが好適に使用される。」
「【0246】
<顔料(B)>
本発明において、顔料(B)とは化学大辞典第3版1994年4月1日発行(編集 大木道則他)の518頁に記載のように、水、有機溶剤にほとんど不溶の有色物質(無機顔料では白色も含む)の総称であり、本発明では有機顔料と無機顔料とを用いることができる。」
「【0522】
〈凝集剤の種類〉
・処理液1…マロン酸
・処理液2…クエン酸
・処理液3…コハク酸
・処理液4…2-ピロリドン-5-カルボン酸
・処理液5…塩化カルシウム
・処理液6…硝酸カルシウム
・処理液7…ポリエチレンイミン
[実験結果]
図23の表における色材移動の評価結果から分かるように、凝集剤の種類が変わっても、記録媒体上に付与した処理液を乾燥(凝集処理層の含水率56%以下)することで、色材移動が極めて小さい◎の評価となった。」
「また、図26(e)に示すように、凝集処理層1012上に着弾したインク液滴1014Aには上述した凝集反応によってインク凝集体1016Aが既に形成されているので、先に打滴されたインク液滴1014Aに接触するように後からインク液滴1014Bが打滴される場合でも、これらインク液滴1014A、1014B同士が合一(着弾干渉)することがない。凝集処理層1012上に後から着弾したインク液滴1014Bも凝集反応によってインク凝集体1016Bが形成される(図26(f))。つまり、複数のインク液滴が隣接する位置に打滴される場合でも、これらインク液滴同士の着弾干渉が生じることなく、所望のドット形状やドットサイズを得ることができ、高品質な画像形成が可能となる。また、異なる色のインク液滴同士の場合には混色滲みを防止することもできる。」
「【0535】
(実施例4)
実施例4は、図15に示した中間転写方式のインクジェット記録装置を用いて、本発明の「凝集処理層の含水率56%以下」を満足する場合と満足しない場合とで、ドット移動(色材移動)及び着弾干渉がどのように異なるかを対比した対比実験を以下に説明する。
【0536】
実験は、ポリイミド製の中間転写体202上に凝集処理液を約10μmの膜厚で塗布し、乾燥により中間転写体202上の凝集処理層の含水率を変化させたときの色材移動及び着弾干渉について評価を行った。具体的には、加熱乾燥部208の加熱条件を適宜変更して、中間転写体202上の凝集処理層の含水率を変化させて中間転写体202上に1次画像(インク画像)を形成し、溶媒除去前の1次画像について評価を行った。なお、着弾干渉は、ライン幅と液溜まりを評価することでおこなった。」

オ 引用例5(甲5)
引用例5には、「インクセット及び画像記録方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含むインク組成物と、
前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び前記インク組成物中の成分の凝集を起こさない水溶性ポリマーを含む処理液と、
を含むインクセット。」

(2)引用例1に記載された発明(引用発明)
上記(1)アの【請求項1】には、「多価金属イオンを含んでなる反応液と、金属コロイドを含んでなる液体組成物とを被記録媒体に付与し、これらを被記録媒体上で混合させて実質的に白色の画像を形成する過程を少なくとも有するインクジェット記録方法」が記載され、同【0046】には、白色の画像の上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成することが記載されている。
そして、同【0071】には、被記録媒体はOHPシートであること、さらには、OHPシートに対し、先ず、反応液を付与し、次いで、各金属コロイド含有液体組成物を反応液が付与されているOHPシートの部分に付与した例が記載され、また、同【0053】には、インクジェット記録装置には、顔料インクと、金属コロイド液体組成物、反応液を備えたインクジェットカートリッジが、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられることが記載されている。
また、同【0022】には、反応液は、多価金属イオンを含んでなるものであって、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムを含有してなる反応液を使用することが好ましいことが記載されている。

そうすると、引用例1には、「通常の染料、乃至は顔料を有する着色インク、金属コロイド液体組成物、反応液を備えたインクジェットカートリッジがキャリッジ部材に対して着脱自在に備えられ、
硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液をOHPシートに付与する工程と、
次いで、金属コロイドを含んでなる液体組成物をOHPシートに付与して、これらをOHPシート上で混合させて実質的に白色の画像を形成する工程と、
更にその上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成する工程とを有するインクジェット記録方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明においては、「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液」によって、「白色の画像」の基となる「金属コロイドを含んでなる液体組成物」が凝集することで、「白色の画像」が形成されるものと解されることから、引用発明の「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液」及び「金属コロイドを含んでなる液体組成物」は、本件発明1の「凝集剤を含む反応液」及び「色材を含む第1インク」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液をOHPシートに付与する工程」は、本件発明1の「反応液を付与する反応液付与工程」に相当する。
(イ)引用発明の「金属コロイドを含んでなる液体組成物」は、白色の画像となることから、「白インク」といえ、本件発明1の「白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインク」に相当する。
そして、引用発明の「次いで、金属コロイドを含んでなる液体組成物をOHPシートに付与して、これらをOHPシート上で混合させて実質的に白色の画像を形成する工程」は、本件発明1の「反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程」に相当する。
(ウ)引用発明の「OHPシート」は、一般に、樹脂フィルムであるから、本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体」に相当する。
(エ)引用発明の「通常の染料、乃至は顔料を有する着色インク」は、本件発明1の「色材を含む第2インク」であって「カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインク」に相当する。
そして、引用発明の「更にその上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成する工程」は、本件発明1の「第1インクを付与した領域に、第2インクを付与する第2工程」に相当する。
(オ)引用発明では、「通常の染料、乃至は顔料を有する着色インク、金属コロイド液体組成物、反応液がキャリッジ部材に対して着脱自在に備えられ」るから、「キャリッジ部材に対して着脱自在に備えられ」た「着色インク、金属コロイド液体組成物、反応液」はインクセットといえ、本件発明1の「インクセット」に相当する。
(カ)引用発明の「インクジェット記録方法」は、本件発明1の「記録方法」に相当する。
(キ)引用発明の「更にその上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成する工程」において、「その上」の「その」の範囲は、本件発明1の「第1インクを付与した領域」に相当する。

(ク)本件発明1の上記(ア)?(キ)より、本件発明1と引用発明とは、
「凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用い、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体に、前記反応液を付与する反応液付与工程と、
前記反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程と、を有し、
前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであり、
前記第1インク及び前記第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクである、
記録方法。」である点で一致し、次の点で相違点1、2で相違が認められる。
(相違点1)
本件発明1は、「第1工程後で第2工程前に、被記録媒体を表面温度45℃以下に加熱する工程を有し、
前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であ」るのに対し、引用発明は、OHPシートを加熱する工程を備えていることは規定されておらず「更にその上に、通常の染料、乃至は顔料を有する着色インクで画像を形成する工程」の前の、「反応液」及び「金属コロイドを含んでなる液体組成物」に含まれる「揮発分の総質量」の付与前に対する割合は不明な点。
(相違点2)
本件発明1は、「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体の、第1インクと第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、反応液に含まれる凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であ」る点が規定されているのに対し、引用発明では、そのような規定はされていない点。

ここで、事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。
引用発明は、本件発明1の凝集剤に相当する「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液」と「金属コロイドを含んでなる液体組成物」とを、「OHPシート上で混合させて実質的に白色の画像を形成する工程」を有するものであって、「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液」における「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオン」のモル数は、「金属コロイドを含んでなる液体組成物」に応じて決められるものであるといえる。
そうすると、引用発明においては、「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオン」のモル数は、「通常の染料、乃至は顔料を有する着色インク」に含まれる色材の総質量によって定まるものではない。
そして、「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオン」のモル数と、「通常の染料、乃至は顔料を有する着色インク」に含まれる色材の総質量との比は、白色の画像や着色インクで形成される画像によって変化するものであり、所定の範囲内のものになるものではない。
また、引用例2?5には、該比についての記載は見当たらない。
したがって、引用発明において、上記比を本件発明1の「800:1?31000:1」の範囲内のものとする動機付けは見出せない。

これに対し、本件発明1は、本件明細書の【0106】に、「比Eが800:1以上であることにより、反応液の析出、反応液による白濁、べたつき、臭気の発生を防止することができる。比Eが31000:1以下であることにより、インク重ね合わせ時のブリードを抑制することができる。」と記載され、該比Eが「800:1?31000:1」の範囲内のものである、実施例14について、同【0132】の【表4】に示されるように、被記録媒体上の反応液の析出、画像部の白濁、被記録媒体上の第1インクのベタムラ、記録物の臭気、第1インクと第2インクの重ね合わせ記録時のブリードについていずれも良好であることが確認されているように、引用発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものである。

したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

イ 本件発明2?18について
本件発明2?18は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、上記理由1には、理由がない。

2 理由2、3について
本件明細書には、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
「【0121】
〔第2工程前の反応液及び第1インクの揮発成分の揮発量〕
第1工程後第2工程前(被記録媒体が第2インク用ヘッドと対向する位置に搬送されてきた時点)のパターン3における反応液及び第1インクの揮発成分の揮発量は、以下の式で算出した。ここで、Afは被記録媒体へ重ねて付与する部分の反応液と第1インクの合計の付与量(mg)である。また、Aeは、記録物を使用するのに十分な状態まで反応液及び第1インクを乾燥(揮発)させた状態の被記録媒体上の反応液と第1インクの合計の残留物量である。さらに、Aは、第2工程直前の被記録媒体上の反応液と第1インクの総質量である。
揮発成分の揮発量%=((Af-A)/(Af-Ae))×100
【0122】
Afはパターン3における反応液及び第1インクの付与量としてプリンタの吐出データと1ドット当たりの質量から求めることができる。Aは、第2インクの付与を開始する時点の被記録媒体の質量と、反応液付与工程前の被記録媒体の質量を測定し差を取ることで求めることができる。揮発成分の揮発量の測定の際には、測定用に用意した被記録媒体を用いることが簡便である。測定は、電子天秤により測定した。測定の際は、反応液と第1インクを付与してからプラテンにて所定の加熱乾燥した際の乾燥時間と揮発量の関係を求めて置く。記録装置で記録を行う際には、反応液と第1インクを付与してから第2インクを付与するまでの時間を、上記で求めた乾燥時間と揮発量の関係の何れかの時間とすることで所望の揮発量にすることができる。」

上記記載から、「反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量」は、具体的には、測定用に用意した被記録媒体を用いて、パターン3における反応液及び第1インクの付与量としてプリンタの吐出データと1ドット当たりの質量から求めたAfと、第2インクの付与を開始する時点の被記録媒体の質量と、反応液付与工程前の被記録媒体の質量を測定し差を取ったAと、記録物を使用するのに十分な状態まで反応液及び第1インクを乾燥(揮発)させた状態の被記録媒体上の反応液と第1インクの合計の残留物量Aeとから、式:揮発成分の揮発量%=((Af-A)/(Af-Ae))×100によって求めるものである。
そして、質量の測定は電子天秤を用いて、揮発量は、予め電子天秤を用いて求めておいた乾燥時間と揮発量との関係から、所望のものとすることができるものである。
また、測定用に用意した被記録媒体を用いる際の、反応液及び第1インクの付与は、プリンタの吐出の態様と類似した態様で行えば、インクジェット記録装置で記録を行う際と同様な乾燥時間と揮発量との関係が得られることは明らかである。

したがって、「反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量」について、請求項1の記載が不明確であるということはできないし、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない、ということもできない。

よって、上記理由2、3には、理由がない。

3 理由4について
上記第4 2 Bにおいて述べたように、本件発明の課題は、「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体上に複数のインクを重ねて記録した場合に、それらのインク間でのブリードが防止でき、かつ目詰りしにくいインクセットを提供すること」(【0006】)と解せられる。
これに対し、訂正後の本件発明1では、「第1工程の後であって、第2工程前に被記録媒体を加熱する工程」の加熱温度について、「表面温度45℃以下」であることが特定され、被記録媒体の加熱が、ノズルを高温とするものではなく、ノズルの目詰りが生じにくいことが明らかとなった。
また、上記第2 2(1)で述べたように、本件明細書の【0132】の【表4】の実施例14の「記録中の被記録媒体表面温度(ヒートアシスト)」の欄には、「45℃」と記載されており、本件明細書の実施例14には、「第1工程の後であって、第2工程前に被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程」を有する態様が示されている。
したがって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?18に、「目詰りしにくいインクセットを提供する」という本件発明の課題を解決しない発明を包含するとはいえない。

したがって、上記理由4には、理由がない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 設定登録時の本件発明1?18に対して申し立てられた特許異議申立理由は次のとおりであり、甲2を主引用例とする理由3は、上記取消理由の理由2であるので、取消理由通知において採用しなかった理由は、その内、理由1、2、4?8である。
(1)理由1 特許法第29条第2項(甲1(引用例2)を主引用例としたもの)
本件発明1?6、9、10、13?18は、甲1?甲4に基づき進歩性を有さない。本件発明7、8、11は、甲1?甲5に基づき進歩性を有さない。
(2)理由2 特許法第29条第2項(甲3(引用例3)を主引用例としたもの)
本件発明1?6、9、10、13?18は、甲1?甲4に基づき進歩性を有さない。本件発明7、8、11は、甲1?甲5に基づき進歩性を有さない。
(3)理由3 特許法第29条第2項(甲2(引用例1)を主引用例としたもの)
本件発明1?6、9、10、13?18は、甲1?甲4に基づき進歩性を有さない。本件発明7、8、11は、甲1?甲5に基づき進歩性を有さない。
(4)理由4 特許法第29条第2項(甲4(引用例4)を主引用例としたもの)
本件発明1、2、5,6,7、9、10、13、14、15、16、17、18は、甲1、甲4により進歩性がなく、本件発明3、4、8、11は、甲1、甲4、甲3により進歩性がなく、本件発明12は、甲1、甲4、甲5により進歩性がない。
(5)理由5 特許法第36第6項第2号
本件発明1?18は、特許を受けようとする発明が明確であるものではない。
本件特許請求項1には「前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であり、」が記載されている。しかしながら、反応液及び前記第1インクに含まれる水などの揮発成分の揮発量は、乾燥工程の有無のみに依存するものではなく、たとえ乾燥工程を備えていなくても基材上の第1インクや反応液中の水がインクジェット吐出時や基材に付着したときにある程度は揮発することは通常である。
実際、本件の明細書に記載されている実施例1?12では「記録中の被記録媒体表面温度」を室温(25℃)にしているにも関わらず、第2工程における揮発成分の揮発量が「10%」となっており、特段第1工程後で第2工程前に、被記録媒体を加熱する乾燥工程を備えていなくても基材上の第1インクや反応液中の水などの揮発成分が揮発することを示唆している。
すなわち、水などの揮発成分の揮発量は、印刷を行った温度や湿度等の環境によって大きく変動し得るものであり、第三者の侵害予測可能性を奪うものであるといえる。揮発成分の揮発量が10?80質量%が記載されている請求項15や、揮発成分の揮発量が10?60質量%が記載されている請求項16についても同様である。
したがって、本件特許請求項1、15,16およびこれに従属する本件特許請求項2?14、17、18は、特許を受けようとする発明が明確であるものではない。
(6)理由6 特許法第36第4項第1号、理由7 特許法第36第6項第1号
本件発明16は、実施例に記載されておらず、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されていない。
また、本件発明16は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
すなわち、本件発明16は、揮発量が10?60質量%であることが限定されている。
しかしながら、本件特許明細書【0112】?【0138】に記載されている実施例1?19には、本件発明16に該当する実施例は存在しない。実施例14を除く実施例1?13、15?19は、いずれも「記録中の被記録媒体表面温度」を室温(25℃)にしているので、第1工程後で前記第2工程前に、被記録媒体を加熱する工程を有していない。また、実施例14は、反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、80質量%であるため、揮発量が10?60質量%ではない。
よって、本件発明16は、実施例に記載されておらず、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されていない。または、本件発明16は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(7)理由8 特許法第17第の2第3項
出願人が平成30年1月9日及び平成30年1月9日に提出した手続補正書の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるとは認められない。
出願人は、平成30年6月26日の手続補正において、「前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を加熱する工程を備える、」との構成を請求項1に追加して特許査定を得ている。
出願人は、平成30年1月9日に提出した意見書において「この補正は、本願明細書の[0120]等に基づくものであります。」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書【0120】には「具体的には、パターン3を形成する場合であれば、被記録媒体を予め表3?5中の温度になるようヒーターで温度を調整してから反応液を付与し反応液からなるパターン(サブパターン)を形成し、次に、反応液からなるサブパターン上に第1インクを付与し第一インクからなるサブパターンを形成し、次に第1インクからなるサブパターン上に第2インクからなるサブパターンを形成してパターン3を形成した。なお、反応液、第1インク、及び第2インクの付与中も表3?5中の温度に保持されるようプラテンヒーターで被記録媒体の温度を調整した。」が記載されている。
この記載では、反応液、第1インク、及び第2インクの付与中にプラテンヒーターで被記録媒体の温度を調整していることを意味するが、この記載から第1工程後で第2工程前という特定のタイミングで加熱しているか、加熱していないかについては明らかではない。
さらに表3?5には「室温」と記載されていることから、本件特許明細書段落【0120】の「温度調整」は室温の範囲内であえばこと足りるわけであることから当業者であれば寧ろ「加熱しない」態様であることを理解する。
また、本件特許明細書【0098】には「なお、第1工程中又は第1工程後において被記録媒体へ塗布した反応液及び第1インクの少なくとも一部を乾燥する工程をさらに有していてもよい。」が記載され、本件特許明細書【0100】には「・・・、被記録媒体へ塗布した反応液及び第1インクの少なくとも一部を乾燥する工程を有していてもよく、・・・」が記載はされているが、乾燥とは、例えば、自然乾燥や送風乾燥も含まれ得るので、構成要件E.を請求項1に追加するような補正は新しい技術的事項を追加する補正であると認められる。
よって、出願人が平成30年1月9日及び平成30年1月9日に提出した手続補正書の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるとは認められない。

2 当審の判断
(1)理由1について
ア 甲1?甲5に記載された事項
甲1?甲5に記載された事項は、上記第5 1(1)のイ、ア、ウ?オに、それぞれ記載したとおりである。

イ 甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1に記載された発明について申立人は特定していないので、当審が次のように認定した。
甲1の【0011】の記載から、甲1には、「基材上に下地層形成用インク組成物により下地層を記録する第一の工程と、前記下地層の揮発成分残存量が5?50質量%となった状態で、前記下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する第二の工程と、を有する画像記録方法」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体」と甲1発明の「基材」とは、「被記録媒体」である点で共通する。
甲1発明の「プロセスカラーインク組成物」は、本件発明1の「第2インク」に相当し、甲1発明の「プロセスカラーインク組成物」には、カラー色材が含まれることは明らかであるから、本件発明1の「第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであ」る構成を充足する。
本件発明1の「色材を含む第1インク」と甲1発明の「下地層形成用インク組成物」とは、「第1インク」である点で共通する。
甲1発明の「下地層を記録する第一の工程」及び「下地層にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する第二の工程」は、本件発明1の「第1インクを付与する第1工程」及び本件発明1の「第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程」にそれぞれ相当する。
甲1発明1の「画像記録方法」は、本件発明1の「記録方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「第1インクと、第2インクと、を備え、被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程と、
前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクである、
記録方法。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

(相違点甲1-1)
被記録媒体について、本件発明1は、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体であるのに対し、甲1発明の基材は、どのような基材か規定されていない点。
(相違点甲1-2)
第1インクについて、本件発明1は色材を含むのに対し、甲1発明の下地層形成用インク組成物に色材を含むかどうかは規定されていない点。
(相違点甲1-3)
インクセットについて、本件発明1は、凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用いるのに対し、甲1発明は、凝集剤を含む反応液を用いることは規定されておらず、しかも、インクセットを用いることは規定されていない点。
(相違点甲1-4)
反応液付与工程について、本件発明1は、被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程とを備えているのに対し、本件発明1は、反応液付与工程を備えることは規定されていない点。
(相違点甲1-5)
第1工程について、本件発明1は、反応液を付与した領域に、第1インクを付与する工程なのに対し、甲1発明は、下地層形成用インク組成物により下地層を記録する工程である点。
(相違点甲1-6)
本件発明1は、第1工程後で第2工程前に、被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程とを有するのに対し、甲1発明は、そのような工程は備えていない点。
(相違点甲1-7)
本件発明1は、第1工程の後であって、第2工程の前における、被記録媒体上の反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であるのに対し、甲1発明は、そのような規定はされていない点。
(相違点甲1-8)
本件発明1は、被記録媒体の、第1インクと第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、反応液に含まれる凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であるのに対し、甲1発明は、そのような規定はされていない点。
(相違点甲1-9)
本件発明1は、第1インク及び第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクであるのに対し、甲1発明の「下地層形成用インク組成物」は、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクであることは規定されていない点。

ここで、事案に鑑み、まず、相違点甲1-4及び甲1-8について検討する。
甲1には、被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程について記載も示唆もない。
一方、上記第5 1(2)において述べたように、甲2(引用例1)には、上記「被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程」に相当する「硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の多価金属イオンを含んでなる反応液をOHPシートに付与する工程」が示されているといえる。
しかしながら、仮に、甲2に基いて、上記相違点甲1-4に係る本件発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものだとしても、上記第5 1(3)アの相違点2について検討したように、甲1発明において、上記相違点甲1-8における本件発明1の比Eを、「800:1?31000:1」の範囲内のものとする動機付けは見出せない。
そして、本件発明1は、甲1発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものである。

したがって、上記相違点甲1-1?3、5?7、8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

また、本件発明2?18は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)理由2について
ア 甲1?甲5に記載された事項
甲1?甲5に記載された事項は、上記第5 1(1)のイ、ア、ウ?オに、それぞれ記載したとおりである。

イ 甲3に記載された発明(甲3発明)
甲3に記載された発明について申立人は特定していないので、当審が次のように認定した。
甲3の請求項1には、「顔料、活性エネルギー線により重合する重合性モノマー、活性エネルギー線により前記重合性モノマーの重合を開始する開始剤及び水を少なくとも含むインク組成物であって、前記インク組成物中に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数が2万個/μl以下であることを特徴とするインク組成物。」が記載され、請求項12には、該インク組成物を「記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程、を備えたインクジェット記録方法。」が記載され、請求項13には、「前記インク付与工程が、第一のインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与した後、さらに第二のインク組成物を当該記録媒体にインクジェット法で付与する工程」であることが記載され、請求項14には、該インクジェット記録方法は、「前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程、を備えた」ものであることが記載されている。

そうすると、甲3には、
「顔料、活性エネルギー線により重合する重合性モノマー、活性エネルギー線により前記重合性モノマーの重合を開始する開始剤及び水を少なくとも含むインク組成物であって、前記インク組成物中に含まれる粒子径0.8μm以上の粒子の数が2万個/μl以下であるインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程、を備えたインクジェット記録方法において、
前記インク付与工程が、第一のインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与した後、さらに第二のインク組成物を当該記録媒体にインクジェット法で付与する工程であり、
さらに、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程、を備えたインクジェット記録方法」(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 対比・判断
本件発明1と甲3発明とを対比する。
本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体」と甲3発明の「記録媒体」とは、「被記録媒体」である点で共通する。
甲3発明の「顔料」は、本件発明1の「色材」に相当し、甲3発明の「第一のインク組成物」及び「第二のインク組成物」は、顔料を含むから、本件発明1の「色材を含む第1のインク」及び「色材を含む第2インク」にそれぞれ相当する。
甲3発明の「顔料」には、「有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、など」(【0032】)、「無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられ」(【0032】)るから、本件発明1の「第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであり、前記第1インク及び前記第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクである」構成を充足する。
甲3発明の「第一のインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与」する構成及び「第二のインク組成物を当該記録媒体にインクジェット法で付与する工程」は、本件発明1の「第1インクを付与する第1工程」及び本件発明1の「第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程」にそれぞれ相当する。
甲3発明の「インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液」は、本件発明1の「凝集剤を含む反応液」に相当し、本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程」と、甲3発明の「インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程」とは、「被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程」と共通する。
甲3発明1の「インクジェット記録方法」は、本件発明1の「記録方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備え、被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記被記録媒体に、前記反応液を付与する反応液付与工程と、
前記反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程とを備え、
前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであり、
前記第1インク及び前記第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクである、
記録方法。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

(相違点甲3-1)
被記録媒体について、本件発明1は、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体であるのに対し、甲3発明の基材は、どのような基材か規定されていない点。
(相違点甲3-2)
インクセットについて、本件発明1は、凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用いるのに対し、甲3発明は、インクセットを用いることは規定されていない点。
(相違点甲3-3)
本件発明1は、第1工程後で第2工程前に、被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程とを有するのに対し、甲3発明は、そのような工程は備えていない点。
(相違点甲3-4)
本件発明1は、第1工程の後であって、第2工程の前における、被記録媒体上の反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であるのに対し、甲3発明は、そのような規定はされていない点。
(相違点甲3-5)
本件発明1は、被記録媒体の、第1インクと第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、反応液に含まれる凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であるのに対し、甲3発明は、そのような規定はされていない点。

ここで、事案に鑑み、まず、相違点甲3-5について検討する。
甲3には、処理液付与工程は、インク組成物中の顔料及びポリマー粒子をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化されるようにするためのものであって(【0147】)、処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m^(2)以上となる量とすることができる(【0150】)ことが記載されていることから、甲3発明の「インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液」の凝集剤のモル数は、画像が形成される面積に応じて定められるものいえ、「第一のインク組成物」及び「第二のインク組成物」に含まれる「顔料」の総質量によって定められるものということはできない。

そうすると、甲3発明は、「インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液」の凝集剤のモル数と、「第一のインク組成物」及び「第二のインク組成物」に含まれる「顔料」の総質量との比は、所定の範囲内に定めることを想定したものではない。
また、引用例1、2、4、5には、該比についての記載は見当たらない。

したがって、甲3発明において、上記比を本件発明1の「800:1?31000:1」の範囲内のものとする動機付けは見出せない。

これに対し、上記第5 1(3)アにおいて述べたように、本件発明1は、上記相違点甲3-5に係る発明特定事項を備えることで、甲3発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものである。

したがって、上記相違点甲3-1?4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

また、本件発明2?18は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)理由4について
ア 甲1?甲5に記載された事項
甲1?甲5に記載された事項は、上記第5 1(1)のイ、ア、ウ?オに、それぞれ記載したとおりである。

イ 甲4に記載された発明(甲4発明)
甲4に記載された発明について申立人は特定していないので、当審が次のように認定した。
甲4の請求項1の記載からみて、甲4には、
「色材を含有するインク液と、前記色材を凝集させる成分を含有する凝集処理剤とを用いて、画像形態体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記画像形成上に前記凝集処理剤からなると共に含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成する凝集処理層形成工程と、
前記凝集処理層が形成された前記画像形成体に対して前記インク液を液滴化して打滴するインク打滴工程と、
前記インク打滴工程の後に、前記画像形成体上の液体溶媒を除去する溶媒除去工程と、を備えたことを特徴とする画像形成方法」(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 対比・判断
甲4発明の「色材を含有するインク液」及び「色材を凝集させる成分を含有する凝集処理剤」は、本件発明1の「色材を含む第1インク」及び「凝集剤を含む反応液」にそれぞれ相当する。
本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体」と甲4発明の「画像形態体」とは、「被記録媒体」である点で共通する。
甲4発明の「画像形成上に前記凝集処理剤からなると共に含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成する凝集処理層形成工程」、「凝集処理層が形成された画像形成体に対してインク液を液滴化して打滴するインク打滴工程」及び「画像形成方法」は、本件発明1の「非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体に、反応液を付与する反応液付与工程」、「反応液を付与した領域に、第1インクを付与する第1工程」及び「記録方法」にそれぞれ相当する。
甲4発明の「色材を有するインク液」は、甲4に【0076】に、「描画部14は、描画ドラム70と、この描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置されたインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kで構成される。インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクに対応しており」と記載されていることから、色材を有するものであって、「第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであ」る構成を充足する。

そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクとを備え、被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記被記録媒体に、前記反応液を付与する反応液付与工程と、
前記反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクが、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクである、記録方法。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

(相違点甲4-1)
本件発明1は、色材を含む第2インクを備え、第1インクを付与した領域に、第2インクを付与する第2工程を備えているのに対し、甲4発明は、色材を有するインク液の他に色材を含むインクを備えることは規定されておらず、そのような第2の工程は備えていない点。
(相違点甲4-2)
インクセットについて、本件発明1は、凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用いるのに対し、甲4発明は、インクセットを用いることは規定されていない点。
(相違点甲4-3)
被記録媒体について、本件発明1は、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体であるのに対し、甲4発明の画像形態体は、どのような画像形態体か規定されていない点。
(相違点甲4-4)
本件発明1は、第1工程後で第2工程前に、被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程とを有するのに対し、甲4発明は、そのような工程は備えていない点。
(相違点甲4-5)
本件発明1は、第1工程の後であって、第2工程の前における、被記録媒体上の反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であるのに対し、甲4発明は、そのような規定はされていない点。
(相違点甲4-6)
本件発明1は、被記録媒体の、第1インクと第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、反応液に含まれる凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であるのに対し、甲4発明は、そのような規定はされていない点。
(相違点甲4-7)
本件発明1は、第1インク及び第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクであるのに対し、甲4発明は、そのような規定はされていない点。

ここで、事案に鑑み、まず、相違点甲4-1及び甲4-6について検討する。
甲4は、画像形態体に、甲4発明において規定された「色材を有するインク液」以外の色材を含むインク液を液滴化して打滴するインク打滴工程を備えることについて、具体的な記載は見当たらない。
また、仮に、甲4発明において、甲4発明において規定された「色材を有するインク液」以外の色材を含むインク液を液滴化して打滴するインク打滴工程を備えることが当業者にとって容易に想到し得ることだとしても、甲4発明における「色材を凝集させる成分を含有する凝集処理剤」は、「凝集処理剤からなると共に含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成する」ためのものであるから、甲4発明における「色材を凝集させる成分」のモル数と、甲4発明において規定された「色材を有するインク液」及び当該インク液以外の色材を含むインク液の色材の総質量との比が所定の範囲になることは想定されていない。

また、引用例1?3、5には、該比についての記載は見当たらない。

したがって、甲4発明において、上記相違点甲4-6における本件発明1の比Eを、「800:1?31000:1」の範囲内のものとする動機付けは見出せない。
そして、上記第5 1(3)アにおいて述べたように、本件発明1は、甲4発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものである。

したがって、上記相違点甲4-2?5、甲4-7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

また、本件発明2?18は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)理由5について
上記第5 2において述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明には、揮発成分の揮発量の測定方法について、当業者が実施できる程度に記載されている。
そして、水などの揮発成分の揮発量は、印刷を行った温度や湿度等の環境によって大きく変動し得るものであるとしても、本件発明において規定された揮発量の測定は、特段の規定がないことから常温常湿において行うものであるといえ、その場合、測定された揮発量の値は温度や湿度等の環境によって大きく変動するものといえないことから、本件発明における揮発量の規定は、第三者に不測な不利益を及ぼすほどに不明確なものとはいえない。

(5)理由6、7について
本件発明1は、「第1工程の後であって、第2工程の前における、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体上の反応液及び第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%」である点を規定するものであるところ、本件発明16は、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?15において、「揮発量が、10?60%である」点を特定するものである。
本件明細書の【0105】には、「目詰まり信頼性が優れながら記録スピードも優れる点で、60質量%以下がさらにより好ましく、50%質量以下がさらに特に好ましく、30質量%以下がさらに一層好ましい。」と記載されており、本件発明16の「揮発量が、10?60%である」点は、「目詰まり信頼性が優れながら記録スピードも優れる」ものとして、本件発明1における揮発量のより好ましい範囲を特定したものといえる。
そして、揮発量が60%を超える80%である実施例14について、ブリード抑制及び記録速度の高速化が良好になし得たものであることが確認されていることから、より好ましい範囲の「揮発量が、10?60%である」本件発明16についても、実施例14と同様に、ブリード抑制及び記録速度の高速化が良好なものとなることがいえることから、発明の詳細な説明が、当業者が本件発明16の実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されていないとはいうことはできないし、本件発明16は、発明の詳細な説明に記載したものではない、ともいうことはできない。

(6)理由8について
本件願書に最初に添付した明細書【0119】?【0122】に記載された「実施例1?18、比較例1?5」に関して、「PX-G930(エプソン社製)の改造機を用いた。改造点はプラテンにヒーターを取り付け、被記録媒体を加熱可能とした点である。」、「反応液のみ付与したパターン1と、反応液と第1インクのみを重ねて付与したパターン2と、反応液と第1インクと第2インクを重ねて付与したパターン3をそれぞれ形成した。」(【0119】)、「パターン3を形成する場合であれば、被記録媒体を予め表3?5中の温度になるようヒーターで温度を調整してから反応液を付与し反応液からなるパターン(サブパターン)を形成し、次に、反応液からなるサブパターン上に第1インクを付与し第一インクからなるサブパターンを形成し、次に第1インクからなるサブパターン上に第2インクからなるサブパターンを形成してパターン3を形成した。なお、反応液、第1インク、及び第2インクの付与中も表3?5中の温度に保持されるようプラテンヒーターで被記録媒体の温度を調整した。」(【0120】)と記載され、実施例14では、【0133】【表5】に、「記録中の被記録媒体表面温度(ヒートアシスト)」を「45℃」としたことが示されている。
そうすると、本件願書に最初に添付した明細書には、「反応液を付与する反応液付与工程」、「第1インクを付与する第1工程」、及び、「第1インクを付与した領域に、第2インクを付与する第2工程」の全ての工程にわたって、解被記録媒体を加熱することが記載され、実施例14ではその加熱温度は45℃であることが記載されている。
そして、本件発明では、「第1工程後で第2工程前」以外の工程において被記録媒体を加熱することを排除するものではないことから、本件願書に最初に添付した明細書には、本件発明1における「前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程を備える」点は記載されているというべきである。

(7)まとめ
以上のとおり、申立人の上記理由1、2、4?8はいずれも理由がない。

第7 まとめ
したがって、本件発明1?18に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤を含む反応液と、色材を含む第1インクと、色材を含む第2インクと、を備えるインクセットを用い、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体に対して記録を行う記録方法であって、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体に、前記反応液を付与する反応液付与工程と、
前記反応液を付与した領域に、前記第1インクを付与する第1工程と、
前記第1インクを付与した領域に、前記第2インクを付与する第2工程と、
前記第1工程後で前記第2工程前に、前記被記録媒体を表面温度45℃以下で加熱する工程と、を有し、
前記第1工程の後であって、前記第2工程の前における、前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体上の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の揮発量が、付与前の前記反応液及び前記第1インクに含まれる揮発成分の総質量100質量%に対して、10?95質量%であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?31000:1であり、
前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、カラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクであり、
前記第1インク及び前記第2インクの他方が、白色色材を含む白インクまたは、メタリック色材を含むメタリックインクである、
記録方法。
【請求項2】
前記凝集剤が、多価金属塩及び有機酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記反応液に含まれる前記多価金属塩のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる前記色材の総質量(単位:g)との比(色材:多価金属塩)が、1000:1?31000:1である、
請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記反応液に含まれる前記有機酸のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクの色材に含まれる総質量(単位:g)との比(色材:有機酸)が、800:1?5500:1である、
請求項2又は3に記載の記録方法。
【請求項5】
前記第1インクが白色色材を含む白インクまたはメタリック色材を含むメタリックインクであり、
前記第2インクがカラー色材を含むカラーインク又はブラック色材を含むブラックインクである、
請求項1?4のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項6】
前記反応液の表面張力が、25℃において、55mN/N以下である、
請求項1?5のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項7】
前記反応液が、反応液の次に付与されるインクの受容層となる成分、並びに、カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
請求項1?6のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項8】
前記反応液に含まれる、前記受容層となる成分、並びに、前記カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種(単位:g)と、前記第1インクに含まれる色材(単位:g)との質量比(色材:群より選ばれる少なくとも1種)が、7:1?70:1である、
請求項7に記載の記録方法。
【請求項9】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる多価金属塩のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比(色材:多価金属塩)が、1000:1?31000:1である、
請求項1?8のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項10】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる有機酸のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比(色材:有機酸)が、800:1?5500:1である、
請求項1?9のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項11】
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の単位面積当たりの、前記反応液に含まれる、前記第1インク及び前記第2インクの受容層となる成分、並びに、カチオン性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の質量(単位:g)と、前記第1インクに含まれる色材の質量(単位:g)との比(色材:群より選ばれる少なくとも1種)が、7:1?70:1である、
請求項1?10のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項12】
前記第1工程と前記第2工程における、前記被記録媒体の表面温度が40℃以下である、
請求項1?11のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項13】
前記反応液付与工程後で前記第1工程前に、前記被記録媒体を加熱する工程を備える、
請求項1?12のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項14】
前記反応液付与工程における前記被記録媒体の表面温度が40℃以下である、
請求項1?13のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項15】
前記揮発量が、10?80%である、
請求項1?14のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項16】
前記揮発量が、10?60%である、
請求項1?15のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項17】
前記加熱する工程における前記被記録媒体の表面温度が45℃以下であり、
前記非吸収性被記録媒体又は前記低吸収性被記録媒体の、前記第1インクと前記第2インクを重ねて付与する領域における、単位面積当たりの、前記反応液に含まれる前記凝集剤のモル数(単位:mol)と、前記第1インク及び前記第2インクに含まれる色材の総質量(単位:g)との比Eが、800:1?16000:1である、
請求項1?16のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項18】
前記非吸収性被記録媒体が、インク吸収層を有していないプラスチックフィルムであり、
前記低吸収性被記録媒体が、塗工紙である、
請求項1?17のいずれか1項に記載の記録方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-01 
出願番号 特願2014-109749(P2014-109749)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C09D)
P 1 651・ 112- YAA (C09D)
P 1 651・ 537- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 川端 修
木村 敏康
登録日 2018-08-24 
登録番号 特許第6388249号(P6388249)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 インクセット及びそれを用いた記録方法  
代理人 田中 克郎  
代理人 田中 克郎  
復代理人 竹内 工  
復代理人 赤堀 龍吾  
復代理人 赤堀 龍吾  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 稲葉 良幸  
復代理人 竹内 工  

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