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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 E06C |
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管理番号 | 1357936 |
審判番号 | 無効2018-800009 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2018-01-30 |
確定日 | 2019-11-19 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6254847号発明「脚立式作業台」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6254847号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6254847号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし2に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。 平成26年 1月 8日 本件出願(特願2014-1707号、平成24年10月16日に出願した実用新案登録第3180629号(実願2012-6300号)を新たな特許出願に変更したもの) 平成26年 5月15日 本件公開(特開2014-88762号) 平成29年12月 8日 設定登録(特許第6254847号) 平成30年 1月30日 本件無効審判請求 平成30年 4月20日 被請求人より審判事件答弁書及び訂正請求書提出 平成30年 6月 6日 請求人より審判事件弁駁書提出 平成30年 6月25日 審理事項通知書(起案日) 平成30年 7月 6日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成30年 7月20日 請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成30年 8月 8日 口頭審理 第2 訂正請求 1 訂正請求の内容 被請求人による平成30年4月20日付け訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲について、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを請求するものであって、次の事項をその訂正内容とするものである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対のバー」 とあるのを、 「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバー」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記一対のバーは、・・・(略)・・・前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される第1の状態」 とあるのを、 「前記一対のバーは、・・・(略)・・・前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 本件特許明細書の段落【0008】に「本発明の脚立式作業台は、上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対のバーと、を備え、前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、前記一対のバーは、それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であり、かつ、前記一対のバーは、前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることを特徴とする。」とあるのを、 「本発明の脚立式作業台は、上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバーと、を備え、前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、前記一対のバーは、それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であり、かつ、前記一対のバーは、前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることを特徴とする。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対のバー」について、さらに、「作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対のバー」について限定したものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か 本件特許明細書の段落【0032】には、「作業者が作業空間Sで作業をしている場合に、体の一部が枠部材30、第1閉塞部材40aまたは第2閉塞部材40bに接触することで、作業床用天板20の端部近辺で作業をしていることを認識することができる。」(「第1閉塞部材40a」と「第2閉塞部材40b」が「一対のバー」に対応する。)との記載がなされていることから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の「前記一対のバーは、・・・(略)・・・前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される第1の状態」について、「前記一対のバー」が配置される位置を、「前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置」に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「前記一対のバーは、・・・(略)・・・前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される第1の状態」について限定したものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か 本件特許明細書の段落【0015】には、「閉塞部材40は、作業床用天板20の上側、更に回動部11よりも上側に配置されている。」(「閉塞部材40」は「一対のバー」に対応する。)と記載されていることから、閉塞部材40が作業床用天板の上側にあることが示されており、また、段落【0032】には「作業者が作業空間Sで作業をしている場合に、体の一部が枠部材30、第1閉塞部材40aまたは第2閉塞部材40bに接触することで、作業床用天板20の端部近辺で作業をしていることを認識することができる」(「第1閉塞部材40a」と「第2閉塞部材40b」が「一対のバー」に対応する。)と記載されていることから、第1閉塞部材40aまたは第2閉塞部材40bが作業床用天板20の端部付近と上下の位置関係にあること、すなわち、作業床用天板20の端部の上方位置にあることが示されている。さらに、図3及び図7から、閉塞部材40(一対のバー)が作業床用天板20の昇降側の端部の上方位置に配置されていることが看取できる。 以上のことから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正事項1?2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正である。 したがって、訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か 及び 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か 訂正事項3は、上記のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項2ないし6は、それぞれ請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1ないし6は一群の請求項である。 (5)独立特許要件についての検討 本件では、訂正前の請求項1ないし2について特許無効審判の対象とされているから、訂正前の請求項1ないし2に係る訂正事項1及び2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 訂正後の請求項3ないし6に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明の構成をすべて含み、さらに発明特定事項を限定するものであって、後記するように訂正後の請求項1に係る発明が進歩性を有するものであるから、請求項3ないし6に係る発明も、進歩性を有する。また、請求項3ないし6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由も発見しない。 (6)請求人の主張について 請求人は、「【図3】を参照すると、一対のバーは、天板の一端20aの上方位置に配置されていない。・・・(略)・・・、一対のバーは、一端20aから延びる鉛直線の線上に位置しておらず、大きく作業空間側に偏位して配置されている。つまり、「端部の上方位置」に配置されていない。そうすると、一対のバーが第1の状態とされたとき「作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される」という訂正(訂正事項2)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではないから、訂正請求は、特許法第134条の2第9項が準用する同法第126条第5項の規定に違反し、許されないものである。」と主張している。(審判事件弁駁書3頁15-24行) しかしながら、「上方」は、鉛直線の線上というような限定的な事項を意味するものではなく、「うえの方」を意味するものであると解される。また「作業床用天板の昇降側の端部」は、作業床用天板の昇降側の「一端20a」だけでなく、作業床用天板の昇降側の一端20aを含む、作業床用天板の昇降側の端の部分であるから、「端部の上方位置」は、「一端20a」の上方位置のみに限られない位置を意味するものである。よって、図3及び7に、一対のバー(閉塞部材40)が、一端20aから延びる鉛直線の線上に位置しておらず、作業空間側に偏位して配置されている点が示されているからといって、一対のバー(閉塞部材40)が、「作業床用天板の端部の上方位置に配置される」といえないことにはならない。 そして、上記(2)ウで説示したように、本件特許明細書の段落【0015】及び【0032】の記載、並びに、図3及び7から看取されることから、第1閉塞部材40aまたは第2閉塞部材40bが、作業床用天板20の端部の上方位置にあることが示されているといえるので、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 3 本件訂正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合する。 よって、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、次に記載したとおりのものと認められる。(以下の【請求項1】、【請求項2】についての分説は、審決で行った。) 「【請求項1】 [A]上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、 [B]前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、 [C]前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、 [D]前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバーと、を備え、 [D1]前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、 前記一対のバーは、 それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、 前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、 前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であり、かつ、 [D2]前記一対のバーは、 前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることを [E]特徴とする脚立式作業台。 【請求項2】 [F]前記一対のバーは、前記作業床用天板から550mm?900mmの高さに位置することを特徴とする請求項1に記載の脚立式作業台。 【請求項3】 前記第1主脚の上端よりも下側と前記第2主脚の上端とが前記回動部を介して回動自在に軸着され、 前記一対のバーは、前記第1主脚のうち、前記第2主脚が軸着された位置よりも上側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の脚立式作業台。 【請求項4】 前記一対のバーは、前記第1主脚に回動自在に設けられ、起立させることで前記作業空間の一部を開放し、倒伏させることで前記作業空間の一部を閉塞することを特徴とする請求項3に記載の脚立式作業台。 【請求項5】 前記一対のバーにより前記作業空間の一部を閉塞した状態を保持するロック部材を有し、 前記ロック部材は、倒伏した前記一対のバーの間に亘って架け渡されることで、前記一対のバーを保持することを特徴とする請求項4に記載の脚立式作業台。 【請求項6】 前記枠部材は、前記第1主脚に折り畳み可能に設けられ、 前記一対のバーは、前記枠部材と共に前記作業空間を包囲する場合に、前記枠部材よりも下側に設けられていることを特徴とする請求項3ないし5の何れか1項に記載の脚立式作業台。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、特許第6254847号における特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠として甲第1号証ないし甲第8号証を提出して、無効理由を主張した。当該無効理由は口頭審理において、第1回口頭審理調書記載のとおりに、以下のように整理された。 (1)無効理由1 請求項1及び2に係る発明は、その出願前に頒布された甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とされるべきものである。 (2)無効理由2 請求項1及び2に係る発明は、その出願前に頒布された甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とされるべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:本件特許原簿謄本 甲第2号証:特許第6254847号公報(本件特許公報) 甲第3号証:米国特許第7104361号明細書 甲第4号証:米国特許第5080192号明細書 甲第5号証:特開2005-290763号公報 甲第6号証:特開2006-152593号公報 甲第7号証:特許第4170580号公報 甲第8号証:特開2006-342555号公報 3 請求人の具体的な主張 (1)無効理由1(甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基く進歩性欠如) ア 甲第3号証に記載されている発明について 甲第3号証には、以下の脚立式作業台が記載されている。 「[A]上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚(11)および作業者の昇降側としない第2主脚(12)と、 [B]前記第1主脚(11)および前記第2主脚(12)の間に亘って配置される作業床用天板(50)と、 [C]前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材(20)と、 [D]前記作業空間のうち前記第1主脚側(11)に位置して、前記作業空間を前記枠部材(20)と共に包囲する一対のバー(105、106)と、を備えた、 [E]脚立式作業台である。」 (審判請求書6頁5?16行) イ 本件訂正発明1と甲3発明の対比について (ア)甲第3号証における一対のバーによる作業空間の出入口の開閉を本件訂正発明1と対比すると、図12eに本件訂正発明1の「第1の状態(出入口を閉じた状態)」が示され、図12cに本件訂正発明1の「第2の状態(出入口を開いた状態)」が示されており、直角部材105、106は、アーム108が本件訂正発明1の「軸着部」に該当し、前方バー107が本件訂正発明1の「一対のバー」に該当しているから、まさしく上記構成D2の記載と全く同様に「前記軸着部108に配置されるそれぞれ一つの回動軸を中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能」とされていることは、極めて明らかである。 そうすると、本件訂正発明1の上記構成D1及びD2と甲第3号証の間には下記の共通点と相違点が認められる。 [共通点] 甲第3号証の一対のL形のバー105、106は、それぞれ略左右対称に軸着部を介してブラケットに回動可能に軸支され、前方バー107、107の互いの先端部を対向して直列させた第1の状態と、互いの先端部を離して開かせ左右方向から見て重なり合うように並列させた第2の状態に変形可能であり、更に、一対のバー105、106は、軸着部に配置された1軸廻りに回動可能であり、第1の状態と第2の状態の間を平面上に沿ってのみ移動する点 [相違点] 本件訂正発明1の上記構成D2が「軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピン」を限定するのに対して、甲第3号証では「軸支ピン」が設けられているかどうか必ずしも明らかでない点。(審判請求書9頁5行?10頁9行) (イ)甲3発明の「前方バー107」と「アーム108」は、別体の部材により構成され、アーム108の先端に前方バー107を回動自在に軸着することにより、それぞれに固有の機能を与えられたものであるから、個別に観察することが必要であり、むしろ、これを「直角部材105、106」であるとして全体だけを特定しても格別な意味はない。(弁駁書5頁14行?18行) (ウ)甲3発明は、図12a及び図12bに示されるような不使用時に折畳んで格納するための「折畳み格納機構」と、図12cないし図12eに示されるような使用時に一対のバーを開閉するための「バーの開閉機構」を構成しているものである。「折畳み格納機構」は、一対のアーム108、108を略コ字状の枠部材の上方に位置させた格納姿勢(図a)と、該枠部材の前方に突出させた使用姿勢(図c?d)の間で、姿勢変更自在とするように構成されており、アーム108、108の基端部に設けた折畳み用ブラケットと、該ブラケットを折畳み回動軸線A1の軸廻りに回動自在に軸着する軸着手段により構成されている。「バーの開閉機構」は、使用姿勢(図c?d)としたアーム108、108の間に形成された作業空間の出入口を開放姿勢(図c)と閉塞姿勢(図e)の間で開閉自在とするように構成されており、一対の開閉バー107、107と、該開閉バーをアーム108、108に対して開閉回動軸線A2の軸廻りに回動自在に軸着する軸着手段により構成されている。(弁駁書5頁23行?6頁3行) (エ)本件訂正発明1と対比すべき甲3発明の技術的構成は、「折畳み格納機構」ではなく、「バーの開閉機構」である。「作業台の使用時」において、作業者が作業空間に出入りする際に出入口を開放し、作業の際に出入口を閉塞するためには、「バーの開閉機構」だけを使用すれば足り、そのとき、わざわざ「折畳み格納機構」を使用しなければならない必要性はなく、合理的理由も見出し得ない。「折畳み格納機構」を使用する必要性が生じるのは、作業台の運搬や保管等の「不使用時」であり、略コ字状の枠部材の前方に突出したアーム108と、該アームから上向きに延びる開閉バー107が邪魔になるので、「折畳み格納機構」を使用することにより、略コ字状の枠部材の上方に反転させ、コンパクトに格納できるように構成したものであると、容易に理解することができ、そのように理解するのが合理的かつ常識的である。このような甲3発明における「バーの開閉機構」と「折畳み格納機構」の役割及び働きは、作業台の技術に関する当業者や、作業台を使用するユーザであれば、極めて自明のことである。(弁駁書6頁9行?6頁23行) (オ)本件訂正発明1は、明細書・図面に記載された実施形態において、略コ字状の枠部材30と、固定ブラケット41、41と、該固定ブラケットに軸着された一対のバー40a、40bにより、作業空間を包囲するように構成されている。これに対して、甲3発明は、略コ字状の枠部材と、一対の開閉バー107、107と、該開閉バーを開閉回動軸線A2の廻りに軸着させるためのアーム108、108により、作業空間を包囲するように構成されている。この際、甲3発明の「バーの開閉機構」は、アーム108、108を略コ字状の枠部材の前方に突出させた使用状態において、開閉バー107、107をそれぞれ一つの開閉回動軸線A2のみを中心に回動させるように構成されている。つまり、この状態において、アーム108、108は、軸線A2の廻りに回動不能とされた状態で保持されており、開閉バー107、107を軸線A2の廻りに回動自在に軸着するための固定ブラケットとして機能している。(弁駁書6頁24行?7頁9行) (カ)甲3発明と本件訂正発明1の対比関係は、甲3発明のアーム108、108が本件訂正発明1(実施形態)の固定ブラケット41、41に相当し、甲3発明の開閉バー107、107が本件訂正発明1(請求項1)の一対のバー(実施形態の閉塞部材40、40)に相当すると解すべきことが明らかである。(弁駁書7頁10行?7頁14行) ウ 相違点の評価について 広く機械要素一般に関して、回動すべき部材を軸着するために軸支ピンを使用することは、甲第5号証ないし甲第8号証に記載されているように周知慣用の技術であり、何らの創作的価値も存在しない。しかも、本件訂正発明1は、一対のバーが作業台のどの部分に軸着されているのか、軸着部(軸支ピン)の軸方向が横向きであるのか縦向きであるのか等々の具体的構成を全く特定していないのである。そうすると、このような具体的構成が不明瞭な軸支ピンの点だけを以て、本件訂正発明1に格別な創意工夫を認めることは、到底できないことが明らかである。(審判請求書10頁10行?10頁19行、口頭審理陳述要領書17頁21行?18頁18行) エ 本件訂正発明2における一対のバーの高さについて 甲第3号証の3欄36行?39行には、「An upper safety rail 20 is positioned at the top of the ladder 10 so that for a user of average height the upper rail 20 is at hip height when standing on the platform 50, that is approximately 900 mm above the platform.(上方の安全レール20がラダー10の頂部に配置され、平均的身長のユーザのために、アッパーレール20は、ユーザがプラットフォーム50に起立したときのヒップの高さにあり、つまり、プラットフォームの上方約900mmである。)」と説明されている。 そこで、甲第3号証の図6及び図12を参照すると、プラットフォーム50から高さ900mmの位置に設けられていると説明されているアッパーレール20に対して、作業空間の出入口を開閉する前方バー107、107の高さ位置は、前記アッパーレール20よりも僅か下側に配置されていることが看取される。 そうすると、甲第3号証において、一対のバー(前方バー107、107)は、作業床用天板(プラットフォーム50)から550mm?900mmの高さに位置していることが明らかであり、従って、甲第3号証には、本件訂正発明2の上記構成Fと同一の構成が開示されている。(審判請求書12頁17?末行) (2)無効理由2(甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術に基く進歩性欠如) ア 本件訂正発明1と甲4発明との共通点について (ア)甲4発明は、ゲート部材42、44を設けた作業台ラダーを示しており、ラダー20は、ステップ30、32、34の左右両側に位置する側部辺22及び24を含んで作業空間を包囲する略コ字状の枠部材を形成し、前記側部辺22及び24に位置して、前記作業空間を枠部材と共に包囲する一対のゲート部材42及び44を備えている。 そして、一対のゲート部材42及び44は、それぞれ左右対称に軸着部(ロッド46とクランプ48及び50)を介して回動可能であり、正面側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列するように軸着部によって支持される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が正面側と作業空間の間を移動可能な第2の状態とに変形可能とされていることが明らかであり、本件訂正発明1の上記構成D1を開示している。 しかも、一対のゲート部材42及び44は、前記軸着部を構成するそれぞれ1本のロッド46のみを中心に回動可能であり、前記第1の状態の位置と、前記第2の状態の位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることが明らかであり、本件訂正発明1の上記構成D2を開示している。(審判請求書10頁下から1行?11頁16行) (イ)甲4発明がラダーへのアクセスを防止するゲート42、44に関するものであり、この点において、作業者の作業空間における作業の安全を目的とした甲第3号証のアッパーレール20と相違することは認めるが、本件訂正発明1は、必ずしも、作業の安全が発明の課題や効果とされているものではない。そして、発明の課題及び効果で述べられている「作業空間を包囲することにより作業の効率化を図る」との意味は、具体的に何を意味しているのか明らかでなく、従って、作業空間が包囲されていれば(それだけで)作業の効率化が図られるとの意味に過ぎないと解される。そうすると、甲4発明の作業台ラダーにおいても、その本来の目的が作業者の作業空間における作業の安全を図ることであると説明されていなくても、作業者(不正者ではなく正当な作業者)が天板にアクセスする際に、天板と主脚の間の移動を容易に行うことができるように構成されており、しかも、天板に立って作業するときは、側部辺22、24を含む枠部材と、ゲート42、44により作業空間が包囲されているのであるから、作業の効率化が図られるということができ、このように、甲4発明には本件訂正発明1の課題及び効果が含まれている。そして、甲4発明を本件訂正発明1と対比したとき、審判請求書において分説した本件訂正発明1の構成A?Fのうち、構成B?Fは、甲第4号証に開示されている。(口頭審理陳述要領書18頁21行?19頁20行) イ 本件訂正発明1と甲4発明との相違点について 本件訂正発明1と甲4発明との唯一の相違点は、本件訂正発明1が第1主脚と第2主脚を上側で回動自在に軸着した開閉折畳み形式の作業台(構成A)であるのに対して、甲4発明のラダーは、折畳み不能な枠組みにより、前後脚部や、側部辺22、24を含む枠部材等を構成している点である。本件訂正発明1の構成Aは、脚立式作業台における極めて周知の構成に過ぎないものであり、そもそも、構成Aだけでなく、構成A?D及び構成Eまでの技術的構成を備えた折畳み脚立式作業台は、甲第3号証のみならず、本件特許明細書に引用された特許文献1(特開2010-126968号公報)や、その他(例えば甲第7号証)に示されるように極めて周知のことである。(口頭審理陳述要領書19頁21行?20頁1行) ウ 本件訂正発明2の一対のバーの高さについて 甲第4号証の2欄33行?38行には、「Further, rod 46 may be vertically adjusted within clamps 48 and 50 to adjust the vertical height of gates 42 and 44. It is preferable that the gates be at a vertical position that will be approximately equal to waist height for most adult members of the public. This height is preferable regardless of the overall height of ladder 20.(更に、ロッド46は、クランプ48及び50の中で縦方向に調節し、ゲート42及び44の縦方向の高さを調節することができる。ゲートは、大部分の大人の一般人の腰の高さにほぼ等しい垂直位置にあることが好ましい。この高さは、ラダー20の全高と無関係であることが好ましい。)」と記載されている。この説明によれば、甲第4号証のゲート42及び44は、作業者の腰の高さ位置に設置させられるように、ロッド46をクランプ48及び50に沿って上下移動することにより、高さ調節が可能とされている。 そうすると、ゲート42及び44は、ラダー20の全高が変わる場合でも、高さ調節により、作業者の腰の位置に合わせれば良いのであり、必要に応じて任意になし得る程度のことに過ぎないと示唆されている。 (審判請求書13頁2?17行) 第5 被請求人の主張 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して、概ね以下のとおり反論している。 2 被請求人の具体的な主張 (1)無効理由1に対して ア 本件訂正発明1及び2の特徴について 本件訂正発明1及び2は、少なくとも以下(ア)、(イ)の特徴がある。 (ア)一対のバーは、軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、第1の状態(互いの先端部が隙間を介して対向して略直列)となる位置と、第2の状態(互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列)となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能である。このような構成によって、作業者は脚立式作業台の使い方を直感で理解できる。また、一対のバーがそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動することから脚立式作業台の構造を簡単にすることができる。 (イ)一対のバーは、第1の状態において作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置され、作業者が接触することで作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる。このような構成によって、作業床用天板の端を確認する必要がなく作業の効率化を図ることができる。(答弁書4頁14行?5頁2行) イ 甲第3号証について (ア)一対のバーと対比すべき部材について 本件訂正発明1及び2の「(略コ字状の)枠部材」と「一対のバー」に対比させるべき甲第3号証の部材は、それぞれ甲3発明の「クロスメンバ80(Fig11の80に相当する部材)」と「直角部材105、106」である。ここで、注目すべきは、甲3発明の「直角部材105、106」は、Fig12b(下図を参照)のように、それぞれ「前方バー107」と「アーム108」とから構成され、作業空間を包囲する場合に「前方バー107」と「アーム108」との両方が作業空間を包囲する点である。 したがって、本件訂正発明1及び2の「一対のバー」に対応させるのは、甲3発明の「前方バー107」単体ではなく、「前方バー107」と「アーム108」とから構成される「直角部材105、106」である。このように対応させるのは、甲3発明の「前方バー107」だけでは作業空間を包囲することはできず、「アーム108」があってはじめて作業空間を包囲することができることに起因する。・・・上述したように、本件訂正発明1及び2は、「作業空間」を「(略コ字状の)枠部材」と「一対のバー」とで包囲することを特定している。すなわち、甲3発明では、「前方バー107」と「アーム108」との両方が、作業空間を包囲しているにも関わらず、「アーム108」を除外し、「前方バー107」のみを本件訂正発明1及び2の「一対のバー」と対比させるのは失当である。(答弁書5頁14行?6頁13行) (イ)一対のバーの回動について 甲3発明の「直角部材105、106」は、Fig12bからFig12cに遷移可能であるということから、第1の軸線A1を中心に第1の軸着部で回動する。次に、「直角部材105、106」は、Fig12cからFig12eに遷移可能であるということから、「前方バー107」と「アーム108」との間で第2の軸線A2を中心に第2の軸着部で回動する。したがって、「直角部材105、106」は、それぞれ第1の軸着部の軸線A1および第2の軸着部の軸線A2で回動可能である。したがって、甲3発明の「直角部材105、106」は、上述した本件訂正発明1及び2の特徴である「一対のバーは、軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能」であるという構成と相違する。また、このように構成が相違することから、甲3発明の「直角部材105、106」は、上述した本件訂正発明1及び2の特徴である「一対のバーは、・・・(略)・・・第1の状態となる位置と、第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能」という「一対のバー」の動作と相違する。甲第3号証のFig12eの状態を第1の状態とし、Fig12cの状態を第2の状態と仮定しても、甲3発明の「直角部材105、106」が、第1の状態と第2の状態となる位置とに変形している間に、第1の軸着部の軸線A1で回動した場合には、第1の状態となる位置と第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能ではなく、3次元で可動してしまう。このように、3次元で可動する「直角部材105、106」は可動の軌跡を確立できず、作業者は脚立式作業台の使い方を直感で理解することができない。また、「直角部材105、106」が第1の軸着部および第2の軸着部で回動することから構造が複雑になってしまい、脚立式作業台の構造を簡単にすることができない。 (答弁書6頁下から3行?8頁16行) (ウ)一対のバーの先端部の隙間について 甲3発明の「直角部材105、106」は、本件訂正発明1及び2のように「一対のバー」が隙間を介して対向する構成と相違する。具体的には、甲3発明の「直角部材105、106」は先端部同士がラッチ止めされる構成であり、隙間を介して対向しない。本件訂正発明1及び2は、「一対のバー」が隙間を介して対向することで、第2の状態から第1の状態に変形させるときに、ラッチ止めに手間取る虞もなく即座に作業空間を包囲することができる。(答弁書8頁17?23行) 甲第3号証の「直角部材105」の先端部の凹部と「直角部材106」の先端部の凸部とを凹凸嵌合させることで、「直角部材105」の先端部と「直角部材106」の先端部との間の隙間が埋まる。したがって、甲第3号証では、本件訂正発明1及び2のように「一対のバー」が、「第1の状態」において「互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように」はならないのである。(口頭審理陳述要領書11頁5?9行) (エ)一対のバーの配置位置について 甲3発明の「直角部材105、106」は、上述した本件訂正発明1及び2の特徴である「一対のバーは、第1の状態において作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置され、作業者が接触することで作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ことについて開示されていない。特に、甲第3号証には、側面図が図示されていないことから、「直角部材105、106」がどのような位置に配置されているかが不明である。したがって、甲3発明では、作業者が「直角部材105、106」に接触したときには、既に作業者がプラットフォーム50から足を踏み外すような位置である可能性がある。そのために、作業者はプラットフォーム50の端を確認する必要があり、作業の効率化を図ることができない。(答弁書8頁下から3行?9頁7行) 本件訂正発明1及び2の「一対のバー」は、作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置されているので作業者が接触することで作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させることを主な目的としたものであるのに対して、甲第3号証の「直角部材105、106」は、手摺レールとして利用することを主な目的としたものであることから、「直角部材105、106」を「プラットフォーム50」の端部の上方位置に配置する必然性はない。 (口頭審理陳述要領書12頁12-17行) ウ 小括 このように、甲第3号証には、本件訂正発明1及び2の構成が開示されておらず、甲第3号証から容易に想到できたものではない。(答弁書9頁8?9行) エ なお、審判請求書でも記載しているように、本件訂正発明1及び2は、出願時の審査の過程において、甲第3号証の特許前の公開公報である引用文献3(米国特許出願公開第2005/0056489号明細書)を引用して最後の拒絶理由が通知された。被請求人は手続補正書および意見書を提出して引用文献3に対する相違点および相違点に基づく効果を主張することで、特許査定になった経緯がある。本願発明は「一対のバー」が第1の状態となる位置と、第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であり、引用文献3の「直角部材105、106のバー107」が軸線A1および軸線A2の何れの軸線を中心にも回動できることから、3次元で可動し、平面上に沿ってのみ移動可能ではない相違点を主張して、特許査定になったものである。この意見書の内容は、上述した本件訂正発明1及び2の特徴に基づく甲3発明との相違点と同様の内容であって、特許査定をするに至った審査官の判断は十分に理解できるものであり、審査官の判断と同様に本件訂正発明1及び2と甲3発明との間の相違点および相違点に基づく効果を認定することが可能である。(答弁書9頁10?24行) (2)無効理由2に対して ア 甲第3号証の「直角部材105、106」を甲第4号証の「ゲート42、44」に置換することができないことについて 甲第3号証の第5欄第33行?第34行(審判請求書に添付された甲第3号証の抄訳を参照)の記載から、甲3発明の「直角部材105、106」は、4辺のすべてにレールを設けるためのものである。また、甲3発明の「直角部材105、106」は、作業者が前方セクション11を登って、容易にプラットフォーム50にアクセスしやすくするためのものである。一方、甲第4号証のうち要約(審判請求書に添付された甲第4号証の抄訳を参照)の記載、及び、甲第4号証のうち第1欄第6行?第26行の記載から、甲4発明の「ゲート42、44」は、一般の人たちがラダーを勝手に使用しないようにラダーへのアクセスを防止するためのものである。このように、甲3発明の「直角部材105、106」と、甲4発明の「ゲート42、44」とはそもそも目的が異なるものであることから、当業者は甲3発明の「直角部材105、106」を甲4発明の「ゲート42、44」に置換することは困難である。仮に、甲4発明を甲3発明に組み合せたとしても、甲4発明の目的に鑑みると、甲3発明のラダーの昇降面側に、甲4発明の「ゲート42、44」を設置して、一般の人たちがラダーへアクセスしないようにする構成が得られるに過ぎない。すなわち、甲3発明の「直角部材105、106」と、甲4発明の「ゲート42、44」との両方が併設されるに過ぎない。 (答弁書10頁11行?11頁20行) イ 甲第4号証の「ゲート42,44」自体の本件訂正発明との相違について 甲第4号証のうち第2欄第27行?第29行(審判請求書に添付された甲第4号証の抄訳を参照)には、「最も好ましくは、ゲート42及び44は、図示しないストップ部材を有しており、45度の範囲を超えて枢動することが防止されている。」との記載があり、仮に、甲3発明の「直角部材105、106」を甲4発明の「ゲート42、44」に置換できたとしても、本件訂正発明1及び2における、「一対のバー」が「左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置」することができず、本件訂正発明と相違する。更に、甲4発明の「ゲート42、44」は、上記アで指摘したとおり、上述した本件訂正発明1及び2の特徴である「一対のバーは、作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置」されたものではない。具体的には、甲4発明では、一般の人たちがラダーへアクセスできないようにするために、「ゲート42、44」が「ステップ30?32」よりもだいぶ手前側に配置されており、本件訂正発明1及び2と相違する。(答弁書11頁21行?12頁6行) ウ 小括 以上のとおり、甲4発明を甲3発明に組み合せることについての動機付けが甲第4号証には示唆されておらず、甲3発明の「直角部材105、106」を甲4発明の「ゲート42、44」に置換することは困難である。また、仮に、甲3発明の「直角部材105、106」を甲4発明の「ゲート42、44」に置換できたとしても、本件訂正発明1及び2の構成を得ることができず、甲3発明および甲4発明をから容易に想到できたものではない。(答弁書12頁7?12行) 第6 当審の判断 1 甲各号証に記載された発明又は事項について (1)甲第3号証 ア 甲第3号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (ア)1欄3?46行 「FIELD OF THE INVENTION This invention relates to ladders and more particularly platform ladders. BACKGROUND OF THE INVENTION Worldwide statistics clearly shown that ladders are dangerous especially self supporting step ladders that provide a simple and economical means for gaining access to elevated objects. The inherent danger in the use of ladders has led to many countries legislating to improve the safety of such equipment. Platform ladders provide a standing platform that is positioned below the top of the ladder that allows the user to stand on the platform and use both hands to complete tasks. Whilst there are a number of sophisticated platform ladders that provide a high level of safety by the introduction of hand rails and safety rails they tend to be bulky structures that are not readily transportable. Tradesmen require a platform ladder that is readily transportable. It is safety aspects of ladders of this kind that has brought about the present invention. SUMMARY OF THE INVENTION ・・・・・・ The ladder is preferably foldable for transportation whereby the frame sections rest one against the other.Preferably in the folded configuration the platform and upper safety rail folds within the plane defined by the ladder sections. ・・・・・・」 (上記摘記箇所に対応する、平成30年 7月20日付けで請求人から提出された口頭審理陳述要領書に添付された「甲第3号証の全訳文」を援用して併記する、以下同じ。) 「発明の分野 本発明はラダー、特にプラットフォームラダーに関する 発明の背景 世界的統計は、ラダー、特に高所の物体にアクセスするための簡単で経済的な手段を提供する自立式のラダーが危険であることを明らかに示している。 ラダー使用における固有の危険性により、多くの国がこのような機器の安全性を改善する法律を制定している。 プラットフォームラダーは、ラダーの頂部の下に位置する起立用プラットフォームを設けており、ユーザがプラットフォームに立ち、両手を使用して作業を完了することができる。手すりと安全レールの導入により高いレベルの安全性を提供する洗練された多数のプラットフォームラダーが存在するが、容易に運搬できない嵩張った構造になる傾向がある。業者は、容易に運搬できるプラットフォームラダーを必要とする。 本発明をもたらしたのは、この種のラダーの安全面である。 発明の要約 ・・・・・・ ラダーは、好ましくは輸送のために折畳み可能であり、フレームセクションが互いに載せられる。好ましくは、折畳まれた形態において、プラットフォームとアッパー安全レールは、ラダーセクションにより形成される平面内で折畳まれる。 ・・・・・」 (イ)1欄54行?2欄14行 「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS Embodiments of the present invention will now be described by way of example only with reference to the accompanying drawings in which: FIGS. 1 and 2 are schematic side elevational views of a platform ladder in an erect configuration, FIGS. 3 and 4 are schematic side elevational views of the ladder in a folded configuration, FIG. 5 is a perspective view of the ladder in a folded configuration, FIG. 6 is a perspective view of an actual platform ladder in an erect configuration, FIGS. 7a, 7b, 7c, 7d and 7e are progressive perspective views of the ladder from a folded configuration to an erect configuration, FIG. 8 is an exploded perspective view of a platform of the ladder, FIG. 9 is a perspective view of part of the ladder illustrating the location of the platform between ladder sections, FIGS. 10a and 10b are perspective views of the top of the ladder in an expanded operative position and folded position respectively, FIGS. 11a, 11b, 11c and 11d illustrate a foldable rail that forms part of the ladder, and FIGS. 12a, 12b, 12c, 12d and 12e illustrate an alternative form of a foldable rail for use with the ladder.」 「図面の簡単な説明 以下、本発明の実施の形態を図面に基づき例示として説明する。 図1及び2は、直立形態におけるプラットフォームラダーの概略側面図であり、 図3及び4は、折畳み形態におけるラダーの概略側面図であり、 図5は、折畳み形態におけるラダーの斜視図であり、 図6は、直立形態における実際のプラットフォームラダーの斜視図であり、 図7a、7b、7c、7d及び7eは、折畳まれた形態から直立した形態までのラダーの漸進的斜視図であり、 図8は、ラダーのプラットフォームの分解斜視図であり、 図9は、ラダーセクションの間のプラットフォームの位置を示すラダーの一部の斜視図であり、 図10a及び図10bは、それぞれ、展開された作動位置と、折畳み位置のラダーの頂部の斜視図であり、 図11a、11b、11c及び11dは、ラダーの一部を形成する折畳み可能なレールを示しており、 図12a、12b、12c、12d及び12eは、ラダーに使用する折畳み可能なレールの別の形式を示している。」 (ウ)3欄15?26行 「Actual embodiments of the platform ladder 10 are illustrated in FIGS. 5 to 12 of the accompanying drawings. The ladder 10 comprises two elongate ladder sections 11 , 12 , each comprising a pair of parallel stiles 13 , 14 joined by spaced rungs 15 . The ladder sections 11 , 12 are pivotally secured together through an upper rail 20 at the top of the ladder to define an A frame structure. The pivotal association of the ladder sections 11 , 12 allows the ladder 10 to assume a folded configuration shown in FIG. 5 and then be expanded to assume the erect position shown in FIG. 6 . FIG. 7 illustrates the progressive movement of the rail sections 11 , 12 from the folded to the erect position.」 「プラットフォームラダー10の実際の実施形態を添付図面の図5ないし12に図示している。ラダー10は、2つの細長いラダーセクション11、12を備え、各セクションは、間隔をあけた横桟15により接合された一対の平行なスタイル13、14を備えている。ラダーセクション11、12は、ラダー頂部のアッパーレール20を介して枢着され、Aフレーム構造を形成する。ラダーセクション11、12の枢結は、ラダー10が図5に示す折畳み形態を呈した状態から、図6に示す起立状態を呈するように拡開可能とする。図7は、レールセクション11、12が折畳み位置から起立位置へ漸進的に移動する様子を示している。」 (エ)3欄31?57行 「As shown in FIG. 6 , the forward ladder section 11 constitutes the climbing section and has three spaced rungs 30 , 31 , 32 in the form of rectangular plates of aluminium. In the erect position a platform 50 extends across the ladder sections 11 , 12 replacing what would otherwise have been the fourth rung. An upper safety rail 20 is positioned at the top of the ladder 10 so that for a user of average height the upper rail 20 is at hip height when standing on the platform 50 , that is approximately 900 mm above the platform. The platform 50 that is adapted to extend across the ladder sections 11 , 12 is shown in detail in FIG. 8 and comprises a rectangular aluminium framework 51 defining a perforated standing platform 52 that is reinforced by a series of parallel reinforcing beams 55 that are located under the standing surface 52 . One end of the platform is secured to the climbing section 11 by the location of U shaped brackets 56 , 57 that are riveted to a U shaped recess 58 , 59 on the end of the platform as shown in FIG. 9 to encase a cylindrical rung 60 extending across the stiles 13 , 14 of the section. This location thus allows the platform 50 to pivot relative to the climbing section 11 about the rung 60 . The opposite end of the platform is provided with a pair of hook members 61 , 62 that are riveted to the ends of the platform 50 to define arcuate cutouts 63 , 64 that locate on the cylindrical rung 65 on the rear section 12 of the ladder 10 . The location of the platform on the rungs 60 , 65 of the sections 11 , 12 is shown in FIG. 9 .」 「図6に示すように、前方のラダーセクション11は、登上セクションを構成し、アルミニウム製の矩形プレートの形式とされた3個の間隔をあけた横桟30、31、32を有する。起立位置において、プラットフォーム50は、そうでなければ第4の横桟とされたものに代えて、ラダーセクション11、12を横切って延びる。上方の安全レール20がラダー10の頂部に配置され、平均的身長のユーザのために、アッパーレール20は、ユーザがプラットフォーム50に起立したときのヒップの高さにあり、つまり、プラットフォームの上方約900mmである。 プラットフォーム50は、ラダーセクション11、12を横切って延びるようにされ、詳細を図8に示しており、矩形アルミニウムのフレームワーク51を構成し、起立面52の下に位置する一連の平行な補強ビーム55により補強された穴明きの起立プラットフォーム52を定めている。プラットフォームの一端は、図9に示すように、プラットフォームの端部のU形溝58、59にリベット止めされたU形ブラケットの配置により、登上セクション11に固着され、該セクションのスタイル13、14を横切って延びる筒状の横桟60を包み込んでいる。これにより、プラットフォーム50は、横桟60の部分で登上セクション11に対して旋回することができる。プラットフォームの反対側の端部には、プラットフォーム10の端部にリベット止めされた一対のフック部材61、62が設けられ、ラダー10の後部セクション12の筒状横桟65に位置するアーチ形の切欠き63、64を形成する。セクション11、12の横桟60、65の上に位置するプラットフォームを図9に示している。」 (オ)4欄9?45行 「As described above, the member 3 ( FIG. 1 ) of the four point linkage essentially includes the upper rail 20 of the ladder 10 and three embodiments of this upper rail are described hereunder with reference to FIGS. 10 to 12 . In all three embodiments, three square sectioned aluminium tube members are secured between flanges mounted on the ends of the stiles of the climbing and rear sections 11 , 12 . A cross member 80 is attached across the stiles of the rear section 12 from which can be suspended a tool tray 90 . In the embodiment shown in FIGS. 10a and 10b the fourth side or cross member 82 of the rail 20 is hinged to the member and latched on the opposite side so that it can be opened to provide access. The whole rectangular rail 20 pivots about the ends of the climbing section 11 . The geometry of the ladder allows an extended version of the upper rail 20 and cross member 82 to fold up within the profile defined by the outside edges of the closed ladder 10 . However, it will protrude past the top end of the front section 11 of the ladder in the closed position making the overall length of the longer, see FIG. 10b. This configuration requires the user to open the ladder, climb up and disengage the cross member 82 to gain access to the platform area. In the embodiments of FIGS. 11 and 12 , in order to complete a four sided rail the forward section 100 must be capable of splitting such that it can pass around the body of the user and be reassembled. This function can be achieved in various ways including splitting at or near the pivot at the top of frame members and having a solid “U” section that re-latches on the other side of the ladder at or near the pivot of the frame members. The example in FIG. 11 shows the forward section comprising a right angled member 101 pivoted to the top of one stile of the forward section 11 and a second member 102 pivoted to the top of the other stile. A suitable latching device allows the locking and unlocking of the members 101 and 102 . The member 101 uses a joint with two orthogonal axis and two rotational degrees of freedom allowing these members to hinge.」 「上述のように、4点リンケージの部材3(図1)は、本質的にラダー10のアッパーレール20を含んでおり、このアッパーレール20の3つの実施態様を図10ないし12を参照して以下に述べる。3つの実施態様の全てにおいて、3つのスクエアに区成されたアルミニウムチューブ部材が昇降側と後側のセクション11、12のスタイルの端部に搭載されたフランジの間に固着されている。クロスメンバ80が後部セクション12のスタイルを横切って取り付けられ、そこから工具トレイ90を吊持することができる。図10a及び10bに示す実施形態において、レール20の第4側ないしクロスメンバ82は、前記部材にヒンジ連結されて、反対側にラッチ止めされ、アクセスを提供するために開くことができる。矩形レール20の全体は、昇降セクション11の端部に枢支されている。ラダーのジオメトリは、閉じたラダー10の外側縁部により形成される輪郭の内部で、延長形式のアッパーレール20とクロスメンバ82の折畳みを可能にする。しかしながら、閉じた状態のラダーの正面セクション11の上端を越えて突出し、全長が長くなる。図10bを参照。この構成は、ユーザがプラットフォーム領域にアクセスするためには、ラダーを開き、登り上がり、クロスメンバ82を解放することを必要とする。 図11及び12の実施形態において、4辺レールを完成させるためには、前方のセクション100は、ユーザの身体の周りを通過して、再度組み立てられるように、分割できるものでなければならない。この機能は、フレーム部材の頂部の枢支部又はその近くで分割することを含み、フレーム部材の枢支部又はその近くでラダーの他側に再度ラッチ止めされるソリッドな「U」セクションを有するような多様な方法で達成することができる。図11の例は、前方セクション11の一方のスタイルの頂部に枢支された直角部材101と、他方のスタイルの頂部に枢支された第2部材102から成る前方セクションを示している。適切なラッチ装置が部材101及び102のロックとロック解除を可能にする。部材101は、2つの直交軸と2つの回転自由度を有するジョイントを使用して、これらの部材をヒンジ結合させる。」 (カ)4欄61行?5欄34行 「In the embodiment of FIG. 12 the front rail is split to two right angled members 105 , 106 . Each member has a forward bar 107 that is rotatable about an arm 108 which is in turn pivotally secured to the upper end of the stile of the forward section. FIG. 12 shows the operation of the mechanism from the point where the user has opened the ladder, climbed the front section 11 and is standing on the platform 50 facing towards the rear section 12 . The user lifts the bars 107 ( FIG. 12a), and releases a latch which hold them in an aligned position. By rotating them about the arms 108 the forward ends disconnect. The arms 108 are then free to pass around the user's body and rotate until constrained by the bracket at the ends of stile. The forward bars 107 can then be re-engaged by rotating them towards each other and reinserting a spigot 109 until they are constrained to an inline position with each other by the interaction of the spigot 109 within the bar 107 . The connection between bars 107 can be latched in the inline position so that unintentional separation of the members is impossible. The spigot 109 once inserted into the open end of the tube of bars 107 acts in such a way as to allow these members to only move towards the upright vertical (when folded out FIG. 12e) but not fall below the horizontal plane. This feature allows the connected members to bear a vertical downward load as might be applied by the users weight. Integrated into the spigot 109 is a hole which mates with a pin inside the tube of member that prevents the spigot from withdrawing while the two are aligned horizontally. FIG. 7 shows the ladder in intermediate stages during the opening motion of the ladder. To accomplish this the user would stand facing the front section 11 with the right hand on the right hand stile of the front section. With positive pressure from the left hand (toward the ladder) to the top of the platform member 50 and drawing the front section 11 towards the user, the ladder 10 will open fully as in FIG. 7 whereupon the front legs are lowered to the ground. The rear legs remain in contact with the ground during this motion. Having the front rail folded over the rear rail allows the user to ascend the front climbing section to the platform area unimpeded. The user can then assemble the rail as illustrated in FIG. 12 providing railing protection on all four sides.」 「図12の実施形態において、フロントレールは、2つの直角部材105、106に分割されている。各部材は、アーム108を中心に回転可能な前方バー107を有しており、該アームは前方セクションのスタイルの上端に枢着されている。 図12は、ユーザがラダーを開き、前方セクション11を登り、後方セクションに向いてプラットフォーム50の上に立ったときからの機構の動作を示している。ユーザは、バー107(図12a)を持ち上げ、それらを整列位置に保持するラッチを解放する。これらをアーム108の周りに回転させることにより、前方端部の接続が断たれる。次いで、アーム108は、ユーザの身体の周りを自由に通り抜け、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられる。次いで、前方バー107は、互いに向かい合うように回転すると共に、バー107の内部におけるスピゴット109の相互作用により直列状態となるように拘束されるまでスピゴット109を再び挿入することにより、再び係合させることができる。バー107の間における連結は、直列状態にラッチ止めされるので、部材が不慮に分離することは不可能である。スピゴット109がバー107のチューブ開口端に挿入されると、これらの部材を直立垂直方向にのみ移動可能とするが(図12eの折畳み時)、水平面から下降しないように作用する。この構成により、接続された部材は、ユーザの体重によりかけられるような垂直下向き荷重に耐えることができる。スピゴット109に一体化された穴は、部材のチューブ内部のピンと嵌合し、2つが水平に整列されている間、スピゴットが引き抜かれることを防止する。 図7は、ラダーを開く動作中の中間段階におけるラダーを示している。これを達成するために、ユーザは、右手を前方セクションの右側スタイルに当て、前方セクションに向けて立つ。左手から(はしごに向けて)プラットフォーム部材50の頂部に圧力をかけ、前方セクション11をユーザに向けて引き寄せると、ラダー10は図7のように完全に開き、前方脚部が地面に降ろされる。後側の脚部は、この動きの間、地面と接触したままである。リアレールの上にフロントレールを折畳ませることにより、ユーザは、前方の登りセクションからプラットフォーム領域にスムースに登ることができる。次いで、ユーザは、図12に示すように4辺の全てにレール保護を設けたレールを組立てることができる。」 (キ)上記(エ)、(オ)及び(カ)を考慮すると、FIG.6(図6)、FIG.7(図7)及びFIG.12e(図12e)から、安全レール20が、4辺に位置するレールにより形成されること、安全レール20が、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間において設けられた2つのレール、後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したレール(リアレール)、及び、登上セクション11側に設けられた、直角部材105,106に分割されるフロントレールからなることが看て取れる。 (ク)FIG.6(図6)から、安全レール20の4辺に位置するレールのうち、登上セクション11側の辺を形成する部分は、プラットフォーム50の端部の上方位置に配置されている状態となることが看て取れる。 上記のことと、FIG.12e及びa(図12e及びa)から、アーム108を中心に回転可能な各前方バー107が登上セクション11側で連結されると、前方バー107は、プラットフォーム50の端部の上方位置に配置されている状態となることがいえる。 (ケ)FIG.6,7e(図6,7e)から、プラットフォーム50の上方に作業するための空間が形成されていることが看て取れる。 上記のことから、FIG.12a?e(図12a?e)の例においてもプラットフォームの上方に作業するための空間が形成されていることがいえる。 (コ)FIG.7e,12a?e(図7e,12a?e)から、プラットフォーム50の上方に配置される安全レール20は、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間において設けられた2つのレールと、後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したリアレールとによって略コ字状となる枠を形成することが看て取れる。 また、FIG.6(図6)及びFIG.12e(図12e)からみて、登上セクション11側に設けられている直角部材105,106は、略コ字状となる枠と共に、プラットフォーム50に起立する作業者を包囲するものであるといえる。 (サ)FIG.12a?c(図12a?c)及び上記(カ)の「アームは前方セクション(登上セクション11)のスタイルの上端に枢着されている」こと、及び、「アーム108は、ユーザの身体の周りを自由に通り抜け、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられる。」との記載から、直角部材105、106のアーム108は、リアレールの上にフロントレールを折畳ませた状態から、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられるものであるといえる。 (シ)FIG.6(図6)から、プラットフォームラダーを登上セクション11側から見たとき、一方のスタイル13は、左側に位置し、他方のスタイル14は、右側に位置していることが看て取れる。 (ス)FIG.12c及びd(図12c及びd)から、前方バー107は、アーム108がスタイル端部のブラケットによって拘束された位置において、それぞれ略左右対称にアーム108を中心に回転可能である点が看て取れる。 (セ)FIG.12e(図12e)から、直角部材105,106の前方バー107が、前方バーの間において連結がなされることが看て取れ、FIG.12d(図12d)から、当該前方バー107をFIG.12d(図12d)の状態から回動させている点が看て取れ、FIG.12c(図12c)から、当該前方バー107の互いの先端部が離れるように開くことにより、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置させ、その間に空間が存在する状態となる点が看て取れる。 このことから、FIG.12e(図12e)の状態とFIG.12c(図12c)の状態は、前方バー107の回動により、互いに変形可能であるといえる。 (ソ)上記(カ)の「該アームは前方セクションのスタイルの上端に枢着されている」、及び「アーム108は、ユーザの身体の周りを自由に通り抜け、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられる」の記載から、一対の前方バー107は、FIG.12e(図12e)で示される状態となる位置とFIG.12c(図12c)で示される状態となる位置との間を、平面上に沿って移動可能であるといえる。 イ 甲3発明の認定 上記ア(ア)?(ソ)を踏まえると、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲3発明) 「輸送のために折畳み可能であり、プラットフォーム50とアッパーレール20がラダーセクションにより形成される平面内で折畳まれるプラットフォームラダーであって、 ラダー頂部のアッパーレール20を介して枢着され、Aフレーム構造を形成し、 間隔をあけた横桟15により接合された一対の平行なスタイル13、14を備えた、登上セクション11および後部セクション12と、 登上セクション11と後部セクション12とを横切って延びるようにされた、ユーザが立って作業をするためのプラットフォーム50と、 プラットフォーム50の上方において、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間においてそれぞれ設けられた2つのレールと、後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したリアレールとによって形成される、略コ字状となる枠と、 プラットフォーム50に形成される作業するための空間のうち、登上セクション11側に設けられ、前記作業をするための空間を前記枠と共に包囲する、フロントレールが分割された直角部材105,106と、を備え、 直角部材105,106は、登上セクション11のスタイルの上端に枢着されており、直角部材105,106をリアレールの上に折畳ませた状態から、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられるアーム108と、該アーム108を中心に略左右対称に回動可能な前方バー107を有するものであって、 前記登上セクション11側から見たときに一方のスタイル13側を左とし、他方のスタイル14側を右とすると、 直角部材105,106は、 プラットフォームに登ることができる、リアレールの上に折畳ませた状態Aと、 その状態Aから回転させて、前記アーム108がスタイル端部のブラケットによって拘束された位置において、各前方バー107が、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、空間が存在する状態Bと、 その状態Bから各前方バー107を平面上に沿ってさらに回転させて、登上セクション11側において、前方バー107を互いに向かい合うまで回転すると共に、前方バー107の内部におけるスピゴット109の相互作用により直列状態となるように拘束されるまでスピゴット109を挿入して、係合させることで、直列状態にラッチ止めされた前方バー107、107が、プラットフォーム50の端部の上方位置に配置される状態Cと、に変形可能であり、状態Cから状態Bに変形するときには、各前方バー107を、互いの先端部が離れるように開く、 プラットフォームラダー。」 (2)甲第4号証 ア 甲第4号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。 (ア)フロントページ右欄 ABSTRACT 「ABSTRACT A ladder is disclosed which includes gate members to block access to the ladder. The gate members preferably include a warning against unauthorized use of the ladder. The ladder may be mounted on wheels such that it may be transportable, for uses in environments such as warehouses. Since these environments may be exposed to customer use, the warnings may prevent unauthorized use of the ladder by customers.」 (上記摘記箇所に対応する、平成30年 1月30日付けで請求人から提出された審判請求書に添付された「甲第4号証の抄訳」を援用して併記する、以下同じ。) 「要約 ラダーへのアクセスをブロックするゲート部材を有するラダーを開示している。ゲート部材は、好ましくは、ラダーの不正使用に対する警告を含んでいる。ラダーは、倉庫等の環境内での使用のため、輸送可能となるように車輪の上に搭載することができる。これらの環境は、顧客の使用にさらされるので、警告により、顧客によるラダーの不正使用を防止することができる。」 (イ)2欄4行?19行 「A ladder 20 according to the present invention is disclosed in FIG. 1 and includes lateral sides 22 and 24. Vertically extending lateral frames 26 and 28 are associated with lateral sides 22 and 24, respectively. Steps 30, 32 and 34 extend between lateral sides 22 and 24. Ladder 20 is normally supported on legs 36. Wheels 38 are mounted a vertical distance off of the ground greater than the radius of the wheels, but less than the diameter of the wheels. In this way, ladder 20 can be pivoted off legs 36 and onto wheels 38 such that it may be moved to a new location. It is then reset on legs 36. Wheels 38 are preferably mounted in wheel mounts 40. Blocking member, or gate 42 extends inwardly from frame 26 and an opposed gate 44 extends inwardly from frame 28. Preferably, rod 46 is received in a pair of clamps 48 and 50 on each frame 26 and 28 to mount gates 42 and 44.」 「本発明のラダー20は、図1に開示されており、側部辺22及び24を有する。垂直方向に延びる側部フレーム26及び28がそれぞれ側部辺22及び24と結合されている。ステップ30、32及び34が側部辺22及び24の間に延設されている。ラダー20は、普通は脚部36に支持されている。車輪38は、地面から車輪の半径よりも大きいが車輪の直径よりも小さい垂直距離に取付けられている。このようにして、ラダー20は、脚部36から外れて車輪38の上に旋回され、新しい場所に移動することができる。そこで、脚部36の上に置き直される。車輪38は、好ましくは、車輪マウント40に搭載されている。ブロック部材ないしゲート42は、フレーム26から内向きに延び、反対側のゲート44は、フレーム28から内向きに延びている。好ましくは、ロッド46が各フレーム26及び28の一対のクランプ48及び50により受取られ、ゲート42及び44を搭載する。」 (ウ)2欄20行?32行 「Most preferably, gates 42 and 44 are spring biased to the illustrated position at which they extend generally parallel to the lateral extent of 20. Both gates 44 and 42 may be pivoted against the spring bias, preferably both inwardly or outwardly of the illustrated position to provide access to steps 30, 32, 34. The spring bias then returns gates 42 and 44 to the illustrated position. Most preferably, gates 42 and 44 include a stop member, not illustrated, which prevents pivoting of the gates beyond a 45 degree extent. The details of the spring bias or the stop member form no part of this invention and are conventional arrangements within the skill of a worker in the prior art.」 「最も好ましくは、ゲート42及び44は、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる図示の状態に向けてスプリング付勢されている。ゲート42及び44の両者は、ステップ30、32及び34へのアクセスを可能とするため、スプリング付勢に抗して、図示位置の内外両方向に枢動させることができる。その後、スプリング付勢は、ゲート42及び44を図示の位置に戻す。最も好ましくは、ゲート42及び44は、図示しないストップ部材を有しており、45度の範囲を超えて枢動することが防止されている。スプリング付勢及びストップ部材の詳細は、本発明の一部を形成するものではなく、従来技術の作業者のスキルの範囲内における従来構成である。」 (エ)2欄33行?38行 「Further, rod 46 may be vertically adjusted within clamps 48 and 50 to adjust the vertical height of gates 42 and 44. It is preferable that the gates be at a vertical position that will be approximately equal to waist height for most adult members of the public. This height is preferable regardless of the overall height of ladder 20.」 「更に、ロッド46は、クランプ48及び50の中で縦方向に調節し、ゲート42及び44の縦方向の高さを調節することができる。ゲートは、大部分の大人の一般人の腰の高さにほぼ等しい垂直位置にあることが好ましい。この高さは、ラダー20の全高と無関係であることが好ましい。」 (オ)FIG.1(図1)から、以下の事項が看て取れる。 a ラダーが、側部辺22及び24の各々に略平行に設けられた傾斜状の支柱にステップ30、32を有して梯子状に形成され、作業者の昇降側となるはしご部材を備えていること。 b 前記はしご部材の上端にステップ34が配置されていること。 c ラダーが、側部辺22及び24と、側部辺22及び24を互いに連結する部材とを有し、上記ステップ34の上方を包囲するコ字状の枠部材を備えていること。 d ラダーのステップ30、32、34にアクセスする側のステップ30より手前に位置する、ラダーへのアクセスをブロックする一対のゲート42及び44を備えていること。 e ラダーのはしご部材にアクセスする側から見たとき、はしご部材の右左において、側部辺22,24のそれぞれに連なるフレーム26,28を有していること。 (カ)上記(ア)?(エ)を参酌すると、FIG.1(図1)から、以下の事項が看て取れる。 a 一対のゲート42及び44の互いの先端部が隙間を介して対向して、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されていること。 b 一対のゲート42及び44は、略左右対称にクランプ48及び50を介して、それぞれ内外両方向に枢動させて開くこと、また、内外両方向に枢動させることにより、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態が取れること。 c ゲート42及び44が、各々クランプ48及び50で形成される1つの枢軸のみを中心に回動可能であって、ラダーの横向き方向に概ね平行して延びて枢着されている状態と、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態との間を平面上に沿ってのみ移動可能であること。 イ 甲4発明の認定 上記ア(ア)?(カ)を踏まえると、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲4発明) 「ラダーへのアクセスをブロックするゲート部材を有するラダーにおいて、 側部辺22及び24の各々に略平行に設けられた傾斜状の支柱にステップ30、32を有して梯子状に形成され、作業者の昇降側となるはしご部材と、 前記はしご部材の上端に配置されるステップ34と、 側部辺22及び24と、側部辺22及び24を互いに連結する部材とを有し、上記ステップ34の上方を包囲するコ字状の枠部材と、 前記はしご部材にアクセスする側のステップ30より手前に位置する、ラダーへのアクセスをブロックする一対のゲート42及び44と、を備え、 前記はしご部材にアクセスする側から見たときに、側部辺22に連なる一方のフレーム26側を右とし、側部辺24に連なる他方のフレーム28側を左とすると、 前記ゲート42及び44は、 各フレーム26及び28の一対のクランプ48及び50により受取られるロッド46に搭載されており、それぞれ略左右対称に、各ロッド46をクランプ48及び50を介して枢動させることができるものであって、 互いの先端部が隙間を介して対向して、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されている状態と、 クランプ48及び50を介して枢動させて開くことで、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態と、に変形可能であり、かつ、 前記ゲート42及び44は、 ゲート42及び44が、各クランプ48及び50で形成される1つの枢軸のみを中心に回動可能であって、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されている状態と、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態との間を平面上に沿ってのみ移動可能であるラダー。」 (3)甲第5号証 ア 甲第5号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0024】 また、角度設定板10a,10bの直線状部の側寄りに上下の角度設定板10a,10bの間に固定ピン12を立設し、一方、手摺部材6に前記スリット11a,11b,11cに選択的に着脱自在に挿入する係止ピン13を立設するとともに、前記固定ピン12が上下方向に挿通する長孔14を穿設し、固定ピン12と係止ピン13との間にバネ15を弾装する。長孔14の長さはスリット11a?11cの長さとほぼ等しく形成する。 【0025】 これにより、手摺部材6は、長孔14の長さ分だけスライド自在で、かつ、固定ピン12位置を中心軸として角度設定板10a,10bの円弧状部に沿って回動自在に角度設定金具7に取り付けられる。なお、図5に示す例では、90度間隔で2個のスリット11a,11bを形成した。」 (イ)図1から補助手摺3に手摺部材6が回動可能に取り付けられていること、また図3から、角度設定金具7に設けられた固定ピン12を中心に手摺部材6を回動可能に接続したことが看て取れる。 (4)甲第6号証について ア 甲第6号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0030】 前記位置決めとして切欠き孔8a,8bのうち、切欠き孔8aは下方位置に、切欠き孔8bは横位置にあり、またブラケット8には軸31が設けられ、この軸31に対して長穴33をもって手摺り上桟9の根元部が回動かつ移動可能に軸着している。また、ピン30はバネ32により軸31の方に引き寄せられるように付勢される。」 (イ)「【0032】 この状態からバネ32に抗して切欠き孔8aからピン30を抜き、そのまま軸31を中心に手摺り上桟9を水平になるまで回動させ、ピン30を切欠き孔8bに嵌め込む。このピン30はバネ32に引かれて切欠き孔8bから抜けることはなく、手摺り上桟9は水平状態で固定される。再度、手摺り上桟9を折り畳むには逆の動作を行えばよいが。軸31に対して長穴33をもって手摺り上桟9の根元部が横移動して切欠き孔8bからピン30を外すことができる。」 (ウ)「【0034】 手摺り上桟9に固定される第1の金具115と、手掛かり部材6に固定される第2の金具116とで構成し、第1の金具115を内側にして第1の金具115と第2の金具116の端部をピン117で回動自在に軸着した。」 (エ)図5、図6から、手掛かり部材6に設けられた軸31やピン117を中心に、手摺り上桟9を回動可能に接続したことが看て取れる。 (5)甲第7号証 ア 甲第7号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0017】 梯子枠3の上部の手摺支柱10に取り付ける手摺枠8,9は、図4に示すようにアルミニウム合金などを用いて断面ロ字形の中空に形成した型材を平面コ字形に形成したもので、一方の手摺枠8は他方の手摺枠9よりも突出長を長く形成し、長尺な手摺枠8は、開口部側の両端を一方の手摺支柱10の上部の、前記回転金具11による結合部の直下位置で、手摺支柱10の内側に回動自在に軸着する。 ・・・・ 【0020】 そして、両手摺枠8,9ともに突出端に位置する桟8a,9aを隣接の桟8b,9bに対して係脱自在に組み合わせる。この組合せ構造は、例えば、桟8a,9aの一端を隣接の一方の桟8b,9bに対して垂直方向に回動自在に軸着し、隣接の他方の桟8b,9bの端部に桟8a,9aの他端が係止する溝部13を形成し、この溝部13に桟8a,9aの他端を係脱自在に係合するものとする。」 (イ)図4から、手摺支柱10に設けられた軸支ピンを中心に、手摺枠9を回動可能に接続したことが看て取れる。 (6)甲第8号証 ア 甲第8号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0037】 前記手摺り上桟8の先端近傍に、図3、図4に示すように手掛り部材6と手摺り上桟8と天板3とで形成される垂直面の空隙13に配置される棒状の遮断部材9の一端をピンにより垂直方向に回動自在に軸着する。」 (イ)図3、図4から、手摺り上桟8に設けられた軸支ピンを中心に、遮断部材9を回動可能に接続したことが看て取れる。 2 無効理由1(甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基く進歩性欠如)について (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲3発明との対比 本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明の「プラットフォームラダー」は、本件訂正発明1の「脚立式作業台」に相当する。 (イ)甲3発明の「登上セクション11」は、ユーザーの登上する側となるセクションであるから、本件訂正発明1の「作業者の昇降側となる第1主脚」に相当する。また、「後部セクション12」は、後部セクション12を構成する左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したレールがあり、工具トレイ90は昇降には妨げとなるものであり、甲第3号証には「後部セクション12」を登上に利用するとの記載もないことから、本件訂正発明1の「作業者の昇降側としない第2主脚」に相当する。 また、甲3発明のプラットフォームラダーは「折畳み可能」であり、「登上セクション11」および「後部セクション12」は、「ラダー頂部のアッパーレール20」を介して枢着されていることから、「登上セクション11」および「後部セクション12」は、ラダーの頂部側にあたる「登上セクション11」と「後部セクション12」の「上側」が、枢着されている部位、すなわち「回動部を介して」「回動自在に軸着されている」といえる。 さらに、甲3発明の「登上セクション11」および「後部セクション12」が、「Aフレーム構造を形成し」、「間隔をあけた横桟15により接合された一対の平行なスタイル13、14」を備えていることは、本件訂正発明1の「作業者の昇降側となる第1主脚」及び「作業者の昇降側としない第2主脚」が「下側に向かって外側に傾斜し」、「それぞれ」「梯子状に形成され」た「一対の支柱」を備えていることに相当する。 以上のことから、甲3発明の「ラダー頂部のアッパーレール20を介して枢着され、Aフレーム構造を形成し、間隔をあけた横桟15により接合された一対の平行なスタイル13、14を備えた、登上セクション11および後部セクション12」は、本件訂正発明1の「上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚」に相当する。 (ウ)甲3発明の「登上セクション11と後部セクション12とを横切って延びるようにされた、ユーザが立って作業をするためのプラットフォーム50」は、本件訂正発明1の「前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板」に相当する。 (エ)甲3発明の「プラットフォーム50の上方において、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間においてそれぞれ設けられた2つのレール」、「後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したレール(リアレール)」とによって形成される、「略コ字状となる枠」は、本件訂正発明1の、「前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材」に相当する。また、「プラットフォーム50の上方において、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間においてそれぞれ設けられた2つのレール」と「後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したレール(リアレール)」からなる「略コ字状」の枠部材は、該コ字状の枠部材と共に「作業をするための空間」を包囲する「登上セクション11側」の「フロントレール」を含まないから、「登上セクション11側」が開放された状態で配置されていることが明らかである。そうすると、甲3発明の「プラットフォーム50の上方において、登上セクション11と後部セクション12の同じ側にあるスタイルの上端部同士の間においてそれぞれ設けられた2つのレールと、後部セクション12の左右のスタイルの上端部の間に設けられ、工具トレイ90を吊持したリアレールとによって形成される、略コ字状となる枠」は、本件訂正発明1の「前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材」に相当する。 (オ)甲3発明の「前記登上セクション11側から見たときに一方のスタイル13側を左とし、他方のスタイル14側を右とすると、」は、本件訂正発明1の「前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、」に相当する。 (カ)甲3発明の「直角部材105,106」と本件訂正発明1の「一対のバー」についてみると、 a 甲3発明の「直角部材105,106」は、フロントレールが分割された一対の部材であることから、本件訂正発明1の「一対のバー」とは、一対の部材である点で、共通する。 b 甲3発明の「直角部材105,106」が、「プラットフォーム50に形成される作業するための空間のうち、登上セクション11側に設けられ、前記作業をするための空間を前記枠と共に包囲」することと、本件訂正発明1の「一対のバー」が、「前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲」することとは、一対の部材が、前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する点で共通する。 c 甲3発明の「直角部材105,106」が「登上セクション11側において、前方バー107を互いに向かい合うまで回転すると共に、前方バー107の内部におけるスピゴット109の相互作用により直列状態となるように拘束されるまでスピゴット109を挿入して、係合させる」ことで、「直列状態にラッチ止めされた前方バー107、107が、プラットフォーム50の端部の上方位置に配置される」ようになる「状態C」と、本件訂正発明1の「一対のバー」が「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」とは、直列状態となっている前方バー107が直角部材105、106の一部であることから、一対の部材が、前記第1主脚側において互いの先端部が対向してその一部が略直列に位置するように支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態である点で共通する。 d 甲3発明の「直角部材105,106」が、「左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、空間が存在する状態B」と、本件訂正発明1の「一対のバー」が「前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態」とは、一対の部材が、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、空間が存在する第2の状態という点で共通する。 e 甲3発明の「直角部材105,106」が「状態C」と「状態B」(さらに「状態A」)と、に変形可能であることは、本件訂正発明1の「第1の状態」と「第2の状態」と、に変形可能であることと共通する。 f 甲3発明において状態Cから状態Bに変形するときには、「直角部材105、106」の「各前方バー107」を「互いの先端部が離れるように開く」ことと、本件訂正発明1において「一対のバー」が「第1の状態」から「第2の状態」に変形する際、「軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ」ることとは、第1の状態から一対の部材が、回動して開くことで、互いの先端部が離れるように開かれる点で共通する。 そうすると、本件訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、 前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、 前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、 前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対の部材と、を備え、 前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、 前記一対の部材が、 前記第1主脚側において互いの先端部が対向してその一部が略直列に位置するように支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、 回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、空間が存在する第2の状態と、に変形可能である、脚立式作業台。」 <相違点1> 作業空間のうち第1主脚側に位置して、作業空間を枠部材と共に包囲する一対の部材について、 本件訂正発明1では、 「一対のバー」であって、 「作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ものであり、 「それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって」、 「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」と、 「前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態」と、に変形可能であり、 「前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能」であるのに対して、 甲3発明では、 「登上セクション11のスタイルの上端に枢着されており、直角部材105、106をリアレールの上に折畳ませた状態から、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられるアーム108と、該アーム108を中心に略左右対称に回動可能な前方バー107」を有する「直角部材105,106」であって、 「作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ものであるとの特定がなされておらず、 「プラットフォームに登ることができる、リアレールの上に折畳ませた状態A」と、 「その状態Aから回転させて、前記アーム108がスタイル端部のブラケットによって拘束された位置において、各前方バー107が、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、空間が存在する状態B」と、 「その状態Bから各前方バー107を平面上に沿ってさらに回転させて、登上セクション11側において、前方バー107を互いに向かい合うまで回転すると共に、前方バー107の内部におけるスピゴット109の相互作用により直列状態となるように拘束されるまでスピゴット109を挿入して、係合させることで、直列状態にラッチ止めされた前方バー107、107が、プラットフォーム50の端部の上方位置に配置される状態C」と、に変形可能であり、 「状態Cから状態Bに変形するときには、直角部材105、106の各前方バー107を、互いの先端部が離れるように開く」点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 (ア)本件訂正発明1は、従来の可搬式作業台が、作業者が天板の突出方向と反対側で作業を行う場合には、天板の端を目視で確認しながら作業を行わなければならず、作業の効率が低下してしまうという問題や、天板の突出方向の反対側にも同様の手摺を取り付けたとしても、作業者が可搬式作業台を昇降する際に手摺を乗り越えたり、手摺をくぐったりしなければならないことから、天板と主脚との間の移動を自由に行うことができず、かえって作業の効率が低下してしまう問題を解決し、作業空間を包囲することにより作業の効率化を図ると共に、天板と主脚との間の移動を容易に行うことができる脚立式作業台を提供することを目的とし(本件訂正明細書段落【0005】【0006】【0007】)、 上記問題を解決するために、作業床用天板の上方に形成される作業空間を、作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と共に包囲する「一対のバー」について、「前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して」、「作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させ」るものとし、 「それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって」、 「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」と、 「前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であ」るものとし、 「前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能」なものとすることにより、 「作業の効率化を図ると共に、天板と主脚との間の移動を容易に行うことができる」という作用効果を奏するものである(本件訂正明細書段落【0009】)。 (イ)これに対して、甲3発明は、容易に運搬できない嵩張った構造プラットフォームラダーにおいて、容易に運搬できるようにすること、さらには、閉じた状態のラダーの全長が長くならないようにすることを課題とし、このような課題を解決するために、「プラットフォーム50に形成される作業するための空間のうち、登上セクション11側に設けられ、前記作業をするための空間を前記枠と共に包囲する、フロントレールが分割された直角部材105,106」を備え、「直角部材105,106は、登上セクション11のスタイルの上端に枢着されており、直角部材105,106をリアレールの上に折畳ませた状態から、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられるアーム108と、該アーム108を中心に略左右対称に回動可能な前方バー107を有するもの」という構成を採用し、当該構成によって、直角部材105,106を「リアレールの上に折畳ませた状態A」とすることができるものである。そして、甲第3号証には、本件訂正発明1の相違点1に係る構成、すなわち、「前記一対のバーは、それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって」、「前記一対のバーは、前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であること」という構成は何ら記載も示唆もない。また、甲3発明の「アーム108」と「前方バー107」を有する「直角部材105、106」について、「前方バー107」のみとすることや、アーム108をスタイル端部に固定して折畳ませた状態Aとならないようにして本件訂正発明1のようにする動機付けはなく、また、アーム108を中心に回動可能な前方バー107を隙間を介して略直列に位置するように軸着部で支持する構成とする動機付けもない。 したがって、回動すべき部材を軸着するために軸支ピンを使用することが周知技術(甲第5号証?甲第8号証)であるとしても、当該周知技術を甲3発明に適用して、相違点1に係る本件訂正発明1の構成に至ることはできない。 (ウ)ところで、本件訂正発明1の「一対のバー」と甲3発明の「前方バー107」は、「前記第1主脚側において互いの先端部」が「対向して」「略直列に位置するように」「支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」と、「回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように」「開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して」、「空間が存在する第2の状態」とに、変形可能であることから、両者が対応関係にあるともいえなくもない。 しかしながら、本件訂正発明1の「一対のバー」は、第1状態において「隙間を介して」「略直列に位置するように」、「軸着部によって支持」されているのに対して、甲3発明の各「前方バー107」は、前方バー107の内部におけるスピゴット109の相互作用により直列状態となるように拘束されるまでスピゴット109を挿入し、係合させることで、直列状態にラッチ止めされる点で異なる。すなわち、作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態における、一対の部材を略直列に位置するように支持する構造として、本件訂正発明1では、「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持」される構成を有しているのに対して、甲3発明では、そのような構成を有していない点で相違している。 そして、甲第3号証における記載をみても、上記相違点に係る、「一対のバー」は、「隙間を介して」「略直列に位置するように」、「軸着部によって支持される」構成とする動機付けはない。また、周知技術として示された甲第5号証?甲第8号証のいずれにも、前記構成についての記載も示唆もされていないのであるから、仮に甲3発明に上記周知技術(甲第5号証?甲第8号証)を適用したとしても、本件訂正発明1に至ることはできない。 尚、甲3発明が「アーム108」を備える点で本件訂正発明1と異なることについては、上記(イ)で述べたとおりである。 ウ 請求人の主張について (ア)審判請求人は、「本件訂正発明は、明細書・図面に記載された実施形態において、略コ字状の枠部材30と、固定ブラケット41、41と、該固定ブラケットに軸着された一対のバー40a、40bにより、作業空間を包囲するように構成されている。これに対して、甲3発明は、略コ字状の枠部材と、一対の開閉バー107、107と、該開閉バーを開閉回動軸線A2の廻りに軸着させるためのアーム108、108により、作業空間を包囲するように構成されている。この際、甲3発明の「バーの開閉機構」は、アーム108、108を略コ字状の枠部材の前方に突出させた使用状態において、開閉バー107、107をそれぞれ一つの開閉回動軸線A2のみを中心に回動させるように構成されている。つまり、この状態において、アーム108、108は、軸線A2の廻りに回動不能とされた状態で保持されており、開閉バー107、107を軸線A2の廻りに回動自在に軸着するための固定ブラケットとして機能している。」と主張する。(弁駁書6頁24行?7頁9行) しかしながら、甲3発明において認定したとおり、甲3発明の「アーム108」は、「登上セクション11のスタイルの上端に枢着されており、直角部材105,106をリアレールの上に折畳ませた状態から、スタイル端部のブラケットによって拘束されるまで回転させられる」ものであり、また、各「前方バー107」は、「該アーム108を中心に略左右対称に回動可能」となっているものである。すなわち、このような構成から、「前方バー107」は、アーム108に対して回転可能であるとともに、スタイル端部に対して回転することができるものである。 したがって、審判請求人が主張するように、開閉バー107、107(各前方バー107)は、それぞれ一つの開閉回動軸線A2のみを中心に回動するように構成されているものではなく、「アーム108,108」が「開閉バー107、107」を「軸線A2のみの廻りに回動自在に軸着」するための「固定ブラケット」として機能しているということはできない。 言い換えれば、甲第3号証の記載からは、各「アーム108」がスタイル端部のブラケットに固定され、アーム108が回動しない態様をとって固定ブラケットとして機能し、「前方バー107」が「一つの軸支ピンのみを中心に回動可能」である発明を認定することはできない。 (イ)審判請求人は、本件訂正発明1と甲第3号証に記載された発明とは、本件訂正発明1が、一対のバーの「軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピン」を限定するのに対して、甲第3号証に記載された発明が、前方バー107の軸支部に、「軸支ピン」が設けられているかどうか必ずしも明らかでない点」で相違するが、広く機械要素一般に関して、回動すべき部材を軸着するために軸支ピンを使用することは、甲第5号証ないし甲第8号証に記載されているように周知慣用の技術であり、何らの創作的価値も存在せず、しかも、本件訂正発明1は、一対のバーが作業台のどの部分に軸着されているのか、軸着部(軸支ピン)の軸方向が横向きであるのか縦向きであるのか等々の具体的構成を全く特定していないから、このような具体的構成が不明瞭な軸支ピンの点だけを以て、本件訂正発明1に格別な創意工夫を認めることは、到底できないことが明らかである旨主張する。(審判請求書9頁5行?10頁19行、口頭審理陳述要領書17頁21行?18頁18行) しかしながら、広く機械要素一般に関して、回動すべき部材を軸着するために軸支ピンを使用することが、周知技術であるとしても、上記イ(イ)及び(ウ)で検討したように、甲3発明には、前記周知技術を適用する動機付けがないとともに、甲3発明に周知技術を適用して本件訂正発明1を得ることは容易でない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲3発明及び周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 (2)本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成をすべて含み、さらに発明特定事項を限定するものであるから、上記と同様の理由により、甲3発明及び周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び2は、請求人が主張する無効理由1(甲第3号証に記載された発明、及び、周知技術(甲第5号証?甲第8号証))によって無効とすることができない。 3 無効理由2(甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術に基く進歩性欠如)について (1)甲第3号証を主引用例として ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲3発明との対比 本件訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点については、上記2(1)アで説示したとおりである。 (イ)判断 相違点1について 甲3発明の「一対の直角部材105,106」の「前方バー107」及び甲4発明の「ゲート42、44」は、ともに、それぞれ略左右対称に回動可能であって、互いの先端部が対向して略直列に位置するように支持される状態と、作業者が作業空間へ移動可能な状態と、に変形可能な部材である点で共通する。 しかしながら、甲3発明の「一対の直角部材105,106」は、プラットフォーム50に登った作業者の安全性を確保するためのレールの一部となるものであるのに対して、甲4発明の「ゲート42、44」は、ラダーが不正に使用されないようにアクセスをブロックするためのものであって、両者は目的が相違する。 よって、甲3発明の「一対の直角部材105,106」の構成に代えて、甲4発明の「ゲート42、44」の構成を適用する動機付けはない。 仮に、甲3発明に甲4発明を組み合わせる動機付けがあるとしても、甲4発明の「ゲート42、44」は、上記1(2)イで認定したとおり、「はしご部材にアクセスする側のステップ30より手前に位置する」ものであり、「作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置」されるものではなく、また「作業者が接触することで」「作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ものでもないことから、甲3発明に甲4発明を適用しても、本件訂正発明1に至ることはできない。 また、上記2(1)イ(ウ)で説示したように、周知技術として示された甲第5号証?甲第8号証のいずれにも、上記相違点に係る、「一対のバー」については、「隙間を介して」「略直列に位置するように」、「軸着部によって支持される」構成が記載も示唆もされていないのであるから、甲3発明に上記周知技術を適用したとしても、本件訂正発明1に至ることはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成をすべて含み、さらに発明特定事項を限定するものであるから、上記と同様の理由により、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 (2)甲第4号証を主引用例として ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲4発明との対比 本件訂正発明1と甲4発明とを対比すると、 a 甲4発明の「ラダー」は、本件訂正発明1の「脚立式作業台」に相当する。 b 甲4発明の「側部辺22及び24の各々に略平行に設けられた傾斜状の支柱にステップ30、32を有して梯子状に形成され、作業者の昇降側となるはしご部材」と、本願訂正発明1の「上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚」とは、「傾斜し」、「一対の支柱が梯子状に形成されるはしご部材」である点で共通する。 c 甲4発明の「ステップ34」は、本件訂正発明1の「作業床用天板」に相当する。 d ステップ34の上方を包囲するコ字状の枠部材は、はしご部材側のみが開放されていることは明らかであるから、甲4発明の「側部辺22及び24と、側部辺22及び24を互いに連結する部材とを有し、上記ステップ34の上方を包囲するコ字状の枠部材」と、本件訂正発明1の「前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材」とは、「前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうちはしご部材側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材」である点で共通する。 e 甲4発明の「前記はしご部材にアクセスする側のステップ30より手前に位置する、ラダーへのアクセスをブロックするゲート42及び44」と、本件訂正発明1の「前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバー」とは、「一対のバー」である点で共通する。 f 甲4発明の「前記はしご部材にアクセスする側から見たときに、側部辺22に連なる一方のフレーム26側を右とし、側部辺24に連なる他方のフレーム28側を左とする」と、本件訂正発明1の「前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とする」とは、はしご部材側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とする点で共通する。 g 甲4発明の「ゲート42及び44」は、「各フレーム26及び28の一対のクランプ48及び50により受取られるロッド46に搭載されており、それぞれ略左右対称に、各ロッド46をクランプ48及び50を介して枢動させることができるもの」であるから、「軸」を有した取着部があることは明らかである。 そうすると、甲4発明の「各フレーム26及び28の一対のクランプ48及び50により受取られるロッド46に搭載されており、それぞれ略左右対称に、各ロッド46をクランプ48及び50を介して枢動させることができるもの」は、本件訂正発明1の「それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能」であるものに相当する。 h 甲4発明の「前記ステップ34の昇降側の上方位置において、互いの先端部が隙間を介して対向して、ラダーの横向き方向に概ね平行して延びて枢着されている状態」と、本件訂正発明1の「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態」とは、昇降側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される状態である点で共通する。 i 甲4発明の「クランプ48及び50を介して枢動させて開くことで、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態」と、本件訂正発明1の「前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態」とは、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、作業者が移動可能な状態である点で共通する。 j 甲4発明の「互いの先端部が隙間を介して対向して、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されている状態と、クランプ48及び50を介して枢動させて開くことで、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態と、に変形可能であ」ることと、本件訂正発明1の「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であ」ることとは、昇降側において、互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、作業者が移動可能な状態と、に変形可能である点で共通する。 k 甲4発明の「ゲート42及び44が、各クランプ48及び50で形成される1つの枢軸のみを中心に回動可能であって、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されている状態と、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態との間を平面上に沿ってのみ移動可能」と、本件訂正発明1の「前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能」とは、前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸のみを中心に回動可能であって、一方の状態となる位置と、他方の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能である点で共通する。 そうすると、本件訂正発明1と甲4発明との<一致点>は、以下のとおりであり、両者は少なくとも以下の<相違点2>?<相違点5>で相違する。 <一致点> 「傾斜し、一対の支柱が梯子状に形成されるはしご部材と、 作業床用天板と、 前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうちはしご部材側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、 一対のバーと、を備え、 前記はしご部材側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、 前記一対のバーは、 それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、 昇降側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持される状態と、 前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、作業者が移動可能な状態と、に変形可能であり、かつ、 前記一対のバーは、 前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸のみを中心に回動可能であって、一方の状態となる位置と、他方の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能である、脚立式作業台。」 <相違点2> 傾斜し、一対の支柱が梯子状に形成されるはしご部材について、本件訂正発明1では「上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ」「作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚」であるのに対し、甲4発明では、「側部辺22及び24の各々に略平行に設けられた傾斜状の支柱にステップ30、32を有して梯子状に形成され、作業者の昇降側となるはしご部材」である点。 <相違点3> 作業床用天板の配置について、本件訂正発明1では、「前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される」のに対して、甲4発明では、そのような特定がなされていない点。 <相違点4> 一対のバーについて、本件訂正発明1では、「前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる」ものであるのに対し、甲4発明は「ラダーへのアクセスをブロックする」ものである点。 <相違点5> 一対のバーについて、本件訂正発明1では、「前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能」であり、「前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能」であるのに対して、 甲4発明では、「互いの先端部が隙間を介して対向して、ラダー20の横向き方向に概ね平行して延びる状態に向けてスプリング付勢されている状態と、クランプ48及び50を介して枢動させて開くことで、互いの先端部が離れるように且つ隙間が広がるように開かれ、ステップ30,32及び34へのアクセスを可能とする状態と、に変形可能」であり、「各クランプ48及び50で形成される1つの枢軸のみを中心に回動可能」である点 (イ)判断 a 相違点2、3について 甲4発明は、作業者の昇降側となるはしご部材と、はしご部の上端に配置されるステップ34(作業床用天板)を備えているラダーであるが、当該ラダーは、倉庫等の環境内での使用のため、輸送可能となるように車輪の上に搭載することができるものであるのに対して、甲3発明は、登城セクション11(第1主脚)の上側に回動部を介して回動自在に軸着される、後部セクション12(第2主脚)を備えたものであって、運搬等に際して、折畳まれるラダーである。したがって、両者はともにラダーであるものの、構造的にも、運搬等の方式においても異なるラダーである。また、甲第4号証の記載をみても、はしご部材の上側において、別のはしご部材を回動部を介して回動自在に軸着させる動機付けは無いから、甲4発明に甲3発明を適用することはできない。 審判請求人は、本件訂正発明1と甲4発明との唯一の相違点は、本件訂正発明が第1主脚と第2主脚を上側で回動自在に軸着した開閉折畳み形式の作業台(構成A)であって、当該構成Aは、甲第3号証等にみられるように、脚立式作業台における極めて周知の構成に過ぎないものである旨主張する。(口頭審理陳述要領書19頁21行?20頁1行) しかしながら、甲第3号証に記載されているような第1主脚と第2主脚を上側で回動自在に軸着した開閉折畳み形式の作業台が周知技術であるとしても、上記aで説示したとおり、甲4発明のラダーは、ステップより手前にアクセスをブロックするゲートを備えるもので、全体を折畳む形式の作業台とは基本構造が異なっており、当該周知技術を適用する動機付けがないのであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。 また、甲第5号証?甲第8号証のいずれにも、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成が記載も示唆もされていない。 したがって、甲4発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。 上記のとおり、甲4発明のはしご部材に対して別のはしご部材を回動部を介して回動自在に軸着させることが容易想到でないのであるから、相違点3に係る本件訂正発明1の構成、すなわち、作業床用天板が、「前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される」ことが容易想到でないことは明らかである。 b 相違点4、5について 甲4発明の一対のバーは、「ラダーへのアクセスをブロックする」ために備えられたものであり、上記1(2)イで認定したとおり、「はしご部材にアクセスする側のステップ30より手前に位置」に配置されるものであって、当該配置をステップ30より奥に変更するとはしご部材へのアクセスをブロックすることができないから、このような一対のバーを、相違点4に係る本件訂正発明1の構成、すなわち、「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバー」とする動機付けはない。 よって、甲第3号証に作業空間を前記枠部材と共に包囲する一対の部材(アーム108及び前方バー107)が記載されているとしても、甲4発明のラダーへのアクセスをブロックするための一対のバーに代えて、甲第3号証に記載の一対のバーを適用することはできない。 また、甲第5号証?甲第8号証のいずれにも、上記相違点4に係る本件訂正発明1の構成が記載も示唆もされていない。 したがって、甲4発明において、相違点4に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。 上記のとおり、甲4発明の「一対のバー」を「前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバー」とすることが容易想到でないのであるから、このような「一対のバー」を前提として「作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置」することを含む相違点5に係る本件訂正発明1の構成とすることが容易想到でないことは明らかである。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第4号証及び甲第3号証に記載された発明並びに周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成をすべて含み、さらに発明特定事項を限定するものであるから、上記と同様の理由により、甲第4号証及び甲第3号証に記載された発明並びに周知技術(甲第5号証?甲第8号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び2は、請求人が主張する無効理由2(甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術)によって無効とすることができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び2について、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2には無効とする理由がないから、その特許は無効とすべきものではない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 脚立式作業台 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、脚立式作業台に関するものである。例えば、建築工事現場、建築物の天井や壁面などの内外装作業、電気配線作業などの高所作業に用いられて好適である。 【背景技術】 【0002】 従来から高所作業には脚立が用いられている。脚立は、複数の踏桟を適宜間隔で取り付けた梯子状の一対の主脚の上端を回動自在に軸着し、軸着部である最上段の部分に天板が設けられている。脚立は、軸着部を回動することで一対の主脚を扁平に折り畳めるように構成されている。 【0003】 また、特許文献1には、上部が回動自在に軸着され、下方に向かって外側に傾斜する一対の梯子状の主脚間に天板を架設した可搬式作業台が開示されている。この可搬式作業台では、作業者の安全を確保するために、天板の上方に天板の突出方向と同じ方向に突出する手摺が取り付けられている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2010-126968号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1に開示された可搬式作業台は、天板の突出方向と同じ方向に突出する手摺が取り付けられているが、その反対側には手摺が取り付けられていない。したがって、作業者が天板の突出方向と反対側で作業を行う場合には、天板の端を目視で確認しながら作業を行わなければならず、作業の効率が低下してしまうという問題がある。 【0006】 一方、天板の突出方向の反対側にも同様の手摺を取り付けることで、作業者は天板の端を確認することなく作業をすることができ、作業の効率化を図ることができる。しかしながら、この場合には、作業者が可搬式作業台を昇降する際に手摺を乗り越えたり、手摺をくぐったりしなければならない。すなわち、天板と主脚との間の移動を自由に行うことができず、かえって作業の効率が低下してしまう。 【0007】 本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、作業空間を包囲することにより作業の効率化を図ると共に、天板と主脚との間の移動を容易に行うことができる脚立式作業台を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の脚立式作業台は、上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバーと、を備え、前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、前記一対のバーは、それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であり、かつ、前記一対のバーは、前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることを特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 本発明の脚立式作業台によれば、作業空間を包囲することにより作業の効率化を図ると共に、天板と主脚との間の移動を容易に行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】第1の実施形態の脚立式作業台1の斜視図である。 【図2】第1の実施形態の脚立式作業台1の正面図である。 【図3】第1の実施形態の脚立式作業台1の側面図である。 【図4】第1の実施形態の脚立式作業台1の背面図である。 【図5】第1の実施形態の脚立式作業台1を折り畳んだ状態の側面図である。 【図6】第1の実施形態の閉塞部材40を開いた状態を示す斜視図である。 【図7】第1の実施形態の閉塞部材40を閉じた状態を示す斜視図である。 【図8】第1の実施形態のロック部50によりロックする前の状態を示す図である。 【図9】第1の実施形態のロック部50によりロックした状態を示す図である。 【図10】第2の実施形態の閉塞部材60を示す図である。 【図11】第3の実施形態の閉塞部材70を示す図である。 【発明を実施するための形態】 【0011】 以下、本実施形態に係る脚立式作業台について図面を参照して説明する。 (第1の実施形態) 図1は脚立式作業台1の斜視図である。図2は脚立式作業台1を前側から見た正面図である。図3は脚立式作業台の側面図である。図4は、脚立式作業台1を後側から見た背面図である。図5は、脚立式作業台1を折り畳んだ状態を示す側面図である。各図では、脚立式作業台1の前側をFr、後側をRr、右側をR、左側をLで示している。 【0012】 脚立式作業台1は、一対の主脚10と、作業床用天板20と、枠部材30と、閉塞部材40と、を備えている。 一対の主脚10は、上側が回動部11を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜する、いわゆる脚立として機能する。本実施形態の一対の主脚10は、長尺な第1主脚10aと短尺な第2主脚10bとにより構成されている。 第1主脚10aおよび第2主脚10bは、それぞれ例えばアルミニウム合金製であって、断面略コ字状に形成されている一対の支柱12の間に踏桟13を適宜間隔で取り付けることで、梯子状に形成されている。脚立式作業台1では作業者が第1の主脚10a側から昇降するために、第1主脚10aは第2主脚10bよりも踏桟13の間隔が狭く、踏桟13の数も多く有している(図1?図4を参照)。第1主脚10aおよび第2主脚10bは、第1主脚10aの上端よりも下側と第2主脚10bの上端とが回動部11を介して回転自在に軸着されている。したがって、第1主脚10aは回動部11よりも上方に延出している。脚立式作業台1を使用しないときには、回動部11を中心に第1主脚10aおよび第2主脚10bが平行になるように折り畳まれる(図5を参照)。 【0013】 作業床用天板20は、例えばアルミニウム合金製であって、略平板状に形成されている。作業床用天板20は、回動部11よりも下方であって第1主脚10aと第2主脚10bとの間に亘って配置され、作業者の作業床として機能する。したがって、作業床用天板20の上方が作業者の作業空間Sとして形成される。作業床用天板20は、一端20aが第1主脚10aに回動自在に軸着され、他端20bが第2の主脚10bの踏桟13上に載置され支持されることで、水平状態が保持される。また、作業床用天板20は他端20bが第2主脚10bよりも外側(後側)に突出する長さに形成されていることから(図3を参照)、作業床用天板20を壁面などの作業箇所に近接させて配置することができ、作業性の向上を図ることができる。 作業床用天板20の下側には、ステイ21が配置されている。ステイ21は、一端が作業床用天板20の下側で回動自在に軸着され、他端が第2主脚10bに取り付けられた踏桟13に回動自在に軸着されている。したがって、ステイ21は、一対の主脚10を回動部11を介して回動したときに、作業床用天板20の回動を規制する機能を有する。脚立式作業台1を使用しないときには、第1主脚10aおよび第2主脚10bが折り畳まれる動きに連動して、ステイ21の一端と作業床用天板20との間およびステイ21の他端と踏桟13との間が回動し、作業床用天板20が第1主脚10aと略平行になるように折り畳まれる(図5を参照)。 【0014】 枠部材30は、例えばアルミニウム合金製であって、上側から見ると略コ字状に形成されている。枠部材30は、作業床用天板20の上側であって、更に回動部11よりも上側に配置されている。具体的に、枠部材30は、作業床用天板20から550mm?900mmの高さH1に配置されている(図2を参照)。この高さは、一般的に作業者の膝上から腰ぐらいまでの高さである。 枠部材30は、作業空間Sのうち第1主脚10a側のみ開放し、第2主脚10b側、右側面側および左側面側を包囲する。 ここで、枠部材30は、両端部がそれぞれ第1主脚10aの支柱12の上端それぞれに枠部材ブラケット31を介して取り付けられている。枠部材30は、幅(両端部間の距離)が第1主脚10aの支柱12間の距離とほぼ同一であり(図2および図4を参照)、先端30aが作業床用天板20の他端20bと同じ位置になるように設定されている(図3を参照)。また、枠部材30は、先端30aに向かって例えば約7度程度上向きになるように傾斜している。脚立式作業台1を使用しないときには、枠部材30を枠部材ブラケット31を介して回動させて第1主脚10aと略平行になるように、枠部材30の先端30aを下側に折り畳むことができる(図5を参照)。枠部材ブラケット31は、枠部材30を上向きになるように傾斜した状態と、第1主脚10aと略平行になるように折り畳んだ状態とで選択的に保持することができる。 【0015】 閉塞部材40は、例えば樹脂製であって、断面略矩形の筒状に形成されている。閉塞部材40は、作業床用天板20の上側、更に回動部11よりも上側に配置されている。また、閉塞部材40は、枠部材30よりも下側、すなわち第1主脚10aの上端よりも下側に配置されている。具体的に、閉塞部材40は、作業床用天板20から550mm?900mmの高さH2に位置している(図2を参照)。この高さは、一般的に作業者の膝上から腰ぐらいまでの高さである。なお、第1主脚10aは下側に向かって外側(前側)に傾斜しているので、閉塞部材40を第1主脚10aの上端よりも下側に配置することで、閉塞部材40で作業空間Sを包囲したときの作業空間Sを広く確保することができる。 閉塞部材40は、枠部材30と共に作業空間Sを包囲する。具体的には、閉塞部材40は、作業空間Sのうち第1主脚10a側を閉塞することで作業空間Sを包囲する。閉塞部材40は、開閉可能であって、開閉することで作業空間Sの一部(第1主脚10a側)を開放または閉塞する。 【0016】 ここで、閉塞部材40の具体的な構成について図6、図7を参照して説明する。図6は、閉塞部材40を開き、作業空間Sの一部を開放した状態を示す斜視図である。図7は、閉塞部材40を閉じ、作業空間Sの一部を閉塞した状態を示す斜視図である。 【0017】 本実施形態の閉塞部材40は、第1閉塞部材40aと第2閉塞部材40bとを有している。第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bは、第1主脚10aの支柱12のそれぞれに固定ブラケット41を介して取り付けられている。固定ブラケット41は、例えば金属製であって、ネジによって支柱12の側面に結合される。固定ブラケット41は、支柱12から前側に向かって突出し、より具体的には支柱12の長手方向に対して直交する方向に突出している。ここで、固定ブラケット41を突出させる長さLoは、第1主脚10aと第2主脚10bとを折り畳んだ場合において図5に示す第1主脚10aと第2主脚10bとを合わせた厚みT1から第1主脚10aの厚みT2を減算した厚みT3よりも短い長さであることが好ましい。固定ブラケット41の突出させる長さLoを厚みT3よりも短くすることで、複数の脚立式作業台1を平積みするときに、固定ブラケット41同士の干渉を防止することができる。 【0018】 図6および図7に示すように、各固定ブラケット41の先端部には、第1閉塞部材40a、第2閉塞部材40bを回動自在に軸着する軸着部42が形成されている。ここでは、第1閉塞部材40a側の軸着部42について説明するが、第2閉塞部材40b側の軸着部42も同様の構成である。 軸着部42は、前側軸支部42a、後側軸支部42b、底部42cおよび側壁部42dから構成されている。前側軸支部42aおよび後側軸支部42bの間には、軸支ピン43が挿通され、第1閉塞部材40aを回動可能に軸支する。底部42cおよび側壁部42dは、第1閉塞部材40aを軸支ピン43を中心とした起立と倒伏との間の回動を許容する。底部42cは、第1閉塞部材40aを閉じて倒伏させたときに第1閉塞部材40aと当接することで、第1閉塞部材40aを閉じた状態に保持する。一方、側壁部42dは、第1閉塞部材40bを開いて起立させたときに第1閉塞部材40aと当接することで第1閉塞部材40aを開いた状態に保持する。また、第2閉塞部材40bも第1閉塞部材40aと同様であり、ここでは、その説明を省略する。 【0019】 このように構成される閉塞部材40において、図6に示すように、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bを開く方向に回動させ、起立させることで、作業空間Sの第1主脚10a側を開放させることができる。一方、図7に示すように、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bを閉じる方向に回動させ、倒伏させることで、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞させることができる。 【0020】 また、本実施形態の脚立式作業台1では、倒伏させた第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの間に亘って架け渡すことで、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞した状態を保持するロック部50を備えている。ここで、ロック部50について図6?図9を参照して説明する。図8(a)はロック部50により閉塞部材40をロックする前の状態を後側から見た図であり、図8(b)はその断面図である。 【0021】 ロック部50は、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの長手方向に沿って摺動自在に設けられ、操作部材51と、摺動部材52とを有している。ロック部50は、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bをロックする前には第1閉塞部材40aに位置し、ロックした後には第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの間に架け渡された状態に位置する。 【0022】 操作部材51は、例えば第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bとは異なる色が着色された樹脂製であって、断面略矩形の筒状に形成されている。操作部材51は、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの長手方向に沿って円滑に摺動させるために、断面形状が第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの断面形状よりも大きく形成されている。また、操作部材51の長さL1は、第1閉塞部材40aの長さL2の略1/2よりも短い。 【0023】 摺動部材52は、例えば第1閉塞部材40a、第2閉塞部材40bおよび操作部材51とは異なる色が着色された樹脂製であって、断面略矩形状に形成されている。摺動部材52は、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの中空内を長手方向に沿って円滑に摺動させるために、断面形状が第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bの断面形状よりも小さく形成されている。また、摺動部材52の長さL3は、操作部材51の長さL1よりも長く、第1閉塞部材40aの長さL2よりも短く形成されている。したがって、摺動部材52は、ロックする前では第1閉塞部材40aから突出することなく第1閉塞部材40a内に収容される。 【0024】 また、摺動部材52の両端部52aのそれぞれ上下には傾斜部52bが形成されている。傾斜部52bは、摺動部材52が第2閉塞部材40b内に進入するときのガイドの機能や、摺動部材52を第1閉塞部材40a内に挿入して第1閉塞部材40aを組み立てるときのガイドの機能を有する。また、摺動部材52には、両端部52aから中央に向かって溝部52cが水平方向に沿って形成されている。また、摺動部材52のうち第2閉塞部材40b側の上面には、係止突起52dが形成されている。摺動部材52が第1閉塞部材40aに収容された状態では、係止突起52dが第1閉塞部材40aの上面に形成された係止孔40cに係止することで、摺動部材52が不用意に第1閉塞部材40aから突出するのを防止する。 【0025】 操作部材51と摺動部材52とは操作部材51の後面から締め付けられたネジ53によって結合されている。したがって、操作部材51と摺動部材52とは常に連動して摺動する。なお、第1閉塞部材40aの後面には、ロック部50が摺動するときにネジ53との干渉を防止するために長孔40dが摺動方向に沿って形成されている。ネジ53が長孔40dの両端と当接することで、ロック部50の摺動方向の移動が規制される。 作業者が操作部材51を第2閉塞部材40b側に摺動させることで、摺動部材52の係止突起52dと係止孔40cの係止が解除され、摺動部材52も連動して第2閉塞部材40bに向かって摺動する。 【0026】 図9(a)はロック部50により閉塞部材40をロックした状態を後側から見た図であり、図9(b)はその断面図である。ここでは、ロック部50のネジ53が長孔40dの端部と当接するまで摺動させている。このとき、操作部材51は、第1閉塞部材40aと第2閉塞部材40bとの中間で、第1閉塞部材40aの周囲および第2閉塞部材40bの周囲に亘って架け渡された状態になる。また、摺動部材52も同様に、第1閉塞部材40aと第2閉塞部材40bとの中間で、第1閉塞部材40a内および第2閉塞部材40b内に亘って架け渡された状態になる。 このように、操作部材51および摺動部材52を第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bに亘って架け渡すことにより、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞した状態を保持することができる。また、摺動部材52の上面に形成された係止突起52dは、第2閉塞部材40bの上面に形成された係止孔40eに係止することで、摺動部材52が不用意に第1閉塞部材40a側に摺動してしまうのを防止する。このとき、第2閉塞部材40bと摺動部材52との色が異なっていることから、作業者は係止孔40eを通して係止突起52dが係止されているかを確認することができる。 【0027】 また、ロック部50により閉塞部材40をロックした状態で上側からロック部50や閉塞部材40に荷重をかけられた場合を想定する。その場合、摺動部材52の両側には溝部52cが形成されているために、溝部52cの溝幅が狭まりながら、第1閉塞部材40a、第2閉塞部材40bおよび摺動部材52が下側へ撓む。このように、第1閉塞部材40a、第2閉塞部材40bおよび摺動部材52が撓むことにより、荷重を吸収し、第1閉塞部材40a、第2閉塞部材40bおよび摺動部材52の破損を防止することができる。 【0028】 次に、作業者が、脚立式作業台1が折り畳まれた状態から閉塞部材40により作業空間Sの一部を閉塞するまでの一連の操作について説明する。まず、図5に示すように、脚立式作業台1が折り畳まれた状態では、第1主脚10aと第2主脚10bとが平行になるように折り畳まれている。また、作業床用天板20は第1主脚10aに沿って折り畳まれている。また、枠部材30は、枠部材ブラケット31を介して折り畳まれている。また、第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bは、固定ブラケット41を介して起立させた状態になっている。 【0029】 まず、作業者は第1主脚10aと第2主脚10bとを回動部11を介して下側に向かって外側に傾斜するように開いた状態にする。このとき、作業床用天板20は、ステイ21によって第1主脚10aと第2主脚10bとの間に亘って配置される。 次に、作業者は第1主脚10a側から第1主脚10aの踏桟13を利用して昇る。作業者は踏桟13上に立った状態で、折り畳まれている枠部材30を回動させて、枠部材30の先端30aを外側に位置させる。この操作によって、作業床用天板20の上方に形成される作業空間Sのうち、第2主脚10b側、右側面側および左側面側が包囲される。 【0030】 次に、作業者は作業空間Sのうち開放された一部、すなわち第1主脚10a側を通って作業床用天板20上に昇る。次に、作業者は起立した第1閉塞部材40aおよび起立した第2閉塞部材40bを閉じる方向に回動させ、倒伏させることで、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞させる。このとき、作業者は起立した第1閉塞部材40aおよび起立した第2閉塞部材40bを回動させるだけの操作でよいため、しゃがみ込んだりする必要がなく、操作性を向上させることができる。このように第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bを倒伏させることで、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞することができる。したがって、作業空間Sの周囲は、枠部材30および第1閉塞部材40aおよび第2閉塞部材40bによって包囲される。 【0031】 次に、作業者はロック部50の操作部材51を第2閉塞部材40b側に摺動させることで、摺動部材52も連動して第2閉塞部材40bに向かって摺動させる。この操作によって、操作部材51が、第1閉塞部材40aと第2閉塞部材40bとの中間で、第1閉塞部材40aの周囲および第2閉塞部材40bの周囲に亘って架け渡された状態になる。また、摺動部材52も同様に、第1閉塞部材40aと第2閉塞部材40bとの中間で、第1閉塞部材40a内および第2閉塞部材40b内に亘って架け渡された状態になり、作業空間Sの第1主脚10a側を閉塞した状態が保持される。なお、作業者は、上述した操作と逆の操作を行うことで、脚立式作業台1を折り畳むことができる。 【0032】 上述したような操作により作業空間の一部が閉塞され、作業空間Sの周囲を包囲することができる。したがって、作業者が作業空間Sで作業をしている場合に、体の一部が枠部材30、第1閉塞部材40aまたは第2閉塞部材40bに接触することで、作業床用天板20の端部近辺で作業をしていることを認識することができる。このように作業者が作業床用天板20の端を認識することができることにより安全に作業を行うことができると共に、作業床用天板20の端を確認する必要がなく作業の効率化を図ることができる。 【0033】 本実施形態によれば、閉塞部材40を開閉することにより、作業空間Sの一部が開放または閉塞することができる。作業空間Sの一部が閉塞した場合には作業者は安全に作業を行うことができ、作業空間Sの一部を開放した場合には作業者は作業床用天板20と第1主脚10aとの間の移動を自由に行うことができる。 また、閉塞部材40は、作業床用天板20から550mm?900mmの高さに位置しているので、作業者の膝から腰までの一部が閉塞部材40に接触する。仮に、膝よりも下側が接触すると足元の動きが奪われてしまい、腰よりも上側が接触すると作業が困難になってしまう。上述したような高さにすることで作業の効率化を図ることができる。 【0034】 (第2の実施形態) 図10は、第2の実施形態に係る閉塞部材60を示す図である。なお、後述する閉塞部材60、固定ブラケット61および受部材62以外の構成は、第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。 本実施形態の閉塞部材60は、一本のみで構成されている。閉塞部材60は、例えば樹脂製であって、断面略矩形状の筒状に形成されている。閉塞部材60は、第1主脚10aの一方の支柱12に固定ブラケット61を介して取り付けられている。固定ブラケット61は、軸支ピン61aにより閉塞部材60を回動可能に軸支する。 作業者は、垂下した閉塞部材60を回動させ、閉塞部材60の先端を第1主脚10aの他方の支柱12に固定された受部材62に架け渡すことで、作業空間Sの一部を閉塞することができる(図10に示す一点鎖線を参照)。なお、閉塞部材60は、垂下した状態から倒伏させる状態に回動させたときに、受部材62との接触を回避できるように、固定ブラケット61との間で僅かに前後方向に遊びが形成されていることが好ましい。 【0035】 (第3の実施形態) 図11は、第3の実施形態に係る閉塞部材70を示す図である。なお、後述する閉塞部材70、受部材71以外の構成は、第1の実施形態と同様であり、適宜同一符号を付してその説明を省略する。 本実施形態の閉塞部材70は、伸縮可能に構成されている。閉塞部材70は、例えば樹脂製であって、断面略矩形状の筒体70aの中に伸縮部材70bが収容可能に形成されている。閉塞部材70は、第1主脚10aの一方の支柱12に固定ブラケット41を介して取り付けられている。固定ブラケット41は、軸支ピン43により閉塞部材70を回動可能に軸支する。 作業者は、起立した筒体70aを回動させた上で、伸縮部材70bを伸張させ、伸縮部材70bの先端を第1主脚10aの他方の支柱12に固定された受部材71に架け渡すことで、作業空間Sの一部を閉塞することができる(図11に示す一点鎖線を参照)。なお、閉塞部材70は、伸縮させる構成に限られず、折り曲げ可能な構成にしてもよい。 【0036】 以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。 本実施形態では、枠部材30が先端30aに向かって例えば約7度程度上向きになるように傾斜している場合について説明したが、この場合に限られず、水平または略水平に配置されていてもよい。 また、本実施形態では、閉塞部材40は枠部材30よりも下側に配置されている場合について説明したが、この場合に限られず、枠部材30と同じまたは略同じ高さに配置されていてもよい。 また、本実施形態では、閉塞部材40が樹脂により形成されている場合について説明したが、この場合に限られず、金属やその他の材質により形成されている場合であってもよい。 【符号の説明】 【0037】 1:脚立式作業台 10(10a、10b):主脚 11:回動部 12:支柱 13踏桟 20:作業床用天板 21:ステイ 30:枠部材 31:枠部材ブラケット 40:閉塞部材 41:固定ブラケット 42:軸着部 50:ロック部 51:操作部材 52:摺動部材 60:閉塞部材 70:閉塞部材 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 上側が回動部を介して回動自在に軸着され、下側に向かって外側に傾斜し、それぞれ一対の支柱が梯子状に形成され、作業者の昇降側となる第1主脚および作業者の昇降側としない第2主脚と、 前記第1主脚および前記第2主脚の間に亘って配置される作業床用天板と、 前記作業床用天板の上方に形成される作業空間のうち前記第1主脚側のみを開放した状態で、前記作業床用天板の上方に配置される略コ字状の枠部材と、 前記作業空間のうち前記第1主脚側に位置して、前記作業空間を前記枠部材と共に包囲し、作業者が接触することで前記作業床用天板の端部付近で作業をしていることを認識させる一対のバーと、を備え、 前記第1主脚側から見たときに一方の支柱側を右とし、他方の支柱側を左とすると、 前記一対のバーは、 それぞれ略左右対称に軸着部を介して回動可能であって、 前記第1主脚側において互いの先端部が隙間を介して対向して略直列に位置するように前記軸着部によって支持され、前記作業床用天板の昇降側の端部の上方位置に配置される第1の状態と、 前記軸着部を介して回動して開くことで、前記互いの先端部が離れるように且つ前記隙間が広がるように開かれ、左右方向から見て互いに重なり合うように略並列に位置して、作業者が前記第1主脚と前記作業空間との間を移動可能な第2の状態と、に変形可能であり、かつ、 前記一対のバーは、 前記軸着部に配置されるそれぞれ一つの軸支ピンのみを中心に回動可能であって、前記第1の状態となる位置と、前記第2の状態となる位置との間を平面上に沿ってのみ移動可能であることを特徴とする脚立式作業台。 【請求項2】 前記一対のバーは、前記作業床用天板から550mm?900mmの高さに位置することを特徴とする請求項1に記載の脚立式作業台。 【請求項3】 前記第1主脚の上端よりも下側と前記第2主脚の上端とが前記回動部を介して回動自在に軸着され、 前記一対のバーは、前記第1主脚のうち、前記第2主脚が軸着された位置よりも上側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の脚立式作業台。 【請求項4】 前記一対のバーは、前記第1主脚に回動自在に設けられ、起立させることで前記作業空間の一部を開放し、倒伏させることで前記作業空間の一部を閉塞することを特徴とする請求項3に記載の脚立式作業台。 【請求項5】 前記一対のバーにより前記作業空間の一部を閉塞した状態を保持するロック部材を有し、 前記ロック部材は、倒伏した前記一対のバーの間に亘って架け渡されることで、前記一対のバーを保持することを特徴とする請求項4に記載の脚立式作業台。 【請求項6】 前記枠部材は、前記第1主脚に折り畳み可能に設けられ、 前記一対のバーは、前記枠部材と共に前記作業空間を包囲する場合に、前記枠部材よりも下側に設けられていることを特徴とする請求項3ないし5の何れか1項に記載の脚立式作業台。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2019-01-07 |
結審通知日 | 2019-01-09 |
審決日 | 2019-01-22 |
出願番号 | 特願2014-1707(P2014-1707) |
審決分類 |
P
1
123・
121-
YAA
(E06C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西村 隆 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 西田 秀彦 |
登録日 | 2017-12-08 |
登録番号 | 特許第6254847号(P6254847) |
発明の名称 | 脚立式作業台 |
代理人 | 栗川 典幸 |
代理人 | 國分 孝悦 |
代理人 | 南林 薫 |
代理人 | 栗川 典幸 |
代理人 | 佐々木 智也 |
代理人 | 中野 収二 |
代理人 | 國分 孝悦 |
代理人 | 南林 薫 |
代理人 | 佐久間 邦郎 |
代理人 | 佐久間 邦郎 |
代理人 | 佐々木 智也 |