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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B08B
管理番号 1357674
異議申立番号 異議2019-700150  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-26 
確定日 2019-11-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6380557号発明「タイヤの洗浄システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6380557号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7、8、9について訂正することを認める。 特許第6380557号の請求項1-9に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6380557号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)11月4日(優先権主張2015年11月11日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月29日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年 2月26日 : 特許異議申立人による特許異議の申立て
令和 元年 5月30日付け: 取消理由通知書
令和 元年 8月 5日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 元年 9月26日 : 特許異議申立人による意見書の提出

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とする」と記載されているのを、
「前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つの前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とする」 に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラを備え、このカメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした請求項1?6のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。」と記載されているのを、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。」 に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて前記タイヤの内面に前記レーザ光を照射して洗浄を行い、前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて前記洗浄状態の把握を行い、前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行う構成にした請求項7に記載のタイヤの洗浄システム。」と記載されているのを、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラと、洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、前記タイヤの内面に前記レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。」 に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサを備え、この温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした請求項1?8のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。」と記載されているのを、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。」 に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1におけるタイヤの内面に沿って相対移動させる「レーザヘッド」に関して「前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つの」レーザヘッドであることを限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
また、明細書の段落【0045】に「レーザヘッド4は複数を設けることもできる。」と記載され、段落【0046】に「それぞれのレーザヘッド4のレーザ照射幅を異ならせることもでき、同じにすることもできる。」と記載され、段落【0047】に「1本のアーム6を有する仕様において、複数のレーザヘッド4を備えた場合は、洗浄するタイヤTに最適なレーザヘッド4を1つ選択して洗浄を行う。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、レーザヘッドを限定したものといえるから、新規事項の追加に該当せず、さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1?6のいずれかを引用する記載であったものを、請求項2?6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについての請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?6のいずれかを引用する請求項7を引用する記載であったものを、請求項2?6を引用しないものとした上で、請求項1及び請求項7を引用するものについての請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1?8のいずれかを引用する記載であったものを、請求項2?8を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについての請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1?9について、請求項2?9は、請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項2?4に係る訂正は、上記(2)?(4)で検討したとおり認められるものであるところ、特許権者から、請求項7、8、9について訂正が認められるときは一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項7、8、9については、請求項ごとに訂正することを認める。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、7、8、9について訂正を認める。

第3.本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?請求項9に係る発明(以下、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明1」という。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つの前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項2】
前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項3】
前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1または2に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項4】
前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした請求項1?3のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項5】
前記タイヤの仕様情報が前記制御装置に入力されていて、前記仕様情報に基づいて、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした請求項1?4のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項6】
前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした請求項5に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項7】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項8】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラと、洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、前記タイヤの内面に前記レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項9】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。」

第4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?7、及び9に係る特許に対して令和元年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.理由1(新規性)
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明、又は、甲第11号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項3に係る発明は、甲第6号証に記載された発明、又は、甲第11号証に記載された発明であるから、請求項3に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
よって、訂正前の請求項1、2及び3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2.理由2(進歩性)
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明、又は、甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明又は甲第11号証に記載された発明のいずれかと周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項3に係る発明は、甲第6号証に記載された発明又は甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明のいずれかと周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証又は甲第11号証に記載された発明のいずれかと甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項5及び6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明又は甲第11号証に記載された発明のいずれかと甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、訂正前の請求項5及び6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と周知技術及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5及び6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明又は甲第11号証に記載された発明のいずれかと甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、訂正前の請求項7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と周知技術及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明又は甲第11号証に記載された発明のいずれかと甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、訂正前の請求項9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と周知技術及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、訂正前の請求項1ないし7及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5.甲第1号証ないし甲第11号証
1.甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第1号証(欧州特許出願公開第2857113号明細書)には、「Verfahren zum Reinigen einer Oberflache eines Hohlraums(中空空間の表面を洗浄する方法)」に関して、次のような記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。また、括弧内の翻訳文は、異議申立人による翻訳文を参考として当審において作成したものである。なお、便宜的に、独文のウムラウトについてはウムラウトの記号を省略し、エスツェットについてはsで代用して表記した。以下同様。)。
ア.「[0001] Die Erfindung betrifft ein Verfahren zum Reinigen einer Oberflache eines Hohlraums in einer Reifenform oder in einem Reifen mittels einer Reinigungsvorrichtung, wobei zunachst eine Symmetrieachse der Reifenform bzw. des Reifen und die Reinigungsvorrichtung zueinander ausgerichtet, sodann eine Mehrzahl von Startpositionen eines Prozesskopfs der Reinigungsvorrichtung eingerichtet und schlieslich nacheinander in den Startpositionen ein Laserstrahl aus dem Prozesskopf auf die Oberflache fokussiert und der Prozesskopf auf jeweils einer Kreisbahn um die Symmetrieachse und dabei der Laserstrahl uber die Oberflache gefuhrt wird.」([0001]本発明は、洗浄装置を用いてタイヤ鋳型内又はタイヤ内の中空空間の表面を洗浄する方法に関する。まずタイヤ鋳型若しくはタイヤの対称軸と洗浄装置とを互いに対して整列させ、次に洗浄装置の処理ヘッドの複数の開始位置を調整し、最後に開始位置において逐次、処理ヘッドからのレーザ光線を表面に集束させ、対称軸周りの円軌道上にそれぞれ処理ヘッドを誘導し、その際表面を滑るようにレーザ光線を誘導する。)

イ.「[0004] Mit denselben Vorrichtungen und Verfahren konnen auch Reifen an ihrer Innenseite von Produktionsruckstanden befreit werden.」([0004]同じ装置及び方法を用いてタイヤの内側から製造残留物を排除することができる。)

ウ.「[0006] Aus JP H11 99 524 A und JP H09 277 272 A gehen Verfahren zum Reinigen einer Oberflache eines Hohlraums in einer Reifenform als bekannt hervor. EP 1 604 809 A1 und EP 2 674 287 A1 befassen sich mit Verfahren zum Reinigen einer Oberflache eines Hohlraums in einem Reifen.」([0006]JPH1199524A及びJPH09277272A から、タイヤ鋳型内の中空空間の表面を洗浄する方法が周知のものとしてわかる。EP1604809A1及びEP2674287A1はタイヤ内の中空空間の表面を洗浄する方法に取り組んでいる。)

エ.「[0024] Die in den Figuren 1 a und 1 b sowie in Figur 2 gezeigte Reinigungsvorrichtung 1 weist an einem nicht dargestellten Gestell zunachst einen Hubantrieb 2, an dem Hubantrieb 2 einen Drehantrieb 3, an dem Drehantrieb 3 einen Radialantrieb 4 und an dem Radialantrieb 4 einen Prozesskopf 5 auf.
[0025] Der Prozesskopf 5 der Reinigungsvorrichtung 1 besteht im Wesentlichen aus einem Rohr 6 und weist einen Langsachsantrieb 7 auf, mittels dessen das Rohr 6 um seine Langsachse 8 rotierbar ist. Auserdem weist der Prozesskopf 5 einen Querachsantrieb 9 auf, mittels dessen ein am freien Ende 10 des Rohrs 6 angebrachtes Austrittselement 11 um eine quer zu der Langsachse 8 liegende Querachse 12 rotierbar ist. Durch Rotieren um Langsachse 8 und Querachse 12 kann das Austrittselement 11 in jede Raumrichtung ausgerichtet werden.」([0024]図1a及び1b並びに図2に示される洗浄装置1は、まず図示されないフレームに昇降アクチュエータ2を有し、昇降アクチュエータ2に回転アクチュエータ3を有し、回転アクチュエータ3に半径方向アクチュエータ4を有し、半径方向アクチュエータ4に処理ヘッド5を有する。
[0025]洗浄装置1の処理ヘッド5は実質的に管材6から構成されており、管材6をその長手軸8の周りで回転可能にする長手軸アクチュエータ7を有する。さらに処理ヘッド5は、管材6の自由端10に取り付けられた流出要素11を長手軸8の横手方向にある横手軸12の周りで回転可能にする横手軸アクチュエータ9を有する。長手軸8及び横手軸12の周りでの回転により、流出要素11をどの空間方向にも整列させることができる。)

オ.「[0026] Die Reinigungsvorrichtung 1 weist einen nicht dargestellten Infrarot-Scheibenlaser auf mit einer gepulsten Lichtleistung von etwa 750 W und einer Wellenlange von etwa 1030 nm. Ein (erst in den Figuren 3 und 4 dargestellter) Laserstrahl 13 aus dem Laser wird am freien Ende 10 des Rohrs 6 mittels eines ersten Spiegels 14 in Richtung der Querachse 12 und in dem Austrittselement 11 mittels eines zweiten Spiegels 15 in die gewunschte Raumrichtung jeweils um einen rechten Winkel umgelenkt.」([0026]洗浄装置1は、図示されないパルス光出力約750W及び波長約1030nmの赤外線ディスクレーザを有する。レーザからの(最初に図3及び4に示される)レーザ光線13は、管材6の自由端10で第1の鏡14を用いて横手軸12の方向に、流出要素11内で第2の鏡15を用いて所望の空間方向にそれぞれ直角だけ方向転換される。)

カ.「[0029] Eine erste beispielhafte Anwendung der Reinigungsvorrichtung 1 illustriert Figur 3: Auf dem Werkstucktisch ist eine nur stilisiert dargestellte Reifenform 16 abgelegt, mittels derer in einer Heizpresse ein Luftreifen fur einen Kraftwagen aus einem Reifenrohling gebacken werden kann. In einer zweiten beispielhaften Anwendung liegt gemas Figur 4 auf dem Werkstucktisch ein gleichfalls stilisierter Reifen 17, namlich ein Luftreifen fur einen Kraftwagen. Die Reifenform 16 und der Reifen 17 weisen jeweils eine im Wesentlichen parallel zu ihrer Symmetrieachse 18 liegende, zylinderformige Laufflache 19 und eine im Wesentlichen quer zur Laufflache 19 verlaufende Seitenwand 20 auf. In den Figuren 3 und 4 sind der Strahlenverlauf des Laserstrahls 13 und die zur Strahlformung erforderliche Optik vereinfacht dargestellt.」([0029]図3は洗浄装置1の第1の適用例を説明する。部材支持台の上には単に定型的に示されたタイヤ鋳型16が置かれている。そのタイヤ鋳型を用いて熱プレスで、タイヤ生材から成る自動車用の空気タイヤを「焼く」ことができる。第2の適用例では図4によれば、部材支持台の上に同じく定型化されたタイヤ17、即ち自動車用の空気タイヤがある。タイヤ鋳型16及びタイヤ17はそれぞれ、その対称軸18に対してほぼ平行である円柱形の走行面19、及び走行面19に対してほぼ横手方向に通る側壁20を有する。図3及び4ではレーザ光線13の光束軌跡と光束形成に必要な光学部品とが簡易的に示されている。)

キ.「[0031] Dann werden Startpositionen des Prozesskopfs 5 innerhalb des Kreiszylinders 21 eingerichtet. Zu jeder Startposition werden die Einstellungen der Antriebe und der Stelloptik in einem Steuerungsmodul der Reinigungsvorrichtung 1 gespeichert.」([0031]次に円柱21の内部で処理ヘッド5の開始位置を調整する。各々の開始位置に対するアクチュエータ及び調節光学部品の調節値を洗浄装置1の制御モジュール内に保存する。)

ク.「[0033] Anschliesend wird der Prozesskopf 5 mittels des Drehantriebs 3 um die Symmetrieachse 18 rotiert, so dass der Prozesskopf 5 ausgehend von der Startposition eine Kreisbahn um die Symmetrieachse 18 innerhalb des Kreiszylinders 21 beschreibt. Hierbei beschreibt der Laserstrahl 13 ausgehend von dem Auftreffpunkt eine Kreisbahn auf der Oberflache und reinigt diese.」([0033]続いて回転アクチュエータ3を用いて処理ヘッド5を対称軸18周りに回転させるため、処理ヘッド5は開始位置から始めて、円柱21の内部で対称軸18周りの円軌道を描く。この際レーザ光線13は衝撃点から始めて表面上の円軌道を描き、この表面を洗浄する。)

ケ.「Patentanspruche
1. Verfahren zum Reinigen einer Oberflache einesHohlraums in einer Reifenform (16) oder in einem Reifen (17) mittels einer Reinigungsvorrichtung (1), wobei zunachst eine Symmetrieachse (18) der Reifenform (16) bzw. des Reifen (17) und die Reinigungsvorrichtung (1) zueinander ausgerichtet, sodann eine Mehrzahl von Startpositionen eines Prozesskopfs (5) der Reinigungsvorrichtung (1) eingerichtet und schlieslich nacheinander in den Startpositionen ein Laserstrahl (13) aus dem Prozesskopf (5) auf die Oberflache fokussiert und der Prozesskopf (5) auf jeweils einer Kreisbahn um die Symmetrieachse (18) und dabei der Laserstrahl (13) uber die Oberflache gefuhrt wird, dadurch gekennzeichnet, dass zunachst ein gerader Kreiszylinder (21) um die Symmetrieachse (18) bestimmt wird, innerhalb dessen der Prozesskopf (5) auf jeder der Kreisbahnen einen Sicherheitsabstand (22) zu der Oberflache einhalt, und dass die Startpositionen innerhalb des Kreiszylinders (21) eingerichtet werden.」(特許請求の範囲 1.洗浄装置(1)を用いてタイヤ鋳型(16)内又はタイヤ(17)内の中空空間の表面を洗浄する方法であって、まず前記タイヤ鋳型(16)若しくは前記タイヤ(17)の対称軸(18)と前記洗浄装置(1)とを互いに対して整列させ、次に前記洗浄装置(1)の処理ヘッド(5)の複数の開始位置を調整し、最後に前記開始位置において逐次、前記処理ヘッド(5)からのレーザ光線(13)を前記表面に集束させ、前記対称軸(18)周りの円軌道上にそれぞれ前記処理ヘッド(5)を誘導し、その際前記表面を滑るように前記レーザ光線(13)を誘導する、方法であり、まず、その内部において前記処理ヘッド(5)が前記円軌道上でそれぞれ前記表面に対する安全距離(22)を維持し、前記対称軸(18)周りの直円柱(21)を画定し、前記円柱(21)の内部で前記開始位置を調整することを特徴とする方法。)

コ.上記ア.、エ.、オ.及びキ.ならびに図3及び図4の記載から、流出要素11は、赤外線ディスクレーザからのレーザ光線13をタイヤ17内の中空空間に照射するものであることが理解できる。

サ.上記ア.、エ.ならびに図1b及び図4の記載から、アクチュエータ2?4、7及び自由端10は、流出要素11を保持するものであることが理解できる。

シ.上記キ.には、洗浄装置1は、各々の開始位置に対するアクチュエータ及び調節光学部品の調節値を保存した制御モジュールを備えることが記載されており、かかる記載と技術常識から、制御モジュールは、タイヤ17と流出要素11の少なくとも一方の動きを制御して、タイヤ17と流出要素11の相対位置を変化させるものであることが理解できる。

ス. 上記イ.、エ.、オ.及びキ.ならびに図4の記載から、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光線13を照射してタイヤ17内の中空空間に付着している製造残留物を照射したレーザ光線13によって除去してタイヤ17内の中空空間を洗浄することが理解できる。

セ.上記エ.、オ.、キ.ならびに図1b及び図4の記載から、アクチュエータ2?4、7及び自由端10が流出要素11を3次元に自在移動させるアクチュエータ2?4、7及び自由端10であり、このアクチュエータ2?4、7及び自由端10により流出要素11を移動させながら前記レーザ光線13を照射することが理解できる。

ソ.上記ア.ないしケ.の記載から、甲第1号証には、タイヤの洗浄システムに関する発明が記載されていることが理解できる。

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)及び図面を総合すると、甲第1号証には次の発明が記載されている。

ア.甲1発明1
「赤外線ディスクレーザと、この赤外線ディスクレーザからのレーザ光線13をタイヤ17内の中空空間に照射する流出要素11と、この流出要素11を保持するアクチュエータ2?4、7及び自由端10と、前記タイヤ17と前記流出要素11の少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤ17と前記流出要素11の相対位置を変化させる制御モジュールとを備え、前記流出要素11を前記タイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光線13を照射して前記タイヤ17内の中空空間に付着している製造残留物を照射した前記レーザ光線13によって除去して前記タイヤ17内の中空空間を洗浄するタイヤの洗浄システム。」

イ.甲1発明2
「甲1発明1において、
前記アクチュエータ2?4、7及び自由端10が前記流出要素11を3次元に自在移動させるアクチュエータ2?4、7及び自由端10であり、このアクチュエータ2?4、7及び自由端10により前記流出要素11を移動させながら前記レーザ光線13を照射する構成にしたタイヤの洗浄システム。」

2.甲第2号証
(1)甲第2号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第2号証(独国実用新案第202012104243号明細書)には、「洗浄装置」に関して、次のような記載がある。

ア.「[0001] Die vorliegende Erfindung betrifft eine Reinigungsvorrichtung zum Entfernen von auf den Innenflachen von Fahrzeugreifen vorhandenen Verunreinigungen.」([0001]本発明は、車両用タイヤの内面上にある不純物を除去するための洗浄装置に関する。)

イ.「[0009] Ausgehend von diesem Stand der Technik ist es eine Aufgabe der vorliegenden Erfindung, eine Reinigungsvorrichtung zum Entfernen von auf den Innenflachen von Fahrzeugreifen vorhandenen Verunreinigungen zu schaffen, die einen alternativen Aufbau aufweist und eine schnelle, einfache, bequeme und preiswerte Reinigung ermoglicht.」([0009]この従来技術にもとづき、本発明の課題は、代わりの構造を有し、迅速で容易、快適で安価な洗浄を可能にする、車両用タイヤの内面にある不純物を除去するための洗浄装置を作り出すことである)

ウ.「[0033] Die Reinigungsvorrichtung 1 umfasst ein Lasersystem 2 mit einer Laserquelle 3 und einem Bearbeitungskopf 4 , der uber Strahlfuhrungsmittel 6 mit der Laserquelle 3 verbunden ist. Bei der Laserquelle 3 kann es sich beispielsweise um einen Faserlaser, einen Nd:YAG-Laser, einen CO_(2)-Laser oder dergleichen handeln. Die Ausbildung der Strahlfuhrungsmittel 6 ist in erster Linie von der Art der verwendeten Laserquelle 3 abhangig. So kann es sich bei den Strahlfuhrungsmitteln 6 beispielsweise um Lichtleitfasern, um Spiegelsysteme oder dergleichen handeln. Der Bearbeitungskopf 4 ist mit einer integrierten Laseroptik versehen und weist einen nicht naher dargestellten Laserscanner auf, der den Laserstrahl innerhalb eines vorbestimmten Scanbereiches 7 in definierten Bahnen bewegt. Der Bearbeitungskopf 4 kann sowohl vertikal in Richtung des Doppelpfeils 10 auf- und abwarts als auch horizontal in Richtung des Doppelpfeils 11 vor und zuruck bewegt werden. Ferner kann der Bearbeitungskopf 4 auch in zwei Winkelrichtungen verstellt werden, was vorliegend jedoch nicht naher dargestellt ist. Alternativ kann das Lasersystem auch mehrere Bearbeitungskopfe mit jeweils integriertem Laserscanner aufweisen, wobei die Scanbereiche der einzelnen Laserscanner relativ zueinander und einander uberlappend einstellbar sind und gemeinsam einen variablen Bearbeitungsbereich definieren. Durch das Vorsehen mehrerer Bearbeitungskopfe kann das Lasersystem 2 flexibler an ausere Vorgaben angepasst werden. Ferner kann die Bearbeitungszeit reduziert werden. 」([0033]洗浄装置1は、レーザ光源3を有するレーザシステム2と光線誘導手段6を介してレーザ光源3と接続されている処理ヘッド4とを含む。レーザ光源3として例えばファイバレーザ、Nd:YAGレーザ、CO_(2)レーザ等を挙げることができる。光線誘導手段6の開発はまず、使用される光源3の種類に依存している。光線誘導手段6として光誘導ファイバ、鏡システム等を挙げることができる。処理ヘッド4は組み込み済みのレーザ光学部品を備えており、レーザ光線を所定の走査領域7の内部において所定の経路で移動させる、詳細には示されていないレーザスキャナを有する。処理ヘッド4は鉛直方向(二頭矢印10の方向)に上下にも、水平方向(二頭矢印11の方向)に前後にも移動され得る。さらに処理ヘッド4を2つの角度方向でも調節することができるが、本件では詳細には示されていない。代わりにレーザシステムは、レーザスキャナがそれぞれ組み込まれた複数の処理ヘッドも有してもよい。個別のレーザスキャナの走査領域は互いに対して、互いに重なり合うように調節可能であり、共同で可変の処理領域を画定する。複数の処理ヘッドを設けることによりレーザシステム2を柔軟に外部仕様に合わせることができる。さらに処理時間を削減することができる。)

エ.「[0034] Die Reinigungsvorrichtung 1 umfasst ferner ein Reifenhandhabungssystem 12 , das, wie es nachfolgend noch naher beschrieben wird, zum Halten eines Fahrzeugreifens 13 , zum automatischen Drehen des gehaltenen Fahrzeugreifens 13 um die Fahrzeugreifenrotationsachse 14 sowie zum automatischen Aufspreizen des Reifenwulstes 15 des gehaltenen Fahrzeugreifens 13 ausgelegt ist. Das Reifenhandhabungssystem 12 weist eine Halteelemente 16 aufweisende Halteeinheit 17 auf, die derart ausgebildet und angeordnet ist, dass ihre Halteelemente 16 in einen Fahrzeugreifen 13 eingefuhrt und mit einer ersten Innenseite 18 des Reifenwulstes 15 in Eingriff gebracht werden konnen. Ferner weist das Reifenhandhabungssystem 12 eine Gegenhalteelemente 19 aufweisende Gegenhalteeinheit 20 auf, die derart ausgebildet und angeordnet ist, dass ihre Gegenhalteelemente 19 in den Fahrzeugreifen 13 eingefuhrt und mit einer zweiten, der ersten Innenseite 18 gegenuberliegend angeordneten Innenseite 21 des Reifenwulstes 15 in Eingriff gebracht werden konnen. Die Halteelemente 16 der Halteeinheit 17 und die Gegenhalteelemente 19 der Gegenhalteeinheit 20 sind bei der vorliegenden Ausfuhrungsform hierzu jeweils entlang eines Kreisumfangs in bevorzugt gleichmasigen Abstanden zueinander angeordnet und konnen in radialer Richtung vor und zuruck bewegt werden, wie es durch die Doppelpfeile 22 in Fig. 2 angedeutet ist. Die Halteelemente 16 und die Gegenhalteelemente 19 sind jeweils im Wesentlichen L-formig ausgebildet und drehfest an sich in radialer Richtung erstreckenden Zahnstangen 23 angeordnet, wobei jede der Zahnstangen 23 uber ein zugeordnetes, vorliegend nicht sichtbares Zahnrad radial vor und zuruck bewegbar ist. Die Zahnrader sind uber Kardangelenke 24 mit integrierter Langenkompensation miteinander verbunden, wobei zumindest eines der Zahnrader oder Kardangelenke 24 mit einem nicht naher dargestellten Motor drehend antreibbar ist. Die Drehbewegung des Motors wird entsprechend auf die Kardangelenke 24 und die Zahnrader ubertragen, so dass die Zahnstangen 23 und die daran gehaltenen Halteelemente 16 und Gegenhalteelemente 19 synchron vor und zuruck bewegt werden. Die Gegenhalteelemente 19 der Gegenhalteeinheit 20 sind im Bereich ihres freien Endes in denjenigen Bereichen, mit denen sie im bestimmungsgemasen Zustand mit einem Fahrzeugreifen 13 in Eingriff kommen, wie es nachfolgend noch naher erlautert wird, mit Rollkorpern 25 und 26 versehen, die frei drehbar an den Gegenhalteelementen 19 gehalten sind.」([0034]洗浄装置1はさらに、後にさらに詳述されるように車両用タイヤ13を保持し、保持された車両用タイヤ13を車両用タイヤ回転軸14の周りに自動的に回転させ、保持された車両用タイヤ13のタイヤビード15を自動的に外側に開くように設計されているタイヤ操作システム12を含む。タイヤ操作システム12は、保持要素16を有する保持ユニット17を有し、この保持ユニットは、その保持要素16が車両用タイヤ13に挿入され得るとともにタイヤビード15の第1の内側18と噛合され得るように形成され、配置されている。さらにタイヤ操作システム12は、対向保持要素19を有する対向保持ユニット20を有し、この対向保持ユニットは、その対向保持要素19が車両用タイヤ13に挿入され得るとともに第1の内側18に対向するように配置されたタイヤビード15の第2の内側21と噛合され得るように形成され、配置されている。保持ユニット17の保持要素16及び対向保持ユニット20の対向保持要素19は、本実施形態ではこれに関してそれぞれ円周に沿って好ましくは互いに対して均等な間隔で配置されており、図2で二頭矢印22により示されているように半径方向に前後に移動され得る。保持要素16及び対向保持要素19はそれぞれほぼL形状に形成されており、半径方向に延びる平板歯車23に配置されている。平板歯車23の各々は、本件では示されていない対応する歯車を介して半径方向の前後に移動可能である。歯車は、長さ補正を組み込んだカルダン継手24を介して互いに接続されており、歯車又はカルダン継手24のうちの少なくとも1つは、詳細には示されていないモータで回転駆動可能である。それに応じてモータの回転運動がカルダン継手24及び歯車に伝えられるので、歯車平板23並びにその歯車平板に保持された保持要素16及び対向保持要素19は同期して前後に移動される。対向保持ユニット20の対向保持要素19は、それらの自由端の領域において、後にさらに詳述されるように対向保持要素が規定通りの状態で車両用タイヤ13と噛合するような領域に、対向保持要素19に自由に回転可能に保持されている回転体25及び26を備えている。)

オ.「[0039] In einem weiten Schritt wird der Schwenkarm 29 derart verschwenkt, dass die Halteeinheit 17 mit dem daran gehaltenen Fahrzeugreifen 13 oberhalb der Gegenhalteeinheit 20 zentrisch zu den Gegenhalteelementen 19 positioniert wird, wie es in Fig. 7 dargestellt ist. Nunmehr werden die Gegenhalteelemente 19 der Gegenhalteeinheit 20 in Richtung der Pfeile 22 radial einwarts bewegt, bis der durch diese beschriebene Ausendurchmesser geringer als der Durchmesser der Offnung 30 des Fahrzeugreifens 13 ist. Im Anschluss wird die Halteeinheit 17 in Richtung des Pfeils 27 vertikal abgesenkt, so dass die Gegenhalteelemente 19 in den Fahrzeugreifen 13 eingefuhrt werden. In einem weiteren Schritt werden die Gegenhalteelemente 19 in Richtung der Pfeile 22 radial auswarts bewegt, bis die am freien Ende der Gegenhalteelemente 19 vorgesehenen Rollkorper 25 oberhalb des Reifenwulstes 15 des Fahrzeugreifens 13 positioniert und die Rollkorper 26 mit der Ausenkante des Reifenwulstes 15 in Eingriff sind. Nunmehr wird die Halteeinheit 17 in Richtung des Pfeils 27 wieder vertikal angehoben, bis die Rollkorper 25 der Gegenhalteelemente 19 mit der Innenseite 21 des Reifenwulstes 15 in Eingriff kommen, wie es in Fig. 8 gezeigt ist. Wird die Halteeinheit 17 ausgehend von dieser Position weiter vertikal aufwarts in Richtung des Pfeils 27 bewegt, so wird der Reifenwulst 15 nach und nach aufgespreizt. Diese Aufspreizbewegung wird fortgesetzt, bis der Reifenwulst 15 in dem zu reinigenden Bereich der Innenflache des Fahrzeugreifens 13 keine fur den Laser unzuganglichen Hinterschneidungsbereiche mehr bildet.
[0040] In einem weiteren Schritt wird nunmehr der Bearbeitungskopf 4 des Lasersystems 2 in Richtung der Pfeile 10 und 11 derart bewegt, dass er in den Fahrzeugreifen 13 eingefuhrt und zur Bearbeitung der Innenflache des Fahrzeugreifens 13 optimal positioniert wird. Im Anschluss kann die Laserbearbeitung der Innenflache des Fahrzeugreifens 13 - wie in Fig. 1 schematisch dargestellt - erfolgen, wobei die Halteeinheit 17 gleichmasig zusammen mit dem an dieser gehaltenen Fahrzeugreifen 13 gedreht wird. Wahrend dieser Drehbewegung rollen die Rollkorper 25 und 26 der ortsfesten Gegenhalteeinheit 20 auf der Innenseite 21 des Reifenwulstes 15 ab. Der Scanbereich 7 ist dabei auf die Breite des Fahrzeugreifens abgestimmt.」([0039]その先の工程では、図7に示されているように、車両用タイヤ13が保持された保持ユニット17を対向保持ユニット20の上方に対向保持要素19に対して中心に位置決めするように、旋回アーム29を旋回する。ここで対向保持ユニット20の対向保持要素19は、これらの対向保持要素が描く外径が車両用タイヤ13の開口部30の直径よりも小さくなるまで矢印22の方向に半径方向内側に移動される。続いて保持ユニット17が矢印27の方向に鉛直方向に下降されるので、対向保持要素19が車両用タイヤ13に挿入される。その先の工程では、対向保持要素19の自由端に設けられた回転体25が車両用タイヤ13のタイヤビード15の上方に配置されるとともに回転体26がタイヤビード15の外縁と噛合するまで、対向保持要素19を矢印22の方向に半径方向外側に移動させる。ここで、図8に示されているように対向保持要素19の回転体25がタイヤビード15の内側21と噛合するようになるまで、保持ユニット17を矢印27の方向に再び鉛直方向に持ち上げる。保持ユニット17をこの位置から始めて再び鉛直方向上方に矢印27の方向に移動させると、タイヤビード15が徐々に外側に開かれる。車両用タイヤ13の内面の洗浄されるべき領域においてレーザが到達し得ないアンダーカット領域がもはや形成されなくなるまで、タイヤビード15のこの外側に開く運動は継続される。
[0040]その先の工程では、ここでレーザシステム2の処理ヘッド4は、車両用タイヤ13に挿入されるとともに車両用タイヤ13の内面を処理するのに最適に位置決めされるように矢印10及び11の方向に移動される。続いて図1で概略的に示されているような車両用タイヤ13の内面のレーザ処理を行うことができる。その際、保持ユニット17は、この保持ユニットに保持された車両用タイヤ13と協働して均等に回転する。この回転運動の間、位置固定の対向保持ユニット20の回転体25及び26は、タイヤビード15の内側21上に展開される。その際、走査領域7 は車両用タイヤの幅に調整されている。)

カ.「Schutzanspruche
1. Reinigungsvorrichtung (1) zum Entfernen von auf Innenflachen von Fahrzeugreifen (13 ) vorhandenen Verunreinigungen, umfassend ein Lasersystem(2), das zumindest einen Bearbeitungskopf(4) mit integrierter Laseroptik aufweist, und ein Reifenhandhabungssystem (12 ) zum Handhaben eines Fahrzeugreifens (13 ), das zum Halten eines Fahrzeugreifens (13), zum automatischen Drehen des gehaltenen Fahrzeugreifens(13) um die Fahrzeugreifenrotationsachse(14) sowie zum automatischen Aufspreizen des Reifenwulstes (15 ) des gehaltenen Fahrzeugreifens (13 ) ausgelegt ist.」(請求項1 車両用タイヤ(13)の内面上にある不純物を除去するための洗浄装置(1)であって、レーザ光学部品を組み込んだ少なくとも1つの処理ヘッド(4)を有するレーザシステム(2)と、車両用タイヤ(13) を保持し、前記保持された車両用タイヤ(13)を車両用タイヤ回転軸(14)の周り に自動的に回転させ、前記保持された車両用タイヤ(13)のタイヤビード(15) を自動的に外側に開くように設計されている、車両用タイヤ(13)を操作するためのタイヤ操作システム(12)とを含む洗浄装置。)

キ.上記ウ.及び図1の記載ならびに技術常識から、洗浄装着1の処理ヘッド4が、レーザ光源3から供給されるレーザ光線を車両用タイヤ13の内面に照射することが理解できる。

ク.上記ウ.ないしオ.及び図1の記載から、車両用タイヤ13と処理ヘッド4の少なくとも一方の動きを制御して、車両用タイヤ13と処理ヘッド4の相対位置を変化させる制御装置を備えることが理解できる。

ケ.上記ウ.ないしオ.及び図1の記載ならびに技術常識から、処理ヘッド4を車両用タイヤ13の内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光線を照射して車両用タイヤ13の内面に付着している不純物を照射した前記レーザ光線によって除去して車両用タイヤ13の内面を洗浄することが理解できる。

コ.上記エ.及びオ.の記載ならびに技術常識から、車両用タイヤ13を所定位置に維持したまま回転させる保持ユニット17を備え、この保持ユニット17により前記車両用タイヤ13を回転させながらレーザ光線を照射することが理解できる。

サ.上記エ.ならびに図1、2及び8の記載から、車両用タイヤ13のそれぞれのタイヤビード15を保持する保持ユニット17及び対向保持ユニット20を備え、この保持ユニット17及び対向保持ユニット20により、それぞれのタイヤビード15どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にしてレーザ光線を照射することが理解できる。

シ.上記ア.ないしカ.の記載から、甲第2号証には、タイヤの洗浄システムに関する発明が記載されていることが理解できる。

(2)甲第2号証に記載された発明
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第2号証には次の発明が記載されている。

ア.甲2発明1
「レーザ光源3と、このレーザ光源3から供給されるレーザ光線を車両用タイヤ13の内面に照射する処理ヘッド4と、前記車両用タイヤ13と前記処理ヘッド4の少なくとも一方の動きを制御して、前記車両用タイヤ13と前記処理ヘッド4の相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記処理ヘッド4を前記車両用タイヤ13の内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光線を照射して前記車両用タイヤ13の内面に付着している不純物を照射した前記レーザ光線によって除去して前記車両用タイヤ13の内面を洗浄するタイヤの洗浄システム。」

イ.甲2発明2
「甲2発明1において、
車両用タイヤ13を所定位置に維持したまま回転させる保持ユニット17を備え、この保持ユニット17により前記車両用タイヤ13を回転させながらレーザ光線を照射する構成にしたタイヤの洗浄システム。」

ウ.甲2発明3
「甲2発明1又は2において、
前記車両用タイヤ13のそれぞれのタイヤビード15を保持する保持ユニット17及び対向保持ユニット20を備え、この保持ユニット17及び対向保持ユニット20により、前記それぞれのタイヤビード15どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にしてレーザ光線を照射する構成にしたタイヤの洗浄システム。」

3.甲第3号証
(1)甲第3号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第3号証(特開2007-168242号公報)には、「トレッド内面仕上げ装置」に関して、次のような記載がある。

ア.「【請求項1】
タイヤのトレッド内面に、制音用の帯状スポンジ材をタイヤ周方向に貼り付けるバフ仕上げ領域をタイヤ周方向に形成するタイヤのトレッド内面仕上げ装置であって、
起立状態でタイヤを保持しかつ回転駆動しうるタイヤ保持駆動具、
及びこのタイヤ保持駆動具により保持されたタイヤの内腔に、そのビードシート孔から挿入取出しでき、かつ挿入後のタイヤ半径方向への移動により外周面がトレッド内面に接する円盤状のバフを有するタイヤバフ具を具えるとともに、
前記タイヤ保持駆動具による前記タイヤのタイヤ回転方向と、前記タイヤバフ具によるバフ回転方向とを逆としたことを特徴とするトレッド内面仕上げ装置。」

イ.「【0001】
本発明は、タイヤのトレッド内面をバフ仕上げすることにより、このトレッド内面に、制音用の帯状スポンジ材を貼り付けるためのバフ仕上げ領域を形成するタイヤのトレッド内面仕上げ装置に関する。」

ウ.「【0006】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、前記トレッド内面に、制音用の帯状スポンジ材を貼り付けるためのバフ仕上げ領域を、効率よく形成しうる新規なトレッド内面仕上げ装置を提供することを目的としている。」

エ.「【0010】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は本発明のタイヤのトレッド内面仕上げ装置を略示する正面図である。
図1に示すように、タイヤTのトレッド内面仕上げ装置1(以下仕上げ装置1という)は、起立状態でタイヤTを保持しかつ回転駆動しうるタイヤ保持駆動具2と、保持されたタイヤTの内腔に円盤状のバフ3を挿入取出し可能に有するタイヤバフ具4とを具える。前記タイヤバフ具4は、挿入後の前記バフ3をタイヤ半径方向に移動し、該バフ3の外周面がトレッド内面Tsに接した状態にて、該バフ3をタイヤ回転方向と逆方向に回転させる。これにより、トレッド内面Tsに、制音用の帯状スポンジ材5(図9に示す)をタイヤ周方向に貼り付けるためのバフ仕上げ領域Yをタイヤ周方向に形成しうる。」

オ.「【0028】
又前記タイヤバフ具4では、図5(A)の如く、前記上下移動手段22を作動し、バフ3の軸心と保持されたタイヤTの軸心とがほぼ同心となる高さ位置まで、昇降台28を上下移動する。なお仕上げ装置1には、投入されるタイヤTのサイズデータを記憶する記憶部を有する制御手段37(図1に示す)を具える。前記サイズデータとして、少なくともタイヤ外径を含む諸データを含むことができ、これらは、例えばタイヤTに貼り付けるデータラベルに予め記載し、搬送時又は投入時にデータラベルをリーダにて読み取って記憶部に記憶させることができる。又センサを用いて保持されたタイヤTを測定し、必要なサイズデータを検出して記憶部に記憶させても良い。何れの場合にも、制御手段37は、記憶する前記サイズデータから、昇降台28の上下移動を制御する。」

(2)甲第3号証に記載の事項
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第3号証には次の事項が記載されている。

「バフ仕上げ領域を形成するタイヤのトレッド内面仕上げ装置において、投入されるタイヤTのサイズデータをタイヤTに貼り付けるデータラベルに予め記載し、搬送時又は投入時にデータラベルをリーダにて読み取って制御手段37の記憶部に記憶させること。」

4.甲第4号証
(1)甲第4号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第4号証(特開2010-44030号公報)には、「レーザクリーニング装置およびレーザクリーニング方法」に関して、次のような記載がある。

ア.「【請求項1】
対象物に対してレーザ光を照射し、前記対象物表面に付着した付着物を除去するレーザ光照射部と、
前記対象物に関する情報に基づいて前記レーザ光の照射を制御し、前記対象物に対する前記レーザ照射の影響を抑制する照射制御部と
を備えたことを特徴とするレーザクリーニング装置。」

イ.「【請求項6】
前記レーザ照射の結果を確認する確認部をさらに備え、前記照射制御部は前記確認部による確認結果に基づいて前記レーザ光の照射を制御することを特徴とする請求項1?5のいずれか一つに記載のレーザクリーニング装置。」

ウ.「【0001】
本発明は、対象物の表面に付着した付着物(コンタミネーション)をレーザ照射にて除去するレーザクリーニング装置およびレーザクリーニング方法に関し、特に、半導体ウェハ、ICチップ、LCD(液晶表示デバイス)基板、プリント基板、磁気ヘッド、薄膜ヘッド等の表面に接触して電気的特性の試験や検査を行なうプローブ針をクリーニングするためのレーザクリーニング装置およびレーザクリーニング方法に関する。」

エ.「【0009】
本発明は、上述した従来技術にかかる問題点を解消するためになされたものであり、対象物に熱溶融ダメージを与えることなく付着物を除去するレーザクリーニング装置及びレーザクリーニング方法を提供することを目的とする。」

オ.「【0012】
以下に、本発明にかかるレーザクリーニング装置およびレーザクリーニング方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例1にかかるレーザクリーニング装置であるプローブクリーニング装置1の概要構成を示す概要構成図である。図1に示したプローブクリーニング装置1は、その内部にクリーニング制御部10、プローブ21、プローブカード22、レーザ発生装置31、光学系32、ステージ33、電気特性測定部41および画像取得部42を有する。
【0014】
プローブカード22は、プローブ21を任意の数配置したカードである。光学系32は、レーザ発生装置31で発生したレーザ光をプローブ21に照射するレーザ光照射部である。また、光学系32は、ステージ33に搭載されており、ステージ33の移動によってプローブ21に対する水平方向、垂直方向の位置調整を行なうことができる。
【0015】
電気特性測定部41は、プローブ21が検査対象などに接触した状態で電気特性を測定する測定部である。なお、検査対象物、および検査対象物をプローブ21に接触させるための駆動機構については図示を省略している。画像取得部42は、プローブ21の状態を撮影するカメラユニットである。
【0016】
クリーニング制御部10は、プローブクリーニング装置1におけるプローブのクリーニング、すなわち付着物の除去を制御する制御部であり、その内部に状況確認部11、主制御部12、クリーニング条件データベース13、ステージ制御部14、光学系制御部15、およびレーザ制御部16を有する。
【0017】
状況確認部11は、電気特性測定部41による測定結果や画像取得部42による撮影結果からプローブ21の状態を確認する処理を行なう。また、クリーニング条件データベース13は、プローブの素材や形状などにレーザの照射条件を対応させて保持している。
【0018】
ステージ制御部14は、主制御部12からの制御を受けてステージ33を移動させる処理を行なう。同様に、光学系制御部15は、主制御部12からの制御を受けて光学系32の配置変更を行なって焦点位置やレーザ出射形状を変更する。
【0019】
レーザ制御部16は、主制御部12からの制御を受けて、レーザ発生装置31の動作を制御する。具体的には、レーザ制御部16は、その内部にレーザ出力を設定する出力設定部16a、レーザの出射パルスの繰り返し周波数、すなわちパルス間隔を設定する繰り返し周波数設定部16b、レーザの波長を設定する波長設定部16cおよびパルスの幅を設定するパルス幅設定部16dを有する。
【0020】
主制御部12は、クリーニング処理を全体制御する制御部であり、状況確認部11による確認結果とクリーニング条件データベース13とを参照して、ステージ制御部14、光学系制御部15、レーザ制御部16を制御することで、プローブ21の付着物を除去する。」

カ.「【0027】
一例として、タングステンを材料とする先端約φ20μmのプローブ針先端のコンタミネーションを除去する例を挙げる。波長1064nmの近赤外レーザをパルス幅7nsec、1パルス当たりの照射エネルギ40μJでプローブ針先端正面にレーザ照射を行う。レーザ発振器とプローブ針先端正面の光軸間にはいくつかの光学部品が配置され、レーザビームはプローブ針先端位置で約φ50μmになるよう集光されている。
【0028】
図4は、レーザ光について説明する説明図である。図4に示すように、一定の間隔(周波数F)でレーザ照射を行なう場合、1照射されたレーザビームのパルス幅はPであり、このレーザ照射により照射面の温度は上昇するが、次の1照射されるまでの間に表面からの熱の伝導伝達により冷却が起こり照射面の温度は下がる。
【0029】
しかし繰返し照射されるレーザビームにより照射面の温度は徐々に上昇していく。このように繰返しレーザ照射を続ける場合は照射面の温度上昇に注意しレーザ照射を行う必要がある。本例の場合、レーザ照射と次のレーザ照射までの間隔は0.2秒(5Hz)で行う。」

キ.「【0030】
付着物を除去するためのレーザ照射が終了すると、プローブ先端のコンタミネーションが除去できているかを確認するため、電気特性測定部41によるプローブの電気的特性の測定や画像取得部42が撮影した画像に対する画像認識等の手段で確認して判定を行い、追加のレーザ照射が必要な場合レーザを照射する。そして、照射後に再度電気的特性や画像認識等の手段により確認判定を行う。」

ク.「【0031】
図5は、クリーニング制御部10の処理動作を説明するフローチャートである。クリーニング制御部10は、まず、レーザ照射に先立って、現状に合ったレーザ照射条件の決定を行なう。具体的には、レーザ照射条件の選択を開始し(S101)、プローブ針の材質や形状、付着したコンタミネーションの主な素材等の情報を取得する。これらは本フローチャートの開始前に予め入力された情報を読み出すことで取得できる(S102)。
【0032】
おなじく、クリーニング制御部10は、照射に必要なプローブ針先端部のコンタミネーションの付着状況、例えば接触抵抗値や画像によるコンタミネーションの付着の状況を取得する(S103)。これらの状況はコンタミネーション除去の際取得するもしくは取得した情報である。
【0033】
クリーニング制御部10は、以上の情報を元にデータとして予め持っている複数のレーザ照射条件の中から1条件を決定し(S104)、レーザ照射を行なう(S105)。照射後、クリーニング制御部10は対象のプローブ針先端部の状況を取得して(S106)、コンタミネーションの除去ができているか否かを確認する(S107)。
【0034】
その結果、付着物が除去できていなければ(S107,No)、再度ステップS101に移行する。一方、付着物の除去ができていれば(S107,Yes)、すべてのプローブ針先端についてクリーニングが終了したか否かを判定する(S108)。
【0035】
その結果、クリーニングが必要なプローブ針先端が残っている場合(S108,No)、次のプローブ針先端を対象としてステップS101に移行する。そして、全てのプローブ針先端についてクリーニングが終了した場合に(S108,Yes)、処理を修理する。」

ケ.「【0036】
図6は、レーザパルス間隔の段階的な制御によるプローブ保護について説明する説明図である。図6に示した例では、クリーニング制御部10は、まず、間隔F1で5回、パルスを射出したのち、F1よりも長いパルス間隔F2で5回パルスを射出している。その後、F2よりもさらに長いパルス間隔F3で5回、パルスを射出している。
【0037】
また、図7は、レーザパルス間隔を徐々に広げることによるプローブ保護について説明する説明図である。図7に示した例では、クリーニング制御部10は、照射開始から照射終了のFnまでの間隔をF1<F2<F3・・・<Fn-2<Fn-1としている。
【0038】
このように、レーザ光のパルス間隔を制御することでプローブにエネルギーが蓄積し、溶融温度に到達してダメージを受けることを回避することができる。
【0039】
なお、パルス幅の制御は、プローブの素材や形状に対応付けたパターンで制御してもよいし、レーザ照射面近傍で温度を検知してパルス間隔の制御を行なってもよい。
【0040】
温度を検知する場合、例えばレーザ照射部表面温度やレーザ照射面を挟んだ間の電気抵抗等の特性によって照射面の温度を求めることができる。そして、図6に示した制御を行なうのであれば、一定の間隔F1でレーザ照射を開始して表面の温度が上昇し、融点に近づいた場合に、間隔F1をF2に変更して温度上昇を抑える。さらに、それ以上温度が上昇しないようF2をF3に変更してレーザ照射を継続させ、コンタミネーションの除去を完了させる。このように、レーザ照射を続けている間レーザ照射面の温度上昇で部材表面が融点を超えないようレーザパルスとレーザパルスの繰出す間隔Fを長くしたり短くしたりすることでレーザ照射を制御して部材表面に熱ダメージを与えず、コンタミネーションを除去することができる。」

コ.上記ケ.の記載から、照射面の温度を検知し、レーザ照射面の温度上昇で部材表面が融点を超えないようレーザ光の間隔Fを制御することが理解できる。

(2)甲第4号証に記載の事項
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第4号証には次の事項が記載されている。

ア.「対象物に熱溶融ダメージを与えることなく付着物を除去するレーザクリーニング装置において、付着物を除去するためのレーザ照射が終了すると、対象物であるプローブ先端のコンタミネーションが除去できているかを確認するため、電気特性測定部41によるプローブの電気的特性の測定や画像取得部42が撮影した画像に対する画像認識等の手段で確認して判定を行い、追加のレーザ照射が必要な場合レーザを照射すること。」

イ.「対象物に熱溶融ダメージを与えることなく付着物を除去するレーザクリーニング装置において、照射面の温度を検知し、レーザ照射面の温度上昇で部材表面が融点を超えないようレーザ光のパルス間隔Fを制御することで対象物であるプローブにエネルギーが蓄積し、溶融温度に到達してダメージを受けることを回避すること。」

5.甲第5号証
甲第5号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第5号証(特表2000-516861号公報)には、「ロボットCO_(2)清浄」に関して、次のような記載がある。
ア.「1.タイヤモールドの成形表面に対して導かれるペレットでタイヤモールドを清浄にする装置であって、
前記タイヤモールドのための防音断熱外枠;
前記外枠内で前記タイヤモールドを位置付けおよび回転させるための回転性支持体;
前記タイヤモールドの前記成形表面への清浄位置を選択するように動くことのできるアームを有する前記外枠内のロボット;
前記アーム上に設けられペレットの供給源につながつているノズル;
前記成形表面に対して前記ペレットを導くように前記成形表面にノズルを位置合わせするように前記アームを回転させるためのロボット制御手段;および
前記ペレットを前記成形表面に対して導きながら前記回転性支持体を回転させるためのエネルギー手段
を特徴とする装置。」(2ページ2ないし14行)

イ.「本発明は、タイヤモールド清浄のための方法および装置、特に、以下においてCO_(2)と称する凍結二酸化炭素のペレットを用いてタイヤモールドを清浄にする方法および装置の技術に関する。」(5ページ4ないし6行)

ウ.「出願人は、従来のブラスト剤より磨耗性が低く回収時間があまりかからないブラスト剤でタイヤモールドを清浄にする方法および装置の必要性を認識した。さらに、タイヤモールドの微小抜け口を清浄にする方法および装置も必要とされていた。
本発明は、設計が単純で、使用が効果的で、前記困難および他の問題を克服すると同時に、より優れてより有利な全体的結果を提供する新規な改良されたタイヤモールド清浄法および装置を対象とする。」(5ページ23ないし29行)

エ.「入口コンベア22は、タイヤモールド16を開口32を通して、好ましくは防音かつ断熱された外枠34内に運ぶ。開口32は、清浄装置10が操作されるときに開口を閉鎖するドア(図示せず)を含んでよい。外枠34は、好ましくは、清浄装置10の周りで作業している作業員にとって不快な騒音を低減するように防音性である。外枠34は、好ましくは、タイヤモールド16の温度をできるだけタイヤ硬化温度近くに維持するために断熱性である。」(7ページ24ないし29行)

オ.「図1をさらに参照すると、タイヤモールド16が清浄装置10により清浄にされた後、モールドプッシャー76がタイヤモールド16を回転テーブル40から出口コンベア82上まで押し出す。出口コンベア82は、タイヤモールド16を、外枠内の第2の開口88を通して外枠34から運び出す。第2の開口88は、清浄装置を操作しているときに開口を閉鎖するドア(図示せず)を有し得る。タイヤモールド16は、次に、タイヤ製造プロセスに送り戻されるのを待つステージコンベアに送られる。タイヤモールド16は、清浄装置10を用いて約10分間で清浄にされ得る。」(9ページ8ないし14行)

6.甲第6号証
(1)甲第6号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第6号証(特開2005-350057号公報)には、「トランスポンダを取付けるためのタイヤ表面の前処理方法、およびその装置」に関して、次のような記載がある。

ア.「【請求項1】
トランスポンダハウジングとアンテナとを有する種類のトランスポンダ装置を取付けるために、タイヤ表面の前処理をおこなう方法において、
前記トランスポンダ装置を受け入れるようにされた設置面を有する、タイヤの目標表面を定めるステップと、
前記タイヤの目標表面を、クリーニング装置に接近可能な位置に設置するステップと、
望ましくない表面物質を前記タイヤの目標表面から実質的に除去するように、前記クリーニング装置を動かすステップと、
を有することを特徴とする方法。」

イ.「【0001】
本発明は、一般的には、タイヤのセンサまたは監視システムのタイヤへの取付け方法に関し、特に、センサやタグやアンテナを取付けるためのタイヤ表面の前処理方法、およびその装置に関する。」

ウ.「【0005】
したがって、目標タイヤ面の前処理プロセスを通じて、タイヤインナーウォールとトランスポンダ集合体とを接着剤によってしっかりと確実に接合する必要性が存在している。タイヤサイドウォールの内壁の指定された目標部位から、目標部位以外の他の部位を除き、剥離剤および/または汚染物を除去する、適切な方法および装置が望まれている。この目標タイヤ面を前処理する方法および装置は、効率的に、好ましい態様で、かつ自動化されて機能しなければならない。この処理は、望ましい場合あるいは望まれる場合には、別のタイヤ面前処理技術や材料を利用できる柔軟性が必要である。さらに、いかに適切な方法や装置であっても、コスト的に有利で、信頼できるものでなければならず、作動時の環境への影響は最小でなければならない。」

エ.「【0012】
図1をさらに参照すると、装置10は、タイヤ12のライナー22に、好ましくは製造後の組立て工程で取付けられる。取付けには、接着剤、または、装置をゴム合成物に固定する公知の従来の方法を用いることができる。インナーライナー22は通常、製造工程中に、タイヤ製造分野における従来タイプのライナーセメントで覆われる。このような物質は、タイヤを型から容易に取外すのには有用であるが、装置10とライナー22との間の信頼性の高い接着の実現には有害となる可能性がある。このような物質をタイヤの目標表面から除去し、あるいは、このような物質がタイヤ表面に付着しないよう表面を遮蔽するために、本発明は、好ましい方法および装置、ならびに代替の方法および装置について示しており、以下に説明する。」

オ.「【0014】
図3には、トランスポンダ装置が接合される、剥離剤の付着が相対的に少ないライナー表面を得るための他の方法を示す。図3によれば、細長い支持アーム44を有する洗浄装置42が設けられている。支持アーム44には、ノズル46が支持アーム44を横切って搭載され、支持アーム44に対してピボット運動可能に取付けられている。ノズル46は、ノズルの目標表面40に対する向きを調節できるように回転する。ノズル46は、代替物質が表面40に向けて放出されるアプリケータ端部48を含んでいる。発明を限定する意図のない例示として、ノズル端部48から出て噴射される溶剤50が図示されている。硬化されたタイヤから剥離剤を除去するために、有機溶剤、無機溶剤、または界面活性剤を用いてもよい。それらの例には、溶剤の選択を制限する意図はないが、標準的な石鹸、アルコノックス(Alconox)、D-リモネン(D-Limonene)、トリクロロエチレン、およびタイヤのバフ研磨や修理のプロセスで標準的に使用される溶解液が含まれる。これらの溶剤や界面活性剤は、スプレイの代わりに、清潔な布やブラシ52などの任意の数の技術を用いてタイヤに塗布してもよい。表面40は、溶剤50の塗布時または塗布後に、ブラシ52の毛54によって清浄にされる。スプレーユニットは、空気供給ライン56によって駆動力が供給され、溶剤50が加圧される。ノズル46を表面40に対して固定された最適位置に維持しながらタイヤを回すために、タイヤ産業で一般的なローラ装置58を用いてもよい。タイヤを回すと、装置で清浄にされた表面40は環状の形状となる。あるいは、タイヤを静止状態に維持しながら、クリーニング装置を回転させるか他のやり方でタイヤに対して動かしてもよい。目標表面40を比較的小さくする必要のある小片体を用いる場合は、タイヤおよびクリーニングノズルは共に静止していてもよい。必要に応じて、目標表面40を他の形状に形成設置するための固定物を用いてもよい。」

カ.「【0017】
図6は、剥離剤を含んだゴムの表面を焼いて除去するために十分な強度を備えたレーザービーム64によってライナーの表面が照射される、レーザークリーニング法を示している。焼かれて残ったゴム層は、例えば、溶剤やバフ研磨や他の公知の技術を用いて除去することが望ましい。」

キ.技術常識に基づき、甲第6号証に記載されたレーザービーム64がレーザ発振器から供給されることが理解できる。

ク.上記オ.、カ.及び図6の記載から、レーザービーム64をタイヤ12のライナー22に照射するノズル46と、このノズル46を保持する支持アーム44とを備えることが理解できる。

ケ.上記オ.の記載によれば、ノズル46は支持アーム44に対してピボット運動可能に取り付けられ、ノズルの目標表面40に対する向きを調節できるように回転し、また、ノズル46を表面40に対して固定された最適位置に維持しながらタイヤを回すためのローラ装置58を用いることから、上記オ.及び図6の記載から、タイヤ12とノズル46の少なくとも一方の動きを制御して、タイヤ12とノズル46の相対位置を変化させる制御装置を備えることが理解できる。

コ.上記オ.、カ.及び図6の記載から、ノズル46をタイヤ12のライナー22に沿って相対移動させつつ、レーザービーム64を照射してタイヤ12のライナー22に付着している剥離剤を照射したレーザービーム64によって除去してタイヤ12のライナー22を洗浄することが理解できる。

サ.上記ア.ないしカ.の記載から、甲第6号証には、タイヤの洗浄システムに関する発明が記載されていることが理解できる。

シ.上記オ.の記載によれば、ノズル46を表面40に対して固定された最適位置に維持しながらタイヤを回すためのローラ装置58を用い、タイヤを回すと、装置で清浄にされた表面40は環状の形状となることから、上記オ.及び図6の記載から、タイヤ12を所定位置に維持したまま回転させるローラ装置58を備え、このローラ装置58によりタイヤ12を回転させながらレーザービーム64を照射する構成にしたことが理解できる。


(2)甲第6号証に記載された発明
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第6号証には次の発明が記載されている。

ア.甲6発明1
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザービーム64をタイヤ12のライナー22に照射するノズル46と、このノズル46を保持する支持アーム44と、前記タイヤ12と前記ノズル46の少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤ12と前記ノズル46の相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記ノズル46を前記タイヤ12のライナー22に沿って相対移動させつつ、レーザービーム64を照射して前記タイヤ12のライナー22に付着している剥離剤を照射した前記レーザービーム64によって除去して前記タイヤ12のライナー22を洗浄するタイヤの洗浄システム。」

イ.甲6発明2
「甲6発明1において、
前記タイヤ12を所定位置に維持したまま回転させるローラ装置58を備え、このローラ装置58により前記タイヤ12を回転させながら前記レーザービーム64を照射する構成にしたタイヤの洗浄システム。」

7.甲第7号証
(1)甲第7号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第7号証(特開2008-62633号公報)には、「レーザ加工を用いた金型などの洗浄方法及び洗浄装置並びにタイヤ成形金型の洗浄装置」に関して、次のような記載がある。

ア. 「【請求項1】
被洗浄物を載置するワーク載置台と、
上記ワーク載置台の上方に配置され少なくとも2節以上の多関節アームを有するマニュピュレータと、
上記マニピュレータの先端に配置されたレーザヘッドと、
上記レーザヘッドにレーザ光を供給するレーザ発振器と、
上記レーザベッドに設けられ上記被洗浄物に対してレーザ光を照射する光学素子と、
上記マニピュレータを上記被洗浄物の形状に沿って移動する制御手段とから構成され、
上記レーザ発振器はCO2レーザその他の短パルスレーザ光を発光すること、及び上記マニピュレータは被洗浄物に形成された凹凸形状に沿って上記レーザヘッドを移動することを特徴とする洗浄装置。」

イ.「【0001】
本発明は各種合成樹脂のモールド成形、合成ゴムの加硫成形などに用いる成形金型の洗浄方法及び装置に係わり、特にゴムタイヤなどの微細な表面形状を形成する成形金型の洗浄に関する。」

ウ.「【0008】
そこで本発明は金型などに付着した有機物に対して吸収率が大きく、また、金型表面に凹凸形状などのパターン溝に適格に照射することが可能な短パルスCo2レーザなどの長波長のレーザ光を使用し、これと同時に複雑なパターン形状に沿ってレーザ光を照射することによって短時間で確実に残渣を剥離除去することが可能であるとの着想に基づいてなされたものである。」

エ.「【0012】
本発明は上記マニピュレータの制御の際、レーザヘッドの照射位置と残渣の除去状態をモニタリングすることを特徴としている。このモニタリングは例えばレーザ光を照射する光学素子(レンズ)の中心と付着物が発するプルームとを同軸的に視認することが出来るように構成する。これによってレーザ光が正確に溝パターンに沿って照射されているか否かと確実に付着物が除去されているかを確認してレーザヘッドの位置を制御することが可能となる。」

オ.【0014】
更に本発明は線条光線として上記Co2レーザを被洗浄物に照射するため従来のスポット状ビーム光を照射する場合に比べ高速洗浄が可能であり、この線条レーザ光の形状を被洗浄物の凹凸形状に応じて生成することも可能であり、この場合には更に高速洗浄が可能となる。また、本発明は上述のCo2レーザ光を発振するレーザヘッドを少なくとも2節以上の多関節アームを有するマニュピュレータの先端に配置し、このマニュピュレータの基端部にレーザ発振器を配置したものであるからレーザヘッドを被洗浄物に形成されている凹凸形状を追尾するように移動しながら照射することによって付着した残渣を確実に除去することが出来る。更には被洗浄物の原形状データに基づいて自動的に洗浄することも可能である。

カ.「【0018】
まず本発明の洗浄装置について説明する。
図2に示すように洗浄装置Aは、ワーク載置台2と、レーザ発振器3と、マニピュレータ4と、制御装置5とで構成される。レーザ発振器3は発振器本体で構成され、その構造は詳述しないが通常のCo2レーザ光を所定パルスで発振する構造を採用している。特にこの発振器本体3はCo2レーザ光をパルス幅10μSec乃至100μSecの短パルスで発振するように構成してある。この発振器の出口端には集光レンズが長焦点レンズで点光源を発光するように構成されている。
尚短パルス発振としたのは金属などの母材(金型など)に対する熱の影響を少なくするためであり、実験から10乃至100μsecが好まして範囲として得られた。ワーク載置台2は被洗浄物(金型)1を載置するテーブルであり、その構成は被洗浄物1を所定姿勢で載置する適宜形状に構成する。特にこのワーク載置台2には被洗浄物(金型)1を静止状態に保持するクランプ手段を設けることが好ましい。尚、上記発振器本体3には必要に応じてホモジュナイザを内蔵し、レーザ光のエネルギー分布を均一化させる。これにより被洗浄物に対して同じエネルギーで安定して研磨作用を得ることが可能となる。
【0019】
上記マニピュレータ4は駆動側マニピュレータ41と従動側マニピュレータ42で構成され、従動側マニピュレータ42は少なくとも2節、図示のものは連結軸43a、43b、43cで連結された多関節アーム42aで構成され、その基端部には上記レーザ発振器3が光学的に接続されている。そして各連結軸部43a、43b、43cには図示しないがそれぞれ2枚構成のミラが配置され、反射軸に対して360度回転できるように対向配置されている。そしてCO2レーザ光は各アーム部44a、44b、44c、44d内に形成した中空光路を、その節部に固定ミラと回転ミラを組み合わせて先端ヘッド6に伝送するようになっている。つまり45度に反射させるミラを固定し、360度回転可能なミラを対向させることによって節部の角度を自由に設定できるように構成してある。
【0020】
上記従動側マニピュレータ42の先端部には上記レーザ発振器3からのレーザ光を前記金型1に照射するシリンドリカルレンズ及び/又はポリゴンミラー若しくはガルバノミラー(図示せず)を有するレーザヘッド6が設けられている。このポリゴンミラー若しくはガルバノミラー又はシリンドリカルレンズは長焦点深度(図示のものは±4mm)で被洗浄物の凹凸形状に拘わらずほぼ均一のエネルギーを作用させるようになっている。そしてこのシリンドリカルレンズに対して前記多関節アームを経由して伝送されたレーザ光をポリゴンミラー若しくはガルバノミラーで所定長さの線条光に変換して被洗浄物に照射する。この為レーザヘッド6にはポリゴンミラー若しくはガルバノミラーとこれを回転駆動する駆動モータとシリンドリカルレンズが内蔵されている。そしてこの駆動モータの制御によって被洗浄物に照射する線条光の長さを調節可能に構成されている。
【0021】
上述レーザヘッドからのレーザ光は図5に示すように被洗浄物である金型1に線条光Pを照射し。このレーザヘッド6はワーク載置台2の上方に配置され自由に3次元位置で移動可能に構成されている。一方駆動側マニピュレータ41は少なくとも2軸の連結軸で、図示のものは連結軸45a、45bで構成され、その先端部は従動側マニピュレータ42の先端部に連結されている。この駆動側マニピュレータ41の連結軸部には駆動モータ例えばステッピングモータが内蔵され、所定角度各関節アームを駆動するように構成され、この駆動側マニピュレータ41には制御装置5が連結されている。従って制御装置5で駆動側マニピュレータ41を3次元の所定位置に移動すると、前記従動マニピュレータ42のレーザヘッド6も同位置に移動することとなる。
【0022】
上記制御装置5は例えばコンピュータで構成され、制御CPU51とディスプレイ52と入力装置(マウスなど)53とを備えている。そして制御CPU51と前記駆動側マニピュレータ41のドライバ回路が連結されている。この制御CPU51には前記駆動側マニピュレータ41を位置制御するプログラムが組み込まれ、このプログラムに従って前記レーザヘッド6の3次元位置を制御するように構成されている。
この制御プログラムは例えば次のように構成される。制御CPU51には金型1の原形状が例えばCADデータとして記憶されている。そして上記プログラムはディスプレイ52上に金型形状(以下原モデル形状という)を表示し、このモデル形状の上にレーザヘッドの照射光を洗浄ポイントとしてポインタ表示する。同時にこの洗浄ポイントは例えばマウス操作によって位置変更できるのと同時に前記ガルバノミラーの振幅の幅を変更させることによって金型の形状に合わせてスキャニング幅を変更可能となる。
【0023】
そこで制御装置5はディスプレイ52上に表示された洗浄ポイントに従ってレーザヘッド6の3次元位置を同期するように前記駆動側マニピュレータ41を制御する。これによってオペレータはディスプレイ52上にティーチングされた原モデル形状に従ってレーザヘッド6を位置移動することが可能となる。これと同時に制御装置5はレーザヘッド6と金型との間の照射距離を例えば原モデル形状のデータから演算する。
【0024】
なお、図示の装置は上記制御装置5の制御を容易にするため、レーザヘッド6には同軸観測モニタ(図示せず)が設けてある。このモニタは例えば次のように構成する。前述のようにレーザヘッド6には長焦点レンズ(シリンドリカルレンズ;図示せず)が内蔵されレーザ光を金型1に照射する。このとき、このレンズの背面側から金型に照射したレーザ光を観測できるようにする。これによって金型の残渣から発せられるプルームを観測することによってオペレータはレーザ光が適切な溝パターン位置に照射されているか、残渣が確実に除去されているかを観測しながらレーザヘッドの位置を制御装置5で制御することが可能となる。」

(2)甲第7号証に記載された発明
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第7号証には次の発明が記載されている。
ア.甲7発明1
「レーザ発振器3と、このレーザ発振器3から供給されるレーザ光を金型表面に照射するレーザヘッド6と、このレーザヘッド6が配置されたマニピュレータ4と、レーザヘッド6の3次元位置を制御する制御装置5とを備え、前記レーザヘッド6を前記金型表面に形成されている凹凸形状を追尾するように移動させつつ、レーザ光を照射して前記金型表面に付着した残渣を前記レーザ光によって除去して前記金型表面を洗浄する洗浄装置。」

イ.甲7発明2
「前記マニピュレータ4が前記レーザヘッド6を自由に3次元位置で移動可能に構成したマニピュレータ4であり、このマニピュレータ4により前記レーザヘッド6を移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした甲7発明1の洗浄装置。」

8.甲第8号証
本件特許の出願前に頒布された甲第8号証(特表2007-516103号公報)には、「空気入りタイヤに刻印する方法及びシステム」に関して、次のような記載がある。

ア.「【0002】
この発明は広義には車両の空気入りタイヤに関し、より詳細には、個々の空気入りタイヤに、連邦交通局(DOT)の要求を満たし、且つ付加的な目録や履歴を示す印を刻印するための方法及びシステムに関する。」

イ.「【0008】
この発明は、連邦交通局(DOT)のデータ要求を満足するだけでなく、付加的な製造情報を、個々のタイヤの特定箇所に刻印標示し、タイヤの寿命中はいつでも読み取り可能にするために、車両の空気入りタイヤに、目視可能なデータ又は読取り機によって読取り可能なデータ及びそれらの組み合わせを刻印する方法とシステムとを提供する。この発明は、このデータを、レーザー刻印によって、タイヤの予定された内方及び外方のサイドウォールの外表面に付加することを可能にし、従来の標示片をタイヤモールドの内側面に載置することを少なくするか、全く無くしてしまう。そしてこのデータ刻印は、タイヤのモールデイング後に行われ、DOTの要求の基づいて製造した週や年に関する情報を刻印することが出来る。またタイヤのモールイング中に刻印されたDOTデータのすぐ隣りの正確な位置に、付加的なデータを刻印することが可能である。そしてこのような情報のレーザーによる刻印は、必要なデータを付加した標示片又はプラグをモールド内に挿入して、このモールドを取替え使用するより、より安価に行うことができる。」

ウ.「【0018】
ステーション3は,その上流において、図5に示すようにタイヤのサイドウォール面に付着された通常型のバーコード帯片13を、ステーション内で読取るバーコード読取り機11を含む。バーコード帯片13には、タイヤの型式、個々の製造番号、特定の製造所コード等、タイヤの加硫硬化時の特定の加硫圧力に至るまで、種々のコードを含有している。このコード情報はバーコード読取り機11によって読取られ、図4に示す制御ユニット15に供給され、蓄積されて、これに続くこの発明の印加システムにおいて用いられる。」

エ.「【0023】
またステーション7には、刻印を確認する読取り機35が備えられ、既存の記号23、25、27の他、タイヤ10上に新たに刻印された記号31,33を瞬時に読取り、正確なデータが適切な位置に刻印され、これらの情報が読取り可能であるかを判断する。もし、それができないと判断された場合、タイヤは再刻印その他の補正作業のために、所定箇所へ送られる。」

オ.「【0033】
この発明を応用したシステムのステーション50を、図7-9に示す。この実施例の主たる特徴は、タイヤ51がレーザー刻印ステーションに来た時に予め定めた位置に整合されていることである。これはタイヤの位置整合がない場合に、レーザー刻印装置をより複雑な位置制御システムによって移動させ配置するのに対して、ある一定方向のみの照射のために移動させるだけで済む。ステーション50は、タイヤ51を矢印A方向に移動させる第1動力駆動コンベヤ53を含む。1つの排出装置又は調節ゲート54がコンベア上を搬送される多数のタイヤの間隔を調節し、ただ1個のタイヤがこのゲートを通過して次のステーションと装置に送られるようにする。調節ゲート54は、タイヤ製造業の分野では周知のものであるので、これ以上詳細を述べることはしない。」

カ.「【0036】
回転ステーション68を離れたタイヤは、コンベア上に正確な横方向位置、所望の回転角度位置に置かれる。この位置は、制御ユニットとしてよく知られている位置設定方法を用いて、タイヤの所定位置に付加的なデータを刻印するのに適した配置を示す。タイヤ51はその後、コンベヤ62により移動されて、レーザー付加又は刻印ステーション72に送られる。ステーション72は1個のレーザー73、3個のレーザー位置サーボ機構74、3個のカメラ75及び4個の光照射システムを備える。」

キ.「【0038】
図9に示すこの発明の他の実施例によれば、レーザー・ビーム81が常時刻印すべきタイヤのサイドウォール面に対して垂直になり、レーザーの焦点距離が常に一定に保たれるように、3軸サーボ機構が配置される。レーザー73がタイヤ上に所望の刻印を付加した後、例えば数字のような検査者が目視可能な刻印、または2Dシンボルのような機械読取りが必要なコード記号を読取るために、タイヤは検査ステーション85に送られる。
【0039】
検査ステーション85は、検査に適合するカメラやレーザーからなる検査装置86を備え、前実施例のステーション7及び読取り機35で述べたと同様、前行程で刻印されたばかりの刻印記号を、それ以前に刻印されたデータとともに検査して、正確なデータが印加すべきタイヤに適切に印加され、且つ読取り可能かどうかを確認する。もし、不適切な刻印やデータが発見された場合、タイヤはこのステーションから排除され、再刻印その他の補正作業のために、所定箇所へ送られる。この検査ステーションには、前述したステーション7と同様、環境浄化装置(図示せず)が設けられ、タイヤがコンベヤ88によって貯蔵または搬送サイトに送られる前に清掃される。もし必要であれば、この発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、ステーション85について述べた環境浄化装置を全て、レーザー付加/刻印ステーション72に統合して配置することができる。」

9.甲第9号証
本件特許の出願前に頒布された甲第9号証(国際公開第2007/091315号)には、「タイヤの製造方法および製造設備」に関して、次のような記載がある。

ア.「[0001] 本発明は、多品種を製造する場合に好適なタイヤの製造方法および製造装置に関する。」

イ.「[0006] そこで、本発明は、グリーンタイヤの成型工程および加硫処理工程に加え、検査工程の効率化を図り、更なる生産性の向上を達成することができるタイヤの製造方法および製造設備を提供することを目的とする。」

ウ.「[4] 未加硫のグリーンタイヤを成型する成型装置と、前記グリーンタイヤを加硫する加硫装置と、加硫されたタイヤの後処理および検査の少なくとも一方を行う仕上げ装置を、複数品種のタイヤに応じた複数種類ずつ備え、各装置がデータ処理装置により駆動制御されることで複数品種のタイヤを同時に製造する設備であって、
前記成型装置において成型したグリーンタイヤに少なくとも該グリーンタイヤの品種を示すタイヤ情報が付与された情報ラベルを貼付する手段と、
グリーンタイヤを保管する載置エリアに前記情報ラベルを貼付したグリーンタイヤを移送する手段と、 前記載置エリア内におけるグリーンタイヤの保管位置を示す保管位置情報を該グリーンタイヤに貼付された情報ラベルに付与されたタイヤ情報と対応付けて前記データ処理装置のデータベースに記憶する手段と、
前記データベースからタイヤ情報に対応付けられた保管位置情報を呼び出して、保管位置情報に基づいて載置エリアに保管されたグリーンタイヤを該グリーンタイヤの品種に応じた加硫装置に移送する手段と、
加硫されたタイヤの情報ラベルを読み取り、読み取ったタイヤ情報に基づき、該タイヤの品種に応じた仕上げ装置に移送する手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ製造設備。」

エ.「[6] 前記情報ラベルが、バーコードラベルであることを特徴とする請求項4または 5に記載のタイヤ製造設備。」

10.甲第10号証
(1)甲第10号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第10号証(特開昭61-14511号公報)には、「タイヤ自動選別・仕分方法」に関して、次のような記載がある。

ア.「2.特許請求の範囲
無差別に搬入されるタイヤのバーコードをタイヤサイズ読取りステージで読取り、この読取ったコードからタイヤの種類を判別し、このタイヤの種類からタイヤ諸特性の測定に必要な情報を予め諸特性を入力してあるステージ処理制御装置から引出してタイヤ諸特性測定ステージに送り、このタイヤ諸特性測定ステージにて測定した結果によりタイヤの種類別に仕分て次工程に搬送することを特徴とするタイヤ自動選別
仕分方法。」(1ページ左下欄4ないし14行)

イ.「〔産業上の利用分野〕
この発明は、タイヤ自動選別・仕分方法に係わり、更に詳しくはタイヤの種類の読取り、諸特性の確認と仕分を自動的に行うタイヤ自動選別・仕分方法に関するものである。」(1ページ左下欄16ないし20行)

ウ.「〔発明の目的〕
この発明は、係る従来の問題点に着目して案出されたもので、その目的とするところはタイヤの種類の読取り、諸性能の確認、仕分を自動的に行うことにより、短時間に、しかも確実に数種類のタイヤの選別と仕分を行うことが出来るタイヤ自動選別・仕分方法を提供するものである。」(2ページ左上欄14行ないし右上欄1行)

エ.「前記、タイヤサイズ読取りステージlは、無差別に搬入されるタイヤWを回転させておき、そしてタイヤWに付されたバーコード(図示せず)を光学的検出器により読取って検出すると共に、この検出信号をデコードしてタイヤ独自の番号を引き出してステージ処理制御装置4に送る。
ステージ処理制御装置4では、タイヤサイズ読取りステージ1で得られた情報から予め記憶させた情報を記憶装置から引き出す。この情報としては、例えば次のような種類から成るものである。
(a).タイヤWの荷重,内径,幅。
(b).タイヤWの諸特性の測定項目。
(c).タイヤWの諸特性の各選別値。
(d).タイヤWの諸特性の補正係数。
(e).タイヤの諸特性を測定する各センサーの段替位置情報、等である。
タイヤ諸特性測定ステージ2では、上記(a)?(e)の情報を元に、各センサーのプリセットを行い、タイヤWの諸特性を測定する。」(2ページ左下欄5行ないし右下欄5行)

オ.「〔発明の効果〕
この発明は、上記のように無差別に搬入されるタイヤのバーコードをタイヤサイズ読取りステージで読取り、この読取ったコードからタイヤの種類を判別し、このタイヤの種類からタイヤ諸特性の測定に必要な情報を予め諸特性を入力してあるステージ処理制御装置から引出してタイヤ諸特性測定ステージに送り、このタイヤ諸特性測定ステージにて測定した結果によりタイヤの種類別に仕分て次工程に搬送するようにしたため、以下のような優れた効果を奏するものである。
(1).無差別にタイヤを搬入することが出来るので従来のように人手による仕分作業が不要となる。
(2).タイヤのストックゾーンが不要となり、リードタイムを短くすることができる。
(3).タイヤの種類の読取り、諸性能の確認、仕分を自動的に行うことにより、短時間に、しかも確実に数種類のタイヤの選別と仕分を行うことが出来、コストダウンを計ることが出来る。」(3ページ左上欄13行ないし右上欄13行)

11.甲第11号証
(1)甲第11号証の記載
本件特許の出願前に頒布された甲第11号証(欧州特許出願公開第2674287号明細書)には、「セルフシールパンク保護層を車両空気タイヤのタイヤ内側に塗布する方法」に関して、次のような記載がある。

ア.「[0001] Die Erfindung betrifft ein Verfahren zum Aufbringen einer selbstdichtenden Pannenschutzschicht auf der Reifeninnenseite eines Fahrzeugluftreifens.」([0001]本発明は、車両空気タイヤのタイヤ内側上にセルフシールパンク保護層を塗布する方法に関する。)

イ.「[0003] Der Erfindung liegt die Aufgabe zu Grunde, ein Verfahren bereit zu stellen, mit dem die Reifeninnenseite des Fahrzeugreifens vor dem Aufbringen einer selbstdichtenden Pannenschutzschicht auf einfache Weise gereinigt werden kann.」([0003]本発明の課題は、セルフシールパンク保護層を塗布する前に、単純な方法で車両タイヤのタイヤ内側を浄化できる方法を提供することである。)

ウ.「[0005] Ein Vorteil des erfindungsgemasen Verfahrens besteht darin, dass die Reifeninnenseite auf einfache Weise und mit einer hohen Effektivitat gereinigt wird. Die an der Reifeninnenseite anhaftenden Schmiermittelruckstande werden durch das Verfahren komplett von der Reifeninnenseite mit einer hohen Prozesgeschwindigkeit entfernt. Die Pannenschutzschicht wird nach der Reinigung der Reifeninnenseite in den Fahrzeugreifen angebracht, wobei eine optimale Haftung zwischen der Pannenschutzschicht und der Reifeninnenseite erzielt wird.」([0005]この本発明による方法の利点は、タイヤ内側を、単純な方法でかつ非常に効果的に浄化することができるという点にある。タイヤ内側に固着した潤滑剤残滓は、この方法により、タイヤ内側から高速の処理速度で完全に除去される。パンク保護層は、タイヤ内側を浄化した後に車両タイヤ中に取り付けられ、この際、パンク保護層とタイヤ内側との間への最適な固着が達成される。)

エ.「[0026] Der Fahrzeugluftreifen 1 ist schematisch in einer Radialschnittansicht dargestellt. Er weist eine linke und eine rechte Seitenwand 5, an der Ausenseite einen Laufstreifen 4 und eine Reifeninnenseite 2 auf. Die Mittelachse des Fahrzeugreifens 1 ist mit der Strich-Punkt- Linie 7 schematisch dargestellt. Auf der Reifeninnenseite befinden sich Schmiermittelruckstande bzw. Trennmittel 3, die von der Reifenvulkanisation herstammen. Ein wesentliches Ziel des Verfahrens besteht darin, diese Schmiermittelruckstande 3 vollstandig von der Reifeninnenseite zu entfernen. In einem ersten Verfahrensschritt wird der fertig vulkanisierte Fahrzeugreifen in einer Reinigungsvorrichtung positioniert. Anschliesend wird die Laser-Optik 8 mit dem Roboter-Arm 11 uber dem Reifenhohlraum des Fahrzeugreifens 1 wie in der Fig.1 dargestellt positioniert. Das Laser-Licht wird uber den Lichtleiter 9 zur Laser-Optik 8 gefuhrt, der den dargestellten Laser-Strahl 14 erzeugt. Der in der Aufsicht linienformige Laser-Strahl wird auf die Reifeninnenseite projiziert und fokusiert. Der Laser-Strahl durchdringt die Schmiermittelruckstande 3 zumindest teilweise und lost die festen Schmiermittelruckstande 3 insbesondere durch eine thermische Wirkung von der Reifeninnenseite 2 ab. Die Schmiermittelruckstande 3 werden dabei in einen pulverformigen Zustand uberfuhrt, wobei dieses abgetrennte Pulver bzw. staubformiges Material mit der Saugvorrichtung 10 aus dem Reifenhohlraum abgesaugt wird. Der linienformige Laser-Strahl 2 uberdeckt die Reifeninnenseite im Bereich zwischen den beiden Reifenschultern 6. Nur in diesem Bereich der Reifeninnenseite wird nachfolgend eine entsprechende Pannenschutzschicht aufgetragen, die in der Fig. 1 nicht dargestellt ist. An der Laser-Optik ist ein Abstandsensor 12 angeordnet, der die Entfernung der Laser-Optik zur Oberflache der Reifeninnenseite kontinuierlich uberwacht. Aufgrund von Unregelmasigkeiten in der Oberflache oder durch Unwuchterscheinung des Fahrzeugreifens kann der Abstand zur Reifeninnenseite variieren und muss aufgrund einer optimalen Fokusierung ggf. nachgeregelt werden. Nach dem Reinigen der Reifeninnenseite 2 wird in einem nachfolgenden Schritt die Pannenschutzschicht in einem viskosen Zustand mit einer Duse spiralformig auf der Reifeninnenseite aufgebracht. Bei einer Beschadigung des Fahrzeugreifens im Bereich des Laufstreifens 4, beispielsweise infolge des Eindringens eines spitzen Gegenstandes, wird die beschadigte Stelle durch die selbstdichtende Pannenschutzschicht wieder luftdicht verschlossen, so dass kein Druckverlust mehr auftritt.([0026]車両空気タイヤ1が、半径方向の断面図で概略図示されている。このタイヤは、左右のサイドウォール5と、外側にトレッド部4と、タイヤ内側2とを有する。車両タイヤ1の中心軸は、点線7で概略図示されている。タイヤ内側には潤滑剤残滓ないし分離剤3が存在するが、これらは、タイヤ加硫に由来する。本方法の本質的な目的は、この潤滑剤残滓3を完全にタイヤ内側から除去することにある。第1の方法工程では、完全に加硫処理された車両タイヤを、浄化装置内に位置付ける。続いて、図1中に図示されたように、レーザ光学系8を、ロボットアーム11を用いて車両タイヤ1のタイヤ空洞上方に位置付ける。レーザ光は、ライトガイド9を介してレーザ光学系8に導かれ、このレーザ光学系が、図示されたレーザ光線14を生成する。平面図中では線状であるレーザ光線は、タイヤ内側上に投射され、フォーカシングされる。レーザ光線は、潤滑剤残滓3を少なくとも部分的に貫通し、かつ固体の潤滑剤残滓3を、とりわけ熱作用によりタイヤ内側2から剥がす。潤滑剤残滓3は、この際、粉末状の状態に移行し、この取り去られた粉末ないし埃状の物質は、吸い取り装置10を用いてタイヤの空洞から吸い取られる。線状のレーザ光線2は、双方のタイヤショルダ6間の領域においてタイヤ内側を覆う。続いて、タイヤ内側のこの領域にのみ、相応のパンク保護層が塗布されるが、この層は、図1中では不図示である。レーザ光学系には、距離センサー12が配置されていて、この距離センサーがレーザ光学系からタイヤ内側表面までの距離を継続的に監視する。表面の不規則性、または車両タイヤの不均衡現象により、タイヤ内側までの距離は変動する可能性があり、場合によっては、最適なフォーカシングに基づいて、再制御されねばならない。タイヤ内側2の浄化後に、後続の工程で、粘性を有する状態のパンク保護層が、ノズルを用いて螺旋形状にタイヤ内側上に塗布される。トレッド部4の領域で、例えば先がとがった物体が突き刺さった結果車両タイヤが損傷した場合には、損傷した箇所は、セルフシールパンク保護層により気密に閉鎖され、その結果、圧力損失は生じない。)

オ.「Patentanspruche
1. Verfahren zum Aufbringen einer selbstdichtenden Pannenschutzschicht auf der Reifeninnenseite (2) eines Fahrzeugluftreifens (1) mit folgenden Schritten,
a) Anordnen eines fertig vulkanisierten Reifens (1) in einer Reinigungsvorrichtung, wobei infolge der Vulkanisation Schmiermittelruckstande (3) auf der Reifeninnenseite (2) anhaften,
b) Anordnen einer Laser-Optik (8) mit einer Haltevorrichtung (11) in der Reinigungsvorrichtung, wobei der Laser-Strahl (14) der Laser-Optik (8) auf die Reifeninnenseite (2) ausrichtbar ist,
c) Aktivierung des Laser-Strahles (14), wobei der auf die Reifeninnenseite (2) gerichtete Laser-Strahl (14) zumindest teilweise die Schmiermittelruckstande durchdringt und uber die Energie-Bestrahlung sowie eine thermische Erwarmung der Oberflache die anhaftenden Schmiermittelruckstande (3) von der der Oberflache der Reifeninnenseite (2) ablost, wobei die Schmiermittelruckstande (3) bei der Ablosung von der Reifeninnenseite (2) gleichzeitig in einen pulverformigen Zustand uberfuhrt werden,
d) Absaugen der pulverformigen Schmiermittelruckstande mit einer Saugvorrichtung (10),
e) Aufbringen einer selbstdichtenden Pannenschutzschicht auf der von Schmiermittelruckstanden gereinigten Reifeninnenseite (2) des Fahrzeugluftreifens (1).」(請求項1 車両空気タイヤ(1)のタイヤ内側(2)上にセルフシールパンク保護層を塗布する方法であって、以下の工程を含み、すなわち、a)完全に加硫処理されたタイヤ(1)を浄化装置中に配置する工程であって、この際に、加硫の結果として潤滑剤残滓(3)が前記タイヤ内側(2)上に付着している、工程と、b)保持装置(11)を備えたレーザ光学系(8)を前記浄化装置中に配置する工程であって、前記レーザ光学系(8)のレーザ光線(14)が、前記タイヤ内側(2)に配向可能である、工程と、c)レーザ光線(14)を活性化させる工程であって、前記タイヤ内側(2)に向けられた前記レーザ光線(14)が、少なくとも部分的に前記潤滑剤残滓を貫通し、かつエネルギー照射と表面の加熱とを介して、固着している前記潤滑剤残滓(3)を、前記タイヤ内側(2)の表面から剥がし、前記潤滑剤残滓(3)は、前記タイヤ内側(2)から剥がれると同時に粉末状の状態に移行する、工程と、d)前記粉末状の潤滑剤残滓を吸い取り装置(10)で吸い取る工程と、e)前記潤滑剤残滓を除くよう浄化を行った後に前記車両空気タイヤ(1)の前記タイヤ内側(2)上に、セルフシールパンク保護層を塗布する工程とを含む方法。)

カ.「3. Verfahren nach einem der vorhergehenden Anspruche,
dadurch gekennzeichnet,
dass der Reifen bei Schritt c) mit einer Vorrichtung um seine eigene Achse (7) rotiert wird, wohingegen die Haltevorrichtung (11) fur die Laser-Optik (8) seine Position beibehalt.」(請求項3 工程c)において、前記タイヤは、ある装置を用いてタイヤ自体の軸(7)の周りを回転し、逆に前記レーザ光学系(8)用の前記保持装置(11)は、その位置を維持することを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の方法。)

キ.「6. Verfahren nach einem der vorhergehenden Anspruche,
dadurch gekennzeichnet, dass
die Haltevorrichtung fur die Laser-Optik (8) einen Roboter- Arm (11) umfasst, der die Laser-Optik (8) automatisch in eine beliebige Position ausrichtet.」(請求項6 前記レーザ光学系( 8 )用の前記保持装置は、ロボットアーム(11)を具備し、前記ロボットアームは、前記レーザ光学系( 8 )を自動的に任意の位置に配向させることを特徴とする上記請求項のいずれか1 項に記載の方法。)

ク.「8. Verfahren nach einem der vorhergehenden Anspruche,
dadurch gekennzeichnet, dass
der Reifen bei Schritt c) zumindest zweimal um seine eigene Achse (7) gedreht wird,
wobei der Laser-Strahl (8) mindestens zweimal die Reifeninnenseite (2) von Schmiermittelruckstanden (3) reinigt.」(請求項8 工程c )において、前記タイヤは少なくとも二度、タイヤ自体の軸(7)の周りで回転し、前記レーザ光線(8)は、少なくとも二度、潤滑剤残滓(3)を除くよう前記タイヤ内側(2)を浄化することを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の方法。)

ケ.技術常識に基づき、甲第11号証に記載されたレーザ光線14がレーザ発振器から供給されることが理解できる。

コ.上記エ.及び図1の記載から、レーザ光学系8はレーザ光線14を車両タイヤ1のタイヤ内側2に照射することが理解できる。

サ.上記キ.には、ロボットアーム11は、レーザ光学系8を自動的に任意の位置に配向が記載されており、上記キ.及び図1の記載から、レーザ光学系8を保持するロボットアーム11と、車両タイヤ1とレーザ光学系8の少なくとも一方の動きを制御して、車両タイヤ1とレーザ光学系8の相対位置を変化させる制御装置を備えることが理解できる。

シ.上記エ.及びキ.ならびに図1の記載から、レーザ光学系8を車両タイヤ1のタイヤ内側2に沿って相対移動させつつ、レーザ光線14を照射して車両タイヤ1のタイヤ内側2に付着している潤滑剤残渣3を照射したレーザ光線14によって除去して車両タイヤ1のタイヤ内側2を洗浄洗浄することが理解できる。

ス.上記エ.及びキ.、図1の記載ならびに技術常識から、前記ロボットアーム11が前記レーザ光学系8を3次元に自在移動させるアームであることが理解できる。

セ.上記カ.及び図1の記載から、前記車両タイヤ1 を所定位置に維持したまま回転させる装置を備え、この装置により前記車両タイヤ1 を回転させながら前記レーザ光線1 4 を照射することが理解できる。

ソ.上記ア.ないしク.の記載から、甲第11号証には、タイヤの洗浄システムに関する発明が記載されていることが理解できる。

(2)甲第11号証に記載された発明
上記(1)及び図面の記載からみて、甲第11号証には次の発明が記載されている。

ア.甲11発明1
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光線14を車両タイヤ1のタイヤ内側2に照射するレーザ光学系8と、このレーザ光学系8を保持するロボットアーム11と、前記車両タイヤ1と前記レーザ光学系8の少なくとも一方の動きを制御して、前記車両タイヤ1と前記レーザ光学系8の相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザ光学系8を前記車両タイヤ1のタイヤ内側2に沿って相対移動させつつ、レーザ光線14を照射して前記車両タイヤ1のタイヤ内側2に付着している潤滑剤残渣3を照射した前記レーザ光線14によって除去して前記車両タイヤ1のタイヤ内側2を洗浄するタイヤの洗浄システム。」

イ.甲11発明2
「甲11発明2において、
前記ロボットアーム11が前記レーザ光学系8を3次元に自在移動させるアームであるタイヤの洗浄システム。」

ウ.甲11発明3
「甲11発明1又は2において、
前記車両タイヤ1を所定位置に維持したまま回転させる装置を備え、この装置により前記車両タイヤ1を回転させながら前記レーザ光線14を照射する構成にしたタイヤの洗浄システム。」

第6.判断
1.甲第1号証を主引用例とした場合
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。
本件訂正発明1と甲1発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明1における「赤外線ディスクレーザ」は、本件訂正発明1における「レーザ発振器」に相当し、以下同様に、「この赤外線ディスクレーザからのレーザ光線13」は「このレーザ発振器から供給されるレーザ光」に、「レーザ光線13」は「レーザ光」に、「タイヤ17内の中空空間」は「タイヤの内面」に、「流出要素11」は「レーザヘッド」に、「アクチュエータ2?4、7及び自由端10」は「アーム」に、「制御モジュール」は「制御装置」に、「製造残留物」は「汚れ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄するタイヤの洗浄システム。」
の点で一致し(以下、「一致点1」という。)、以下の点で相違する(以下、「相違点1-1」という。)。
本件訂正発明1においては、タイヤの内面に沿って相対移動させるレーザヘッドに関して、「レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッド」を有し、「洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッド」をタイヤの内面に沿って相対移動させるものであるのに対し、
甲1発明1においては、流出要素11は、照射幅が異なる複数のものではなく、洗浄するタイヤに最適な流出要素11が、複数の流出要素11から選択されるものではない点。

上記相違点1-1について判断する。
甲第2号証の段落[0040]に「その先の工程では、ここでレーザシステム2の処理ヘッド4は、車両用タイヤ13に挿入されるとともに車両用タイヤ13の内面を処理するのに最適に位置決めされるように矢印10及び11の方向に移動される。・・・走査領域7は車両用タイヤの幅に調整されている。」との記載があり、また、甲第7号証の段落【0020】に「この為レーザヘッド6にはポリゴンミラー若しくはガルバノミラーとこれを回転駆動する駆動モータとシリンドリカルレンズが内蔵されている。そしてこの駆動モータの制御によって被洗浄物に照射する線条光の長さを調節可能に構成されている。」との記載があり、さらに、甲第3号証の段落【0012】に「又前記バフ仕上げ領域Yの幅W0は、前記帯状スポンジ材5の幅W1以上かつトレッド内面Tsの幅TW以下であって、例えば前記バフ仕上げ領域Yの幅W0を、帯状スポンジ材5の幅W1の種類に応じて順次調整しても良く、又前記幅W1の種類のうちの最大の幅に応じて前記幅W0を一つに設定しても良い。」との記載がある。
しかしながら、甲第2号証には、走査領域7を車両用タイヤの幅に調整するとの記載があるものの、レーザ照射幅が異なる複数の処理ヘッド4を有するとの記載はなく、また、甲第7号証には、レーザヘッド6にはポリゴンミラー若しくはガルバノミラーとこれを回転駆動する駆動モータを備え、この駆動モータの制御によって被洗浄物に照射する線条光の長さを調節可能にすることの記載があるものの、線状光の長さを被洗浄物の幅に調整するとの記載はなく、また、照射幅が異なる複数のレーザヘッド6を有するとの記載もない。さらに、甲第3号証に記載されているものは、レーザによるタイヤ洗浄技術ではなく、タイヤのトレッド内面をバフ仕上げする技術であるし、複数のタイヤバフ具4を有するものでもない。
そうすると、タイヤのレーザ洗浄技術において、レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させることを示す文献は見あたらず、また、かかる事項は、甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の上記記載から導き出せるものともいえない。
また、本件訂正発明1の相違点1-1に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明1ではなく、また、甲1発明1及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲1発明2とを対比すると、上記一致点1に加えて以下の点で一致し、上記相違点1-1で相違する。
「前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした」点。
上記相違点1-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点1-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明2ではなく、また、甲1発明2及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-2」という。)
本件訂正発明3においては、「前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、タイヤ17を回転させる回転機構を備えていない点。
上記相違点1-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点1-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-3」という。)
本件訂正発明4においては、「前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、かかるビード保持機構を備えていない点。
上記相違点1-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点1-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点1-3について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-4」という。)
本件訂正発明5においては、「タイヤの仕様情報が制御装置に入力されていて、仕様情報に基づいて、レーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点1-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点1-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点1-4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1及び相違点1-4に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点1-5」という。)
本件訂正発明6においては、「前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点1-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点1-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点1-5について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-6」という。)
本件訂正発明7においては、「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点1-6について検討する。
甲第4号証には、対象物に熱溶融ダメージを与えることなく付着物を除去するレーザクリーニング装置において、付着物を除去するためのレーザ照射が終了すると、対象物であるプローブ先端のコンタミネーションが除去できているかを確認するため、電気特性測定部41によるプローブの電気的特性の測定や画像取得部42が撮影した画像に対する画像認識等の手段で確認して判定を行い、追加のレーザ照射が必要な場合レーザを照射することが記載されている。
しかしながら、甲第4号証の段落【0032】には、「おなじく、クリーニング制御部10は、照射に必要なプローブ針先端部のコンタミネーションの付着状況、例えば接触抵抗値や画像によるコンタミネーションの付着の状況を取得する(S103)。これらの状況はコンタミネーション除去の際取得するもしくは取得した情報である。」との記載があるものの、プローブ針先端部のコンタミネーションの付着状況の中にコンタミネーションの位置情報が含まれることは記載がなく、むしろ、段落【0027】には、「一例として、タングステンを材料とする先端約φ20μmのプローブ針先端のコンタミネーションを除去する例を挙げる。・・・レーザビームはプローブ針先端位置で約φ50μmになるよう集光されている。」との記載があり、レーザビームのプローブ針先端部での大きさはプローブ針先端部より大きいものであるから、レーザビームはプローブ針先端部全体に照射され、プローブ針先端部におけるコンタミネーションが付着した位置情報を考慮するものではない。
そして、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光線13を照射してタイヤ17内の中空空間に付着している製造残留物を照射したレーザ光線13によって除去してタイヤ17内の中空空間を洗浄する甲1発明1に、甲第4号証に記載されたレーザクリーニング装置の技術を適用しても、甲第4号証の技術は、コンタミネーションの位置情報を考慮するものではないから、撮影した画像から除去できなかった製造残留物があった場合には、再度、タイヤ17内の中空空間全体に流出要素11を相対移動させて製造残留物を除去するものとなり、本件訂正発明7の相違点1-6に係る発明特定事項を導くことはできない。
また、甲第7号証(段落【0012】及び【0024】)には、タイヤの金型の洗浄技術において、金型の残渣から発せられるプルームを観測することによってオペレータはレーザ光が適切な溝パターン位置に照射されているか、残渣が確実に除去されているかを観測しながらレーザヘッドの位置を制御装置5で制御することが記載されているが、オペレータが観測しながらレーザヘッドの位置を制御装置5で制御するものであって、カメラにより取得された洗浄後の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその位置情報を制御装置に記憶するものではない。
さらに、異議申立人が、令和元年9月26日に提出した参考資料1(特開2006-228862号公報)の請求項1、参考資料2(特開2002-45812号公報)の請求項1及び請求項2、参考資料3(特開平10-216664号公報)の請求項1には、いずれにも、レーザによって洗浄対象物から異物を除去する技術であって、予め検出した異物の位置情報に基づいて異物にレーザを照射することが記載されているが、これらの技術は、レーザヘッドを洗浄対象に沿って相対移動させて異物を除去した後、除去できなかった異物を再度除去するものではなく、最初から予め検出した異物の位置情報に基づいて異物にレーザを照射するものであり、参考資料1の段落【0006】の「かかる異物除去装置によれば、異物の位置情報に基づいて異物除去機構の位置を調節することにより、基板の表面から異物を確実に除去することができる。」との記載、参考資料2の段落【0013】の「この構成を採用することにより、各異物にレーザ光を照射する際に、正確な位置および最適な照射面積でレーザ光を照射することができるため、より無駄なく、より確実に異物を遊離または破砕することができる。」との記載、参考資料3の段落【0003】の「上述の技術ではSiウエハ上のどの位置に異物が付着しているか分からないため、Siウエハの全面にパルスレーザを照射しなければならない。しかし、レーザ光を走査してSiウエハ全面に対して異物の除去に必要なレーザ照射量を与えるためには長時間を要し、クリーニングに時間がかかる。また、異物の付着していない部分にもレーザ光が照射されるため、ウエハ上に形成されたパターンが損傷を受けるおそれがあり、損傷を避けるためにはレーザ光の微妙な強度調整が必要になるという問題もある。」との記載があることから、参考資料1?3に記載された技術は、効率よく確実に異物を除去するために、被洗浄物全体にレーザを照射せず、予め検出した異物の位置情報に基づいて異物にレーザを照射するようにしたものであるといえ、甲1発明1に、参考資料1?3に記載された技術を適用すると、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつレーザ光線13を照射することに代えて、予め検出した製造残留物の位置情報に基づいて製造残留物にレーザを照射することになり、本件訂正発明7における「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、前記タイヤの内面に前記レーザ光を照射」するという発明特定事項を変更することとなり、本件訂正発明7を導き出すことはできない。
さらに、異議申立人が、令和元年9月26日に提出した参考資料4(特開平6-92100号公報)の請求項1に「・・・上記光学系からの出射レーザビームが構造体の皮膜除去領域に位置するよう相対変位させる変位駆動装置とを備える」との記載があるが、同文献の段落【0001】に「本発明は、車両等の構造体の表面に存在する皮膜、例えば、塗装膜、油膜等をを除去する表面処理装置に関する。」との記載、段落【0016】に「本実施例は、対象の構造体1の表面について、レーザビームでスキャニングを行なって皮膜を除去するエリアである皮膜除去領域Sを設定し、この皮膜除去領域Sごとに、皮膜除去を行ない、この領域を構造体表面で順次移動させて、該構造体の全体について、皮膜除去を行なう構成としたものである。」との記載があるように、車両表面に塗布された塗装膜などの皮膜に複数の皮膜除去領域Sを設定して、この領域を順次移動してレーザビームで皮膜を除去する技術であり、予め検出した異物の位置情報に基づいて異物にレーザを照射する技術ではない。
そうすると、本件訂正発明7の「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射」することを前提として、相違点1-6に係る発明特定事項である「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラを備え、このカメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ことは、甲1発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用しても、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
また、本件訂正発明7の相違点1-6に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明7は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-6に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-7」という。)
本件訂正発明8においては、「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて」「前記タイヤの内面にレーザ光を照射して」「洗浄」を行い、「前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて」前記洗浄状態の把握を行い、「前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって」、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたのに対し、甲1発明1においては、かかる点が不明である点。
上記相違点1-6について検討すると 上記(7)で述べたとおり、相違点1-6は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点1-7について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、また、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件訂正発明9
本件訂正発明9と甲1発明1とを対比すると、上記一致点1で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点1-8」という。)
本件訂正発明9においては、「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え」、この「温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした」ものであるのに対し、甲1発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点1-8について検討する。
甲第4号証には、対象物に熱溶融ダメージを与えることなく付着物を除去するレーザクリーニング装置において、照射面の温度を検知し、レーザ照射面の温度上昇で部材表面が融点を超えないようレーザ光のパルス間隔Fを制御することで対象物であるプローブにエネルギーが蓄積し、溶融温度に到達してダメージを受けることを回避することが記載されている。さらに、甲第4号証の段落【0027】には、「一例として、タングステンを材料とする先端約φ20μmのプローブ針先端のコンタミネーションを除去する例を挙げる。・・・レーザビームはプローブ針先端位置で約φ50μmになるよう集光されている。」との記載、及び、段落【0029】には、「しかし繰返し照射されるレーザビームにより照射面の温度は徐々に上昇していく。このように繰返しレーザ照射を続ける場合は照射面の温度上昇に注意しレーザ照射を行う必要がある。」との記載があり、これらの記載から、甲第4号証のレーザクリーニング装置は、プローブ針先端のような極小部分(例えば約φ20μm)に繰り返しレーザ光を照射すると徐々に照射面の温度が上昇していくため、プローブ針の温度が上昇して溶融することを回避するために、レーザ光のパルス間隔を制御するものであることが理解できる。
一方、甲1発明1は、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光線13を照射するものであって、甲第4号証のレーザクリーニング装置のプローブ針先端のような極小部分に繰り返しレーザ光を照射するものではないから、エネルギーの蓄積による温度の上昇という課題を想起し得ず、甲第4号証に記載された技術を適用する動機づけが見あたらない。
そうすると、本件訂正発明9の相違点1-8に係る発明特定事項は、甲1発明1に甲第4号証に記載された事項を適用して、当業者が容易に導き出すことができたものとはいえない。
また、本件訂正発明9の相違点1-8に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明9は、甲1発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.甲第2号証を主引用例とした場合
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲2発明1とを対比する。
本件訂正発明1と甲2発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲2発明1における「レーザ光源3」は、本件訂正発明1における「レーザ発振器」に相当し、以下同様に、「レーザ光線」は「レーザ光」に、「車両用タイヤ13」は「タイヤ」に、「処理ヘッド5」は「レーザヘッド」に、「不純物」は「汚れ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄するタイヤの洗浄システム。」
の点で一致し(以下、「一致点2」という。)、以下の点で相違する(以下、「相違点2-1」及び「相違点2-2」という。)。
<相違点2-1>
本件訂正発明1においては、 「レーザヘッドを保持するアーム」を備えるのに対し、甲2発明1においては、処理ヘッド4を保持する手段が不明である点。
<相違点2-2>
本件訂正発明1においては、タイヤの内面に沿って相対移動させるレーザヘッドに関して、「レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッド」を有し、「洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッド」をタイヤの内面に沿って相対移動させるものであるのに対し、
甲2発明1においては、処理ヘッド5は、照射幅が異なる複数のものではなく、洗浄するタイヤに最適な処理ヘッド5が、複数の処理ヘッド5から選択されるものとはされていない点。

事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。
相違点2-2は、実質的に、相違点1-1と同じであり、上記1.(1)の相違点1-1の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明1の、相違点2-2に係る発明特定事項は、甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の上記記載から導き出せるものともいえない。
また、本件訂正発明1の相違点2-2に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1及び相違点2-2に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点2-3」という。)
本件訂正発明2においては、「前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲2発明1においては、処理ヘッド4を保持する手段が不明である点。
上記相違点2-2について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点2-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1及び相違点2-3について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲2発明2とを対比すると、上記一致点2に加えて、以下の点で一致し、相違点2-1及び相違点2-2で相違する。
「前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした」点。
上記相違点2-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点2-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲2発明2及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲2発明3とを対比すると、上記一致点2に加えて、以下の点で一致し、相違点2-1及び相違点2-2で相違する。
「前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした」点。
上記相違点2-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点2-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲2発明3及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1及び相違点2-2に加えて以下の点で相違する(以下、「相違点2-4」という。)。
本件訂正発明5においては、「タイヤの仕様情報が制御装置に入力されていて、仕様情報に基づいて、レーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした」ものであるのに対し、甲2発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点2-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点2-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1及び相違点2-4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-4に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点2-5」という。)
本件訂正発明6においては、「前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした」ものであるのに対し、甲2発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点2-2について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点2-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1、相違点2-4及び相違点2-5について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点2-6」という。)
本件訂正発明7においては、「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ものであるのに対し、甲2発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点2-6について検討する。
相違点2-6は、実質的に、相違点1-6と同じであり、上記1.(7)の相違点1-6の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明7の、相違点2-6に係る発明特定事項は、甲2発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用しても、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
また、本件訂正発明7の相違点2-6に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1及び相違点2-6に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点2-7」という。)
本件訂正発明8においては、「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて」「前記タイヤの内面にレーザ光を照射して」「洗浄」を行い、「前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて」前記洗浄状態の把握を行い、「前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって」、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたのに対し、甲2発明1においては、かかる点が不明である点。
上記相違点2-6について検討すると 上記(7)で述べたとおり、相違点2-6は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点2-1及び相違点2-7について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件訂正発明9
本件訂正発明9と甲2発明1とを対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点2-8」という。)
本件訂正発明9においては、「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え」、この「温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした」ものであるのに対し、甲2発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点2-8について検討する。
相違点2-8は、実質的に、相違点1-8と同じであり、上記1.(9)の相違点1-8の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明9の、相違点2-8に係る発明特定事項は、甲2発明1及び甲第4号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明9の相違点1-8に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲2発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.甲第6号証を主引用例とした場合
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲6発明1とを対比する。
本件訂正発明1と甲6発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲6発明1における「レーザビーム64」は、本件訂正発明1における「レーザ光」に相当し、以下同様に、「ライナー22」は「内面」に、「ノズル46」は「レーザヘッド」に、「支持アーム44」は「アーム」に、「剥離剤」は「汚れ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「 レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄するタイヤの洗浄システム。」
の点で一致し(以下、「一致点6」という。)、以下の点で相違する(以下、「相違点6-1」という。)。
本件訂正発明1においては、タイヤの内面に沿って相対移動させるレーザヘッドに関して、「レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッド」を有し、「洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッド」をタイヤの内面に沿って相対移動させるものであるのに対し、
甲6発明1においては、ノズル46は、照射幅が異なる複数のものではなく、洗浄するタイヤに最適なノズル46が、複数のノズル46から選択されるものとはされていない点。
相違点6-1は、実質的に、相違点1-1と同じであり、上記1.(1)の相違点1-1の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明1の、相違点6-1に係る発明特定事項は、甲6発明1及び甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明1の相違点6-1に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明1は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、上記相違点6-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点6-2」という。)
本件訂正発明2においては、「前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、支持アーム44がノズル46を3次元に自在移動させるものとはされていない点。
上記相違点6-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点6-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲6発明1ではなく、また、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲6発明2とを対比すると、甲6発明2の「ローラ装置58」は本件訂正発明3の「回転機構」に相当するから、上記一致点6に加えて、以下の点で一致し、上記相違点6-1で相違する。
「前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした」点。
上記相違点6-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点6-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件訂正発明3は、甲6発明2ではなく、また、甲6発明2及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、上記相違点6-1に加えて、以下の点で相違する(以下、「相違点6-3」という。)。
本件訂正発明4においては、「前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点6-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点6-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点6-3について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、上記相違点6-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点6-4」という。)
本件訂正発明5においては、「タイヤの仕様情報が制御装置に入力されていて、仕様情報に基づいて、レーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点6-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点6-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点6-4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、上記相違点6-1及び相違点6-4に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点6-5」という。)
本件訂正発明6においては、「前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点6-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点6-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点6-4及び相違点6-5について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点6-6」という。)
本件訂正発明7においては、「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点6-6について検討する。
相違点6-6は、実質的に、相違点1-6と同じであり、上記1.(7)の相違点1-6の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明7の、相違点6-6に係る発明特定事項は、甲6発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用して、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
また、本件訂正発明7の相違点6-6に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明7は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6で一致し、上記相違点6-6に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点6-7」という。)
本件訂正発明8においては、「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて」「前記タイヤの内面にレーザ光を照射して」「洗浄」を行い、「前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて」前記洗浄状態の把握を行い、「前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって」、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたのに対し、甲6発明1においては、かかる点が不明である点。
上記相違点6-6について検討すると 上記(7)で述べたとおり、相違点6-6は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点6-7について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件訂正発明9
本件訂正発明9と甲6発明1とを対比すると、上記一致点6-1で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点6-8」という。)
本件訂正発明9においては、「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサを備え」、この「温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした」ものであるのに対し、甲6発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点6-8について検討する。
相違点6-8は、実質的に、相違点1-8と同じであり、上記1.(9)の相違点1-8の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明9の、相違点6-8に係る発明特定事項は、甲6発明及び甲第4号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明9の相違点6-8に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明9は、甲6発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.甲第7号証を主引用例とした場合
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲7発明1とを対比する。
本件訂正発明1と甲7発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲7発明1における「レーザヘッド6が配置された」は、本件訂正発明1における「レーザヘッドを保持する」に相当し、以下同様に、「マニピュレータ4」は「アーム」に、「残渣」は「汚れ」にそれぞれ相当する。
甲7発明1における「金型」及び「金型表面」と本件訂正発明1における「タイヤ」及び「タイヤの内面」とは、それぞれ「洗浄物」及び「洗浄物の洗浄面」という限りにおいて一致し、甲7発明1における「レーザヘッド6の3次元位置を制御する制御装置5」は、レーザヘッド6の動きを制御して、金型とレーザヘッド6の相対位置を変化させるものであることは明らかであるから、本件訂正発明1の「前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置」とは、「前記洗浄物と前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記洗浄物と前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置」という限りにおいて一致する。
また、甲7発明1における「洗浄装置」と本件訂正発明1における「タイヤの洗浄システム」とは「洗浄システム」という限りにおいて一致し、さらに、甲7発明1における「前記レーザヘッド6を前記金型表面に形成されている凹凸形状を追尾するように移動させ」ることは、前記レーザヘッド6を前記金型の内面に沿って相対移動させることといえるから、甲7発明1における「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄する洗浄装置」と本件訂正発明1における「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄するタイヤの清浄システム」とは、「前記レーザヘッドを前記洗浄物の洗浄面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記洗浄物の洗浄面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記洗浄物の洗浄面を洗浄する洗浄システム」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光を洗浄物の洗浄面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記洗浄物と前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記洗浄物と前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記洗浄物の洗浄面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記洗浄物の洗浄面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記洗浄物の洗浄面を洗浄する洗浄システム。」
の点で一致し(以下、「一致点7」という。)、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-1」及び「相違点7-2」という。)。
<相違点7-1>
本件訂正発明1においては、洗浄システムは「タイヤ」の洗浄システムであって、洗浄物は「タイヤ」であり、洗浄物の洗浄面は「タイヤの内面」であるのに対し、甲7発明1においては、タイヤを洗浄する洗浄装置ではなく、洗浄物は「金型」であり、洗浄物の洗浄面は「金型表面」である点。
<相違点7-2>
本件訂正発明1においては、タイヤの内面に沿って相対移動させるレーザヘッドに関して、「レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッド」を有し、「洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッド」をタイヤの内面に沿って相対移動させるものであるのに対し、
甲7発明1においては、レーザヘッド6は、照射幅が異なる複数のものではなく、洗浄する金型に最適なレーザヘッド6が、複数のレーザヘッド6から選択されるものとはされていない点。

事案に鑑み、まず、相違点7-2について検討する。
相違点7-2は、実質的に、相違点1-1と同じであり、上記1.(1)の相違点1-1の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明1の、相違点7-2に係る発明特定事項は、甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の上記記載から導き出せるものともいえない。
また、本件訂正発明1の相違点7-2に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点7-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲7発明2とを対比すると、甲7発明2における「前記レーザヘッド6を自由に3次元位置で移動可能に構成したマニピュレータ4」と本件訂正発明2における「前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアーム」に相当するから、上記一致点7に加えて、以下の点で一致し、上記相違点7-1及び相違点7-2で相違する。
「前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした」点。
上記相違点7-2について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点7-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲7発明2及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1及び相違点7-2に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-3」という。)
本件訂正発明3においては、「前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、金型を回転させる回転機構を備えていない点。
上記相違点7-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点7-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1及び相違点7-3について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1及び相違点7-2に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-4」という。)
本件訂正発明4においては、「前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、かかるビード保持機構を備えていない点。
上記相違点7-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点7-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1及び相違点7-4について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1及び相違点7-2に加えて以下の点で相違する(以下、「相違点7-5」という。)。
本件訂正発明5においては、「タイヤの仕様情報が制御装置に入力されていて、仕様情報に基づいて、レーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点7-2について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点7-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1及び相違点7-5について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1、相違点7-2及び相違点7-5に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点7-6」という。)
本件訂正発明6においては、「前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点7-2について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点7-2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1、相違点7-5及び相違点7-6について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-7」という。)
本件訂正発明7においては、「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点7-7について検討する。
相違点7-7は、実質的に、相違点1-6と同じであり、上記1.(7)の相違点1-6の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明7の、相違点7-7に係る発明特定事項は、甲7発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用しても、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
また、本件訂正発明7の相違点7-7に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点7-1について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1及び相違点7-7に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-8」という。)
本件訂正発明8においては、「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて」「前記タイヤの内面にレーザ光を照射して」「洗浄」を行い、「前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて」前記洗浄状態の把握を行い、「前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって」、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたのに対し、甲7発明1においては、かかる点が不明である点。
上記相違点7-7について検討すると 上記(7)で述べたとおり、相違点7-7は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点7-1及び相違点7-8について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件訂正発明9
本件訂正発明9と甲7発明1とを対比すると、上記一致点7で一致し、上記相違点7-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点7-9」という。)
本件訂正発明9においては、「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサを備え、この温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした」ものであるのに対し、甲7発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点7-9について検討する。
相違点7-9は、実質的に、相違点1-8と同じであり、上記1.(9)の相違点1-8の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明9の、相違点7-9に係る発明特定事項は、甲7発明1及び甲第4号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明9の相違点7-9に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、相違点7-1について検討するまでも、本件訂正発明9は、甲7発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.甲第11号証を主引用例とした場合
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲11発明1とを対比する。
本件訂正発明1と甲11発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明1における「レーザ光線14」は、本件訂正発明1における「レーザ光」に相当し、以下同様に、「車両タイヤ1」は「タイヤ」に、「タイヤ内側2」は「内面」に、「レーザ光学系8」は「レーザヘッド」に、「ロボットアーム11」は「アーム」に、「潤滑剤残渣3」は「汚れ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄するタイヤの洗浄システム。」
の点で一致し(以下、「一致点11」という。)、以下の点で相違する(以下、「相違点11-1」という。)。
本件訂正発明1においては、タイヤの内面に沿って相対移動させるレーザヘッドに関して、「レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッド」を有し、「洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッド」をタイヤの内面に沿って相対移動させるものであるのに対し、
甲11発明1においては、レーザ光学系8は、照射幅が異なる複数のものではなく、洗浄するタイヤに最適なレーザ光学系8が、複数のレーザ光学系8から選択されるものとはされていない点。
相違点11-1は、実質的に、相違点1-1と同じであり、上記1.(1)の相違点1-1の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明1の、相違点11-1に係る発明特定事項は、甲11発明1及び甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明1の相違点11-1に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明1は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2とにおいては、甲11発明2とを対比すると、上記一致点11に加えて、
「前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームである」点で一致し、上記相違点11-1に加えて、以下の点で相違する(以下、「相違点11-2」という。)。
本件訂正発明2においては、「アームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲11発明2においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点11-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点11-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点11-2について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲11発明2ではなく、また、甲11発明2及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲11発明3とを対比すると、甲11発明3の「装置」は本件訂正発明3の「回転機構」に相当するから、上記一致点11に加えて、
「前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした」点で一致し、上記相違点11-1で相違する。
上記相違点11-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点11-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件訂正発明3は、甲11発明3ではなく、また、甲11発明3及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、上記相違点11-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点11-3」という。)
本件訂正発明4においては、「前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした」ものであるのに対し、甲11発明1においては、かかるビード保持機構を備えていない点。
上記相違点11-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点11-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点11-3について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、上記相違点11-1に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点11-4」という。)
本件訂正発明5においては、「タイヤの仕様情報が制御装置に入力されていて、仕様情報に基づいて、レーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした」ものであるのに対し、甲11発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点11-1について検討すると、上記(1)で述べたとおり、相違点11-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点11-4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、上記相違点11-1及び相違点11-4に加えて以下の点で相違する。(以下、「相違点11-5」という。)
本件訂正発明6においては、「前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした」ものであるのに対し、甲11発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点11-1について検討すると 上記(1)で述べたとおり、相違点11-1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点11-4及び相違点11-5について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点11-6」という。)
本件訂正発明7においては、「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ものであるのに対し、甲11発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点11-6について検討する。
相違点11-6は、実質的に、相違点1-6と同じであり、上記1.(7)の相違点1-6の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明7の、相違点11-6に係る発明特定事項は、甲11発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用しても、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
また、本件訂正発明7の相違点11-6に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明7は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、上記相違点11-6に加えて、以下の点で相違する。(以下、「相違点11-7」という。)
本件訂正発明8においては、「洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて」「前記タイヤの内面にレーザ光を照射して」「洗浄」を行い、「前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて」前記洗浄状態の把握を行い、「前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって」、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたのに対し、甲11発明1においては、かかる点が不明である点。
上記相違点11-6について検討すると 上記(7)で述べたとおり、相違点11-6は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点11-7について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、また、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件訂正発明9
本件訂正発明9と甲11発明1とを対比すると、上記一致点11で一致し、以下の点で相違する。(以下、「相違点11-8」という。)
本件訂正発明9においては、「前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え」、この「温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした」ものであるのに対し、甲11発明1においては、かかる構成が不明である点。
上記相違点11-8について検討する。
相違点11-8は、実質的に、相違点1-8と同じであり、上記1.(9)の相違点1-8の判断において示したと同様の理由により、本件訂正発明9の、相違点11-8に係る発明特定事項は、甲11発明1及び甲第4号証の記載事項から、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、本件訂正発明9の相違点11-8に係る発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第11号証のいずれの文献にも記載がない。
したがって、本件訂正発明9は、甲11発明1及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.特許異議申立人の意見について
(1)明確性について
特許異議申立人は、令和元年9月26日に提出した意見書において、本件訂正発明1の「前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて」の記載のうち、「洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッド」とはどのような幅であれば最適であるのか明細書に記載されておらず、その結果、発明の範囲が明確でない旨、主張する。
しかしながら、洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドとはどのような幅であるか明細書に記載されていないとしても、本件訂正発明1が「前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有」するものであって、その前提に立てば、「最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択され」ることとは、洗浄するタイヤの幅等に応じて最も有効に洗浄し得るレーザ照射幅のレーザヘッドが複数のレーザヘッドの中から選択されることを意味することは明らかであるから、発明の範囲が不明確になっているとはいえない。
また、特許異議申立人は、「この複数のレーザヘッドから1つ選択されて」とは、洗浄システムが複数のレーザヘッドの中から自動的に1つを選択することを意味するのか、作業者が複数のレーザヘッドの中から1つを選択することを意味するのか明確はでなく、発明の範囲が明確ではない旨、主張する。
しかしながら、「この複数のレーザヘッドから1つ選択されて」の記載は、それ自体で明確な表現であって、かかる事項が洗浄システムによって行われるか、作業者によって行われるかが不明であることによって、その意味内容が理解できないものとなっているとはいえないから、発明の範囲が明確ではないとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記の主張はいずれも認められない。

(2)進歩性について
ア.本件訂正発明1について
特許異議申立人は、令和元年9月26日に提出した意見書において、レーザ照射幅を調整することは甲第2号証及び甲第7号証に記載されるように、当業者にとって周知技術であって、洗浄幅を調整する手段として、洗浄具の幅の種類に応じて調整することは、甲第3号証に記載されるように、当業者が一般的に実施していた周知技術に過ぎない、と主張しているが、上記1.(1)の相違点1-1の判断に示したように、タイヤのレーザ洗浄技術において、レーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄するタイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つのレーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させることを示す文献は見あたらず、また、かかる事項は、甲第2号証、甲第7号証及び甲第3号証の上記記載から直ちに導き出せるものともいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張の内容を踏まえても、本件訂正発明1が、容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ.本件訂正発明7について
特許異議申立人は、令和元年9月26日に提出した意見書において、甲第4号証に記載された技術は、位置に関する情報も把握し制御するものである旨主張している。
しかしながら、特許異議申立人が、これに関して引用している甲第4号証の段落【0018】の「ステージ制御部14は、主制御部12からの制御を受けてステージ33を移動させる処理を行なう。同様に、光学系制御部15は、主制御部12からの制御を受けて光学系32の配置変更を行なって焦点位置やレーザ出射形状を変更する。」の記載の「焦点位置」は、プローブ針先端のコンタミネーションの位置ではない。
また、特許異議申立人は、同意見書において、レーザ洗浄の技術分野における本件特許出願時の技術水準として、甲第7号証や参考資料1ないし4を示しているが、上記1.(3)の相違点1-2の判断に示したように、本件訂正発明7の「前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射」することを前提として、相違点1-2に係る発明特定事項である「前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え」、この「カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした」ことは、甲1発明1に、甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、参考資料1ないし4に記載された技術を適用しても、当業者が容易に導き出すことができたものではない。
よって、特許異議申立人の上記主張の内容を踏まえても、本件訂正発明7が、容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ.特許異議申立人は、令和元年9月26日に提出した意見書において、甲第4号証の技術は、レーザ洗浄の技術分野において、適切な温度を維持するという技術思想を備えており、適切な温度を維持する手段として、予め設定されている温度を超えた場合に装置を停止することは、例を示すまでもなく、サーモスタットとして従来周知の技術に過ぎない、と主張している。
しかしながら、上記1.(5)の相違点1-4の判断に示したように、甲第4号証のレーザクリーニング装置は、プローブ針先端のような極小部分に繰り返しレーザ光を照射するものであって、甲1発明1の流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光線13を照射するものとは前提が異なるものであるから、これを甲1発明1に適用する動機づけが見あたらない。
また、甲1発明1にサーモスタットの技術を適用することに関して、まず、本件訂正発明9についてみると、本件特許公報の段落【0044】に「また、この実施形態では、レーザ光Lが照射されている内面15の温度を温度センサ8によって逐次検知する。制御装置7には許容温度が予め入力されている。この許容温度は、タイヤ14の内面15の溶融温度に満たない所定温度にする。温度センサ8による検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、レーザ光Lの照射を中断する。例えば、意図しない要因によってレーザヘッド4の移動速度が遅くなる、停止する等の不具合があった場合であっても、この構成によれば、照射するレーザ光Lによって内面15が過度に加熱されることがなくなる。即ち、内面15がレーザ光Lによって熱変形や損傷する不具合を防止できる。」との記載があり、本件訂正発明9は、「意図しない要因によってレーザヘッドの移動速度が遅くなる、停止する等の不具合があった場合」に、「照射するレーザ光によって内面が過度に加熱されることがなくなる」ようにするために、温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、レーザ光の照射を中断する構成を採用したものである。
そして、サーモスタットが従来周知の技術であったとしても、甲1発明1は、本件訂正発明9と同様に、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射するものであり、甲第1号証には、流出要素11をタイヤ17内の中空空間に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射するものにおいて、意図しない要因によって流出要素11の移動速度が遅くなる、停止する等の不具合があった場合に、照射するレーザ光によってタイヤ17が過度に加熱されるという課題の記載も示唆もないことからサーモスタットを採用する動機づけは見あたらない。
また、甲第2号証、甲第6号証及び甲第11号証についても、そのような記載や示唆は見あたらない。
よって、特許異議申立人の上記主張の内容を踏まえても、本件訂正発明9が、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドとしてレーザ照射幅が異なる複数のレーザヘッドを有し、洗浄する前記タイヤに最適なレーザヘッドがこの複数のレーザヘッドから1つ選択されて、この選択された1つの前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項2】
前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項3】
前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1または2に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項4】
前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした請求項1?3のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項5】
前記タイヤの仕様情報が前記制御装置に入力されていて、前記仕様情報に基づいて、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした請求項1?4のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項6】
前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした請求項5に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項7】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項8】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラと、洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、前記タイヤの内面にレーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて前記カメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項9】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置と、前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサとを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄し、前記温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にしたことを特徴とするタイヤの洗浄システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-31 
出願番号 特願2016-566832(P2016-566832)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B08B)
P 1 651・ 121- YAA (B08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 長馬 望
佐々木 芳枝
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6380557号(P6380557)
権利者 横浜ゴム株式会社
発明の名称 タイヤの洗浄システム  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 昼間 孝良  
代理人 境澤 正夫  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 昼間 孝良  
代理人 境澤 正夫  

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